説明

通信装置、データ提供システム及びコンピュータプログラム

【課題】 SMNPv3を利用して別の通信装置にデータを提供する通信装置おいて、セキュリティレベルの低いデータを提供するための時間を短縮させることができる技術を提供すること。
【解決手段】 プリンタ14は、管理サーバ12に接続されている。管理サーバ12は、プリンタ14にエンジンIDをリクエストする。プリンタ14は、自身のステータス情報を示すデータを付加したエンジンIDを生成する。プリンタ14は、生成したエンジンIDを管理サーバ12に送信する。管理サーバ12は、エンジンIDに付加されたデータからプリンタ14のステータス情報を取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SNMPを利用して別の通信装置にデータを提供する通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
SNMP(Simple Network Management Protocol)を利用して、通信装置(第2通信装置)から別の通信装置(第1通信装置)にデータを提供するデータ提供システムがある。このデータ提供システムでは、第2通信装置から第1通信装置に提供することができるデータの種類は、MIB(Management Information Base)によって定義されている。MIBでは、第2通信装置から第1通信装置に提供することが可能な複数種類のデータのそれぞれについて、当該種類のデータに対応する識別子が定義されている。第1通信装置と第2通信装置は、第2通信装置が第1通信装置に提供することが可能な複数種類のデータのそれぞれについて、当該種類のデータに対応する識別子を記憶する識別子記憶手段を有している。この種のデータ提供システムには、第2通信装置がSNMPv3を利用して第1通信装置にデータを提供するものがある(例えば特許文献1)。
SNMPv3の下では、第2通信装置が第1通信装置にデータを提供する場合、ユニークなエンジンIDが用いられる。第1通信装置が第2通信装置からデータの提供を受ける場合、第1通信装置は、第2通信装置にエンジンIDをリクエストする。第2通信装置は、第1通信装置からのリクエストに応じて自身のエンジンIDを第1通信装置に送信する。エンジンIDを受信した第1通信装置は、受信したエンジンIDを含むデータリクエストを第2通信装置に送信する。データリクエストを受信した第2通信装置は、データリクエストに含まれるエンジンIDが自身のエンジンIDに一致することを条件として、データリクエストに含まれる識別子に対応する種類のデータを第1通信装置に送信する。第1通信装置は、第2通信装置からデータの提供を受けることができる。SNMPv3では、第2通信装置に設定されているエンジンIDを認証に利用することができる。エンジンIDを含んでいないデータリクエストを受信しても、そのデータリクエストに応じてデータを提供しない。このために、SNMPv3を利用するデータ提供システムでは、データ通信のセキュリティが高い。
【0003】
【特許文献1】特開2007−257525号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のSNMPv3のように、データを提供する側の第2通信装置の個別識別情報(上記の例ではエンジンID)を利用して認証する手法を採用すると、データ通信のセキュリティが高くなる。その一方において、データを提供する前に個別識別情報のリクエストとレスポンスを行なう必要があり、第1通信装置が第2通信装置からデータを取得するまでに時間がかかってしまう。
【0005】
そこで、本明細書では、個別識別情報を用いて認証を行うSNMPを利用するデータの提供において、一定のセキュリティを確保可能で、かつ第1通信装置が所定のデータを取得するまでの時間を短縮させることができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第2通信装置が第1通信装置に提供することができるデータの中には、セキュリティの高い手法によって通信されるべき種類のデータが存在する一方において、そうでない種類のデータも存在する。本発明者は、セキュリティレベルの高い種類のデータはセキュリティの高い手法を利用して通信するとともに、セキュリティレベルの低い種類のデータはセキュリティの低い手法を利用して通信することによって、セキュリティの高い通信を実現することを可能にしつつ、第1通信装置がセキュリティレベルの低い種類のデータを取得するためにかかる時間を短縮するという技術思想を見出した。
【0007】
本明細書で開示される1つの技術は、SNMPを利用して別の通信装置にデータを提供することが可能である通信装置である。この通信装置は、識別子記憶手段と個別識別情報リクエスト受信手段と個別識別情報送信手段とデータリクエスト受信手段とデータ送信手段を備える。識別子記憶手段は、別の通信装置に提供することが可能な複数種類のデータのそれぞれについて、当該種類のデータに対応する識別子を記憶する。例えば、識別子記憶手段は、MIBで管理されるデータのそれぞれについて、MIBで定義される識別子を記憶してもよい。個別識別情報リクエスト受信手段は、個別識別情報リクエストを受信する。個別識別情報送信手段は、個別識別情報リクエスト受信手段によって受信された個別識別情報リクエストに応じて、複数種類のデータのうちの少なくとも1つの所定種類のデータが付加されている個別識別情報を含むレスポンスを送信する。所定種類のデータは、自身のステータス情報であってもよいし、それ以外の種類のデータであってもよい。データリクエスト受信手段は、個別識別情報と識別子記憶手段に記憶されている少なくとも1つの識別子とを含むデータリクエストを受信する。データ送信手段は、データリクエスト受信手段によって受信されたデータリクエストに含まれる個別識別情報と個別識別情報送信手段によって送信された個別識別情報とに基づいた認証を条件として、データリクエストに含まれる識別子に対応する種類のデータを含むレスポンスを送信する。
【0008】
上記した通信装置では、通信装置が別の通信装置にデータを提供する前段階で、個別識別情報を別の通信装置に送信する。次いで、通信装置は、別の通信装置から送信されたデータリクエストに含まれる個別識別情報と個別識別情報送信手段によって送信された個別識別情報とに基づいた認証を条件として、データリクエストに含まれる識別子に対応する種類のデータを別の通信装置に送信する。このために、セキュリティの高い通信が可能となる。なお、ここでの「認証」という用語は、最も広義に解釈されるべきものであり、様々な認証手法を含む概念である。いくつかの認証手法を例示しておく。例えば、通信装置は、別の通信装置からのデータリクエストに含まれる個別識別情報と、個別識別情報送信手段によって送信された個別識別情報とを比較することによって、認証を行なってもよい。また、例えば、別の通信装置からのデータリクエストが個別識別情報をキーとして暗号化されている場合、通信装置は、個別識別情報送信手段によって送信された個別識別情報をキーとしてデータリクエストを復号するのに成功したのか否かを判断することによって、認証を行なってもよい。また、例えば、個別識別情報を含むデータリクエストの中に、そのデータリクエスト全体が個別識別情報を利用して要約化(ダイジェスト化)された第1値が含まれている場合、通信装置は、個別識別情報送信手段によって送信された個別識別情報を利用してデータリクエストを要約化して第2値を生成し、第1値と第2値を比較することによって、認証を行なってもよい。
【0009】
一方において、上記の通信装置では、別の通信装置に個別識別情報を送信する際に、別の通信装置に提供することが可能な複数種類のデータのうちの少なくとも1つの所定種類のデータが付加されている個別識別情報を送信する。この構成によれば、通信装置は、複数種類のデータのうちの少なくとも1つの所定種類のデータ、例えばセキュリティレベルの低い種類のデータを個別識別情報に付加して別の通信装置に送信することができる。この場合、個別識別情報のリクエスト、それに対するレスポンス、データリクエスト、及び、それに対するレスポンスという手順を経ることなく、上記の別の通信装置にデータを提供することができる。これにより、一定のセキュリティを確保しつつ上記の別の通信装置が所定種類のデータを取得するまでの時間を短縮することができる。
【0010】
上記した通信装置は、少なくともSNMPv3を利用して別の通信装置にデータを提供する場合に有用である。この場合、個別識別情報は、エンジンIDであってもよい。エンジンIDは、予め決められた情報を書き込む第1部分と、他の情報を書き込むことが可能である第2部分とを有していてもよい。個別識別情報送信手段は、所定種類のデータを第2部分に書き込むことによってエンジンIDを生成し、生成されたエンジンIDを別の通信装置に送信してもよい。
【0011】
上記の通信装置を備えているデータ提供システムも有用である。このデータ提供システムは、第1通信装置と第2通信装置を備える。第1通信装置は、第1識別子記憶手段と個別識別情報リクエスト送信手段と個別識別情報受信手段と第1データ利用手段とデータリクエスト送信手段とデータ受信手段と第2データ利用手段を有する。第1識別子記憶手段は、第2通信装置から取得することが可能な複数種類のデータのそれぞれについて、当該種類のデータに対応する識別子を記憶する。個別識別情報リクエスト送信手段は、個別識別情報リクエストを第2通信装置に送信する。個別識別情報受信手段は、個別識別情報リクエスト送信手段によって送信された個別識別情報リクエストに応じて第2通信装置から送信された所定種類のデータが付加された個別識別情報を受信する。第1データ利用手段は、個別識別情報受信手段によって受信された所定種類のデータを利用する。データリクエスト送信手段は、個別識別情報受信手段によって受信された個別識別情報と第1識別子記憶手段に記憶されている少なくとも1つの識別子とを含むデータリクエストを第2通信装置に送信する。データ受信手段は、データリクエスト送信手段によって送信されたデータリクエストに応じて第2通信装置から送信されたデータを受信する。第2データ利用手段は、データ受信手段によって受信されたデータを利用する。なお、「データを利用する」という用語は、最も広義に解釈されるべきものであり、データを出力(表示、印刷、別のデバイスに送信)すること、データを加工すること、データに基づいて計算すること等を含む概念である。
【0012】
第2通信装置は、SNMPを利用して第1通信装置にデータを提供することが可能である。この第2通信装置は、第2識別子記憶手段と個別識別情報リクエスト受信手段と個別識別情報送信手段とデータリクエスト受信手段とデータ送信手段を有する。第2識別子記憶手段は、第1通信装置に提供することが可能な複数種類のデータのそれぞれについて、当該種類のデータに対応する識別子を記憶する。個別識別情報リクエスト受信手段は、第1通信装置から送信された個別識別情報リクエストを受信する。個別識別情報送信手段は、個別識別情報リクエスト受信手段によって受信された個別識別情報リクエストに応じて、複数種類のデータのうちの少なくとも1つの所定種類のデータが付加されている個別識別情報を第1通信装置に送信する。データリクエスト受信手段は、第1通信装置から送信されたデータリクエストを受信する。データ送信手段は、データリクエスト受信手段によって受信されたデータリクエストに含まれる個別識別情報と個別識別情報送信手段によって送信された個別識別情報とに基づいた認証を条件として、データリクエストに含まれる識別子に対応する種類のデータを第1通信装置に送信する。
【0013】
このデータ提供システムでは、第1通信装置は、第2通信装置に個別識別情報をリクエストする。第2通信装置は、所定種類のデータが付加されている個別識別情報を送信する。これにより、第1通信装置は、第2通信装置からセキュリティレベルの低いデータを個別識別情報とともに取得することができる。第1通信装置が第2通信装置からデータを取得するまでの時間を短縮することができる。一方において、このデータ提供システムでは、第1通信装置は、受信した個別識別情報を含むデータリクエストを第2通信装置に送信する。第2通信装置は、データリクエストに含まれる個別識別情報と個別識別情報送信手段によって送信された個別識別情報とに基づいた認証を条件として、第1通信装置にデータを送信することもできる。この構成によれば、一定のセキュリティを確保しつつ第1通信装置が所定種類のデータを取得するまでの時間を短縮することができる。
【0014】
SNMPを利用して別の通信装置から取得することが可能な複数種類のデータのそれぞれについて、当該種類のデータに対応する識別子を記憶している識別子記憶手段を有する通信装置に搭載されるコンピュータに、以下の各処理を実行させるコンピュータプログラムも有用である。
(1)個別識別情報リクエストを別の通信装置に送信する個別識別情報リクエスト送信処理。
(2)個別識別情報リクエスト送信処理で送信された個別識別情報リクエストに応じて別の通信装置から送信された所定種類のデータが付加された個別識別情報を受信する個別識別情報受信処理。
(3)個別識別情報受信処理で受信されたデータを利用する第1データ利用処理。
(4)個別識別情報受信処理で受信された個別識別情報と識別子記憶手段に記憶されている少なくとも1つの識別子とを含むデータリクエストを別の通信装置に送信するデータリクエスト送信処理。
(5)データリクエスト送信処理で送信されたデータリクエストに応じて別の通信装置から送信されたデータを受信するデータ受信処理。
(6)データ受信処理で受信されたデータを利用する第2データ利用処理。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
ここでは、以下の実施例に記載の技術の特徴の一部を列挙する。
(形態1)第2通信装置の個別識別情報送信手段は、予め決められた情報を書き込む第1オクテット群と、他の情報を書き込むことが可能である第2オクテット群とを有するエンジンIDを送信してもよい。
(形態2)所定種類のデータは、予め決められた複数の項目の集合であってもよい。
(形態3)第1通信装置は、予め決められた複数の項目のそれぞれについて、当該項目に対応するビット番号を記憶する第1ビット番号記憶手段を有していてもよい。第2通信装置は、前記した複数の項目のそれぞれについて、当該項目に対応するビット番号を記憶する第2ビット番号記憶手段を有していてもよい。第2通信装置は、第2ビット番号記憶手段の記憶内容に基づいて、各項目に対応する情報を、当該項目に対応するビット番号に書き込んでもよい。これにより、第2通信装置は、個別識別情報を作成することができる。第1通信装置は、第1ビット番号記憶手段の記憶内容に基づいて、個別識別情報の各ビットから各項目の情報を特定することができる。
【実施例】
【0016】
図面を参照して実施例を説明する。図1は、本実施例のプリンタネットワークシステム10の構成を簡単に示す。プリンタネットワークシステム10は、管理サーバ12とプリンタ14,16等とを備える。図1では2つのプリンタ14,16しか示されていないが、実際には多数のプリンタが存在する。プリンタネットワークシステム10では、プリンタ14,16は、SNMPv3を利用して、管理サーバ12にデータを提供する。
【0017】
(管理サーバの構成)
管理サーバ12の構成について説明する。図2は、管理サーバ12の構成を示す。管理サーバ12は、操作部22と表示部24とネットワークインターフェイス26と制御部28と記憶部30を有する。操作部22は、複数のキーを有する。ユーザは、操作部22を操作することによって、様々な情報を管理サーバ12に入力することができる。表示部24は、様々な情報を表示することができる。ネットワークインターフェイス26は、LAN回線20に接続されている。LAN回線20は、プリンタ14,16に接続されている。管理サーバ12は、ネットワークインターフェイス26とLAN回線20を介して、プリンタ14,16と通信することができる。制御部28は、記憶部30に記憶されているプログラムに従って、様々な処理を実行する。制御部28が実行する処理の内容については、後で詳しく説明する。
【0018】
記憶部30は、ROM、EEPROM、RAM等によって構成されている。記憶部30は、管理サーバ12によって実行されるべきプログラムを記憶している。例えば、記憶部は、SNMPv3を利用して通信を行なうためのプログラムを記憶している。
また、記憶部30は、MIB32を記憶している。MIB32は、RFC(Request for Comment)1156で定義されたMIB−1を利用してもよく、RFC1213で定義されたMIB−2を利用してもよい。また、ベンダ等が独自に定義したプライベートMIBを利用してもよい。本実施例では、MIB32の識別子を単に「X」や「X.X」等として説明する。図3に示すように、MIB32は、情報の種類36に対応する識別子34が予め決められている。MIB32では、情報の種類36が階層に分かれている。例えば、管理サーバ12がプリンタ14から情報を取得する場合、管理サーバ12は、情報のリクエストに識別子を付加してプリンタ14に送信する。プリンタ14は、情報のリクエストに付加されている識別子に対応する種類の情報を管理サーバ12に送信する。例えば、情報のリクエストに識別子「X」が付加されている場合、プリンタ14は、識別子「X.X.X」、「X.Y.X」等、識別子「X」より下の階層で特定される情報を全て管理サーバ12に送信する。
【0019】
また、記憶部30は、ステータス情報データベース38を記憶している。ステータス情報データベース38は、プリンタ14,16から送信されるエンジンID78(図6参照)のステータス情報が格納されている第6オクテットのビット番号のそれぞれについて、当該ビット番号とステータス情報とを対応づけて記憶している。図4に示すように、ステータス情報データベース38では、ビット番号40とステータス情報42とが対応づけられている。管理サーバ12は、プリンタ14,16からエンジンID78を受信すると、エンジンID78の第6オクテットに含まれる各ビットに対応するステータス情報を表示部24に表示する。
【0020】
(プリンタの構成)
続いて、プリンタ14の構成について説明する。プリンタ16は、プリンタ14と同様の構成を有している。このために、プリンタ16の詳しい説明は省略する。図5は、プリンタ14の構成を示す。プリンタ14は、操作部52と表示部54とネットワークインターフェイス56と制御部58と印刷部60とカートリッジ62と給紙部64と各種センサ66と記憶部70等を有する。操作部52は、複数のキーを有する。ユーザは、操作部52を操作することによって、様々な情報をプリンタ14に入力することができる。表示部54は、様々な情報を表示することができる。ネットワークインターフェイス56は、LAN回線20に接続されている。ネットワークインターフェイス56は、プリンタ14が管理サーバ12と通信するためのインターフェイスである。制御部58は、記憶部70のプログラム記憶領域72に記憶されているプログラムに従って、様々な処理を実行する。制御部58が実行する処理の内容については、後で詳しく説明する。各種センサ66は、例えば、カートリッジ62のトナー残量や給紙部64の用紙残量等を検出する。印刷部60は、カートリッジ62を利用して、給紙部64から給紙された用紙に印刷を行う。
【0021】
記憶部70は、ROM、EEPROM、RAM等によって構成されている。記憶部70は、プログラム記憶領域72と通信用情報記憶領域74と管理情報データベース80とステータス情報データベース38とその他の記憶領域82等を有する。プログラム記憶領域72は、プリンタ14によって実行されるべきプログラムを記憶している。例えば、プログラム記憶領域72は、SNMPv3を利用して通信を行なうためのプログラム、印刷を行なうためのプログラム等を記憶している。
【0022】
通信用情報記憶領域74は、時刻同期情報76を記憶している。時刻同期情報76は、プリンタ14に固有の情報である。時刻同期情報76は、プリンタ14の起動回数に関する情報と、プリンタ14の最新の起動開始からの経過時間を有している。従って、時刻同期情報76は、プリンタ14が起動開始される毎に更新される。また、時刻同期情報76は、時間とともに変わる。本実施例では、プリンタ14の時刻同期情報76が「AAA」である。通信用情報記憶領域74は、エンジンID78を記憶することができる。図6は、エンジンID78の構成を説明するための図である。図6の上段は、エンジンID78の各オクテットの番号を示している。図6の下段は、各オクテットに入力される情報を示している。エンジンID78は、32オクテットで構成されている。第1から第4オクテットには、ベンダ固有の値が入力されている。第1から第4オクテットに入力される値は、不変の値である。第5オクテットには、第6オクテット以下の情報のサイズが入力される。例えば、第6オクテットのみに情報が入力されている場合、第5オクテットの第0ビットに「1」が書き込まれる。第6オクテットから第10オクテットまで情報が書き込まれている場合、第5オクテットの第0ビットと第3ビットに「1」が書き込まれる。第6オクテットには、プリンタ14のステータス情報を示す値が入力される。第6オクテットは、プリンタ14のステータスによって変化する。エンジンID78の生成方法は、後で詳しく説明する。第7から第32オクテットまでは、ユーザによって予め決められた値が入力されていてもよく、ブランクであってもよい。
【0023】
管理情報データベース80は、プリンタ14の様々な情報を記憶している。また、管理情報データベース80は、MIB32の識別子34と、識別子34に対応する情報を記憶している。例えば、管理情報データベース80は、識別子「Y.X.X」に対応付けてブラックトナーの残量を記憶している。即ち、管理情報データベース80は、図3に示される情報と同様の情報を記憶している。なお、プリンタ14のステータス情報データベース38に記憶されている情報は、図4に示される情報と同様である。その他の記憶領域82は、上記の各記憶領域72,74,80,38に記憶されるべき情報以外の情報を記憶することができる。
【0024】
(サーバの管理情報取得処理)
管理サーバ12の制御部28が実行する管理データ取得処理の内容について説明する。図7は、管理サーバ12の管理データ取得処理のフローチャートを示す。制御部28は、プリンタ14にエンジンID78のリクエストを送信する(S12)。制御部28は、エンジンID78を受信する(S14)。制御部28は、S12のリクエストをプリンタ14に送信してから所定の時間が経過しても、エンジンID78を受信しなかった場合、処理を終了してもよい。制御部28は、エンジンID78の第6オクテットのどのビット番号が「1」となっているかを特定する。制御部28は、特定したビット番号に対応するステータス情報をステータス情報データベース38から特定する(S16)。例えば、第6オクテットの第0ビットが「1」の場合、制御部28は、ステータス情報データベース38から「用紙残量少」を特定し、第5ビットが「1」の場合、制御部28は、ステータス情報データベース38から「用紙づまり」を特定する。制御部28は、特定した情報を表示部24に表示させる(S18)。
【0025】
ユーザは、操作部22を操作することによって、制御部28にプリンタ14から情報を取得させてもよい。あるいは、制御部28が、所定の時間間隔でプリンタ14から情報を取得してもよい。制御部28は、プリンタ14からステータス情報以外の情報を取得しない場合(S20でNO)、制御部28は処理を終了する。
【0026】
一方において、プリンタ14からステータス情報以外の情報を取得する場合(S20でYES)、制御部28は、S14で受信したエンジンID78を含む時刻同期情報のリクエストをプリンタ14に送信する(S22)。制御部28は、プリンタ14から時刻同期情報「AAA」を受信する(S24)。制御部28は、S22のリクエストをプリンタ14に送信してから所定の時間が経過しても、時刻同期情報を受信しなかった場合、処理を終了してもよい。制御部28は、時刻同期情報を受信した時点から、時刻同期情報に含まれるプリンタ14の最新の起動開始からの経過時間を時間に合わせて進める。これにより、プリンタ14が記憶している時刻同期情報と同期することができる。制御部28は、プリンタ14から取得する情報の種類に対応する識別子34をMIB32から特定する(S26)。あるいは、ユーザがプリンタ14から取得する情報の種類に対応する識別子34をMIB32から選択してもよい。
制御部28は、S14で受信したエンジンID78とS24で受信した時刻同期情報「AAA」とS26で特定した識別子34を含むリクエストをプリンタ14に送信する(S28)。制御部28は、S14で受信したエンジンID78を利用して、エンジンID78と時刻同期情報「AAA」と識別子34を含むリクエストを要約化して第1値を生成もよい。この場合、制御部28は、生成した第1値が付加されたリクエストをプリンタ14に送信してもよい。制御部28は、プリンタ14から情報を受信する(S30)と、受信した情報を表示部24に表示して(S32)、処理を終了する。
【0027】
(プリンタの管理情報送信処理)
次に、プリンタ14の制御部58が実行する管理情報送信処理の内容について説明する。図8は、プリンタ14の管理情報送信処理のフローチャートを示す。制御部58は、管理サーバ12からの受信を監視している。制御部58は、管理サーバ12からエンジンID78のリクエストを受信する(S40でYES)と、エンジンIDを生成する(S42)。制御部58がエンジンIDを生成する方法を説明する。制御部58は、管理情報データベース80に記憶されている情報の中から、ステータス情報データベース38のステータス情報に該当する情報があるか否かを確認する。例えば、管理情報データベース80に、トナー残量が少ないことを示す情報が記憶されている場合、制御部58は、第6オクテットの第2ビットに「1」を書き込む。また、管理情報データベース80に、トナー残量が少ないことを示す情報と、用紙が詰まっていることを示す情報が記憶されている場合、制御部58は、第6オクテットの第2ビットと第5ビットに「1」を書き込む。制御部58は、生成したエンジンID78を、通信用情報記憶領域74に記憶させる(S44)。制御部58は、生成したエンジンID78を含むレスポンスを管理サーバ12に送信して(S46)、管理サーバ12からの受信を監視する。
【0028】
制御部58は、管理サーバ12から時刻同期情報のリクエストを受信すると(S48でYES)、リクエストに含まれるエンジンID78が通信用情報記憶領域74に記憶されているエンジンID78と同一であるか否かを確認する(S50)。S50でNOの場合、制御部58は、管理サーバ12にアクセス不可を示すレスポンスを送信して(S52)、管理サーバ12からの受信を監視する。一方において、S50でYESの場合、制御部58は、時刻同期情報「AAA」を含むレスポンスを管理サーバ12に送信して(S54)、管理サーバ12からの受信を監視する。
【0029】
制御部58は、管理サーバ12から情報のリクエストを受信すると、リクエストに含まれる時刻同期情報が「AAA」であるかと、リクエストに含まれるエンジンID78が通信用情報記憶領域74に記憶されているエンジンID78であるか否かを確認する(S56)。管理サーバ12から受信したリクエストに、リクエストを要約化した第1値が付加されている場合、制御部58は、通信用情報記憶領域74に記憶されているエンジンID78を利用して、リクエストを要約化して第2値を生成してもよい。この場合、制御部58は、第1値と第2値が同一であるか否かを確認する。S56でNOの場合、制御部58は、管理サーバ12にアクセス不可を示すレスポンスを送信して(S58)、管理サーバ12からの受信を監視する。一方において、S54でYESの場合、管理情報データベース80からリクエストに含まれる識別子に対応する情報を管理サーバ12に送信して(S60)、管理サーバ12からの受信を監視する。
上記では、プリンタ14が管理サーバ12に情報を提供する場合について説明した。プリンタ16が管理サーバ12に情報を提供する場合については、プリンタ16がプリンタ14と同様の処理を実行することによって行われる。
【0030】
本実施例のシステム10では、各プリンタ14,16は、自身のステータス情報をエンジンID78に付加して管理サーバ12に送信する。これにより、管理サーバ12は、ステータス情報等のセキュリティレベルの低い情報を取得するまでの時間を短縮することができる。一方において、各プリンタ14,16は、エンジンID78のリクエストとレスポンスを行った後に、所望の情報を管理サーバ12に提供することも可能である。これにより、通常のSNMPv3で利用されるセキュリティレベルの高い手法を利用して、識別子「Z.Y」で示されるアドレス帳情報のようなセキュリティレベルの高い情報を通信することも可能である。本実施例のシステム10は、SNMPv1やSNMPv2を利用しないでも、SNMPv3の枠組みの中で、セキュリティレベルの低い情報を通信負荷の低い手法で通信することと、セキュリティレベルの高い手法を利用してセキュリティレベルの高い情報を通信することの両方を実現することができる。
【0031】
(変形例)
上記した実施例では、エンジンID78に含まれる情報は、ステータス情報である。しかしながら、エンジンID78に含まれる情報は、例えば、機種名やベンダ名等の情報であってもよい。この場合、プリンタ14は、エンジンID78の第6オクテットから第32オクテットに機種名やベンダ名等の情報を入力してもよい。また、上記した実施例では、エンジンID78に含まれる情報は、予め決められている。しかしながら、エンジンID78に含まれる情報は、管理サーバ12から送信されるエンジンID78のリクエストで指定してもよい。管理サーバ12は、エンジンID78のリクエストに情報の種類を特定する識別子34を含めてもよい。この場合、プリンタ14は、リクエストに含まれる識別子34で特定される情報をエンジンID78に付加してもよい。プリンタ14は、エンジンID78の第6オクテットから第32オクテットに指定された情報を入力してもよい。
【0032】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】プリンタネットワークシステムの概略図を示す。
【図2】管理サーバの構成を示す。
【図3】識別子データベースの構成を示す。
【図4】ステータス情報リストの構成を示す。
【図5】プリンタの構成を示す。
【図6】エンジンIDの構成を示す。
【図7】管理サーバが実行する管理情報取得処理のフローチャートを示す。
【図8】プリンタが実行する管理情報送信処理のフローチャートを示す。
【符号の説明】
【0034】
10:プリンタネットワークシステム
12:管理サーバ
14,16:プリンタ
32:MIB
38:ステータス情報データベース
78:エンジンID
80:管理情報データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SNMPを利用して別の通信装置にデータを提供することが可能である通信装置であり、
別の通信装置に提供することが可能な複数種類のデータのそれぞれについて、当該種類のデータに対応する識別子を記憶する識別子記憶手段と、
個別識別情報リクエストを受信する個別識別情報リクエスト受信手段と、
個別識別情報リクエスト受信手段によって受信された前記個別識別情報リクエストに応じて、前記複数種類のデータのうちの少なくとも1つの所定種類のデータが付加されている個別識別情報を含むレスポンスを送信する個別識別情報送信手段と、
個別識別情報と識別子記憶手段に記憶されている少なくとも1つの識別子とを含むデータリクエストを受信するデータリクエスト受信手段と、
データリクエスト受信手段によって受信された前記データリクエストに含まれる個別識別情報と個別識別情報送信手段によって送信された前記個別識別情報とに基づいた認証を条件として、前記データリクエストに含まれる識別子に対応する種類のデータを含むレスポンスを送信するデータ送信手段、
を備える通信装置。
【請求項2】
前記所定種類のデータは自身のステータス情報であることを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
少なくともSNMPv3を利用して前記別の通信装置にデータを提供することが可能であり、
前記個別識別情報は、エンジンIDであり、
エンジンIDは、予め決められた情報を書き込む第1部分と、他の情報を書き込むことが可能である第2部分とを有しており、
個別識別情報送信手段は、前記所定種類のデータを前記第2部分に書き込むことによって前記エンジンIDを生成し、生成された前記エンジンIDを前記別の通信装置に送信する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の通信装置。
【請求項4】
第1通信装置と、SNMPを利用して第1通信装置にデータを提供することが可能である第2通信装置とを備えるデータ提供システムであり、
第1通信装置は、
第2通信装置から取得することが可能な複数種類のデータのそれぞれについて、当該種類のデータに対応する識別子を記憶する第1識別子記憶手段と、
個別識別情報リクエストを第2通信装置に送信する個別識別情報リクエスト送信手段と、
個別識別情報リクエスト送信手段によって送信された前記個別識別情報リクエストに応じて第2通信装置から送信された所定種類のデータが付加された個別識別情報を受信する個別識別情報受信手段と、
個別識別情報受信手段によって受信された前記所定種類のデータを利用する第1データ利用手段と、
個別識別情報受信手段によって受信された前記個別識別情報と第1識別子記憶手段に記憶されている少なくとも1つの識別子とを含むデータリクエストを第2通信装置に送信するデータリクエスト送信手段と、
データリクエスト送信手段によって送信された前記データリクエストに応じて第2通信装置から送信されたデータを受信するデータ受信手段と、
データ受信手段によって受信された前記データを利用する第2データ利用手段と
を有し、
第2通信装置は、
第1通信装置に提供することが可能な複数種類のデータのそれぞれについて、当該種類のデータに対応する識別子を記憶する第2識別子記憶手段と、
第1通信装置から送信された前記個別識別情報リクエストを受信する個別識別情報リクエスト受信手段と、
個別識別情報リクエスト受信手段によって受信された前記個別識別情報リクエストに応じて、前記複数種類のデータのうちの少なくとも1つの所定種類のデータが付加されている個別識別情報を第1通信装置に送信する個別識別情報送信手段と、
第1通信装置から送信された前記データリクエストを受信するデータリクエスト受信手段と、
データリクエスト受信手段によって受信された前記データリクエストに含まれる個別識別情報と個別識別情報送信手段によって送信された前記個別識別情報とに基づいた認証を条件として、前記データリクエストに含まれる前記識別子に対応する種類のデータを第1通信装置に送信するデータ送信手段、
を有する
データ提供システム。
【請求項5】
SNMPを利用して別の通信装置から取得することが可能な複数種類のデータのそれぞれについて、当該種類のデータに対応する識別子を記憶している識別子記憶手段を有する通信装置に搭載されるコンピュータに、以下の各処理、即ち、
個別識別情報リクエストを別の通信装置に送信する個別識別情報リクエスト送信処理と、
個別識別情報リクエスト送信処理で送信された前記個別識別情報リクエストに応じて前記別の通信装置から送信された所定種類のデータが付加された個別識別情報を受信する個別識別情報受信処理と、
個別識別情報受信処理で受信された前記所定種類のデータを利用する第1データ利用処理と、
個別識別情報受信処理で受信された前記個別識別情報と識別子記憶手段に記憶されている少なくとも1つの識別子とを含むデータリクエストを前記別の通信装置に送信するデータリクエスト送信処理と、
データリクエスト送信処理で送信された前記データリクエストに応じて前記別の通信装置から送信されたデータを受信するデータ受信処理と、
データ受信処理で受信された前記データを利用する第2データ利用処理、
を実行させるコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−245203(P2009−245203A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−91530(P2008−91530)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】