説明

通信方法およびそれを利用した端末装置

【課題】複数の基地局装置からサブチャネルを割当可能な端末装置に対して、タイムアライメントの指示を確実に実行させる通信技術を提供する。
【解決手段】RF部50、変復調部52は、複数のサブチャネルの周波数多重によってタイムスロットが形成されており、複数の基地局装置からひとつのタイムスロットに含まれた別のサブチャネルが割り当てられることによって、複数の基地局装置のそれぞれと通信する。無線制御部56は、RF部50、変復調部52が通信している複数の基地局装置のそれぞれから、タイムアライメントの指示を受けつける。無線制御部56は、受けつけた複数のタイムアライメントの指示をもとに送信タイミングを決定し、決定した送信タイミングによる送信をRF部50、変復調部52に指示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信技術に関し、特に基地局装置にチャネルを割り当てられる通信方法およびそれを利用した端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無線基地局と無線移動局によって構成される移動通信システムでは、無線基地局が、無線移動局に対して、リソースとして、チャネルを割り当てる。また、割り当てられたチャネルを使用しながら、無線基地局と無線移動局との間において、通信がなされる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−270941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、無線通信において、限りある周波数資源の有効利用が望まれている。特に、通信速度の高速化に伴い、その要請はさらに高まっている。この要請に応えるための技術のひとつが、OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)方式であり、これは、TDMA/TDDと組合せ可能である。OFDMAとは、OFDMを利用しながら複数の端末装置を周波数多重する技術である。このようなOFDMAでは、複数のサブキャリアによってサブチャネルが形成されており、複数のサブチャネルによってマルチキャリア信号が形成されている。
【0005】
また、TDMAと組み合わされることによって、マルチキャリア信号は、時間軸上において複数のタイムスロットに分割される。その結果、基地局装置は、少なくともひとつのタイムスロットにおけるサブチャネルを端末装置に割り当てることによって、端末装置とのデータ通信を実行する。広帯域なアプリケーションを利用する場合、端末装置は、複数のリソース、つまり複数のサブチャネルを必要とする。このようなアプリケーションを多くの端末装置が利用するためには、各端末装置が複数の基地局装置からサブチャネルを確保できるようなサブチャネル割当が必要になる。
【0006】
一方、基地局装置と端末装置との距離は、端末装置単位によって異なる。端末装置は、基地局装置によって規定されたタイムスロットにおさまるように、割り当てられたサブチャネルのパケット信号を送信しなければならない。しかしながら、基地局装置と端末装置との距離が長ければ、端末装置によって送信されたパケット信号は、タイムスロットよりも遅れたタイミングにて基地局装置に受信されることがある。その際、基地局装置は、タイムアライメントを実行する。タイムアライメントでは、基地局装置が、パケット信号の送信タイミングを早くするように端末装置に指示する。複数の基地局装置のそれぞれから端末装置がサブチャネルを割り当てられており、かつ同一のタイムスロットに含まれた別のタイムスロットが割り当てられている場合、端末装置は、複数の基地局装置のそれぞれからタイムアライメントの指示を受けつける。その結果、端末装置において送信タイミングが不明になってしまう。
【0007】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の基地局装置からサブチャネルを割当可能な端末装置に対して、タイムアライメントの指示を確実に実行させる通信技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の端末装置は、複数のサブチャネルの周波数多重によってタイムスロットが形成されており、複数の基地局装置からひとつのタイムスロットに含まれた別のサブチャネルが割り当てられることによって、複数の基地局装置のそれぞれと通信する通信部と、通信部が通信している複数の基地局装置のそれぞれから、タイムアライメントの指示を受けつける受付部と、受付部において受けつけた複数のタイムアライメントの指示をもとに送信タイミングを決定し、決定した送信タイミングによる送信を通信部に指示する指示部と、を備える。
【0009】
本発明の別の態様は、通信方法である。この方法は、複数のサブチャネルの周波数多重によってタイムスロットが形成されており、複数の基地局装置からひとつのタイムスロットに含まれた別のサブチャネルが割り当てられることによって、複数の基地局装置のそれぞれと通信するステップと、通信している複数の基地局装置のそれぞれから、タイムアライメントの指示を受けつけるステップと、受けつけた複数のタイムアライメントの指示をもとに送信タイミングを決定し、決定した送信タイミングによる送信を指示するステップと、を備える。
【0010】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数の基地局装置からサブチャネルを割当可能な端末装置に対して、タイムアライメントの指示を確実に実行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例に係る通信システムの構成を示す図である。
【図2(a)】図1の通信システムにおけるフレーム構成を示す図である。
【図2(b)】図1の通信システムにおけるフレーム構成を示す図である。
【図2(c)】図1の通信システムにおけるフレーム構成を示す図である。
【図3】図1の通信システムにおけるサブチャネルの配置を示す図である。
【図4】図1の基地局装置の構成を示す図である。
【図5】図1の端末装置の構成を示す図である。
【図6】図6(a)−(b)は、図1の通信システムにおける上り回線の送受信タイミングを示す図である。
【図7】図7(a)−(b)は、図1の通信システムにおける上り回線の別の送受信タイミングを示す図である。
【図8(a)】図4の基地局装置によって割り当てられたサブチャネルを示す図である。
【図8(b)】図4の基地局装置によって割り当てられたサブチャネルを示す図である。
【図8(c)】図4の基地局装置によって割り当てられたサブチャネルを示す図である。
【図9】図1の通信システムによる割当手順を示すシーケンス図である。
【図10】図4の基地局装置による割当手順を示すフローチャートである。
【図11】図5の端末装置による送信タイミングの指示手順を示すフローチャートである。
【図12】図5の端末装置による送信タイミングの別の指示手順を示すフローチャートである。
【図13】図5の端末装置による送信タイミングのさらに別の指示手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を具体的に説明する前に、まず概要を述べる。本発明の実施例は、基地局装置と、少なくともひとつの端末装置によって構成される通信システムに関する。通信システムにおいて、各フレームは、複数のタイムスロットが時間分割多重されることによって形成され、各タイムスロットは、複数のサブチャネルが周波数分割多重されることによって形成されている。また、各サブチャネルは、マルチキャリア信号によって形成されている。ここで、マルチキャリア信号としてOFDM信号が使用されており、周波数分割多重としてOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)方式が使用されている。OFDMA方式とは、OFDMを利用しながら複数の端末装置を周波数多重する技術である。
【0014】
基地局装置は、各タイムスロットに含まれた複数のサブチャネルのそれぞれを端末装置に割り当てることによって、複数の端末装置との通信を実行する。一方、端末装置と基地局装置との間の距離が大きい場合、端末装置から送信されたパケット信号が、基地局装置において規定されたタイムスロットにおさまらないこともある。その際、基地局装置は、タイムアライメントを実行することによって、端末装置に対して、パケット信号の送信タイミングの修正を指示する。前述のごとく、複数の基地局装置から端末装置がサブチャネルを割り当てられる場合に、これらのサブチャネルが同一のタイムスロットに含まれていれば、端末装置は、複数の基地局装置から異なったタイムアライメントの指示を受けつけることもある。その結果、端末装置では、どちらのタイムアライメントの指示にしたがえばよいか不明になる。これに対応するために、本実施例に係る通信システムは、以下の処理を実行する。
【0015】
基地局装置は、端末装置に複数のサブチャネルを割り当てる場合、複数のタイムスロットにまたがるようなサブチャネルを選択せずに、ひとつのタイムスロットに含まれるようなサブチャネルを選択する。つまり、基地局装置は、複数のサブチャネルを含んだタイムスロットの数が少なくなるように、複数のサブチャネルを選択する。また、基地局装置は、選択したサブチャネルを端末装置に割り当てることによって、端末装置との通信を実行する。その結果、端末装置は、別の基地局装置から割り当てられたタイムスロットを使用する。
【0016】
図1は、本発明の実施例に係る通信システム100の構成を示す。通信システム100は、基地局装置10、端末装置12と総称される第1端末装置12a、第2端末装置12b、第3端末装置12cを含む。
【0017】
基地局装置10は、一端に無線ネットワークを介して端末装置12を接続し、他端に図示しない有線ネットワークを接続する。また、端末装置12は、無線ネットワークを介して基地局装置10に接続する。基地局装置10は、複数の端末装置12に対して通信チャネルを割り当てることによって、複数の端末装置12との通信を実行する。具体的には、基地局装置10は、制御信号を報知しており、端末装置12は、制御信号を受信することによって、基地局装置10の存在を認識する。その後、端末装置12が基地局装置10に対してチャネル割当の要求信号を送信し、基地局装置10は、受信した要求信号に応答して、端末装置12に通信チャネルを割り当てる。
【0018】
また、基地局装置10は、端末装置12に割り当てた通信チャネルに関する情報を送信し、端末装置12は、割り当てられた通信チャネルを使用しながら、基地局装置10との通信を実行する。その結果、端末装置12から送信されたデータは、基地局装置10を介して、有線ネットワークに出力され、最終的に有線ネットワークに接続された図示しない通信装置に受信される。また、通信装置から端末装置12への方向にもデータは伝送される。なお、図1には、ひとつの基地局装置10が示されているが、通信システム100は、複数の基地局装置10を含んでもよく、端末装置12は、いずれかの基地局装置10から通信チャネルを割り当ててもらえれば、通信を実行できる。また、端末装置12が基地局装置10と通信可能であるか否かは、一般的に、基地局装置10と端末装置12との相対的な位置関係に依存する。
【0019】
以上の説明において、通信チャネルは、前述のサブチャネルとタイムスロットの組合せによって特定される。また、基地局装置10は、複数のタイムスロットと、複数のサブチャネルを有しているので、複数のタイムスロットによってTDMAを実行しつつ、複数のサブチャネルによってOFDMAを実行する。ここで、端末装置12は、基地局装置10において規定されたタイムスロットにおさまるように、データを送信する。一方、基地局装置10から離れた位置に端末装置12が存在すれば、端末装置12から基地局装置10への伝搬遅延が長くなる。そのため、端末装置12から送信されたデータが、タイムスロットのタイミングよりも遅くなることもあり得る。このような状態の発生を低減するために、基地局装置10は、タイムアライメントを実行する。つまり、基地局装置10は、タイムスロットよりも遅れたタイミングにて、端末装置12からのデータを受信した場合、端末装置12に対して送信タイミングを早めるように指示する。
【0020】
図2(a)−(c)は、通信システム100におけるフレーム構成を示す。図の横方向が時間軸に相当する。フレームは、8つのタイムスロットの時間多重によって形成されている。また、8つのタイムスロットは、4つの上りタイムスロットと4つの下りタイムスロットから構成されている。ここでは、4つの上りタイムスロットを「第1上りタイムスロット」から「第4上りタイムスロット」として示し、4つの下りタイムスロットを「第1下りタイムスロット」から「第4下りタイムスロット」として示す。また、図示したフレームは、連続して繰り返される。
【0021】
なお、フレームの構成は、図2(a)に限定されず、例えば、4つのタイムスロットや16個のタイムスロットによって構成されてもよいが、ここでは、説明を明瞭にするために、フレームの構成を図2(a)として説明する。また、説明を簡潔にするために、上りのタイムスロットと下りのタイムスロットの構成は、同一であるとする。そのため、上りタイムスロットと下りタイムスロットのいずれかについてのみ説明を行う場合もあるが、他方のタイムスロットも同様の説明が有効である。さらに、図2(a)に示されたフレームが複数連続することによって、スーパーフレームが形成される。ここでは、一例として、「20」個のフレームによって、スーパーフレームが形成されているものとする。
【0022】
図2(b)は、図2(a)のうちのひとつのタイムスロットの構成を示す。図の縦方向が周波数軸に相当する。図示のごとく、ひとつのタイムスロットは、「第1サブチャネル」から「第16サブチャネル」までの「16」個のサブチャネルの周波数多重によって形成される。また、これらの複数のサブチャネルは、周波数分割多重されている。各タイムスロットが図2(b)のように構成されているので、タイムスロットとサブチャネルとの組合せによって、前述の通信チャネルが特定される。また、図2(b)のうちのひとつのサブチャネルに対応したフレーム構成が図2(a)であるとしてもよい。なお、ひとつのタイムスロットに配置されるサブチャネルの数は、「16」個でなくてもよい。ここで、上りタイムスロットにおけるサブチャネルの割当と、下りタイムスロットにおけるサブチャネルの割当とは、同一であるものとする。また、スーパーフレームを単位にして、少なくともひとつの制御信号が割り当てられるものとする。例えば、スーパーフレームに含まれた複数の下りタイムスロットのうち、ひとつのタイムスロットのひとつのサブチャネルに制御信号が割り当てられる。また、上り回線も同様である。
【0023】
図2(c)は、図2(b)のうちのひとつのサブチャネルの構成を示す。図2(a)や図2(b)と同様に、図の横方向が時間軸に相当し、図の縦方向が周波数軸に相当する。また、周波数軸に対して、「1」から「29」の番号を付与しているが、これらは、サブキャリアの番号を示す。このように、サブチャネルは、マルチキャリア信号によって構成されており、特にOFDM信号によって構成されている。図中の「TS」は、トレーニングシンボルに相当し、既知の値によって構成される。また、「TS」中に制御信号が含まれてもよいものとする。「GS」は、ガードシンボルに相当し、ここに実質的な信号は配置されない。「PS」は、パイロットシンボルに相当し、既知の値によって構成される。「DS」は、データシンボルに相当し、送信すべきデータである。「GT」は、ガードタイムに相当し、ここに実質的な信号は配置されない。
【0024】
図3は、通信システム100におけるサブチャネルの配置を示す。図3では、横軸に周波数軸が示されており、図2(b)に示したタイムスロットに対するスペクトルが示される。ひとつのタイムスロットには、前述のごとく、第1サブチャネルから第16サブチャネルの16個のサブチャネルが周波数分割多重されている。各サブチャネルは、マルチキャリア信号、ここでは、OFDM信号によって構成されている。
【0025】
図4は、基地局装置10の構成を示す。基地局装置10は、RF部20と総称される第1RF部20a、第2RF部20b、第NRF部20n、ベースバンド処理部22、変復調部24、IF部26、無線制御部28、記憶部30を含む。また、無線制御部28は、制御チャネル決定部32、無線リソース割当部38を含む。
【0026】
RF部20は、受信処理として、図示しない端末装置12から受信した無線周波数のマルチキャリア信号に対して周波数変換を実行し、ベースバンドのマルチキャリア信号を生成する。ここで、マルチキャリア信号は、図3のごとく形成されており、また、図2(a)の上りタイムスロットに相当する。さらに、RF部20は、ベースバンドのマルチキャリア信号をベースバンド処理部22に出力する。一般的に、ベースバンドのマルチキャリア信号は、同相成分と直交成分によって形成されるので、ふたつの信号線によって伝送されるべきであるが、ここでは、図を明瞭にするためにひとつの信号線だけを示すものとする。また、RF部20には、AGCやA/D変換部も含まれる。
【0027】
RF部20は、送信処理として、ベースバンド処理部22から入力したベースバンドのマルチキャリア信号に対して周波数変換を実行し、無線周波数のマルチキャリア信号を生成する。さらに、RF部20は、無線周波数のマルチキャリア信号を送信する。なお、RF部20は、受信したマルチキャリア信号と同一の無線周波数帯を使用しながら、マルチキャリア信号を送信する。つまり、図2(a)のごとく、TDD(Time Division Duplex)が使用されているものとする。また、RF部20には、PA(Power Amplifier)、D/A変換部も含まれる。
【0028】
ベースバンド処理部22は、受信動作として、複数のRF部20のそれぞれからベースバンドのマルチキャリア信号を入力する。ベースバンドのマルチキャリア信号は、時間領域の信号であるので、ベースバンド処理部22は、FFTによって、時間領域の信号を周波数領域に変換し、周波数領域の信号に対してアダプティブアレイ信号処理を実行する。また、ベースバンド処理部22は、タイミング同期、つまりFFTのウインドウの設定を実行し、ガードインターバルの削除も実行する。タイミング同期等には、公知の技術が使用されればよいので、ここでは、説明を省略する。ベースバンド処理部22は、アダプティブアレイ信号処理の結果を変復調部24へ出力する。ベースバンド処理部22は、送信動作として、変復調部24から、周波数領域のマルチキャリア信号を入力し、ウエイトベクトルによる分散処理を実行する。
【0029】
ベースバンド処理部22は、送信動作として、変復調部24から入力した周波数領域のマルチキャリア信号に対して、IFFTによって、周波数領域の信号を時間領域に変換し、変換した時間領域の信号をRF部20へ出力する。また、ベースバンド処理部22は、ガードインターバルの付加も実行するが、ここでは説明を省略する。ここで、周波数領域の信号は、図2(b)のごとく、複数のサブチャネルを含み、さらにサブチャネルのそれぞれは、図2(c)の縦方向のごとく、複数のサブキャリアを含む。図を明瞭にするために、周波数領域の信号は、サブキャリア番号の順に並べられて、シリアル信号を形成しているものとする。
【0030】
変復調部24は、受信処理として、ベースバンド処理部22からの周波数領域のマルチキャリア信号に対して、復調を実行する。周波数領域に変換したマルチキャリア信号は、図2(b)や(c)のごとく、複数のサブキャリアのそれぞれに対応した成分を有する。また、復調は、サブキャリア単位でなされる。変復調部24は、復調した信号をIF部26に出力する。また、変復調部24は、送信処理として、変調を実行する。変復調部24は、変調した信号を周波数領域のマルチキャリア信号としてベースバンド処理部22に出力する。
【0031】
IF部26は、受信処理として、変復調部24から復調結果を受けつけ、復調結果を端末装置12単位に分離する。つまり、復調結果は、図3のごとく、複数のサブチャネルによって構成されている。そのため、ひとつのサブチャネルがひとつの端末装置12に割り当てられている場合、復調結果には、複数の端末装置12からの信号が含まれている。IF部26は、このような復調結果を端末装置12単位に分離する。IF部26は、分離した復調結果を図示しない有線ネットワークに出力する。その際、IF部26は、宛先を識別するための情報、例えば、IP(Internet Protocol)アドレスにしたがって送信を実行する。
【0032】
また、IF部26は、送信処理として、図示しない有線ネットワークから複数の端末装置12に対するデータを入力する。IF部26は、データをサブチャネルに割り当て、複数のサブチャネルからマルチキャリア信号を形成する。つまり、IF部26は、図3のごとく、複数のサブチャネルによって構成されるマルチキャリア信号を形成する。なお、データが割り当てられるべきサブチャネルは、図2(c)のごとく予め決められており、それに関する指示は、無線制御部28から受けつけるものとする。IF部26は、マルチキャリア信号を変復調部24に出力する。
【0033】
無線制御部28は、基地局装置10の動作を制御する。無線制御部28は、図2(a)−(c)、図3のごとく、複数のサブチャネルの周波数多重によって形成されたタイムスロット、複数のタイムスロットの時間多重によって形成されたフレームを規定する。無線リソース割当部38は、変復調部24からRF部20を介して、制御信号を報知する。ここで、制御信号には、自らの識別番号および空きサブチャネル数の情報等を含める。なお、制御信号は、後述の制御チャネル決定部32によって決定されるサブチャネルに割り当てられる。無線リソース割当部38は、RF部20から変復調部24を介して、図示しない端末装置12からのサブチャネルの割当要求を受けつける。
【0034】
無線リソース割当部38は、割当要求を受けつけた端末装置12にサブチャネルを割り当てる。ここで、無線リソース割当部38は、上りタイムスロットおよび下りタイムスロットに含まれたサブチャネルを端末装置12に割り当てる。特に、上りタイムスロットにおけるサブチャネルの割当と、下りタイムスロットにおけるタイムスロットの割当は、対称になされるものとする。また、上りタイムスロットおよび下りタイムスロットのそれぞれにおいて、無線リソース割当部38は、少なくともふたつのサブチャネルを端末装置12に割り当てるものとする。
【0035】
ここでは、サブチャネルの割当方について説明する。無線リソース割当部38は、少なくともふたつのサブチャネルを含んだタイムスロットの数が少なくなるように、端末装置12に割り当てるべき少なくともふたつのサブチャネルを決定する。タイムスロットの数が少なくなるようにとは、タイムスロットの数が1に近くなるようにということである。つまり、無線リソース割当部38は、割り当てるべきサブチャネルの数を特定し、特定した数よりも多くの空きサブチャネル数を有するタイムスロットを特定する。また、無線リソース割当部38は、特定したタイムスロットの空きサブチャネルにおける干渉量を確認し、空きサブチャネルを端末装置12に割当可能かを決定する。割当可能であれば、無線リソース割当部38は、当該空きサブチャネルを端末装置12に割り当てる。一方、割当可能でなければ、別のタイムスロットに対しても同様の処理を実行し、タイムスロット数が少なくなるように割り当てるべきサブチャネルを決定する。
【0036】
無線リソース割当部38は、さらに以下のようにサブチャネルを割り当ててもよい。ここで、端末装置12に割り当てる少なくともふたつのサブチャネルの中には、所定のしきい値よりもリアルタイム性を要求するようなデータ(以下、「リアルタイムデータ」という)が配置されるサブチャネルと、所定のしきい値よりもリアルタイム性を要求しないようなデータ(以下、「非リアルタイムデータ」という)が配置されるサブチャネルとが含まれている。また、無線リソース割当部38は、リアルタイムデータが配置されるサブチャネルを含んだタイムスロットの数が優先的に少なくなるように、端末装置12に割り当てるべき少なくともふたつのサブチャネルを決定する。つまり、無線リソース割当部38は、リアルタイムデータに対して、前述の処理をまず実行する。その後、残ったサブチャネルをもとに、非リアルタイムデータに対して、同様の処理を実行する。その結果、非リアルタイムデータは、リアルタイムデータと比べて、複数のタイムスロットにまたがりやすくなる。しかしながら、他の基地局装置10によるサブチャネルの割当状況に応じて、無線リソース割当部38は、非リアルタイムデータを割り当てたサブチャネルを解放すればよいので、リアルタイムデータに与える影響を低減できる。
【0037】
さらに、無線リソース割当部38は、当該端末装置12に対して、変復調部24からRF部20を介して、割当通知を送信する。割当通知には、割り当てたサブチャネルおよびタイムスロットの情報が含まれている。無線リソース割当部38は、RF部20から変復調部24に、サブチャネルを割り当てた端末装置12との通信を実行させる。その際、無線リソース割当部38は、端末装置12に対して、タイムアライメントを実行する。タイムアライメントの処理については、公知の技術が使用されればよいので、ここでは、説明を省略する。
【0038】
制御チャネル決定部32は、制御信号をサブチャネルに割り当てる。ここで、制御信号とは、前述のごとく、端末装置12との通信を制御するために使用される情報が含まれた信号である。このような制御信号の重要性は、データ信号よりも高いといえる。制御チャネル決定部32は、記憶部30を参照しながら、予め定めたサブチャネルに制御信号を選択する。また、制御チャネル決定部32は、選択したサブチャネルを無線リソース割当部38に通知する。無線リソース割当部38は、制御チャネル決定部32からの通知にしたがって、制御信号にサブチャネルを割り当てる。記憶部30は、無線制御部28と連携し、端末装置12に割り当てたサブチャネルの情報や、制御チャネルの情報を記憶する。
【0039】
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされた通信機能のあるプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0040】
図5は、端末装置12の構成を示す。端末装置12は、RF部50、変復調部52、IF部54、無線制御部56、記憶部58を含む。
【0041】
RF部50、変復調部52は、RF部20、変復調部24と同様の処理を実行するので、ここでは、説明を省略する。IF部54は、受信処理として、変復調部52から復調結果を受けつけ、復調結果を図示しないディスプレイやスピーカに出力する。また、IF部54は、送信処理として、図示しないボタンやマイクからデータを入力する。IF部54は、データをサブチャネルに割り当てる。IF部26は、マルチキャリア信号を変復調部52に出力する。
【0042】
無線制御部56は、RF部50からIF部54の動作を制御する。基地局装置10との通信を実行する前、無線制御部56は、各基地局装置10から送信される制御信号を受信する。制御信号は、スーパーフレームに含まれた複数の下りタイムスロットのうち、ひとつのタイムスロットのひとつのサブチャネルに割り当てられている。また、制御信号には、前述のごとく、当該制御信号を送信した基地局装置10の識別番号、空きサブチャネル数等の情報が含まれている。無線制御部56は、取得した情報を記憶部58に記憶する。無線制御部56は、記憶部58を参照しながら、サブチャネルの割当を要求すべき基地局装置10を選択する。例えば、無線制御部56は、空きサブチャネル数の多い基地局装置10を選択する。また、記憶部58には、制御信号を受信したときの受信電力も記憶されており、無線制御部56は、受信電力の大きい制御信号に対応した基地局装置10を選択してもよい。
【0043】
無線制御部56は、変復調部52、RF部50を介して、選択した基地局装置10に割当要求を送信する。また、無線制御部56は、RF部50、変復調部52を介して、基地局装置10から割当通知を受信する。割当通知には、割り当てられたタイムスロットおよびサブチャネルの情報が含まれているので、無線制御部56は、割り当てられてたタイムスロットおよびサブチャネルにおいて、RF部50からIF部54に通信動作を実行させる。なお、無線制御部56は、複数の基地局装置10のそれぞれからサブチャネルが割り当てられることによって、複数の基地局装置10のそれぞれと通信してもよい。一方、無線制御部56は、割当通知の代わりに、拒否を受けつける場合もある。その際、無線制御部56は、別の基地局装置10を選択し、選択した別の基地局装置10に割当要求を送信する。
【0044】
通信開始後、無線制御部56は、RF部50、変復調部52を介して、基地局装置10から、タイムアライメントの指示を受けつける。タイムアライメントの指示とは、「送信タイミングを現在よりも早くせよ」、「送信タイミングを現在よりも1nsec早くせよ」といった情報である。無線制御部56は、タイムアライメントの指示にしたがいながら、送信タイミングを導出する。また、無線制御部56は、変復調部52、RF部50に対して、導出した送信タイミングによる送信を指示する。
【0045】
図6(a)−(b)は、通信システム100における上り回線の送受信タイミングを示す。図6(a)は、説明の対象となる通信システム100の構成を示す。通信システム100は、基地局装置10と総称される第1基地局装置10a、第2基地局装置10b、端末装置12を含む。図示のごとく、基地局装置10は、第1基地局装置10aおよび第2基地局装置10bとに対して、通信を実行する。ここで、端末装置12は、第1基地局装置10aおよび第2基地局装置10bとに対して、等間隔に近くなるような位置に存在し、両者との距離もある程度近いものとする。例えば、第1基地局装置10aによって形成されるサービスエリアと、第2基地局装置10bによって形成されるサービスエリアには、重複部分があり、端末装置12は、重複部分に存在する。さらに、端末装置12は、それぞれのサービスエリアの端部に存在しないものとする。
【0046】
図6(b)は、図6(a)の状況において、端末装置12から送信されるパケット信号と、基地局装置10において受信されるパケット信号とのタイミングを示す。また、横軸は、時間を示す。最上段は、端末装置12から第1基地局装置10aに送信されるパケット信号を示す。また、その下段は、第1基地局装置10aに受信されるパケット信号を示す。ここで、受信ウインドウが図示されているが、受信ウインドウとは、基地局装置10において、端末装置12に割り当てたサブチャネルが含まれる上りタイムスロットに相当する。
【0047】
図示のごとく、端末装置12から送信されたパケット信号は、「D1」だけ遅延して、第1基地局装置10aに受信される。受信されたパケット信号は、受信ウインドウにおさまっている。3段目は、端末装置12から第2基地局装置10bに送信されるパケット信号を示す。また、その下段は、第2基地局装置10bに受信されるパケット信号を示す。図示のごとく、端末装置12から送信されたパケット信号は、「D2」だけ遅延して、第2基地局装置10bに受信される。受信されたパケット信号は、受信ウインドウにおさまっている。
【0048】
図7(a)−(b)は、通信システム100における上り回線の別の送受信タイミングを示す。図7(a)は、図6(a)とは異なった状況での通信システム100の構成を示す。図7(a)では、図示のごとく、端末装置12が第1基地局装置10aの近傍に位置するが、端末装置12と第2基地局装置10bとの距離は、端末装置12と第1基地局装置10aとの距離に比べて、大きくなっている。図7(b)は、図7(a)の状況において、端末装置12から送信されるパケット信号と、基地局装置10において受信されるパケット信号とのタイミングを示す。図7(b)の構成は、図6(b)の構成と同様である。
【0049】
最上段は、端末装置12から第1基地局装置10aに送信されるパケット信号を示す。また、その下段は、第1基地局装置10aに受信されるパケット信号を示す。図示のごとく、端末装置12から送信されたパケット信号は、「D1’」だけ遅延して、第1基地局装置10aに受信される。受信されたパケット信号は、受信ウインドウにおさまっている。一方、3段目は、端末装置12から第2基地局装置10bに送信されるパケット信号を示す。また、その下段は、第2基地局装置10bに受信されるパケット信号を示す。図示のごとく、端末装置12から送信されたパケット信号は、「D2’」だけ遅延して、第2基地局装置10bに受信される。受信されたパケット信号は、受信ウインドウにおさまっていない。
【0050】
つまり、通信では距離に応じて遅延が発生する。このため、複数の端末装置12から基地局装置10への送信タイミングが同一であれば、基地局装置10における受信タイミングが遅延によりばらつく。その結果、基地局装置10は、遅延が大きい信号を誤りなく受信できない。これを解決するために、第2基地局装置10bは、端末装置12に対して、送信タイミングを早くするように、タイムアライメントの指示を出力する。端末装置12は、第2基地局装置10bから指示を受けると、送信タイミングに変更を加えて次のパケット信号を送信する。
【0051】
図8(a)−(c)は、基地局装置10によって割り当てられたサブチャネルを示す。図8(a)は、フレームのうちの上りタイムスロットの構成を示している。これは、図2(a)に示されたフレームのうちの上りタイムスロットと、図2(b)に示されたサブチャネルとが組み合わされた形になっている。なお、図2(b)と異なり、図を簡単にするために、図8では、ひとつのタイムスロットあたり8つのサブチャネルが含まれているものとする。第8サブチャネルでは、第1上りタイムスロットから第4上りタイムスロットにわたって、制御信号が配置されている。また、第1上りタイムスロットと第2上りタイムスロットにおいて、第5サブチャネルから第7サブチャネルは、第1基地局装置10aによる割当がなされている。一方、第1上りタイムスロットの第1サブチャネルから第4サブチャネル、第2上りタイムスロットの第3サブチャネルから第4サブチャネルは、第2基地局装置10bによる割当がなされている。
【0052】
そのため、第1上りタイムスロットと第2上りタイムスロットは、第1基地局装置10aと第2基地局装置10bとによるサブチャネルの割当がなされている。また、図7(a)の第2基地局装置10bのように、第1基地局装置10aと第2基地局装置10bが、端末装置12から離れたところに位置していれば、端末装置12は、第1基地局装置10aと第2基地局装置10bとからタイムアライメントの指示を受けつける。その結果、端末装置12は、どちらの指示にしたがえばよいのか分からなくなってしまう。つまり、端末装置12が複数の基地局装置10と通信を行うとき、複数の基地局装置10から同一の指示があれば送信タイミングは同一になるが、異なる指示があれば送信タイミングはそれぞれ異なるものになる。例えば、ふたつの指示のうちの一方が、現在の送信タイミングよりも遅く送信する旨の指示であり、他方が、現在の送信タイミングよりも早く送信する旨の指示であるように、指示が矛盾してれば、端末装置12の動作は、一意に決められなくなる。
【0053】
図8(b)も、図8(a)と同様に、フレームのうちの上りタイムスロットの構成を示す。図8(b)は、図4の無線リソース割当部38がサブチャネルを割り当てた場合を示す。図示のごとく、第1上りタイムスロットにおける第2サブチャネルから第7サブチャネルは、第1基地局装置10aによる割当がなされており、第2上りタイムスロットにおける第2サブチャネルから第7サブチャネルは、第2基地局装置10bによる割当がなされている。また、図7(a)の第2基地局装置10bのように、第1基地局装置10aと第2基地局装置10bが、端末装置12から離れたところに位置していれば、端末装置12は、第1基地局装置10aと第2基地局装置10bとからタイムアライメントの指示を受けつける。その際、端末装置12は、第1上りタイムスロットにおいて第1基地局装置10aからの指示にしたがい、第2上りタイムスロットにおいて第2基地局装置10bからの指示にしたがう。その結果、端末装置12の動作は、タイムスロット単位に一意に決められる。
【0054】
図8(c)は、第1基地局装置10aのみからサブチャネルの割当がなされている場合を示す。図中の「RT」は、前述のリアルタイムデータに相当し、「NRT」は、前述の非リアルタイムデータに相当する。図示のごとく、第1上りタイムスロットにおける第2サブチャネルから第6サブチャネルには、RTが配置されており、第1上りタイムスロットから第3上りタイムスロットにわたる第7サブチャネルには、NRTが配置されている。このような状況において、別の基地局装置10によるサブチャネルの割当がなされる場合、端末装置12は、第2上りタイムスロットと第3上りタイムスロットのNRTを解放してもよい。その結果、第2上りタイムスロットから第4上りタイムスロットのいずれかに、別の基地局装置10によるサブチャネルが割り当てられる。このように、端末装置12は、NRTが配置されたサブチャネルを解放しても、RTが配置されたサブチャネルを解放しないので、ユーザに与える影響を低減できる。
【0055】
以上の構成による通信システム100の動作を説明する。図9は、通信システム100による割当手順を示すシーケンス図である。端末装置12は、第1基地局装置10aに対して、割当要求を送信する(S10)。第1基地局装置10aは、端末装置12にサブチャネルを割り当て(S12)、その結果を割当通知として端末装置12に送信する(S14)。端末装置12は、第2基地局装置10bに対して、割当要求を送信する(S16)。第2基地局装置10bは、端末装置12にサブチャネルを割り当て(S18)、その結果を割当通知として端末装置12に送信する(S20)。以上の処理によって、端末装置12は、第1基地局装置10aと第2基地局装置10bとからサブチャネルを割り当てられる。
【0056】
図10は、基地局装置10による割当手順を示すフローチャートである。無線リソース割当部38は、割当要求を受信しなければ(S50のN)、待機する。割当要求を受信した場合(S50のY)、特定のタイムスロット内に割当可能なサブチャネルがあれば(S52のY)、無線リソース割当部38は、当該タイムスロット内のサブチャネルを割り当てる(S54)。一方、特定のタイムスロット内に割当可能なサブチャネルがなければ(S52のN)、無線リソース割当部38は、別のタイムスロット内のサブチャネルを割り当てる(S56)。無線リソース割当部38は、割り当てた結果を割当通知として送信する(S58)。
【0057】
以下、端末装置12の動作をさらに詳細に説明する。これまで、基地局装置10は、タイムスロットの数が少なくなるように、複数のサブチャネルを端末装置12に割り当てている。しかしながら、空きサブチャネルの状況によっては、ひとつのタイムスロットに含まれた別のサブチャネルが、異なった端末装置12によって割り当てられることもあり得る。その際、端末装置12は、複数の基地局装置10から、異なったタイムアライメントの指示を受けつけることもある。以下では、そのような状況における端末装置12の処理を説明する。ここで、端末装置12の構成は、図5の構成と同様のタイプである。
【0058】
RF部50、変復調部52は、複数の基地局装置10からひとつのタイムスロットに含まれた別のサブチャネルが割り当てられることによって、複数の基地局装置10のそれぞれと通信する。ここで、サブチャネルの割当は、図8(a)のごとくなされているものとする。無線制御部56は、RF部50、変復調部52を介して、複数の基地局装置10のそれぞれから、タイムアライメントの指示を受けつける。無線制御部56は、受けつけた複数のタイムアライメントの指示をもとに送信タイミングを決定し、決定した送信タイミングによる送信を変復調部52、RF部50に指示する。ここで、無線制御部56は、複数のタイムアライメントの指示のうちのいずれかを選択し、選択したタイムアライメントの指示をもとに送信タイミングを決定する。例えば、無線制御部56は、複数のタイムアライメントの指示のうち、最も早い送信タイミングあるいは最も遅い送信タイミングを選択する。
【0059】
図11は、端末装置12による送信タイミングの指示手順を示すフローチャートである。複数のタイムアライメントの指示を受けつけたとき(S100のY)、無線制御部56は、各送信タイミングを導出する(S102)。また、無線制御部56は、最後方の送信タイミングを選択する(S104)。一方、複数のタイムアライメントの指示を受けつけなかったとき(S100のN)、つまりひとつのタイムアライメントの指示を受けつけたとき、無線制御部56は、当該タイムアライメントの指示をもとに、送信タイミングを導出する(S106)。無線制御部56は、変復調部52、RF部50に送信タイミングを指示する(S108)。
【0060】
次も、複数の基地局装置10から端末装置12が異なったタイムアライメントの指示を受けつける状況において、端末装置12によって実行される処理を説明する。無線制御部56は、RF部50、変復調部52を介して、複数の基地局装置10のそれぞれから、タイムアライメントの指示を受けつける。無線制御部56は、受けつけた複数のタイムアライメントの指示のそれぞれをもとに、送信タイミングを導出する。つまり、無線制御部56は、複数の送信タイミングを導出する。また、無線制御部56は、複数の送信タイミングに対して、平均等の統計処理を実行することによって、ひとつの送信タイミングを決定する。さらに、無線制御部56は、決定した送信タイミングによる送信を変復調部52、RF部50に指示する。
【0061】
図12は、端末装置12による送信タイミングの別の指示手順を示すフローチャートである。複数のタイムアライメントの指示を受けつけたとき(S120のY)、無線制御部56は、各送信タイミングを導出する(S122)。また、無線制御部56は、各送信タイミングをもとに統計処理を実行する(S124)ことによって、送信タイミングを決定する。一方、複数のタイムアライメントの指示を受けつけなかったとき(S120のN)、つまりひとつのタイムアライメントの指示を受けつけたとき、無線制御部56は、当該タイムアライメントの指示をもとに、送信タイミングを導出する(S126)。無線制御部56は、変復調部52、RF部50に送信タイミングを指示する(S128)。
【0062】
さらに次も、複数の基地局装置10から端末装置12が異なったタイムアライメントの指示を受けつける状況において、端末装置12によって実行される処理を説明する。無線制御部56は、RF部50、変復調部52を介して、複数の基地局装置10のそれぞれから、タイムアライメントの指示を受けつける。無線制御部56は、RF部50、変復調部52が通信している複数の基地局装置10のうち、近接した位置の基地局装置10を推定する。ここで、推定は、各基地局装置10との間において使用されている伝送速度をもとになされる。伝送速度は、例えば、変調方式、符号化率等の組合せによって決定されるが、一般的に、伝搬環境がよくなるほど伝送速度は高速になる。また、近接した位置の基地局装置10ほど、伝搬環境がよくなる。
【0063】
そのため、無線制御部56は、伝送速度が最も高速である基地局装置10を選択し、当該基地局装置10が最も近接していると推定する。なお、無線制御部56は、伝送速度を使用せずに、受信電力の最も大きい基地局装置10を選択してもよい。無線制御部56は、推定した基地局装置10からのタイムアライメントの指示をもとに送信タイミングを決定する。さらに、無線制御部56は、決定した送信タイミングによる送信を変復調部52、RF部50に指示する。
【0064】
図13は、端末装置12による送信タイミングのさらに別の指示手順を示すフローチャートである。複数のタイムアライメントの指示を受けつけたとき(S140のY)、無線制御部56は、伝送速度の高い基地局装置10を選択する(S142)。また、無線制御部56は、選択した基地局装置10からのタイムアライメントの指示を選択する(S144)。さらに、無線制御部56は、選択したタイムアライメントの指示をもとに、送信タイミングを導出する(S146)。一方、複数のタイムアライメントの指示を受けつけなかったとき(S140のN)、つまりひとつのタイムアライメントの指示を受けつけたとき、無線制御部56は、当該タイムアライメントの指示をもとに、送信タイミングを導出する(S148)。無線制御部56は、変復調部52、RF部50に送信タイミングを指示する(S150)。
【0065】
本発明の実施例によれば、少なくともふたつのサブチャネルを含んだタイムスロットの数が少なくなるように、端末装置に割り当てるべき少なくともふたつのサブチャネルを決定するので、端末装置において、所定のタイムスロットを割り当てる基地局装置の数を少なくできる。また、端末装置において、所定のタイムスロットを割り当てる基地局装置の数が少なくなるので、複数の基地局装置からのタイムアライメントの指示を受けつける場合であっても、指示の重複を回避できる。また、別のタイムスロットに対する指示になるので、複数の基地局装置からサブチャネルを割当可能な端末装置に対して、タイムアライメントの指示を確実に実行させることができる。また、非リアルタイムデータに対して、リアルタイムデータを優先的に所定のタイムスロットに集中して割り当てるので、リアルタイムデータを割り当てたタイムスロットを独占的に使用しやすくできる。
【0066】
また、リアルタイムデータを割り当てたタイムスロットが所定の基地局装置に独占的に使用されるので、所定の基地局装置からのタイムアライメントの指示にしたがうことができる。また、別の基地局装置によるサブチャネルの割当がなされるときに、非リアルタイムデータを割り当てたサブチャネルを解放するので、リアルタイムデータを割り当てたサブチャネルを継続して使用できる。また、リアルタイムデータを割り当てたサブチャネルを継続して使用するので、ユーザに与える影響を低減できる。
【0067】
また、複数の基地局装置のそれぞれからタイムアライメントの指示を受けつける場合でも、いずれかを選択するので、タイムアライメントの指示を確実に実行できる。また、後方の送信タイミングを選択するので、干渉の影響を低減できる。また、統計処理によって送信タイミングを決定するので、複数の基地局装置のそれぞれに適した送信タイミングを使用できる。また、近接した位置に存在する基地局装置を推定し、当該基地局装置からの指示にしたがうので、伝送速度の高い回線を維持できる。
【0068】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0069】
10 基地局装置、 12 端末装置、 20 RF部、 22 ベースバンド処理部、 24 変復調部、 26 IF部、 28 無線制御部、 30 記憶部、 32 制御チャネル決定部、 38 無線リソース割当部、 50 RF部、 52 変復調部、 54 IF部、 56 無線制御部、 58 記憶部、 100 通信システム。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のサブチャネルの周波数多重によってタイムスロットが形成されており、複数の基地局装置からひとつのタイムスロットに含まれた別のサブチャネルが割り当てられることによって、複数の基地局装置のそれぞれと通信する通信部と、
前記通信部が通信している複数の基地局装置のそれぞれから、タイムアライメントの指示を受けつける受付部と、
前記受付部において受けつけた複数のタイムアライメントの指示をもとに送信タイミングを決定し、決定した送信タイミングによる送信を前記通信部に指示する指示部と、
を備えることを特徴とする端末装置。
【請求項2】
複数のサブチャネルの周波数多重によってタイムスロットが形成されており、複数の基地局装置からひとつのタイムスロットに含まれた別のサブチャネルが割り当てられることによって、複数の基地局装置のそれぞれと通信するステップと、
通信している複数の基地局装置のそれぞれから、タイムアライメントの指示を受けつけるステップと、
受けつけた複数のタイムアライメントの指示をもとに送信タイミングを決定し、決定した送信タイミングによる送信を指示するステップと、
を備えることを特徴とする通信方法。
【請求項3】
複数のサブチャネルの周波数多重によってタイムスロットが形成されており、複数の基地局装置からひとつのタイムスロットに含まれた別のサブチャネルが割り当てられることによって、複数の基地局装置のそれぞれと通信するステップと、
通信している複数の基地局装置のそれぞれから、タイムアライメントの指示を受けつけるステップと、
受けつけた複数のタイムアライメントの指示をもとに送信タイミングを決定し、決定した送信タイミングによる送信を指示するステップと、
をコンピュータに実行させるプログラム。



【図1】
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【図2(a)】
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【図2(b)】
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【図2(c)】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8(a)】
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【図8(b)】
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【図8(c)】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−48433(P2013−48433A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−206527(P2012−206527)
【出願日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【分割の表示】特願2007−117093(P2007−117093)の分割
【原出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】