説明

通信モジュール

【課題】既存の非接触通信処理用IC部品を実装するマザーボートへの、このIC部品に代わる実装を容易にする通信モジュールを提供すること。
【解決手段】第1、第2の面を有する部品内蔵型の多層配線板と、多層配線板の第2の面上に設けられた表面実装用のアレー状配列端子と、多層配線板に実装された、通信処理回路を備えた半導体部品と、を具備し、アレー状配列端子が、一定の配列ピッチで経緯方向に並ぶ第1の端子群と、該第1の端子群が位置する、多層配線板の第2の面上の第1の領域に隣り合う第2の領域に設けられた、上記配列ピッチとは異なる配列ピッチで経線方向または緯線方向に並ぶ第2の端子群とを有し、第2の端子群が、信号入出力用の第3の端子群、テスト用の第4の端子群、基準電圧供給用の第5の端子群、状態設定信号入力用の第6の端子群のうちの少なくともひとつの端子群を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近距離通信を行うための電子部品である通信モジュールに係り、特に、既存の非接触通信処理用IC部品を実装するマザーボートへの、このIC部品に代わる実装を、容易にするのに好適な通信モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
既存の非接触通信処理用ICとして、例えば、フェリカ(Felica:登録商標)で使用される通信機能を実現するためのICが存在する。このICは、例えば、携帯電話、スマートフォンなどの携帯機器において、マザーボードに実装され使用されている。マザーボードにおいては、このICが有する回路機能、具体的にはそのための入出力端子配置を前提として、周辺回路設計やそのためのパターン設計がなされている。フェリカは、一定の標準として一般に使用されており、これ用に作られているICおよびこれを実装するマザーボードは、その生産数量も多いと考えられる。
【0003】
このような状況から、フェリカとは別の規格の近距離通信(NFC;near field communication)を行うために設計されるマザーボードを考えると以下が言える。このようなマザーボードは、まず、その別の規格の近距離通信を行うためのモジュール(通信モジュール)を実装することに対応がされており、さらに、フェリカのためのICを実装することにも支障がないようにパターン設計がされていると、用途が広がるため効率のよい生産につながる可能性がある。
【0004】
一方、この場合の通信モジュールは、その入出力端子として、フェリカのICが有する入出力端子と同様の物理的配置と信号の割り振りがなされていることが一応前提になる。これが満足されれば、マザーボードとして何ら変更を加える必要が生じないが、実際には、両者には上記の前提以外に違いが生じるものと考えられる。それにより、マザーボードとしてもフェリカのICを実装するための純正なマザーボードとは多少異なるパターン設計が必要になると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−133843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、近距離通信を行うための電子部品である通信モジュールにおいて、既存の非接触通信処理用IC部品を実装するマザーボートへの、このIC部品に代わる実装を容易にすることが可能な通信モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様である通信モジュールは、第1の面と該第1の面に対向する第2の面とを有する、横方向および縦方向の配線路を備えた部品内蔵型の多層配線板と、前記多層配線板の前記第2の面上に設けられた表面実装用のアレー状配列端子と、前記多層配線板に実装された、通信処理回路を備えた半導体部品と、を具備し、前記アレー状配列端子が、一定の配列ピッチである第1の配列ピッチで経緯方向に並ぶ第1の端子群と、該第1の端子群が位置する、前記多層配線板の前記第2の面上の領域である第1の領域に隣り合う第2の領域に設けられた、前記第1の配列ピッチとは異なる第2の配列ピッチで経線方向または緯線方向に並ぶ第2の端子群とを有し、前記第2の端子群が、前記配線路を介して前記半導体部品と電気的に接続された、信号入出力用の端子群である第3の端子群と、前記配線路を介して前記半導体部品と電気的に接続された、テスト用の端子群である第4の端子群と、前記配線路を介して前記半導体部品に電気的に接続された、基準電圧供給用の端子群である第5の端子群と、前記配線路を介して前記半導体部品に電気的に接続された、状態設定信号入力用の端子群である第6の端子群とのうちの少なくともひとつの端子群を含んでいる。
【0008】
この通信モジュールは、部品内蔵型の多層配線板を用い、これにより、まず受動素子部品などの配置密度を向上させ、加えてその片面(第2の面)上に、例えば配線路と同様工程で形成できる表面実装用のアレー状配列端子を設ける。そして、必要的な部品として、通信処理回路を備えた半導体部品が多層配線板に実装されている。
【0009】
アレー状配列端子は、多層配線板の第2の面の第1の領域に、第1の配置ピッチで経緯方向に並ぶ第1の端子群を有し、これ以外に、第1の領域に隣り合う第2の領域に経線方向または緯線方向に並ぶ、第2の配置ピッチの第2の端子群を有する。第1の端子群に対しては、既存のIC部品と同様の物理的配置と信号の割り振りとを行うことができる。第2の端子群には、それには収まらない信号などの入出力端子を割り振ることができる。具体的には、信号入出力用の端子群である第3の端子群、テスト用の端子群である第4の端子群、基準電圧供給用の端子群である第5の端子群、状態設定信号入力用の端子群である第6の端子群のうちの少なくともひとつ以上の端子群を割り振ることができる。なお、第2の端子群は、第1の端子群の配置ピッチには制約を受けずそのピッチ(=第2の配置ピッチ)を決めることができる。
【0010】
以上の構成の通信モジュールよれば、既存の非接触通信処理用IC部品とある程度の入出力端子コンパティビリティをもつ通信モジュールとなることから、その既存の非接触通信処理用IC部品を実装するマザーボートへの、このIC部品に代わる実装が容易になる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、近距離通信を行うための電子部品である通信モジュールにおいて、既存の非接触通信処理用IC部品を実装するマザーボートへの、このIC部品に代わる実装を容易にすることが可能な通信モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態である通信モジュールの構成を示す斜視図および正面図。
【図2】図1に示した通信モジュールをマザーボードに実装するときの態様を、既存の非接触通信処理用IC部品を実装する場合との比較で示す斜視図。
【図3】図1に示した通信モジュールにおけるアレー状配列端子の物理的配置およびその信号の割り振りの一例を示す底面図。
【図4】図1に示した通信モジュールのアレー状配列端子に適用できる、その物理的配置のほかの諸例を示す底面図。
【図5】図4に示した例とは異なる、図1に示した通信モジュールのアレー状配列端子に適用できる、その物理的配置のほかの諸例を示す底面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施態様として、前記第2の端子群が、前記第3、第4、第5、第6の端子群をすべて有し、かつ、グラウンド端子をも含む、とすることができる。既存のIC部品と同様の物理的配置および信号割り振りになっている第1の端子群に対して、第2の端子群にこれらの第3ないし第6の端子群、およびグラウンド端子の割り振りがなされる場合、通信モジュールとして設計の自由度をより高くすることができる。
【0014】
また、実施態様として、前記多層配線板に実装された、認証機能部を備えた第2の半導体部品をさらに具備する、とすることができる。認証機能部は、NFCによる通信で必要な認証動作を安全(セキュア)に行うための機能部である。認証機能は非接触通信の規格により一定しているので、この通信モジュールに備えさせれば、使い勝手がよくなるなど付加価値が大きく増加する。
【0015】
また、実施態様として、前記第2の端子群が、前記第1の端子群が設けられた前記第1の領域の四方を囲んで設けられている、とすることができる。第1の端子群に相当する既存のIC部品の端子群は、例えば、群の四辺に沿うように異なる性質の信号の割り振りがなされている。これからの拡張として第2の端子群を用意するようにしたものである。これにより、マザーボード側のパターン設計の負担増加を抑制することができると考えられる。また、この通信モジュールを実装した状態が熱応力的なバランスのとれた状態になる。
【0016】
以上を踏まえ、以下では本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態である通信モジュールの構成を示す斜視図(図1(a)、(b))および正面図(図1(c))である。図1に示すように、この通信モジュール10は、部品内蔵型多層配線板11、半導体部品12、受動素子部品13a、受動素子部品13b、基本端子群14a、拡張端子群14b、半導体部品15を有する。
【0017】
部品内蔵型多層配線板11は、配線層数が例えば4から8程度で、その内部に各種の受動素子部品13bや半導体部品15を埋め込み内蔵可能な、例えばガラスエポキシ樹脂のようなリジッドな絶縁材料でできた配線板である。近年の技術によれば、厚みを例えば1mm以下(例えば0.5mm程度)にしても上記のような多数の配線層を設けることができる。配線板11は、この通信モジュール10としての基板である。
【0018】
配線板11の一方の面上には、通信処理機能を担う中心である半導体部品12のほか、各種の受動素子部品13aが実装されている。そして、配線板11には、上記の各部品間を電気的につなぐ配線路として、各配線層による配線パターン(横方向導電路)と、これらの配線層間を層間接続する縦方向の導電体とが備えられている。部品内蔵型多層配線板11により、受動素子部品13a、13bなどの部品配置密度を向上させることができる。
【0019】
半導体部品12は、配線板11上に、表面実装用の端子(不図示)を介して実装された半導体パッケージ(例えばLGA)の部品であり、少なくとも通信処理回路を備えている。通信処理回路は、送り出す情報や受け取る情報の変調、復調、さらにはデータ演算などの処理を行うための回路である。半導体部品12は、配線板11が有する配線路により、電気的に、受動素子部品13a、受動素子部品13b、基本端子群14a、拡張端子群14b、半導体部品15などと接続している。
【0020】
基本端子群14aおよび拡張端子群14bは、この通信モジュール10を搭載するホスト機器(例えば携帯電話など)との電気的な接続を行うための外部接続部であり、半導体部品12が実装された面とは反対の側の配線板11の面上に、表面実装用のアレー状配列端子として設けられている。基本端子群14aおよび拡張端子群14bは、多層配線板11の他方の面(裏面)上に設けられた配線パターンの一部であり、一般的な配線板製造工程で形成できる。
【0021】
基本端子群14aは、配線板11の面上の領域A内で、一定の配列ピッチ(例えば0.5mm)をもって経緯方向に並べた端子群であり、既存の非接触通信処理用IC部品が備える端子と同様の物理的配置および信号割り振りを行ってある。これにより、この通信モジュール10を、既存の非接触通信処理用ICと一定程度の入出力端子コンパティビリティをもつ通信モジュールに構成することを意図している。基本端子群14aの物理的配置と信号の割り振りの例については、後述する(図3)。
【0022】
拡張端子群14bは、基本端子群14aが位置する、配線板11の面上の領域Aに隣り合う領域に設けられており、その配列ピッチは、図示するように、基本端子群14aと異なっていてもよい。拡張端子群14bは、経線方向または緯線方向に並べることができる。この通信モジュール10では、領域Aの四方を囲んで各一列設けている。拡張端子群14bの物理的配置と信号の割り振りの例についても、基本端子群14aと同様に後述する(図3)。
【0023】
受動素子部品13a、13bは、例えば、クリスタル発振子、電源用部品、EMCフィルタ用部品などの部品であり、配線板11が有する配線路により、電気的に、半導体部品12、基本端子群14a、拡張端子群14b、半導体部品15などと接続している。
【0024】
半導体部品15は、配線板11の厚みの内部に位置させて実装した内蔵部品である。半導体部品15をこのように設ければ、多層配線板11の面積を小さくできる効果が大きい。半導体部品15は、通常、小型の受動素子部品より面積的に相当に大きいためである。
【0025】
半導体部品15を配線板11の厚みの内部に位置させ実装する技術には、以下のようなものがあるのでいずれかを適宜採用することができる。ひとつは、ベアチップの半導体部品15を用い、フリップ接続で配線板11の内層配線層となるべき配線パターン上に実装し、その後半導体部品15を埋め込むように絶縁板材料を積層する方法である。あるいは、ベアチップの半導体部品15を用い、ボンディングワイヤで配線板11の内層配線層となるべき配線パターン上への電気的接続を行い、その後は上記と同様である。また、あるいは、チップスケールパッケージ化されLGAの端子を有する半導体部品15を用いてこれを配線板11の内層配線層となるべき配線パターン上へはんだで実装し、その後は上記と同様である。
【0026】
半導体部品15が有する電気的な機能としては、以下のように各種考えられる。ひとつは、半導体部品12による通信(NFC)で必要な認証動作を安全(セキュア)に行うための認証機能を行う半導体部品とすることができる。認証機能は、非接触通信の規格により一定しているので、この通信モジュール10に備えさせれば、使い勝手がよくなるなど付加価値が大きく増加する。
【0027】
あるいは、半導体部品12による通信とは別の無線通信(例えば無線LANやbluetooth(商標))を行うための半導体チップとして設けるようにしてもよい。これによれば、このような別の無線通信の機能を取り込んだ付加価値の高い通信モジュール10とすることができる。また、各種のメモリ素子とすることもできる。メモリ素子は、不揮発性のものを使用すれば、各種の設定を記憶する素子として機能させることができる。
【0028】
図2は、図1に示した通信モジュールをマザーボードに実装するときの態様を、既存の非接触通信処理用IC部品を実装する場合との比較で示す斜視図である。図2において、図1中に示したものと同一のものには、同一符号を付してある。なお、マザーボード100には、通信モジュール10あるいは既存の非接触通信処理用IC部品50が実装されるだけでなく、ほかに多くの電気、電子部品が実装されるが、それらについては図示省略している。通信モジュール10あるいは既存の非接触通信処理用IC部品50に関連して必要な、フィルタ、マッチング回路、増幅器などを構成する部品もマザーボード100に設けられる。
【0029】
図2(a)に示すように、通信モジュール10を実装するマザーボード100には、通信モジュール10が有する外部接続端子(基本端子群14aおよび拡張端子群14b)に合わせた実装用ランドがパターン形成されている。すなわち、マザーボード100は、基本端子群実装用ランド100aと拡張端子群実装用ランド100bとを有する。
【0030】
基本端子群実装用ランド100aは、図示するように領域B内で、一定の配列ピッチをもって経緯方向に並べたランド群であり、図2(b)に示すように、既存の非接触通信処理用IC部品50を実装できるランド群でもある。拡張端子群実装用ランド100bは、マザーボード100の面上の領域Bに隣り合う領域に設けられており、その配置は、通信モジュール10の拡張端子群14bのそれに合わせてある。
【0031】
マザーボード100は、図2(a)に示すように通信モジュール10が実装された場合でも、図2(b)に示すように既存の非接触通信処理用IC部品50が実装された場合でも、マザーボードとして機能できるように、電気的なパターン設計のなされている配線基板である。
【0032】
考え方として、通信モジュール10の基本端子群14aに合わせてある基本端子群実装用ランド100aについては、これにつながる導電路が、既存の非接触通信処理用IC部品50を実装した場合でも通用するように設けられている。一方、通信モジュール10の拡張端子群14bに合わせてある拡張端子群実装用ランド100bについては、これにつながる導電路が、基本端子群実装用ランド100aにつながる導電路とは別の新たな付加として設けられている。
【0033】
マザーボード100に通信モジュール10が実装された場合と、マザーボード100に既存の非接触通信処理用IC部品50が実装された場合との比較では、後者の場合、マザーボード100の一部の部品実装領域に部品が実装されなかったり、ダミー部品(例えば0Ωの抵抗部品など)が実装されたりすることになる。換言すると、そのように対応しただけで、マザーボード100は、用途の広がった高価値のものとなる。
【0034】
通信モジュール10は、既存の非接触通信処理用IC部品50とある程度の入出力端子コンパティビリティをもつ通信モジュールになっており、通信モジュール50の側から見ると、マザーボード100を利用することで、既存の非接触通信処理用IC部品50を実装するマザーボート100への、このIC部品50に代わる実装が容易になっている。
【0035】
次に、図3は、図1に示した通信モジュールにおけるアレー状配列端子の物理的配置およびその信号の割り振りの一例を示す底面図である。
【0036】
基本端子群は、端子群T1、T2、T3、T4、T5に分類される。端子群T1は、例えば、信号入出力用の端子群である。端子群T2は、例えば、テスト用の端子群である。端子群T3は、例えば、基準電圧供給用(電源電圧用を含む)の端子群である。端子群T4は、例えば、状態設定信号入力用の端子群である。端子群T5は、例えば、グラウンド電位を供給するための端子群である。これらの端子群T1、T2、T3、T4、T5の物理的配置と信号の割り振りは、もちろん、既存の非接触通信処理用IC部品とのコンパティビリティを持って決定されている。すなわち、既存の非接触通信処理用IC部品の端子群においては、例えば、図示するように、その群の四辺に沿うように異なる性質の信号の割り振りがなされている。
【0037】
より具体的に、信号入出力用の端子群は、例えば、この通信モジュール10が備えられるホスト機器との情報のやり取り、通信のためのアンテナとの接続、認証機能を行うための信号のやり取りなどをするための端子群である。テスト用の端子群は、例えば、この通信モジュール10の機能の健全性をテストするため必要な信号の入力や、特定の回路ノードの外部での監視などをするための端子群である。
【0038】
さらに、基準電圧供給用の端子群は、例えば、メインの電源、アナログ回路用の電源、ディジタル回路用の電源などの各供給のほか、基準となる電圧を通信モジュール10に供給するための端子群である。状態設定信号入力用の端子群は、例えば、モード切替の指示、リセットの指示、割込みの指示、基本クロックの供給などをするための端子群である。
【0039】
また、拡張端子群は、端子群T11、T22、T33、T44に分類される。端子群T11は、例えば、信号入出力用の端子群である。端子群T22は、例えば、テスト用の端子群である。端子群T33は、例えば、基準電圧供給用(電源電圧用を含む)の端子群である。端子群T44は、例えば、状態設定信号入力用の端子群である。これらの端子群T11、T22、T33、T44は、既存の非接触通信処理用IC部品とコンパティビリティを持つための端子群とは別に、通信モジュール10として必要的に新たに設けられた端子群の位置づけである。なお、拡張端子群の中には、これらの端子群T11〜T44のほかに、グラウンド端子に割り当てられた拡張端子があってもよい(図3で「TG」と表示の端子)。
【0040】
拡張端子群が、基本端子群の領域の四方を囲んで設けられている場合、拡張端子群も、図示するように、基本端子群と同様に、基本端子群の四辺に沿うように異なる性質の信号の割り振りをなすと、マザーボード側の設計負担が軽減すると考えられる。例えば、端子群T1と端子群T11とがいずれも信号入出力用の端子群であれば、これらの端子群につながるマザーボード側の配線は、他の性質の信号が混在したパターンにならず、マザーボード上の一定領域にまとまりのあるパターン設計ができる。端子群T2と端子群T22との関係、端子群T3と端子群T33との関係、端子群T4と端子群T44との関係についても同様である。
【0041】
上記した4種の端子群T11、T22、T33、T44は、拡張端子群の中に必ずしもすべてが割り当てなされない場合も考えられる。これは、既存の非接触通信処理用IC部品が有する端子との比較で、拡張して必要な端子が限られる場合もあり得るからである。ただ、既存のIC部品と同様の物理的配置および信号割り振りになっている第1の端子群に対して、拡張端子群として、これらの第3ないし第6の端子群、およびグラウンド端子の割り振りがすべてなされる場合、この通信モジュールとして制約がより小さくなり、その設計の自由度を高くすることができる。
【0042】
次に、図4は、図1に示した通信モジュールのアレー状配列端子に適用できる、その物理的配置のほかの諸例を示す底面図である。図4に示すように、拡張端子群は、その数や配置を種々に変更して設けることができる。一般的には、マザーボードに通信モジュール10を例えばはんだで実装した状態が熱応力的に安定した実装となるような、拡張端子群の配置になっていることが好ましい。
【0043】
図4(a)は、基本端子群の3方をコの字に囲むように拡張端子群を設けたものである。熱応力的には、四方のうち1方にバランスが取れないが、基本端子群によるマザーボードとの機械的接続が強固であるため許容できる場合もある。図4(b)は、基本端子群の隣り合う2辺にLの字に隣接するように拡張端子群を設けたものである。図4(c)は、基本端子群の対向する2辺のそれぞれに隣接するように拡張端子群を設けたものである。図4(d)は、基本端子群の1辺に隣接するように拡張端子群を1列設けたものである。いずれ場合も、熱応力的には、四方に対して平等にバランスを取ることにならないが、基本端子群によるマザーボードとの機械的接続が強固であるため許容できる場合もある。
【0044】
さらに、図4(e)は、基本端子群の1辺に隣接するように拡張端子群を2列設けたものである。図4(f)は、基本端子群の対向する2辺のそれぞれに隣接するように拡張端子群をそれぞれ2列設けたものである。これらの場合の熱応力的な事情は上記と同様である。図4(e)、(f)に示す態様では、図4(d)、図4(c)に示した場合より、拡張端子群の端子数を増やすことができる。
【0045】
図4の各図は、例として挙げた態様であり、さらに変形例を挙げることは容易である。例えば、拡張端子群の配置ピッチを基本端子群のそれのちょうど2倍にする、あるいは3倍(・・・)にするなどの構成や、拡張端子群の列配置を千鳥状にするなどの構成も考えられる。一般に、拡張端子群の配置ピッチが基本端子群のそれより大きいほど、配線パターンのレイアウトの自由度が増すので、パターン設計負担が軽減する。
【0046】
次に、図5は、図4に示した例とは異なる、図1に示した通信モジュールのアレー状配列端子に適用できる、その物理的配置のほかの諸例を示す底面図である。拡張端子群の個々の端子形状は、図5に示すように、円形に限らず方形(あるはその他の図形)としてもよい。また、マザーボードへの通信モジュールの実装には、はんだに限らず例えば、異方性導電性樹脂、異方性導電性シート、異方性のない導電性樹脂などを利用(または一部利用)することも可能である。
【符号の説明】
【0047】
10…通信モジュール、11…部品内蔵型多層配線板、12…半導体部品(通信処理回路)、13a…受動素子部品(表面に実装)、13b…受動素子部品(内蔵)、14a…基本端子群(第1の端子群)、14b…拡張端子群(第2の端子群)、15…半導体部品(内蔵)、50…既存の近距離通信用IC部品、100…マザーボード、100a…基本端子群実装用ランド、100b…拡張端子群実装用ランド、T1,T2,T3,T4,T5,T11,T22,T33,T44…端子群。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面と該第1の面に対向する第2の面とを有する、横方向および縦方向の配線路を備えた部品内蔵型の多層配線板と、
前記多層配線板の前記第2の面上に設けられた表面実装用のアレー状配列端子と、
前記多層配線板に実装された、通信処理回路を備えた半導体部品と、を具備し、
前記アレー状配列端子が、一定の配列ピッチである第1の配列ピッチで経緯方向に並ぶ第1の端子群と、該第1の端子群が位置する、前記多層配線板の前記第2の面上の領域である第1の領域に隣り合う第2の領域に設けられた、前記第1の配列ピッチとは異なる第2の配列ピッチで経線方向または緯線方向に並ぶ第2の端子群とを有し、
前記第2の端子群が、前記配線路を介して前記半導体部品と電気的に接続された、信号入出力用の端子群である第3の端子群と、前記配線路を介して前記半導体部品と電気的に接続された、テスト用の端子群である第4の端子群と、前記配線路を介して前記半導体部品に電気的に接続された、基準電圧供給用の端子群である第5の端子群と、前記配線路を介して前記半導体部品に電気的に接続された、状態設定信号入力用の端子群である第6の端子群とのうちの少なくともひとつの端子群を含んでいること
を特徴とする通信モジュール。
【請求項2】
前記第2の端子群が、前記第3、第4、第5、第6の端子群をすべて有し、かつ、グラウンド端子をも含むことを特徴とする請求項1記載の通信モジュール。
【請求項3】
前記多層配線板に実装された、認証機能部を備えた第2の半導体部品をさらに具備することを特徴とする請求項1記載の通信モジュール。
【請求項4】
前記第2の端子群が、前記第1の端子群が設けられた前記第1の領域の四方を囲んで設けられていることを特徴とする請求項1記載の通信モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−216580(P2012−216580A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79209(P2011−79209)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】