説明

通信端末装置

【課題】ダイヤルインサービスに対応した通信端末装置に関して、正確に局線回線の極性が確定され、誤動作を防止することができる通信端末装置を実現する。
【解決手段】通信端末装置は、プッシュボタン信号方式のダイヤルイン接続機能を備えた通信端末装置であって、局線の極性を判定する極性判定機能と、極性判定機能が局線の極性の反転を検出した後、呼出信号を受信したことに応答して一時応答信号を回線上に送出する一時応答信号送出機能(S406)と、一時応答信号送出機能による一時応答信号の送出後に、交換機から内線指定信号を受信したことを検出するための内線指定信号検出機能(S408)と、内線指定信号検出機能で内線指定信号の受信を検出したことに応答して、極性判定機能により、局線の極性を確定する極性確定機能(S410)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電話回線網に接続された通信端末装置に関し、特に、ダイヤルイン接続機能に対応した通信端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
企業などでは、構内交換機(PBX:Private Branch eXchange)などを設置して、ダイヤルインサービスを利用している。ダイヤルインサービスとは、電話回線網を通して企業の構内交換機などへ内線交換に必要な番号情報を送り、直接内線に接続できるようにするサービスのことである。このサービスにより、構内交換機につながる個々の電話機に固有の番号を付与することができ、端末の内線を局線中継台を経ずに直接呼出すことができる。
【0003】
また、上記のダイヤルイン接続機能を備え、着呼応答手順時に予め登録されているダイヤルイン番号を検出すると、電話機に対して呼出音を送出するファクシミリ装置が実用されている。このファクシミリ装置では、ファクシミリ装置に複数の電話機を接続して、ファクシミリ装置自身と電話機の各々とに異なる電話番号が割当てられるようになっている。
【0004】
図4に、加入者線交換機及びダイヤルイン対応端末間におけるプッシュボタン信号方式のダイヤルインの接続動作シーケンスを表す図を示す。なお、図中の(S1)〜(S7)は、各動作に対して割当てた番号である。
【0005】
図4を参照して、加入者線交換機は、ダイヤルイン加入者の呼出を行なう場合、まず、局線L1、L2の極性を反転し、0.1秒以内に呼出信号をダイヤルイン対応端末に送出する。加入者線交換機は、局線L1、L2の極性反転から6秒以内にダイヤルイン対応端末から一次応答信号(直流ループ形成)を受信すると、約0.6秒後に内線指定信号(プッシュボタン信号であらかじめ設定された1〜4桁の番号)を送信する。また、6秒以内に一次応答信号が到着しない場合、加入者線交換機は切断動作に入る。
【0006】
加入者線交換機は内線指定信号の送出完了後、約0.3秒から2秒の間に内線指定受信完了信号(直流ループ断)を受信する。この間に信号が未到着の場合加入者線交換機は切断動作に入る。内線指定受信完了信号を受信後、約0.3秒以降に加入者線交換機は二次応答信号待ち状態に入る。
【0007】
加入者線交換機は、二次応答信号(直流ループ形成)を受信すると、局線L1、L2の極性を復極して通信パスを形成する。
【0008】
特許文献1では、ダイヤルイン接続機能を備えたファクシミリ装置において、発呼側からの接続を電話と判断し、ユーザを呼出している最中(直流ループ断、加入者線交換機は二次応答信号待ち状態)に発呼側が電話をオンフックした場合、そのオンフック動作を検出して無駄な呼出動作を防ぐことができる技術が開示されている。
【0009】
また最近では、通信前情報通知サービスの一つとして、モデムダイヤルインサービスが運用されている。このサービスでは、呼出信号を受信する前にダイヤルイン番号を検出することができる。そして、呼出信号を受けたときには直接指定された電話機などを呼出すことが可能となっている。
【0010】
特許文献2では、モデムダイヤルインサービスを利用して、回線を接続する前にダイヤルイン番号に応じた処理を実行させるようにして、発信元に通信料金を負担させることなしに所望する処理を実行することができる技術が開示されている。
【特許文献1】特開平8−204942号
【特許文献2】特開平11−308363号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図4を参照し、従来のダイヤルインサービスの動作シーケンスにおいてダイヤルイン対応端末は、加入者線交換機から局線L1、L2の極性が反転され(S1)、続いて送信される呼出信号を受信する(S2)。それに応答して一次応答信号を発信(直流ループ形成)後(S3)、一定時間(ta)経過後に局線の極性を検出し確定処理を行なっている。しかし、直流ループの形成直後は局線L1、L2の回線電圧が安定しない期間が生じるため、ダイヤルイン対応端末は、局線L1、L2を仕様とは異なる極性で確定することがあった。局線極性が正確に確定されないことによって、二次応答後の通信中に相手機が回線を切断したという誤認識をし、自機の回線を切断してしまうなどの誤動作が生じるという問題点があった。
【0012】
特許文献1、2の技術は、正しくダイヤルインの接続動作シーケンスが行なわれることが前提の技術であるため、上記問題点を解決することはできない。
【0013】
そのため、本発明の目的は、ダイヤルインサービスに対応した通信端末装置に関して、正確に局線の極性が確定され、誤動作を防止することができる通信端末装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の局面に係る通信端末装置は、プッシュボタン信号方式のダイヤルイン接続機能を備えた通信端末装置であって、局線の極性を判定するための極性判定手段と、極性判定手段が局線の極性の反転を検出した後、呼出信号を受信したことに応答して、一時応答信号を回線上に送出するための一時応答信号送出手段と、一時応答信号送出手段による一時応答信号の送出後に、交換機から内線指定信号を受信したことを検出するための内線指定信号検出手段と、内線指定信号検出手段で内線指定信号の受信を検出したことに応答して、極性判定手段により、局線の極性を確定するための極性確定手段とを含む。
【0015】
極性判定手段は、局線L1、L2の極性を判定する。一時応答信号送出手段は、極性判定手段が局線の極性の反転を検出した後、呼出信号を受信したことに応答して、一時応答信号を回線上に送出する。内線指定信号検出手段は、一時応答信号送出手段による一時応答信号の送出後に、交換機から内線指定信号を受信したことを検出する。極性確定手段は、内線指定信号検出手段で内線指定信号の受信を検出したことに応答して、極性判定手段により判定された局線L1、L2の極性を確定する。
【0016】
この通信端末装置は、プッシュボタン信号方式のダイヤルイン接続において、交換機から送信される内線指定信号の受信を検出した時に局線L1、L2の極性を確定している。内線指定信号は、交換機との直流ループが形成されてから一定時間経過後に送信されるため、局線L1、L2の回線電圧が安定した状態で局線の極性確定を行なうことができる。その結果、ダイヤルインサービスに対応した通信端末装置に関して、正確に局線の極性が確定され、誤動作を防止することができる通信端末装置を実現することができる。
【0017】
好ましくは、内線指定信号検出手段は、内線指定信号の1桁目の信号の受信を検出するための手段を含む。極性確定手段は、検出するための手段で1桁目の信号の受信を検出したことに応答して、極性判定手段により、局線の極性を確定するための手段を含む。
【0018】
プッシュボタン方式によるダイヤルインサービスにおいて、内線指定信号は1桁から4桁までの内で、何桁の番号を使用するか利用者によって予め設定される。通信端末装置が、内線指定信号の1桁目を受信した時に局線L1、L2の極性状態を確定することで、受信する内線指定信号の桁数を考慮することなく局線の極性を確定することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、この通信端末装置によれば、局線L1、L2の回線電圧が安定した状態で局線の極性を確定することができる。これにより、局線の極性を正しく認識することができ誤動作を防ぐことができる。その結果、ダイヤルインサービスに対応した通信端末装置に関して、正確に局線の極性が確定され、誤動作を防止することができる通信端末装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下の説明及び図面においては、同一部品には同じ参照符号および名称を付してある。それらの機能も同様である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0021】
―構成―
図1は、本実施の形態に係るダイヤルイン接続機能を備えたファクシミリ装置30を含む、データ通信システム20の構成を表す図である。図1を参照し、ファクシミリ装置30は、加入者線交換機32と、ファクシミリ装置30とダイヤルイン接続している電話機34、36とに接続される。加入者線交換機32は電話回線網38に接続される。電話回線網38にはさらに、不特定多数の相手先の電話機40が接続される。
【0022】
図2は、本実施の形態に係るファクシミリ装置30の構成を表すブロック図である。図2を参照して、ファクシミリ装置30は、CPU(Central Processing Unit)で構成されファクシミリ装置30の全体の制御を行なうための制御部50と、制御部50に接続されたバス72と、いずれもバス72に接続された、不揮発性のメモリなどからなる制御プログラムを記憶するための制御用メモリ52、ファクシミリ装置30に接続される電話機34、36を呼出すための内線番号の登録情報など、ファクシミリ装置30に固有な各種の情報を記録するためのパラメータメモリ54、原稿画像を読取るための画像読取部56、記録紙に画像データを出力するための画像出力部58、操作者からの入力指示を受付けるための操作パネル68、読取った画像データを符号化し、受信した符号化データを元の画像データに復号化するための符号化復号化部66、符号化された状態の画像データ、及び画像読取部56で読取ったデータを記憶するための画像蓄積部64を含む。
【0023】
ファクシミリ装置30はさらに、電話回線網と接続され回線の制御を行なうための網制御部60と、電話回線網と接続しファクシミリ通信を行なうためのファクシミリモデム62と、網制御部60を介して接続される電話回線の極性状態を判定するための極性状態検出部70とを含む。
【0024】
制御用メモリ52と、パラメータメモリ54と、画像読取部56と、画像出力部58と、操作パネル68と、符号化復号化部66と、画像蓄積部64と、網制御部60と、ファクシミリモデム62と、極性状態検出部70とは、バス72を介して接続されており、全体の制御は制御部50によって行なわれる。
【0025】
加入者線交換機32とファクシミリ装置30とは、1対の局線(L1、L2)からなる電話回線で網制御部60を介して接続される。極性状態検出部70は、局線L1、L2の極性状態を判定する。
【0026】
図3は、ファクシミリ装置30の制御部50で実行され、加入者線交換機32からダイヤルインの呼出信号を受信し、ダイヤルイン機能で指定された電話機34との通信状態を確立するまでのプログラムの制御構造をフローチャート形式で表す図である。このプログラムは、加入者線交換機32から電話回線の極性反転を検出した時に実行される。
【0027】
図3を参照して、このプログラムは、加入者線交換機32から局線L1、L2の極性反転を検出するステップS402(図4のS1)と、ステップS402に続き、加入者線交換機32からの呼出信号を受信するステップS404(図4のS2)と、ステップS404に続き、加入者線交換機32に一次応答信号を送信し直流ループを形成するステップS406(図4のS3)と、ステップS406に続き、加入者線交換機32から送信される内線指定信号(1桁〜4桁)の1桁目を受信するステップS408と、ステップS408に続き、極性状態検出部70で局線L1、L2の極性状態を読出し、局線L1、L2の極性を確定するステップS410と、ステップS410に続き、加入者線交換機32から送信される内線指定信号を全桁受信したか否かを判定し、判定結果に応じて制御の流れを分岐させるステップS412と、ステップS412で内線指定信号を全桁受信していないと判定された場合(NOの場合)に実行され、内線指定信号の残りの桁を受信するステップS414(図4のS4)とを含む。ステップS414実行後、制御はステップS412に進む。
【0028】
加入者線交換機32から送信される内線指定信号は、内線の回線数などに応じて1桁から4桁の任意の桁数を選択する。この桁数は利用者の要望に応じてあらかじめ設定される。
【0029】
このプログラムはさらに、ステップS412で、内線指定信号を全桁受信したと判定された場合(YESの場合)に実行され、加入者線交換機32に内線指定受信完了信号を送信し直流ループを切断するステップS416(図4のS5)と、ステップS416に続き、内線指定信号で指定された番号を持つ電話機34に呼出信号を発信するステップS418と、ステップS418に続き、呼出信号を発信した電話機34から応答があったか否かを判定し、判定結果に応じて制御の流れを分岐させるステップS420と、ステップS420で応答があったと判定された場合(YESの場合)に実行され、加入者線交換機32に二次応答信号を送信し直流ループを形成するステップS422(図4のS6)と、ステップS422に続き、電話機34と加入者線交換機32との通信状態が確立され、加入者線交換機32から局線L1、L2の極性の復極を検出するステップS424(図4のS7)とを含む。ステップS420で応答がないと判定された場合(NOの場合)、制御はステップS420に戻り、応答があるまで待つ。
【0030】
―動作―
本実施の形態に係るダイヤルイン接続機能を備えたファクシミリ装置30は、ファクシミリ装置30に接続された契約回線にプッシュボタン方式によるダイヤルインサービスの着信があった時、該回線の通信状態を形成する際に以下のように動作する。
【0031】
ファクシミリ装置30は、局線L1、L2の極性が反転され、呼出信号を受信すると(ステップS402、404)、加入者線交換機32に一次応答信号を送信し直流ループを形成する(ステップS406)。加入者線交換機32は、ファクシミリ装置30からの一次応答信号を受信したことに応答して信号受信から約0.6秒後に内線指定信号を発信する。ファクシミリ装置30は、発信された内線指定信号の1桁目を受信したときの局線回線L1、L2の極性状態を読出して回線の極性を確定する(ステップS408、410)。
【0032】
その後、ファクシミリ装置30は、送信された内線指定信号を全桁受信し(ステップS412、414)、加入者線交換機32に内線指定受信完了信号を送信し直流ループを切断する(ステップS416)。その後、ファクシミリ装置30は、内線指定信号先に呼出信号を発信し、呼出信号に対して応答があったら、加入者線交換機32に二次応答信号を送信し、直流ループを形成する(ステップS418、420、422)。その後、局線L1、L2、の極性が復極し、回線の通信状態が形成される(ステップS424)。
【0033】
以上のように、ファクシミリ装置30が、加入者線交換機32から送信される内線指定信号の1桁目を受信した時に局線L1、L2の極性状態を検出するようにすると、一時応答送信から内線指定信号を受信するまでに一定時間かかるため、直流ループ形成直後に起こる回線電圧の変動の影響の少ない、安定した状態で局線の極性を検出することができる。そのため、ファクシミリ装置30は、仕様通りの極性で回線極性を確定することができる。その結果、ダイヤルインサービスに対応した通信端末装置に関して、正確に局線の極性が確定され、誤動作を防止することができる通信端末装置を実現することができる。
【0034】
プッシュボタン方式によるダイヤルインサービスにおいては、内線指定信号として1桁から4桁までの内で、何桁の番号を使用するか利用者によって予め設定される。そのため、何桁の内線指定信号が設定されているかは利用者によって異なる。通信端末装置が、内線指定信号の1桁目を受信した時に局線L1、L2の極性状態を確定することで、受信する内線指定信号の桁数を考慮することなく局線の極性を確定することができる。
【0035】
また、内線指定信号の1桁目を受信した時に回線の極性判定及び確定を行なうと決めることで、従来技術で必要とされていた一次応答信号を送信してから所定の時間(ta)を計時するためのタイマーが必要なくなり、装置の構成を簡単にすることができる。
【0036】
本実施の形態では、ダイヤルイン接続機能を備えたファクシミリ装置30について述べたが、ダイヤルイン接続機能を備えた装置であれば、PBXなどの、ファクシミリ装置以外の装置にも適用することが可能である。
【0037】
今回開示された実施の形態は単に例示であって、本発明が上記した実施の形態のみに制限されるわけではない。本発明の範囲は、発明の詳細な説明の記載を参酌した上で、特許請求の範囲の各請求項によって示され、そこに記載された文言と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含む。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本実施の形態に係るダイヤルイン接続機能を備えたファクシミリ装置30を含む、データ通信システム20の構成を表す図である。
【図2】ファクシミリ装置30の構成を表すブロック図である。
【図3】ファクシミリ装置30の制御部50で実行され、加入者線交換機32からダイヤルインの呼出信号を受信し、指定された電話機34との通信状態の確立までのプログラムの制御構造をフローチャート形式で表す図である。
【図4】加入者線交換機及びダイヤルイン対応端末間におけるプッシュボタン信号方式のダイヤルインの接続動作シーケンスを表す図を示す。
【符号の説明】
【0039】
30 ファクシミリ装置
32 加入者線交換機
34、36 電話機
50 制御部
60 網制御部
70 極性状態検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プッシュボタン信号方式のダイヤルイン接続機能を備えた通信端末装置であって、
局線の極性を判定するための極性判定手段と、
前記極性判定手段が局線の極性の反転を検出した後、呼出信号を受信したことに応答して、一時応答信号を回線上に送出するための一時応答信号送出手段と、
前記一時応答信号送出手段による一時応答信号の送出後に、交換機から内線指定信号を受信したことを検出するための内線指定信号検出手段と、
前記内線指定信号検出手段で前記内線指定信号の受信を検出したことに応答して、前記極性判定手段により、前記局線の極性を確定するための極性確定手段とを含む、通信端末装置。
【請求項2】
前記内線指定信号検出手段は、前記内線指定信号の1桁目の信号の受信を検出するための手段を含み、
前記極性確定手段は、前記検出するための手段で前記1桁目の信号の受信を検出したことに応答して、前記極性判定手段により、前記局線の極性を確定するための手段を含む、請求項1に記載の通信端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−118724(P2010−118724A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−288455(P2008−288455)
【出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】