説明

通信制御装置及び通信制御システム

【課題】既存の非IMS端末をIMS対応のシステムに接続させることで、端末更新のコスト及び網側の設備投資を抑えることができる通信制御装置及び通信制御システムを提供すること。
【解決手段】ユーザ端末からのセッション制御メッセージまたは受信ポートに基づいて、当該ユーザ端末の端末種別情報としてIMS端末6かVoIP端末7かを保持する端末種別記憶部22と、端末種別記憶部22に記憶されたVoIP端末7との間の送受信信号については、IMS信号フォーマットとVoIP信号フォーマットとを相互にフォーマット変換して中継し、端末種別記憶部22に記憶されたIMS端末6との送受信信号については、フォーマット変換を行わずに中継する中継部26とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IMS(IP Multimedia Subsystem)で使用される通信制御装置及び通信制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
固定通信、移動通信を問わず音声や動画等のIPベースのマルチメディアサービスを提供することを目的としてIMSが規定されている。IMSは、IP電話等で使用されるSIP(Session Initiation Protocol)を用いて、セッション制御が行われる。このIMSのセッション制御では、P−CSCF(Proxy Call Session Control Function)、S−CSCF(Serving Call Session Control Function)、I−CSCF(Interrogating Call Session Control Function)と呼ばれる3つのセッション制御機能により、端末間の通信セッションの設定や解放、SIP信号の中継等が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−206766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、現在までに、インターネットの急速な発展や、コストの低減等によりIP電話が普及している。IP電話を使用したVoIP(Voice over IP)システムでは、SBC(Session Border Controller)と呼ばれるゲートウェイ装置やC5SS(Class 5 Soft Switch)といったセッション制御装置を介してセッション制御が行われる。このSBCやC5SSとVoIP端末や後段の中継装置との間のインターフェースは、通信事業者毎に異なっている。このため、VoIP端末は、通信事業者の仕様を満たしたものが用いられている。
【0005】
一方、上記したIMSでは、ユーザ端末、P−CSCF、I−CSCF、S−CSCF間のインターフェースが厳密に定められている。このため、ユーザ端末は、IMSの仕様を満たしたものしか用いることができない。したがって、既存のVoIPシステムからIMSに移行するためには、エンドユーザのユーザ端末をVoIP端末からIMS端末に入れ替えなければならず、端末更新のコストがかかる上、ユーザに設備変更を意識させてしまっていた。
【0006】
また、網側でも、既存のVoIPシステムで提供している全てのサービスを、IMSに移行させる必要があった。さらに、IMSの導入の際には、既存のVoIPシステムを残しつつ、IMSの設備を併存させるのが一般的であり、既存のVoIPシステム及びIMSの設備を2重に設けなければならなかった。このように、既存のVoIPシステムからIMSに移行する際には、網側の初期の設備投資も増大するという問題があった。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、既存の非IMS端末をIMS対応のシステムに接続させることで、端末更新のコスト及び網側の設備投資を抑えることができる通信制御装置及び通信制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の通信制御装置は、IMS端末と非IMS端末とを含むユーザ端末についてIMS対応のシステムでの通信制御を行う通信制御装置であって、前記ユーザ端末からのユーザ登録メッセージの内容または受信ポートに基づいて、当該ユーザ端末の端末種別情報としてIMS端末か非IMS端末かを保持する端末種別記憶部と、前記端末種別記憶部に記憶された非IMS端末との間の送受信信号については、IMS信号フォーマットと非IMS信号フォーマットとを相互にフォーマット変換して中継し、前記端末種別記憶部に記憶されたIMS端末との送受信信号については、前記フォーマット変換を行わずに中継する中継部とを備えたことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、通信制御装置と非IMS端末との間の送受信信号は、IMS信号フォーマットと非IMS信号フォーマットとに相互にフォーマット変換して中継されるため、非IMS端末をIMS対応のシステムに接続させることができる。これにより、既存の非IMS対応のシステムからIMS対応のシステムに移行する際に、ユーザ端末を非IMS端末からIMS端末に入れ替える必要がない。よって、端末更新のコストを無くすことができると共に、ユーザに網側の設備変更を意識させることがない。また、非IMS端末がIMS対応のシステムに接続されるため、既存の非IMS対応のシステムの設備を撤去することができる。このため、IMS対応のシステム及び非IMS対応のシステムの設備を2重に設けることなく、非IMS対応のシステムからIMS対応のシステムに段階的に移行することができ、網側の設備投資を低減することができる。
【0010】
また本発明は、上記通信制御装置において、前記中継部は、前記ユーザ端末について非IMS対応のシステムとの中継をさらに行っており、前記非IMS対応のシステムとの中継時に、前記端末種別記憶部に記憶された非IMS端末との間の送受信信号については、前記フォーマット変換を行わずに中継し、前記端末種別記憶部に記憶されたIMS端末との間の送受信信号については、前記フォーマット変換して中継することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、非IMS端末をIMS対応のシステム及び非IMS対応のシステムに接続させることができる。また、通信制御装置とIMS端末との間の送受信信号は、IMS信号フォーマットと非IMS信号フォーマットとに相互にフォーマット変換して中継されるため、IMS端末をIMS対応のシステム及び非IMS対応のシステムに接続させることができる。
【0012】
また本発明は、上記通信制御装置において、前記ユーザ登録メッセージを、SIPに準拠するREGISTERメッセージとすることができる。
【0013】
また本発明は、上記通信制御装置において、前記送受信信号は、SIPに準拠するREGISTER、INVITE、またはSUBSCRIBEのリクエストメッセージであり、前記中継部は、前記端末種別記憶部に記憶された非IMS端末から受信したリクエストメッセージに基づいて認証情報を生成し、当該リクエストメッセージに認証情報を付加することでフォーマット変換することができる。
【0014】
また本発明は、上記通信制御装置において、前記送受信信号は、SIPに準拠するREGISTER、INVITE、またはSUBSCRIBEのリクエストメッセージまたはINVITE、またはSUBSCRIBEのリクエストメッセージに対する応答メッセージであり、前記中継部は、前記端末種別記憶部に記憶された非IMS端末との間のリクエストメッセージまたは応答メッセージに、当該非IMS端末に接続されたアクセス回線を示すアクセスネットワーク情報を付加することでフォーマット変換することができる。
【0015】
また本発明は、上記通信制御装置において、前記送受信信号は、SIPに準拠するINVITE、またはSUBSCRIBEのリクエストメッセージであり、前記中継部は、前記IMS対応のシステムにおいて、ユーザ登録時にセッション制御を行う中継装置から通知された当該中継装置向けのルーティング情報を保持し、前記端末種別記憶部に記憶された非IMS端末から受信したリクエストメッセージに、前記ルーティング情報を付加することでフォーマット変換することができる。
【0016】
また本発明は、上記通信制御装置において、前記送受信信号は、SIPに準拠するINVITE、またはSUBSCRIBEのリクエストメッセージであり、前記中継部は、前記端末種別記憶部に記憶された非IMS端末向けのリクエストメッセージ内の発信者情報を、当該非IMS端末で処理可能な発信者情報に直すことでフォーマット変換することができる。
【0017】
また本発明は、上記通信制御装置において、前記送受信信号は、SIPに準拠するINVITEメッセージまたはINVITEメッセージに対する応答メッセージであり、前記中継部は、前記端末種別記憶部に記憶された非IMS端末との間のINVITEメッセージ内または応答メッセージ内のメディアに関する情報を、当該非IMS端末で処理可能なメディアに関する情報に変換することができる。
【0018】
また、本発明の通信制御システムは、上記通信制御装置と、前記通信制御装置に接続され、ユーザ単位で情報が登録されるデータベースを有するIMS対応の管理サーバを備え、前記管理サーバのデータベースは、前記ユーザ端末のユーザIDが登録されるユーザIDフィールドと、前記ユーザ端末に関連する付加情報が登録される付加情報フィールドとを含み、前記ユーザIDフィールドにユーザIDを登録し、前記付加情報フィールドに付加情報として前記ユーザ端末が属するグループのグループIDを登録してユーザIDとグループIDとを関連付けると共に、前記ユーザIDフィールドにグループIDを登録し、前記付加情報フィールドに付加情報としてグループ情報を登録してグループIDとグループ情報とを関連付けることで、グループIDを介してユーザIDとグループ情報とを関連付けることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、ユーザ単位での情報登録に制約されたデータベースのデータ構造を変えることなく、データベースにグループ単位で情報を登録させることができる。このため、ユーザ単位の情報だけでなくグループ単位の情報を持つ非IMS対応のシステムのデータベースを、IMS対応のデータベースに集約することができる。また、アプリケーションサーバとの連動時に、データベースのデータ構造の基本構造が変更されないため、アプリケーションの処理ロジックの変更が不要となる。
【0020】
また、本発明の他の通信制御システムは、上記通信制御装置と、前記通信制御装置から中継された前記ユーザ端末のユーザ情報が登録されたデータベースを有する管理サーバとを備えた前記IMS対応のシステム内に、前記非IMS対応のアプリケーションサーバをさらに備え、前記アプリケーションサーバは、非IMS対応のデータベースに対するAPI(Application Programming Interface)をIMS対応のデータベースに対するAPIにインターフェース変換するコンバータを有し、前記コンバータによるインターフェース変換によりIMS対応のAPIを介して前記管理サーバのデータベースを参照し、前記ユーザ端末にアプリケーションを提供することを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、非IMS対応のアプリケーションサーバにIMS対応の管理サーバのデータベースを参照させることができる。したがって、非IMS対応のアプリケーションサーバをIMS対応のアプリケーションサーバとして流用することができる。また、非IMS対応のシステムからIMS対応システムへの移行時には、IMS対応のシステムにおいて既存のアプリケーションサーバのサービスを継続させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、既存の非IMS対応のシステムからIMS対応のシステムへの移行時に、既存の非IMS端末をIMS対応システムに接続させることで、端末更新のコスト及び網側の設備投資を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態を示す図であり、通信制御システムのシステム構成図である。
【図2】本発明の実施の形態を示す図であり、P−CSCFサーバの機能ブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態を示す図であり、送受信信号のフォーマット変換処理の一例(認証情報付加)を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態を示す図であり、送受信信号のフォーマット変換処理の一例(アクセスネットワーク情報付加)を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態を示す図であり、送受信信号のフォーマット変換処理の一例(ルーティング情報付加)を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態を示す図であり、送受信信号のフォーマット変換処理の一例(発信者番号変換)を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態を示す図であり、送受信信号のフォーマット変換処理の一例(メディアコーデック情報変換)を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態を示す図であり、送受信信号のフォーマット変換処理の一例(リソース制御)を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態を示す図であり、ユーザ登録処理のシーケンス図である。
【図10】本発明の実施の形態を示す図であり、セッション制御処理のシーケンス図である。
【図11】本発明の実施の形態を示す図であり、既存のアプリケーションサーバのIMS化の説明図である。
【図12】本発明の実施の形態を示す図であり、管理サーバの共有データベースの格納方式の説明図である。
【図13】本発明の実施の形態を示す図であり、緊急通話時の発着信規制の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、本実施の形態においては、IMS端末と既存のVoIP端末とを同時に接続可能としたハイブリッドIMSについて説明する。なお、既存の非IMS端末はVoIP端末に限定されるものではなく、IMSに集約可能なSIP端末であればよい。図1は、本発明の実施の形態における通信制御システムのシステム構成図である。
【0025】
図1に示す通信制御システム1は、非IMS対応のシステムである既存のVoIPシステムからIMSに移行させたものであり、既存のVoIPユーザ及び新規のIMSユーザに対してサービスを提供可能に構成されている。通信制御システム1のIMS網2は、移動通信や固定通信を問わず通信サービスを提供するものであり、第1のアクセスネットワーク3を介してIMSユーザのIMS端末6が接続され、第2のアクセスネットワーク4を介して既存のVoIPユーザのVoIP端末7が接続される。
【0026】
なお、第1、第2のアクセスネットワーク3、4は、LTE(Long Term Evolution)、WLAN(Wireless LAN)、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)等の無線アクセスネットワークであってもよいし、FTTH(Fiber To The Home)、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)等の有線ネットワークであってもよい。
【0027】
この通信制御システム1では、IMS端末6は、IMSに対応したセッション制御メッセージであるSIPメッセージを用いてセッション制御される。一方、非IMS端末であるVoIP端末7は、IMSに対応していないセッション制御メッセージであるSIPメッセージを用いてセッション制御される。このため、IMS網2内では、VoIP端末7のIMSに非対応のSIPメッセージを、IMSに対応したSIPメッセージに変換して、VoIP端末7による通信を可能としている。
【0028】
また、IMS網2は、既存のVoIPシステムのサービスを提供するソフトスイッチ11やアプリケーションサーバ12が接続され、ソフトスイッチ11を介して既存の電話網5に接続されている。よって、VoIP端末7は、電話網5を介した通信や従来のアプリケーションサービスの提供を受けることが可能となっている。さらに、IMS網2は、IMSに準拠した他の通信システムの各種サーバに接続可能に構成されている。
【0029】
IMS網2は、P−CSCFサーバ13と、I−CSCFサーバ14と、S−CSCFサーバ15と、管理サーバ16と、アプリケーションサーバ17とを備えている。P−CSCFサーバ13は、第1、第2のアクセスネットワーク3、4を介してIMS端末6及びVoIP端末7に接続され、IMS端末6及びVoIP端末7とS−CSCFサーバ15及びI−CSCFサーバ14との間でSIPメッセージを中継する。また、P−CSCFサーバ13は、様々なアクセスネットワークからIMS網2を独立させるために、アクセスネットワークとの整合を行う。このP−CSCFサーバ13の整合機能としては、例えば、SIPメッセージの圧縮・解凍等により無線資源の使用効率を高めている。
【0030】
また、P−CSCFサーバ13は、IMS端末6とVoIP端末7とを識別して、端末種別に応じた中継処理を行うことで、IMS端末6とVoIP端末7とをIMS網2に接続可能としている。この場合、P−CSCFサーバ13は、ユーザ端末の端末種別を記憶する端末種別記憶部22を有しており、この端末種別記憶部22を参照してIMS端末6とVoIP端末7とを識別する。そして、P−CSCFサーバ13は、端末種別記憶部22に非IMS端末として記憶されたVoIP端末7との間のSIPメッセージについては、VoIP信号フォーマットとIMS信号フォーマットとを相互にフォーマット変換して中継する。
【0031】
すなわち、VoIP端末7から送信されたSIPメッセージについては、IMSに対応したIMS信号フォーマットに変換されてIMS網2内に中継され、VoIP端末7向けのSIPメッセージについては、VoIPに対応したVoIP信号フォーマットに変換されてVoIP端末7に中継される。一方、P−CSCFサーバ13は、端末種別記憶部22に記憶されたIMS端末6との間のSIPメッセージについては、フォーマット変換せずに中継する。なお、P−CSCFサーバ13のフォーマット変換処理や端末種別記憶部22への記憶処理の詳細については後述する。
【0032】
I−CSCFサーバ14は、ユーザのIMSへの登録やセッション制御時に、管理サーバ16に管理されたユーザ情報を用いて、ユーザに適したS−CSCFサーバ15を選択する。そして、I−CSCFサーバ14は、選択したS−CSCFサーバ15にユーザの登録処理を引き継ぐ。また、I−CSCFサーバ14は、他のネットワークからのゲートウェイとして、IMS網2内の構成を隠蔽する。
【0033】
S−CSCFサーバ15は、管理サーバ16に管理されたユーザ情報を用いてセッション制御や認証を行う。また、S−CSCFサーバ15は、必要に応じてアプリケーションサーバ17のサービス処理を起動する。このように、S−CSCFサーバ15は、ユーザに対してサービスを提供する際の中心的なサーバとして機能する。
【0034】
管理サーバ16は、いわゆるHSS(Home Subscribe Server)であり、セッション制御、サービス制御に必要なユーザ情報等が格納される共有データベース21を管理している。共有データベース21には、ユーザ情報としてプライベートユーザ識別子、パブリックユーザ識別子、S−CSCFサーバ15の選択情報、契約サービス情報、ユーザ認証情報等が格納されている。また、共有データベース21には、既存のVoIPシステムのアプリケーションサーバ12の持つデータベースも集約されている。
【0035】
アプリケーションサーバ17は、S−CSCFサーバ15から中継されたSIPメッセージに応じて、IMS端末6及びVoIP端末7にアプリケーションサービスを提供する。また、アプリケーションサーバ17は、管理サーバ16の共有データベース21からアプリケーションサービスに関するユーザ情報を取得する。
【0036】
また、既存のVoIPシステムのアプリケーションサーバ12は、管理サーバ16の共有データベース21にアクセス可能なように、固有のデータベースに対応するAPI(Application Programming Interface)を、管理サーバ16の共有の共有データベース21に対応するAPIに変換する後述するコンバータ31を有している。このAPIの変換により、IMSにおいて既存のアプリケーションサーバ12のサービスの継続が可能となっている。
【0037】
このように構成された通信制御システム1では、P−CSCFサーバ13に端末識別機能とフォーマット変換機能とを持たせることにより、IMS端末6とVoIP端末7をIMSに集約している。このため、既存のVoIPシステムからIMSへの移行時に、既存のVoIP端末7をIMS端末6に入れ替えが不要となる。さらに、管理サーバ16の共有の共有データベース21に、既存のアプリケーションサーバ12のデータベースを集約して、既存のアプリケーションサーバ12に共有データベース21にアクセスさせている。これにより、既存のアプリケーションサーバ12をIMS対応のアプリケーションサーバとして流用可能としている。
【0038】
以下、図2を参照して、本発明の特徴部分であるP−CSCFサーバについて詳細に説明する。図2は、本発明の実施の形態に係るP−CSCFサーバの機能ブロック図である。なお、図2では、本発明の特徴部分であるP−CSCFサーバの端末識別機能とフォーマット変換機能に関する部分のみ図示している。
【0039】
図2に示すように、P−CSCFサーバ13は、端末種別判定部25と、端末種別記憶部22と、中継部26とを備えている。端末種別判定部25は、ユーザ登録のためのセッション制御情報であるREGISTERメッセージを受信すると、そのREGSTERメッセージの送信元の端末種別を特定して端末種別記憶部22に記憶する。具体的には、端末種別判定部25は、REGISTERメッセージのフォーマットやメッセージ内容、または受信ポートに応じて、送信元の端末種別がIMS端末6かVoIP端末7かを特定する。なお、端末種別判定部25は、送信元のユーザ端末がVoIP端末7の場合、必要に応じてさらに詳細にどのようなVoIP端末かを特定してもよい。
【0040】
端末種別記憶部22は、ユーザ識別子毎に端末種別情報を保持している。また、端末種別記憶部22は、ユーザ登録(REGISTER)から登録解除(de−REGISTER)あるいは登録期間の満了、その他の理由により登録が解除されるまで端末種別情報を保持している。なお、ユーザ識別子は、URI形式で記載された識別子であり、例えば、IMS端末6ではパブリックユーザ識別子である。また、端末種別情報とは、ユーザ端末がIMS端末6かVoIP端末7かを識別可能な情報であればよく、例えば、IMS端末6か否かを示す情報、またはVoIP端末7か否かを示す情報でもよい。
【0041】
中継部26は、端末種別記憶部22を参照して、送受信信号の送受信先の端末種別を識別して、端末種別に応じた中継処理を行う。具体的には、中継部26は、端末種別記憶部22を参照して、送受信信号に含まれるユーザ識別子からIMS端末6とVoIP端末7とを識別する。そして、中継部26は、端末種別記憶部22に記憶されたVoIP端末7との間の送受信信号については、VoIP信号フォーマットとIMS信号フォーマットとを相互にフォーマット変換して中継する。一方、中継部26は、端末種別記憶部22に記憶されたIMS端末6との間の送受信信号については、フォーマット変換をせずに中継する。
【0042】
ここで、図3から図8を参照して、P−CSCFサーバの中継部による送受信信号のフォーマット変換処理について具体例を挙げて説明する。図3から図8は、本発明の実施の形態に係るP−CSCFサーバの中継部による送受信信号のフォーマット変換処理の一例を示す図である。
【0043】
図3は、ユーザ登録時における認証情報の付加によるフォーマット変換を示している。ユーザ登録時には、VoIP端末7から送受信信号としてREGISTERメッセージがP−CSCFサーバ13を介してI−CSCFサーバ14に送信される。このとき、I−CSCFサーバ14は、REGISTERメッセージの受信に認証情報(Authorizationヘッダ)を必要とするが、VoIP端末7は必ずしもREGISTERメッセージに認証情報を付与しない。このため、P−CSCFサーバ13の中継部26は、VoIP端末7から送信されたREGISTERメッセージに認証情報を付加してI−CSCFサーバ14に中継する。
【0044】
この場合、中継部26は、VoIP端末7から受信したREGISTERメッセージ内のユーザ識別子及び定型フォーマット等から認証情報を生成し、生成した認証情報をREGISTERメッセージに付加する。具体的には、REGISTERメッセージのToヘッダの値「user1@example.com」からAuthorizationヘッダのusernameおよびrealm等の認証情報を生成する。必要に応じて中継部26は予め設定された値または自身で生成した値を使って認証情報を生成してもよい。この構成により、REGISTERメッセージに認証情報を付与しないVoIP端末7からIMS網2内にREGISTERメッセージを送信することが可能となる。
【0045】
図4は、セッション開始時におけるアクセスネットワーク情報の付加によるフォーマット変換を示している。セッション開始時には、VoIP端末7から送受信信号としてINVITEメッセージがP−CSCFサーバ13を介してS−CSCFサーバ15に送信される。このとき、S−CSCFサーバ15は、INVITEメッセージの受信に、VoIP端末7のアクセスネットワーク情報(P-Access-Networkヘッダ)を必要とするが、VoIP端末7はINVITEメッセージにアクセスネットワーク情報を付与しない。このため、P−CSCFサーバ13の中継部26は、VoIP端末7から送信されたINVITEメッセージにアクセスネットワーク情報を付加してS−CSCFサーバ15に中継している。
【0046】
この場合、中継部26は、VoIP端末7の回線種別や定型フォーマット等からアクセスネットワーク情報を生成し、生成したアクセスネットワーク情報をINVITEメッセージに付加する。また、中継部26は、VoIP端末7からINVITEメッセージのレスポンスとして送信される200応答メッセージについても、アクセスネットワーク情報を付加してS−CSCFサーバ15に中継する。この構成により、INVITEメッセージにアクセスネットワーク情報を付加しないVoIP端末7からIMS網2内にINVITEメッセージを送信することが可能となる。
【0047】
図5は、セッション開始時におけるルーティング情報の付加によるフォーマット変換を示している。ユーザ登録完了時には、S−CSCFサーバ15からのREGISTERレスポンス(200応答メッセージ)にてルーティング情報(Service-Routeヘッダ)がP−CSCFサーバ13を介してIMS端末に送信される。このルーティング情報は、IMS網2内での適切なルーティングのために後続のリクエストで使用されるが、VoIP端末7はREGISTERの200応答メッセージで受信したルーティング情報を認識できず、そのためその後のINVITEメッセージにルーティング情報を付加しない。
【0048】
このため、P−CSCFサーバ13の中継部26は、S−CSCFサーバ15から受信したルーティング情報を保持し、VoIP端末7から送信されたINVITEメッセージにルーティング情報を付加してS−CSCFサーバ15に中継している。この構成により、VoIP端末7からの後続のリクエストにルーティング情報が付与され、IMS網2内で適切にルーティングが行われる。
【0049】
図6は、セッション開始時における発信者情報のフォーマット変換を示している。発信者情報は、INVITEメッセージにてI−CSCFサーバ14からP−CSCFサーバ13を介してVoIP端末7に送信される。このとき、I−CSCFサーバ14は、信頼される発信者情報としてP-Asserted-Identityヘッダを使用するが、VoIP端末7はP-Asserted-Identityヘッダに対応していない場合があり、発信者情報としてFromヘッダの内容をユーザに表示してしまう。
【0050】
このため、P−CSCFサーバ13の中継部26は、I−CSCFサーバ14から受信したINVITEメッセージ内のP-Asserted-IdentityヘッダをVoIP端末7が理解可能なFromヘッダに変換してVoIP端末7に中継している。この構成により、VoIP端末7に発信者情報を通知させることが可能となる。
【0051】
図7は、セッション開始時におけるメディアに関する情報の変換を示している。メディアに関する情報は、INVITEメッセージ(およびその200応答メッセージ)のボディ部に設定されるSDP(Session Description Protocol)にてP−CSCFサーバ13を介してユーザ端末間で送受信される。IMS端末6は、通常のVoIP端末7に使用される音声メディアに加え、映像、データ等のメディアが使用されている。このようにVoIP端末7は、サポートするメディアが少なく、形式も限定されているため、P−CSCFサーバ13の中継部26においてメディア情報の変換が行われる。
【0052】
この場合、中継部26は、接続する端末種別に応じてあらかじめ設定された情報に基づいてIMS端末6とVoIP端末7との間で、メディア情報を変換する。例えば、VoIP端末7がメディアコーデックのネゴシエーションに対応しておらず、IMS端末6から複数のメディアコーデックが指定されているINVITEを受信した場合、そのままVoIP端末7にメディア情報を中継すると、コーデック不一致によりエラーとなる場合がある。そこで中継部26において利用不可なコーデックを削除してVoIP端末7に送信することにより接続をさせることができる。またIMS端末6がTV電話の場合、映像から音声だけを取り出してIMS端末6とVoIP端末7と接続させるようにメディアコーデック情報を変換することも可能である。例えば、中継部26は、IMS端末6で使用されるH.263等の動画コーデックとVoIP端末7で使用されるμ‐law等の音声コーデックとのコーデック情報を変換するようにする。
【0053】
図8は、セッション開始時におけるリソース制御情報の変換を示している。リソース制御情報は、INVITEメッセージ(およびその200応答メッセージ)にてP−CSCFサーバ13を介してユーザ端末間で送受信される。この場合、IMS端末6は、リソース制御(QoS:Quality of Service)機能を有するのに対し、VoIP端末7は、リソース制御機能を有していない。よって、IMS端末6においてリソース制御が要求された場合には、IMS端末6とVoIP端末7とを接続することができない。このため、P−CSCFサーバ13の中継部26にてリソース制御機能を終端している。
【0054】
この場合、中継部26は、IMS端末6からの送信されたINVITEメッセージ内のリソース制御情報を削除して、VoIP端末7に中継する。また、中継部26は、IMS端末6からのVoIP端末7の代わりにリソース制御情報に応答する。また必要に応じてSIPシーケンスに変更が必要な場合、そのシーケンスの変換も行う。この構成により、IMS端末6に疑似的にリソース制御しているように見せ、IMS端末6とVoIP端末7との接続を可能としている。
【0055】
なお、上記した例は、一例に過ぎない。下記各項目についてもフォーマット変換が行われる。例えば、RTP(Real-time Transport Protocol)、SRTP(Secure Real-time Transport Protocol)、対応CODEC等。SIPのシーケンスとして、precondition、early media等。ネットワークやトランスポートのプロトコルとして、IPv4(Internet Protocol Version 4)、IPv6(Internet Protocol Version 6)、UDP(User Datagram Protocol)、TCP(Transmission Control Protocol)、TLS(Transport Layer Security)、IPsec(IP Security Protocol)等。
【0056】
また、P−CSCFサーバ13には、上記した各機能ブロックを実現する通信インターフェース、制御回路を含んだハード構成を有している。また、IMS端末6、VoIP端末7、I−CSCFサーバ14、S−CSCFサーバ15、管理サーバ16、アプリケーションサーバ12、17も同様に通信インターフェース、制御回路を含んだハード構成を有している。制御回路には、各種処理を実行するプロセッサや、メモリが設けられている。メモリは、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)等の一つまたは複数の記憶媒体で、用途に応じて構成されている。また、メモリには、制御プログラム等の各種アプリケーションが記憶されている。
【0057】
次に、図9を参照して、通信制御システムにおけるユーザ登録処理について説明する。図9は、本発明の実施の形態に係る通信制御システムにおけるユーザ登録処理のシーケンス図である。なお、ここでは、ユーザ端末としてVoIP端末がユーザ登録される場合について説明する。
【0058】
図9に示すように、VoIP端末7は、P−CSCFサーバ13に対して送信元IPアドレス、ユーザ識別子等を含むREGISTERメッセージを送信する(ステップS01)。P−CSCFサーバ13は、REGISTERメッセージのフォーマットやメッセージ内容、または受信ポートに応じて送信元の端末種別を特定し、端末種別記憶部22に記憶する(ステップS02)。このとき、端末種別記憶部22には、ユーザ識別子とVoIP端末7を示す端末識別情報とが関連付けられて記憶される。
【0059】
次に、P−CSCFサーバ13は、VoIP端末7から受信したREGISTERメッセージを、VoIP信号フォーマットからIMS信号フォーマットに変換する(ステップS03)。この場合、P−CSCFサーバ13におけるフォーマット変換として、REGISTERメッセージに対する認証情報の付加等が行われる。フォーマット変換されたREGISTERメッセージには、認証情報の他に、アクセスネットワーク情報が付加される。その他の情報は通常のIMSの規定に従って設定される。
【0060】
次に、P−CSCFサーバ13は、変換したREGISTERメッセージを、I−CSCFサーバ14に中継する(ステップS04)。I−CSCFサーバ14は、管理サーバ16にアクセスしてS−CSCFサーバ15のリストからVoIP端末7に適したS−CSCFサーバ15を選択する(ステップS05)。次に、I−CSCFサーバ14は、選択したS−CSCFサーバ15にREGISTERメッセージを中継する(ステップS06)。S−CSCFサーバ15は、管理サーバ16にアクセスしてユーザ認証を行う(ステップS07)。
【0061】
S−CSCFサーバ15は、ユーザ認証が成功すると、管理サーバ16からユーザ情報を取得すると共に、P−CSCFサーバ13のアドレスを含むルーティング情報を保持する(ステップS08)。このルーティング情報は、VoIP端末7の着信時においてS−CSCFサーバ15からP−CSCFサーバ13向けのルーティングに使用される。次に、S−CSCFサーバ15は、ユーザ登録がされたことを示す200応答メッセージをP−CSCFサーバ13に送信する(ステップS09)。このとき、200応答メッセージにてS−CSCFサーバ15のアドレスを含むルーティング情報(Service-Routeヘッダ)がP−CSCFサーバ13に中継される。
【0062】
P−CSCFサーバ13は、S−CSCFサーバ15から受信したS−CSCFサーバ15のアドレスを含むルーティング情報を保持する(ステップS10)。このルーティング情報は、VoIP端末7の発信時においてP−CSCFサーバ13からS−CSCFサーバ15向けのルーティングに使用される。そして、P−CSCFサーバ13は、INVITEメッセージに応答する信号として200応答メッセージをVoIP端末7に中継する(ステップS11)。
【0063】
次に、図10を参照して、通信制御システムにおけるセッション制御処理について説明する。図10は、本発明の実施の形態に係る通信制御システムにおけるセッション制御処理のシーケンス図である。なお、ここでは、VoIP端末とIMS端末との間のセッション制御処理について説明する。また、ここでは、リソース制御処理が行われていないものとして説明する。
【0064】
図10に示すように、VoIP端末7は、P−CSCFsサーバ13aに対して、発信元のユーザ識別子、着信側のパブリックユーザ識別子等を含むINVITEメッセージを送信する(ステップS21)。P−CSCFsサーバ13aは、INVITEメッセージに含まれる発信元のユーザ識別子と端末種別記憶部22とに基づいて、ユーザ端末の端末種別を識別する(ステップS22)。
【0065】
次に、P−CSCFsサーバ13aは、端末種別をVoIP端末7と識別すると、INVITEメッセージをVoIP信号フォーマットからIMS信号フォーマットにフォーマット変換する(ステップS23)。この場合、P−CSCFsサーバ13aにおけるフォーマット変換として、INVITEメッセージに対してアクセスネットワーク情報の付加や、ユーザ登録に保持したS−CSCFsサーバ15a向けのルーティング情報の付加等が行われる。また、必要に応じてメディアコーデック情報の変換等も行われる。
【0066】
次に、P−CSCFsサーバ13aは、ルーティング情報に基づいてINVITEメッセージをS−CSCFsサーバ15aに中継する(ステップS24)。S−CSCFsサーバ15aは、INVITEメッセージを任意のI−CSCFdサーバ14に中継する(ステップS25)。I−CSCFdサーバ14は、管理サーバ16にアクセスして、着信側のパブリックユーザ識別子に基づいてS−CSCFdサーバ15bのアドレスを取得する(ステップS26)。次に、I−CSCFdサーバ14は、INVITEメッセージをS−CSCFdサーバ15bに中継する(ステップS27)。
【0067】
S−CSCFdサーバ15bは、着信側のIMS端末6のユーザ登録時に保持したP−CSCFdサーバ13b向けのルーティング情報に基づいて、INVITEメッセージをP−CSCFdサーバ13bに中継する(ステップS28)。P−CSCFdサーバ13bは、INVITEメッセージに含まれる着信先のパブリックユーザ識別子と端末種別記憶部22とに基づいて、着信側のユーザ端末の端末種別を識別する(ステップS29)。次に、P−CSCFdサーバ13bは、端末種別をIMS端末6と識別すると、INVITEメッセージをフォーマット変換せずにIMS端末6に送り届ける(ステップS30)。
【0068】
着信側のIMS端末6は、INVITEメッセージを受信すると、着信音等により着信側ユーザを呼び出す(ステップS31)。このIMS端末6の呼び出し状態は、180RingingメッセージでVoIP端末7に通知される。着信側のIMS端末6が応答すると(ステップS32)、INVITEメッセージの応答信号として200応答メッセージがVoIP端末7に通知される。この200応答メッセージについても、P−CSCFsサーバ13aにおいてフォーマット変換が行われる。そして、発信側のVoIP端末7から着信側のIMS端末6にACKメッセージが返信され、セッションが確立される。
【0069】
次に、図11を参照して、既存のアプリケーションサーバのIMS化について説明する。図11は、本発明の実施の形態に係る既存のアプリケーションサーバのIMS化の説明図である。なお、図11においては、(a)が既存のVoIPシステム、(b)が一般的なIMS、(c)が本発明に係る通信制御システムをそれぞれ示している。
【0070】
図11(a)に示すように、既存のVoIPシステムでは、既存のアプリケーションサーバ12は、アプリケーション毎に固有のデータベース32を有しており、固有のデータベース32に対するAPIによりアプリケーションプロセス、データ投入プロセスが行われていた。すなわち、既存のVoIPシステムでは、アプリケーションサーバ12毎に異なるデータベースとAPIとを有していた。
【0071】
一方、図11(b)に示すように、一般的なIMSでは、アプリケーションサーバ17の他に、データ投入サーバ18を有しており、アプリケーションプロセスとデータ投入プロセスを別々のサーバで行う。また、アプリケーションサーバ17及びデータ投入サーバ18は、管理サーバ16の共有データベースにアクセスし、共有データベース21を用いて処理している。共有データベース21のアクセスには、Diameter/Shインターフェース等のIMSに対応するAPIが用いられている。
【0072】
このため、図11(a)に示す既存のアプリケーションサーバ12を、図11(b)に示すIMSに統合する際には、管理サーバ16の共有データベース21にアクセスするために、IMSに対応したAPIに変更する必要があった。そこで、図11(c)に示すように、本実施の形態に係る通信制御システム1では、既存のIMS非対応のAPIをIMSに対応するAPIに変換するコンバータ31をアプリケーションサーバ12に設けるようにした。また、既存のアプリケーションサーバ12のデータ投入プロセスを、データ投入サーバ18に行わせて、データ投入サーバ18においてもコンバータ31を設けるようにした。
【0073】
コンバータ31は、一般的なデータベースAPIのデータベース側のインターフェースと、Diameter/Shインターフェースを持つ。アプリケーションプロセスおよびデータ投入プロセスから見ると、コンバータ31はデータベースとして動作しているように見え、登録サーバ16から見ると、コンバータ31はDiameter/Shをサポートするアプリケーションサーバに見える。コンバータ31は、DB−APIから入ってきたデータの追加、削除、変更要求に従ってDiameter/Shを使用して登録サーバ16のデータを追加、削除、変更する。同様に、DB−APIからの参照要求に従って、Diameter/Shを使用して登録サーバ16のデータを取得しDB−APIへ参照応答としてデータを返す。
【0074】
この構成により、既存のアプリケーションサーバ12にIMS網2内の管理サーバ16の共有データベース21を参照させることが可能となる。したがって、既存のアプリケーションサーバ12をIMS対応のアプリケーションサーバとして流用することができる。また、VoIPシステムからIMS対応の通信制御システム1への移行時には、既存のアプリケーションサーバ12のサービスを継続させることができる。
【0075】
次に、図12を参照して、管理サーバの共有データベースの格納方式について説明する。図12は、本実施の形態における管理サーバの共有データベースの格納方式の説明図である。なお、図12においては、(a)が既存のVoIPシステム、(b)が一般的なIMS、(c)が本発明に係る通信制御システムをそれぞれ示している。
【0076】
図12(a)に示すように、既存のVoIPシステムでは、既存のアプリケーションサーバ12が固有のデータベースを有するため、データ構造に制約がなく、ユーザ単位の情報だけでなく、会社やシステム等のユーザが属するグループ単位の情報を持つことが可能となっている。すなわち、ユーザ毎に各種データが関連付けられたテーブルAと、グループ毎に各種データが関連付けられたテーブルBとを別々に持つことが可能であった。
【0077】
また、テーブルAは、ユーザIDフィールドと、データフィールドと、グループIDフィールドとを含み、テーブルBは、グループIDフィールドと、データフィールドとを含んで構成されている。この構成により、テーブルA、Bは、それぞれのグループIDフィールドに格納されたグループIDを介して、各種データの関連付けが可能となっていた。
【0078】
一方、図12(b)に示すように、一般的なIMSでは、管理サーバ16の共有データベース21のデータ構造に制約があるため、ユーザ単位でしか情報を持つことができない。具体的には、共有データベース21は、ユーザIDフィールドと、データフィールドと、リポジトリデータと呼ばれる付加情報フィールドとを含んで構成されるが、グループの情報を保持するための、別のテーブルを設けることができない。したがって、既存のアプリケーションサーバ12の固有のデータベースを共有データベース21に集約する場合には、ユーザ毎にグループ情報を付加情報として格納する必要がある。
【0079】
例えば、共有データベース21の付加情報フィールドに、図12(a)のテーブルBのデータフィールドに格納されたグループ情報を格納する。この構成により、ユーザ毎にグループ情報を持たせることが可能であるが、各ユーザが持つグループ情報が重複するため、リソースの使用量やデータの更新等の処理量が多くなる。また、共有データベース21は、既存のアプリケーションサーバ12のデータベースとデータ構造が大きく異なるため、アプリケーションの処理ロジックも変更する必要があった。
【0080】
このため、図12(c)に示すように、共有データベース21のユーザIDフィールドに、ダミーのユーザIDとしてグループIDを格納させ、グループ単位で情報を持たせるようにした。また、付加情報フィールドにおいて、ユーザIDに関連付けられたグループIDとユーザIDフィールドに格納されたグループIDとを結び付けることで、グループIDを介してユーザIDとグループ情報とを関連付けるようにした。
【0081】
この構成により、共有データベース21のデータ構造を変えることなく、共有データベース21に既存のアプリケーションサーバ12のデータベースを集約することができる。また、既存のアプリケーションサーバ12のデータベース構造を踏襲したまま情報が格納されるため、アプリケーションの処理ロジックの変更が不要となる。さらに、各ユーザが持つグループ情報の重複を避けることができ、リースの使用量やデータ更新等の処理量を減らすことが可能となる。
【0082】
以上のように、本実施の形態に係る通信制御システム1によれば、P−CSCFサーバ13とVoIP端末7との間の送受信信号は、フォーマット変換して中継されるため、VoIP端末7をIMS網2に接続させることができる。これにより、既存のVoIPシステムからIMSに移行する際に、VoIP端末7をIMS端末6に入れ替える必要がない。よって、端末更新のコストを無くすことができると共に、ユーザに網側の設備変更を意識させることがない。また、VoIP端末7がIMSに接続されるため、既存のVoIPシステムの設備を撤去することができる。このため、IMS及びVoIPシステムの設備を併存させることなく、VoIPシステムからIMSに段階的に移行することができ、網側の設備投資を低減することが可能となる。
【0083】
次に、本発明の通信制御システムを利用した緊急通話時の発着信規制について説明する。図13は、本実施の形態に係る通信制御システムの緊急通話時の発着信規制の説明図である。
【0084】
一般的な通話システムにおいては、受付端末との緊急通話中に緊急呼発信者側からの切断を防止する仕組みを有している。これは、空き回線を留保することにより実現されている。しかしながら、IPを用いた通話システムの場合には、物理的なパスを有さないため、回線を留保することができない。そこで、本実施の形態に係る通信制御システム1では、緊急呼発信者側から切断された場合に、他の発信者からの緊急呼発信者への発信、発信者からの受付端末以外への発信を規制して疑似的に回線を留保する緊急呼アプリケーションサーバを設けるようにした。
【0085】
図13(a)に示すように、緊急呼発信者のユーザ端末37が緊急呼を発信すると(ステップS41)、S−CSCFサーバ15は、緊急呼番号を検出して緊急呼を緊急呼アプリケーションサーバ17aに中継する(ステップS42)。緊急呼アプリケーションサーバ17aは、受付端末38に緊急呼を中継し、緊急通話を確立させる(ステップS43)。また、緊急呼アプリケーションサーバ17aは、緊急呼発信者の発着信規制を行うために、iFC(initial Filter Criteria)トリガー条件を管理サーバ16の共有データベース21に追加する(ステップS44)。
【0086】
管理サーバ16のiFCトリガー条件が変更されると、管理サーバ16はS−CSCFサーバ15にその内容を通知する(ステップS45)。なお、iFCトリガー条件とは、S−CSCFサーバ15のユーザプロファイルとしてユーザ毎に設定されるもので、SIPメッセージのヘッダ等の比較条件を設定することにより、条件にマッチした呼を特定のアプリケーションサーバに中継する条件である。ここでは、iFCトリガー条件として、緊急呼発信者からの緊急呼以外への新たな発信、および緊急呼発信者への緊急呼受付端末以外からの着信を規制する(ユーザへの発着番号を検出してガイダンスや切断するサーバへ転送する)ものが設定されている。例えば、緊急呼発信者からのINVITEメッセージのRequest-URIが緊急呼番号以外、あるいは緊急呼発信者へのINVITEメッセージのContactヘッダのアドレスが緊急呼アプリケーションサーバから以外の場合、切断するためのガイダンスサーバあるいは、切断用アプリケーションサーバにINVITEメッセージを転送するようなiFCとなる。
【0087】
この状態で、緊急呼発信者のユーザ端末37で切断された場合、緊急呼アプリケーションサーバ17aで切断信号が中断され、受付端末38と緊急呼アプリケーションサーバ17aとの間で通話が留保される。緊急呼アプリケーションサーバ17aは、切断を検出すると、緊急呼発信者のユーザ端末37に対して自動発信して再接続を試みる。これは、緊急呼発信者のユーザ端末37と再接続あるいは、受付端末38側からの切断があるまで繰り返される。
【0088】
また、他の発信者のユーザ端末37から緊急発進者のユーザ端末37に発信した場合、S−CSCFサーバ15のiFCトリガー条件にかかり、ガイダンス接続や話中切断等で着信規制される。さらに、緊急呼発信者のユーザ端末37から他の発信者のユーザ端末37に発信した場合にも同様にガイダンス接続や話中切断等で着信規制される。緊急呼発信者のユーザ端末37から緊急呼が発信された場合、緊急呼が再び緊急呼アプリケーションサーバ17aに中継され、緊急呼アプリケーションサーバ17aが留保している受付端末38との通話に接続される。
【0089】
図13(b)に示すように、受付端末38で切断された場合、緊急呼アプリケーションサーバ17aは通話を開放し、緊急呼発信者のユーザ端末37に対する再接続している場合にはこれを停止する(ステップS46)また、緊急呼アプリケーションサーバ17aは、iFCトリガー条件を管理サーバ16の共有データベース21から削除する(ステップS47)。管理サーバ16は、iFCトリガー条件の削除をS−CSCFサーバ15に通知し、S−CSCFサーバ15にiFCトリガー条件を削除させる(ステップS48)。
【0090】
このような構成により、IPを用いた通話システムであっても、緊急呼アプリケーションサーバ17aを設けることで、緊急呼発信者のユーザ端末37と受付端末38との緊急通話中に緊急呼発信者側からの切断を防止することが可能となっている。なお、上記した通信制御システム1におけるユーザ端末37は、IPにより通話可能な端末であればよく、VoIP端末7でもよいし、IMS端末6でもよい。
【0091】
なお、上記した実施の形態においては、通信制御システムが、通信制御装置としてのP−CSCFサーバを有する構成としたが、この構成に限定されるものではない。通信制御装置は、P−CSCFサーバの一部として設けられてもよいし、P−CSCFサーバと協働して動作するなら外部に設けられてもよい。
【0092】
また、上記した実施の形態においては、IMS端末とVoIP端末とがP−CSCFサーバに接続される構成としたが、この構成に限定されるものではない。P−CSCFサーバは、IMS端末及びVoIP端末以外のSIP端末を接続する構成としてもよい。
【0093】
また、上記した実施の形態においては、P−CSCFサーバは、VoIP端末をIMSに接続させる構成としたが、この構成に限定されるものではない。P−CSCFサーバは、IMS端末を既存のVoIPシステムに接続させる構成としてもよい。
【0094】
また、上記した実施の形態においては、IMSと既存のVoIPシステムとを併存させる構成としてもよい。この場合、P−CSCFにSBC機能を持たせるようにする。また、この場合、IMS端末を既存のVoIPシステムに接続してもよい。この場合、P−CSCFは、IMS端末からの送受信信号をフォーマット変換して中継するようにする。
【0095】
また、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であってこの実施の形態に制限されるものではない。本発明の範囲は、上記した実施の形態のみの説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0096】
以上説明したように、本発明は、既存の非IMS端末をIMS対応システムに接続させることで、端末更新のコスト及び網側の設備投資を抑えることができるという効果を有し、特に既存のVoIPシステムからIMSへの移行に用いられる通信制御装置及びこれを備えた通信制御システムに有用である。
【符号の説明】
【0097】
1 通信制御システム
2 IMS網
3 第1のアクセスネットワーク
4 第2のアクセスネットワーク
5 電話網
6 IMS端末
7 VoIP端末(非IMS端末)
11 ソフトスイッチ
12 既存のアプリケーションサーバ
13 P−CSCFサーバ(通信制御装置)
14 I−CSCFサーバ
15 S−CSCFサーバ
16 管理サーバ
17 アプリケーションサーバ
17a 緊急呼アプリケーションサーバ
18 データ投入サーバ
21 共有データベース
22 端末種別記憶部
25 端末種別判定部
26 中継部
31 コンバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IMS端末と非IMS端末とを含むユーザ端末についてIMS対応のシステムでの通信制御を行う通信制御装置であって、
前記ユーザ端末からのユーザ登録メッセージの内容または受信ポートに基づいて、当該ユーザ端末の端末種別情報としてIMS端末か非IMS端末かを保持する端末種別記憶部と、
前記端末種別記憶部に記憶された非IMS端末との間の送受信信号については、IMS信号フォーマットと非IMS信号フォーマットとを相互にフォーマット変換して中継し、前記端末種別記憶部に記憶されたIMS端末との送受信信号については、前記フォーマット変換を行わずに中継する中継部とを備えたことを特徴とする通信制御装置。
【請求項2】
前記中継部は、前記ユーザ端末について非IMS対応のシステムとの中継をさらに行っており、前記非IMS対応のシステムとの中継時に、前記端末種別記憶部に記憶された非IMS端末との間の送受信信号については、前記フォーマット変換を行わずに中継し、前記端末種別記憶部に記憶されたIMS端末との間の送受信信号については、前記フォーマット変換して中継することを特徴とする請求項1に記載の通信制御装置。
【請求項3】
前記ユーザ登録メッセージは、SIPに準拠するREGISTERメッセージであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の通信制御装置。
【請求項4】
前記送受信信号は、SIPに準拠するREGISTER、INVITE、またはSUBSCRIBEのリクエストメッセージであり、
前記中継部は、前記端末種別記憶部に記憶された非IMS端末から受信したリクエストメッセージに基づいて認証情報を生成し、当該リクエストメッセージに認証情報を付加することでフォーマット変換することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の通信制御装置。
【請求項5】
前記送受信信号は、SIPに準拠するREGISTER、INVITE、またはSUBSCRIBEのリクエストメッセージまたはINVITE、またはSUBSCRIBEのリクエストメッセージに対する応答メッセージであり、
前記中継部は、前記端末種別記憶部に記憶された非IMS端末との間のリクエストメッセージまたは応答メッセージに、当該非IMS端末に接続されたアクセス回線を示すアクセスネットワーク情報を付加することでフォーマット変換することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の通信制御装置。
【請求項6】
前記送受信信号は、SIPに準拠するINVITE、またはSUBSCRIBEのリクエストメッセージであり、
前記中継部は、前記IMS対応のシステムにおいて、ユーザ登録時にセッション制御を行う中継装置から通知された当該中継装置向けのルーティング情報を保持し、前記端末種別記憶部に記憶された非IMS端末から受信したリクエストメッセージに、前記ルーティング情報を付加することでフォーマット変換することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の通信制御装置。
【請求項7】
前記送受信信号は、SIPに準拠するINVITE、またはSUBSCRIBEのリクエストメッセージであり、
前記中継部は、前記端末種別記憶部に記憶された非IMS端末向けのリクエストメッセージ内の発信者情報を、当該非IMS端末で処理可能な発信者情報に直すことでフォーマット変換することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の通信制御装置。
【請求項8】
前記送受信信号は、SIPに準拠するINVITEメッセージまたはINVITEメッセージに対する応答メッセージであり、
前記中継部は、前記端末種別記憶部に記憶された非IMS端末との間のINVITEメッセージ内または応答メッセージ内のメディアに関する情報を、当該非IMS端末で処理可能なメディアに関する情報に変換することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の通信制御装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の通信制御装置と、前記通信制御装置に接続され、ユーザ単位で情報が登録されるデータベースを有するIMS対応の管理サーバを備え、
前記管理サーバのデータベースは、前記ユーザ端末のユーザIDが登録されるユーザIDフィールドと、前記ユーザ端末に関連する付加情報が登録される付加情報フィールドとを含み、
前記ユーザIDフィールドにユーザIDを登録し、前記付加情報フィールドに付加情報として前記ユーザ端末が属するグループのグループIDを登録してユーザIDとグループIDとを関連付けると共に、前記ユーザIDフィールドにグループIDを登録し、前記付加情報フィールドに付加情報としてグループ情報を登録してグループIDとグループ情報とを関連付けることで、グループIDを介してユーザIDとグループ情報とを関連付けることを特徴とする通信制御システム。
【請求項10】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の通信制御装置と、前記通信制御装置から中継された前記ユーザ端末のユーザ情報が登録されたデータベースを有する管理サーバとを備えた前記IMS対応のシステム内に、前記非IMS対応のアプリケーションサーバをさらに備え、
前記アプリケーションサーバは、非IMS対応のデータベースに対するAPI(Application Programming Interface)をIMS対応のデータベースに対するAPIにインターフェース変換するコンバータを有し、前記コンバータによるインターフェース変換によりIMS対応のAPIを介して前記管理サーバのデータベースを参照し、前記ユーザ端末にアプリケーションを提供することを特徴とする通信制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−205188(P2011−205188A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67844(P2010−67844)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(303067478)株式会社 ネクストジェン (12)
【Fターム(参考)】