説明

通信制御システム

【課題】車両のユーザが所持する携帯機と当該車両との間で機器制御のための無線通信が行われる場合において、通信障害が発生した時点で、それが環境ノイズによるものか通信機器自体の不具合によるものかの判別を容易化する。
【解決手段】車両2のユーザにより所持される携帯機10と、該携帯機10から送信された電波を受信し、該電波に含まれる制御信号に基づいて車載機器27,28を制御する通信制御装置20とを具備した通信制御システム30である。通信制御装置20は、受信電波に含まれる信号強度を測定するRSSI回路と、信号強度が所定の閾値以上である場合に、当該電波が、携帯機10と通信制御装置20との間の無線通信の成立を妨げる環境ノイズであるか否かを判定する装置側マイコン11とを備えている。そして受信電波が環境ノイズである場合、無線通信が成立し難い状況にある旨をユーザに報知するハザードランプ29を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物のユーザにより所持される携帯機と、該携帯機と無線通信を行い、前記対象物に設けられた機器を制御する通信制御装置とを備えてなる通信制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の車両(対象物)においては、そのセキュリティレベル(安全性)のさらなる改善とともに車両のユーザの利便性の向上が強く求められている。このため、従来、ユーザが所持する携帯機(電子キー)と車両に設けられた通信制御装置(車載装置)との間で双方向の無線通信を行い、該無線通信が成立したことを条件として、ドア錠の施解錠操作を自動的に行ったり、エンジンの始動を可能としたりする通信制御システム(電子キーシステム)が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
詳しくは、前記通信制御装置は、該装置に設けられた装置側送信回路により、予め設定されたリクエスト信号(電波)を車両周辺や車両室内に送信してリクエスト信号の送信エリアを形成する。そして、その送信エリアに前記携帯機が進入すると、該携帯機に設けられた携帯機側受信回路によってリクエスト信号を受信するとともに、そのリクエスト信号に応答し、該携帯機に設けられた携帯機側マイコンのメモリに記憶されたIDコードを含むIDコード信号(電波)を携帯機側送信回路によって通信制御装置に送信する。
【0004】
そして、前記通信制御装置は、このIDコード信号を該装置に設けられた装置側受信回路で受信すると、該通信制御装置に設けられた装置側マイコンがそのメモリに記憶されたIDコードと前記IDコード信号に含まれるIDコードとの照合を行い、それらIDコード同士が一致したことを条件として携帯機との無線通信が成立したものとし、車両のドア錠を施解錠可能な状態としたり、エンジンを始動可能な状態とする車両制御を行う。
【0005】
即ち、前記携帯機と通信制御装置との間で自動的に双方向の無線通信が行われ、該無線通信の成立を前提として車両制御が行われる。このため、ユーザは、メカニカル鍵等を用いた手動操作によることなく前記通信制御装置を用いて車両を遠隔で自動制御することができて利便性が向上し、しかも電磁的なID照合が車両制御の開始要件となるため、車両のセキュリティレベルが高められる。
【0006】
ところで、こうした通信制御システムでは、車両の周辺環境に携帯機と通信制御装置との通信を妨害する環境ノイズ(電波)が存在すると、通信障害が発生し、前記した車両制御が正常に行えなくなる。具体的には、前記携帯機から送信されるIDコード信号を含む電波の周波数fiとほぼ同じ周波数fn(fn≒fi)の環境ノイズが車両(通信制御装置)の周辺環境に存在する場合、該環境ノイズと携帯機からのIDコード信号とが混信し、本来受信すべきIDコード信号の受信レベル(選択比)が低下してしまう。
【特許文献1】特開2007−142886号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このように携帯機と通信制御装置との間で通信障害が発生し、ドア錠の施解錠操作等の車両制御が正常に行えなくなった場合、車両のユーザからみれば、それが環境ノイズによる通信の妨害が原因となっているのか、或いは、携帯機又は通信制御装置の故障や電池切れ等の不具合によるものか、通信障害が発生した時点での判別をすることが困難となっている。
【0008】
このため、それら通信機器自体に不具合の原因がない場合でも、ユーザはディーラー(販売店)を通して車両メーカにそれら通信機器の修理依頼を行うことがあり、ユーザと車両メーカ双方に不利益となる状況が生じている。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、対象物のユーザが所持する携帯機と当該対象物との間で機器制御のための無線通信が行われる場合において、通信障害が発生した時点で、その通信障害が環境ノイズによるものか通信機器自体の不具合等のその他の原因によるものかの判別が容易化される通信制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、対象物のユーザにより所持され、該対象物に設けられた機器を制御するための制御信号を含む電波を送信する携帯機と、該携帯機から送信された電波を受信し、前記制御信号に基づいて前記対象物に設けられた機器を制御する通信制御装置とを具備した通信制御システムにおいて、前記通信制御装置は、前記受信される電波に含まれる信号の強度を測定する信号強度測定手段と、前記信号の強度が予め設定された所定の閾値以上の場合に、当該信号を含む電波が、前記対象物が位置する環境に存在し、前記携帯機と通信制御装置との間の無線通信の成立を妨げる環境ノイズであるか、又は、本来受信すべき電波であるかを判定する電波判定手段とを備え、前記受信した電波が環境ノイズである場合において、該環境ノイズにより前記無線通信が成立し難い状況にある旨を前記ユーザに報知する報知手段をさらに具備したこと、を要旨とする。
【0011】
同構成によれば、携帯機と通信制御装置との間で通信障害が生じた場合に、信号強度測定手段によって環境ノイズの可能性のある電波が高い確率で選別されるとともに、電波判定手段によって当該電波が環境ノイズであるか否かを特定することができる。しかも、受信された電波が環境ノイズである場合には、報知手段によってその旨がユーザに通知されるので、ユーザは通信障害が環境ノイズによるものか、又は、携帯機や通信制御機器等の通信機器自体の不具合によるものかを確実に知ることができるようになる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の通信制御システムにおいて、前記所定の閾値は、前記受信した電波が環境ノイズである場合において、当該環境ノイズが原因となって前記携帯機と通信制御装置との間の無線通信が成立しなくなる受信レベル以上に設定されていること、を要旨とする。
【0013】
同構成によれば、予め設定された所定の閾値が、受信した電波が環境ノイズである場合において、当該環境ノイズが原因となって携帯機と通信制御装置との間で無線通信が成立しなくなる受信レベル以上に設定されている。このため、携帯機と通信制御装置との間で通信障害が生じた場合に、信号強度測定手段によって環境ノイズの可能性のある電波が無線通信の成立を妨害する環境ノイズである旨がさらに高い確率で特定されるようになる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の通信制御システムにおいて、前記通信制御装置は、前記対象物に設けられた所定の操作手段の操作があった時点を基準として所定の時間、前記信号強度測定手段及び電波判定手段を用いて前記受信した電波が環境ノイズであるか否かの判定を行う環境ノイズ受信モードに設定されるようにしたこと、を要旨とする。
【0015】
同構成によれば、対象物に設けられた所定の操作手段の操作があった時点を基準として所定の時間、受信された電波が環境ノイズであるか否かの判定を行う環境ノイズ受信モードに設定される。このため、ユーザが対象物に設けられた所定の操作手段を操作する場合のような環境ノイズによって対象物の機器制御のための通信障害が生じうる状況と、環境ノイズ受信モードが設定される時間とを的確に重複させることができ、通信障害を引き起こす環境ノイズの存在をさらに高い確率で特定することができるようになる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の通信制御システムにおいて、前記報知手段は、前記対象物に設けられ、音の吹鳴又は光の出射を行う装置であること、を要旨とする。
【0017】
同構成によれば、報知手段は、対象物に設けられ、音の吹鳴又は光の出射を行う装置であるので、ユーザは対象物を通じ、通信障害が環境ノイズを原因として生じている旨を直接的に知ることができるようになる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の通信制御システムによれば、対象物のユーザが所持する携帯機と当該対象物との間で機器制御のための無線通信が行われる場合において、通信障害が発生した時点で、その通信障害が環境ノイズによるものか通信機器自体の不具合等のその他の原因によるものかの判別が容易化される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。
[第1実施形態]
図1〜図3に示すように、本実施形態の通信制御システム30は、車両2のユーザによって所持される携帯機10と、前記車両2に設けられ、受信回路23を介して前記携帯機10と双方向に無線通信可能な通信制御装置20とを備えている。
【0020】
<携帯機10の構成と動作>
図1に示すように、前記携帯機10は、CPU、ROM、RAM等から構成された携帯機側マイコン(携帯機側マイクロコンピュータ)11、並びに、該マイコン11にそれぞれ電気的に接続された携帯機側受信回路12及び携帯機側送信回路13を備えている。さらに、前記携帯機側マイコン11には、携帯機10から施錠操作コード及び解錠操作コードを含む施解錠操作信号を送信させるための施解錠スイッチ14と、ブザー等の音響装置やLED等の表示装置などからなる報知器15とがそれぞれ電気的に接続されている。尚、該マイコン11は不揮発性のメモリ11aを備えており、該メモリ11aには、施解錠操作コード、並びに、車両2に固有のリクエストコード及びIDコードが記憶されている。
【0021】
前記携帯機側受信回路12は、前記装置側送信回路22から送信されるWAKE信号及びリクエスト信号(LF帯の電波)を受信可能に構成されている。そして、携帯機側受信回路12は、携帯機10が図2に示す車室外検知エリアA1又は車室内検知エリアA2に進入し、WAKE信号又はリクエスト信号を受信するとそれらを復調して携帯機側マイコン11に出力する。
【0022】
前記携帯機側送信回路13は、前記通信制御装置20の受信回路23が受信可能な所定の受信周波数帯域(ここではUHF帯)の電波を送信可能に構成されている。即ち、携帯機側送信回路13は、携帯機側マイコン11により制御され、通信制御装置20から送信回路22を介して送信されるWAKE信号を受信したことを条件として当該通信制御装置20と同期をとるために返信するACK信号、並びに、携帯機側マイコン11から入力される前記IDコードを含むIDコード信号及び前記施解錠操作コードを含む施解錠操作信号を、前記周波数の電波に変調し、それらを前記受信回路23に送信可能となっている。
【0023】
前記携帯機側マイコン11は、前記携帯機側受信回路12を介して車両2の通信制御装置20からリクエスト信号を受信すると、該信号に含まれるリクエストコードと、前記メモリ11aに記憶されたリクエストコードとを照合し、両コードが一致したことを条件として、前記メモリ11aに記憶されたIDコードをIDコード信号に変換し、携帯機側送信回路13に出力する。
【0024】
また、携帯機側マイコン11は、施解錠スイッチ14からその操作内容に応じて施解錠信号が入力されると、リクエスト信号の受信有無にかかわらず、前記メモリ11aに記憶された施解錠操作コードを施解錠操作信号に変換し、携帯機側送信回路13に出力する。
【0025】
そして、携帯機側送信回路13は、前記携帯機側マイコン11からIDコード信号又は施解錠操作信号が入力されると、該各信号を前記所定の受信周波数帯域に属する周波数の電波に変調し、アンテナ13aから車両2に向けて発信する。
【0026】
<通信制御装置20の構成と動作>
図1に示すように、前記通信制御装置20は、CPU、ROM、RAM等から構成された装置側マイコン(装置側マイクロコンピュータ)21と、該マイコン21によって制御可能に接続された装置側送信回路22とを備えている。尚、該マイコン21は不揮発性のメモリ21aを備えており、該メモリ21aには、車両2に固有のリクエストコード及びIDコードが記憶されている。
【0027】
前記装置側送信回路22は、所定の送信周波数帯域(ここではLF帯)の電波を送信可能に構成されている。この装置側送信回路22は、装置側マイコン21から前記リクエストコードを含むリクエスト信号(送信要求信号)が入力されると、それを前記周波数帯域の電波に変調するとともに、予め設定された出力強度で外部に発信する。
【0028】
詳しくは、この装置側送信回路22は、前記装置側マイコン21により制御され、所定の受信周波数帯域(ここではUHF帯)の周波数で携帯機10からアンサーバック信号としてのIDコードを含むIDコード信号を送信アンテナ22aを介して送信させるべく、図2に示すように、前記リクエスト信号を車両2のドア近傍の車室外検知エリアA1と車室内検知エリアA2とに発信する。尚、装置側送信回路22は、装置側マイコン21により制御され、前記車室外検知エリアA1と車室内検知エリアA2に、携帯機10の存在を確認すべくWAKE信号を所定周期で間欠的に発信するようにもなっている。
【0029】
前記受信回路23は、前記所定の受信周波数帯域(例えば、433.92MHz±120kHz)の周波数の電波を受信可能に構成されている。図3を参照して、この受信回路23は、所謂スーパーヘテロダイン受信機で構成されており、受信回路23は、携帯機10等から到来する前記所定の受信周波数帯域内の信号(電波)を受信すると該信号を復調し、装置側マイコン21に出力する。
【0030】
詳細には、図3に示すように、この受信回路23は、到来するUHF帯の周波数fiの電波を受信する受信アンテナ23aと、該受信アンテナ23aで受信した電波に含まれる信号を、周波数混合回路23mに導入する前に所定の強度に増幅する増幅回路23bとを備えている。
【0031】
また、前記受信回路23は、局部発振周波数としての周波数がfo(例えば、fo=52.9025MHz)の信号(所定の信号)を出力する信号値変化手段としての局部発振回路23Lと、前記受信アンテナ23aで受信される周波数fiの信号に前記局部発振回路23Lから出力される局部発振周波数foの信号を周波数混合して中間周波数fIF(=fo−fi)の信号に変換する周波数混合回路23mとを備えている。
【0032】
さらに、前記受信回路23は、前記中間周波数fIFの信号を増幅し、周波数選択特性を確保するためのIF(Intermediate Frequency:中間周波増幅)回路(図示せず)を有する中間周波増幅回路23iと、該増幅回路23iを通過した後の信号から信号成分を取り出し、信号fsとして装置側マイコン21に出力する検波回路23fとを備えている。
【0033】
尚、前記検波回路23fと中間周波増幅回路23iとの間には、信号強度測定手段としてのRSSI(Received Signal Strength Indicator:受信信号強度表示)回路23rが並列挿入されている。そして、該RSSI回路23rによって前記中間周波増幅回路23iから出力される信号の強度が受信信号強度(受信した信号の強度を表示する信号)に変換された後、装置側マイコン21に出力されるようになっている。
【0034】
また、図1及び図3を参照して、前記装置側マイコン21には、車両2にそれぞれ設けられた、ドアハンドル24、ロックS/W(ロックスイッチ)25、エンジンスイッチ26、並びに、制御対象となる車載機器としてのドア錠装置27及びエンジン制御装置28が電気的に接続されている。また、装置側マイコン21には、車両2のインストルメントパネルに設けられたハザードランプ29が制御可能な状態で接続されている。
【0035】
前記ドアハンドル24は、図2に示すように、車両2のドア2aに配設されており、ユーザが車両2に乗車する際に、当該ドア2aの解錠のために操作可能になっている。
前記ロックS/W25は、前記ドアハンドル24に配設されており(図2では図示省略)、ユーザが車両2から降車する際にドア2aの施錠のために操作可能となっている。
【0036】
前記エンジンスイッチ26は、車室内の運転席の近傍(例えばインストルメントパネルやステアリングコラム等)に配設された押しボタンスイッチ装置等によって構成され、その操作によりスイッチ操作信号が装置側マイコン21に入力される。
【0037】
前記ドア錠装置27は、ドア錠を自動的に施解錠する装置であり、装置側マイコン21から解錠許可信号が入力されるとドア錠を解錠する一方、施錠許可信号が入力されるとドア錠を施錠する。また、ドア錠装置27は、ドア錠の施解錠状態を示す施解錠状態信号を装置側マイコン21に出力する。
【0038】
前記エンジン制御装置28は、図示しないセルモータに接続され、装置側マイコン21からエンジン駆動信号が入力されると同セルモータを駆動してエンジンを始動させるとともに、エンジンの動作状態を示すエンジン状態信号を装置側マイコン21に出力する。
【0039】
以上により、装置側マイコン21は、前記施解錠状態信号やエンジン状態信号に基づいて、ドア錠の施解錠状態やエンジンの動作状態を認識可能になっている。
そして、装置側マイコン21は、前記リクエスト信号に応答して携帯機10からIDコード信号が送信され、受信回路23で受信されると、該IDコード信号に含まれるIDコードと前記メモリ21aに記憶されたIDコードとの照合(車室外照合)を行い、両IDコードが一致したこと(携帯機10からのIDコードが正規のものであること)を条件として車両制御(ドア錠の施解錠操作)を許可する。
【0040】
詳しくは、図1及び図2を参照して、装置側マイコン21は、車室外検知エリアA1に送信したリクエスト信号に応答する携帯機10からのIDコード信号が受信回路23で受信され、該IDコード信号に含まれるIDコードが正規のものである場合に、即ち、車室外照合により照合OK(可)の場合に、さらにドアハンドル24が操作されたこと、又は、解錠操作コードを含む施解錠操作信号が受信回路23で受信されたことを条件として前記ドア錠装置27に解錠許可信号を出力してドア錠を解錠させる。一方、装置側マイコン21は、ドア錠の解錠状態において、ロックS/W25が操作されたこと、又は、施錠操作コードを含む施解錠操作信号が受信回路23で受信されたことを条件として、前記車室外照合を行い、該照合OKの場合に、ドア錠装置27に施錠許可信号を出力してドア錠を施錠させる。
【0041】
さらに、装置側マイコン21は、車室内検知エリアA2に送信したリクエスト信号に応答する携帯機10からのIDコード信号が受信回路23で受信され、該IDコード信号に含まれるIDコードが正規のものである場合に、即ち、車室内照合により照合OKの場合に、エンジン始動許可状態となる。さらに該状態においてブレーキペダルとともにエンジンスイッチ26が操作され、エンジンスイッチ26からスイッチ操作信号が入力されると、エンジン制御装置28にエンジン駆動信号を出力してエンジンを始動させる。即ち、装置側マイコン21は、このエンジン始動許可状態とならない限り、エンジンスイッチ26が操作されても車両2のエンジンを始動させないようにしている。
【0042】
<通信制御システム30の処理>
本実施形態の通信制御システム30によって行われる処理について、ドア錠の解錠操作を例に、図4及び図5に示すフローチャート、並びに、図6(a)及び図6(b)に示すタイムチャートに従って説明する。
【0043】
先ず、ステップS21にて、通信制御装置20において、装置側送信回路22からWAKE信号が携帯機10に送信される。即ち、図6(a)に示すように、装置側マイコン21は、装置側送信回路22を介して、ポイント(時刻)P1からポイントPn(nは自然数)まで予め設定された間欠周期及び出力強度でWAKE信号を携帯機10に送信する。
【0044】
そして、このWAKE信号が携帯機側受信回路12によって受信されると、ステップS11にて、図6(a)を参照して、携帯機側マイコン11により制御され、携帯機側送信回路13から車両2の通信制御装置20に向けて、ポイントPaでACK信号が送信される。
【0045】
次にステップS22にて、図6(a)を参照して、通信制御装置20がポイントPaでACK信号を受信するとともに、装置側マイコン21によって、当該ACK信号が予め設定された所定の閾値以上であり、且つ、所定のコードを含んでいることが確認されると、ステップS23に進む。そして、図6(a)に示すように、装置側マイコン21は、装置側送信回路22を介して携帯機10に向けてリクエストコードを含むリクエスト信号を送信する。ここで、前記所定の閾値は、前記受信した電波が環境ノイズである場合において、当該環境ノイズが原因となって前記携帯機10と通信制御装置20との間の無線通信が成立しなくなる受信レベル以上に設定されていることが好ましい。このため、携帯機10と通信制御装置20との間で通信障害が生じた場合に、電波判定手段としての装置側マイコン21と、前記RSSI回路23rとによって環境ノイズの可能性のある電波が無線通信の成立を妨害する環境ノイズである旨がさらに高い確率で特定されるようになる。
【0046】
一方、ステップS22にて、ACK信号の受信が確認できない場合は、装置側マイコン21は、ステップS27にて、ドアハンドル24の操作があったことを契機として、通信制御装置20を図5及び図6(b)に示す環境ノイズ受信モードEMに設定する。即ち、図5及び図6(b)に示すように、ドアハンドル24の操作があった時刻から予め設定された所定の時間Δt[sec]に渡って、通信制御装置20が前記環境ノイズ受信モードEMに設定される。尚、該所定の時間Δtは、環境ノイズの捕捉を確実に行う観点から、約5[sec]とすることが好ましい。
【0047】
そして、この環境ノイズ受信モードEMでは、図5を参照して、ステップS1において、先ず前記所定の時間Δt[sec]にタイマーがセットされる(タイマーオン)。そして、そのタイマーがオンの時間、換言すれば、通信制御装置20が環境ノイズ受信モードEMに設定されている時間(ステップS5でタイムアップしない間、即ち、経過時間t<Δtの間)、図6(b)のポイントPrで受信された電波に含まれる信号について、次のステップS2にて、前記RSSI回路23r(図3参照)を介して出力される受信信号強度(RSSI)が装置側マイコン21によって前記所定の閾値以上であると判定された場合に、ステップS3にて、同装置側マイコン21によって当該受信された電波がACK信号として認識できる(所定のコードが検出できる)か否かが判定される。尚、該環境ノイズ受信モードEMにおいても、前記通信制御装置20は、携帯機10からACK信号を受信すべく当該携帯機10に向け、WAKE信号の送信を継続する。
【0048】
このステップS3にて、前記受信された電波がACK信号として認識できず、環境ノイズであると判定された場合(図6(b)参照)は、ステップS6にて、報知処理、即ち、装置側マイコン21からハザードランプ29に所定の制御信号が送信され、当該ハザードランプ29(報知手段)が点滅することによって、車両2のユーザに、環境ノイズが周辺環境に存在している旨が通知される。即ち、該ユーザは、車両2に乗車しようとドアハンドル24を操作した際に、環境ノイズの存在により、携帯機10と車両2との間で無線通信が成立し難い状況にあり、このためドア2aが自動的に解錠されないことをその場で知ることができる。また、このように車両2に設けられたハザードランプ29の点滅によって通知されるので、ユーザは車両2を通じ、通信障害が環境ノイズを原因として生じている旨を直接的に知ることができるようになる。この結果、ユーザは、必要に応じ、携帯機10に組み込まれたメカニカル鍵を用いて車両2に乗車することができる。尚、前記ステップS5によってタイムアップまで環境ノイズ受信モードEMが継続される。
【0049】
一方、ステップS3にて、前記受信された電波がACK信号として認識された場合は、次のステップS4にて、ACK信号が受信されたと判定され、図4の処理フローのAに進み、通信制御システム30において、ステップS23以下の処理が行われる。
【0050】
尚、ステップS5にてタイムアップした場合は、ここでの処理(環境ノイズ受信モードEM)を一旦終了する。
図4に戻り、ステップS12において、携帯機側マイコン11は、携帯機側受信回路12を介してリクエスト信号の受信を確認すると、続くステップS13において、ポイントPbにおいて、車両2に向けてIDコード信号を送信する(図6(a)参照)。
【0051】
一方、ステップS12において、リクエスト信号の受信が確認できない場合は、ここでの処理を一旦終了する。
そして、このIDコード信号が受信回路23により受信される(図6(a)参照)と、ステップS24において、装置側マイコン21は、当該IDコード信号に含まれるIDコードとメモリ21aに記憶されたIDコードとの照合を行い、両IDコードが一致したことを条件として、ステップS25に進み、該ステップS25にて、ドアハンドル24が操作されたことを契機として、次のステップS26において、ドア錠の解錠操作を許可する。尚、ステップS25でドアハンドル24の操作が確認されない場合は、ここでの処理を一旦終了する。
【0052】
一方、ステップS24にて、両IDコードが一致しなかった場合、即ち、IDコード信号の受信が確認できない場合は、装置側マイコン21は、IDコード信号の受信が環境ノイズによって妨害されていると推定する。そして、前述したステップS27の処理及び環境ノイズ受信モードEMの設定が行われる。
【0053】
そして、該環境ノイズ受信モードEMでは、図5を参照して、ステップS1において、先ず前記所定の時間Δt[sec]にタイマーがセットされる。そして、そのタイマーがオンの時間、受信された電波に含まれる信号について、次のステップS2にて、前記RSSI回路23r(図3参照)を介して出力される受信信号強度(RSSI)が装置側マイコン21によって前記所定の閾値以上であると判定された場合に、ステップS3にて、同装置側マイコン21によって当該受信された電波がIDコード信号として認識できる(IDコードが検出できる)か否かが判定される。尚、該環境ノイズ受信モードEMにおいても、前記通信制御装置20は、携帯機10からIDコード信号を受信すべく当該携帯機10に向け、WAKE信号の送信を継続する。
【0054】
このステップS3にて、前記受信された電波がIDコード信号として認識できず、環境ノイズであると判定された場合(図6(b)参照)は、ステップS6及びステップS5において、前述と同様の処理が行われる。一方、ステップS3にて、前記受信された電波がIDコード信号として認識された場合は、次のステップS4にて、IDコード信号が受信されたと判定され、図4の処理フローのBに進み、通信制御システム30において、ステップS24以下の処理が行われる。
【0055】
以上説明したように、本実施形態の通信制御システムによれば、以下のような作用・効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、携帯機10と通信制御装置20との間で通信障害が生じた場合に、RSSI回路23rによって環境ノイズの可能性のある電波が高い確率で選別されるとともに、装置側マイコン21によって当該電波が環境ノイズであるか否かを特定することができる。しかも、受信された電波が環境ノイズである場合には、報知手段としてのハザードランプ29の点滅によってその旨がユーザに通知されるので、ユーザは通信障害が環境ノイズによるものか、又は、携帯機10や通信制御装置20等の通信機器自体の不具合によるものかを確実に知ることができるようになる。
【0056】
そしてこれにより、それら通信機器自体に不具合の原因がない場合でも、ユーザはディーラー(販売店)を通して車両メーカにそれら通信機器の修理依頼を行うことがなくなり、ユーザと車両メーカ双方に不利益となる状況が解消される。
【0057】
(2)本実施形態では、予め設定された所定の閾値が、受信した電波が環境ノイズである場合において、当該環境ノイズが原因となって携帯機10と通信制御装置20との間で無線通信が成立しなくなる受信レベル以上に設定されている。このため、携帯機10と通信制御装置20との間で通信障害が生じた場合に、RSSI回路23rによって環境ノイズの可能性のある電波が無線通信の成立を妨害する環境ノイズである旨がさらに高い確率で特定されるようになる。
【0058】
(3)本実施形態では、車両2に設けられたドアハンドル24の操作があった時点から所定の時間Δt[sec]、受信された電波が環境ノイズであるか否かの判定を行う環境ノイズ受信モードEMに設定される。このため、ユーザが車両2に設けられたドアハンドル24を操作する場合のような環境ノイズによって車両2の車載機器の制御のための通信障害が生じうる状況と、環境ノイズ受信モードEMが設定される時間とを的確に重複させることができ、通信障害を引き起こす環境ノイズの存在をさらに高い確率で特定することができるようになる。
【0059】
[第2実施形態]
本実施形態では、通信制御システム30によって行われる処理について、ドア錠の施錠操作を例に説明する。携帯機10及び通信制御装置20からなる通信制御システム30の構成及び動作については、以下に特に説明する場合を除いて、上記第1実施形態と同様であり、対応する箇所には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0060】
<通信制御システム30の処理>
以下、図7及び図5に示すフローチャート、並びに、図8(a)及び図8(b)に示すタイムチャートに従って説明する。
【0061】
先ず、ステップS201にて、車両2に設けたロックS/W25の操作があったことを契機として、次のステップS202にて、通信制御装置20において、装置側送信回路22からWAKE信号が携帯機10に送信される。即ち、図8(a)に示すように、装置側マイコン21は、装置側送信回路22を介して、ポイント(時刻)P1からポイントPn(nは自然数)まで予め設定された間欠周期及び出力強度でWAKE信号を携帯機10に送信する。
【0062】
そして、このWAKE信号が携帯機側受信回路12によって受信されると、ステップS101にて、図8(a)を参照して、携帯機側マイコン11により制御され、携帯機側送信回路13から車両2の通信制御装置20に向けて、ポイントPaでACK信号が送信される。
【0063】
次にステップS203にて、図8(a)を参照して、通信制御装置20がポイントPaでACK信号を受信するとともに、装置側マイコン21によって、当該ACK信号が前記所定の閾値以上であり、且つ、所定のコードを含んでいることが確認されると、ステップS204に進む。そして、図8(a)に示すように、装置側マイコン21は、装置側送信回路22を介して携帯機10に向けてリクエストコードを含むリクエスト信号を送信する。ここで、前記所定の閾値は、前記受信した電波が環境ノイズである場合において、当該環境ノイズが原因となって前記携帯機10と通信制御装置20との間の無線通信が成立しなくなる受信レベル以上に設定されていることが好ましい。このため、携帯機10と通信制御装置20との間で通信障害が生じた場合に、装置側マイコン21及びRSSI回路23rによって環境ノイズの可能性のある電波が無線通信の成立を妨害する環境ノイズである旨がさらに高い確率で特定されるようになる。
【0064】
一方、ステップS203にて、予め設定された所定時間Δt[sec]、ACK信号の受信が確認できない場合は(図8(b)参照)、装置側マイコン21は、通信制御装置20を図5及び図8(b)に示す環境ノイズ受信モードEMに設定する。即ち、図5及び図8(b)に示すように、ロックS/W25の操作があった時刻より所定の時間Δt経過後の時刻から所定の時間Δt[sec]に渡って、通信制御装置20が前記環境ノイズ受信モードEMに設定される。尚、該所定の時間Δtは、環境ノイズの捕捉を確実に行う観点から、約5[sec]とすることが好ましい。
【0065】
そして、この環境ノイズ受信モードEMでは、図5を参照して、ステップS1において、先ず前記所定の時間Δt[sec]にタイマーがセットされる(タイマーオン)。そして、そのタイマーがオンの時間、換言すれば、通信制御装置20が環境ノイズ受信モードEMに設定されている時間(ステップS5でタイムアップしない間、即ち、経過時間t<Δtの間)、図8(b)のポイントPrで受信された電波に含まれる信号について、次のステップS2にて、前記RSSI回路23r(図3参照)を介して出力される受信信号強度(RSSI)が装置側マイコン21によって前記所定の閾値以上であると判定された場合に、ステップS3にて、当該受信された電波がACK信号として認識できる(所定のコードが検出できる)か否かが判定される。尚、該環境ノイズ受信モードEMにおいても、前記通信制御装置20は、携帯機10からACK信号を受信すべく当該携帯機10に向け、WAKE信号の送信を継続する。
【0066】
このステップS3にて、前記受信された電波がACK信号として認識できず、環境ノイズであると判定された場合(図8(b)参照)は、ステップS6にて、報知処理、即ち、装置側マイコン21からハザードランプ29に所定の制御信号が送信され、当該ハザードランプ29が点滅することによって、車両2のユーザに、環境ノイズが周辺環境に存在している旨が通知される。即ち、該ユーザは、車両2から降車し、ドア2aを施錠しようとロックS/W25を操作した際に、環境ノイズの存在により、携帯機10と車両2との間で無線通信が成立し難い状況にあり、このためドア2aが自動的に施錠されないことをその場で知ることができる。この結果、ユーザは、必要に応じ、携帯機10に組み込まれたメカニカル鍵を用いてドア2aを施錠することができる。尚、前記ステップS5によってタイムアップまで環境ノイズ受信モードEMが継続される。
【0067】
一方、ステップS3にて、前記受信された電波がACK信号として認識された場合は、次のステップS4にて、ACK信号が受信されたと判定され、図7の処理フローのAに進み、通信制御システム30において、ステップS204以下の処理が行われる。
【0068】
尚、ステップS5にてタイムアップした場合は、ここでの処理(環境ノイズ受信モードEM)を一旦終了する。
図7に戻り、ステップS102において、携帯機側マイコン11は、携帯機側受信回路12を介してリクエスト信号の受信を確認すると、続くステップS103において、ポイントPbにおいて、車両2に向けてIDコード信号を送信する(図8(a)参照)。
【0069】
一方、ステップS102において、リクエスト信号の受信が確認できない場合は、ここでの処理を一旦終了する。
そして、このIDコード信号が受信回路23により受信される(図8(a)参照)と、ステップS205において、装置側マイコン21は、当該IDコード信号に含まれるIDコードとメモリ21aに記憶されたIDコードとの照合を行い、両IDコードが一致したことを条件として、ステップS206に進み、ドア錠の施錠操作を許可する。
【0070】
一方、ステップS205にて、両IDコードが一致しなかった場合、即ち、IDコード信号の受信が確認できない場合は、装置側マイコン21は、IDコード信号の受信が環境ノイズによって妨害されていると推定する。そして、環境ノイズ受信モードEMの設定が行われる。
【0071】
そして、該環境ノイズ受信モードEMでは、図5を参照して、ステップS1において、先ず前記所定の時間Δt[sec]にタイマーがセットされる。そして、そのタイマーがオンの時間、受信された電波に含まれる信号について、次のステップS2にて、前記RSSI回路23r(図3参照)を介して出力される受信信号強度(RSSI)が装置側マイコン21によって前記所定の閾値以上であると判定された場合に、ステップS3にて、当該受信された電波がIDコード信号として認識できる(IDコードが検出できる)か否かが判定される。尚、該環境ノイズ受信モードEMにおいても、前記通信制御装置20は、携帯機10からIDコード信号を受信すべく当該携帯機10に向け、WAKE信号の送信を継続する。
【0072】
このステップS3にて、前記受信された電波がIDコード信号として認識できず、環境ノイズであると判定された場合(図8(b)参照)は、ステップS6及びステップS5において、前述と同様の処理が行われる。一方、ステップS3にて、前記受信された電波がIDコード信号として認識された場合は、次のステップS4にて、IDコード信号が受信されたと判定され、図7の処理フローのBに進み、通信制御システム30において、ステップS205以下の処理が行われる。
【0073】
以上説明したように、本実施形態の通信制御システムによれば、第1実施形態で得られる上述した(1)及び(2)の作用・効果に加えて、さらに以下のような作用・効果を得ることができる。
【0074】
(4)本実施形態では、車両2に設けられたロックS/W25の操作があった時点より所定の時刻経過後から所定の時間Δt[sec]、受信された電波が環境ノイズであるか否かの判定を行う環境ノイズ受信モードEMに設定される。このため、ユーザが車両2に設けられたロックS/W25を操作する場合のような環境ノイズによって車両2の車載機器の制御のための通信障害が生じうる状況と、環境ノイズ受信モードEMが設定される時間とを的確に重複させることができ、通信障害を引き起こす環境ノイズの存在をさらに高い確率で特定することができるようになる。
【0075】
尚、上記各実施形態は以下のように変形してもよい。
・上記各実施形態では、ドアハンドル24又はロックS/W25の操作があったことを契機として、通信制御装置20を図5及び図6(b)に示す環境ノイズ受信モードEMに設定した。しかし、本発明の技術的思想はこれに限られず、例えば、車両2のイグニッションスイッチを押圧操作することにより当該車両2のエンジンを始動させる場合には、当該イグニッションスイッチの操作を契機として前記環境ノイズ受信モードEMに設定(遷移)し、さらに該モードEMにおいて環境ノイズを捕捉した場合には、ハザードランプ29等の報知手段により、車両2のユーザに当該環境ノイズが周辺環境に存在している旨を通知するようにしてもよい。これにより、所謂イモビライザーを使用した無線通信(約134KHzの電波を使用)による当該エンジンの始動を車両2のユーザに促すことができる。
【0076】
さらに、車両2のイグニッションスイッチを押圧操作することにより当該車両2のエンジンを停止させる場合において、イグニッションスイッチの押圧操作をトリガにして前記環境ノイズ受信モードEMに設定し、さらに該モードEMにおいて環境ノイズを捕捉した場合には、ハザードランプ29等の報知手段により、車両2のユーザに当該環境ノイズが周辺環境に存在している旨を通知するようにしてもよい。これにより、ユーザが車両2から降車し、当該車両2をドアロック(施錠)する場合において、前記ロックS/W25の操作を契機として環境ノイズ受信モードEMに設定する場合と比較して、環境ノイズを捕捉するまでの時間の短縮化、換言すれば、車両2のユーザに環境ノイズが存在している旨を通知(報知)するまでの時間の短縮化、を図ることができるようになる。
【0077】
・上記各実施形態では、セキュリティの対象物を自動車等の車両2とし、携帯機10及び通信制御装置20から構成される通信制御システム30を該車両2のドア錠を施解錠したり、エンジンを始動可能な状態とする車両制御を行うための通信制御システムとした。しかし、本発明の技術的思想はこれに限られず、セキュリティの対象物を住宅等の不動産とし、該住宅のドアに設けられたドア錠の施解錠制御に適用することも可能である。
【0078】
・上記各実施形態では、携帯機10と通信制御装置20との間の無線通信が環境ノイズによって妨害されている旨を、車両2側に設けたハザードランプ29で当該車両2のユーザに通知するようにした。しかし、これに限られず、車両2側に設けたホーンの吹鳴で通視することもできる。さらには、携帯機10側に設けたブザー等の音響装置(音の吹鳴、メッセージのアナウンス)、LED等の表示装置(光の出射)、振動装置(携帯機10の振動)などからなる報知器15(図1参照)を使用し、ユーザに通知することもできる。この場合、図5のステップS6において報知処理がなされると同時に前記通信制御装置20から報知コードを含む電波を送信し、該報知コードが携帯機10の携帯機側マイコン11で認識されたと同時に前記報知器15を制御して作動させることができる。
【0079】
・上記各実施形態では、通信制御システム30を、車両2のドア錠の施解錠制御に適用した例について説明したが、その他、該車両2のエンジンの始動を許可するためのエンジン始動制御(この場合、エンジンスイッチ26のオン操作がドアハンドル24の操作に相当する。)、アクセサリ(ACC)電源・イグニッションのオン制御(これらの場合、エンジンスイッチ26のオン操作がドアハンドル24の操作に相当する。)、携帯機10の車両2への登録操作、即ち携帯機10及び車両2にそれぞれ固有に設定された通信用コード類の登録(交換)等のその他の車両制御にも同様に適用できることは勿論である。
【0080】
さらに、前記した実施形態および変形例より把握できる技術的思想について以下に記載する。
○請求項1〜請求項4のいずれかに記載の通信制御システムにおいて、前記報知手段は、前記携帯機に設けられ、前記通信制御装置から当該携帯機に送信される報知コードに基づき、音の吹鳴、光の出射又は携帯機の振動を行う装置である通信制御システム。同構成によれば、ユーザが所持する携帯機に報知手段が設けられるので、ユーザが対象物から離間して位置し、且つ、当該対象物がユーザに視認できない状態にある場合でも、ユーザは、通信障害が環境ノイズを原因として生じている旨を直ちに知ることができるようになる。また、その旨が音の吹鳴、光の出射又は携帯機の振動によって報知されるので、携帯機がユーザに視認できない場所に収納されている場合やユーザが騒音の多い場所に存在する場合等の多種多様な状況に応じて、通信障害が環境ノイズを原因として生じている旨が的確にユーザに通知されるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の実施形態に係る通信制御システムの概略構成を示す回路ブロック図。
【図2】車両から発信される電波が携帯機により受信される車室外検知エリアA1と車室内検知エリアA2を示す模式図。
【図3】本発明の実施形態に係る通信制御装置の回路ブロック図。
【図4】本発明の第1実施形態に係る通信制御システムの動作を示すフローチャート図。
【図5】本発明の実施形態に係る環境ノイズ受信モードの処理を示すフローチャート図。
【図6】本発明の第1実施形態に係る通信制御装置で行われる無線通信を示すタイムチャート図であり、(a)は、通常の無線通信が行われる状態を示す図、(b)は、環境ノイズ受信モードにおいて環境ノイズが捕捉される状態を示す図。
【図7】本発明の第2実施形態に係る通信制御システムの動作を示すフローチャート図。
【図8】本発明の第2実施形態に係る通信制御装置で行われる無線通信を示すタイムチャート図であり、(a)は、通常の無線通信が行われる状態を示す図、(b)は、環境ノイズ受信モードにおいて環境ノイズが捕捉される状態を示す図。
【符号の説明】
【0082】
2…車両、10…携帯機、20…通信制御装置、21…装置側マイコン、23…受信機、23f…検波回路、23i…中間周波数増幅回路、23L…局部発振回路、23m…周波数混合回路、23r…RSSI回路、30…通信制御システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物のユーザにより所持され、該対象物に設けられた機器を制御するための制御信号を含む電波を送信する携帯機と、該携帯機から送信された電波を受信し、前記制御信号に基づいて前記対象物に設けられた機器を制御する通信制御装置とを具備した通信制御システムにおいて、
前記通信制御装置は、前記受信される電波に含まれる信号の強度を測定する信号強度測定手段と、
前記信号の強度が予め設定された所定の閾値以上の場合に、当該信号を含む電波が、前記対象物が位置する環境に存在し、前記携帯機と通信制御装置との間の無線通信の成立を妨げる環境ノイズであるか、又は、本来受信すべき電波であるかを判定する電波判定手段とを備え、
前記受信した電波が環境ノイズである場合において、該環境ノイズにより前記無線通信が成立し難い状況にある旨を前記ユーザに報知する報知手段をさらに具備したことを特徴とする通信制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の通信制御システムにおいて、
前記所定の閾値は、前記受信した電波が環境ノイズである場合において、当該環境ノイズが原因となって前記携帯機と通信制御装置との間の無線通信が成立しなくなる受信レベル以上に設定されている通信制御システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の通信制御システムにおいて、
前記通信制御装置は、前記対象物に設けられた所定の操作手段の操作があった時点を基準として所定の時間、前記信号強度測定手段及び電波判定手段を用いて前記受信した電波が環境ノイズであるか否かの判定を行う環境ノイズ受信モードに設定されるようにした通信制御システム。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の通信制御システムにおいて、
前記報知手段は、前記対象物に設けられ、音の吹鳴又は光の出射を行う装置である通信制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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