説明

通信機能付コネクタ装置

【課題】内部の配線パターンや電子部品等について防水する。
【解決手段】コネクタハウジング12を分割ハウジング20,30の合体により構成して小型化する。各分割ハウジング20,30同士の接合部分を、コネクタハウジング12の嵌合凸部11部分に限定し、雌型コネクタ40の嵌合孔43の内部に嵌入する。嵌合凸部11の基部に防水部材14を設ける。嵌合凸部11を雌型コネクタ40の嵌合孔43内に嵌入する際、雌型コネクタ40の先端部が防水部材14に当接し、この防水部材14自身の弾性復元力により雌型コネクタ40との間の間隙45が埋められて、この間隙45が水密状に保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信機能付コネクタ装置及びそれに関連する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の低燃費性向上、乗員の快適性向上といった機能を充実させる目的で、車両に搭載される負荷やセンサ等の電装機器数は増加する一途にある。
【0003】
これに伴い、ワイヤーハーネスの回路数も増加しているが、ワイヤーハーネスの配索スペースの制約から、回路数の削減が要求されている。
【0004】
その方策のひとつとして、信号多重化による信号線の削減がある。これに対応するため、負荷制御等を行う制御回路及び通信制御回路を組み込んだ通信機能付コネクタ装置を、電子制御装置(ECU)、モータ等の各種負荷、センサ等に接続した技術が考えられている。
【0005】
この種の通信機能付コネクタ装置は、例えば、電子制御装置に接続されると共に、所定の通信ラインを介して他の電子制御装置に接続される。これにより、車内で、複数の電子制御装置による通信ネットワークを構成する。そして、各通信機能付コネクタ装置間で、所定のプロトコル(例えばCAN等)に従い、データ通信を行う。あるいは、各電装機器に接続されると共に、所定の通信ラインを介して電子制御装置に接続される。そして、電子制御装置と各通信機能付コネクタ装置との間で多重通信を行い、各通信機能付コネクタ装置が、電子制御装置からの制御指令に基づいて各負荷制御を行ったり、また、センサからの出力を受けてこれを電子制御装置に与える構成となっている。
【0006】
ところで、上記のような通信機能付コネクタ装置では、所定の通信制御機能を持たせるために、制御用IC等の電子部品を含む通信制御回路を組み込んだ上で、小型化を図る必要がある。
【0007】
そのための構成としては、コネクタハウジングの内面側にメッキ等により所定の回路パターンを形成してこれに電子部品を実装して、所定の制御回路を形成する構成が想定される。
【0008】
この場合に、生産性の観点からすると、コネクタハウジングを2分割構成にし、それぞれの分割ハウジング内面にメッキ等で所定の回路パターンを形成すると共に、電子部品を実装した後、両分割ハウジングを合体させることが好ましい。
【0009】
この場合、両分割ハウジングの回路を電気的に接続する構成としては、フレキシブルプリント回路基板(FPC)やフレキシブルフラットケーブル(FFC)等の柔軟性を持つ配線材を用いて接続する構成や、半田付により接続する構成等が考えられる。
【0010】
なお、金属メッキにより所定の回路パターンを形成した技術は、特許文献1に開示されている。
【0011】
【特許文献1】特開平7−294777号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、FPCやFFC等の配線材を用いて接続する構成では、コネクタ装置の大型化を招くことになる。
【0013】
また、通信機能付コネクタ装置を自動車に搭載する場合、車体の内部に雨水等が入りこんでもいいように、通信機能付コネクタ装置自体に防水機能を持たせる必要がある。
【0014】
そこで、本発明の課題は、通信機能付コネクタ装置の小型化を図りつつ、内部に組み込まれた配線パターンや電子部品等について防水機能を確保できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決すべく、請求項1に記載の発明は、外部配線と電子機器とに接続される通信機能付コネクタ装置であって、基部と当該基部の一面に突出形成されて所定の雌型コネクタの嵌合孔に嵌入される嵌合凸部とを備え且つ複数の分割ハウジングの合体により構成されるコネクタハウジングと、前記各分割ハウジングのそれぞれの内面側に形成された制御回路部とを備え、前記各分割ハウジング同士の接合部分が、前記嵌合凸部のみに限定されたものである。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の通信機能付コネクタ装置であって、前記コネクタハウジングの前記嵌合凸部の基端部において、前記雌型コネクタの先端部に当接して当該雌型コネクタの嵌合孔への浸水を防止する防水部材とを備えるものである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明の通信機能付コネクタ装置は、通信機能付コネクタ装置の小型化を図るために、複数の分割ハウジングを合体させることで制御回路部を形成する構造を採用する。この場合に、各分割ハウジング同士の接合部分が、嵌合凸部に限定されており、雌型コネクタの嵌合孔からはみ出したコネクタハウジングの基部においては、両分割ハウジング同士の接合部分が存在していない。即ち、両分割ハウジング同士の接合部分は、防水機能を付与しにくい基部の部分に位置することなく、雌型コネクタの嵌合孔の内部に嵌入される。したがって、雌型コネクタの嵌合孔内に位置するコネクタハウジングの嵌合凸部が浸水に晒されるのを防止でき、両分割ハウジング同士の接合部分の防水機能を確保できる。
【0018】
請求項2に記載の発明の通信機能付コネクタ装置は、嵌合凸部が雌型コネクタの嵌合孔内に嵌入される際に、雌型コネクタの先端部が防水部材に当接し、この防水部材自身の弾性復元力により雌型コネクタとの間の間隙が埋められて、この間隙が水密状に保持される。したがって、両分割ハウジング同士の接合部分の防水機能を確実に確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、この発明の実施形態に係る通信機能付コネクタ装置について説明する。
【0020】
この通信機能付コネクタ装置は、外部配線と電子機器とに接続されるものである。接続先となる電子機器としては、電子制御装置(ECU)や、各種アクチュエータやセンサ等の電装機器等が想定される。この通信機能付コネクタ装置の適用例としては、例えば、次の2つの例が考えられる。
【0021】
図1は本発明の通信機能付コネクタ装置の第1適用例に係る車両制御システムを示すブロック図である。この制御システムは、図1の如く、複数のECU2間で通信ネットワークを構成した例であり、即ち、接続ケーブル(外部配線)4に、電子機器としてのECU(電子制御装置)2が複数接続されている。通信機能付コネクタ装置10は、各ECU2に設けられる図示しないコネクタ嵌合部に嵌合接続された状態で、各ECU2と接続ケーブル4との間に介装される。そして、各通信機能付コネクタ装置10に対して通信アドレスが設定されており、各ECU2は、各通信機能付コネクタ装置10を介して、CAN等の所定のプロトコルに従って多重データ通信を行うようになっている。
【0022】
図2は通信機能付コネクタ装置の第2適用例に係る車両制御システムを示すブロック図である。
【0023】
この制御システムは、接続ケーブル(外部配線)4に、電子機器としてのECU(電子制御ユニット)2が接続されると共に、各種アクチュエータやセンサ等の複数の電装機器3がバス接続等されて構成されている。通信機能付コネクタ装置10は、電装機器3と接続ケーブル4との間に介装され、電装機器3に設けられる図示しないコネクタ嵌合部に嵌合接続されて、それらの電気的な接続及び機械的な固定が行われる。そして、各通信機能付コネクタ装置10に対して通信アドレスが設定されており、各通信機能付コネクタ装置10は、ECU2から接続ケーブル4を介して多重化されて与えられる制御信号に基づいて電装機器3を制御し、或いは、電装機器3側からの諸信号をECU2側に与えるようになっている。
【0024】
図3は、通信機能付コネクタ装置を示す斜視図であり、図4は同じくその側面視説明図であり、図5及び図6はこの通信機能付コネクタ装置と雌型コネクタとの嵌合動作を示す図である。
【0025】
この通信機能付コネクタ装置10は、図5及び図6に示すような所定の雌型コネクタ40の嵌合孔43に嵌合するための嵌合凸部11を有した雄型コネクタの構成とされており、具体的に、この通信機能付コネクタ装置10は、嵌合凸部11が形成されたコネクタハウジング12と、このコネクタハウジング12内に収納された制御回路部(図示省略)と、防水部材(ゴムシール)14とを備えている。
【0026】
コネクタハウジング12は、内部に電子機器との接続用の端子部や、所定の制御回路を構成するための電子部品等の制御回路部が収容可能に形成されており、特に、その嵌合凸部11が、その扁平方向に沿って第1及び第2の複数の分割ハウジング20,30に2分割され、これらの一対の分割ハウジング20,30の合体により構成されている。
【0027】
各分割ハウジング20,30は、絶縁性樹脂のモールド成型品等、絶縁性材料により形成されている。
【0028】
このうち、第1の分割ハウジング20は、コネクタハウジング12の嵌合凸部11において、その扁平方向に沿って2分割されたうちの上側部分を構成している。
【0029】
また、第2の分割ハウジング30は、コネクタハウジング12の基部15と、コネクタハウジング12の嵌合凸部11においてその扁平方向に沿って2分割されたうちの下側部分16とが一体的に連結された構造となっている。
【0030】
そして、コネクタハウジング12の嵌合凸部11において、両分割ハウジング20,30の合体形態は、ねじ止や係合構造等により保持される。
【0031】
また、この分割ハウジング20,30の互いに重ねて合体されるそれぞれの内面には、所定の回路パターンが形成されている。この回路パターンは、例えば、金属メッキ等により形成されている。このように、樹脂等の立体成型品の表面に、導電性の所定の回路パターンを形成した部品は、MID(Molded Interconnect Device:立体成型回路部品)と呼ばれ、上述した金属メッキ等周知の種々の方法により製造できる。
【0032】
さらに、各分割ハウジング20,30の内面には、本通信機能付コネクタ装置の諸制御機能を実現するための電子部品(例えば、通信用ICや負荷制御用IC等)が、その各端子を回路パターンに接続するようにして実装されている。
【0033】
そして、第1の分割ハウジング20を第2の分割ハウジング30に組み付けた状態では、例えば分割ハウジング20,30内に配された板ばね状の金属片や、分割ハウジング20,30の接合部に配された異方導電部材等の仲介導電部材を通じて、両分割ハウジング20,30の回路パターン同士が互いに電気的に接続されることとなり、こうして本通信機能付コネクタ装置の諸制御(例えば、通信制御や負荷制御等)を行うための制御回路部が構成されている。
【0034】
防水部材14は、例えばゴム製のリングであって、コネクタハウジング12の嵌合凸部11の基端部、即ち嵌合凸部11が基部15に接合する部分に填め込まれ、図6のように雌型コネクタ40の嵌合孔43に嵌合凸部11が嵌合した際に、雌型コネクタ40の先端部が防水部材14に当接し、この防水部材14自身の弾性復元力により雌型コネクタ40との間の間隙45が埋められて、この間隙45が水密状に保持される。
【0035】
このような通信機能付コネクタ装置10では、分割ハウジング20,30の内面に回路パターンを形成すると共に電子部品を実装しているため、別途他の実装基板等を組込む必要が無く、小型化が図られるという利点がある。また、分割ハウジング20,30に回路パターンを形成すると共に電子部品を実装して制御回路部を構成した後、これらを合体させているため、回路パターンの形成や電子部品の実装も容易に行え、生産性に優れるという利点がある。
【0036】
このような通信機能付コネクタ装置10は、例えば、次のようにして製造される。
【0037】
すなわち、各分割ハウジング20,30をモールド形成等でそれぞれ形成した後、該各分割ハウジング20,30の内面に金属メッキ等で回路パターン及び接続端子部を形成し、さらに、各電子部品を実装する。また、分割ハウジング20,30に対して端子部の組み込みや接続ケーブル4の組み込みを行う。そして、両分割ハウジング20,30の対向面間に板ばね状の金属片や異方導電部材等の仲介導電部材を挟込むようにして、両分割ハウジング20,30を合体させると、内部に制御回路部が構成された通信機能付コネクタ装置10の組立てが完了する。
【0038】
このように構成された通信機能付コネクタ装置10によると、各分割ハウジング20,30の内部に、制御回路部を容易に構成しつつ、その小型化を図ることができる。
【0039】
また、両分割ハウジング20,30同士の接続について、両分割ハウジング20,30同士を重ね合わせるだけで、容易に制御回路部を構成できる。
【0040】
次に、この実施の形態の理解を容易にするための比較例について説明する。図7は、通信機能付コネクタ装置10のコネクタハウジング12の分割ハウジング20,30の接合部分が、嵌合凸部11だけでなく基部15にまで到達している比較例を示す斜視図、図8は同じくその側面図である。
【0041】
図7及び図8に示した通信機能付コネクタ装置10において、図5及び図6に示したような雌型コネクタ40の嵌合孔43内に嵌入されるのは、嵌合凸部11のみである。したがって、コネクタハウジング12の基部15は、雌型コネクタ40(図5及び図6参照)の嵌合孔43からはみ出ることになり、よって基部15は防水機能を付与しにくい部分となる。しかしながら、両分割ハウジング20,30の形状を図7及び図8のように設定する場合、両分割ハウジング20,30同士の接合部分が嵌合凸部11だけでなく基部15にまで到達しているため、雌型コネクタ40(図5及び図6参照)の嵌合孔43内に嵌合凸部11を嵌入しても、両分割ハウジング20,30同士の基部15における接合部分が、雌型コネクタ40の嵌合孔43からはみ出してしまい、外部の浸水に晒され易くなる。
【0042】
これに対して、図3〜図6に示した実施の形態の通信機能付コネクタ装置10では、両分割ハウジング20,30同士の接合部分が、嵌合凸部11部分に限定されており、雌型コネクタ40の嵌合孔43からはみ出したコネクタハウジング12の基部15においては、両分割ハウジング20,30同士の接合部分が存在していない。即ち、両分割ハウジング20,30同士の接合部分は、防水機能を付与しにくい基部15の部分に位置することなく、雌型コネクタ40の嵌合孔43の内部に嵌入される。そして、嵌合凸部11が雌型コネクタ40の嵌合孔43内に嵌入される際には、雌型コネクタ40の先端部が防水部材14に当接し、この防水部材14自身の弾性復元力により雌型コネクタ40との間の間隙45が埋められて、この間隙45が水密状に保持される。したがって、雌型コネクタ40の嵌合孔43内に位置するコネクタハウジング12の嵌合凸部11が浸水に晒されるのを防止でき、両分割ハウジング20,30同士の接合部分の防水機能を確実に確保できる。
【0043】
このことは、両分割ハウジング20,30同士の接合面に、絶縁樹脂等で封止するなどの特別の防水部材等を設置することなく、この接合面の防水機能が確保されることを意味している。したがって、両分割ハウジング20,30同士の接合面を簡素な構造で防水機能を付与することが可能となる。
【0044】
尚、上記実施の形態では、コネクタハウジング12を、第1及び第2の分割ハウジング20,30といった2つの部材で構成していたが、これらの内部の回路パターン等を嵌合凸部11でのみ接続を行って接合する構成であれば、3つ以上の部材で構成しても差し支えない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一の実施の形態に係る通信機能付コネクタ装置の第1適用例を示すシステム構成図である。
【図2】本発明の一の実施の形態に係る通信機能付コネクタ装置の第2適用例を示すシステム構成図である。
【図3】同上の通信機能付コネクタ装置を示す斜視図である。
【図4】同上の通信機能付コネクタ装置を示す側面図である。
【図5】同上の通信機能付コネクタ装置を雌型コネクタに接続する動作を示す側面視模式図である。
【図6】同上の通信機能付コネクタ装置を雌型コネクタに接続する動作を示す側面視模式図である。
【図7】比較例に係る通信機能付コネクタ装置を示す斜視図である。
【図8】比較例に係る通信機能付コネクタ装置を示す側面図である。
【符号の説明】
【0046】
10 通信機能付コネクタ装置
11 嵌合凸部
12 コネクタハウジング
14 防水部材
15 基部
16 下側部分
20,30 分割ハウジング
40 雌型コネクタ
43 嵌合孔
45 間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部配線と電子機器とに接続される通信機能付コネクタ装置であって、
基部と当該基部の一面に突出形成されて所定の雌型コネクタの嵌合孔に嵌入される嵌合凸部とを備え且つ複数の分割ハウジングの合体により構成されるコネクタハウジングと、
前記各分割ハウジングのそれぞれの内面側に形成された制御回路部と
を備え、
前記各分割ハウジング同士の接合部分が、前記嵌合凸部のみに限定されたことを特徴とする通信機能付コネクタ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の通信機能付コネクタ装置であって、
前記コネクタハウジングの前記嵌合凸部の基端部において、前記雌型コネクタの先端部に当接して当該雌型コネクタの嵌合孔への浸水を防止する防水部材と
を備える通信機能付コネクタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−85977(P2006−85977A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−268225(P2004−268225)
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】