説明

通信経路制御装置及びコンピュータプログラム

【課題】1つの基地局装置と直接通信をする通信装置の数(直接通信数)と、1つの通信装置が通信を中継する通信装置の数(中継数)とを、通信装置と基地局装置とが直接通信するときの通信コストを算出する際に使用される重み係数(集約度)を用いて制御するときの安定性を向上させることを図る。
【解決手段】直接通信数を減らすために集約度を増加させるステップS13と、中継数を減らすために集約度を減少させるステップS18と、集約度の変化を監視し、この監視結果に基づいて集約度の増加または減少による制御が不能な状態にあることを検出し、対処するステップS12、S14、S17、S19と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信経路制御装置及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信機能を備える電力量計の導入、又はその検討が進められている。電力量計が通信機能を備えることにより、電力量計の読み取りを遠隔操作により行い、人が電力量計の値を読み取る検針の手間を省くことができるようになる。また、使用されている電力量をリアルタイムに測定することにより、電力需要に応じた発電、送電、及び配電が効率的にできるようになると期待されている。
【0003】
この電力量計の通信機能に、無線通信を利用することが検討されている。その場合のネットワークトポロジーには、様々な構成が考えられるが、各電力量計と通信をする基地局装置を設け、当該基地局装置をハブにしたスター型の構成が有力である。しかし、大量の電力量計が基地局装置と直接通信する場合、基地局装置と直接通信する電力量計の数に応じた通信帯域を確保することが困難になる場合がある。また、通信環境によっては、基地局装置と通信を行うことができない電力量計が存在する可能性もある。
【0004】
そこで、電力量計に、他の電力量計を介して基地局装置と通信できるように電力量計同士で通信を行う機能を更に備えさせ、基地局装置と直接通信する機能と、他の電力量計と通信する機能とのいずれか一方を適宜選択することが考えられる。例えば、特許文献1や、特許文献2には、2つの通信方式を備え、いずれか一方を適宜選択する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−088154号公報
【特許文献2】特開2002−291034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1及び特許文献2に記載されている技術は、基地局装置と各電力量計との通信品質、及び各電力量計間の通信品質に応じて適切な通信方式を選択するものではない。そこで、本発明者は、特願2010−195738において、複数の電力量計(通信装置)が基地局装置を介してデータを送信する無線通信システムにおいて、各電力量計(通信装置)が、基地局装置と直接通信してデータを送信するか、基地局と直接通信をする通信方式と異なる通信方式により他の電力量計(通信装置)を介して基地局装置と通信してデータを送信するかを、通信品質に応じて適切に選択するための技術を提案した。
【0007】
この提案では、1つの基地局装置と直接通信をする通信装置の数(直接通信数)と、1つの通信装置が通信を中継する通信装置の数(中継数)とを制御するための制御パラメータとして「集約度」を定義している。集約度は、通信装置と基地局装置とが直接通信するときの通信コストを算出する際に使用される重み係数である。この集約度を増加させて、通信装置と基地局装置とが直接通信するときの通信コストを増加させることにより、直接通信数を減らして中継数を増やし、一方、集約度を減少させて、通信装置と基地局装置とが直接通信するときの通信コストを減少させることにより、直接通信数を増やして中継数を減らすようにしている。
【0008】
しかしながら、複数の通信装置間で、基地局装置と直接通信するときの通信コストが等しい場合には、直接通信数を減らすために集約度を増加しても、各通信装置間で通信コストに差が生じず、直接通信数が減らないことがある。すると、直接通信数を上限値に制限するために集約度を上げ続けるという、制御不能な状態に陥ってしまう。又、ある通信装置に対して中継する通信装置が多数集中してしまうと、中継数を上限値に制限するために集約度を下げた結果として直接通信数が増えて上限値を超過し、これにより集約度を上げた結果として中継数が増えて上限値を超過するという、集約度の上げ下げを繰り返すこととなって制御不能な状態に陥ってしまう。
【0009】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、1つの基地局装置と直接通信をする通信装置の数(直接通信数)と、1つの通信装置が通信を中継する通信装置の数(中継数)とを、通信装置と基地局装置とが直接通信するときの通信コストを算出する際に使用される重み係数(集約度)を用いて制御するときの安定性を向上させることができる、通信経路制御装置及びコンピュータプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明に係る通信経路制御装置は、各通信装置が、基地局装置と直接通信してデータを送信するか、又は、他の通信装置を介して基地局装置と通信してデータを送信するかを、通信コストが小さくなるように選択する無線通信システムにおいて、1つの基地局装置と直接通信をする通信装置の数(直接通信数)と、1つの通信装置が通信を中継する通信装置の数(中継数)とを、通信装置と基地局装置とが直接通信するときの通信コストを算出する際に使用される重み係数(集約度)を用いて制御する通信経路制御装置であり、直接通信数を減らすために集約度を増加させる処理と、中継数を減らすために集約度を減少させる処理とを行う制御部を備え、前記制御部は、集約度の変化を監視し、この監視結果に基づいて集約度の増加または減少による制御が不能な状態にあることを検出し、対処する、ことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る通信経路制御装置において、前記制御部は、集約度を上げ続ける制御不能な状態にあることを検出したら、直接通信数を減らすための通信経路変更処理を行うことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る通信経路制御装置において、前記制御部は、一定期間において集約度が単調に増加した回数(集約度単調増加回数)を測定し、この測定した集約度単調増加回数を規定回数と比較し、集約度単調増加回数が規定回数を超えている場合に、前記直接通信数を減らすための通信経路変更処理を行うことを特徴とする。
【0013】
本発明に係る通信経路制御装置において、前記制御部は、基地局装置と直接通信する通信装置のうち通信コストが最大である通信装置に対して、中継数が最小である他の通信装置を介して基地局装置と通信するように通信経路を変更させることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る通信経路制御装置において、前記制御部は、集約度の上げ下げを繰り返す制御不能な状態にあることを検出したら、中継数を減らすための通信経路変更処理を行うことを特徴とする。
【0015】
本発明に係る通信経路制御装置において、前記制御部は、一定期間において集約度が上げ下げを繰り返した回数(集約度上下変化回数)を測定し、この測定した集約度上下変化回数を規定回数と比較し、集約度上下変化回数が規定回数を超えている場合に、前記中継数を減らすための通信経路変更処理を行うことを特徴とする。
【0016】
本発明に係る通信経路制御装置において、前記制御部は、他の通信装置を介して基地局装置と通信する通信装置のうち通信コストが最小である通信装置に対して、該他の通信装置以外で中継数が最小である他の通信装置を介して基地局装置と通信するように通信経路を変更させることを特徴とする。
【0017】
本発明に係るコンピュータプログラムは、各通信装置が、基地局装置と直接通信してデータを送信するか、又は、他の通信装置を介して基地局装置と通信してデータを送信するかを、通信コストが小さくなるように選択する無線通信システムにおいて、1つの基地局装置と直接通信をする通信装置の数(直接通信数)と、1つの通信装置が通信を中継する通信装置の数(中継数)とを、通信装置と基地局装置とが直接通信するときの通信コストを算出する際に使用される重み係数(集約度)を用いて制御する通信経路制御処理を行うためのコンピュータプログラムであって、直接通信数を減らすために集約度を増加させるステップと、中継数を減らすために集約度を減少させるステップと、集約度の変化を監視し、この監視結果に基づいて集約度の増加または減少による制御が不能な状態にあることを検出し、対処するステップと、をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであることを特徴とする。
これにより、前述の通信経路制御装置がコンピュータを利用して実現できるようになる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、1つの基地局装置と直接通信をする通信装置の数(直接通信数)と、1つの通信装置が通信を中継する通信装置の数(中継数)とを、通信装置と基地局装置とが直接通信するときの通信コストを算出する際に用いる重み係数(集約度)を用いて制御するときの安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る電力量計測ネットワークシステム(無線通信システム)の概略構成図である。
【図2】図1に示す通信経路制御サーバ1の構成図である。
【図3】図1に示す電気メータ2(通信装置)の構成図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る処理シーケンス図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る処理シーケンス図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る通信経路制御処理のフローチャートである。
【図7】本発明の一実施形態に係る通信経路変更処理1のフローチャートである。
【図8】本発明の一実施形態に係る通信経路変更処理2のフローチャートである。
【図9】本発明の一実施形態に係る通信経路変更処理1を説明するための実施例1である。
【図10】本発明の一実施形態に係る通信経路変更処理1を説明するための実施例1である。
【図11】本発明の一実施形態に係る通信経路変更処理1を説明するための実施例1である。
【図12】本発明の一実施形態に係る通信経路変更処理2を説明するための実施例1である。
【図13】本発明の一実施形態に係る通信経路変更処理2を説明するための実施例1である。
【図14】本発明の一実施形態に係る通信経路変更処理2を説明するための実施例1である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る電力量計測ネットワークシステム(無線通信システム)の概略構成図である。図1において、通信経路制御サーバ1(通信経路制御装置)は、電力量計測ネットワークシステムにおける通信経路を制御する。電気メータ2−1、2−2、2−3(通信装置)は、住居や事務所に設置され、使用される電力量を計測し、通信により電力量計測データを電力量集計サーバ5へ送信する。以下、電気メータ2−1、2−2、2−3を特に区別しないときは「電気メータ2」と称する。
【0021】
通信経路制御サーバ1及び電力量集計サーバ5は、インターネットに接続されている。WiMAXマクロ基地局10は、広帯域通信を実現するWiMAX網を構成するための基地局である。WiMAXマクロ基地局10は、インターネットに接続するコアネットワークに接続されている。
【0022】
電気メータ2は、WiMAXマクロ基地局10と無線通信することができる無線通信装置であるWiMAXモジュール3を備える。電気メータ2は、WiMAXマクロ基地局10を介して通信経路制御サーバ1及び電力量集計サーバ5と通信することができる。
【0023】
又、電気メータ2は、近距離通信することができる無線通信装置であるHAN(Home Area Network)デバイス4を備える。電気メータ2は、他の電気メータ2との間で、HANデバイス4により通信することができる。これにより、電気メータ2は、HANデバイス4により接続した他の電気メータ2を経由し、さらに該他の電気メータ2がWiMAXモジュール3により接続したWiMAXマクロ基地局10を経由して、通信経路制御サーバ1及び電力量集計サーバ5と通信することができる。
【0024】
図2は、図1に示す通信経路制御サーバ1の構成図である。図2において、通信経路制御サーバ1は、通信部11と制御部12と通信装置管理テーブル13を有する。通信部11は、インターネットを介して電気メータ2と通信する。制御部12は、電力量計測ネットワークシステムにおける通信経路を制御する。通信装置管理テーブル13は、電気メータ2(通信装置)の通信の状態に関する情報を格納する。
【0025】
図3は、図1に示す電気メータ2(通信装置)の構成図である。図3において、電気メータ2は、WiMAXモジュール3とHANデバイス4と制御部21と経路情報テーブル22と電力量測定部23を有する。WiMAXモジュール3は、WiMAXマクロ基地局10と無線通信する。HANデバイス4は、他の電気メータ2のHANデバイス4と無線通信する。制御部21は、自己の電力量計測データを電力量集計サーバ5へ送信するときの通信経路を選択する。経路情報テーブル22は、制御部21が自己の通信経路を選択する際に使用する情報を格納する。電力量測定部23は、使用される電力量を計測する。
【0026】
本実施形態では、各電気メータ2が、WiMAXマクロ基地局10と直接通信して電力量計測データを送信するか、又は、HANにより他の電気メータ2を介してWiMAXマクロ基地局10と通信して電力量計測データを送信するかを、広帯域通信コスト及び近距離通信コストの合計(総コスト)が小さくなるように選択する。近距離通信コストは、HANにより電気メータ2同士で通信するときの通信コストである。広帯域通信コストは、電気メータ2がWiMAXマクロ基地局10と直接通信するときの通信コストである。
【0027】
電気メータ2は、広帯域通信コストを算出する際には、通信経路制御サーバ1から指定される集約度を重み係数として使用する。集約度は、1つのWiMAXマクロ基地局10と直接通信をする電気メータ2の数(直接通信数)と、1つの電気メータ2が通信を中継する電気メータ2の数(中継数)とを制御するための制御パラメータである。
【0028】
通信経路制御サーバ1は、集約度を増加させて、電気メータ2とWiMAXマクロ基地局10とが直接通信するときの広帯域通信コストを増加させることにより、直接通信数を減らして中継数を増やし、一方、集約度を減少させて、電気メータ2とWiMAXマクロ基地局10とが直接通信するときの広帯域通信コストを減少させることにより、直接通信数を増やして中継数を減らすようにする。
【0029】
さらに、通信経路制御サーバ1は、集約度の増減による制御が不能な状態にあることを検出して、その対処を行う。具体的には、通信経路制御サーバ1は、集約度を上げ続ける制御不能な状態にあることを検出したら、直接通信数を減らすための通信経路変更処理を行う。又、通信経路制御サーバ1は、集約度の上げ下げを繰り返す制御不能な状態にあることを検出したら、中継数を減らすための通信経路変更処理を行う。
【0030】
図4、図5は、本実施形態に係る処理シーケンス図である。
【0031】
図4は、WiMAXマクロ基地局10と直接通信する電気メータ2(通信装置)と、通信経路制御サーバ1との間の処理シーケンス図である。図4において、ステップS1では、電気メータ2は、通信経路制御サーバ1に対して、品質情報を通知する。品質情報は、広帯域通信コストと、直接通信するWiMAXマクロ基地局10の識別子(BS−ID)と、隣接する電気メータ2(通信装置)のリスト(隣接通信装置リスト)とを有する。隣接通信装置リストには、隣接する電気メータ2の中から総コストが小さい方から所定数(p個)だけを抽出して、抽出した電気メータ2の識別子(メータID)を記載する。ステップS2では、通信経路制御サーバ1は、各電気メータ2から受信した品質情報を集約し、この集約結果に基づいて通信経路の迂回に関する指示の判断を行い、この判断結果を電気メータ2へ送信する。
【0032】
図5は、電気メータ2(送信元)が他の電気メータ2(中継)を介してWiMAXマクロ基地局10と通信するときの処理シーケンス図である。図5において、図4と異なる点は、品質情報が送信元の電気メータ2から中継の電気メータ2を介して通信経路制御サーバ1へ送信される点(ステップS1a、S1b)と、迂回指示が通信経路制御サーバ1から中継の電気メータ2を介して品質情報の送信元の電気メータ2へ送信される点である。
【0033】
次に、図6を参照して、通信経路制御サーバ1の制御部12が行う通信経路制御処理を説明する。図6は、本実施形態に係る通信経路制御処理のフローチャートである。
【0034】
ステップS10:制御部12は、1つのWiMAXマクロ基地局10と直接通信をする電気メータ2の数(直接通信数)の上限値Nと、1つの電気メータ2が通信を中継する電気メータ2の数(中継数)の上限値Mとを入力する。各上限値N、Mは、予め通信経路制御サーバ1に設定されている。
【0035】
ステップS11:制御部12は、1つのWiMAXマクロ基地局10(対象基地局10)に接続する電気メータ2の数(直接通信数)が上限値Nを超えているかを判断する。この結果、直接通信数が上限値Nを超えている場合にはステップS12に進み、直接通信数が上限値Nを超えていない場合にはステップS16に進む。
【0036】
ステップS12:制御部12は、一定期間において、集約度が単調に増加した回数(集約度単調増加回数)が規定回数以内であるかを判断する。この結果、集約度単調増加回数が規定回数以内である場合にはステップS13に進み、集約度単調増加回数が規定回数を超えている場合にはステップS14に進む。
【0037】
ここで、本実施形態では、集約度を上げ続ける制御不能な状態にあることを検出する手段として、一定期間における集約度単調増加回数を測定し、この測定した集約度単調増加回数を規定回数と比較し、集約度単調増加回数が規定回数を超えていることを検出する。
【0038】
ステップS13:このステップS13は、ステップS12において集約度単調増加回数が規定回数以内であり、集約度により制御可能な状態にあるときの処理である。制御部12は、対象基地局10に接続する全ての電気メータ2(直接接続と非直接接続の両方の電気メータ2)に対して、現在の集約度αに1を加算した更新後の集約度αを送信する。この後、ステップS15に進む。
【0039】
ステップS14:このステップS14は、ステップS12において集約度単調増加回数が規定回数超過であり、集約度により制御不能な状態にあるときの処理である。制御部12は、対象基地局10における直接通信数を減らすための通信経路変更処理1を行う。この後、ステップS15に進む。通信経路変更処理1については、後述する。
【0040】
ステップS15:制御部12は、タイマのタイムアウトを確認し、タイムアウトならばステップS11に戻り、まだタイムアウトしていないならばタイムアウトするまでウエイトする。
【0041】
ステップS16:制御部12は、1つの電気メータ2(対象電気メータ2)が通信を中継する電気メータ2の数(中継数)が上限値Mを超えているかを判断する。この結果、中継数が上限値Mを超えている場合にはステップS17に進み、中継数が上限値Mを超えていない場合にはステップS15に進む。
【0042】
ステップS17:制御部12は、一定期間において、集約度が上げ下げを繰り返した回数(集約度上下変化回数)が規定回数以内であるかを判断する。この結果、集約度上下変化回数が規定回数以内である場合にはステップS18に進み、集約度上下変化回数が規定回数を超えている場合にはステップS19に進む。
【0043】
ここで、本実施形態では、集約度の上げ下げを繰り返す制御不能な状態にあることを検出する手段として、一定期間における集約度上下変化回数を測定し、この測定した集約度上下変化回数を規定回数と比較し、集約度上下変化回数が規定回数を超えていることを検出する。
【0044】
ステップS18:このステップS18は、ステップS17において集約度上下変化回数が規定回数以内であり、集約度により制御可能な状態にあるときの処理である。制御部12は、対象電気メータ2と、対象電気メータ2に接続する全ての電気メータ2に対して、現在の集約度αから1を減算した更新後の集約度αを送信する。この後、ステップS15に進む。
【0045】
ステップS19:このステップS19は、ステップS17において集約度上下変化回数が規定回数超過であり、集約度により制御不能な状態にあるときの処理である。制御部12は、対象電気メータ2における中継数を減らすための通信経路変更処理2を行う。この後、ステップS15に進む。通信経路変更処理2については、後述する。
【0046】
次に、図7を参照して、図6のステップS14の通信経路変更処理1を説明する。図7は、本実施形態に係る、直接通信数を減らすための通信経路変更処理1のフローチャートである。通信経路変更処理1は、対象基地局10の直接通信数を上限値N以下にするための処理である。
【0047】
ステップS100:制御部12は、通信経路を指示した後の「対象基地局10と直接通信をする電気メータ2(通信装置)の数(直接通信数)の見込み値」が上限値N以下であるかを判断する。この結果、直接通信数の見込み値が上限値N以下になる場合には処理を終了する。一方、直接通信数の見込み値が上限値N以下にならない場合にはステップS40に進む。
【0048】
ステップS40:制御部12は、対象基地局10と直接通信をする電気メータ2のうち、広帯域通信コストが最大である電気メータ2を選択する。各電気メータ2の広帯域通信コストは、通信装置管理テーブル13に格納されている。
【0049】
ステップS41:制御部12は、変数iを0に設定する。
【0050】
ステップS42:制御部12は、ステップS40で選択した電気メータ2(選択電気メータ2)の広帯域通信コスト(広帯域通信コスト最大値)が変数iの値以上であるかを判断する。この結果、広帯域通信コスト最大値が変数iの値以上である場合にはステップS43に進み、広帯域通信コスト最大値が変数iの値未満である場合にはステップS100に戻る。
【0051】
ステップS43:制御部12は、広帯域通信コストが変数iの値に一致する電気メータ2が、選択電気メータ2の隣接通信装置リストに有るかを判断する。この結果、隣接通信装置リストに有る場合にはステップS44に進み、隣接通信装置リストに無い場合にはステップS45に進む。各電気メータ2の隣接通信装置リストは、通信装置管理テーブル13に格納されている。
【0052】
ステップS44:制御部12は、選択電気メータ2に対して、ステップS43で選択電気メータ2の隣接通信装置リストから発見された電気メータ2のうち中継数が最小である電気メータ2を経由して対象基地局10と通信するように、通信経路の変更を通知(迂回指示)する。この後、ステップS100に戻る。
【0053】
ステップS45:制御部12は、変数iに1を加算する。この後、ステップS42に戻る。
【0054】
次に、図8を参照して、図6のステップS19の通信経路変更処理2を説明する。図8は、本実施形態に係る、中継数を減らすための通信経路変更処理2のフローチャートである。通信経路変更処理2は、対象電気メータ2の中継数を上限値M以下にするための処理である。
【0055】
ステップS200:制御部12は、通信経路を指示した後の「対象電気メータ2(通信装置)が通信を中継する電気メータ2(通信装置)の数(中継数)の見込み値」が上限値M以下であるかを判断する。この結果、中継数の見込み値が上限値M以下になる場合には処理を終了する。一方、中継数の見込み値が上限値M以下にならない場合にはステップS50に進む。
【0056】
ステップS50:制御部12は、対象電気メータ2を経由してWiMAXマクロ基地局10と通信する電気メータ2のうち、広帯域通信コストが最小である電気メータ2を選択する。
【0057】
ステップS51:制御部12は、変数jを0に設定する。
【0058】
ステップS52:制御部12は、対象電気メータ2を経由して対象基地局10と通信する電気メータ2の広帯域通信コストのうち最大の広帯域通信コスト(広帯域通信コスト最大値)が変数jの値以上であるかを判断する。この結果、広帯域通信コスト最大値が変数jの値以上である場合にはステップS53に進み、広帯域通信コスト最大値が変数jの値未満である場合にはステップS200に戻る。
【0059】
ステップS53:制御部12は、ステップS50で選択した電気メータ2(選択電気メータ2)の隣接通信装置リストの中に、対象電気メータ2以外で、広帯域通信コストが変数jの値に一致する電気メータ2が有るかを判断する。この結果、隣接通信装置リストに有る場合にはステップS54に進み、隣接通信装置リストに無い場合にはステップS55に進む。
【0060】
ステップS54:制御部12は、選択電気メータ2に対して、ステップS53で選択電気メータ2の隣接通信装置リストから発見された電気メータ2のうち中継数が最小である電気メータ2を経由して対象基地局10と通信するように、通信経路の変更を通知(迂回指示)する。この後、ステップS200に戻る。
【0061】
ステップS55:制御部12は、変数jに1を加算する。この後、ステップS52に戻る。
【実施例1】
【0062】
図9〜図11は、本実施形態に係る直接通信数を減らすための通信経路変更処理1を説明するための実施例1である。
図9において、直接通信数の上限値は4(N=4)である。図9では、最初、対象基地局10と直接通信をする電気メータ2は10台(メータIDがA〜J)ある。従って、直接通信数の上限値「4」を超えている。この時の、通信経路制御サーバ1の通信装置管理テーブル13は図10に示されている。ここで、通信経路制御サーバ1は、集約度を上げても直接通信数を減らすことができない状態であることを検出すると、通信経路変更処理1を実行する。
【0063】
図9の例では、通信経路制御サーバ1は、6台の電気メータ2(C,D,E,H,I,J)に対して、迂回指示を出す。具体的には、電気メータ2(C,D)に対して電気メータ2(B)を、電気メータ2(E)に対して電気メータ2(A)を、電気メータ2(H,I)に対して電気メータ2(G)を、電気メータ2(J)に対して電気メータ2(F)を、それぞれ経由先として指示する。この結果、通信経路制御サーバ1の通信装置管理テーブル13は図11となる。これにより、直接通信数は4となり、上限値「4」以下となる。
【実施例2】
【0064】
図12〜図14は、本実施形態に係る中継数を減らすための通信経路変更処理2を説明するための実施例2である。
図12において、直接通信数の上限値は4(N=4)、且つ、中継数の上限値は3(M=3)である。図12では、最初、対象基地局10と直接通信をする電気メータ2は4台(A,B,F,G)ある。従って、直接通信数の上限値「4」以下になっている。一方、電気メータ2(A)を経由する電気メータ2は4台(A,C,D,E)、電気メータ2(F)を経由する電気メータ2は4台(F,H,I,J)、であり、共に中継数の上限値「3」を超えている。なお、中継数は、通信を中継する電気メータ2自身も含めて数える。この時の、通信経路制御サーバ1の通信装置管理テーブル13は図13に示されている。ここで、通信経路制御サーバ1は、集約度の上げ下げを繰り返す状態であることを検出すると、通信経路変更処理2を実行する。
【0065】
図12の例では、通信経路制御サーバ1は、2台の電気メータ2(D,I)に対して、迂回指示を出す。具体的には、電気メータ2(D)に対して電気メータ2(B)を、電気メータ2(I)に対して電気メータ2(G)を、それぞれ経由先として指示する。この結果、通信経路制御サーバ1の通信装置管理テーブル13は図14となる。これにより、中継数は3以下となり、上限値「3」以下となる。
【0066】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、上述した実施形態では、広帯域通信を実現する通信方式としてWiMAXを利用するが、他の広帯域通信方式であってもよい。又、近距離通信を実現する通信方式としてHANなどとして知られているIEEE802.11規格の無線LAN方式を利用するが、他の近距離通信方式であってもよい。
【0067】
また、図6、図7、図8に示す各ステップを実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、通信経路制御処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、DVD(Digital Versatile Disk)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0068】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0069】
1…通信経路制御サーバ(通信経路制御装置)、2…電気メータ(通信装置)、
3…WiMAXモジュール、4…HANデバイス、10…WiMAXマクロ基地局、11…通信部、12…制御部、13…通信装置管理テーブル、21…制御部、22…経路情報テーブル、23…電力量測定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各通信装置が、基地局装置と直接通信してデータを送信するか、又は、他の通信装置を介して基地局装置と通信してデータを送信するかを、通信コストが小さくなるように選択する無線通信システムにおいて、
1つの基地局装置と直接通信をする通信装置の数(直接通信数)と、1つの通信装置が通信を中継する通信装置の数(中継数)とを、通信装置と基地局装置とが直接通信するときの通信コストを算出する際に使用される重み係数(集約度)を用いて制御する通信経路制御装置であり、
直接通信数を減らすために集約度を増加させる処理と、中継数を減らすために集約度を減少させる処理とを行う制御部を備え、
前記制御部は、集約度の変化を監視し、この監視結果に基づいて集約度の増加または減少による制御が不能な状態にあることを検出し、対処する、
ことを特徴とする通信経路制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、集約度を上げ続ける制御不能な状態にあることを検出したら、直接通信数を減らすための通信経路変更処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の通信経路制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、一定期間において集約度が単調に増加した回数(集約度単調増加回数)を測定し、この測定した集約度単調増加回数を規定回数と比較し、集約度単調増加回数が規定回数を超えている場合に、前記直接通信数を減らすための通信経路変更処理を行うことを特徴とする請求項2に記載の通信経路制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、基地局装置と直接通信する通信装置のうち通信コストが最大である通信装置に対して、中継数が最小である他の通信装置を介して基地局装置と通信するように通信経路を変更させることを特徴とする請求項2又は3に記載の通信経路制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、集約度の上げ下げを繰り返す制御不能な状態にあることを検出したら、中継数を減らすための通信経路変更処理を行うことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の通信経路制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、一定期間において集約度が上げ下げを繰り返した回数(集約度上下変化回数)を測定し、この測定した集約度上下変化回数を規定回数と比較し、集約度上下変化回数が規定回数を超えている場合に、前記中継数を減らすための通信経路変更処理を行うことを特徴とする請求項5に記載の通信経路制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、他の通信装置を介して基地局装置と通信する通信装置のうち通信コストが最小である通信装置に対して、該他の通信装置以外で中継数が最小である他の通信装置を介して基地局装置と通信するように通信経路を変更させることを特徴とする請求項5又は6に記載の通信経路制御装置。
【請求項8】
各通信装置が、基地局装置と直接通信してデータを送信するか、又は、他の通信装置を介して基地局装置と通信してデータを送信するかを、通信コストが小さくなるように選択する無線通信システムにおいて、
1つの基地局装置と直接通信をする通信装置の数(直接通信数)と、1つの通信装置が通信を中継する通信装置の数(中継数)とを、通信装置と基地局装置とが直接通信するときの通信コストを算出する際に使用される重み係数(集約度)を用いて制御する通信経路制御処理を行うためのコンピュータプログラムであって、
直接通信数を減らすために集約度を増加させるステップと、
中継数を減らすために集約度を減少させるステップと、
集約度の変化を監視し、この監視結果に基づいて集約度の増加または減少による制御が不能な状態にあることを検出し、対処するステップと、
をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2013−5267(P2013−5267A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135188(P2011−135188)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】