通信装置、通信システムおよび通信方法
【課題】受信装置が複数のデータを合成して復号する場合の利得を向上させる。
【解決手段】通信装置1は、符号化により得られたデータブロックの一部である第1のデータおよび第2のデータを受信し第1のデータおよび第2のデータを合成して復号する受信装置2と通信を行う。通信装置1の制御部1aは、第1のデータの送信に用いる第1のリソースと第2のデータの送信に用いる第2のリソースとの間の通信品質の差を求め、通信品質の差に応じて、第2のデータが第1のデータと重複した部分を含む割合を制御する。
【解決手段】通信装置1は、符号化により得られたデータブロックの一部である第1のデータおよび第2のデータを受信し第1のデータおよび第2のデータを合成して復号する受信装置2と通信を行う。通信装置1の制御部1aは、第1のデータの送信に用いる第1のリソースと第2のデータの送信に用いる第2のリソースとの間の通信品質の差を求め、通信品質の差に応じて、第2のデータが第1のデータと重複した部分を含む割合を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は通信装置、通信システムおよび通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、携帯電話システムや無線LAN(Local Area Network)などの無線通信システムが広く利用されている。無線通信では、送信装置は、誤り検出符号化や誤り訂正符号化などの符号化処理を施したデータを送信する。受信装置は、受信データに対し誤り訂正復号や誤り検出などの復号処理を行う。ここで、符号化により得られるデータブロックは、高い冗長性を有していることがあり、その一部からでも正常に復号することが可能な場合がある。そこで、送信装置には、符号化により得られたデータブロックから一部のビットを間引く処理(パンクチャリング)を行うものがある。
【0003】
また、無線通信システムには、同一内容のデータブロックに対してそれぞれパンクチャリングを行って複数のデータを生成し、生成したデータをそれぞれ異なるリソースを用いて送信するものがある。受信装置は、同一内容のデータブロックから派生した複数のデータを合成して復号することで、受信誤りを抑制することができる。
【0004】
例として、基地局が第1のチャネルを用いてデータを送信し、中継局が基地局からデータを受信して第2のチャネルを用いて転送する移動通信システムを考える(例えば、特許文献1参照)。中継局を備える移動通信システムでは、移動局は、基地局からデータを直接受信すると共に、中継局からもデータを受信できる場合がある。移動局は、基地局と中継局の両方からデータを受信すると、受信したデータを合成して復号することができる。
【0005】
このとき、中継局が、復号および再符号化して得られるデータブロックに対し、基地局と同じパターンでパンクチャリングを行う方法が考えられる。すなわち、データブロックのうち、基地局が送信する部分と中継局が送信する部分とを同一にする方法が考えられる(例えば、非特許文献1参照)。一方、中継局が、データブロックに対し基地局と異なるパターンでパンクチャリングを行う方法も考えられる。すなわち、データブロックのうち、基地局が送信する部分と中継局が送信する部分とを異なる部分にする方法も考えられる
(例えば、非特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2007−43690号公報
【非特許文献1】J. N. Laneman, D. N. C. Tse and G. W. Wornell, "Cooperative Diversity in Wireless Networks: Efficient Protocols and Outage Behavior", IEEE Transactions on Information Theory, Vol. 50, No. 12, pp. 3062-3080, Dec. 2004.
【非特許文献2】T. E. Hunter and A. Nosratinia, "Cooperation Diversity through coding", Proc. IEEE 2002 International Symposium on Information Theory (ISIT), p. 220, June 2002.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
受信装置は、同一内容の複数のデータを受信して合成する(例えば、受信レベルを加算する)ことで、ダイバーシティに基づく利得を得ることができる。また、受信装置は、データブロックの異なる部分をそれぞれ受信して合成する(例えば、結合する)ことで、受信データの冗長度が高くなり、より大きな符号化利得を得ることができる。
【0007】
しかし、何れの方法がより高い利得を得ることができるかは、データ送信に用いるリソースの通信品質に依存する。例えば、複数のデータをそれぞれ異なるリソースを用いて送信する場合、得られる符号化利得は、リソース間の通信品質の相対関係にも依存することがある。
【0008】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、受信装置が複数のデータを合成して復号する場合の利得を向上させることが可能な通信装置、通信システムおよび通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、符号化により得られたデータブロックの一部である第1のデータおよび第2のデータを受信し第1のデータおよび第2のデータを合成して復号する受信装置と通信を行う通信装置が提供される。この通信装置は、第1のデータの送信に用いる第1のリソースと第2のデータの送信に用いる第2のリソースとの間の通信品質の差を求め、通信品質の差に応じて、第2のデータが第1のデータと重複した部分を含む割合を制御する制御部を有する。
【0010】
また、上記課題を解決するために、符号化により得られたデータブロックの一部である第1のデータおよび第2のデータを受信し第1のデータおよび第2のデータを合成して復号する受信装置と通信を行う通信システムが提供される。この通信システムは、送信装置および中継装置を有する。送信装置は、第1のデータの送信に用いる第1のリソースと第2のデータの送信に用いる第2のリソースとの間の通信品質の差を求め、通信品質の差に応じて、第2のデータが第1のデータと重複した部分を含む割合を制御する制御部と、第1のデータを第1のリソースを用いて送信すると共に、割合を示す制御情報を送信する送信部とを備える。中継装置は、送信装置から第1のデータおよび制御情報を受信し、第1のデータからデータブロックを復元し、データブロックのうち制御情報が示す割合に応じた部分を第2のデータとして第2のリソースを用いて送信する。
【0011】
また、上記課題を解決するために、符号化により得られたデータブロックの一部である第1のデータおよび第2のデータを受信し第1のデータおよび第2のデータを合成して復号する受信装置と通信を行う通信システムの通信方法が提供される。この通信方法では、第1のデータの送信に用いる第1のリソースと第2のデータの送信に用いる第2のリソースとの間の通信品質の差を求める。通信品質の差に応じて、第2のデータが第1のデータと重複した部分を含む割合を制御する。割合に従って、第1のデータを第1のリソースを用いて送信し、第2のデータを第2のリソースを用いて送信する。
【発明の効果】
【0012】
上記通信装置、通信システムおよび通信方法によれば、受信装置が複数のデータを合成して復号する場合の利得を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施の形態に係る通信装置を示す図である。通信装置1は、受信装置2と通信を行う。受信装置2は、通信装置1を含む通信システムから、第1のデータと第2のデータとを受信する。第1のデータおよび第2のデータは、符号化により得られたデータブロックの一部である。第1のデータおよび第2のデータは、例えば、同一内容のデータブロックをそれぞれパンクチャリングすることで生成される。受信装置2は、受信した第1のデータと第2のデータとを合成して復号する。なお、3つ以上のデータを受信し合成するようにしてもよい。
【0014】
通信装置1は、制御部1aおよび送信部1bを有する。
制御部1aは、第1のデータの送信に用いる第1のリソースと第2のデータの送信に用いる第2のリソースとの間の通信品質の差を求める。制御部1aは、受信装置2から第1のリソースおよび第2のリソースそれぞれの通信品質を示すフィードバック情報を取得することで、通信品質の差を求めることができる。ただし、受信装置2で通信品質の差を算出し、制御部1aが受信装置2から通信品質の差を示す情報を取得するようにしてもよい。
【0015】
そして、制御部1aは、求めた通信品質の差に応じて、第2のデータが第1のデータと重複した部分を含む割合を制御する。例えば、割合としては、0%(第1のデータと第2のデータとで重複がない場合)や、100%(第1のデータと第2のデータとが完全に同一の場合)が考えられる。また、0<X<100とし、X%(第1のデータと第2のデータとが一部重複する場合)も考えられる。Xは、予め静的に決めておいてもよいし、動的に決定してもよい。前者の場合、例えば、0%,100%,X%から割合を選択することも考えられる。
【0016】
例えば、制御部1aは、通信品質の差が所定の閾値より小さい場合、割合を0%(重複なし)とし、通信品質の差が閾値以上の場合、割合を100%(完全同一)と制御する場合が考えられる。これは、2つのデータの受信品質に大きな差がある場合は、それを結合してデータの冗長度を高めても十分な符号化利得が得られず、ダイバーシティに基づく利得の方が高くなる場合があることを考慮したものである。
【0017】
送信部1bは、制御部1aが制御する割合に基づいて、符号化により得られたデータブロックに対しパンクチャリングなどの処理を施して第1のデータを生成し、第1のリソースを用いて送信する。同様に、送信部1bは、データブロックから第2のデータを生成し、第2のリソースを用いて送信する。ただし、第1のデータおよび第2のデータの一方または両方を他の通信装置が送信してもよい。その場合、送信部1bは、割合を示す制御情報を、他の通信装置に対し送信する。他の通信装置としては、例えば、通信装置1から受信装置2への通信経路上でデータの中継を行う中継装置が考えられる。
【0018】
なお、リソースとしては、例えば、周波数帯と時間帯とによって特定される無線リソースを考えることができる。第1のリソースと第2のリソースとは、周波数帯が異なるものでもよいし同じものでもよい。また、時間帯が異なるものでもよいし同じものでもよい。例えば、第1のデータを受信した受信装置2が再送要求を行ったときのみ第2のデータを送信する場合は、第1のリソースと第2のリソースとは、少なくとも時間帯が異なる。
【0019】
このような通信装置1によれば、制御部1aにより、第1のデータの送信に用いられる第1のリソースと第2のデータの送信に用いられる第2のリソースとの間の通信品質の差に応じて、第2のデータが第1のデータと重複した部分を含む割合が制御される。
【0020】
これにより、第1のデータと第2のデータとを合成することにより得られる利得を向上させ、データ伝送を効率化することができる。例えば、重複した部分の割合を大きくした場合に得られるダイバーシティに基づく利得と、重複した部分の割合を小さくして冗長度を高めた場合に得られる符号化利得との関係を考慮して、より有利な利得を得られるようになる。
【0021】
以下、上記のデータ送信制御を移動通信システムに適用した場合について更に詳細に説明する。ただし、上記のデータ送信制御は、固定無線通信システムなど他の種類の通信システムに適用することもできる。
【0022】
[第1の実施の形態]
図2は、第1の実施の形態の無線通信システムの構成を示す図である。この無線通信システムは、基地局100、リレー局200および移動局300を有する。なお、基地局100は、図1の通信装置1に相当する。移動局300は、図1の受信装置2に相当する。
【0023】
基地局100は、移動局300が自局のセル(電波到達範囲)内に存在するとき、移動局300と無線通信を行うことができる無線通信装置である。基地局100は、基地局100から移動局300へのリンク(SD(Source - Destination)リンク)の無線リソースを用いて、移動局300宛てのデータを送信する。
【0024】
リレー局200は、基地局100と移動局300との間でデータの中継を行うことができる無線中継装置である。リレー局200は、基地局100が無線送信した移動局300宛てのデータを受信する。そして、リレー局200は、リレー局200から移動局300へのリンク(RD(Relay - Destination)リンク)の無線リソースを用いて、移動局300宛てのデータを再送信する。
【0025】
移動局300は、基地局100およびリレー局200と無線通信を行うことができる無線端末装置である。移動局300としては、例えば、携帯電話機が考えられる。移動局300は、SDリンクを介して自局宛てのデータを受信すると共に、RDリンクを介して中継されたデータを受信することができる。SDリンクおよびRDリンクの両方からデータを受信した場合、移動局300は、受信データを合成して復号する。このようなデータ伝送方式は、Cooperative Diversity(協同ダイバーシティまたは協調ダイバーシティ)と呼ばれることがある。
【0026】
なお、図2の例では、基地局100と移動局300との間に、1つの直接パスと1つの中継パスとを設けたが、複数の中継パスを設けるようにしてもよい。また、複数のリレー局がデータを連続的に中継して、1つの中継パスを形成するようにしてもよい。また、直接パスを設けずに、中継パスのみを設けるようにしてもよい。
【0027】
図3は、第1の実施の形態の基地局を示すブロック図である。基地局100は、誤り検出符号化部110、誤り訂正符号化部120、レートマッチング部130、変調部140、復調部150および制御部160を有する。なお、制御部160は、図1の制御部1aに相当する。
【0028】
誤り検出符号化部110は、移動局300に送信するユーザデータが発生すると、所定の送信単位(例えば、PDU(Protocol Data Unit)と呼ばれるデータ単位)のデータブロック毎に、誤り検出用の検査ビットを付加する。そして、誤り検出符号化部110は、検査ビットを付加したデータブロックを、誤り訂正符号化部120に出力する。
【0029】
誤り訂正符号化部120は、誤り検出符号化部110から取得したデータブロックを、誤り訂正符号化する。誤り訂正符号化では、所定の符号化方式または制御部160から指定された符号化方式を用いる。符号化方式としては、例えば、畳み込み符号や畳み込みターボ符号、低密度パリティ検査(LDPC:Low Density Parity Check)符号などが考えられる。誤り訂正符号化後のデータブロックには、組織ビットとパリティビットとが含まれる。この時点の符号化率が1/3の場合、組織ビット長とパリティビット長との比は、1:2となる。そして、誤り訂正符号化部120は、誤り訂正符号化後のデータブロックを、レートマッチング部130に出力する。
【0030】
レートマッチング部130は、誤り訂正符号化部120から取得したデータブロックを無線フレームにマッピングする。その際、レートマッチング部130は、データブロックが送信に用いる無線リソースより大きい場合、その一部のビット列を切り出す処理(パンクチャリング)を行う。また、データブロックが送信に用いる無線リソースより小さい場合、少なくとも一部のビット列を複製する処理(レペティション)を行う。そして、レートマッチング部130は、レートマッチング後のビット列を変調部140に出力する。
【0031】
本実施の形態では、誤り訂正符号化部120によって得られるデータブロックの冗長度が高く、レートマッチング部130がレートマッチングとしてパンクチャリングを行う場合を考える。データブロックのビット列のうちパンクチャリングで切り出す部分は、制御部160によって制御される。
【0032】
変調部140は、レートマッチング部130から取得したビット列を変調する。変調では、所定の変調方式または制御部160から指定される変調方式を用いる。変調方式としては、例えば、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)や16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)などのデジタル変調が考えられる。そして、変調部140は、変調後の送信信号を、無線送信部(図示せず)およびアンテナを介して、無線出力する。なお、送信に用いるアンテナと受信に用いるアンテナは、同一でもよいし異なってもよい。
【0033】
復調部150は、アンテナおよび無線受信部(図示せず)を介して取得した受信信号を復調する。特に、復調部150は、SDリンクおよびRDリンクの通信品質を示す移動局300からのフィードバック情報を復調する。そして、復調部150は、得られたフィードバック情報を制御部160に出力する。
【0034】
制御部160は、復調部150から取得したSDリンクおよびRDリンクの通信品質のフィードバック情報に基づいて、変調符号化方式(MCS:Modulation and Coding Scheme)を決定する。変調符号化方式には、例えば、符号化方式、符号化率、パンクチャリングの方法、変調方式が含まれる。そして、制御部160は、誤り訂正符号化部120に符号化方式や符号化率を指定し、レートマッチング部130にパンクチャリングの方法を指定し、変調部140に変調方式を指定する。ただし、符号化方式、符号化率および変調方式の一部または全部を、適応的に決定せず固定化してもよい。
【0035】
また、制御部160は、リレー局200に実行させるパンクチャリングの方法(リレー方式)を示す制御情報を生成する。基地局100におけるパンクチャリングとリレー局200におけるパンクチャリングとは、同一方法である(すなわち、同一内容のデータが移動局300に送信される)場合もあるし、異なる方法である(すなわち、異なる内容のデータが移動局300に送信される)場合もある。そして、制御部160は、生成した制御情報を、変調部140に出力してリレー局200宛てに送信させる。
【0036】
図4は、第1の実施の形態のリレー局を示すブロック図である。リレー局200は、復調部210、デレートマッチング部220、誤り訂正復号部230、誤り検出部240、誤り訂正符号化部250、レートマッチング部260、変調部270および制御部280を有する。
【0037】
復調部210は、アンテナおよび無線受信部(図示せず)を介して取得した基地局100からの受信信号を復調する。具体的には、復調部210は、基地局100からの受信信号に含まれるユーザデータを復調する。復調では、所定の復調方式またはユーザデータと共に基地局100から受信される情報が示す復調方式を用いる。そして、復調部210は、復調後のユーザデータのビット列をデレートマッチング部220に出力する。また、復調部210は、基地局100からの受信信号に含まれるリレー方式を示す制御情報を抽出する。そして、復調部210は、リレー方式を示す制御情報を制御部280に出力する。
【0038】
デレートマッチング部220は、復調部210から取得した復調後のビット列に対し、基地局100で行われたレートマッチングに対応する逆処理を行って、データブロックを復元する。例えば、デレートマッチング部220は、基地局100でレペティションが行われた場合、同一内容に相当するビット列を合成する(重ね合わせる)。また、基地局100でパンクチャリングが行われた場合、切り出されずに省略されたビット列を、所定のダミービットで補完する。そして、デレートマッチング部220は、デレートマッチング後のデータブロックを誤り訂正復号部230に出力する。なお、前述の通り、本実施の形態ではパンクチャリングが行われた場合を考える。
【0039】
誤り訂正復号部230は、デレートマッチング部220から取得したデータブロックに対し誤り訂正処理を行う。誤り訂正では、所定の復号方式またはユーザデータと共に基地局100から受信される情報が示す復号方式を用いる。誤り訂正後のデータブロックは、パリティビットが削除されたものとなる。そして、誤り訂正復号部230は、誤り訂正後のデータブロックを、誤り検出部240に出力する。
【0040】
誤り検出部240は、誤り訂正復号部230から取得したデータブロックに対し、誤り検出処理を行う。誤り検出では、基地局100で付加された検査ビットを参照する。誤りが検出された場合、誤り検出部240は、基地局100にデータの再送を要求することもできる。そして、誤り検出部240は、データブロックを誤り訂正符号化部250に出力する。なお、誤り検出処理後のデータブロックは、検査ビットが付加されたものとする。検査ビットは、受信したものを残してもよいし、付加し直してもよい。
【0041】
誤り訂正符号化部250は、誤り検出部240から取得したデータブロックを、再度、誤り訂正符号化する。誤り訂正符号化では、基地局100が用いた符号化方式と同じものを用いてもよいし、異なるものを用いてもよい。誤り訂正符号化後のデータブロックには、組織ビットとパリティビットとが含まれる。そして、誤り訂正符号化部250は、誤り訂正符号化後のデータブロックを、レートマッチング部260に出力する。
【0042】
レートマッチング部260は、誤り訂正符号化部250から取得したデータブロックをRDリンクの無線フレームにマッピングする。その際、パンクチャリングやレペティションが行われる。ただし、前述の通り、本実施の形態ではパンクチャリングを行う場合を考える。パンクチャリングの方法、すなわち、データブロックのビット列うちパンクチャリングで切り出す部分は、制御部280から指定される。そして、レートマッチング部260は、レートマッチング後のビット列を変調部270に出力する。
【0043】
変調部270は、レートマッチング部260から取得したビット列を変調する。変調では、基地局100が用いた変調方式と同じものを用いてもよいし、異なるものを用いてもよい。そして、変調部270は、変調後の送信信号を、無線送信部(図示せず)およびアンテナを介して、無線出力する。なお、送信に用いるアンテナと受信に用いるアンテナは、同一でもよいし異なってもよい。
【0044】
制御部280は、復調部210から取得したリレー方式を示す制御情報に基づいて、レートマッチング部260で実行するパンクチャリングを制御する。データブロックのビット列のうち、リレー局200で切り出す部分は、基地局100で切り出された部分と同一である場合もあるし、異なる場合もある。なお、リレー方式によっては、リレー局200で復号および再符号化を行わずに、受信信号を転送するよう制御してもよい。
【0045】
図5は、第1の実施の形態の移動局を示すブロック図である。移動局300は、復調部310、デレートマッチング部320、誤り訂正復号部330、誤り検出部340、品質測定部350,355および変調部360を有する。
【0046】
復調部310は、アンテナおよび無線受信部(図示せず)を介して取得したSDリンクの受信信号およびRDリンクの受信信号をそれぞれ復調する。復調では、所定の復調方式またはユーザデータと共に受信される情報が示す復調方式を用いる。そして、復調部310は、復調後のビット列をデレートマッチング部320に出力する。また、復調部310は、SDリンクの受信信号およびRDリンクの受信信号に含まれる既知信号をそれぞれ抽出する。そして、復調部310は、SDリンクの既知信号の品質測定部350に出力し、RDリンクの既知信号を品質測定部355に出力する。
【0047】
デレートマッチング部320は、復調部310から取得したSDリンクのビット列とRDリンクのビット列とを合成して、データブロックを復元する。例えば、2つのビット列がデータブロックの同一部分を切り出したものである場合、2つのビット列を重ね合わせる。また、2つのビット列がデータブロックの互いに異なる部分を切り出したものである場合、2つのビット列を結合する。合成によっても不足する部分は、所定のダミービットで補完する。
【0048】
そして、デレートマッチング部320は、デレートマッチング後のデータブロックを誤り訂正復号部330に出力する。なお、2つのビット列がデータブロックの同一部分であるか否かは、例えば、ユーザデータと共に基地局100またはリレー局200から受信される情報に基づいて判断することが考えられる。
【0049】
誤り訂正復号部330は、デレートマッチング部320から取得したデータブロックに対し誤り訂正処理を行う。誤り訂正では、所定の復号方式またはユーザデータと共に受信される情報が示す復号方式を用いる。誤り訂正後のデータブロックは、パリティビットが削除されたものとなる。そして、誤り訂正復号部330は、誤り訂正後のデータブロックを、誤り検出部340に出力する。
【0050】
誤り検出部340は、誤り訂正復号部330から取得したデータブロックに対し、誤り検出処理を行う。誤り検出では、付加されている検査ビットを参照する。誤りが検出された場合、誤り検出部340は、基地局100にデータの再送を要求することもできる。誤り検出処理後のデータブロックは、検査ビットが削除されたものとなる。そして、誤り検出部340は、データブロックをそのデータの種類に応じた処理を行うデータ処理部(図示せず)に出力する。
【0051】
品質測定部350,355は、復調部310から取得した既知信号に基づいて、下り方向(基地局100から移動局300への通信方向)の通信品質を測定する。具体的には、品質測定部350は、SDリンクの既知信号に基づいてSDリンクの通信品質を測定し、測定結果を示すフィードバック情報を変調部360に出力する。品質測定部355は、RDリンクの既知信号に基づいてRDリンクの通信品質を測定し、測定結果を示すフィードバック情報を変調部360に出力する。
【0052】
なお、通信品質の指標としては、信号対雑音比(SNR:Signal to Noise Ratio)や信号対干渉雑音比(SINR:Signal to Interference and Noise Ratio)などの各種指標を用いることができる。また、フィードバック情報としては、指標値を所定ビット数の離散値として表現したCQI(Channel Quality Indicator)を用いることができる。
【0053】
変調部360は、品質測定部350,355から取得したフィードバック情報を変調して、無線送信部(図示せず)およびアンテナを介して基地局100に無線送信する。SDリンクの通信品質を示すフィードバック情報とRDリンクの通信品質を示すフィードバック情報とは、同一タイミングで纏めて送信してもよいし、異なるタイミングで別個に送信してもよい。なお、送信に用いるアンテナと受信に用いるアンテナは、同一でもよいし異なってもよい。
【0054】
以下では、リレー方式のうち、基地局100とリレー局200とでデータブロックの同一部分を切り出すものを、単純リピート方式と呼ぶこととする。一方、基地局100とリレー局200とでデータブロックの異なる部分を切り出すものを、パリティ選択方式と呼ぶこととする。
【0055】
単純リピート方式に関しては、例えば、以下の文献(非特許文献1)が挙げられる。
J. N. Laneman, D. N. C. Tse and G. W. Wornell, "Cooperative Diversity in Wireless Networks: Efficient Protocols and Outage Behavior", IEEE Transactions on Information Theory, Vol. 50, No. 12, pp. 3062-3080, 2004.
パリティ選択方式に関しては、例えば、データブロックを2分割する方法を示した以下の文献(非特許文献2)が挙げられる。
【0056】
T. E. Hunter and A. Nosratinia, "Cooperation Diversity through coding", Proc. IEEE 2002 International Symposium on Information Theory (ISIT), p. 220, 2002.
ここで、基地局100が、SDリンクの通信品質とRDリンクの通信品質の両方を考慮して、符号化率や変調方式などの変調符号化方式を適応的に決定する方法を説明する。1つの方法として、SDリンクの通信品質とRDリンクの通信品質とから、各変調符号化方式を適用した場合のリンク全体での相互情報量(MI:Mutual Information)またはビット情報量(RBIR:Received Bit Information Rate)を推定し、相互情報量やビット情報量が最大となる変調符号化方式を選択する方法が考えられる。
【0057】
相互情報量やビット情報量に関しては、例えば、以下の文献が挙げられる。
R. G. Gallager, "Information Theory and Reliable Communication".
L. Wan, S. Tsai and M. Almergn, "A fading-insensitive performance metric for a unified link quality model", IEEE 2006 Wireless Communications and Networking Conference (WCNC), Vol. 4, pp. 2110-2114, 2006.
また、他の方法として、SDリンクの通信品質とRDリンクの通信品質とから、リンク全体の通信品質を表す有効通信品質(例えば、有効SNR)を算出し、有効通信品質に応じた変調符号化方式を選択する方法が考えられる。例えば、有効SNRを式(1)のように定義することができる。ここで、α1,α2は所定のパラメータ、F(x)は所定の関数、Nはリンク数(図2の例では、N=2)、γiは各リンクのSNRである。α1,α2,F(x)は、リレー方式に依存する。
【0058】
【数1】
【0059】
単純リピート方式の場合、移動局300では、N個の受信ビット列を加算する(重ね合わせる)ことから、ダイバーシティに基づく利得を得ることができる。よって、リンク全体の有効SNRは、個々のリンクのSNRの和として近似することが可能である。そこで、単純リピート方式を採用した場合の有効SNRは、式(1)にα1=1,α2=N,F(x)=xを代入して、式(2)のように定義することができる。
【0060】
【数2】
【0061】
一方、パリティ選択方式の場合、移動局300では、N個の受信ビット列が結合されて復号対象の冗長度が高くなる(例えば、パリティビットが増える)ことから、より高い符号化利得を得ることができる。パリティ選択方式を採用した場合の有効SNRは、EESM(Exponential Effective SNR Mapping)の手法に基づき、式(1)にα1=α2=β,F(x)=e-xを代入して、式(3)のように定義することができる。βは、変調符号化方式に依存する所定値である。
【0062】
【数3】
【0063】
有効通信品質に関しては、例えば、以下の文献が挙げられる。
K. Brueninghaus, et al., "Link performance models for system level simulations of broadband radio access systems", IEEE 16th International Symposium on Personal, Indoor and Mobile Radio Communications (PIMRC), Vol. 4, pp. 2306-2311, 2005.
このように、SDリンクおよびRDリンクを含むリンク全体の有効通信品質は、リレー方式に応じた計算式を用いて算出することができる。そして、算出した有効通信品質に基づいて、符号化率や変調方式などの変調符号化方式を適応的に決定することが可能となる。以下では、基地局100が、有効SNRに基づいて変調符号化方式を決定する場合を考える。
【0064】
次に、以上のような無線通信システムにおいて実行される処理の詳細を説明する。
図6は、第1の実施の形態のフォーマット決定処理を示すフローチャートである。この処理は、基地局100において繰り返し実行される。以下、図6に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
【0065】
[ステップS11]制御部160は、移動局300で測定された各リンク(SDリンクおよびRDリンク)のSNRを示すフィードバック情報を取得する。SDリンクについてのフィードバック情報とRDリンクについてのフィードバック情報とは、同一タイミングで纏めて取得する場合もあるし、異なるタイミングで別個に取得する場合もある。
【0066】
[ステップS12]制御部160は、中継パスのリンク(RDリンク)について、直接パスのリンク(SDリンク)とのSNR差を計算する。すなわち、SDリンクのSNRをγ0、RDリンクのSNRをγ1として、SNR差=γ1−γ0を計算する。
【0067】
[ステップS13]制御部160は、ステップS12で計算したSNR差が所定の閾値Th1未満か判断する。閾値Th1未満の場合、処理をステップS14に進める。閾値Th1以上の場合、処理をステップS15に進める。
【0068】
[ステップS14]制御部160は、リレー方式としてパリティ選択方式を選択する。これは、SNR差があまり大きくない場合には、パリティ選択方式により得られる符号化利得の方が、単純リピート方式により得られるダイバーシティに基づく利得よりも大きいと考えられるためである。その後、処理をステップS16に進める。
【0069】
[ステップS15]制御部160は、リレー方式として単純リピート方式を選択する。これは、SNR差が非常に大きい場合には、パリティ選択方式では十分な符号化利得を得られず、単純リピート方式により得られるダイバーシティに基づく利得の方が大きくなると考えられるためである。その後、処理をステップS16に進める。
【0070】
[ステップS16]制御部160は、ステップS14またはステップS15で選択したリレー方式に対応する計算式を用いて、SDリンクおよびRDリンクのSNRから、有効SNRを計算する。有効SNRの計算式としては、例えば、前述の式(2)および式(3)を用いることができる。
【0071】
[ステップS17]制御部160は、ステップS16で計算した有効SNRに応じて、符号化率や変調方式などの変調符号化方式を決定する。例えば、制御部160は、有効SNRと利用可能な変調符号化方式との対応関係を定義したテーブルを参照することで、決定する。このようなテーブルは、予め基地局100に搭載しておくことが考えられる。制御部160は、決定した変調符号化方式に従って、誤り訂正符号化部120、レートマッチング部130および変調部140を制御する。
【0072】
[ステップS18]制御部160は、ステップS14またはステップS15で選択したリレー方式を示す制御情報を生成する。生成された制御情報は、変調部140を介して、リレー局200に送信される。
【0073】
このようにして、基地局100は、移動局300からSDリンクおよびRDリンクの通信品質を示す情報を取得する。そして、2つのリンクの通信品質の差に応じて、単純リピート方式またはパリティ選択方式を選択する。基地局100は、選択したリレー方式をリレー局200に通知する。リレー局200は、基地局100から通知されたリレー方式に従って、パンクチャリングを行う。すなわち、リレー局200は、単純リピート方式が指定された場合、基地局100と同じ部分をデータブロックから抽出し、パリティ選択方式が指定された場合、基地局100と異なる部分をデータブロックから抽出する。
【0074】
なお、リレー方式の選択は、データブロック毎に行ってもよいし、間欠的(定期または不定期)に行ってもよい。また、リレー方式の選択は、変調符号化方式の決定と同一周期で行ってもよいし、異なる周期で行ってもよい。中継パスが複数存在する場合は、中継パス毎に、SNR差を計算してリレー方式を決定することができる。または、基地局100と移動局300との間の全ての中継パスに対して、同一のリレー方式を適用するよう統一してもよい。
【0075】
図7は、第1の実施の形態のメッセージの流れを示すシーケンス図である。以下、図7に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
[ステップS21]移動局300は、基地局100からの受信信号に基づいて、SDリンクのSNRを測定する。また、リレー局200からの受信信号に基づいて、RDリンクのSNRを測定する。2つのSNRの測定は、同じタイミングで行ってもよいし、異なるタイミングで行ってもよい。
【0076】
[ステップS22]移動局300は、SDリンクおよびRDリンクそれぞれについて、測定したSNRに応じたCQIを、フィードバック情報として基地局100に送信する。2つのCQIは、同じタイミングで纏めて送信してもよいし、異なるタイミングで別個に送信してもよい。
【0077】
[ステップS23]基地局100は、ステップS22で受信したフィードバック情報に基づいて、適切なリレー方式(単純リピート方式またはパリティ選択方式)を選択すると共に、適切な変調符号化方式を決定する。
【0078】
[ステップS24]基地局100は、ステップS23で選択したリレー方式をリレー局200に通知する。なお、リレー局200へのリレー方式の通知は、変調符号化方式を決定する前に行ってもよい。
【0079】
[ステップS25]基地局100は、ステップS23で決定した変調符号化方式に従って、データブロックに対し誤り訂正符号化、レートマッチングおよび変調を行い、送信信号を生成する。ただし、符号化率、符号化方式および変調方式の一部または全部を、固定のものを用いてもよい。
【0080】
[ステップS26]基地局100は、ステップS25で生成した送信信号を、SDリンクの無線リソースを用いて無線出力する。基地局100が出力した送信信号は、リレー局200および移動局300の両方に到達する。
【0081】
[ステップS27]リレー局200は、ステップS26で基地局100が出力した信号を受信し、復調、デレートマッチングおよび復号を行ってデータブロックを再現する。そして、リレー局200は、データブロックに対して再度、誤り訂正符号化、レートマッチングおよび変調を行って、送信信号を生成する。その際、リレー局200は、ステップS24で通知されたリレー方式に従って、パンクチャリングを行う。
【0082】
[ステップS28]リレー局200は、ステップS27で生成した送信信号を、RDリンクの無線リソースを用いて無線出力する。リレー局200が出力した送信信号は、移動局300に到達する。
【0083】
[ステップS29]移動局300は、ステップS26で基地局100から受信した信号およびステップS28でリレー局200から受信した信号をそれぞれ復調する。そして、移動局300は、各リンクの復調後のビット列を合成して復号する。合成では、リレー方式に応じて、ビット列の重ね合わせや結合を行う。
【0084】
このようにして、移動局300は、SDリンクおよびRDリンクのSNRを測定して、CQIを基地局100に報告する。基地局100は、移動局300から報告されたCQIに基づいてリレー方式を選択し、リレー局200に通知する。また、基地局100は、移動局300から報告されたCQIに基づいて変調符号化方式を決定し、SDリンクの無線リソースを用いてデータを送信する。リレー局200は、基地局100から通知されたリレー方式に従って、基地局100が送信したデータを中継する。移動局300は、基地局100およびリレー局200から受信したデータを合成する。
【0085】
図8は、第1の実施の形態の単純リピート方式のデータ送信を示す図である。この例では、基地局100がリレー方式として単純リピート方式を選択した場合を考える。また、誤り訂正符号化後のデータブロックに含まれる組織ビットとパリティビットとの比が1:2であり、1回のデータ送信でデータブロック長の半分のビット列を送信可能である場合を考える。
【0086】
基地局100は、パンクチャリングにおいて、データブロックから全ての組織ビットと一部のパリティビットとを切り出し、SDリンクの無線リソースを用いて切り出したビット列を送信する。リレー局200は、基地局100が送信したビット列を受信し、復号および再符号化を行う。その際、データブロックから基地局100が切り出した部分と同一部分のビット列(全ての組織ビットおよび一部のパリティビット)を切り出す。そして、リレー局200は、RDリンクの無線リソースを用いて切り出したビット列を送信する。
【0087】
移動局300は、基地局100から受信したビット列とリレー局200から受信したビット列とを重ね合わせて(例えば、受信レベルを加算して)、合成後のビット列を復号する。これにより、移動局300では、ダイバーシティに基づく利得を得ることができ、ブロック誤り率を低減することができる。なお、受信するビット列には、多くの組織ビット(例えば、全ての組織ビット)が含まれていることが好ましい。
【0088】
図9は、第1の実施の形態のパリティ選択方式のデータ送信を示す図である。この例では、基地局100がリレー方式としてパリティ選択方式を選択した場合を考える。また、図8と同様、誤り訂正符号化後のデータブロックに含まれる組織ビットとパリティビットとの比が1:2であり、1回のデータ送信でデータブロック長の半分のビット列を送信可能である場合を考える。
【0089】
基地局100は、パンクチャリングにおいて、データブロックから全ての組織ビットと一部のパリティビットとを切り出し、SDリンクの無線リソースを用いて切り出したビット列を送信する。リレー局200は、基地局100が送信したビット列を受信し、復号および再符号化を行う。その際、データブロックから基地局100で選択されなかった部分のビット列(基地局100で選択されなかったパリティビット)を切り出す。そして、リレー局200は、RDリンクの無線リソースを用いて切り出したビット列を送信する。
【0090】
移動局300は、基地局100から受信したビット列とリレー局200から受信したビット列とを結合して(例えば、基地局100から受信したビット列の後ろにリレー局200から受信したビット列を並べて1つのビット列とし)、合成後のビット列を復号する。これにより、移動局300では、より多くのパリティビットを受信できるため、より高い符号化利得を得ることができ、ブロック誤り率を低減することができる。なお、受信するビット列には、多くの組織ビットが含まれていることが好ましい。
【0091】
図10は、第1の実施の形態の他のフォーマット例を示す図である。図9に示したパリティ選択方式の例では、誤り訂正符号化後のデータブロックを2分割したが、この他にも種々のパンクチャリングの方法が考えられる。図10の例は、基地局100と移動局300との間に3つのパス(例えば、1つの直接パスおよび2つの中継パス)が存在する場合を示している。
【0092】
この例に示すように、パリティ選択方式でも、一部の組織ビットや一部のパリティビットが重複して切り出されるようにしてもよい。この場合、移動局300は、重複する部分について重ね合わせて合成することができる。また、何れのパスでも切り出されないビットが存在してもよい。この場合、移動局300は、欠けている部分をダミービットで補完することもできる。なお、パリティ選択方式の場合に、ビット列を切り出す具体的な位置は、予め決めておいてもよいし、通信品質に応じて選択するようにしてもよい。
【0093】
第1の実施の形態に係る無線通信システムによれば、移動局300は、SDリンクの受信データとRDリンクの受信データとを合成して復号することができる。その場合、SDリンクの通信品質とRDリンクの通信品質との差に応じて、適切なリレー方式(例えば、単純リピート方式またはパリティ選択方式)が選択される。その結果、リレー局200を利用することで移動局300で得られる利得が向上し、ブロック誤り率が低減し、より高いスループットを達成することができる。
【0094】
なお、第1の実施の形態では、リレー方式の選択および変調符号化方式の決定を基地局100が制御することとしたが、他の通信装置が制御するようにしてもよい。例えば、リレー局200が、各リンクの通信品質を示す情報を取得して、リレー方式の選択および変調符号化方式の決定の一方または両方を行ってもよい。
【0095】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。前述の第1の実施の形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については説明を省略する。第2の実施の形態の無線通信システムでは、3つのリレー方式を定義し、その中から適切なリレー方式を選択する。第2の実施の形態では、基地局とリレー局とでデータブロックの同一部分を切り出す方式を単純リピート方式と呼び、一部ビットが重複するように切り出す方式を複合方式と呼び、重複するビットがないように切り出す方式をパリティ選択方式と呼ぶこととする。
【0096】
第2の実施の形態に係る無線通信システムは、図2に示した第1の実施の形態のものと同様のシステム構成によって実現できる。また、第2の実施の形態に係る基地局、リレー局および移動局は、図3〜5に示した第1の実施の形態のものと同様のブロック構成によって実現できる。ただし、基地局におけるリレー方式の選択制御の具体的内容が異なる。以下、図2〜5で用いたものと同様の符号を用いて、第2の実施の形態を説明する。
【0097】
図11は、第2の実施の形態のフォーマット決定処理を示すフローチャートである。この処理は、基地局100において繰り返し実行される。以下、図11に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
【0098】
[ステップS31]制御部160は、移動局300で測定された各リンク(SDリンクおよびRDリンク)のSNRを示すフィードバック情報を取得する。
[ステップS32]制御部160は、RDリンクについて、SDリンクとのSNR差を計算する。すなわち、SDリンクのSNRをγ0、RDリンクのSNRをγ1として、SNR差=γ1−γ0を計算する。
【0099】
[ステップS33]制御部160は、ステップS32で計算したSNR差が所定の閾値Th1未満か判断する。閾値Th1は、第1の実施の形態で用いたものと同じでもよいし、異なってもよい。閾値Th1未満の場合、処理をステップS34に進める。閾値Th1以上の場合、処理をステップS35に進める。
【0100】
[ステップS34]制御部160は、リレー方式としてパリティ選択方式を選択する。すなわち、リレー局200に、基地局100の場合とビットが重複しないようにデータブロックからビット列を抽出させると決定する。そして、処理をステップS38に進める。
【0101】
[ステップS35]制御部160は、ステップS32で計算したSNR差が所定の閾値Th2(Th1<Th2)未満(かつ、閾値Th1以上)か判断する。閾値Th2未満の場合、処理をステップS36に進める。閾値Th2以上の場合、処理をステップS37に進める。
【0102】
[ステップS36]制御部160は、リレー方式として複合方式を選択する。すなわち、リレー局200に、基地局100の場合とビットが一部重複するようにデータブロックからビット列を抽出させると決定する。そして、処理をステップS38に進める。
【0103】
[ステップS37]制御部160は、リレー方式として単純リピート方式を選択する。すなわち、リレー局200に、基地局100の場合と同一部分のビット列をデータブロックから抽出させると決定する。そして、処理をステップS38に進める。
【0104】
[ステップS38]制御部160は、ステップS34、ステップS36またはステップS37で選択したリレー方式に対応する計算式を用いて、SDリンクおよびRDリンクのSNRから、有効SNRを計算する。例えば、単純リピート方式を選択した場合、前述の式(2)を用い、パリティ選択方式を選択した場合、前述の式(3)を用いることができる。複合方式を選択した場合、パリティ選択方式と同じく式(3)を用いてもよいし、別個に用意した計算式を用いてもよい。
【0105】
[ステップS39]制御部160は、ステップS38で計算した有効SNRに応じて、変調符号化方式を決定する。
[ステップS40]制御部160は、ステップS34、ステップS36またはステップS37で選択したリレー方式を示す制御情報を生成する。生成された制御情報は、変調部140を介して、リレー局200に送信される。
【0106】
このようにして、基地局100は、移動局300からSDリンクおよびRDリンクの通信品質を示す情報を取得する。そして、2つのリンクの通信品質の差に応じて、単純リピート方式、複合方式またはパリティ選択方式を選択する。基地局100は、選択したリレー方式をリレー局200に通知する。リレー局200は、基地局100から通知されたリレー方式に従って、パンクチャリングを行う。
【0107】
図12は、第2の実施の形態の複合方式のデータ送信を示す図である。この例では、基地局100がリレー方式として複合方式を選択した場合を考える。また、誤り訂正符号化後のデータブロックに含まれる組織ビットとパリティビットとの比が1:2であり、1回のデータ送信でデータブロック長の半分のビット列を送信可能である場合を考える。
【0108】
基地局100は、パンクチャリングにおいて、データブロックから全ての組織ビットと一部のパリティビットとを切り出し、SDリンクの無線リソースを用いて切り出したビット列を送信する。リレー局200は、基地局100が送信したビット列を受信し、復号および再符号化を行う。その際、データブロックから基地局100が切り出した部分と一部重複するようにビット列(例えば、一部の組織ビットおよび一部のパリティビット)を切り出す。そして、リレー局200は、RDリンクの無線リソースを用いて切り出したビット列を送信する。
【0109】
移動局300は、基地局100から受信したビット列とリレー局200から受信したビット列とを合成して(重複する部分は重ね合わせ、重複しない部分同士は結合して)、合成後のビット列を復号する。これにより、移動局300では、ダイバーシティに基づく利得と符号化利得との組み合わせに応じた利得を得ることができ、ブロック誤り率を低減することができる。なお、複合方式の場合に、ビット列を切り出す具体的な位置は、予め決めておいてもよいし、通信品質に応じて選択するようにしてもよい。ここで、単純リピート方式とパリティ選択方式とに加えて、複合方式を設ける利点を説明する。
【0110】
図13は、リレー方式とブロック誤り率との関係を示す第1の図である。図13のグラフは、単純リピート方式、複合方式、パリティ選択方式それぞれについての、SNR差とブロック誤り率(BLER:BLock Error Rate)との関係を示している。横軸がSNR差(単位はdB)、縦軸がブロック誤り率(無単位)である。このグラフは、データブロック長を3072バイト、変調方式をQPSK、SDリンクのビット列に含まれる組織ビットの割合(SDリンクの符号化率)を0.8、RDリンクのビット列に含まれる組織ビットの割合(RDリンクの符号化率)を0.48としたシミュレーションの結果である。
【0111】
このグラフに示すように、単純リピート方式では、RDリンクのSNRが大きくなるほどブロック誤り率が低下する。これは、各リンクのビット列を重ね合わせる(例えば、受信レベルを加算する)ので、データブロック内に品質の大きく異なるビットが混在することがないためである。一方、パリティ選択方式では、RDリンクのSNRが大きくなったとき、単純リピート方式ほどブロック誤り率は低下しない。これは、各リンクのビット列を結合するので、データブロック内に品質の大きく異なるビットが混在するためである。
【0112】
特に、誤り訂正において組織ビットの方がパリティビットよりも重要度が高い符号を用いており、組織ビットを主にSDリンクで送信し、パリティビットを主にRDリンクで送信する場合は、RDリンクのSNRがSDリンクのSNRより非常に大きくなると、十分な符号化利得が得られなくなる。これに対し、複合方式では、RDリンクのSNRが大きくなればブロック誤り率は低下するが、その程度はRDリンクの符号化率にも依存する。
【0113】
このシミュレーション例では、SNR差が12dB以下の場合、パリティ選択方式が最もブロック誤り率を低下できる。SNR差が13dB以上15dB以下の場合、複合方式が最もブロック誤り率を低下できる。SNR差が16dB以上の場合、単純リピート方式が最もブロック誤り率を低下できる。基地局100は、求めたSDリンクとRDリンクとのSNR差から、ブロック誤り率が最も低くなるリレー方式を、適切なリレー方式として選択することができる。前述の閾値Th1,Th2は、例えば、図13に示したようなシミュレーション結果から決定することができる。
【0114】
図14は、リレー方式とブロック誤り率との関係を示す第2の図である。図14のグラフは、図13と同様、単純リピート方式、複合方式、パリティ選択方式それぞれについての、SNR差とブロック誤り率との関係を示している。このグラフは、データブロック長を3072バイト、変調方式をQPSK、SDリンクの符号化率を0.8、RDリンクの符号化率を0.3としてシミュレーションを行った結果である。図13のグラフとは、RDリンクの符号化率が異なることから、複合方式の曲線が異なっている。
【0115】
このシミュレーション例では、SNR差が12dB以下の場合、パリティ選択方式が最もブロック誤り率を低下できる。SNR差が13dB以上の場合、複合方式が最もブロック誤り率を低下できる。SNR差が更に大きい場合でも、複合方式のブロック誤り率と単純リピート方式のブロック誤り率とは逆転しない。すなわち、基地局100は、パリティ選択方式または複合方式を、最適なリレー方式として選択することが考えられる。
【0116】
なお、基地局100は、SDリンクのビット列とRDリンクのビット列との重複度を固定にしてもよいし、通信品質に応じて適応的に決定してもよい。後者の場合、基地局100は、ビット列間の重複度またはRDリンクの符号化率に応じた閾値Th1,Th2を用いて、適切なリレー方式を選択することもできる。
【0117】
第2の実施の形態に係る無線通信システムによれば、SDリンクの通信品質とRDリンクの通信品質との差に応じて、単純リピート方式、複合方式およびパリティ選択方式から適切なリレー方式が選択される。特に、SDリンクとRDリンクとで一部のビットを重複して送信した場合の利得が考慮される。その結果、リレー局200を利用することで移動局300で得られる利得がより向上し、ブロック誤り率が低減し、より高いスループットを達成することができる。
【0118】
[第3の実施の形態]
次に、第3の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。前述の第1の実施の形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については説明を省略する。第3の実施の形態の無線通信システムでは、通信方式としてOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)を採用し、基地局はリソースブロックと呼ばれる単位で移動局に無線リソースを割り当てることができる。
【0119】
第3の実施の形態に係る無線通信システムは、図2に示した第1の実施の形態のものと同様のシステム構成によって実現できる。また、第2の実施の形態に係る基地局、リレー局および移動局は、図3〜5に示した第1の実施の形態のものと同様のブロック構成によって実現できる。ただし、基地局におけるリレー方式の選択制御の具体的内容が異なる。以下、図2〜5で用いたものと同様の符号を用いて、第3の実施の形態を説明する。
【0120】
図15は、第3の実施の形態のOFDMのフレーム構造例を示す図である。このような構造のOFDMフレームが、SDリンクおよびRDリンクで送信される。1つのフレームの時間幅は10ms(ミリ秒)である。1つのフレームは複数のサブフレームを含む。1つのサブフレームの時間幅は1msである。サブフレームでは、周波数領域×時間領域上の無線リソースが細分化されて管理される。周波数方向の最小単位はサブキャリアと呼ばれる。時間方向の最小単位はシンボルと呼ばれる。1サブキャリア・1シンボルで特定される無線リソースの最小単位はリソースエレメントと呼ばれる。
【0121】
移動局300には、例えば、1サブフレーム内の複数のサブキャリア分の無線リソースが、リソースブロックとして割り当てられる。移動局300には、SDリンクおよびRDリンクそれぞれについて、リソースブロックが割り当てられる。なお、SDリンクで使用可能な周波数帯とRDリンクで使用可能な周波数帯とは、同一でもよいし、異なっていてもよい。また、SDリンクのフレームとRDリンクのフレームとは、同期していてもよいし、同期していなくてもよい。
【0122】
図16は、第3の実施の形態のフォーマット決定処理を示すフローチャートである。この処理は、基地局100において繰り返し実行される。以下、図16に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
【0123】
[ステップS41]制御部160は、移動局300で測定された各リソースブロックのSNRを示すフィードバック情報を取得する。複数の移動局が存在する場合、他の移動局からもフィードバック情報を取得する。なお、移動局300は、自局に割り当てられる可能性のあるリソースブロックを絞り込むことができる場合、そのリソースブロックについてのみSNRを報告するようにしてもよい。
【0124】
[ステップS42]制御部160は、ステップS41で取得した各リソースブロックのSNRに基づいて、移動局300に対し、SDリンクのリソースブロックとRDリンクのリソースブロックとを割り当てる。複数の移動局が存在する場合、他の移動局に対してもリソースブロックを割り当てる。その際、移動局間の公正性を考慮することもできる。
【0125】
[ステップS43]制御部160は、以下のステップS44〜S49の処理を、基地局100に接続する全ての移動局について実行したか判断する。全ての移動局について実行した場合、処理をステップS50に進める。未実行の移動局がある場合、処理をステップS44に進める。なお、以下のステップS44〜S49の説明では、移動局300についての処理を考える。
【0126】
[ステップS44]制御部160は、移動局300に割り当てたSDリンクのリソースブロックとRDリンクのリソースブロックとのSNR差を計算する。すなわち、SDリンクのリソースブロックのSNRをγ0、RDリンクのリソースブロックのSNRをγ1として、SNR差=γ1−γ0を計算する。
【0127】
[ステップS45]制御部160は、ステップS44で計算したSNR差が所定の閾値Th1未満か判断する。閾値Th1未満の場合、処理をステップS46に進める。閾値Th1以上の場合、処理をステップS47に進める。
【0128】
[ステップS46]制御部160は、移動局300宛てのデータに適用するリレー方式としてパリティ選択方式を選択する。その後、処理をステップS48に進める。
[ステップS47]制御部160は、移動局300宛てのデータに適用するリレー方式として単純リピート方式を選択する。その後、処理をステップS48に進める。
【0129】
[ステップS48]制御部160は、ステップS46またはステップS47で選択したリレー方式に対応する計算式を用いて、SDリンクのリソースブロックおよびRDリンクのリソースブロックのSNRから、有効SNRを計算する。有効SNRの計算式としては、例えば、前述の式(2)および式(3)を用いることができる。
【0130】
[ステップS49]制御部160は、ステップS48で計算した有効SNRに応じて、変調符号化方式を決定する。そして、処理をステップS43に進める。
[ステップS50]制御部160は、ステップS42でRDリンク用に割り当てたリソースブロックを示す制御情報を生成する。また、ステップS46またはステップS47で選択したリレー方式を示す制御情報を生成する。生成された制御情報は、変調部140を介して、リレー局200に送信される。
【0131】
このようにして、基地局100は、移動局300から各リソースブロックの通信品質を示す情報を取得する。そして、SDリンクおよびRDリンク用のリソースブロックを割り当て、割り当てたリソースブロックの通信品質の差に応じて、単純リピート方式またはパリティ選択方式を選択する。基地局100は、割り当てたリソースブロックおよび選択したリレー方式を、リレー局200に通知する。リレー局200は、基地局100から通知されたリレー方式に従って、パンクチャリングを行う。そして、基地局100から通知されたリソースブロックを用いて、パンクチャリング後のビット列を送信する。
【0132】
図17は、第3の実施の形態のメッセージの流れを示すシーケンス図である。以下、図17に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
[ステップS51]移動局300は、基地局100からの受信信号およびリレー局200からの受信信号に基づいて、各リソースブロックのSNRを測定する。各リソースブロックの測定は、同じタイミングで行ってもよいし、異なるタイミングで行ってもよい。
【0133】
[ステップS52]移動局300は、各リソースブロックについて、測定したSNRに応じたCQIを、フィードバック情報として基地局100に送信する。各リソースブロックのCQIは、同じタイミングで纏めて送信してもよいし、異なるタイミングで別個に送信してもよい。
【0134】
[ステップS53]基地局100は、ステップ52で受信したフィードバック情報に基づいて、移動局300にリソースブロックを割り当てる。そして、割り当てたリソースブロックのCQIに基づいて、適切なリレー方式(単純リピート方式またはパリティ選択方式)を選択すると共に、適切な変調符号化方式を決定する。
【0135】
[ステップS54]基地局100は、ステップS53で割り当てたリソースブロックおよび選択したリレー方式を、リレー局200に通知する。割り当てたリソースブロックとリレー方式とは、同じタイミングで纏めて通知してもよいし、異なるタイミングで別個に通知してもよい。
【0136】
[ステップS55]基地局100は、ステップS53で決定した変調符号化方式に従って、データブロックに対し誤り訂正符号化、レートマッチングおよび変調を行い、送信信号を生成する。
【0137】
[ステップS56]基地局100は、ステップS55で生成した送信信号を、SDリンクのリソースブロックを用いて無線出力する。
[ステップS57]リレー局200は、ステップS56で基地局100が出力した信号を受信し、復調、デレートマッチングおよび復号を行ってデータブロックを再現する。そして、リレー局200は、データブロックに対して再度、誤り訂正符号化、レートマッチングおよび変調を行って、送信信号を生成する。その際、リレー局200は、ステップS54で通知されたリレー方式に従ってパンクチャリングを行う。
【0138】
[ステップS58]リレー局200は、ステップS57で生成した送信信号を、ステップS54で通知されたRDリンクのリソースブロックを用いて無線出力する。
[ステップS59]移動局300は、ステップS56で基地局100から受信した信号およびステップS58でリレー局200から受信した信号をそれぞれ復調する。そして、移動局300は、各リンクの復調後のビット列を合成して復号する。
【0139】
このようにして、移動局300は、各リソースブロックのSNRを測定して、CQIを基地局100に報告する。基地局100は、移動局300から報告されたCQIに基づいてリソースブロックを移動局300に割り当てると共に、リレー方式を選択してリレー局200に通知する。また、基地局100は、移動局300から報告されたCQIに基づいて変調符号化方式を決定し、SDリンクのリソースブロックを用いてデータを送信する。リレー局200は、基地局100から通知されたリレー方式に従い、通知されたリソースブロックを用いてデータを中継する。移動局300は、基地局100およびリレー局200から受信したデータを合成する。
【0140】
第3の実施の形態に係る無線通信システムによれば、基地局100は、各リソースブロックの通信品質に応じて、SDリンクのリソースブロックとRDリンクのリソースブロックとを移動局300に割り当てることができる。リレー方式は、SDリンクのリソースブロックとRDリンクのリソースブロックとの通信品質差に応じて選択される。その結果、移動局300で得られる利得が向上し、ブロック誤り率が低減し、より高いスループットを達成することができる。
【0141】
なお、第3の実施の形態では、基地局100がSDリンクおよびRDリンクのリソースブロックの割り当てを管理したが、リレー局200がRDリンクのリソースブロックの割り当てを管理してもよい。その場合、リレー方式の選択のために、リレー局200が基地局100に、割り当てたリソースブロックを通知することが考えられる。また、RDリンクのリソースブロックの通信品質を、リレー局200経由で基地局100に報告するようにしてもよい。また、リレー方式は、第2の実施の形態で述べたように、3つの方式(単純リピート方式、複合方式およびパリティ選択方式)から選択してもよい。
【0142】
[第4の実施の形態]
次に、第4の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。前述の第3の実施の形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については説明を省略する。第4の実施の形態の無線通信システムでは、基地局からリレー局へのリンク(SR(Source - Relay)リンク)の通信品質も考慮して、移動局への無線リソースの割り当てを制御する。
【0143】
第4の実施の形態に係る無線通信システムは、図2に示した第1の実施の形態のものと同様のシステム構成によって実現できる。また、第4の実施の形態に係る基地局および移動局は、図3,5に示した第1の実施の形態のものと同様のブロック構成によって実現できる。ただし、基地局におけるリソース管理の具体的内容が異なる。以下、基地局および移動局については、図3,5と同様の符号を用いて、第4の実施の形態を説明する。
【0144】
図18は、第4の実施の形態のリレー局を示すブロック図である。第4の実施の形態に係るリレー局200aは、復調部210、デレートマッチング部220、誤り訂正復号部230、誤り検出部240、誤り訂正符号化部250、レートマッチング部260、変調部270、制御部280および品質測定部290を有する。
【0145】
復調部210、デレートマッチング部220、誤り訂正復号部230、誤り検出部240、誤り訂正符号化部250、レートマッチング部260、変調部270および制御部280の機能は、第1および第3の実施の形態で述べた通りである。
【0146】
品質測定部290は、基地局100の送信信号に含まれる既知信号を復調部210から取得し、取得した既知信号に基づいてSRリンクの通信品質を測定する。そして、品質測定部290は、測定結果を示すフィードバック情報を生成し、変調部270に出力する。例えば、通信品質の指標としては、SNRやSINRを用いることができ、フィードバック情報としては、CQIを用いることができる。フィードバック情報は、変調部270を介して、基地局100に送信される。
【0147】
図19は、第4の実施の形態のフォーマット決定処理を示すフローチャートである。この処理は、基地局100において繰り返し実行される。以下、図19に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
【0148】
[ステップS61]制御部160は、移動局300で測定された各リソースブロックのSNRを示すフィードバック情報を取得する。また、SRリンクについてリレー局200aで測定された各リソースブロックのSNRを示すフィードバック情報を取得する。複数の移動局が存在する場合、他の移動局からもフィードバック情報を取得する。
【0149】
[ステップS62]制御部160は、ステップS61で取得した各リソースブロックのSNRに基づいて、移動局300に対し、SDリンクのリソースブロックとRDリンクのリソースブロックとを割り当てる。複数の移動局が存在する場合、他の移動局に対してもリソースブロックを割り当てる。
【0150】
[ステップS63]制御部160は、以下のステップS64〜S72の処理を、基地局100に接続する全ての移動局について実行したか判断する。全ての移動局について実行した場合、処理をステップS73に進める。未実行の移動局がある場合、処理をステップS64に進める。なお、以下のステップS64〜S72の説明では、移動局300についての処理を考える。
【0151】
[ステップS64]制御部160は、移動局300に割り当てたSDリンクのリソースブロックとRDリンクのリソースブロックとのSNR差を計算する。
[ステップS65]制御部160は、ステップS64で計算したSNR差が所定の閾値Th1未満か判断する。閾値Th1未満の場合、処理をステップS66に進める。閾値Th1以上の場合、処理をステップS67に進める。
【0152】
[ステップS66]制御部160は、移動局300宛てのデータに適用するリレー方式としてパリティ選択方式を選択する。その後、処理をステップS68に進める。
[ステップS67]制御部160は、移動局300宛てのデータに適用するリレー方式として単純リピート方式を選択する。その後、処理をステップS68に進める。
【0153】
[ステップS68]制御部160は、ステップS66またはステップS67で選択したリレー方式に対応する計算式を用いて、SDリンクのリソースブロックおよびRDリンクのリソースブロックのSNRから、有効SNRを計算する。
【0154】
[ステップS69]制御部160は、ステップS68で計算した有効SNRに応じて、変調符号化方式を決定する。
[ステップS70]制御部160は、ステップS61で取得したSNRとステップS69で決定した変調符号化方式とから、SRリンクとRDリンクとで達成可能な伝送レートを推定する。そして、制御部160は、SRリンクの伝送レートがRDリンクの伝送レートより小さいか判断する。SRリンクの伝送レートが小さい場合、処理をステップS71に進める。SRリンクの伝送レートが小さくない場合、処理をステップS63に進める。
【0155】
[ステップS71]制御部160は、RDリンクの割り当てリソース量を削減する。例えば、ステップS62で移動局300に複数のリソースブロックを割り当てた場合、割り当てるリソースブロック数を削減する。削減量は、例えば、ステップS70で推定したSRリンクの伝送レートとRDリンクの伝送レートとの差に応じて決定する。
【0156】
[ステップS72]制御部160は、ステップS71で割り当て直したリソースブロックのSNRに応じて、変調符号化方式を再決定する。そして、処理をステップS63に進める。
【0157】
[ステップS73]制御部160は、ステップS62でRDリンク用に割り当てたリソースブロックを示す制御情報を生成する。また、ステップS66またはステップS67で選択したリレー方式を示す制御情報を生成する。生成された制御情報は、変調部140を介して、リレー局200に送信される。
【0158】
このようにして、基地局100は、SRリンクの伝送レートがRDリンクの伝送レートより小さいと判断すると、RDリンクの無線リソースの割り当て量を再調整する。これにより、SRリンクの通信品質が低いために、RDリンクの無線リソースを有効活用できないことを防止できる。
【0159】
図20は、第4の実施の形態のメッセージの流れを示すシーケンス図である。以下、図20に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
[ステップS81]移動局300は、基地局100からの受信信号およびリレー局200aからの受信信号に基づいて、各リソースブロックのSNRを測定する。
【0160】
[ステップS82]移動局300は、ステップS81で測定したSNRに応じたCQIを、フィードバック情報として基地局100に送信する。
[ステップS83]リレー局200aは、基地局100からの受信信号に基づいて、各リソースブロックのSNRを測定する。
【0161】
[ステップS84]リレー局200aは、ステップS83で測定したSNRに応じたCQIを、フィードバック情報として基地局100に送信する。なお、ステップS81,S82の移動局300の処理と、ステップS82,S83のリレー局200aの処理とは、順不同に実行してもよい。
【0162】
[ステップS85]基地局100は、ステップ82で受信したフィードバック情報に基づいて、移動局300にリソースブロックを割り当てる。そして、割り当てたリソースブロックのCQIに基づいて、適切なリレー方式を選択すると共に、適切な変調符号化方式を決定する。また、ステップ84で受信したフィードバック情報に基づいて、RDリンクのリソースブロックの割り当て量を調整する。
【0163】
[ステップS86]基地局100は、ステップS85で割り当てたRDリンクのリソースブロックおよび選択したリレー方式を、リレー局200aに通知する。
[ステップS87]基地局100は、ステップS85で決定した変調符号化方式に従って、データブロックに対し誤り訂正符号化、レートマッチングおよび変調を行い、送信信号を生成する。
【0164】
[ステップS88]基地局100は、ステップS87で生成した送信信号を、SDリンクのリソースブロックを用いて無線出力する。
[ステップS89]リレー局200aは、ステップS88で基地局100が出力した信号を受信し、復調、デレートマッチングおよび復号を行ってデータブロックを再現する。そして、リレー局200aは、データブロックに対して再度、誤り訂正符号化、レートマッチングおよび変調を行って、送信信号を生成する。その際、リレー局200aは、ステップS84で通知されたリレー方式に従ってパンクチャリングを行う。
【0165】
[ステップS90]リレー局200aは、ステップS89で生成した送信信号を、ステップS84で通知されたRDリンクのリソースブロックを用いて無線出力する。
[ステップS91]移動局300は、ステップS88で基地局100から受信した信号およびステップS90でリレー局200aから受信した信号をそれぞれ復調する。そして、移動局300は、各リンクの復調後のビット列を合成して復号する。
【0166】
このようにして、移動局300は、SDリンクおよびRDリンクのCQIを基地局100に報告する。リレー局200aは、SRリンクのCQIを基地局100に報告する。基地局100は、移動局300から報告されたCQIに基づいて、リソースブロックを割り当て、リレー方式を選択し、変調符号化方式を決定する。更に、リレー局200aから報告されたCQIも参照して、割り当てリソース量を調整する。リレー局200aは、基地局100で選択されたリレー方式に従ってデータを中継する。移動局300は、基地局100およびリレー局200aから受信したデータを合成する。
【0167】
第4の実施の形態に係る無線通信システムによれば、基地局100は、SRリンクの通信品質が低くRDリンクの通信品質が高い場合に、RDリンクの割り当てリソース量を削減することができる。削減分の無線リソースは、他の移動局に割り当てることもできる。これにより、SRリンクがボトルネックとなってRDリンクの無線リソースを活用できない事態を回避でき、無線リソースの有効活用が図られる。
【0168】
なお、第4の実施の形態では、基地局100がRDリンクのリソースブロックの割り当てを管理したが、リレー局200aが割り当てを管理してもよい。また、リレー方式は、第2の実施の形態で述べたように、3つの方式(単純リピート方式、複合方式およびパリティ選択方式)から選択してもよい。また、OFDM以外の通信方式を用いた無線通信システムに応用することもできる。
【0169】
[第5の実施の形態]
次に、第5の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。前述の第3の実施の形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については説明を省略する。第5の実施の形態の無線通信システムでは、SDリンクおよびRDリンクの通信品質に応じて、協同ダイバーシティを停止させることができる。
【0170】
第5の実施の形態に係る無線通信システムは、図2に示した第1の実施の形態のものと同様のシステム構成によって実現できる。また、第5の実施の形態に係る基地局、リレー局および移動局は、図3〜5に示した第1の実施の形態のものと同様のブロック構成によって実現できる。ただし、基地局におけるリレー制御の具体的内容が異なる。以下、図2〜5で用いたものと同様の符号を用いて、第5の実施の形態を説明する。
【0171】
図21は、第5の実施の形態のフォーマット決定処理を示すフローチャートである。この処理は、基地局100において繰り返し実行される。以下、図21に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
【0172】
[ステップS101]制御部160は、移動局300で測定された各リソースブロックのSNRを示すフィードバック情報を取得する。複数の移動局が存在する場合、他の移動局からもフィードバック情報を取得する。
【0173】
[ステップS102]制御部160は、ステップS101で取得した各リソースブロックのSNRに基づいて、移動局300に対し、SDリンクのリソースブロックとRDリンクのリソースブロックとを割り当てる。複数の移動局が存在する場合、他の移動局に対してもリソースブロックを割り当てる。
【0174】
[ステップS103]制御部160は、以下のステップS104〜S112の処理を、基地局100に接続する全ての移動局について実行したか判断する。全ての移動局について実行した場合、処理をステップS113に進める。未実行の移動局がある場合、処理をステップS104に進める。なお、以下のステップS104〜S112の説明では、移動局300についての処理を考える。
【0175】
[ステップS104]制御部160は、SDリンクのリソースブロックのSNRが所定の閾値Th3より大きいか判断する。SDリンクで使用可能なリソースブロックが複数ある場合、例えば、SNRの平均値、最小値、最大値などで判断する。閾値Th3より大きい場合、処理をステップS105に進める。閾値Th3以下の場合、SDリンクを用いた協同ダイバーシティを停止すると判断し、処理をステップS112に進める。
【0176】
[ステップS105]制御部160は、移動局300に割り当てたSDリンクのリソースブロックとRDリンクのリソースブロックとのSNR差を計算する。
[ステップS106]制御部160は、ステップS105で計算したSNR差が所定の閾値Th4(Th4<0)未満であるか判断する。すなわち、RDリンクに比べてSDリンクのSNRが十分に大きいか判断する。閾値Th4未満の場合、処理をステップS107に進める。閾値Th4以上の場合、処理をステップS108に進める。
【0177】
[ステップS107]制御部160は、RDリンクを用いた協同ダイバーシティを停止すると判断し、移動局300に対するRDリンクのリソースブロックの割り当てを解放する。そして、処理をステップS112に進める。
【0178】
[ステップS108]制御部160は、ステップS105で計算したSNR差が所定の閾値Th1未満(かつ、閾値Th4以上)か判断する。閾値Th1未満の場合、処理をステップS109に進める。閾値Th1以上の場合、処理をステップS110に進める。
【0179】
[ステップS109]制御部160は、移動局300宛てのデータに適用するリレー方式としてパリティ選択方式を選択する。その後、処理をステップS111に進める。
[ステップS110]制御部160は、移動局300宛てのデータに適用するリレー方式として単純リピート方式を選択する。その後、処理をステップS111に進める。
【0180】
[ステップS111]制御部160は、ステップS109またはステップS110で選択したリレー方式に対応する計算式を用いて、SDリンクのリソースブロックおよびRDリンクのリソースブロックのSNRから、有効SNRを計算する。
【0181】
[ステップS112]制御部160は、協同ダイバーシティを行う場合、ステップS111で計算した有効SNRに応じて、変調符号化方式を決定する。協同ダイバーシティを行わない場合、SDリンクまたはRDリンクのSNRに応じて、変調符号化方式を決定する。そして、処理をステップS103に進める。
【0182】
[ステップS113]制御部160は、ステップS102でRDリンク用に割り当てたリソースブロックを示す制御情報を生成する。ただし、ステップS107でリソースブロックの割り当てを解放した場合は、その旨の制御情報を生成する。また、ステップS109またはステップS110で選択したリレー方式を示す制御情報を生成する。生成された制御情報は、変調部140を介して、リレー局200に送信される。
【0183】
このようにして、基地局100は、RDリンクの通信品質が低くSDリンクの通信品質が高い場合は、RDリンクを用いたデータ中継を行わないよう制御する。また、SDリンクの通信品質が低い場合は、移動局300がSDリンクのビット列を使用せずRDリンクのビット列のみ使用するよう制御する。
【0184】
図22は、第5の実施の形態のリレー停止時のデータ送信を示す図である。この例では、誤り訂正符号化後のデータブロックに含まれる組織ビットとパリティビットとの比が1:2であり、1回のデータ送信でデータブロック長の半分のビット列を送信可能である場合を考える。
【0185】
基地局100は、データブロックから全ての組織ビットと一部のパリティビットとを切り出し、SDリンクの無線リソースを用いて送信する。基地局100が送信したビット列は、リレー局200にも到達するが、リレー局200は復号や再符号化、RDリンクを用いた送信は行わない。移動局300は、基地局100から受信したビット列を復号する。その際、SDリンクの通信品質は良好であり、ブロック誤り率は高くならないと期待できる。なお、リレー局200からの受信信号を復号に使用しないことは、例えば、制御情報により基地局100から移動局300に通知することが考えられる。
【0186】
図23は、第5の実施の形態の直接パス停止時のデータ送信を示す図である。この例では、図22と同様、誤り訂正符号化後のデータブロックに含まれる組織ビットとパリティビットとの比が1:2であり、1回のデータ送信でデータブロック長の半分のビット列を送信可能である場合を考える。
【0187】
基地局100は、データブロックから全ての組織ビットと一部のパリティビットとを切り出し、SDリンクの無線リソースを用いて送信する。リレー局200は、基地局100が送信したビット列を受信し、復号および再符号化を行いRDリンクの無線リソースを用いて送信する。移動局300は、リレー局200から受信したビット列を復号する。その際、RDリンクの通信品質は良好であり、ブロック誤り率は高くならないと期待できる。
【0188】
なお、リレー局200は、パンクチャリングで切り出す部分を変更しなくてもよいし、変更してもよい。前者の場合、復号および再符号化を行わずに、受信信号を中継してもよい。後者の場合、切り出すビット列に組織ビットが含まれていることが好ましい。また、基地局100からの受信信号を復号に使用しないことは、例えば、制御情報により基地局100またはリレー局200から移動局300に通知することが考えられる。
【0189】
また、基地局100と移動局300との間に3つ以上のパスが存在する場合において、1つのパスを使用しないと判断したとき、残りのパスを用いてダイバーシティを継続してもよい。直接パスを使用しない場合、中継パスの中から基準パスを選択し、基準パスのSNRを基準にしてSNR差を計算することが考えられる。基準パスは、例えば、SNRが最も小さいものを選択する。
【0190】
第5の実施の形態に係る無線通信システムによれば、基地局100は、SDリンクおよびRDリンクの通信品質に応じて、協同ダイバーシティを停止することができる。これにより、無線リソースの有効活用が図られる。また、移動局300の受信処理の負荷を軽減することもできる。
【0191】
なお、第5の実施の形態では、基地局100が協同ダイバーシティを行うか否かを制御したが、リレー局200など他の通信装置が制御するようにしてもよい。また、リレー方式は、第2の実施の形態で述べたように、3つの方式(単純リピート方式、複合方式およびパリティ選択方式)から選択してもよい。また、OFDM以外の通信方式を用いた無線通信システムに応用することもできる。
【0192】
[第6の実施の形態]
次に、第6の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。前述の第1の実施の形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については説明を省略する。第6の実施の形態の無線通信システムでは、SNR差を基地局で計算せずに移動局で計算する。
【0193】
第6の実施の形態に係る無線通信システムは、図2に示した第1の実施の形態のものと同様のシステム構成によって実現できる。また、第6の実施の形態に係る基地局およびリレー局は、図3,4に示した第1の実施の形態のものと同様のブロック構成によって実現できる。以下、基地局およびリレー局については、図3,4と同様の符号を用いて、第6の実施の形態を説明する。
【0194】
図24は、第6の実施の形態の移動局を示すブロック図である。第6の実施の形態に係る移動局300bは、復調部310、デレートマッチング部320、誤り訂正復号部330、誤り検出部340、品質測定部350,355、変調部360および制御部370を有する。復調部310、デレートマッチング部320、誤り訂正復号部330、誤り検出部340、品質測定部350,355および変調部360の機能は、第1の実施の形態で述べた通りである。
【0195】
制御部370は、品質測定部350からSDリンクの通信品質の測定結果を取得すると共に、品質測定部355からRDリンクの通信品質の測定結果を取得する。測定結果としては、SNRやSINRなどの指標値を取得してもよいし、指標値に対応するCQIを取得してもよい。そして、制御部370は、2つの測定結果から、SDリンクとRDリンクとの通信品質の差を計算する。例えば、SDリンクのSNRをγ0、RDリンクのSNRをγ1として、SNR差=γ1−γ0を計算する。
【0196】
そして、制御部370は、通信品質の差を示す情報とSDリンクの通信品質を示す情報とを含むフィードバック情報を、変調部360に出力する。フィードバック情報は、変調部360を介して基地局100に無線送信される。なお、通信品質の差を示す情報とSDリンクの通信品質を示す情報とは、纏めて送信してもよいし、異なるタイミングで別個に送信してもよい。また、基地局100で適応変調符号化を行わない場合は、SDリンクの通信品質を示す情報を送信しなくてもよい。
【0197】
図25は、第6の実施の形態のメッセージの流れを示すシーケンス図である。以下、図25に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
[ステップS121]移動局300bは、基地局100からの受信信号に基づいて、SDリンクのSNRを測定する。また、リレー局200からの受信信号に基づいて、RDリンクのSNRを測定する。
【0198】
[ステップS122]移動局300bは、ステップS121の測定結果から、SDリンクとRDリンクとのSNR差を計算する。
[ステップS123]移動局300bは、ステップS122で計算したSNR差を示す情報(例えば、差分を示すCQI)と、ステップS121で測定したSDリンクに応じたCQIとを、フィードバック情報として基地局100に送信する。
【0199】
[ステップS124]基地局100は、受信したフィードバック情報が示すSNR差に基づいて、適切なリレー方式(単純リピート方式またはパリティ選択方式)を選択する。また、SDリンクの通信品質とSNR差に基づいて、適切な変調符号化方式を決定する。
【0200】
[ステップS125]基地局100は、ステップS125で選択したリレー方式をリレー局200に通知する。
[ステップS126]基地局100は、ステップS124で決定した変調符号化方式に従って、データブロックに対し誤り訂正符号化、レートマッチングおよび変調を行い、送信信号を生成する。
【0201】
[ステップS127]基地局100は、ステップS126で生成した送信信号を、SDリンクの無線リソースを用いて無線出力する。
[ステップS128]リレー局200は、ステップS127で基地局100が出力した信号を受信し、ステップS128で通知されたリレー方式に従って中継する。
【0202】
[ステップS129]リレー局200は、ステップS128で生成した送信信号を、RDリンクの無線リソースを用いて無線出力する。
[ステップS130]移動局300bは、ステップS127で基地局100から受信した信号およびステップS129でリレー局200から受信した信号をそれぞれ復調する。そして、移動局300bは、各リンクの復調後のビット列を合成して復号する。
【0203】
このようにして、移動局300bは、SDリンクとRDリンクのSNR差を計算して、基地局100に報告する。基地局100は、移動局300bから報告されたSNR差に基づいてリレー方式を選択し、リレー局200に通知する。リレー局200は、基地局100から通知されたリレー方式に従って、基地局100が送信したデータを中継する。
【0204】
第6の実施の形態に係る無線通信システムによれば、基地局100は、移動局300bから報告されるSNR差に応じて、リレー方式を選択することができる。このため、基地局100の制御の負荷を軽減することができる。なお、リレー方式は、第2の実施の形態で述べたように、3つの方式(単純リピート方式、複合方式およびパリティ選択方式)から選択してもよい。
【0205】
[第7の実施の形態]
次に、第7の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。前述の第1の実施の形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については説明を省略する。第7の実施の形態の無線通信システムでは、HARQ(Hybrid Automatic Repeat reQuest)合成が行われる。すなわち、受信データの復号に失敗したとき、移動局は復号失敗データを破棄せずに保持しておき、その後に受信する再送データと合成して復号する。これにより、再送回数を低減することができる。
【0206】
ここで、再送データのパンクチャリング方法を復号失敗データのパンクチャリング方法と同一にするか否かを、前述のリレー方式と同様の手法で決定することを考える。この観点によれば、前述のSDリンクの無線リソースおよびRDリンクの無線リソースは、互いにタイミングの異なる複数の無線リソースに対応する。第7の実施の形態に係る無線通信システムは、基地局と移動局とで実現できる。ただし、基地局と移動局との間に、リレー局が介在してもよいし、複数のパスが形成されていてもよい。
【0207】
図26は、第7の実施の形態の基地局を示すブロック図である。第7の実施の形態に係る基地局100cは、誤り検出符号化部110、誤り訂正符号化部120、レートマッチング部130、変調部140、復調部150および制御部170を有する。ここで、誤り検出符号化部110、誤り訂正符号化部120、レートマッチング部130、変調部140および復調部150の機能は、第1の実施の形態に係る基地局100と同様である。なお、レートマッチング部130は、再送要求に備え、ACK(ACKnowledgement)を受信するまで、誤り訂正符号化後のデータブロックを一時的に保持しておく。
【0208】
制御部170は、誤り訂正符号化部120、レートマッチング部130および変調部140を制御する。制御部170は、フォーマット制御部171および再送制御部172を有する。
【0209】
フォーマット制御部171は、復調部150から取得した通信品質を示すフィードバック情報に基づいて、変調符号化方式を決定する。また、フォーマット制御部171は、フィードバック情報に基づいて、再送パターンを決定する。すなわち、再送時のパンクチャリング方法を、前回送信時のパンクチャリング方法と同一にするかを決定する。
【0210】
再送制御部172は、HARQの再送制御を行う。具体的には、復調部150から移動局300cが送信したACKを取得すると、次のデータブロックを送信するようレートマッチング部130に指示する。一方、移動局300cが送信したNACK(Negative ACKnowledgement)を取得すると、前回送信したデータブロックを再送するようレートマッチング部130に指示する。その際、再送制御部172は、フォーマット制御部171で決定したパンクチャリング方法を指定する。
【0211】
図27は、第7の実施の形態の移動局を示すブロック図である。第7の実施の形態に係る移動局300cは、復調部310、デレートマッチング部320、HARQ合成部325、誤り訂正復号部330、誤り検出部340、変調部360、品質測定部380、品質推定部385および再送制御部390を有する。ここで、復調部310、デレートマッチング部320、誤り訂正復号部330、誤り検出部340および変調部360の機能は、第1の実施の形態に係る移動局300と同様である。
【0212】
HARQ合成部325は、デレートマッチング部320からデータブロックのビット列を取得する。そのデータブロックについての初回受信時である場合、HARQ合成部325は、取得したビット列を所定のメモリに一時的に記憶すると共に、誤り訂正復号部330に出力する。一方、そのデータブロックについての2回目以降の受信時(再送時)である場合、保持しているビット列とデレートマッチング部320から取得したビット列とを合成し、メモリに一時的に記憶しているビット列を更新すると共に、誤り訂正復号部330に出力する。
【0213】
HARQ合成の方法は、基地局100cが行うパンクチャリング方法によって異なる。例えば、前回送信時と再送時とで、データブロックの同一部分が切り出された場合、2つのビット列を重ね合わせる(単純リピート方式)。一方、データブロックの異なる部分が切り出された場合、2つのビット列を結合する(パリティ選択方式)。なお、第1の実施の形態で述べたように、異なる部分が切り出される場合には、一部ビットが重複する場合を含んでもよい。
【0214】
品質測定部380は、復調部310から取得した既知信号に基づいて、下り方向(基地局100cから移動局300cへの通信方向)の通信品質を測定する。そして、品質測定部380は、測定結果を品質推定部385に出力する。なお、測定結果は、SNRやSINRなどの指標値で表してもよいし、CQIで表してもよい。
【0215】
品質推定部385は、再送信が行われるとした場合に再送データを受信すると考えられるタイミング(例えば、所定時間後)の通信品質を、品質測定部380から取得した通信品質の測定結果に基づいて推定する。例えば、品質推定部385は、所定時間前までの通信品質の履歴を保持しておき、通信品質の変化傾向から、未来の通信品質を推定する。そして、品質推定部385は、現在の通信品質の測定結果と未来の通信品質の推定結果とを示すフィードバック情報を、変調部360に出力する。
【0216】
なお、現在の通信品質の測定結果と未来の通信品質の推定結果とは、同一タイミングで纏めて送信してもよいし、異なるタイミングで別個に送信してもよい。また、未来の通信品質の推定結果は、再送要求を行う場合のみ、基地局100cに報告してもよい。また、現在の通信品質の測定結果は、再送状況に拘わらず、継続的に送信してもよい。
【0217】
再送制御部390は、誤り検出部340から、データブロックに対する誤り検出結果を取得する。データブロックに誤りが検出された場合、再送を要求するため、NACKを示す信号を変調部360に出力する。誤りが検出されなかった場合、ACKを示す信号を変調部360に出力する。これにより、データブロックに対するACKまたはNACKが、基地局100cに報告される。
【0218】
図28は、第7の実施の形態のフォーマット決定処理を示すフローチャートである。この処理は、基地局100cにおいて繰り返し実行される。以下、図28に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
【0219】
[ステップS131]制御部170は、移動局300cで測定されたSNRと推定された未来のSNR(例えば、再送予定時のSNR)とを示すフィードバック情報を取得する。測定されたSNRの情報と推定されたSNRの情報とは、同一タイミングで纏めて取得する場合もあるし、異なるタイミングで別個に取得する場合もある。
【0220】
[ステップS132]制御部170は、再送(第2の送信)とその前の送信(第1の送信)との間のSNR差を計算する。すなわち、第1の送信の際のSNRをγ0、第2の送信の際のSNRをγ1として、SNR差=γ1−γ0を計算する。
【0221】
[ステップS133]制御部170は、ステップS132で計算したSNR差が所定の閾値Th1未満か判断する。閾値Th1未満の場合、処理をステップS134に進める。閾値Th1以上の場合、処理をステップS135に進める。
【0222】
[ステップS134]制御部170は、再送パターンとしてパリティ選択方式を選択する。その理由は、第1の実施の形態におけるリレー方式の選択の場合と同様である。その後、処理をステップS136に進める。
【0223】
[ステップS135]制御部170は、再送パターンとして単純リピート方式を選択する。その理由は、第1の実施の形態におけるリレー方式の選択の場合と同様である。その後、処理をステップS136に進める。
【0224】
[ステップS136]制御部170は、ステップS134またはステップS135で選択した再送パターンに対応する計算式を用いて、有効SNRを計算する。有効SNRの計算式としては、例えば、前述の式(2)および式(3)を用いることができる。
【0225】
[ステップS137]制御部170は、ステップS136で計算した有効SNRに応じて、変調符号化方式を決定する。制御部170は、決定した変調符号化方式に従って、誤り訂正符号化部120、レートマッチング部130および変調部140を制御する。
【0226】
このようにして、基地局100cは、移動局300cから第1の送信および第2の送信(再送信)に対応するSNRの情報を取得する。そして、SNR差に応じて、単純リピート方式またはパリティ選択方式を選択する。基地局100cは、単純リピート方式を選択した場合、第2の送信で第1の送信と同じ部分をデータブロックから抽出し、パリティ選択方式を選択した場合、第1の送信と異なる部分をデータブロックから抽出する。なお、再送パターンの選択は、再送時毎に行ってもよいし、間欠的(定期または不定期)に行ってもよい。
【0227】
図29は、第7の実施の形態のメッセージの流れを示すシーケンス図である。この例では、基地局100cから移動局300cへの1回目のデータ送信でビット誤りが生じ、その後、同じデータブロックについて2回目のデータ送信(再送信)を行う場合を考える。以下、図29に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
【0228】
[ステップS141]移動局300cは、基地局100cからの受信信号に基づいて、現在のSNRを測定する。
[ステップS142]移動局300cは、ステップS141で測定したSNRに応じたCQIを、フィードバック情報として基地局100cに送信する。
【0229】
[ステップS143]基地局100cは、データブロックに対し誤り訂正符号化、レートマッチングおよび変調を行い、送信信号を生成する。適応変調符号化を行う場合、基地局100cは、ステップS142で受信したフィードバック情報に基づいて、適切な変調符号化方式を決定することもできる。
【0230】
[ステップS144]基地局100cは、ステップS143で生成した送信信号を、下りリンクの無線リソースを用いて無線出力する。
[ステップS145]移動局300cは、ステップS144で基地局100cが出力した信号を受信し、復調、デレートマッチングおよび復号を行う。そして、得られたデータブロックに対し誤り検出を行う。
【0231】
[ステップS146]移動局300cは、ステップS145でデータブロックの誤りが検出されると、基地局100cに対し再送要求を行う。
[ステップS147]移動局300cは、基地局100cからの受信信号に基づいて、現在のSNRを測定する。そして、現在のSNRから再送データの受信時のSNRを推定する。
【0232】
[ステップS148]移動局300cは、ステップS147で推定したSNRに応じたCQIを、フィードバック情報として基地局100cに送信する。
[ステップS149]基地局100cは、ステップS142で報告されたSNR(初回送信時のSNR)とステップS148で報告されたSNR(再送時のSNR)との差に基づいて、適切な再送パターン(単純リピート方式またはパリティ選択方式)を選択する。
【0233】
[ステップS150]基地局100cは、再送するデータブロックに対しレートマッチングおよび変調を行い、送信信号を生成する。その際、基地局100cは、ステップS149で選択した再送パターンに従って、パンクチャリングを行う。
【0234】
[ステップS151]基地局100cは、ステップS150で生成した送信信号を、下りリンクの無線リソース(ステップS144で用いたものより遅いタイイングの無線リソース)を用いて無線出力する。
【0235】
[ステップS152]移動局300cは、ステップS151で基地局100cが出力した信号を受信し復調する。そして、復調後のビット列とステップS145で得た誤りを含むビット列とをHARQ合成して復号する。HARQ合成では、再送パターンに応じて、ビット列の重ね合わせや結合を行う。
【0236】
このようにして、移動局300cは、データブロックの誤りを検出すると、再送時のSNRを推定して、CQIを基地局100cに報告する。基地局100cは、移動局300cによって推定されたCQIと前回報告されたCQIとに基づいて再送パターンを選択する。そして、その再送パターンに従って、データブロックのパンクチャリングを行う。移動局300cは、前回のビット列と再送されたビット列とをHARQ合成して復号する。
【0237】
図30は、第7の実施の形態の単純リピート方式のデータ送信を示す図である。この例では、基地局100cが再送パターンとして単純リピート方式を選択した場合を考える。また、誤り訂正符号化後のデータブロックに含まれる組織ビットとパリティビットとの比が1:2であり、1回のデータ送信でデータブロック長の半分のビット列を送信可能である場合を考える。
【0238】
基地局100cは、初回のパンクチャリングにおいて、データブロックから全ての組織ビットと一部のパリティビットとを切り出し、初回送信時の無線リソースを用いて切り出したビット列を送信する。その後、移動局300cから再送要求がなされると、基地局100cは、2回目のパンクチャリングにおいて、初回と同一部分のビット列(全ての組織ビットおよび一部のパリティビット)を切り出す。そして、再送時の無線リソースを用いて切り出したビット列を送信する。
【0239】
移動局300cは、基地局100cから再送信号を受信すると、初回受信時のビット列と2回目受信時のビット列とを重ね合わせて(例えば、受信レベルを加算して)、HARQ合成後のビット列を復号する。これにより、移動局300cでは、HARQ合成による利得としてダイバーシティに基づく利得を得ることができ、再送回数を低減することができる。なお、移動局300cが受信するビット列には、全ての組織ビットが含まれていることが好ましい。
【0240】
図31は、第7の実施の形態のパリティ選択方式のデータ送信を示す図である。この例では、基地局100cが再送パターンとしてパリティ選択方式を選択した場合を考える。また、図30と同様、誤り訂正符号化後のデータブロックに含まれる組織ビットとパリティビットとの比が1:2であり、1回のデータ送信でデータブロック長の半分のビット列を送信可能である場合を考える。
【0241】
基地局100cは、初回のパンクチャリングにおいて、データブロックから全ての組織ビットと一部のパリティビットとを切り出し、初回送信時の無線リソースを用いて切り出したビット列を送信する。その後、移動局300cから再送要求がなされると、基地局100cは、2回目のパンクチャリングにおいて、初回に選択されなかった部分のビット列(残りのパリティビット)を切り出す。そして、再送時の無線リソースを用いて切り出したビット列を送信する。
【0242】
移動局300cは、基地局100cから再送信号を受信すると、初回受信時のビット列と2回目受信時のビット列とを結合して(例えば、初回受信時のビット列の後ろに2回目受信時のビット列を並べて1つのビット列とし)、HARQ合成後のビット列を復号する。これにより、移動局300cでは、HARQ合成による利得として高い符号化利得を得ることができ、再送回数を低減することができる。なお、移動局300cが受信するビット列には、全ての組織ビットが含まれていることが好ましい。
【0243】
図32は、第7の実施の形態の他のメッセージの流れを示すシーケンス図である。この例では、再送パターンを選択するタイミングが、図29の場合と異なる。以下、図32に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
【0244】
[ステップS161]移動局300cは、基地局100cからの受信信号に基づいて、現在のSNRを測定する。また、移動局300cは、再送データを受信する可能性のあるタイミングにおけるSNRを現在のSNRから推定する。
【0245】
[ステップS162]移動局300cは、ステップS161で測定したSNRに応じたCQIと推定したSNRに応じたCQIとを、フィードバック情報として基地局100cに送信する。2つのCQIは、同時に纏めて送信してもよいし、別個に送信してもよい。
【0246】
[ステップS163]基地局100cは、ステップS162で報告された現在のSNR再送時のSNRとの差に基づいて、適切な再送パターン(単純リピート方式またはパリティ選択方式)を選択する。
【0247】
[ステップS164]基地局100cは、データブロックに対し誤り訂正符号化、レートマッチングおよび変調を行い、送信信号を生成する。
[ステップS165]基地局100cは、ステップS164で生成した送信信号を、下りリンクの無線リソースを用いて無線出力する。
【0248】
[ステップS166]移動局300cは、ステップS165で基地局100cが出力した信号を受信し、復調、デレートマッチングおよび復号を行う。そして、得られたデータブロックに対し誤り検出を行う。
【0249】
[ステップS167]移動局300cは、ステップS166でデータブロックの誤りが検出されると、基地局100cに対し再送要求を行う。
[ステップS168]基地局100cは、再送するデータブロックに対しレートマッチングおよび変調を行い、送信信号を生成する。その際、基地局100cは、ステップS163で選択した再送パターンに従って、パンクチャリングを行う。
【0250】
[ステップS169]基地局100cは、ステップS168で生成した送信信号を、下りリンクの無線リソース(ステップS165で用いたものより遅いタイミングの無線リソース)を用いて無線出力する。
【0251】
[ステップS170]移動局300cは、ステップS169で基地局100cが出力した信号を受信し復調する。そして、復調後のビット列とステップS166で得た誤りを含むビット列とをHARQ合成して復号する。
【0252】
このようにして、移動局300cは、再送要求前に予め未来のSNRを推定しておき、基地局100cは、初回送信前に再送パターンを選択する。これにより、再送およびHRQ合成を考慮して、初回送信時のパンクチャリングで切り出す部分を最適化することが可能となる。
【0253】
第7の実施の形態に係る無線通信システムによれば、移動局300cは、前回の復号誤りデータと再送データとをHARQ合成して復号することができる。その場合、前回送信時の通信品質と再送時の通信品質との差に応じて、適切な再送パターン(例えば、単純リピート方式またはパリティ選択方式)が選択される。その結果、HARQ合成を行うことで得られる利得が向上し、再送回数が低減し、より高いスループットを達成できる。
【0254】
なお、第7の実施の形態では、移動局300cが再送時の通信品質を推定したが、基地局100cが推定を行ってもよい。また、基地局100cと移動局300cとの間に複数のパスを形成する場合、再送信を前回の送信と異なるパスを用いて行ってもよい。また、第7の実施の形態では、下りデータ通信について説明したが、上記HARQ制御は、移動局300cから基地局100cへの上りデータ通信にも応用できる。また、再送パターンは、第2の実施の形態で述べたように、3つの方式(単純リピート方式、複合方式およびパリティ選択方式)から選択してもよい。また、第3の実施の形態で述べたように、リソースブロック単位でリソース割り当てを行う無線通信システムに応用することもできる。
【0255】
上記第1〜第7の実施の形態を含む実施の形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1) 符号化により得られたデータブロックの一部である第1のデータおよび第2のデータを受信し前記第1のデータおよび前記第2のデータを合成して復号する受信装置と通信を行う通信装置であって、
前記第1のデータの送信に用いる第1のリソースと前記第2のデータの送信に用いる第2のリソースとの間の通信品質の差を求め、前記通信品質の差に応じて、前記第2のデータが前記第1のデータと重複した部分を含む割合を制御する制御部、
を有することを特徴とする通信装置。
【0256】
(付記2) 前記割合は、100%、0%およびX%(0<X<100)を含むことを特徴とする付記1記載の通信装置。
(付記3) 前記制御部は、前記通信品質の差が所定の閾値より小さい場合は前記割合を0%とし、前記通信品質の差が前記所定の閾値以上の場合は前記割合を100%とすることを特徴とする付記1記載の通信装置。
【0257】
(付記4) 前記制御部は、前記通信品質の差が所定の第1の閾値より小さい場合は前記割合を0%とし、前記通信品質の差が前記所定の第1の閾値以上で所定の第2の閾値より小さい場合は前記割合をX%(0<X<100)とし、前記通信品質の差が前記所定の第2の閾値以上の場合は前記割合を100%とすることを特徴とする付記1記載の通信装置。
【0258】
(付記5) 前記第1のデータを前記第1のリソースを用いて送信すると共に、前記第2のデータを前記第2のリソースを用いて送信する他の通信装置に対して前記割合を通知する送信部を更に有することを特徴とする付記1記載の通信装置。
【0259】
(付記6) 前記第1のデータを前記第1のリソースを用いて送信し、前記受信装置から再送要求を受けた場合に、前記割合に基づいて前記第2のデータを前記第1のリソースより遅いタイミングである前記第2のリソースを用いて送信する送信部を更に有することを特徴とする付記1記載の通信装置。
【0260】
(付記7) 前記制御部は、前記送信部が前記第1のデータを送信した後であって前記第2のデータを送信する前に前記割合を決定することを特徴とする付記6記載の通信装置。
【0261】
(付記8) 前記制御部は、前記送信部が前記第1のデータを送信する前に前記割合を決定することを特徴とする付記6記載の通信装置。
(付記9) 前記制御部は、前記割合に応じた推定方法を用いて、前記第1のデータおよび前記第2のデータの送信を含む前記データブロックについての送信全体の通信品質を推定し、前記第1のデータおよび前記第2のデータの送信に用いる符号化変調方式を決定することを特徴とする付記1記載の通信装置。
【0262】
(付記10) 前記第1のリソースおよび前記第2のリソースそれぞれの通信品質の情報を前記受信装置から取得する受信部を更に有し、
前記制御部は、前記受信部が取得した前記通信品質の情報に基づいて前記通信品質の差を求めることを特徴とする付記1記載の通信装置。
【0263】
(付記11) 前記第1のリソースおよび前記第2のリソースの少なくとも一方として使用可能なリソースブロックそれぞれの通信品質の情報を前記受信装置から取得する受信部を更に有し、
前記制御部は、前記受信装置に対する前記リソースブロックの割り当て状況と前記受信部が取得した前記通信品質の情報とに基づいて前記通信品質の差を求めることを特徴とする付記1記載の通信装置。
【0264】
(付記12) 前記受信装置で測定された前記通信品質の差の情報を前記受信装置から取得する受信部を更に有し、
前記制御部は、前記受信部が取得した前記通信品質の差の情報に基づいて前記割合を制御する、
ことを特徴とする付記1記載の通信装置。
【0265】
(付記13) 前記データブロックは、組織ビットおよびパリティビットを含み、
前記制御部は、前記第1のデータには少なくとも前記組織ビットが含まれ、前記第2のデータには少なくとも前記パリティビットが含まれるよう制御することを特徴とする付記1記載の通信装置。
【0266】
(付記14) 符号化により得られたデータブロックの一部である第1のデータおよび第2のデータを受信し前記第1のデータおよび前記第2のデータを合成して復号する受信装置と通信を行う通信システムであって、
前記第1のデータの送信に用いる第1のリソースと前記第2のデータの送信に用いる第2のリソースとの間の通信品質の差を求め、前記通信品質の差に応じて、前記第2のデータが前記第1のデータと重複した部分を含む割合を制御する制御部と、前記第1のデータを前記第1のリソースを用いて送信すると共に、前記割合を示す制御情報を送信する送信部とを備える送信装置と、
前記送信装置から前記第1のデータおよび前記制御情報を受信し、前記第1のデータから前記データブロックを復元し、前記データブロックのうち前記制御情報が示す前記割合に応じた部分を前記第2のデータとして前記第2のリソースを用いて送信する中継装置と、
を有することを特徴とする通信システム。
【0267】
(付記15) 前記制御部は、前記第1のリソースの通信品質が前記第2のリソースの通信品質よりも高い場合、前記中継装置による前記第2のデータの送信を停止させることを特徴とする付記14記載の通信システム。
【0268】
(付記16) 前記制御部は、前記第1のリソースの通信品質が所定の閾値より小さい場合、前記受信装置が前記第1のデータを用いて合成および復号を行うことを停止させることを特徴とする付記14記載の通信システム。
【0269】
(付記17) 前記制御部は、前記受信装置に対して前記第1のリソースおよび前記第2のリソースとしてリソースブロックを割り当て、前記リソースブロックの割り当て結果に基づいて前記送信装置と前記中継装置との間の第1の送信レートと前記中継装置と前記受信装置との間の第2の送信レートとを推定し、前記第1の送信レートが前記第2の送信レートより小さい場合、前記第2のリソースとしての前記リソースブロックの割り当て量を減らすことを特徴とする付記14記載の通信システム。
【0270】
(付記18) 符号化により得られたデータブロックの一部である第1のデータおよび第2のデータを受信し前記第1のデータおよび前記第2のデータを合成して復号する受信装置と通信を行う通信システムの通信方法であって、
前記第1のデータの送信に用いる第1のリソースと前記第2のデータの送信に用いる第2のリソースとの間の通信品質の差を求め、
前記通信品質の差に応じて、前記第2のデータが前記第1のデータと重複した部分を含む割合を制御し、
前記割合に従って、前記第1のデータを前記第1のリソースを用いて送信し、前記第2のデータを前記第2のリソースを用いて送信する、
ことを特徴とする通信方法。
【図面の簡単な説明】
【0271】
【図1】本実施の形態に係る通信装置を示す図である。
【図2】第1の実施の形態の無線通信システムの構成を示す図である。
【図3】第1の実施の形態の基地局を示すブロック図である。
【図4】第1の実施の形態のリレー局を示すブロック図である。
【図5】第1の実施の形態の移動局を示すブロック図である。
【図6】第1の実施の形態のフォーマット決定処理を示すフローチャートである。
【図7】第1の実施の形態のメッセージの流れを示すシーケンス図である。
【図8】第1の実施の形態の単純リピート方式のデータ送信を示す図である。
【図9】第1の実施の形態のパリティ選択方式のデータ送信を示す図である。
【図10】第1の実施の形態の他のフォーマット例を示す図である。
【図11】第2の実施の形態のフォーマット決定処理を示すフローチャートである。
【図12】第2の実施の形態の複合方式のデータ送信を示す図である。
【図13】リレー方式とブロック誤り率との関係を示す第1の図である。
【図14】リレー方式とブロック誤り率との関係を示す第2の図である。
【図15】第3の実施の形態のOFDMのフレーム構造例を示す図である。
【図16】第3の実施の形態のフォーマット決定処理を示すフローチャートである。
【図17】第3の実施の形態のメッセージの流れを示すシーケンス図である。
【図18】第4の実施の形態のリレー局を示すブロック図である。
【図19】第4の実施の形態のフォーマット決定処理を示すフローチャートである。
【図20】第4の実施の形態のメッセージの流れを示すシーケンス図である。
【図21】第5の実施の形態のフォーマット決定処理を示すフローチャートである。
【図22】第5の実施の形態のリレー停止時のデータ送信を示す図である。
【図23】第5の実施の形態の直接パス停止時のデータ送信を示す図である。
【図24】第6の実施の形態の移動局を示すブロック図である。
【図25】第6の実施の形態のメッセージの流れを示すシーケンス図である。
【図26】第7の実施の形態の基地局を示すブロック図である。
【図27】第7の実施の形態の移動局を示すブロック図である。
【図28】第7の実施の形態のフォーマット決定処理を示すフローチャートである。
【図29】第7の実施の形態のメッセージの流れを示すシーケンス図である。
【図30】第7の実施の形態の単純リピート方式のデータ送信を示す図である。
【図31】第7の実施の形態のパリティ選択方式のデータ送信を示す図である。
【図32】第7の実施の形態の他のメッセージの流れを示すシーケンス図である。
【符号の説明】
【0272】
1 通信装置
1a 制御部
1b 送信部
2 受信装置
【技術分野】
【0001】
本発明は通信装置、通信システムおよび通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、携帯電話システムや無線LAN(Local Area Network)などの無線通信システムが広く利用されている。無線通信では、送信装置は、誤り検出符号化や誤り訂正符号化などの符号化処理を施したデータを送信する。受信装置は、受信データに対し誤り訂正復号や誤り検出などの復号処理を行う。ここで、符号化により得られるデータブロックは、高い冗長性を有していることがあり、その一部からでも正常に復号することが可能な場合がある。そこで、送信装置には、符号化により得られたデータブロックから一部のビットを間引く処理(パンクチャリング)を行うものがある。
【0003】
また、無線通信システムには、同一内容のデータブロックに対してそれぞれパンクチャリングを行って複数のデータを生成し、生成したデータをそれぞれ異なるリソースを用いて送信するものがある。受信装置は、同一内容のデータブロックから派生した複数のデータを合成して復号することで、受信誤りを抑制することができる。
【0004】
例として、基地局が第1のチャネルを用いてデータを送信し、中継局が基地局からデータを受信して第2のチャネルを用いて転送する移動通信システムを考える(例えば、特許文献1参照)。中継局を備える移動通信システムでは、移動局は、基地局からデータを直接受信すると共に、中継局からもデータを受信できる場合がある。移動局は、基地局と中継局の両方からデータを受信すると、受信したデータを合成して復号することができる。
【0005】
このとき、中継局が、復号および再符号化して得られるデータブロックに対し、基地局と同じパターンでパンクチャリングを行う方法が考えられる。すなわち、データブロックのうち、基地局が送信する部分と中継局が送信する部分とを同一にする方法が考えられる(例えば、非特許文献1参照)。一方、中継局が、データブロックに対し基地局と異なるパターンでパンクチャリングを行う方法も考えられる。すなわち、データブロックのうち、基地局が送信する部分と中継局が送信する部分とを異なる部分にする方法も考えられる
(例えば、非特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2007−43690号公報
【非特許文献1】J. N. Laneman, D. N. C. Tse and G. W. Wornell, "Cooperative Diversity in Wireless Networks: Efficient Protocols and Outage Behavior", IEEE Transactions on Information Theory, Vol. 50, No. 12, pp. 3062-3080, Dec. 2004.
【非特許文献2】T. E. Hunter and A. Nosratinia, "Cooperation Diversity through coding", Proc. IEEE 2002 International Symposium on Information Theory (ISIT), p. 220, June 2002.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
受信装置は、同一内容の複数のデータを受信して合成する(例えば、受信レベルを加算する)ことで、ダイバーシティに基づく利得を得ることができる。また、受信装置は、データブロックの異なる部分をそれぞれ受信して合成する(例えば、結合する)ことで、受信データの冗長度が高くなり、より大きな符号化利得を得ることができる。
【0007】
しかし、何れの方法がより高い利得を得ることができるかは、データ送信に用いるリソースの通信品質に依存する。例えば、複数のデータをそれぞれ異なるリソースを用いて送信する場合、得られる符号化利得は、リソース間の通信品質の相対関係にも依存することがある。
【0008】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、受信装置が複数のデータを合成して復号する場合の利得を向上させることが可能な通信装置、通信システムおよび通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、符号化により得られたデータブロックの一部である第1のデータおよび第2のデータを受信し第1のデータおよび第2のデータを合成して復号する受信装置と通信を行う通信装置が提供される。この通信装置は、第1のデータの送信に用いる第1のリソースと第2のデータの送信に用いる第2のリソースとの間の通信品質の差を求め、通信品質の差に応じて、第2のデータが第1のデータと重複した部分を含む割合を制御する制御部を有する。
【0010】
また、上記課題を解決するために、符号化により得られたデータブロックの一部である第1のデータおよび第2のデータを受信し第1のデータおよび第2のデータを合成して復号する受信装置と通信を行う通信システムが提供される。この通信システムは、送信装置および中継装置を有する。送信装置は、第1のデータの送信に用いる第1のリソースと第2のデータの送信に用いる第2のリソースとの間の通信品質の差を求め、通信品質の差に応じて、第2のデータが第1のデータと重複した部分を含む割合を制御する制御部と、第1のデータを第1のリソースを用いて送信すると共に、割合を示す制御情報を送信する送信部とを備える。中継装置は、送信装置から第1のデータおよび制御情報を受信し、第1のデータからデータブロックを復元し、データブロックのうち制御情報が示す割合に応じた部分を第2のデータとして第2のリソースを用いて送信する。
【0011】
また、上記課題を解決するために、符号化により得られたデータブロックの一部である第1のデータおよび第2のデータを受信し第1のデータおよび第2のデータを合成して復号する受信装置と通信を行う通信システムの通信方法が提供される。この通信方法では、第1のデータの送信に用いる第1のリソースと第2のデータの送信に用いる第2のリソースとの間の通信品質の差を求める。通信品質の差に応じて、第2のデータが第1のデータと重複した部分を含む割合を制御する。割合に従って、第1のデータを第1のリソースを用いて送信し、第2のデータを第2のリソースを用いて送信する。
【発明の効果】
【0012】
上記通信装置、通信システムおよび通信方法によれば、受信装置が複数のデータを合成して復号する場合の利得を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施の形態に係る通信装置を示す図である。通信装置1は、受信装置2と通信を行う。受信装置2は、通信装置1を含む通信システムから、第1のデータと第2のデータとを受信する。第1のデータおよび第2のデータは、符号化により得られたデータブロックの一部である。第1のデータおよび第2のデータは、例えば、同一内容のデータブロックをそれぞれパンクチャリングすることで生成される。受信装置2は、受信した第1のデータと第2のデータとを合成して復号する。なお、3つ以上のデータを受信し合成するようにしてもよい。
【0014】
通信装置1は、制御部1aおよび送信部1bを有する。
制御部1aは、第1のデータの送信に用いる第1のリソースと第2のデータの送信に用いる第2のリソースとの間の通信品質の差を求める。制御部1aは、受信装置2から第1のリソースおよび第2のリソースそれぞれの通信品質を示すフィードバック情報を取得することで、通信品質の差を求めることができる。ただし、受信装置2で通信品質の差を算出し、制御部1aが受信装置2から通信品質の差を示す情報を取得するようにしてもよい。
【0015】
そして、制御部1aは、求めた通信品質の差に応じて、第2のデータが第1のデータと重複した部分を含む割合を制御する。例えば、割合としては、0%(第1のデータと第2のデータとで重複がない場合)や、100%(第1のデータと第2のデータとが完全に同一の場合)が考えられる。また、0<X<100とし、X%(第1のデータと第2のデータとが一部重複する場合)も考えられる。Xは、予め静的に決めておいてもよいし、動的に決定してもよい。前者の場合、例えば、0%,100%,X%から割合を選択することも考えられる。
【0016】
例えば、制御部1aは、通信品質の差が所定の閾値より小さい場合、割合を0%(重複なし)とし、通信品質の差が閾値以上の場合、割合を100%(完全同一)と制御する場合が考えられる。これは、2つのデータの受信品質に大きな差がある場合は、それを結合してデータの冗長度を高めても十分な符号化利得が得られず、ダイバーシティに基づく利得の方が高くなる場合があることを考慮したものである。
【0017】
送信部1bは、制御部1aが制御する割合に基づいて、符号化により得られたデータブロックに対しパンクチャリングなどの処理を施して第1のデータを生成し、第1のリソースを用いて送信する。同様に、送信部1bは、データブロックから第2のデータを生成し、第2のリソースを用いて送信する。ただし、第1のデータおよび第2のデータの一方または両方を他の通信装置が送信してもよい。その場合、送信部1bは、割合を示す制御情報を、他の通信装置に対し送信する。他の通信装置としては、例えば、通信装置1から受信装置2への通信経路上でデータの中継を行う中継装置が考えられる。
【0018】
なお、リソースとしては、例えば、周波数帯と時間帯とによって特定される無線リソースを考えることができる。第1のリソースと第2のリソースとは、周波数帯が異なるものでもよいし同じものでもよい。また、時間帯が異なるものでもよいし同じものでもよい。例えば、第1のデータを受信した受信装置2が再送要求を行ったときのみ第2のデータを送信する場合は、第1のリソースと第2のリソースとは、少なくとも時間帯が異なる。
【0019】
このような通信装置1によれば、制御部1aにより、第1のデータの送信に用いられる第1のリソースと第2のデータの送信に用いられる第2のリソースとの間の通信品質の差に応じて、第2のデータが第1のデータと重複した部分を含む割合が制御される。
【0020】
これにより、第1のデータと第2のデータとを合成することにより得られる利得を向上させ、データ伝送を効率化することができる。例えば、重複した部分の割合を大きくした場合に得られるダイバーシティに基づく利得と、重複した部分の割合を小さくして冗長度を高めた場合に得られる符号化利得との関係を考慮して、より有利な利得を得られるようになる。
【0021】
以下、上記のデータ送信制御を移動通信システムに適用した場合について更に詳細に説明する。ただし、上記のデータ送信制御は、固定無線通信システムなど他の種類の通信システムに適用することもできる。
【0022】
[第1の実施の形態]
図2は、第1の実施の形態の無線通信システムの構成を示す図である。この無線通信システムは、基地局100、リレー局200および移動局300を有する。なお、基地局100は、図1の通信装置1に相当する。移動局300は、図1の受信装置2に相当する。
【0023】
基地局100は、移動局300が自局のセル(電波到達範囲)内に存在するとき、移動局300と無線通信を行うことができる無線通信装置である。基地局100は、基地局100から移動局300へのリンク(SD(Source - Destination)リンク)の無線リソースを用いて、移動局300宛てのデータを送信する。
【0024】
リレー局200は、基地局100と移動局300との間でデータの中継を行うことができる無線中継装置である。リレー局200は、基地局100が無線送信した移動局300宛てのデータを受信する。そして、リレー局200は、リレー局200から移動局300へのリンク(RD(Relay - Destination)リンク)の無線リソースを用いて、移動局300宛てのデータを再送信する。
【0025】
移動局300は、基地局100およびリレー局200と無線通信を行うことができる無線端末装置である。移動局300としては、例えば、携帯電話機が考えられる。移動局300は、SDリンクを介して自局宛てのデータを受信すると共に、RDリンクを介して中継されたデータを受信することができる。SDリンクおよびRDリンクの両方からデータを受信した場合、移動局300は、受信データを合成して復号する。このようなデータ伝送方式は、Cooperative Diversity(協同ダイバーシティまたは協調ダイバーシティ)と呼ばれることがある。
【0026】
なお、図2の例では、基地局100と移動局300との間に、1つの直接パスと1つの中継パスとを設けたが、複数の中継パスを設けるようにしてもよい。また、複数のリレー局がデータを連続的に中継して、1つの中継パスを形成するようにしてもよい。また、直接パスを設けずに、中継パスのみを設けるようにしてもよい。
【0027】
図3は、第1の実施の形態の基地局を示すブロック図である。基地局100は、誤り検出符号化部110、誤り訂正符号化部120、レートマッチング部130、変調部140、復調部150および制御部160を有する。なお、制御部160は、図1の制御部1aに相当する。
【0028】
誤り検出符号化部110は、移動局300に送信するユーザデータが発生すると、所定の送信単位(例えば、PDU(Protocol Data Unit)と呼ばれるデータ単位)のデータブロック毎に、誤り検出用の検査ビットを付加する。そして、誤り検出符号化部110は、検査ビットを付加したデータブロックを、誤り訂正符号化部120に出力する。
【0029】
誤り訂正符号化部120は、誤り検出符号化部110から取得したデータブロックを、誤り訂正符号化する。誤り訂正符号化では、所定の符号化方式または制御部160から指定された符号化方式を用いる。符号化方式としては、例えば、畳み込み符号や畳み込みターボ符号、低密度パリティ検査(LDPC:Low Density Parity Check)符号などが考えられる。誤り訂正符号化後のデータブロックには、組織ビットとパリティビットとが含まれる。この時点の符号化率が1/3の場合、組織ビット長とパリティビット長との比は、1:2となる。そして、誤り訂正符号化部120は、誤り訂正符号化後のデータブロックを、レートマッチング部130に出力する。
【0030】
レートマッチング部130は、誤り訂正符号化部120から取得したデータブロックを無線フレームにマッピングする。その際、レートマッチング部130は、データブロックが送信に用いる無線リソースより大きい場合、その一部のビット列を切り出す処理(パンクチャリング)を行う。また、データブロックが送信に用いる無線リソースより小さい場合、少なくとも一部のビット列を複製する処理(レペティション)を行う。そして、レートマッチング部130は、レートマッチング後のビット列を変調部140に出力する。
【0031】
本実施の形態では、誤り訂正符号化部120によって得られるデータブロックの冗長度が高く、レートマッチング部130がレートマッチングとしてパンクチャリングを行う場合を考える。データブロックのビット列のうちパンクチャリングで切り出す部分は、制御部160によって制御される。
【0032】
変調部140は、レートマッチング部130から取得したビット列を変調する。変調では、所定の変調方式または制御部160から指定される変調方式を用いる。変調方式としては、例えば、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)や16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)などのデジタル変調が考えられる。そして、変調部140は、変調後の送信信号を、無線送信部(図示せず)およびアンテナを介して、無線出力する。なお、送信に用いるアンテナと受信に用いるアンテナは、同一でもよいし異なってもよい。
【0033】
復調部150は、アンテナおよび無線受信部(図示せず)を介して取得した受信信号を復調する。特に、復調部150は、SDリンクおよびRDリンクの通信品質を示す移動局300からのフィードバック情報を復調する。そして、復調部150は、得られたフィードバック情報を制御部160に出力する。
【0034】
制御部160は、復調部150から取得したSDリンクおよびRDリンクの通信品質のフィードバック情報に基づいて、変調符号化方式(MCS:Modulation and Coding Scheme)を決定する。変調符号化方式には、例えば、符号化方式、符号化率、パンクチャリングの方法、変調方式が含まれる。そして、制御部160は、誤り訂正符号化部120に符号化方式や符号化率を指定し、レートマッチング部130にパンクチャリングの方法を指定し、変調部140に変調方式を指定する。ただし、符号化方式、符号化率および変調方式の一部または全部を、適応的に決定せず固定化してもよい。
【0035】
また、制御部160は、リレー局200に実行させるパンクチャリングの方法(リレー方式)を示す制御情報を生成する。基地局100におけるパンクチャリングとリレー局200におけるパンクチャリングとは、同一方法である(すなわち、同一内容のデータが移動局300に送信される)場合もあるし、異なる方法である(すなわち、異なる内容のデータが移動局300に送信される)場合もある。そして、制御部160は、生成した制御情報を、変調部140に出力してリレー局200宛てに送信させる。
【0036】
図4は、第1の実施の形態のリレー局を示すブロック図である。リレー局200は、復調部210、デレートマッチング部220、誤り訂正復号部230、誤り検出部240、誤り訂正符号化部250、レートマッチング部260、変調部270および制御部280を有する。
【0037】
復調部210は、アンテナおよび無線受信部(図示せず)を介して取得した基地局100からの受信信号を復調する。具体的には、復調部210は、基地局100からの受信信号に含まれるユーザデータを復調する。復調では、所定の復調方式またはユーザデータと共に基地局100から受信される情報が示す復調方式を用いる。そして、復調部210は、復調後のユーザデータのビット列をデレートマッチング部220に出力する。また、復調部210は、基地局100からの受信信号に含まれるリレー方式を示す制御情報を抽出する。そして、復調部210は、リレー方式を示す制御情報を制御部280に出力する。
【0038】
デレートマッチング部220は、復調部210から取得した復調後のビット列に対し、基地局100で行われたレートマッチングに対応する逆処理を行って、データブロックを復元する。例えば、デレートマッチング部220は、基地局100でレペティションが行われた場合、同一内容に相当するビット列を合成する(重ね合わせる)。また、基地局100でパンクチャリングが行われた場合、切り出されずに省略されたビット列を、所定のダミービットで補完する。そして、デレートマッチング部220は、デレートマッチング後のデータブロックを誤り訂正復号部230に出力する。なお、前述の通り、本実施の形態ではパンクチャリングが行われた場合を考える。
【0039】
誤り訂正復号部230は、デレートマッチング部220から取得したデータブロックに対し誤り訂正処理を行う。誤り訂正では、所定の復号方式またはユーザデータと共に基地局100から受信される情報が示す復号方式を用いる。誤り訂正後のデータブロックは、パリティビットが削除されたものとなる。そして、誤り訂正復号部230は、誤り訂正後のデータブロックを、誤り検出部240に出力する。
【0040】
誤り検出部240は、誤り訂正復号部230から取得したデータブロックに対し、誤り検出処理を行う。誤り検出では、基地局100で付加された検査ビットを参照する。誤りが検出された場合、誤り検出部240は、基地局100にデータの再送を要求することもできる。そして、誤り検出部240は、データブロックを誤り訂正符号化部250に出力する。なお、誤り検出処理後のデータブロックは、検査ビットが付加されたものとする。検査ビットは、受信したものを残してもよいし、付加し直してもよい。
【0041】
誤り訂正符号化部250は、誤り検出部240から取得したデータブロックを、再度、誤り訂正符号化する。誤り訂正符号化では、基地局100が用いた符号化方式と同じものを用いてもよいし、異なるものを用いてもよい。誤り訂正符号化後のデータブロックには、組織ビットとパリティビットとが含まれる。そして、誤り訂正符号化部250は、誤り訂正符号化後のデータブロックを、レートマッチング部260に出力する。
【0042】
レートマッチング部260は、誤り訂正符号化部250から取得したデータブロックをRDリンクの無線フレームにマッピングする。その際、パンクチャリングやレペティションが行われる。ただし、前述の通り、本実施の形態ではパンクチャリングを行う場合を考える。パンクチャリングの方法、すなわち、データブロックのビット列うちパンクチャリングで切り出す部分は、制御部280から指定される。そして、レートマッチング部260は、レートマッチング後のビット列を変調部270に出力する。
【0043】
変調部270は、レートマッチング部260から取得したビット列を変調する。変調では、基地局100が用いた変調方式と同じものを用いてもよいし、異なるものを用いてもよい。そして、変調部270は、変調後の送信信号を、無線送信部(図示せず)およびアンテナを介して、無線出力する。なお、送信に用いるアンテナと受信に用いるアンテナは、同一でもよいし異なってもよい。
【0044】
制御部280は、復調部210から取得したリレー方式を示す制御情報に基づいて、レートマッチング部260で実行するパンクチャリングを制御する。データブロックのビット列のうち、リレー局200で切り出す部分は、基地局100で切り出された部分と同一である場合もあるし、異なる場合もある。なお、リレー方式によっては、リレー局200で復号および再符号化を行わずに、受信信号を転送するよう制御してもよい。
【0045】
図5は、第1の実施の形態の移動局を示すブロック図である。移動局300は、復調部310、デレートマッチング部320、誤り訂正復号部330、誤り検出部340、品質測定部350,355および変調部360を有する。
【0046】
復調部310は、アンテナおよび無線受信部(図示せず)を介して取得したSDリンクの受信信号およびRDリンクの受信信号をそれぞれ復調する。復調では、所定の復調方式またはユーザデータと共に受信される情報が示す復調方式を用いる。そして、復調部310は、復調後のビット列をデレートマッチング部320に出力する。また、復調部310は、SDリンクの受信信号およびRDリンクの受信信号に含まれる既知信号をそれぞれ抽出する。そして、復調部310は、SDリンクの既知信号の品質測定部350に出力し、RDリンクの既知信号を品質測定部355に出力する。
【0047】
デレートマッチング部320は、復調部310から取得したSDリンクのビット列とRDリンクのビット列とを合成して、データブロックを復元する。例えば、2つのビット列がデータブロックの同一部分を切り出したものである場合、2つのビット列を重ね合わせる。また、2つのビット列がデータブロックの互いに異なる部分を切り出したものである場合、2つのビット列を結合する。合成によっても不足する部分は、所定のダミービットで補完する。
【0048】
そして、デレートマッチング部320は、デレートマッチング後のデータブロックを誤り訂正復号部330に出力する。なお、2つのビット列がデータブロックの同一部分であるか否かは、例えば、ユーザデータと共に基地局100またはリレー局200から受信される情報に基づいて判断することが考えられる。
【0049】
誤り訂正復号部330は、デレートマッチング部320から取得したデータブロックに対し誤り訂正処理を行う。誤り訂正では、所定の復号方式またはユーザデータと共に受信される情報が示す復号方式を用いる。誤り訂正後のデータブロックは、パリティビットが削除されたものとなる。そして、誤り訂正復号部330は、誤り訂正後のデータブロックを、誤り検出部340に出力する。
【0050】
誤り検出部340は、誤り訂正復号部330から取得したデータブロックに対し、誤り検出処理を行う。誤り検出では、付加されている検査ビットを参照する。誤りが検出された場合、誤り検出部340は、基地局100にデータの再送を要求することもできる。誤り検出処理後のデータブロックは、検査ビットが削除されたものとなる。そして、誤り検出部340は、データブロックをそのデータの種類に応じた処理を行うデータ処理部(図示せず)に出力する。
【0051】
品質測定部350,355は、復調部310から取得した既知信号に基づいて、下り方向(基地局100から移動局300への通信方向)の通信品質を測定する。具体的には、品質測定部350は、SDリンクの既知信号に基づいてSDリンクの通信品質を測定し、測定結果を示すフィードバック情報を変調部360に出力する。品質測定部355は、RDリンクの既知信号に基づいてRDリンクの通信品質を測定し、測定結果を示すフィードバック情報を変調部360に出力する。
【0052】
なお、通信品質の指標としては、信号対雑音比(SNR:Signal to Noise Ratio)や信号対干渉雑音比(SINR:Signal to Interference and Noise Ratio)などの各種指標を用いることができる。また、フィードバック情報としては、指標値を所定ビット数の離散値として表現したCQI(Channel Quality Indicator)を用いることができる。
【0053】
変調部360は、品質測定部350,355から取得したフィードバック情報を変調して、無線送信部(図示せず)およびアンテナを介して基地局100に無線送信する。SDリンクの通信品質を示すフィードバック情報とRDリンクの通信品質を示すフィードバック情報とは、同一タイミングで纏めて送信してもよいし、異なるタイミングで別個に送信してもよい。なお、送信に用いるアンテナと受信に用いるアンテナは、同一でもよいし異なってもよい。
【0054】
以下では、リレー方式のうち、基地局100とリレー局200とでデータブロックの同一部分を切り出すものを、単純リピート方式と呼ぶこととする。一方、基地局100とリレー局200とでデータブロックの異なる部分を切り出すものを、パリティ選択方式と呼ぶこととする。
【0055】
単純リピート方式に関しては、例えば、以下の文献(非特許文献1)が挙げられる。
J. N. Laneman, D. N. C. Tse and G. W. Wornell, "Cooperative Diversity in Wireless Networks: Efficient Protocols and Outage Behavior", IEEE Transactions on Information Theory, Vol. 50, No. 12, pp. 3062-3080, 2004.
パリティ選択方式に関しては、例えば、データブロックを2分割する方法を示した以下の文献(非特許文献2)が挙げられる。
【0056】
T. E. Hunter and A. Nosratinia, "Cooperation Diversity through coding", Proc. IEEE 2002 International Symposium on Information Theory (ISIT), p. 220, 2002.
ここで、基地局100が、SDリンクの通信品質とRDリンクの通信品質の両方を考慮して、符号化率や変調方式などの変調符号化方式を適応的に決定する方法を説明する。1つの方法として、SDリンクの通信品質とRDリンクの通信品質とから、各変調符号化方式を適用した場合のリンク全体での相互情報量(MI:Mutual Information)またはビット情報量(RBIR:Received Bit Information Rate)を推定し、相互情報量やビット情報量が最大となる変調符号化方式を選択する方法が考えられる。
【0057】
相互情報量やビット情報量に関しては、例えば、以下の文献が挙げられる。
R. G. Gallager, "Information Theory and Reliable Communication".
L. Wan, S. Tsai and M. Almergn, "A fading-insensitive performance metric for a unified link quality model", IEEE 2006 Wireless Communications and Networking Conference (WCNC), Vol. 4, pp. 2110-2114, 2006.
また、他の方法として、SDリンクの通信品質とRDリンクの通信品質とから、リンク全体の通信品質を表す有効通信品質(例えば、有効SNR)を算出し、有効通信品質に応じた変調符号化方式を選択する方法が考えられる。例えば、有効SNRを式(1)のように定義することができる。ここで、α1,α2は所定のパラメータ、F(x)は所定の関数、Nはリンク数(図2の例では、N=2)、γiは各リンクのSNRである。α1,α2,F(x)は、リレー方式に依存する。
【0058】
【数1】
【0059】
単純リピート方式の場合、移動局300では、N個の受信ビット列を加算する(重ね合わせる)ことから、ダイバーシティに基づく利得を得ることができる。よって、リンク全体の有効SNRは、個々のリンクのSNRの和として近似することが可能である。そこで、単純リピート方式を採用した場合の有効SNRは、式(1)にα1=1,α2=N,F(x)=xを代入して、式(2)のように定義することができる。
【0060】
【数2】
【0061】
一方、パリティ選択方式の場合、移動局300では、N個の受信ビット列が結合されて復号対象の冗長度が高くなる(例えば、パリティビットが増える)ことから、より高い符号化利得を得ることができる。パリティ選択方式を採用した場合の有効SNRは、EESM(Exponential Effective SNR Mapping)の手法に基づき、式(1)にα1=α2=β,F(x)=e-xを代入して、式(3)のように定義することができる。βは、変調符号化方式に依存する所定値である。
【0062】
【数3】
【0063】
有効通信品質に関しては、例えば、以下の文献が挙げられる。
K. Brueninghaus, et al., "Link performance models for system level simulations of broadband radio access systems", IEEE 16th International Symposium on Personal, Indoor and Mobile Radio Communications (PIMRC), Vol. 4, pp. 2306-2311, 2005.
このように、SDリンクおよびRDリンクを含むリンク全体の有効通信品質は、リレー方式に応じた計算式を用いて算出することができる。そして、算出した有効通信品質に基づいて、符号化率や変調方式などの変調符号化方式を適応的に決定することが可能となる。以下では、基地局100が、有効SNRに基づいて変調符号化方式を決定する場合を考える。
【0064】
次に、以上のような無線通信システムにおいて実行される処理の詳細を説明する。
図6は、第1の実施の形態のフォーマット決定処理を示すフローチャートである。この処理は、基地局100において繰り返し実行される。以下、図6に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
【0065】
[ステップS11]制御部160は、移動局300で測定された各リンク(SDリンクおよびRDリンク)のSNRを示すフィードバック情報を取得する。SDリンクについてのフィードバック情報とRDリンクについてのフィードバック情報とは、同一タイミングで纏めて取得する場合もあるし、異なるタイミングで別個に取得する場合もある。
【0066】
[ステップS12]制御部160は、中継パスのリンク(RDリンク)について、直接パスのリンク(SDリンク)とのSNR差を計算する。すなわち、SDリンクのSNRをγ0、RDリンクのSNRをγ1として、SNR差=γ1−γ0を計算する。
【0067】
[ステップS13]制御部160は、ステップS12で計算したSNR差が所定の閾値Th1未満か判断する。閾値Th1未満の場合、処理をステップS14に進める。閾値Th1以上の場合、処理をステップS15に進める。
【0068】
[ステップS14]制御部160は、リレー方式としてパリティ選択方式を選択する。これは、SNR差があまり大きくない場合には、パリティ選択方式により得られる符号化利得の方が、単純リピート方式により得られるダイバーシティに基づく利得よりも大きいと考えられるためである。その後、処理をステップS16に進める。
【0069】
[ステップS15]制御部160は、リレー方式として単純リピート方式を選択する。これは、SNR差が非常に大きい場合には、パリティ選択方式では十分な符号化利得を得られず、単純リピート方式により得られるダイバーシティに基づく利得の方が大きくなると考えられるためである。その後、処理をステップS16に進める。
【0070】
[ステップS16]制御部160は、ステップS14またはステップS15で選択したリレー方式に対応する計算式を用いて、SDリンクおよびRDリンクのSNRから、有効SNRを計算する。有効SNRの計算式としては、例えば、前述の式(2)および式(3)を用いることができる。
【0071】
[ステップS17]制御部160は、ステップS16で計算した有効SNRに応じて、符号化率や変調方式などの変調符号化方式を決定する。例えば、制御部160は、有効SNRと利用可能な変調符号化方式との対応関係を定義したテーブルを参照することで、決定する。このようなテーブルは、予め基地局100に搭載しておくことが考えられる。制御部160は、決定した変調符号化方式に従って、誤り訂正符号化部120、レートマッチング部130および変調部140を制御する。
【0072】
[ステップS18]制御部160は、ステップS14またはステップS15で選択したリレー方式を示す制御情報を生成する。生成された制御情報は、変調部140を介して、リレー局200に送信される。
【0073】
このようにして、基地局100は、移動局300からSDリンクおよびRDリンクの通信品質を示す情報を取得する。そして、2つのリンクの通信品質の差に応じて、単純リピート方式またはパリティ選択方式を選択する。基地局100は、選択したリレー方式をリレー局200に通知する。リレー局200は、基地局100から通知されたリレー方式に従って、パンクチャリングを行う。すなわち、リレー局200は、単純リピート方式が指定された場合、基地局100と同じ部分をデータブロックから抽出し、パリティ選択方式が指定された場合、基地局100と異なる部分をデータブロックから抽出する。
【0074】
なお、リレー方式の選択は、データブロック毎に行ってもよいし、間欠的(定期または不定期)に行ってもよい。また、リレー方式の選択は、変調符号化方式の決定と同一周期で行ってもよいし、異なる周期で行ってもよい。中継パスが複数存在する場合は、中継パス毎に、SNR差を計算してリレー方式を決定することができる。または、基地局100と移動局300との間の全ての中継パスに対して、同一のリレー方式を適用するよう統一してもよい。
【0075】
図7は、第1の実施の形態のメッセージの流れを示すシーケンス図である。以下、図7に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
[ステップS21]移動局300は、基地局100からの受信信号に基づいて、SDリンクのSNRを測定する。また、リレー局200からの受信信号に基づいて、RDリンクのSNRを測定する。2つのSNRの測定は、同じタイミングで行ってもよいし、異なるタイミングで行ってもよい。
【0076】
[ステップS22]移動局300は、SDリンクおよびRDリンクそれぞれについて、測定したSNRに応じたCQIを、フィードバック情報として基地局100に送信する。2つのCQIは、同じタイミングで纏めて送信してもよいし、異なるタイミングで別個に送信してもよい。
【0077】
[ステップS23]基地局100は、ステップS22で受信したフィードバック情報に基づいて、適切なリレー方式(単純リピート方式またはパリティ選択方式)を選択すると共に、適切な変調符号化方式を決定する。
【0078】
[ステップS24]基地局100は、ステップS23で選択したリレー方式をリレー局200に通知する。なお、リレー局200へのリレー方式の通知は、変調符号化方式を決定する前に行ってもよい。
【0079】
[ステップS25]基地局100は、ステップS23で決定した変調符号化方式に従って、データブロックに対し誤り訂正符号化、レートマッチングおよび変調を行い、送信信号を生成する。ただし、符号化率、符号化方式および変調方式の一部または全部を、固定のものを用いてもよい。
【0080】
[ステップS26]基地局100は、ステップS25で生成した送信信号を、SDリンクの無線リソースを用いて無線出力する。基地局100が出力した送信信号は、リレー局200および移動局300の両方に到達する。
【0081】
[ステップS27]リレー局200は、ステップS26で基地局100が出力した信号を受信し、復調、デレートマッチングおよび復号を行ってデータブロックを再現する。そして、リレー局200は、データブロックに対して再度、誤り訂正符号化、レートマッチングおよび変調を行って、送信信号を生成する。その際、リレー局200は、ステップS24で通知されたリレー方式に従って、パンクチャリングを行う。
【0082】
[ステップS28]リレー局200は、ステップS27で生成した送信信号を、RDリンクの無線リソースを用いて無線出力する。リレー局200が出力した送信信号は、移動局300に到達する。
【0083】
[ステップS29]移動局300は、ステップS26で基地局100から受信した信号およびステップS28でリレー局200から受信した信号をそれぞれ復調する。そして、移動局300は、各リンクの復調後のビット列を合成して復号する。合成では、リレー方式に応じて、ビット列の重ね合わせや結合を行う。
【0084】
このようにして、移動局300は、SDリンクおよびRDリンクのSNRを測定して、CQIを基地局100に報告する。基地局100は、移動局300から報告されたCQIに基づいてリレー方式を選択し、リレー局200に通知する。また、基地局100は、移動局300から報告されたCQIに基づいて変調符号化方式を決定し、SDリンクの無線リソースを用いてデータを送信する。リレー局200は、基地局100から通知されたリレー方式に従って、基地局100が送信したデータを中継する。移動局300は、基地局100およびリレー局200から受信したデータを合成する。
【0085】
図8は、第1の実施の形態の単純リピート方式のデータ送信を示す図である。この例では、基地局100がリレー方式として単純リピート方式を選択した場合を考える。また、誤り訂正符号化後のデータブロックに含まれる組織ビットとパリティビットとの比が1:2であり、1回のデータ送信でデータブロック長の半分のビット列を送信可能である場合を考える。
【0086】
基地局100は、パンクチャリングにおいて、データブロックから全ての組織ビットと一部のパリティビットとを切り出し、SDリンクの無線リソースを用いて切り出したビット列を送信する。リレー局200は、基地局100が送信したビット列を受信し、復号および再符号化を行う。その際、データブロックから基地局100が切り出した部分と同一部分のビット列(全ての組織ビットおよび一部のパリティビット)を切り出す。そして、リレー局200は、RDリンクの無線リソースを用いて切り出したビット列を送信する。
【0087】
移動局300は、基地局100から受信したビット列とリレー局200から受信したビット列とを重ね合わせて(例えば、受信レベルを加算して)、合成後のビット列を復号する。これにより、移動局300では、ダイバーシティに基づく利得を得ることができ、ブロック誤り率を低減することができる。なお、受信するビット列には、多くの組織ビット(例えば、全ての組織ビット)が含まれていることが好ましい。
【0088】
図9は、第1の実施の形態のパリティ選択方式のデータ送信を示す図である。この例では、基地局100がリレー方式としてパリティ選択方式を選択した場合を考える。また、図8と同様、誤り訂正符号化後のデータブロックに含まれる組織ビットとパリティビットとの比が1:2であり、1回のデータ送信でデータブロック長の半分のビット列を送信可能である場合を考える。
【0089】
基地局100は、パンクチャリングにおいて、データブロックから全ての組織ビットと一部のパリティビットとを切り出し、SDリンクの無線リソースを用いて切り出したビット列を送信する。リレー局200は、基地局100が送信したビット列を受信し、復号および再符号化を行う。その際、データブロックから基地局100で選択されなかった部分のビット列(基地局100で選択されなかったパリティビット)を切り出す。そして、リレー局200は、RDリンクの無線リソースを用いて切り出したビット列を送信する。
【0090】
移動局300は、基地局100から受信したビット列とリレー局200から受信したビット列とを結合して(例えば、基地局100から受信したビット列の後ろにリレー局200から受信したビット列を並べて1つのビット列とし)、合成後のビット列を復号する。これにより、移動局300では、より多くのパリティビットを受信できるため、より高い符号化利得を得ることができ、ブロック誤り率を低減することができる。なお、受信するビット列には、多くの組織ビットが含まれていることが好ましい。
【0091】
図10は、第1の実施の形態の他のフォーマット例を示す図である。図9に示したパリティ選択方式の例では、誤り訂正符号化後のデータブロックを2分割したが、この他にも種々のパンクチャリングの方法が考えられる。図10の例は、基地局100と移動局300との間に3つのパス(例えば、1つの直接パスおよび2つの中継パス)が存在する場合を示している。
【0092】
この例に示すように、パリティ選択方式でも、一部の組織ビットや一部のパリティビットが重複して切り出されるようにしてもよい。この場合、移動局300は、重複する部分について重ね合わせて合成することができる。また、何れのパスでも切り出されないビットが存在してもよい。この場合、移動局300は、欠けている部分をダミービットで補完することもできる。なお、パリティ選択方式の場合に、ビット列を切り出す具体的な位置は、予め決めておいてもよいし、通信品質に応じて選択するようにしてもよい。
【0093】
第1の実施の形態に係る無線通信システムによれば、移動局300は、SDリンクの受信データとRDリンクの受信データとを合成して復号することができる。その場合、SDリンクの通信品質とRDリンクの通信品質との差に応じて、適切なリレー方式(例えば、単純リピート方式またはパリティ選択方式)が選択される。その結果、リレー局200を利用することで移動局300で得られる利得が向上し、ブロック誤り率が低減し、より高いスループットを達成することができる。
【0094】
なお、第1の実施の形態では、リレー方式の選択および変調符号化方式の決定を基地局100が制御することとしたが、他の通信装置が制御するようにしてもよい。例えば、リレー局200が、各リンクの通信品質を示す情報を取得して、リレー方式の選択および変調符号化方式の決定の一方または両方を行ってもよい。
【0095】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。前述の第1の実施の形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については説明を省略する。第2の実施の形態の無線通信システムでは、3つのリレー方式を定義し、その中から適切なリレー方式を選択する。第2の実施の形態では、基地局とリレー局とでデータブロックの同一部分を切り出す方式を単純リピート方式と呼び、一部ビットが重複するように切り出す方式を複合方式と呼び、重複するビットがないように切り出す方式をパリティ選択方式と呼ぶこととする。
【0096】
第2の実施の形態に係る無線通信システムは、図2に示した第1の実施の形態のものと同様のシステム構成によって実現できる。また、第2の実施の形態に係る基地局、リレー局および移動局は、図3〜5に示した第1の実施の形態のものと同様のブロック構成によって実現できる。ただし、基地局におけるリレー方式の選択制御の具体的内容が異なる。以下、図2〜5で用いたものと同様の符号を用いて、第2の実施の形態を説明する。
【0097】
図11は、第2の実施の形態のフォーマット決定処理を示すフローチャートである。この処理は、基地局100において繰り返し実行される。以下、図11に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
【0098】
[ステップS31]制御部160は、移動局300で測定された各リンク(SDリンクおよびRDリンク)のSNRを示すフィードバック情報を取得する。
[ステップS32]制御部160は、RDリンクについて、SDリンクとのSNR差を計算する。すなわち、SDリンクのSNRをγ0、RDリンクのSNRをγ1として、SNR差=γ1−γ0を計算する。
【0099】
[ステップS33]制御部160は、ステップS32で計算したSNR差が所定の閾値Th1未満か判断する。閾値Th1は、第1の実施の形態で用いたものと同じでもよいし、異なってもよい。閾値Th1未満の場合、処理をステップS34に進める。閾値Th1以上の場合、処理をステップS35に進める。
【0100】
[ステップS34]制御部160は、リレー方式としてパリティ選択方式を選択する。すなわち、リレー局200に、基地局100の場合とビットが重複しないようにデータブロックからビット列を抽出させると決定する。そして、処理をステップS38に進める。
【0101】
[ステップS35]制御部160は、ステップS32で計算したSNR差が所定の閾値Th2(Th1<Th2)未満(かつ、閾値Th1以上)か判断する。閾値Th2未満の場合、処理をステップS36に進める。閾値Th2以上の場合、処理をステップS37に進める。
【0102】
[ステップS36]制御部160は、リレー方式として複合方式を選択する。すなわち、リレー局200に、基地局100の場合とビットが一部重複するようにデータブロックからビット列を抽出させると決定する。そして、処理をステップS38に進める。
【0103】
[ステップS37]制御部160は、リレー方式として単純リピート方式を選択する。すなわち、リレー局200に、基地局100の場合と同一部分のビット列をデータブロックから抽出させると決定する。そして、処理をステップS38に進める。
【0104】
[ステップS38]制御部160は、ステップS34、ステップS36またはステップS37で選択したリレー方式に対応する計算式を用いて、SDリンクおよびRDリンクのSNRから、有効SNRを計算する。例えば、単純リピート方式を選択した場合、前述の式(2)を用い、パリティ選択方式を選択した場合、前述の式(3)を用いることができる。複合方式を選択した場合、パリティ選択方式と同じく式(3)を用いてもよいし、別個に用意した計算式を用いてもよい。
【0105】
[ステップS39]制御部160は、ステップS38で計算した有効SNRに応じて、変調符号化方式を決定する。
[ステップS40]制御部160は、ステップS34、ステップS36またはステップS37で選択したリレー方式を示す制御情報を生成する。生成された制御情報は、変調部140を介して、リレー局200に送信される。
【0106】
このようにして、基地局100は、移動局300からSDリンクおよびRDリンクの通信品質を示す情報を取得する。そして、2つのリンクの通信品質の差に応じて、単純リピート方式、複合方式またはパリティ選択方式を選択する。基地局100は、選択したリレー方式をリレー局200に通知する。リレー局200は、基地局100から通知されたリレー方式に従って、パンクチャリングを行う。
【0107】
図12は、第2の実施の形態の複合方式のデータ送信を示す図である。この例では、基地局100がリレー方式として複合方式を選択した場合を考える。また、誤り訂正符号化後のデータブロックに含まれる組織ビットとパリティビットとの比が1:2であり、1回のデータ送信でデータブロック長の半分のビット列を送信可能である場合を考える。
【0108】
基地局100は、パンクチャリングにおいて、データブロックから全ての組織ビットと一部のパリティビットとを切り出し、SDリンクの無線リソースを用いて切り出したビット列を送信する。リレー局200は、基地局100が送信したビット列を受信し、復号および再符号化を行う。その際、データブロックから基地局100が切り出した部分と一部重複するようにビット列(例えば、一部の組織ビットおよび一部のパリティビット)を切り出す。そして、リレー局200は、RDリンクの無線リソースを用いて切り出したビット列を送信する。
【0109】
移動局300は、基地局100から受信したビット列とリレー局200から受信したビット列とを合成して(重複する部分は重ね合わせ、重複しない部分同士は結合して)、合成後のビット列を復号する。これにより、移動局300では、ダイバーシティに基づく利得と符号化利得との組み合わせに応じた利得を得ることができ、ブロック誤り率を低減することができる。なお、複合方式の場合に、ビット列を切り出す具体的な位置は、予め決めておいてもよいし、通信品質に応じて選択するようにしてもよい。ここで、単純リピート方式とパリティ選択方式とに加えて、複合方式を設ける利点を説明する。
【0110】
図13は、リレー方式とブロック誤り率との関係を示す第1の図である。図13のグラフは、単純リピート方式、複合方式、パリティ選択方式それぞれについての、SNR差とブロック誤り率(BLER:BLock Error Rate)との関係を示している。横軸がSNR差(単位はdB)、縦軸がブロック誤り率(無単位)である。このグラフは、データブロック長を3072バイト、変調方式をQPSK、SDリンクのビット列に含まれる組織ビットの割合(SDリンクの符号化率)を0.8、RDリンクのビット列に含まれる組織ビットの割合(RDリンクの符号化率)を0.48としたシミュレーションの結果である。
【0111】
このグラフに示すように、単純リピート方式では、RDリンクのSNRが大きくなるほどブロック誤り率が低下する。これは、各リンクのビット列を重ね合わせる(例えば、受信レベルを加算する)ので、データブロック内に品質の大きく異なるビットが混在することがないためである。一方、パリティ選択方式では、RDリンクのSNRが大きくなったとき、単純リピート方式ほどブロック誤り率は低下しない。これは、各リンクのビット列を結合するので、データブロック内に品質の大きく異なるビットが混在するためである。
【0112】
特に、誤り訂正において組織ビットの方がパリティビットよりも重要度が高い符号を用いており、組織ビットを主にSDリンクで送信し、パリティビットを主にRDリンクで送信する場合は、RDリンクのSNRがSDリンクのSNRより非常に大きくなると、十分な符号化利得が得られなくなる。これに対し、複合方式では、RDリンクのSNRが大きくなればブロック誤り率は低下するが、その程度はRDリンクの符号化率にも依存する。
【0113】
このシミュレーション例では、SNR差が12dB以下の場合、パリティ選択方式が最もブロック誤り率を低下できる。SNR差が13dB以上15dB以下の場合、複合方式が最もブロック誤り率を低下できる。SNR差が16dB以上の場合、単純リピート方式が最もブロック誤り率を低下できる。基地局100は、求めたSDリンクとRDリンクとのSNR差から、ブロック誤り率が最も低くなるリレー方式を、適切なリレー方式として選択することができる。前述の閾値Th1,Th2は、例えば、図13に示したようなシミュレーション結果から決定することができる。
【0114】
図14は、リレー方式とブロック誤り率との関係を示す第2の図である。図14のグラフは、図13と同様、単純リピート方式、複合方式、パリティ選択方式それぞれについての、SNR差とブロック誤り率との関係を示している。このグラフは、データブロック長を3072バイト、変調方式をQPSK、SDリンクの符号化率を0.8、RDリンクの符号化率を0.3としてシミュレーションを行った結果である。図13のグラフとは、RDリンクの符号化率が異なることから、複合方式の曲線が異なっている。
【0115】
このシミュレーション例では、SNR差が12dB以下の場合、パリティ選択方式が最もブロック誤り率を低下できる。SNR差が13dB以上の場合、複合方式が最もブロック誤り率を低下できる。SNR差が更に大きい場合でも、複合方式のブロック誤り率と単純リピート方式のブロック誤り率とは逆転しない。すなわち、基地局100は、パリティ選択方式または複合方式を、最適なリレー方式として選択することが考えられる。
【0116】
なお、基地局100は、SDリンクのビット列とRDリンクのビット列との重複度を固定にしてもよいし、通信品質に応じて適応的に決定してもよい。後者の場合、基地局100は、ビット列間の重複度またはRDリンクの符号化率に応じた閾値Th1,Th2を用いて、適切なリレー方式を選択することもできる。
【0117】
第2の実施の形態に係る無線通信システムによれば、SDリンクの通信品質とRDリンクの通信品質との差に応じて、単純リピート方式、複合方式およびパリティ選択方式から適切なリレー方式が選択される。特に、SDリンクとRDリンクとで一部のビットを重複して送信した場合の利得が考慮される。その結果、リレー局200を利用することで移動局300で得られる利得がより向上し、ブロック誤り率が低減し、より高いスループットを達成することができる。
【0118】
[第3の実施の形態]
次に、第3の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。前述の第1の実施の形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については説明を省略する。第3の実施の形態の無線通信システムでは、通信方式としてOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)を採用し、基地局はリソースブロックと呼ばれる単位で移動局に無線リソースを割り当てることができる。
【0119】
第3の実施の形態に係る無線通信システムは、図2に示した第1の実施の形態のものと同様のシステム構成によって実現できる。また、第2の実施の形態に係る基地局、リレー局および移動局は、図3〜5に示した第1の実施の形態のものと同様のブロック構成によって実現できる。ただし、基地局におけるリレー方式の選択制御の具体的内容が異なる。以下、図2〜5で用いたものと同様の符号を用いて、第3の実施の形態を説明する。
【0120】
図15は、第3の実施の形態のOFDMのフレーム構造例を示す図である。このような構造のOFDMフレームが、SDリンクおよびRDリンクで送信される。1つのフレームの時間幅は10ms(ミリ秒)である。1つのフレームは複数のサブフレームを含む。1つのサブフレームの時間幅は1msである。サブフレームでは、周波数領域×時間領域上の無線リソースが細分化されて管理される。周波数方向の最小単位はサブキャリアと呼ばれる。時間方向の最小単位はシンボルと呼ばれる。1サブキャリア・1シンボルで特定される無線リソースの最小単位はリソースエレメントと呼ばれる。
【0121】
移動局300には、例えば、1サブフレーム内の複数のサブキャリア分の無線リソースが、リソースブロックとして割り当てられる。移動局300には、SDリンクおよびRDリンクそれぞれについて、リソースブロックが割り当てられる。なお、SDリンクで使用可能な周波数帯とRDリンクで使用可能な周波数帯とは、同一でもよいし、異なっていてもよい。また、SDリンクのフレームとRDリンクのフレームとは、同期していてもよいし、同期していなくてもよい。
【0122】
図16は、第3の実施の形態のフォーマット決定処理を示すフローチャートである。この処理は、基地局100において繰り返し実行される。以下、図16に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
【0123】
[ステップS41]制御部160は、移動局300で測定された各リソースブロックのSNRを示すフィードバック情報を取得する。複数の移動局が存在する場合、他の移動局からもフィードバック情報を取得する。なお、移動局300は、自局に割り当てられる可能性のあるリソースブロックを絞り込むことができる場合、そのリソースブロックについてのみSNRを報告するようにしてもよい。
【0124】
[ステップS42]制御部160は、ステップS41で取得した各リソースブロックのSNRに基づいて、移動局300に対し、SDリンクのリソースブロックとRDリンクのリソースブロックとを割り当てる。複数の移動局が存在する場合、他の移動局に対してもリソースブロックを割り当てる。その際、移動局間の公正性を考慮することもできる。
【0125】
[ステップS43]制御部160は、以下のステップS44〜S49の処理を、基地局100に接続する全ての移動局について実行したか判断する。全ての移動局について実行した場合、処理をステップS50に進める。未実行の移動局がある場合、処理をステップS44に進める。なお、以下のステップS44〜S49の説明では、移動局300についての処理を考える。
【0126】
[ステップS44]制御部160は、移動局300に割り当てたSDリンクのリソースブロックとRDリンクのリソースブロックとのSNR差を計算する。すなわち、SDリンクのリソースブロックのSNRをγ0、RDリンクのリソースブロックのSNRをγ1として、SNR差=γ1−γ0を計算する。
【0127】
[ステップS45]制御部160は、ステップS44で計算したSNR差が所定の閾値Th1未満か判断する。閾値Th1未満の場合、処理をステップS46に進める。閾値Th1以上の場合、処理をステップS47に進める。
【0128】
[ステップS46]制御部160は、移動局300宛てのデータに適用するリレー方式としてパリティ選択方式を選択する。その後、処理をステップS48に進める。
[ステップS47]制御部160は、移動局300宛てのデータに適用するリレー方式として単純リピート方式を選択する。その後、処理をステップS48に進める。
【0129】
[ステップS48]制御部160は、ステップS46またはステップS47で選択したリレー方式に対応する計算式を用いて、SDリンクのリソースブロックおよびRDリンクのリソースブロックのSNRから、有効SNRを計算する。有効SNRの計算式としては、例えば、前述の式(2)および式(3)を用いることができる。
【0130】
[ステップS49]制御部160は、ステップS48で計算した有効SNRに応じて、変調符号化方式を決定する。そして、処理をステップS43に進める。
[ステップS50]制御部160は、ステップS42でRDリンク用に割り当てたリソースブロックを示す制御情報を生成する。また、ステップS46またはステップS47で選択したリレー方式を示す制御情報を生成する。生成された制御情報は、変調部140を介して、リレー局200に送信される。
【0131】
このようにして、基地局100は、移動局300から各リソースブロックの通信品質を示す情報を取得する。そして、SDリンクおよびRDリンク用のリソースブロックを割り当て、割り当てたリソースブロックの通信品質の差に応じて、単純リピート方式またはパリティ選択方式を選択する。基地局100は、割り当てたリソースブロックおよび選択したリレー方式を、リレー局200に通知する。リレー局200は、基地局100から通知されたリレー方式に従って、パンクチャリングを行う。そして、基地局100から通知されたリソースブロックを用いて、パンクチャリング後のビット列を送信する。
【0132】
図17は、第3の実施の形態のメッセージの流れを示すシーケンス図である。以下、図17に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
[ステップS51]移動局300は、基地局100からの受信信号およびリレー局200からの受信信号に基づいて、各リソースブロックのSNRを測定する。各リソースブロックの測定は、同じタイミングで行ってもよいし、異なるタイミングで行ってもよい。
【0133】
[ステップS52]移動局300は、各リソースブロックについて、測定したSNRに応じたCQIを、フィードバック情報として基地局100に送信する。各リソースブロックのCQIは、同じタイミングで纏めて送信してもよいし、異なるタイミングで別個に送信してもよい。
【0134】
[ステップS53]基地局100は、ステップ52で受信したフィードバック情報に基づいて、移動局300にリソースブロックを割り当てる。そして、割り当てたリソースブロックのCQIに基づいて、適切なリレー方式(単純リピート方式またはパリティ選択方式)を選択すると共に、適切な変調符号化方式を決定する。
【0135】
[ステップS54]基地局100は、ステップS53で割り当てたリソースブロックおよび選択したリレー方式を、リレー局200に通知する。割り当てたリソースブロックとリレー方式とは、同じタイミングで纏めて通知してもよいし、異なるタイミングで別個に通知してもよい。
【0136】
[ステップS55]基地局100は、ステップS53で決定した変調符号化方式に従って、データブロックに対し誤り訂正符号化、レートマッチングおよび変調を行い、送信信号を生成する。
【0137】
[ステップS56]基地局100は、ステップS55で生成した送信信号を、SDリンクのリソースブロックを用いて無線出力する。
[ステップS57]リレー局200は、ステップS56で基地局100が出力した信号を受信し、復調、デレートマッチングおよび復号を行ってデータブロックを再現する。そして、リレー局200は、データブロックに対して再度、誤り訂正符号化、レートマッチングおよび変調を行って、送信信号を生成する。その際、リレー局200は、ステップS54で通知されたリレー方式に従ってパンクチャリングを行う。
【0138】
[ステップS58]リレー局200は、ステップS57で生成した送信信号を、ステップS54で通知されたRDリンクのリソースブロックを用いて無線出力する。
[ステップS59]移動局300は、ステップS56で基地局100から受信した信号およびステップS58でリレー局200から受信した信号をそれぞれ復調する。そして、移動局300は、各リンクの復調後のビット列を合成して復号する。
【0139】
このようにして、移動局300は、各リソースブロックのSNRを測定して、CQIを基地局100に報告する。基地局100は、移動局300から報告されたCQIに基づいてリソースブロックを移動局300に割り当てると共に、リレー方式を選択してリレー局200に通知する。また、基地局100は、移動局300から報告されたCQIに基づいて変調符号化方式を決定し、SDリンクのリソースブロックを用いてデータを送信する。リレー局200は、基地局100から通知されたリレー方式に従い、通知されたリソースブロックを用いてデータを中継する。移動局300は、基地局100およびリレー局200から受信したデータを合成する。
【0140】
第3の実施の形態に係る無線通信システムによれば、基地局100は、各リソースブロックの通信品質に応じて、SDリンクのリソースブロックとRDリンクのリソースブロックとを移動局300に割り当てることができる。リレー方式は、SDリンクのリソースブロックとRDリンクのリソースブロックとの通信品質差に応じて選択される。その結果、移動局300で得られる利得が向上し、ブロック誤り率が低減し、より高いスループットを達成することができる。
【0141】
なお、第3の実施の形態では、基地局100がSDリンクおよびRDリンクのリソースブロックの割り当てを管理したが、リレー局200がRDリンクのリソースブロックの割り当てを管理してもよい。その場合、リレー方式の選択のために、リレー局200が基地局100に、割り当てたリソースブロックを通知することが考えられる。また、RDリンクのリソースブロックの通信品質を、リレー局200経由で基地局100に報告するようにしてもよい。また、リレー方式は、第2の実施の形態で述べたように、3つの方式(単純リピート方式、複合方式およびパリティ選択方式)から選択してもよい。
【0142】
[第4の実施の形態]
次に、第4の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。前述の第3の実施の形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については説明を省略する。第4の実施の形態の無線通信システムでは、基地局からリレー局へのリンク(SR(Source - Relay)リンク)の通信品質も考慮して、移動局への無線リソースの割り当てを制御する。
【0143】
第4の実施の形態に係る無線通信システムは、図2に示した第1の実施の形態のものと同様のシステム構成によって実現できる。また、第4の実施の形態に係る基地局および移動局は、図3,5に示した第1の実施の形態のものと同様のブロック構成によって実現できる。ただし、基地局におけるリソース管理の具体的内容が異なる。以下、基地局および移動局については、図3,5と同様の符号を用いて、第4の実施の形態を説明する。
【0144】
図18は、第4の実施の形態のリレー局を示すブロック図である。第4の実施の形態に係るリレー局200aは、復調部210、デレートマッチング部220、誤り訂正復号部230、誤り検出部240、誤り訂正符号化部250、レートマッチング部260、変調部270、制御部280および品質測定部290を有する。
【0145】
復調部210、デレートマッチング部220、誤り訂正復号部230、誤り検出部240、誤り訂正符号化部250、レートマッチング部260、変調部270および制御部280の機能は、第1および第3の実施の形態で述べた通りである。
【0146】
品質測定部290は、基地局100の送信信号に含まれる既知信号を復調部210から取得し、取得した既知信号に基づいてSRリンクの通信品質を測定する。そして、品質測定部290は、測定結果を示すフィードバック情報を生成し、変調部270に出力する。例えば、通信品質の指標としては、SNRやSINRを用いることができ、フィードバック情報としては、CQIを用いることができる。フィードバック情報は、変調部270を介して、基地局100に送信される。
【0147】
図19は、第4の実施の形態のフォーマット決定処理を示すフローチャートである。この処理は、基地局100において繰り返し実行される。以下、図19に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
【0148】
[ステップS61]制御部160は、移動局300で測定された各リソースブロックのSNRを示すフィードバック情報を取得する。また、SRリンクについてリレー局200aで測定された各リソースブロックのSNRを示すフィードバック情報を取得する。複数の移動局が存在する場合、他の移動局からもフィードバック情報を取得する。
【0149】
[ステップS62]制御部160は、ステップS61で取得した各リソースブロックのSNRに基づいて、移動局300に対し、SDリンクのリソースブロックとRDリンクのリソースブロックとを割り当てる。複数の移動局が存在する場合、他の移動局に対してもリソースブロックを割り当てる。
【0150】
[ステップS63]制御部160は、以下のステップS64〜S72の処理を、基地局100に接続する全ての移動局について実行したか判断する。全ての移動局について実行した場合、処理をステップS73に進める。未実行の移動局がある場合、処理をステップS64に進める。なお、以下のステップS64〜S72の説明では、移動局300についての処理を考える。
【0151】
[ステップS64]制御部160は、移動局300に割り当てたSDリンクのリソースブロックとRDリンクのリソースブロックとのSNR差を計算する。
[ステップS65]制御部160は、ステップS64で計算したSNR差が所定の閾値Th1未満か判断する。閾値Th1未満の場合、処理をステップS66に進める。閾値Th1以上の場合、処理をステップS67に進める。
【0152】
[ステップS66]制御部160は、移動局300宛てのデータに適用するリレー方式としてパリティ選択方式を選択する。その後、処理をステップS68に進める。
[ステップS67]制御部160は、移動局300宛てのデータに適用するリレー方式として単純リピート方式を選択する。その後、処理をステップS68に進める。
【0153】
[ステップS68]制御部160は、ステップS66またはステップS67で選択したリレー方式に対応する計算式を用いて、SDリンクのリソースブロックおよびRDリンクのリソースブロックのSNRから、有効SNRを計算する。
【0154】
[ステップS69]制御部160は、ステップS68で計算した有効SNRに応じて、変調符号化方式を決定する。
[ステップS70]制御部160は、ステップS61で取得したSNRとステップS69で決定した変調符号化方式とから、SRリンクとRDリンクとで達成可能な伝送レートを推定する。そして、制御部160は、SRリンクの伝送レートがRDリンクの伝送レートより小さいか判断する。SRリンクの伝送レートが小さい場合、処理をステップS71に進める。SRリンクの伝送レートが小さくない場合、処理をステップS63に進める。
【0155】
[ステップS71]制御部160は、RDリンクの割り当てリソース量を削減する。例えば、ステップS62で移動局300に複数のリソースブロックを割り当てた場合、割り当てるリソースブロック数を削減する。削減量は、例えば、ステップS70で推定したSRリンクの伝送レートとRDリンクの伝送レートとの差に応じて決定する。
【0156】
[ステップS72]制御部160は、ステップS71で割り当て直したリソースブロックのSNRに応じて、変調符号化方式を再決定する。そして、処理をステップS63に進める。
【0157】
[ステップS73]制御部160は、ステップS62でRDリンク用に割り当てたリソースブロックを示す制御情報を生成する。また、ステップS66またはステップS67で選択したリレー方式を示す制御情報を生成する。生成された制御情報は、変調部140を介して、リレー局200に送信される。
【0158】
このようにして、基地局100は、SRリンクの伝送レートがRDリンクの伝送レートより小さいと判断すると、RDリンクの無線リソースの割り当て量を再調整する。これにより、SRリンクの通信品質が低いために、RDリンクの無線リソースを有効活用できないことを防止できる。
【0159】
図20は、第4の実施の形態のメッセージの流れを示すシーケンス図である。以下、図20に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
[ステップS81]移動局300は、基地局100からの受信信号およびリレー局200aからの受信信号に基づいて、各リソースブロックのSNRを測定する。
【0160】
[ステップS82]移動局300は、ステップS81で測定したSNRに応じたCQIを、フィードバック情報として基地局100に送信する。
[ステップS83]リレー局200aは、基地局100からの受信信号に基づいて、各リソースブロックのSNRを測定する。
【0161】
[ステップS84]リレー局200aは、ステップS83で測定したSNRに応じたCQIを、フィードバック情報として基地局100に送信する。なお、ステップS81,S82の移動局300の処理と、ステップS82,S83のリレー局200aの処理とは、順不同に実行してもよい。
【0162】
[ステップS85]基地局100は、ステップ82で受信したフィードバック情報に基づいて、移動局300にリソースブロックを割り当てる。そして、割り当てたリソースブロックのCQIに基づいて、適切なリレー方式を選択すると共に、適切な変調符号化方式を決定する。また、ステップ84で受信したフィードバック情報に基づいて、RDリンクのリソースブロックの割り当て量を調整する。
【0163】
[ステップS86]基地局100は、ステップS85で割り当てたRDリンクのリソースブロックおよび選択したリレー方式を、リレー局200aに通知する。
[ステップS87]基地局100は、ステップS85で決定した変調符号化方式に従って、データブロックに対し誤り訂正符号化、レートマッチングおよび変調を行い、送信信号を生成する。
【0164】
[ステップS88]基地局100は、ステップS87で生成した送信信号を、SDリンクのリソースブロックを用いて無線出力する。
[ステップS89]リレー局200aは、ステップS88で基地局100が出力した信号を受信し、復調、デレートマッチングおよび復号を行ってデータブロックを再現する。そして、リレー局200aは、データブロックに対して再度、誤り訂正符号化、レートマッチングおよび変調を行って、送信信号を生成する。その際、リレー局200aは、ステップS84で通知されたリレー方式に従ってパンクチャリングを行う。
【0165】
[ステップS90]リレー局200aは、ステップS89で生成した送信信号を、ステップS84で通知されたRDリンクのリソースブロックを用いて無線出力する。
[ステップS91]移動局300は、ステップS88で基地局100から受信した信号およびステップS90でリレー局200aから受信した信号をそれぞれ復調する。そして、移動局300は、各リンクの復調後のビット列を合成して復号する。
【0166】
このようにして、移動局300は、SDリンクおよびRDリンクのCQIを基地局100に報告する。リレー局200aは、SRリンクのCQIを基地局100に報告する。基地局100は、移動局300から報告されたCQIに基づいて、リソースブロックを割り当て、リレー方式を選択し、変調符号化方式を決定する。更に、リレー局200aから報告されたCQIも参照して、割り当てリソース量を調整する。リレー局200aは、基地局100で選択されたリレー方式に従ってデータを中継する。移動局300は、基地局100およびリレー局200aから受信したデータを合成する。
【0167】
第4の実施の形態に係る無線通信システムによれば、基地局100は、SRリンクの通信品質が低くRDリンクの通信品質が高い場合に、RDリンクの割り当てリソース量を削減することができる。削減分の無線リソースは、他の移動局に割り当てることもできる。これにより、SRリンクがボトルネックとなってRDリンクの無線リソースを活用できない事態を回避でき、無線リソースの有効活用が図られる。
【0168】
なお、第4の実施の形態では、基地局100がRDリンクのリソースブロックの割り当てを管理したが、リレー局200aが割り当てを管理してもよい。また、リレー方式は、第2の実施の形態で述べたように、3つの方式(単純リピート方式、複合方式およびパリティ選択方式)から選択してもよい。また、OFDM以外の通信方式を用いた無線通信システムに応用することもできる。
【0169】
[第5の実施の形態]
次に、第5の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。前述の第3の実施の形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については説明を省略する。第5の実施の形態の無線通信システムでは、SDリンクおよびRDリンクの通信品質に応じて、協同ダイバーシティを停止させることができる。
【0170】
第5の実施の形態に係る無線通信システムは、図2に示した第1の実施の形態のものと同様のシステム構成によって実現できる。また、第5の実施の形態に係る基地局、リレー局および移動局は、図3〜5に示した第1の実施の形態のものと同様のブロック構成によって実現できる。ただし、基地局におけるリレー制御の具体的内容が異なる。以下、図2〜5で用いたものと同様の符号を用いて、第5の実施の形態を説明する。
【0171】
図21は、第5の実施の形態のフォーマット決定処理を示すフローチャートである。この処理は、基地局100において繰り返し実行される。以下、図21に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
【0172】
[ステップS101]制御部160は、移動局300で測定された各リソースブロックのSNRを示すフィードバック情報を取得する。複数の移動局が存在する場合、他の移動局からもフィードバック情報を取得する。
【0173】
[ステップS102]制御部160は、ステップS101で取得した各リソースブロックのSNRに基づいて、移動局300に対し、SDリンクのリソースブロックとRDリンクのリソースブロックとを割り当てる。複数の移動局が存在する場合、他の移動局に対してもリソースブロックを割り当てる。
【0174】
[ステップS103]制御部160は、以下のステップS104〜S112の処理を、基地局100に接続する全ての移動局について実行したか判断する。全ての移動局について実行した場合、処理をステップS113に進める。未実行の移動局がある場合、処理をステップS104に進める。なお、以下のステップS104〜S112の説明では、移動局300についての処理を考える。
【0175】
[ステップS104]制御部160は、SDリンクのリソースブロックのSNRが所定の閾値Th3より大きいか判断する。SDリンクで使用可能なリソースブロックが複数ある場合、例えば、SNRの平均値、最小値、最大値などで判断する。閾値Th3より大きい場合、処理をステップS105に進める。閾値Th3以下の場合、SDリンクを用いた協同ダイバーシティを停止すると判断し、処理をステップS112に進める。
【0176】
[ステップS105]制御部160は、移動局300に割り当てたSDリンクのリソースブロックとRDリンクのリソースブロックとのSNR差を計算する。
[ステップS106]制御部160は、ステップS105で計算したSNR差が所定の閾値Th4(Th4<0)未満であるか判断する。すなわち、RDリンクに比べてSDリンクのSNRが十分に大きいか判断する。閾値Th4未満の場合、処理をステップS107に進める。閾値Th4以上の場合、処理をステップS108に進める。
【0177】
[ステップS107]制御部160は、RDリンクを用いた協同ダイバーシティを停止すると判断し、移動局300に対するRDリンクのリソースブロックの割り当てを解放する。そして、処理をステップS112に進める。
【0178】
[ステップS108]制御部160は、ステップS105で計算したSNR差が所定の閾値Th1未満(かつ、閾値Th4以上)か判断する。閾値Th1未満の場合、処理をステップS109に進める。閾値Th1以上の場合、処理をステップS110に進める。
【0179】
[ステップS109]制御部160は、移動局300宛てのデータに適用するリレー方式としてパリティ選択方式を選択する。その後、処理をステップS111に進める。
[ステップS110]制御部160は、移動局300宛てのデータに適用するリレー方式として単純リピート方式を選択する。その後、処理をステップS111に進める。
【0180】
[ステップS111]制御部160は、ステップS109またはステップS110で選択したリレー方式に対応する計算式を用いて、SDリンクのリソースブロックおよびRDリンクのリソースブロックのSNRから、有効SNRを計算する。
【0181】
[ステップS112]制御部160は、協同ダイバーシティを行う場合、ステップS111で計算した有効SNRに応じて、変調符号化方式を決定する。協同ダイバーシティを行わない場合、SDリンクまたはRDリンクのSNRに応じて、変調符号化方式を決定する。そして、処理をステップS103に進める。
【0182】
[ステップS113]制御部160は、ステップS102でRDリンク用に割り当てたリソースブロックを示す制御情報を生成する。ただし、ステップS107でリソースブロックの割り当てを解放した場合は、その旨の制御情報を生成する。また、ステップS109またはステップS110で選択したリレー方式を示す制御情報を生成する。生成された制御情報は、変調部140を介して、リレー局200に送信される。
【0183】
このようにして、基地局100は、RDリンクの通信品質が低くSDリンクの通信品質が高い場合は、RDリンクを用いたデータ中継を行わないよう制御する。また、SDリンクの通信品質が低い場合は、移動局300がSDリンクのビット列を使用せずRDリンクのビット列のみ使用するよう制御する。
【0184】
図22は、第5の実施の形態のリレー停止時のデータ送信を示す図である。この例では、誤り訂正符号化後のデータブロックに含まれる組織ビットとパリティビットとの比が1:2であり、1回のデータ送信でデータブロック長の半分のビット列を送信可能である場合を考える。
【0185】
基地局100は、データブロックから全ての組織ビットと一部のパリティビットとを切り出し、SDリンクの無線リソースを用いて送信する。基地局100が送信したビット列は、リレー局200にも到達するが、リレー局200は復号や再符号化、RDリンクを用いた送信は行わない。移動局300は、基地局100から受信したビット列を復号する。その際、SDリンクの通信品質は良好であり、ブロック誤り率は高くならないと期待できる。なお、リレー局200からの受信信号を復号に使用しないことは、例えば、制御情報により基地局100から移動局300に通知することが考えられる。
【0186】
図23は、第5の実施の形態の直接パス停止時のデータ送信を示す図である。この例では、図22と同様、誤り訂正符号化後のデータブロックに含まれる組織ビットとパリティビットとの比が1:2であり、1回のデータ送信でデータブロック長の半分のビット列を送信可能である場合を考える。
【0187】
基地局100は、データブロックから全ての組織ビットと一部のパリティビットとを切り出し、SDリンクの無線リソースを用いて送信する。リレー局200は、基地局100が送信したビット列を受信し、復号および再符号化を行いRDリンクの無線リソースを用いて送信する。移動局300は、リレー局200から受信したビット列を復号する。その際、RDリンクの通信品質は良好であり、ブロック誤り率は高くならないと期待できる。
【0188】
なお、リレー局200は、パンクチャリングで切り出す部分を変更しなくてもよいし、変更してもよい。前者の場合、復号および再符号化を行わずに、受信信号を中継してもよい。後者の場合、切り出すビット列に組織ビットが含まれていることが好ましい。また、基地局100からの受信信号を復号に使用しないことは、例えば、制御情報により基地局100またはリレー局200から移動局300に通知することが考えられる。
【0189】
また、基地局100と移動局300との間に3つ以上のパスが存在する場合において、1つのパスを使用しないと判断したとき、残りのパスを用いてダイバーシティを継続してもよい。直接パスを使用しない場合、中継パスの中から基準パスを選択し、基準パスのSNRを基準にしてSNR差を計算することが考えられる。基準パスは、例えば、SNRが最も小さいものを選択する。
【0190】
第5の実施の形態に係る無線通信システムによれば、基地局100は、SDリンクおよびRDリンクの通信品質に応じて、協同ダイバーシティを停止することができる。これにより、無線リソースの有効活用が図られる。また、移動局300の受信処理の負荷を軽減することもできる。
【0191】
なお、第5の実施の形態では、基地局100が協同ダイバーシティを行うか否かを制御したが、リレー局200など他の通信装置が制御するようにしてもよい。また、リレー方式は、第2の実施の形態で述べたように、3つの方式(単純リピート方式、複合方式およびパリティ選択方式)から選択してもよい。また、OFDM以外の通信方式を用いた無線通信システムに応用することもできる。
【0192】
[第6の実施の形態]
次に、第6の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。前述の第1の実施の形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については説明を省略する。第6の実施の形態の無線通信システムでは、SNR差を基地局で計算せずに移動局で計算する。
【0193】
第6の実施の形態に係る無線通信システムは、図2に示した第1の実施の形態のものと同様のシステム構成によって実現できる。また、第6の実施の形態に係る基地局およびリレー局は、図3,4に示した第1の実施の形態のものと同様のブロック構成によって実現できる。以下、基地局およびリレー局については、図3,4と同様の符号を用いて、第6の実施の形態を説明する。
【0194】
図24は、第6の実施の形態の移動局を示すブロック図である。第6の実施の形態に係る移動局300bは、復調部310、デレートマッチング部320、誤り訂正復号部330、誤り検出部340、品質測定部350,355、変調部360および制御部370を有する。復調部310、デレートマッチング部320、誤り訂正復号部330、誤り検出部340、品質測定部350,355および変調部360の機能は、第1の実施の形態で述べた通りである。
【0195】
制御部370は、品質測定部350からSDリンクの通信品質の測定結果を取得すると共に、品質測定部355からRDリンクの通信品質の測定結果を取得する。測定結果としては、SNRやSINRなどの指標値を取得してもよいし、指標値に対応するCQIを取得してもよい。そして、制御部370は、2つの測定結果から、SDリンクとRDリンクとの通信品質の差を計算する。例えば、SDリンクのSNRをγ0、RDリンクのSNRをγ1として、SNR差=γ1−γ0を計算する。
【0196】
そして、制御部370は、通信品質の差を示す情報とSDリンクの通信品質を示す情報とを含むフィードバック情報を、変調部360に出力する。フィードバック情報は、変調部360を介して基地局100に無線送信される。なお、通信品質の差を示す情報とSDリンクの通信品質を示す情報とは、纏めて送信してもよいし、異なるタイミングで別個に送信してもよい。また、基地局100で適応変調符号化を行わない場合は、SDリンクの通信品質を示す情報を送信しなくてもよい。
【0197】
図25は、第6の実施の形態のメッセージの流れを示すシーケンス図である。以下、図25に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
[ステップS121]移動局300bは、基地局100からの受信信号に基づいて、SDリンクのSNRを測定する。また、リレー局200からの受信信号に基づいて、RDリンクのSNRを測定する。
【0198】
[ステップS122]移動局300bは、ステップS121の測定結果から、SDリンクとRDリンクとのSNR差を計算する。
[ステップS123]移動局300bは、ステップS122で計算したSNR差を示す情報(例えば、差分を示すCQI)と、ステップS121で測定したSDリンクに応じたCQIとを、フィードバック情報として基地局100に送信する。
【0199】
[ステップS124]基地局100は、受信したフィードバック情報が示すSNR差に基づいて、適切なリレー方式(単純リピート方式またはパリティ選択方式)を選択する。また、SDリンクの通信品質とSNR差に基づいて、適切な変調符号化方式を決定する。
【0200】
[ステップS125]基地局100は、ステップS125で選択したリレー方式をリレー局200に通知する。
[ステップS126]基地局100は、ステップS124で決定した変調符号化方式に従って、データブロックに対し誤り訂正符号化、レートマッチングおよび変調を行い、送信信号を生成する。
【0201】
[ステップS127]基地局100は、ステップS126で生成した送信信号を、SDリンクの無線リソースを用いて無線出力する。
[ステップS128]リレー局200は、ステップS127で基地局100が出力した信号を受信し、ステップS128で通知されたリレー方式に従って中継する。
【0202】
[ステップS129]リレー局200は、ステップS128で生成した送信信号を、RDリンクの無線リソースを用いて無線出力する。
[ステップS130]移動局300bは、ステップS127で基地局100から受信した信号およびステップS129でリレー局200から受信した信号をそれぞれ復調する。そして、移動局300bは、各リンクの復調後のビット列を合成して復号する。
【0203】
このようにして、移動局300bは、SDリンクとRDリンクのSNR差を計算して、基地局100に報告する。基地局100は、移動局300bから報告されたSNR差に基づいてリレー方式を選択し、リレー局200に通知する。リレー局200は、基地局100から通知されたリレー方式に従って、基地局100が送信したデータを中継する。
【0204】
第6の実施の形態に係る無線通信システムによれば、基地局100は、移動局300bから報告されるSNR差に応じて、リレー方式を選択することができる。このため、基地局100の制御の負荷を軽減することができる。なお、リレー方式は、第2の実施の形態で述べたように、3つの方式(単純リピート方式、複合方式およびパリティ選択方式)から選択してもよい。
【0205】
[第7の実施の形態]
次に、第7の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。前述の第1の実施の形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については説明を省略する。第7の実施の形態の無線通信システムでは、HARQ(Hybrid Automatic Repeat reQuest)合成が行われる。すなわち、受信データの復号に失敗したとき、移動局は復号失敗データを破棄せずに保持しておき、その後に受信する再送データと合成して復号する。これにより、再送回数を低減することができる。
【0206】
ここで、再送データのパンクチャリング方法を復号失敗データのパンクチャリング方法と同一にするか否かを、前述のリレー方式と同様の手法で決定することを考える。この観点によれば、前述のSDリンクの無線リソースおよびRDリンクの無線リソースは、互いにタイミングの異なる複数の無線リソースに対応する。第7の実施の形態に係る無線通信システムは、基地局と移動局とで実現できる。ただし、基地局と移動局との間に、リレー局が介在してもよいし、複数のパスが形成されていてもよい。
【0207】
図26は、第7の実施の形態の基地局を示すブロック図である。第7の実施の形態に係る基地局100cは、誤り検出符号化部110、誤り訂正符号化部120、レートマッチング部130、変調部140、復調部150および制御部170を有する。ここで、誤り検出符号化部110、誤り訂正符号化部120、レートマッチング部130、変調部140および復調部150の機能は、第1の実施の形態に係る基地局100と同様である。なお、レートマッチング部130は、再送要求に備え、ACK(ACKnowledgement)を受信するまで、誤り訂正符号化後のデータブロックを一時的に保持しておく。
【0208】
制御部170は、誤り訂正符号化部120、レートマッチング部130および変調部140を制御する。制御部170は、フォーマット制御部171および再送制御部172を有する。
【0209】
フォーマット制御部171は、復調部150から取得した通信品質を示すフィードバック情報に基づいて、変調符号化方式を決定する。また、フォーマット制御部171は、フィードバック情報に基づいて、再送パターンを決定する。すなわち、再送時のパンクチャリング方法を、前回送信時のパンクチャリング方法と同一にするかを決定する。
【0210】
再送制御部172は、HARQの再送制御を行う。具体的には、復調部150から移動局300cが送信したACKを取得すると、次のデータブロックを送信するようレートマッチング部130に指示する。一方、移動局300cが送信したNACK(Negative ACKnowledgement)を取得すると、前回送信したデータブロックを再送するようレートマッチング部130に指示する。その際、再送制御部172は、フォーマット制御部171で決定したパンクチャリング方法を指定する。
【0211】
図27は、第7の実施の形態の移動局を示すブロック図である。第7の実施の形態に係る移動局300cは、復調部310、デレートマッチング部320、HARQ合成部325、誤り訂正復号部330、誤り検出部340、変調部360、品質測定部380、品質推定部385および再送制御部390を有する。ここで、復調部310、デレートマッチング部320、誤り訂正復号部330、誤り検出部340および変調部360の機能は、第1の実施の形態に係る移動局300と同様である。
【0212】
HARQ合成部325は、デレートマッチング部320からデータブロックのビット列を取得する。そのデータブロックについての初回受信時である場合、HARQ合成部325は、取得したビット列を所定のメモリに一時的に記憶すると共に、誤り訂正復号部330に出力する。一方、そのデータブロックについての2回目以降の受信時(再送時)である場合、保持しているビット列とデレートマッチング部320から取得したビット列とを合成し、メモリに一時的に記憶しているビット列を更新すると共に、誤り訂正復号部330に出力する。
【0213】
HARQ合成の方法は、基地局100cが行うパンクチャリング方法によって異なる。例えば、前回送信時と再送時とで、データブロックの同一部分が切り出された場合、2つのビット列を重ね合わせる(単純リピート方式)。一方、データブロックの異なる部分が切り出された場合、2つのビット列を結合する(パリティ選択方式)。なお、第1の実施の形態で述べたように、異なる部分が切り出される場合には、一部ビットが重複する場合を含んでもよい。
【0214】
品質測定部380は、復調部310から取得した既知信号に基づいて、下り方向(基地局100cから移動局300cへの通信方向)の通信品質を測定する。そして、品質測定部380は、測定結果を品質推定部385に出力する。なお、測定結果は、SNRやSINRなどの指標値で表してもよいし、CQIで表してもよい。
【0215】
品質推定部385は、再送信が行われるとした場合に再送データを受信すると考えられるタイミング(例えば、所定時間後)の通信品質を、品質測定部380から取得した通信品質の測定結果に基づいて推定する。例えば、品質推定部385は、所定時間前までの通信品質の履歴を保持しておき、通信品質の変化傾向から、未来の通信品質を推定する。そして、品質推定部385は、現在の通信品質の測定結果と未来の通信品質の推定結果とを示すフィードバック情報を、変調部360に出力する。
【0216】
なお、現在の通信品質の測定結果と未来の通信品質の推定結果とは、同一タイミングで纏めて送信してもよいし、異なるタイミングで別個に送信してもよい。また、未来の通信品質の推定結果は、再送要求を行う場合のみ、基地局100cに報告してもよい。また、現在の通信品質の測定結果は、再送状況に拘わらず、継続的に送信してもよい。
【0217】
再送制御部390は、誤り検出部340から、データブロックに対する誤り検出結果を取得する。データブロックに誤りが検出された場合、再送を要求するため、NACKを示す信号を変調部360に出力する。誤りが検出されなかった場合、ACKを示す信号を変調部360に出力する。これにより、データブロックに対するACKまたはNACKが、基地局100cに報告される。
【0218】
図28は、第7の実施の形態のフォーマット決定処理を示すフローチャートである。この処理は、基地局100cにおいて繰り返し実行される。以下、図28に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
【0219】
[ステップS131]制御部170は、移動局300cで測定されたSNRと推定された未来のSNR(例えば、再送予定時のSNR)とを示すフィードバック情報を取得する。測定されたSNRの情報と推定されたSNRの情報とは、同一タイミングで纏めて取得する場合もあるし、異なるタイミングで別個に取得する場合もある。
【0220】
[ステップS132]制御部170は、再送(第2の送信)とその前の送信(第1の送信)との間のSNR差を計算する。すなわち、第1の送信の際のSNRをγ0、第2の送信の際のSNRをγ1として、SNR差=γ1−γ0を計算する。
【0221】
[ステップS133]制御部170は、ステップS132で計算したSNR差が所定の閾値Th1未満か判断する。閾値Th1未満の場合、処理をステップS134に進める。閾値Th1以上の場合、処理をステップS135に進める。
【0222】
[ステップS134]制御部170は、再送パターンとしてパリティ選択方式を選択する。その理由は、第1の実施の形態におけるリレー方式の選択の場合と同様である。その後、処理をステップS136に進める。
【0223】
[ステップS135]制御部170は、再送パターンとして単純リピート方式を選択する。その理由は、第1の実施の形態におけるリレー方式の選択の場合と同様である。その後、処理をステップS136に進める。
【0224】
[ステップS136]制御部170は、ステップS134またはステップS135で選択した再送パターンに対応する計算式を用いて、有効SNRを計算する。有効SNRの計算式としては、例えば、前述の式(2)および式(3)を用いることができる。
【0225】
[ステップS137]制御部170は、ステップS136で計算した有効SNRに応じて、変調符号化方式を決定する。制御部170は、決定した変調符号化方式に従って、誤り訂正符号化部120、レートマッチング部130および変調部140を制御する。
【0226】
このようにして、基地局100cは、移動局300cから第1の送信および第2の送信(再送信)に対応するSNRの情報を取得する。そして、SNR差に応じて、単純リピート方式またはパリティ選択方式を選択する。基地局100cは、単純リピート方式を選択した場合、第2の送信で第1の送信と同じ部分をデータブロックから抽出し、パリティ選択方式を選択した場合、第1の送信と異なる部分をデータブロックから抽出する。なお、再送パターンの選択は、再送時毎に行ってもよいし、間欠的(定期または不定期)に行ってもよい。
【0227】
図29は、第7の実施の形態のメッセージの流れを示すシーケンス図である。この例では、基地局100cから移動局300cへの1回目のデータ送信でビット誤りが生じ、その後、同じデータブロックについて2回目のデータ送信(再送信)を行う場合を考える。以下、図29に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
【0228】
[ステップS141]移動局300cは、基地局100cからの受信信号に基づいて、現在のSNRを測定する。
[ステップS142]移動局300cは、ステップS141で測定したSNRに応じたCQIを、フィードバック情報として基地局100cに送信する。
【0229】
[ステップS143]基地局100cは、データブロックに対し誤り訂正符号化、レートマッチングおよび変調を行い、送信信号を生成する。適応変調符号化を行う場合、基地局100cは、ステップS142で受信したフィードバック情報に基づいて、適切な変調符号化方式を決定することもできる。
【0230】
[ステップS144]基地局100cは、ステップS143で生成した送信信号を、下りリンクの無線リソースを用いて無線出力する。
[ステップS145]移動局300cは、ステップS144で基地局100cが出力した信号を受信し、復調、デレートマッチングおよび復号を行う。そして、得られたデータブロックに対し誤り検出を行う。
【0231】
[ステップS146]移動局300cは、ステップS145でデータブロックの誤りが検出されると、基地局100cに対し再送要求を行う。
[ステップS147]移動局300cは、基地局100cからの受信信号に基づいて、現在のSNRを測定する。そして、現在のSNRから再送データの受信時のSNRを推定する。
【0232】
[ステップS148]移動局300cは、ステップS147で推定したSNRに応じたCQIを、フィードバック情報として基地局100cに送信する。
[ステップS149]基地局100cは、ステップS142で報告されたSNR(初回送信時のSNR)とステップS148で報告されたSNR(再送時のSNR)との差に基づいて、適切な再送パターン(単純リピート方式またはパリティ選択方式)を選択する。
【0233】
[ステップS150]基地局100cは、再送するデータブロックに対しレートマッチングおよび変調を行い、送信信号を生成する。その際、基地局100cは、ステップS149で選択した再送パターンに従って、パンクチャリングを行う。
【0234】
[ステップS151]基地局100cは、ステップS150で生成した送信信号を、下りリンクの無線リソース(ステップS144で用いたものより遅いタイイングの無線リソース)を用いて無線出力する。
【0235】
[ステップS152]移動局300cは、ステップS151で基地局100cが出力した信号を受信し復調する。そして、復調後のビット列とステップS145で得た誤りを含むビット列とをHARQ合成して復号する。HARQ合成では、再送パターンに応じて、ビット列の重ね合わせや結合を行う。
【0236】
このようにして、移動局300cは、データブロックの誤りを検出すると、再送時のSNRを推定して、CQIを基地局100cに報告する。基地局100cは、移動局300cによって推定されたCQIと前回報告されたCQIとに基づいて再送パターンを選択する。そして、その再送パターンに従って、データブロックのパンクチャリングを行う。移動局300cは、前回のビット列と再送されたビット列とをHARQ合成して復号する。
【0237】
図30は、第7の実施の形態の単純リピート方式のデータ送信を示す図である。この例では、基地局100cが再送パターンとして単純リピート方式を選択した場合を考える。また、誤り訂正符号化後のデータブロックに含まれる組織ビットとパリティビットとの比が1:2であり、1回のデータ送信でデータブロック長の半分のビット列を送信可能である場合を考える。
【0238】
基地局100cは、初回のパンクチャリングにおいて、データブロックから全ての組織ビットと一部のパリティビットとを切り出し、初回送信時の無線リソースを用いて切り出したビット列を送信する。その後、移動局300cから再送要求がなされると、基地局100cは、2回目のパンクチャリングにおいて、初回と同一部分のビット列(全ての組織ビットおよび一部のパリティビット)を切り出す。そして、再送時の無線リソースを用いて切り出したビット列を送信する。
【0239】
移動局300cは、基地局100cから再送信号を受信すると、初回受信時のビット列と2回目受信時のビット列とを重ね合わせて(例えば、受信レベルを加算して)、HARQ合成後のビット列を復号する。これにより、移動局300cでは、HARQ合成による利得としてダイバーシティに基づく利得を得ることができ、再送回数を低減することができる。なお、移動局300cが受信するビット列には、全ての組織ビットが含まれていることが好ましい。
【0240】
図31は、第7の実施の形態のパリティ選択方式のデータ送信を示す図である。この例では、基地局100cが再送パターンとしてパリティ選択方式を選択した場合を考える。また、図30と同様、誤り訂正符号化後のデータブロックに含まれる組織ビットとパリティビットとの比が1:2であり、1回のデータ送信でデータブロック長の半分のビット列を送信可能である場合を考える。
【0241】
基地局100cは、初回のパンクチャリングにおいて、データブロックから全ての組織ビットと一部のパリティビットとを切り出し、初回送信時の無線リソースを用いて切り出したビット列を送信する。その後、移動局300cから再送要求がなされると、基地局100cは、2回目のパンクチャリングにおいて、初回に選択されなかった部分のビット列(残りのパリティビット)を切り出す。そして、再送時の無線リソースを用いて切り出したビット列を送信する。
【0242】
移動局300cは、基地局100cから再送信号を受信すると、初回受信時のビット列と2回目受信時のビット列とを結合して(例えば、初回受信時のビット列の後ろに2回目受信時のビット列を並べて1つのビット列とし)、HARQ合成後のビット列を復号する。これにより、移動局300cでは、HARQ合成による利得として高い符号化利得を得ることができ、再送回数を低減することができる。なお、移動局300cが受信するビット列には、全ての組織ビットが含まれていることが好ましい。
【0243】
図32は、第7の実施の形態の他のメッセージの流れを示すシーケンス図である。この例では、再送パターンを選択するタイミングが、図29の場合と異なる。以下、図32に示す処理をステップ番号に沿って説明する。
【0244】
[ステップS161]移動局300cは、基地局100cからの受信信号に基づいて、現在のSNRを測定する。また、移動局300cは、再送データを受信する可能性のあるタイミングにおけるSNRを現在のSNRから推定する。
【0245】
[ステップS162]移動局300cは、ステップS161で測定したSNRに応じたCQIと推定したSNRに応じたCQIとを、フィードバック情報として基地局100cに送信する。2つのCQIは、同時に纏めて送信してもよいし、別個に送信してもよい。
【0246】
[ステップS163]基地局100cは、ステップS162で報告された現在のSNR再送時のSNRとの差に基づいて、適切な再送パターン(単純リピート方式またはパリティ選択方式)を選択する。
【0247】
[ステップS164]基地局100cは、データブロックに対し誤り訂正符号化、レートマッチングおよび変調を行い、送信信号を生成する。
[ステップS165]基地局100cは、ステップS164で生成した送信信号を、下りリンクの無線リソースを用いて無線出力する。
【0248】
[ステップS166]移動局300cは、ステップS165で基地局100cが出力した信号を受信し、復調、デレートマッチングおよび復号を行う。そして、得られたデータブロックに対し誤り検出を行う。
【0249】
[ステップS167]移動局300cは、ステップS166でデータブロックの誤りが検出されると、基地局100cに対し再送要求を行う。
[ステップS168]基地局100cは、再送するデータブロックに対しレートマッチングおよび変調を行い、送信信号を生成する。その際、基地局100cは、ステップS163で選択した再送パターンに従って、パンクチャリングを行う。
【0250】
[ステップS169]基地局100cは、ステップS168で生成した送信信号を、下りリンクの無線リソース(ステップS165で用いたものより遅いタイミングの無線リソース)を用いて無線出力する。
【0251】
[ステップS170]移動局300cは、ステップS169で基地局100cが出力した信号を受信し復調する。そして、復調後のビット列とステップS166で得た誤りを含むビット列とをHARQ合成して復号する。
【0252】
このようにして、移動局300cは、再送要求前に予め未来のSNRを推定しておき、基地局100cは、初回送信前に再送パターンを選択する。これにより、再送およびHRQ合成を考慮して、初回送信時のパンクチャリングで切り出す部分を最適化することが可能となる。
【0253】
第7の実施の形態に係る無線通信システムによれば、移動局300cは、前回の復号誤りデータと再送データとをHARQ合成して復号することができる。その場合、前回送信時の通信品質と再送時の通信品質との差に応じて、適切な再送パターン(例えば、単純リピート方式またはパリティ選択方式)が選択される。その結果、HARQ合成を行うことで得られる利得が向上し、再送回数が低減し、より高いスループットを達成できる。
【0254】
なお、第7の実施の形態では、移動局300cが再送時の通信品質を推定したが、基地局100cが推定を行ってもよい。また、基地局100cと移動局300cとの間に複数のパスを形成する場合、再送信を前回の送信と異なるパスを用いて行ってもよい。また、第7の実施の形態では、下りデータ通信について説明したが、上記HARQ制御は、移動局300cから基地局100cへの上りデータ通信にも応用できる。また、再送パターンは、第2の実施の形態で述べたように、3つの方式(単純リピート方式、複合方式およびパリティ選択方式)から選択してもよい。また、第3の実施の形態で述べたように、リソースブロック単位でリソース割り当てを行う無線通信システムに応用することもできる。
【0255】
上記第1〜第7の実施の形態を含む実施の形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1) 符号化により得られたデータブロックの一部である第1のデータおよび第2のデータを受信し前記第1のデータおよび前記第2のデータを合成して復号する受信装置と通信を行う通信装置であって、
前記第1のデータの送信に用いる第1のリソースと前記第2のデータの送信に用いる第2のリソースとの間の通信品質の差を求め、前記通信品質の差に応じて、前記第2のデータが前記第1のデータと重複した部分を含む割合を制御する制御部、
を有することを特徴とする通信装置。
【0256】
(付記2) 前記割合は、100%、0%およびX%(0<X<100)を含むことを特徴とする付記1記載の通信装置。
(付記3) 前記制御部は、前記通信品質の差が所定の閾値より小さい場合は前記割合を0%とし、前記通信品質の差が前記所定の閾値以上の場合は前記割合を100%とすることを特徴とする付記1記載の通信装置。
【0257】
(付記4) 前記制御部は、前記通信品質の差が所定の第1の閾値より小さい場合は前記割合を0%とし、前記通信品質の差が前記所定の第1の閾値以上で所定の第2の閾値より小さい場合は前記割合をX%(0<X<100)とし、前記通信品質の差が前記所定の第2の閾値以上の場合は前記割合を100%とすることを特徴とする付記1記載の通信装置。
【0258】
(付記5) 前記第1のデータを前記第1のリソースを用いて送信すると共に、前記第2のデータを前記第2のリソースを用いて送信する他の通信装置に対して前記割合を通知する送信部を更に有することを特徴とする付記1記載の通信装置。
【0259】
(付記6) 前記第1のデータを前記第1のリソースを用いて送信し、前記受信装置から再送要求を受けた場合に、前記割合に基づいて前記第2のデータを前記第1のリソースより遅いタイミングである前記第2のリソースを用いて送信する送信部を更に有することを特徴とする付記1記載の通信装置。
【0260】
(付記7) 前記制御部は、前記送信部が前記第1のデータを送信した後であって前記第2のデータを送信する前に前記割合を決定することを特徴とする付記6記載の通信装置。
【0261】
(付記8) 前記制御部は、前記送信部が前記第1のデータを送信する前に前記割合を決定することを特徴とする付記6記載の通信装置。
(付記9) 前記制御部は、前記割合に応じた推定方法を用いて、前記第1のデータおよび前記第2のデータの送信を含む前記データブロックについての送信全体の通信品質を推定し、前記第1のデータおよび前記第2のデータの送信に用いる符号化変調方式を決定することを特徴とする付記1記載の通信装置。
【0262】
(付記10) 前記第1のリソースおよび前記第2のリソースそれぞれの通信品質の情報を前記受信装置から取得する受信部を更に有し、
前記制御部は、前記受信部が取得した前記通信品質の情報に基づいて前記通信品質の差を求めることを特徴とする付記1記載の通信装置。
【0263】
(付記11) 前記第1のリソースおよび前記第2のリソースの少なくとも一方として使用可能なリソースブロックそれぞれの通信品質の情報を前記受信装置から取得する受信部を更に有し、
前記制御部は、前記受信装置に対する前記リソースブロックの割り当て状況と前記受信部が取得した前記通信品質の情報とに基づいて前記通信品質の差を求めることを特徴とする付記1記載の通信装置。
【0264】
(付記12) 前記受信装置で測定された前記通信品質の差の情報を前記受信装置から取得する受信部を更に有し、
前記制御部は、前記受信部が取得した前記通信品質の差の情報に基づいて前記割合を制御する、
ことを特徴とする付記1記載の通信装置。
【0265】
(付記13) 前記データブロックは、組織ビットおよびパリティビットを含み、
前記制御部は、前記第1のデータには少なくとも前記組織ビットが含まれ、前記第2のデータには少なくとも前記パリティビットが含まれるよう制御することを特徴とする付記1記載の通信装置。
【0266】
(付記14) 符号化により得られたデータブロックの一部である第1のデータおよび第2のデータを受信し前記第1のデータおよび前記第2のデータを合成して復号する受信装置と通信を行う通信システムであって、
前記第1のデータの送信に用いる第1のリソースと前記第2のデータの送信に用いる第2のリソースとの間の通信品質の差を求め、前記通信品質の差に応じて、前記第2のデータが前記第1のデータと重複した部分を含む割合を制御する制御部と、前記第1のデータを前記第1のリソースを用いて送信すると共に、前記割合を示す制御情報を送信する送信部とを備える送信装置と、
前記送信装置から前記第1のデータおよび前記制御情報を受信し、前記第1のデータから前記データブロックを復元し、前記データブロックのうち前記制御情報が示す前記割合に応じた部分を前記第2のデータとして前記第2のリソースを用いて送信する中継装置と、
を有することを特徴とする通信システム。
【0267】
(付記15) 前記制御部は、前記第1のリソースの通信品質が前記第2のリソースの通信品質よりも高い場合、前記中継装置による前記第2のデータの送信を停止させることを特徴とする付記14記載の通信システム。
【0268】
(付記16) 前記制御部は、前記第1のリソースの通信品質が所定の閾値より小さい場合、前記受信装置が前記第1のデータを用いて合成および復号を行うことを停止させることを特徴とする付記14記載の通信システム。
【0269】
(付記17) 前記制御部は、前記受信装置に対して前記第1のリソースおよび前記第2のリソースとしてリソースブロックを割り当て、前記リソースブロックの割り当て結果に基づいて前記送信装置と前記中継装置との間の第1の送信レートと前記中継装置と前記受信装置との間の第2の送信レートとを推定し、前記第1の送信レートが前記第2の送信レートより小さい場合、前記第2のリソースとしての前記リソースブロックの割り当て量を減らすことを特徴とする付記14記載の通信システム。
【0270】
(付記18) 符号化により得られたデータブロックの一部である第1のデータおよび第2のデータを受信し前記第1のデータおよび前記第2のデータを合成して復号する受信装置と通信を行う通信システムの通信方法であって、
前記第1のデータの送信に用いる第1のリソースと前記第2のデータの送信に用いる第2のリソースとの間の通信品質の差を求め、
前記通信品質の差に応じて、前記第2のデータが前記第1のデータと重複した部分を含む割合を制御し、
前記割合に従って、前記第1のデータを前記第1のリソースを用いて送信し、前記第2のデータを前記第2のリソースを用いて送信する、
ことを特徴とする通信方法。
【図面の簡単な説明】
【0271】
【図1】本実施の形態に係る通信装置を示す図である。
【図2】第1の実施の形態の無線通信システムの構成を示す図である。
【図3】第1の実施の形態の基地局を示すブロック図である。
【図4】第1の実施の形態のリレー局を示すブロック図である。
【図5】第1の実施の形態の移動局を示すブロック図である。
【図6】第1の実施の形態のフォーマット決定処理を示すフローチャートである。
【図7】第1の実施の形態のメッセージの流れを示すシーケンス図である。
【図8】第1の実施の形態の単純リピート方式のデータ送信を示す図である。
【図9】第1の実施の形態のパリティ選択方式のデータ送信を示す図である。
【図10】第1の実施の形態の他のフォーマット例を示す図である。
【図11】第2の実施の形態のフォーマット決定処理を示すフローチャートである。
【図12】第2の実施の形態の複合方式のデータ送信を示す図である。
【図13】リレー方式とブロック誤り率との関係を示す第1の図である。
【図14】リレー方式とブロック誤り率との関係を示す第2の図である。
【図15】第3の実施の形態のOFDMのフレーム構造例を示す図である。
【図16】第3の実施の形態のフォーマット決定処理を示すフローチャートである。
【図17】第3の実施の形態のメッセージの流れを示すシーケンス図である。
【図18】第4の実施の形態のリレー局を示すブロック図である。
【図19】第4の実施の形態のフォーマット決定処理を示すフローチャートである。
【図20】第4の実施の形態のメッセージの流れを示すシーケンス図である。
【図21】第5の実施の形態のフォーマット決定処理を示すフローチャートである。
【図22】第5の実施の形態のリレー停止時のデータ送信を示す図である。
【図23】第5の実施の形態の直接パス停止時のデータ送信を示す図である。
【図24】第6の実施の形態の移動局を示すブロック図である。
【図25】第6の実施の形態のメッセージの流れを示すシーケンス図である。
【図26】第7の実施の形態の基地局を示すブロック図である。
【図27】第7の実施の形態の移動局を示すブロック図である。
【図28】第7の実施の形態のフォーマット決定処理を示すフローチャートである。
【図29】第7の実施の形態のメッセージの流れを示すシーケンス図である。
【図30】第7の実施の形態の単純リピート方式のデータ送信を示す図である。
【図31】第7の実施の形態のパリティ選択方式のデータ送信を示す図である。
【図32】第7の実施の形態の他のメッセージの流れを示すシーケンス図である。
【符号の説明】
【0272】
1 通信装置
1a 制御部
1b 送信部
2 受信装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
符号化により得られたデータブロックの一部である第1のデータおよび第2のデータを受信し前記第1のデータおよび前記第2のデータを合成して復号する受信装置と通信を行う通信装置であって、
前記第1のデータの送信に用いる第1のリソースと前記第2のデータの送信に用いる第2のリソースとの間の通信品質の差を求め、前記通信品質の差に応じて、前記第2のデータが前記第1のデータと重複した部分を含む割合を制御する制御部、
を有することを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記割合は、100%、0%およびX%(0<X<100)を含むことを特徴とする請求項1記載の通信装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記通信品質の差が所定の閾値より小さい場合は前記割合を0%とし、前記通信品質の差が前記所定の閾値以上の場合は前記割合を100%とすることを特徴とする請求項1記載の通信装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記通信品質の差が所定の第1の閾値より小さい場合は前記割合を0%とし、前記通信品質の差が前記所定の第1の閾値以上で所定の第2の閾値より小さい場合は前記割合をX%(0<X<100)とし、前記通信品質の差が前記所定の第2の閾値以上の場合は前記割合を100%とすることを特徴とする請求項1記載の通信装置。
【請求項5】
前記第1のデータを前記第1のリソースを用いて送信すると共に、前記第2のデータを前記第2のリソースを用いて送信する他の通信装置に対して前記割合を通知する送信部を更に有することを特徴とする請求項1記載の通信装置。
【請求項6】
前記第1のデータを前記第1のリソースを用いて送信し、前記受信装置から再送要求を受けた場合に、前記割合に基づいて前記第2のデータを前記第1のリソースより遅いタイミングである前記第2のリソースを用いて送信する送信部を更に有することを特徴とする請求項1記載の通信装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記割合に応じた推定方法を用いて、前記第1のデータおよび前記第2のデータの送信を含む前記データブロックについての送信全体の通信品質を推定し、前記第1のデータおよび前記第2のデータの送信に用いる符号化変調方式を決定することを特徴とする請求項1記載の通信装置。
【請求項8】
符号化により得られたデータブロックの一部である第1のデータおよび第2のデータを受信し前記第1のデータおよび前記第2のデータを合成して復号する受信装置と通信を行う通信システムであって、
前記第1のデータの送信に用いる第1のリソースと前記第2のデータの送信に用いる第2のリソースとの間の通信品質の差を求め、前記通信品質の差に応じて、前記第2のデータが前記第1のデータと重複した部分を含む割合を制御する制御部と、前記第1のデータを前記第1のリソースを用いて送信すると共に、前記割合を示す制御情報を送信する送信部とを備える送信装置と、
前記送信装置から前記第1のデータおよび前記制御情報を受信し、前記第1のデータから前記データブロックを復元し、前記データブロックのうち前記制御情報が示す前記割合に応じた部分を前記第2のデータとして前記第2のリソースを用いて送信する中継装置と、
を有することを特徴とする通信システム。
【請求項9】
前記制御部は、前記第1のリソースの通信品質が前記第2のリソースの通信品質よりも高い場合、前記中継装置による前記第2のデータの送信を停止させることを特徴とする請求項8記載の通信システム。
【請求項10】
前記制御部は、前記第1のリソースの通信品質が所定の閾値より小さい場合、前記受信装置が前記第1のデータを用いて合成および復号を行うことを停止させることを特徴とする請求項8記載の通信システム。
【請求項11】
符号化により得られたデータブロックの一部である第1のデータおよび第2のデータを受信し前記第1のデータおよび前記第2のデータを合成して復号する受信装置と通信を行う通信システムの通信方法であって、
前記第1のデータの送信に用いる第1のリソースと前記第2のデータの送信に用いる第2のリソースとの間の通信品質の差を求め、
前記通信品質の差に応じて、前記第2のデータが前記第1のデータと重複した部分を含む割合を制御し、
前記割合に従って、前記第1のデータを前記第1のリソースを用いて送信し、前記第2のデータを前記第2のリソースを用いて送信する、
ことを特徴とする通信方法。
【請求項1】
符号化により得られたデータブロックの一部である第1のデータおよび第2のデータを受信し前記第1のデータおよび前記第2のデータを合成して復号する受信装置と通信を行う通信装置であって、
前記第1のデータの送信に用いる第1のリソースと前記第2のデータの送信に用いる第2のリソースとの間の通信品質の差を求め、前記通信品質の差に応じて、前記第2のデータが前記第1のデータと重複した部分を含む割合を制御する制御部、
を有することを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記割合は、100%、0%およびX%(0<X<100)を含むことを特徴とする請求項1記載の通信装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記通信品質の差が所定の閾値より小さい場合は前記割合を0%とし、前記通信品質の差が前記所定の閾値以上の場合は前記割合を100%とすることを特徴とする請求項1記載の通信装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記通信品質の差が所定の第1の閾値より小さい場合は前記割合を0%とし、前記通信品質の差が前記所定の第1の閾値以上で所定の第2の閾値より小さい場合は前記割合をX%(0<X<100)とし、前記通信品質の差が前記所定の第2の閾値以上の場合は前記割合を100%とすることを特徴とする請求項1記載の通信装置。
【請求項5】
前記第1のデータを前記第1のリソースを用いて送信すると共に、前記第2のデータを前記第2のリソースを用いて送信する他の通信装置に対して前記割合を通知する送信部を更に有することを特徴とする請求項1記載の通信装置。
【請求項6】
前記第1のデータを前記第1のリソースを用いて送信し、前記受信装置から再送要求を受けた場合に、前記割合に基づいて前記第2のデータを前記第1のリソースより遅いタイミングである前記第2のリソースを用いて送信する送信部を更に有することを特徴とする請求項1記載の通信装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記割合に応じた推定方法を用いて、前記第1のデータおよび前記第2のデータの送信を含む前記データブロックについての送信全体の通信品質を推定し、前記第1のデータおよび前記第2のデータの送信に用いる符号化変調方式を決定することを特徴とする請求項1記載の通信装置。
【請求項8】
符号化により得られたデータブロックの一部である第1のデータおよび第2のデータを受信し前記第1のデータおよび前記第2のデータを合成して復号する受信装置と通信を行う通信システムであって、
前記第1のデータの送信に用いる第1のリソースと前記第2のデータの送信に用いる第2のリソースとの間の通信品質の差を求め、前記通信品質の差に応じて、前記第2のデータが前記第1のデータと重複した部分を含む割合を制御する制御部と、前記第1のデータを前記第1のリソースを用いて送信すると共に、前記割合を示す制御情報を送信する送信部とを備える送信装置と、
前記送信装置から前記第1のデータおよび前記制御情報を受信し、前記第1のデータから前記データブロックを復元し、前記データブロックのうち前記制御情報が示す前記割合に応じた部分を前記第2のデータとして前記第2のリソースを用いて送信する中継装置と、
を有することを特徴とする通信システム。
【請求項9】
前記制御部は、前記第1のリソースの通信品質が前記第2のリソースの通信品質よりも高い場合、前記中継装置による前記第2のデータの送信を停止させることを特徴とする請求項8記載の通信システム。
【請求項10】
前記制御部は、前記第1のリソースの通信品質が所定の閾値より小さい場合、前記受信装置が前記第1のデータを用いて合成および復号を行うことを停止させることを特徴とする請求項8記載の通信システム。
【請求項11】
符号化により得られたデータブロックの一部である第1のデータおよび第2のデータを受信し前記第1のデータおよび前記第2のデータを合成して復号する受信装置と通信を行う通信システムの通信方法であって、
前記第1のデータの送信に用いる第1のリソースと前記第2のデータの送信に用いる第2のリソースとの間の通信品質の差を求め、
前記通信品質の差に応じて、前記第2のデータが前記第1のデータと重複した部分を含む割合を制御し、
前記割合に従って、前記第1のデータを前記第1のリソースを用いて送信し、前記第2のデータを前記第2のリソースを用いて送信する、
ことを特徴とする通信方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【公開番号】特開2010−103638(P2010−103638A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−271270(P2008−271270)
【出願日】平成20年10月21日(2008.10.21)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月21日(2008.10.21)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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