説明

通信制御方法及び基地局

【課題】SON技術をサポートする移動通信システムにおいて、バッテリーの状況を考慮して基地局の設定を最適化できるようにする。
【解決手段】バッテリー12−1を備え、該バッテリー12−1から供給される電力によって駆動可能な基地局10−1は、基地局10−2が備えるバッテリー12−2の蓄電残量を示すBattery Status IEを要求するためのRESOURCE STATUS REQUESTメッセージを、基地局10−2に対して送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SON技術をサポートする移動通信システムにおける通信制御方法及び基地局に関する。
【背景技術】
【0002】
移動通信システムの標準化プロジェクトである3GPP(3rd Generation Partnership Project)で標準化されているLTE(Long Term Evolution)には、SON(Self Organizing Network)と称される技術が採用されている。
【0003】
SON技術は、基地局の運用中に、人手を要さずに基地局の設定を自動で最適化するものである(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
SON技術の一つとして、複数の基地局において負荷の偏りがある場合に、各基地局のカバレッジを調整することによって、該複数の基地局間で負荷を分散(平準化)するMLB(Mobility Load Balancing)と称される技術がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】3GPP技術レポート 「TR 36.902 V9.1.0」 2010年3月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、3GPP規格で規定されているSON技術においては、昨今の大規模停電等に代表される電力事情が考慮されていない。よって、そのような電力事情を考慮して基地局間の負荷分散制御を行うことができないという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、SON技術をサポートする移動通信システムにおいて、上述の課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明は以下のような特徴を有している。
【0009】
本発明に係る通信制御方法の特徴は、第1のバッテリー(バッテリー12−1)を備え、該第1のバッテリーから供給される電力によって駆動可能な基地局(基地局10−1)における通信制御方法であって、他の基地局(基地局10−2)が備える第2のバッテリー(バッテリー12−2)の蓄電残量を示す蓄電残量情報を要求するための蓄電残量要求を、前記他の基地局に対して送信する送信ステップを含む、ことを要旨とする。
【0010】
このような特徴によれば、他の基地局への要求により、該他の基地局が備える第2のバッテリーの蓄電残量を示す蓄電残量情報を得ることができる。これにより、自局が備える第1のバッテリーの蓄電残量と他の基地局が備える第2のバッテリーの蓄電残量とを考慮してSONを実施することができる。
【0011】
本発明に係る通信制御方法の他の特徴は、上述した特徴において、前記送信ステップは、前記第1のバッテリーの蓄電残量が閾値未満になった場合に、前記蓄電残量要求を前記他の基地局に対して送信し、当該通信制御方法は、前記第1のバッテリーの蓄電残量が前記閾値以上である場合に、前記蓄電残量要求を送信しないよう制御するステップをさらに含む、ことを要旨とする。
【0012】
このような特徴によれば、自局が備える第1のバッテリーの蓄電残量が多く、自局の負荷を減らす負荷分散制御を行う必要がない場合には、他の基地局への蓄電残量要求を送信しないことによって、基地局間のシグナリングを抑制し、基地局間のトラフィックを削減できる。
【0013】
本発明に係る通信制御方法の他の特徴は、上述した特徴において、前記蓄電残量要求に応じて前記他の基地局から送信された前記蓄電残量情報を受信する受信ステップと、前記第1のバッテリーの蓄電残量と、前記受信ステップで受信した前記蓄電残量情報によって示される前記第2のバッテリーの蓄電残量と、の比較の結果に応じて、前記基地局及び前記他の基地局のそれぞれの負荷を調整するための処理を行う調整ステップと、をさらに含むことを要旨とする。
【0014】
このような特徴によれば、自局が備える第1のバッテリーの蓄電残量と他の基地局が備える第2のバッテリーの蓄電残量とを比較し、各蓄電残量を平準化するように負荷分散制御を行うことができる。その結果、バッテリーの蓄電残量が不足することによって通信が不能になるといった問題の発生を抑制できる。
【0015】
本発明に係る通信制御方法の他の特徴は、上述した特徴において、前記調整ステップは、前記第1のバッテリーの蓄電残量が、前記受信ステップで受信した前記蓄電残量情報によって示される前記第2のバッテリーの蓄電残量よりも少ないことに応じて、前記基地局の負荷を減らすとともに前記他の基地局の負荷を増やすための処理を行うステップを含む、ことを要旨とする。
【0016】
このような特徴によれば、自局が備える第1のバッテリーと比して、他の基地局が備える第2のバッテリーの蓄電残量に余裕がある場合には、自局の負荷の一部を該他の基地局に転嫁することによって、自局の消費電力を削減できる。これにより、自局が備える第1のバッテリーの蓄電残量が不足することによって通信が不能になるといった問題の発生を抑制できる。
【0017】
本発明に係る通信制御方法の他の特徴は、上述した特徴において、前記閾値は、前記第1のバッテリーの過放電を示す下限値よりも高い値に設定されている、ことを要旨とする。
【0018】
このような特徴によれば、自局が備える第1のバッテリーが過放電の状態になる手前の段階で、負荷分散制御を開始することが可能になるため、自局が備える第1のバッテリーが過放電の状態になることを防止できる。
【0019】
本発明に係る基地局の特徴は、第1のバッテリーを備え、該第1のバッテリーから供給される電力によって駆動可能な基地局であって、他の基地局が備える第2のバッテリーの蓄電残量を示す蓄電残量情報を要求するための蓄電残量要求を、前記他の基地局に対して送信するように構成されている、ことを要旨とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、バッテリーの状況を考慮して基地局間の負荷分散制御を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る移動通信システムの全体構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る基地局のブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係る蓄電残量情報の送受信に係る基地局間シグナリングのシーケンス図である(その1)。
【図4】本発明の実施形態に係る蓄電残量情報の送受信に係る基地局間シグナリングのシーケンス図である(その2)。
【図5】本発明の実施形態に係るRESOURCE STATUS REQUESTメッセージの情報要素を説明するための図である。
【図6】本発明の実施形態に係るRESOURCE STATUS UPDATEメッセージの情報要素を説明するための図である。
【図7】本発明の実施形態に係る移動通信システムの動作シーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の実施形態における図面において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付す。
【0023】
(1)全体システム構成
図1は、本実施形態に係る移動通信システム1の全体構成図である。移動通信システム1は、LTE(3GPPリリース8、9)又はLTE Advanced(3GPPリリース10以降)に基づいて構成される。
【0024】
図1に示すように、移動通信システム1は、無線アクセスネットワークであるE−UTRAN(Evolved−UMTS Terrestrial Radio Access Network)を有する。E−UTRANは、複数の基地局(eNB;evolved Node B)10を含む。
【0025】
複数の基地局10のそれぞれは、系統からの電力によって駆動可能である。また、詳細については後述するが、基地局10は、バッテリーを含んで構成されており、系統からの電力供給が停止(すなわち、停電)しても、バッテリーに蓄電されている電力によって駆動(自立運転)できるように構成される。
【0026】
また、複数の基地局10のそれぞれは、1又は複数のセルを形成する。ここで、セルとは、無線端末(UE;User Equipment)20が通信可能な無線通信エリアの最小単位である。
【0027】
無線端末20-1は、基地局10-1が形成するセルに在圏しており、基地局10-1との通信を行う。無線端末20-2は、基地局10-2が形成するセルに在圏しており、基地局10-2との通信を行う。無線端末20-3は、基地局10-3が形成するセルに在圏しており、基地局10-3との通信を行う。
【0028】
無線端末20は、移動等に伴って、より無線状態の良好な基地局への切り替えを行う。このような基地局切り替えは、接続状態においてはハンドオーバと称され、アイドル状態においてはセル再選択と称される。本移動通信システムでは、無線端末20のハンドオーバを行うか否かの決定権、及びハンドオーバ先の決定権は、無線端末20の接続先の基地局が持つ。
【0029】
移動通信システム1は、SON技術の一つであるMLB(Mobility Load Balancing)技術をサポートしており、基地局間の負荷を平準化するために、基地局間で送受信される負荷情報に基づいて、セル範囲(カバレッジ)を調整可能に構成される。
【0030】
移動通信システム1においては、(相互に隣接する)基地局10を相互接続するためのX2インターフェースが設定される。基地局10は、X2インターフェースを用いて、自局に隣接する他の基地局10との基地局間通信を行うように構成される。
【0031】
さらに、移動通信システム1は、コアネットワークであるEPC(Evolved Packet Core)を有する。
【0032】
EPCは、複数の移動管理装置(MME;Mobility Management Entity)/ゲートウェイ装置(S−GW;Serving Gateway)30を含む。移動管理装置は、無線端末20に対する各種モビリティ制御を行うように構成される。ゲートウェイ装置は、無線端末20が送受信するユーザデータの転送制御を行うように構成される。
【0033】
基地局10とEPCとの間には、各基地局10をEPCに接続するためのS1インターフェースが設定される。基地局10は、S1インターフェースを用いて、EPCとの通信を行うように構成される。
【0034】
(2)基地局の構成
次に、基地局10の構成を説明する。図2は、基地局10のブロック図である。図2において、各ブロック間における太線は電力ラインを示し、細線は通信信号ラインを示し、破線は制御信号ラインを示す。また、系統とは電力会社の配電系統を指し、バックホールネットワークとは通信事業者が構築する通信インフラネットワークを指す。
【0035】
図2に示すように、基地局10は、太陽光発電装置(以下、PVと称する)11と、バッテリー12と、通信部13と、電力伝達手段14と、測定部15と、記憶部16と、制御部17とを有する。本実施形態では、バッテリー12、通信部13、電力伝達手段14、測定部15、記憶部16、制御部17は、基地局本体(ケース体)18に設けられる。
【0036】
PV11は、太陽光を受けて発電し、発電により得られた電力を出力する。本実施形態では、PV11は、基地局本体18とは別体で構成されているが、基地局本体18と一体に構成されてもよい。
【0037】
なお、本実施形態では、基地局10がPV11を搭載する構成を主として説明するが、基地局10は必ずしもPV11を搭載していなくてもよい。
【0038】
通信部13は、無線端末20との無線通信を行うための無線通信部131と、ネットワーク側(EPCや他の基地局)との通信を行うためのネットワーク通信部132とを含む。
【0039】
バッテリー12は、PV11で発電された電力と系統からの電力とを蓄電し、蓄電した電力を制御部17の制御下で放電する。バッテリー12は、例えばリチウム系のものであるが、電気自動車で使われたリサイクル型のものであってもよい。なお、PV11を搭載しない基地局の場合、バッテリー12は、系統からの電力を蓄電するUPS(Uninterruptible Power Supply)システムのタイプでもよい。
【0040】
電力伝達手段14は、基地局10の各ブロックに対して、系統からの電力を伝達するための経路(第1経路)141と、バッテリー12からの電力を伝達するための経路(第2経路)142と、PVからの電力を伝達するための経路(第3経路)143と、各経路を選択的にスイッチングするためのスイッチ(以下、SWと称する)144と、を含む。
【0041】
図2においては、SW144から通信部13へ電力を伝達するための経路を図示しているが、実際には、SW144から他のブロック(制御部17等)へ電力を伝達するための各経路も設けられる。
【0042】
測定部15は、制御部17の制御下で、バッテリー12に蓄電されている電力(以下、蓄電残量と称する)を測定する。測定部15は、蓄電残量を測定すると、測定結果を記憶部に出力する。
【0043】
記憶部16は、制御部17による制御に用いられる各種の情報を記憶する。本実施形態では、記憶部16は、測定部15による蓄電残量の測定結果を記憶する。
【0044】
制御部17は、基地局10の各種の機能を制御する。本実施形態では、制御部17は、通信制御部171と電力制御部172とを有する。
【0045】
通信制御部171は、通信部13を制御する。詳細には、通信制御部171は、無線端末20との無線通信(無線通信部131による通信)と、X2インターフェース及びS1インターフェースを用いた通信(ネットワーク通信部132による通信)とを制御する。
【0046】
通信制御部171は、バッテリー12の蓄電残量を記憶部16から取得し、バッテリー12の蓄電残量を閾値Aと比較する。閾値Aは、バッテリー12の過放電を示す下限値よりも高い値であり、記憶部16に予め記憶されている。そして、通信制御部171は、バッテリー12の蓄電残量が閾値A未満になった場合に、他の基地局が備えるバッテリーの蓄電残量を示す蓄電残量情報を要求するための蓄電残量要求を、該他の基地局に対して送信するようネットワーク通信部132を制御する。これに対し、通信制御部171は、バッテリー12の蓄電残量が閾値A以上である場合には、蓄電残量要求を他の基地局に対して送信しないようネットワーク通信部132を制御する。
【0047】
また、通信制御部171は、他の基地局からの蓄電残量要求をネットワーク通信部132が受信した場合には、以下のような制御を行う。他の基地局からの蓄電残量要求をネットワーク通信部132が受信すると、通信制御部171は、バッテリー12の蓄電残量を示す情報(以下、蓄電残量情報と称する)取得し、取得した蓄電残量情報を、該他の基地局に送信するようネットワーク通信部132を制御する。
【0048】
ここで、蓄電残量情報とは、バッテリー12の蓄電残量の値(ワット数(W))であってもよく、バッテリー12の蓄電残量の度合いを示す指標(例えば、Fullが“11”、Middleが“10”、Lowが“01”、Emptyが“00”)であってもよい。
【0049】
さらに、通信制御部171は、他の基地局からの蓄電残量情報をネットワーク通信部132が受信すると、受信した蓄電残量情報に基づいて、自局の負荷及び/又は該他の基地局の負荷を調整するための制御を行う。
【0050】
本実施形態では、通信制御部171は、他の基地局の蓄電残量と自局の蓄電残量とを比較した結果、該自局の蓄電残量の方が少ないと判断した場合、自局が収容すべき無線端末20の数を減らすように負荷分散制御を行う。例えば、ハンドオーバ先として該他の基地局が優先されるようにハンドオーバ処理を行う、又はハンドオーバパラメータを調整する。あるいは、待ち受け先として該他の基地局が優先されるようにセル再選択パラメータを調整してもよい。
【0051】
電力制御部172は、SW144及びバッテリー12を制御する。電力制御部172は、バッテリー12から各ブロックへ電力を供給するようSW144を制御する。基地局10がPV11を搭載する場合、バッテリー12だけでなく、PV11からも電力を供給するよう制御する。この場合、バッテリー12の放電制御については、時間帯や気象情報等に基づいてPV11による発電電力の不足分をバッテリー12で賄うよう制御することが望ましい。
【0052】
電力制御部172は、バッテリー12の蓄電残量の測定を開始するよう測定部15を制御する。例えば、測定は周期的(例えば、20msec〜数分毎)に実行される。
【0053】
電力制御部172は、記憶部16を制御する。電力制御部172は、蓄電残量の測定結果を記憶部16に記憶させる。電力制御部172は、測定がなされる度に、記憶部16に記憶される蓄電残量情報を更新する。記憶部16に記憶された蓄電残量情報は、上述したように、通信制御部171で利用される。
【0054】
電力制御部172は、バッテリー12の充放電スケジュールや、基地局10の各ブロックに対する電力供給スケジュールを決定する。例えば、PV11、バッテリー12、および系統からの電力によって駆動する基地局10の場合、電力制御部172は、昼時間帯における電力価格よりも低価格となる深夜時間帯の電力をバッテリー12に充電し、例えば、午前7時からバッテリー12に蓄電された電力によって基地局10が駆動するように制御する。このとき、電力制御部172は、PV11で発電された電力も適宜基地局10が消費するように制御する。また、電力制御部172は、バッテリー12およびPV11からの電力が不足する場合には、緊急的に系統からの電力によって基地局10が駆動するように制御する。このような基地局10の場合には、バッテリー12がメイン電源の一つとなる。
【0055】
(3)メッセージ構成
次に、基地局10間で送受信されるメッセージの構成を説明する。図3及び図4は、蓄電残量情報の送受信に係る基地局間シグナリングのシーケンス図である。図3及び図4においては、相互に隣接する各基地局10の一方をeNBと表記し、他方をeNBと表記している。
【0056】
図3に示すように、eNBは、X2インターフェースを用いて、蓄電残量情報の送信要求(蓄電残量要求)を含むRESOURCE STATUS REQUESTメッセージをeNBに送信する。eNBは、X2インターフェースを用いて、蓄電残量要求を含むRESOURCE STATUS REQUESTメッセージを受信する。
【0057】
eNBは、X2インターフェースを用いて、RESOURCE STATUS REQUESTメッセージに対する肯定応答であるRESOURCE STATUS RESPONSEメッセージをeNBに送信する。eNBは、X2インターフェースを用いて、RESOURCE STATUS RESPONSEメッセージを受信する。
【0058】
なお、RESOURCE STATUS REQUESTメッセージは、複数の測定対象項目の中から1つ又は複数を指定可能に構成されているが、指定された測定対象項目の何れも実行できない場合等においては、RESOURCE STATUS RESPONSEメッセージに代えてResource Status Failureメッセージが送信される。
【0059】
図4に示すように、RESOURCE STATUS RESPONSEメッセージを送信したeNBは、RESOURCE STATUS REQUESTメッセージで指定された条件に従って測定を行い、測定結果を示すRESOURCE STATUS UPDATEメッセージを定期的にeNBに送信する。
【0060】
図5は、RESOURCE STATUS REQUESTメッセージの情報要素(IE)を説明するための図である。図5の下線部以外は、3GPP規格で規定されるRESOURCE STATUS REQUESTメッセージのIEと同じである(例えば、3GPP TS 36.423 V10.1.0 「9.1.2.11 RESOURCE STATUS REQUEST」参照)。
【0061】
図5に示すように、RESOURCE STATUS REQUESTメッセージは、測定対象項目を指定するためのReport Characteristicsにおいて、蓄電残量情報を指定可能に構成されている点が現行のRESOURCE STATUS REQUESTメッセージとは異なる。
【0062】
詳細には、Report Characteristicsは、ビットの位置が測定対象項目と対応付けられたビット列として構成されており、1ビット目がPRB Periodic、2ビット目がTNL load Ind Periodic、3ビット目がHW Load Ind Periodic、4ビット目がComposite Available Capacity Periodic、5ビット目がABS Status Periodic、6ビット目がBattery Status Periodicに対応する。ここで、Battery Status Periodicに対応するビット(6ビット目)が“1”であることは、Battery Statusの測定・送信を要求することに相当する。
【0063】
ここで、Battery Statusは蓄電残量情報に相当する。なお、PRBは時間周波数リソースの割り当て単位であるPRB(Physical Resource Block)の使用数を示し、TNL load Indは基地局とコアネットワークとの間のバックホールの負荷を示し、HW Load Indは基地局のハードウェア負荷を示し、Composite Available Capacityは基地局の相対的な通信容量を示す指標である容量クラスとその中で利用可能な通信容量の割合を示す。また、RESOURCE STATUS REQUESTメッセージは、測定結果の報告(送信)を行う周期をReporting Periodicityで指定可能に構成されている。
【0064】
図6は、RESOURCE STATUS UPDATEメッセージのIEを説明するための図である。図6の下線部以外は、3GPP規格で規定されるRESOURCE STATUS UPDATEメッセージのIEと同じである(例えば、3GPP TS 36.423 V10.1.0 「RESOURCE STATUS UPDATE」参照)。
【0065】
図6に示すように、RESOURCE STATUS UPDATEメッセージは、現行のRESOURCE STATUS UPDATEメッセージのIEに加えて、蓄電残量情報としてのBattery Status IEを含む。
【0066】
なお、RESOURCE STATUS UPDATEメッセージは、セル単位で送信される。このため、1つの基地局が複数のセルを形成する場合であって、複数のセル毎に異なるバッテリー12を搭載する場合には、セル毎に異なるBattery Status IEを送信できる。
【0067】
(4)移動通信システムの動作
次に、本実施形態に係る移動通信システム1の動作を説明する。図7は、移動通信システム1の動作シーケンス図である。以下では、基地局10−1が備えるバッテリーをバッテリー12−1と称し、基地局10−2が備えるバッテリーをバッテリー12−2と称する。なお、基地局10−2は、基地局10−1に隣接する基地局である。
【0068】
図7に示すように、ステップS101において、基地局10−1は、バッテリー12−1の蓄電残量を測定する。
【0069】
ステップS102において、基地局10−2は、バッテリー12−2の蓄電残量を測定する。
【0070】
ステップS103において、基地局10−1は、ステップS101で測定したバッテリー12−1の蓄電残量を閾値Aと比較する。基地局10−1の蓄電残量が閾値A以上である場合には、ステップS101の処理に戻る。
【0071】
一方、基地局10−1の蓄電残量が閾値A未満である場合には、ステップS104において、基地局10−1は、基地局10−2に対して、Battery Statusを指定したReport Characteristicsを含んだResource Status RequestメッセージをX2インターフェース上で送信する。基地局10−2は、該Resource Status RequestメッセージをX2インターフェース上で受信する。
【0072】
ステップS105において、基地局10−2は、バッテリー12−2の蓄電残量を閾値Bと比較する。バッテリー12−2の蓄電残量が閾値B未満である場合には、ステップS106において、基地局10−2は、基地局10−1に対して、Resource Status FailureメッセージをX2インターフェース上で送信する。基地局10−1は、Resource Status FailureメッセージをX2インターフェース上で受信する。その後、ステップS102の処理に戻る。
【0073】
一方、バッテリー12−2の蓄電残量が閾値B以上である場合には、ステップS107において、基地局10−2は、基地局10−1に対して、Resource Status ResponseメッセージをX2インターフェース上で送信する。基地局10−1は、Resource Status ResponseメッセージをX2インターフェース上で受信する。
【0074】
ステップS107におけるResource Status Responseメッセージの送受信の後、ステップS108において、基地局10−1は、バッテリー12−1の蓄電残量を測定する。一方、ステップS109において、基地局10−2は、バッテリー12−2の蓄電残量を測定する。
【0075】
ステップS110において、基地局10−2は、基地局10−1に対して、周期的に、Battery Status IEを含んだResource Status UpdateメッセージをX2インターフェース上で送信する。基地局10−1は、Battery Status IEを含んだResource Status UpdateメッセージをX2インターフェース上で受信する。
【0076】
ステップS111において、基地局10−1は、バッテリー12−1の蓄電残量と、Battery Status IEによって示されるバッテリー12−2の蓄電残量とを比較する。バッテリー12−1の蓄電残量が、バッテリー12−2の蓄電残量以上である場合には、ステップS108の処理に戻る。
【0077】
一方、基地局10−1の蓄電残量が、基地局10−2の蓄電残量未満である場合には、ステップS112において、基地局10−1は、基地局10−1の負荷を減らすとともに基地局10−2の負荷を増やすための処理を行う。例えば、基地局10−1は、ハンドオーバパラメータとしてのオフセット値を調整する。ハンドオーバパラメータは、基地局10においてハンドオーバの判断に使用される。あるいは、ハンドオーバパラメータは、基地局10から無線端末20に通知されて、無線端末20においてメジャメントレポートの送信判断に使用される。
【0078】
ここで、オフセット値の使用例を説明する。無線端末20が基地局10−1及び基地局10−2のそれぞれから無線信号を受信可能な場合において、基地局10−1に対応する受信電力(以下、RSRP1)と、基地局10−2に対応する受信電力(以下、RSRP2)とを比較する前に、RSRP2を高く補正するためのオフセット値をRSRP2に加える。こうすることで、オフセット後のRSRP2がRSRP1を上回る可能性が高まる。よって、基地局10−2が優先的に接続先(ハンドオーバ先)として選択されるようになり、基地局10−1のカバレッジを縮小するとともに、基地局10−2のカバレッジを拡大できる。なお、不要なハンドオーバを避けるために、オフセット値は、隣接する基地局の対で共有する。
【0079】
ステップS113において、基地局10−1は、基地局10−2に対して、ステップS112で決定したオフセット値を含んだMobility Change RequestメッセージをX2インターフェース上で送信する。基地局10−2は、該オフセット値を含んだMobility Change RequestメッセージをX2インターフェース上で受信する。
【0080】
ステップS114において、基地局10−2は、基地局10−1に対して、Mobility Change Requestメッセージに対する肯定応答であるMobility Change AcknowledgeメッセージをX2インターフェース上で送信する。基地局10−1は、Mobility Change AcknowledgeメッセージをX2インターフェース上で受信する。
【0081】
ステップS115において、基地局10−1は、ハンドオーバパラメータとしてのオフセット値を設定する。ステップS116において、基地局10−2は、ステップS113で受信したMobility Change Requestメッセージに含まれる、ハンドオーバパラメータとしてのオフセット値を設定する。
【0082】
なお、ステップS116以降において、バッテリー12−1の蓄電残量が閾値A以上に復帰した場合には、基地局10−1は、基地局10−2に対して、Battery Statusの測定・送信の停止を要求するためのRegistration Request IE(図5参照)を含んだResource Status RequestメッセージをX2インターフェース上で送信する。基地局10−2は、該Resource Status RequestメッセージをX2インターフェース上で受信し、Resource Status Updateメッセージの送信を停止する。
【0083】
(5)実施形態の効果
以上説明したように、基地局10−1は、基地局10−2への要求により、該基地局10−2が備えるバッテリー12−2の蓄電残量を示すBattery Status IEを得ることができる。これにより、基地局10−1が備えるバッテリー12−1の蓄電残量と基地局10−2が備えるバッテリー12−2の蓄電残量とを考慮してSONを実施することができる。
【0084】
本実施形態では、基地局10−1は、バッテリー12−1の蓄電残量が閾値A以上である場合に、Battery Status IEを要求するためのRESOURCE STATUS REQUESTメッセージを送信しないよう制御する。これにより、基地局10−1が備えるバッテリー12−1の蓄電残量が多く、基地局10−1の負荷を減らす負荷分散制御を行う必要がない場合には、基地局10−2へのRESOURCE STATUS REQUESTメッセージを送信しないことによって、基地局間のシグナリングを抑制し、基地局間のトラフィックを削減できる。
【0085】
本実施形態では、基地局10−1は、バッテリー12−1の蓄電残量と基地局10−2が備えるバッテリー12−2の蓄電残量とを比較し、各蓄電残量を平準化するように負荷分散制御を行うことができる。その結果、バッテリーの蓄電残量が不足することによって通信が不能になるといった問題の発生を抑制できる。
【0086】
本実施形態では、基地局10−1が備えるバッテリー12−1と比して、基地局10−2が備えるバッテリー12−2の蓄電残量に余裕がある場合には、基地局10−1の負荷の一部を該基地局10−2に転嫁することによって、基地局10−1の消費電力を削減できる。これにより、基地局10−1が備えるバッテリー12−1の蓄電残量が不足することによって通信が不能になるといった問題の発生を抑制できる。
【0087】
本実施形態では、閾値Aは、バッテリー12−1の過放電を示す下限値よりも高い値に設定されているため、バッテリー12−1が過放電の状態になる手前で、負荷分散制御を開始することが可能になる。よって、基地局10−1が備えるバッテリー12−1が過放電の状態になることを防止できる。
【0088】
本実施形態では、新たなメッセージを定義することなく、3GPP規格で規定されるメッセージに蓄電残量情報のIEを追加することによって、現行規格との互換性を保つことができる。
【0089】
(6)その他の実施形態
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
【0090】
上述した実施形態では、基地局10−1は、自局の蓄電残量が閾値A未満になった場合に、Battery Status IEを要求するためのRESOURCE STATUS REQUESTメッセージを基地局10−2へ送信していた。しかしながら、このような閾値Aとの比較に限らず、基地局10−1の蓄電残量が急激な低下を示した(単位時間内の蓄電残量の低下量が所定量を超えた)場合に、該蓄電残量が近い将来不足すると予測して、Battery Status IEを要求するためのRESOURCE STATUS REQUESTメッセージを基地局10−2へ送信してもよい。
【0091】
上述した実施形態では、X2インターフェース上でメッセージを送受信する一例を説明したが、S1インターフェース上でメッセージを送受信してもよい。この場合、MMEが、基地局10間で送受信されるメッセージを中継してもよい。
【0092】
上述した実施形態では、基地局10−1が収容すべき無線端末20の数を減らすように負荷分散制御を行っていたが、以下のような制御でもよい。詳細には、基地局10−1は、基地局10−2の蓄電残量と自局の蓄電残量とを比較した結果、基地局10−2の蓄電残量の方が少ないと判断した場合、自局が収容すべき無線端末20の数を増やす負荷分散制御を行ってもよい。例えば、ハンドオーバ先として自局が優先されるようにハンドオーバ処理を行う、又はハンドオーバパラメータを調整する。あるいは、待ち受け先として自局が優先されるようにセル再選択パラメータを調整してもよい。
【0093】
このように本発明は、ここでは記載していない様々な実施形態等を包含するということを理解すべきである。
【符号の説明】
【0094】
1…移動通信システム、10…基地局、11…PV、12…バッテリー、13…通信部、14…電力伝達手段、15…測定部、16…記憶部、17…制御部、18…基地局本体、20…無線端末、131…無線通信部、132…ネットワーク通信部、144…SW、171…通信制御部、172…電力制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のバッテリーを備え、該第1のバッテリーから供給される電力によって駆動可能な基地局における通信制御方法であって、
他の基地局が備える第2のバッテリーの蓄電残量を示す蓄電残量情報を要求するための蓄電残量要求を、前記他の基地局に対して送信する送信ステップを含む、ことを特徴とする通信制御方法。
【請求項2】
前記送信ステップは、前記第1のバッテリーの蓄電残量が閾値未満になった場合に、前記蓄電残量要求を前記他の基地局に対して送信し、
当該通信制御方法は、前記第1のバッテリーの蓄電残量が前記閾値以上である場合に、前記蓄電残量要求を送信しないよう制御するステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の通信制御方法。
【請求項3】
前記蓄電残量要求に応じて前記他の基地局から送信された前記蓄電残量情報を受信する受信ステップと、
前記第1のバッテリーの蓄電残量と、前記受信ステップで受信した前記蓄電残量情報によって示される前記第2のバッテリーの蓄電残量と、の比較の結果に応じて、前記基地局及び前記他の基地局のそれぞれの負荷を調整するための処理を行う調整ステップと、
をさらに含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の通信制御方法。
【請求項4】
前記調整ステップは、前記第1のバッテリーの蓄電残量が、前記受信ステップで受信した前記蓄電残量情報によって示される前記第2のバッテリーの蓄電残量よりも少ないことに応じて、前記基地局の負荷を減らすとともに前記他の基地局の負荷を増やすための処理を行うステップを含む、ことを特徴とする請求項3に記載の通信制御方法。
【請求項5】
前記閾値は、前記第1のバッテリーの過放電を示す下限値よりも高い値に設定されている、ことを特徴とする請求項2に記載の通信制御方法。
【請求項6】
第1のバッテリーを備え、該第1のバッテリーから供給される電力によって駆動可能な基地局であって、
他の基地局が備える第2のバッテリーの蓄電残量を示す蓄電残量情報を要求するための蓄電残量要求を、前記他の基地局に対して送信するように構成されている、ことを特徴とする基地局。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−21428(P2013−21428A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151590(P2011−151590)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】