説明

通信装置、通信システム及び通信方法

【課題】通信接続の確立前に送信電力の制御を行う通信装置、通信システム及び通信方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る通信装置103は、無線信号を送受信する送受信部111と、相手通信装置が接続要求時に送信した無線信号と既知信号との相関値を算出し、算出された相関値から推定される通信環境に基づいて、相手通信装置の次の送信時に必要な送信電力値を算出し、当該算出された送信電力値を無線信号に含めて送受信部111に送信させる制御部117とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置、通信システム及び通信方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access:直交周波数分割多元接続)といったマルチキャリア方式が採用された通信システムとして、LTE(Long Term Evolution)システムや次世代PHS(Personal Handy-phone System)であるXGP(eXtended Global Platform)システムが知られている。
【0003】
ここで、XGPシステムにおける通信装置である基地局及び移動局の間の通信が実現されるまでの流れについて説明する(例えば、特許文献1参照)。まず、移動局は、基地局からの定期的なダウンリンク報知情報の受信により受信タイミングの同期をとる。そして、移動局は、レンジング信号の送信によって、送信タイミングの同期をとる。その後、基地局は、移動局からの無線チャネル割当要求信号の受信により、当該移動局に無線チャネルを割り当て、基地局と移動局との間の通信接続が確立される。通信接続の確立後、基地局は、移動局が送信した所望波の受信電界強度(RSSI:Received Signal Strength Indicator)を測定し、移動局の送信電力の増減の必要性について判断する。そして、基地局は、判断結果に基づき、送信電力の増減を移動局に指示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献1】ARIB STD-T95 Version 1.2 「OFDMA/TDMA TDD Broadband Wireless Access System (Next Generation PHS) ARIB STANDARD」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
つまり、移動局の送信電力の制御は、移動局と基地局との間の通信接続が確立されるまでは、行われないことになる。そのため、通信接続の確立前は、送信電力が不足していたとしても、移動局は小さい送信電力で無線信号(例えば、レンジング信号や無線チャネル割当要求信号)を送り続けることになる。送信電力が足りないと、無線信号が正しく基地局に伝わりにくくなり、通信エラーが発生しやすくなる。ひいては、通信接続の確立が困難になる。このような状況は、移動局が弱電界領域(例えば、セルエッジ付近)に位置する場合に特に顕著となる。
【0006】
従って、上記のような問題点に鑑みてなされた本発明の目的は、通信接続の確立前に送信電力の制御を行う通信装置、通信システム及び通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した諸課題を解決すべく、第1の発明による通信装置は、
無線信号を送受信する送受信部と、
相手通信装置が接続要求時に送信した無線信号と既知信号との相関値を算出し、前記算出された相関値から推定される通信環境に基づいて、前記相手通信装置の次の送信時に必要な送信電力値を算出し、当該算出された送信電力値を無線信号に含めて前記送受信部に送信させる制御部と
を備える通信装置である。
【0008】
また、前記接続要求時の前記無線信号はレンジング信号であることが望ましい。
【0009】
また、本発明の第1の発明を通信システムとして実現させた通信システムは、
第1通信装置と、当該通信装置との通信を希望する第2通信装置とから構成される通信システムであって、
前記第1通信装置は、
無線信号を送受信する第1送受信部と、
前記第2通信装置が接続要求時に送信した無線信号における相関値を算出し、前記算出された相関値から推定される通信環境に基づいて、前記第2通信装置の次の送信時に必要な送信電力値を算出し、当該算出された送信電力値を無線信号に含めて前記送受信部に送信させる第1制御部と
を備え、
前記第2通信装置は、
無線信号を送受信する第2送受信部と、
前記第2送受信部が前記送信電力値を含む前記無線信号を受信すると、当該送信電力値に基づき送信電力を制御する第2制御部と
を備える通信システムである。
【0010】
本発明の第1の発明を方法として実現させた通信方法は、
相手通信装置の送信電力を制御する通信装置における通信方法において、
相手通信装置が接続要求時に送信した無線信号における相関値を算出するステップと、
前記算出された相関値から推定される通信環境に基づいて、前記相手通信装置の次の送信時に必要な送信電力値を算出するステップと、
当該算出された送信電力値を無線信号に含めて送信するステップと
を含む通信方法である。
【発明の効果】
【0011】
上記のように構成された本発明に係る通信装置、通信システム及び通信方法によれば、
相関値に基づいて相手通信装置の通信環境が推定され、当該通信環境により相手通信装置の送信電力の増減が制御される。相関値を利用することにより、RSSIを取得することなく移動局の通信環境について推定できるため、通信接続確立前における送信電力の制御が可能になる。よって、通信接続確立前における通信エラーの発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る概略的な通信システム構成図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係る基地局の概略構成を示す機能ブロック図である。
【図3】図3は、相関値データの一例を示す図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態に係る移動局の概略構成を示す機能ブロック図である。
【図5】図5は、本発明の一実施形態に係る基地局の処理を示すフローチャートである。
【図6】図6は、本発明の一実施形態に係る、移動局と基地局との間の処理を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の通信装置を基地局に適用した場合の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る概略的な通信システム構成図である。通信システム11は、移動局101と、基地局103とを有する。通信システム11は、マルチキャリア通信方式が採用されたシステムであり、例えば、OFDMA通信方式を採用するLTEシステムやXGPシステムである。移動局101は、無線通信端末であり、LTEシステムではUE(User Equipment)と、XGPシステムではMS(Mobile Station)と称されるものである。基地局103は、相手通信装置である移動局101(基地局を第1通信装置としたときの第2通信装置)と無線通信を行うものであり、例えば、LTEシステムではeNB(evolved Node B)と、XGPシステムでは、BS(Base Station)と称されるものである。移動局101は、基地局103との通信を希望しているものとする。
【0015】
図2は、本発明の一実施形態に係る基地局の概略構成を示す機能ブロック図である。基地局103は、基地局送受信部(第1送受信部)111と、基地局ベースバンド部113と、記憶部115と、基地局制御部(第1制御部)117とを有して構成されている。
【0016】
基地局送受信部111は、アンテナを介して移動局101とRF(Radio Frequency)信号(無線信号)を送受信する。基地局送受信部111は、受信したRF信号をダウンコンバートする。また、基地局送受信部111は、信号の送信時には、基地局ベースバンド部113からの信号をRF信号にアップコンバートする。無線信号には、各種通信メッセージや情報が含まれる。
【0017】
基地局ベースバンド部113は、基地局送受信部111からの受信信号に対してAD変換や高速フーリエ変換などを行うことにより、受信信号を復調し、ベースバンド信号を取り出す。また、基地局ベースバンド部113は、送信するベースバンド信号に対して逆高速フーリエ変換やDA変換などを行うことにより、ベースバンド信号を変調する。
【0018】
記憶部115は、後述する相関閾値などの各種情報を記憶するものであり、ワークメモリなどとしても機能する。
【0019】
基地局制御部117は、基地局103の各機能ブロックをはじめとして基地局103の全体を制御及び管理している。基地局制御部117は、CPU(中央処理装置)等の任意の好適なプロセッサ上で実行されるソフトウェアとして構成したり、処理ごとに特化した専用のプロセッサ(例えばDSP(デジタルシグナルプロセッサ))によって構成したりすることもできる。
【0020】
基地局制御部117についてより詳細に説明する。基地局制御部117は、相関値算出部121と、電力制御部123とを有して構成されている。
【0021】
相関値算出部121は、受信信号に含まれる参照シンボルを抽出する。参照シンボルとは、例えばパイロット信号である。そして、相関値算出部121は、参照シンボルと、記憶部115に記憶されている理想的な参照シンボル(既知信号)である既知シンボルとの相関演算を行う。相関値算出部121は、相関演算として、例えば、まず数式1のように、k番目のサブキャリアの参照シンボル(X(k))と既知シンボル(R(k))の複素共役(R’(k))を乗算し伝達関数S(k)を求める。
【0022】
S(k)=X(k)・R(k)’ (1)
【0023】
そして、相関値算出部121は、以下の式で示される伝達関数S(k)を逆フーリエ変換することにより、複素インパルス応答S(n)を求める。
【0024】
【数1】

(2)
【0025】
続いて、相関値算出部121は、複素インパルス応答S(n)を二乗演算することにより、図3のような参照シンボルと既知シンボルとの相関を示す電力信号(相関値データ)131を生成する。横軸は、逆フーリエ変換におけるポイント数(例えば、−256〜256)であり、縦軸は電力値(相関値)である。相関値ピークが高いほど、通信環境の良さを表している。つまり、移動局がLOS(Line Of Sight:見通し)環境や基地局に近いエリアに位置すると相関値の値は大きくなる。また、移動局がNLOS(Non Line Of Sight)環境や基地局のセルエッジに近いエリアに位置すると相関値の値は小さくなる。よって、相関値算出部121は、移動局と基地局との間の通信環境の良さを相関値から推定することができる。
【0026】
相関値算出部121は、算出した相関値ピークと記憶部115に記憶されている相関閾値とを比較する。相関閾値の値及び種類は、任意に設定されうるものである。本実施形態では、図3に示されるように、第1相関閾値CS1、第2相関閾値CS2及び第3相関閾値CS3の3つの相関閾値が設定されているとする。第1相関閾値CS1は、基地局が受信した信号が、移動局からの発呼要求に基づく信号か、又は雑音信号かを判断するための指標である。つまり基地局は、第1相関閾値CS1未満の相関値ピークを有する信号は単なる雑音信号と判断し、第1相関閾値CS1以上の相関値ピークを有する信号の受信から、接続を要求する移動局が存在すると判断する。第2相関閾値CS2(第2相関閾値CS2>第1相関閾値CS1)及び第3相関閾値CS3(第3相関閾値CS3>第2相関閾値CS2)は、接続を要求する移動局の通信環境の良さを判断するための指標である。以下、第1相関閾値CS1以上第2相関閾値CS2未満である相関値ピークを有する信号を送信した移動局を低環境移動局と、第2相関閾値CS2以上第3相関閾値CS3未満である相関値ピークを有する信号を送信した移動局を中環境移動局と、第3相関閾値CS3以上である相関値ピークを有する信号を送信した移動局を高環境移動局と称するとする。
【0027】
電力制御部123は、相関値算出部121により算出された相関値から推定される通信環境に基づいて、移動局101の次の送信時に必要な送信電力値を算出し、当該算出された送信電力値を無線信号に含めて基地局送受信部111に送信させる。具体的には、電力制御部123は、通信環境が悪い移動局ほど大きな送信電力が必要であると判断する。送信電力の増大により、干渉や雑音の影響の度合いを低くすることができる。よって、移動局101からの無線信号が正しく基地局103に伝わることになる。本実施形態では、電力制御部123は、低環境移動局に対しては、送信電力の増加が必要であると判断し、送信電力を所定値増加させるよう指示することができる。また、電力制御部123は、中環境移動局に対しては、送信電力の増減は不要であると判断し、現在の送信電力を維持するよう指示することができる。更に、電力制御部123は、高環境移動局に対しては、送信電力の減少が必要であると判断し、送信電力を所定値減少させるよう指示することができる。高環境移動局は、小さい送信電力でも安定して通信できる可能性が高く、送信電力の減少により、高環境移動局の電波による他の電波への干渉を抑えることができる。なお、本発明は、3種類の電力制御に限定されるものではなく、電力制御部123は、相関値に応じてより細かく、又はより粗く送信電力の増減を制御することができる。また、上記所定値は、任意に設定できる事項である。
【0028】
図4は、本発明の一実施形態に係る移動局の概略構成を示す機能ブロック図である。移動局101は、移動局送受信部(第2送受信部)141と、移動局ベースバンド部143と、移動局制御部(第2制御部)147とを有して構成されている。
【0029】
移動局送受信部141は、アンテナを介して基地局103とRF信号(無線信号)を送受信する。移動局送受信部141は、受信したRF信号をダウンコンバートする。また、移動局送受信部141は、信号の送信時には、移動局ベースバンド部143からの信号をRF信号にアップコンバートする。接続要求時に移動局送受信部141が受信する無線信号としては、送信電力値を含む信号や無線チャネル割当通知信号等が挙げられる。また、接続要求時に移動局送受信部141が送信する無線信号としては、レンジング信号や無線チャネル割当要求信号等が挙げられる。
【0030】
移動局ベースバンド部143は、移動局送受信部141からの受信信号に対してAD変換及び高速フーリエ変換を行うことにより、受信信号を復調し、ベースバンド信号を取り出す。また、移動局ベースバンド部143は、ベースバンド信号に対して逆高速フーリエ変換及びDA変換を行うことにより、ベースバンド信号を変調する。
【0031】
移動局制御部147は、移動局101の各機能ブロックをはじめとして移動局101の全体を制御及び管理している。移動局制御部147は、CPU(中央処理装置)等の任意の好適なプロセッサ上で実行されるソフトウェアとして構成したり、処理ごとに特化した専用のプロセッサ(例えばDSP(デジタルシグナルプロセッサ))によって構成したりすることもできる。
【0032】
また、移動局制御部147は、移動局送受信部141が受信した送信電力値に基づいて、移動局101の送信電力を増減させる。
【0033】
続いて、図1に示される基地局103が相手通信装置である移動局101の送信電力を制御する方法について、図5及び図6を参照して説明する。図5は、本発明の一実施形態に係る基地局の処理を示すフローチャートである。図6は、本発明の一実施形態に係る、移動局と基地局との間の処理を示すシーケンス図である。
【0034】
基地局103は定期的にダウンリンク報知情報を送信し(図6の1)、通信接続を希望する移動局101は、当該ダウンリンク報知情報を受信して受信タイミングの同期を図る(図6の2)。受信タイミングの同期成功後、移動局101は、送信タイミングの同期を図るため、基地局103にレンジング信号を送信する(図6の3)。レンジング信号は、XGPシステムにおいてはTCCH(Timing Correct CHannel:タイミングコレクトチャネル)で送信されるもので、移動局と基地局との間の伝播遅延を求めるために参照シンボルを含む。なお、参照シンボルはレンジング信号に含まれることに限定されるものではなく、例えば無線チャネル割当要求信号などの他の信号に含めることもできる。
【0035】
基地局103の基地局送受信部111がレンジング信号を受信すると(ステップS101)、基地局ベースバンド部113が当該信号を復調する。そして、相関値算出部121は、復調された信号内の参照シンボルと記憶部115に記憶されている既知シンボルとの相関値を算出する(ステップS102及び図6の4)。相関値算出部121は、算出した相関値のピークと記憶部115に記憶されている第1〜第3相関閾値CS1、CS2、CS3とを比較して、移動局101(接続要求移動局)が低環境移動局、中環境移動局、高環境移動局のいずれの属性であるかを判断する(ステップS103)。
【0036】
続いて、電力制御部123は、相関値から推定される移動局101の通信環境に基づいて、移動局101の次の送信時に必要な送信電力値を算出する(ステップS104及び図6の5)。本実施形態では、移動局101が低環境移動局である場合、電力制御部123は送信電力を所定値上げる必要があると判断する。また、移動局101が中環境移動局である場合、電力制御部123は送信電力を一定に維持する必要があると判断する。更に、移動局101が高環境移動局である場合、電力制御部123は送信電力を所定値下げる必要があると判断する。
【0037】
そして、電力制御部123は、判断結果に基づく送信電力値を、相関値から求められるタイミング補正情報と伴に送信するように基地局送受信部111を制御する(ステップS105及び図6の6)。なお、タイミング補正情報とは、基地局103の受信タイミングと、移動局101からの信号が基地局103に送られてきたタイミングとのずれを示す情報である。移動局101は、タイミング補正情報に基づいて送信タイミングをずらすことにより、送信タイミングの同期をとることができる。また、本発明は、送信電力値とタイミング補正情報とが同時に送信される態様に限定されるものではなく、例えば、基地局103は、送信電力値とタイミング補正情報とを別々に送信することもできる。
【0038】
移動局101の移動局送受信部141が送信電力値を含む無線信号を受信すると、移動局ベースバンド部143は当該信号を復調する。そして、移動局制御部147は、送信電力値に基づいて送信電力を設定する(図6の7)。そして、移動局制御部147は、設定後(制御後)の送信電力で無線チャネル割当要求信号を送信するように移動局送受信部141を制御する(図6の8)。
【0039】
基地局103の基地局送受信部111が無線チャネル割当要求信号を受信すると(ステップS106)、基地局制御部117は、受信エラーが発生しているか否か判断する(ステップS107)。無線チャネル割当要求信号は、制御後の送信電力で送信されているため、送信電力の不足を原因とする受信エラーの発生は低く抑えられる。
【0040】
受信エラーが発生していないと(ステップS107のNo)、基地局制御部117は、基地局103の有する無線チャネルのうち空いている無線チャネル(空き無線チャネル)を選択する。そして、空き無線チャネルを移動局101に割り当てるために、当該空き無線チャネルの情報を移動局101に送るように基地局送受信部111を制御する(ステップS108及び図6の9)。
【0041】
移動局101が割り当てられた無線チャネルを使用することにより、基地局103と移動局101との通信接続が確立される(ステップS109及び図6の10)。なお、基地局103は、通信接続の確立後、移動局101からの電波の受信電界強度(RSSI)を測定し、移動局101の送信電力を制御することができる。
【0042】
このように本実施形態では、基地局制御部117の相関値算出部121は、移動局101が接続要求時に送信した無線信号と既知信号との相関値を算出し、電力制御部123は、算出された相関値から推定される通信環境に基づいて、移動局101の次の送信時に必要な送信電力値を算出し、当該算出された送信電力値を無線信号に含めて基地局送受信部111に送信させる。つまり、相関値を利用することにより、受信電界強度を取得することなく移動局101の通信環境について推定することができる。そのため、通信接続確立前にも、基地局103は、移動局101の送信電力が不足していることを認識し、移動局101に送信電力を上げるよう指示することができる。よって、送信電力の不足により移動局101からの信号が基地局103に正しく届かず、通信接続の確立が失敗する可能性を低く抑えることができる。従って、スループットの改善や通信の安定化が見込める。
【0043】
また、時々刻々と変化する通信環境において、移動局101の送信電力を最適な送信電力に近づけるためには、基地局103は複数回に亘り移動局101に送信電力の増減を指示することになる。そのため、本実施形態の通信確立前からの電力制御では、従来の通信確立後からの電力制御に比べ迅速に、移動局101の送信電力を最適な送信電力に近づけることができる。
【0044】
また、本実施形態では、相関値算出部121は、レンジング信号における相関値を算出することができる。レンジング信号は、移動局101の接続要求時に最初に移動局101から基地局103へ送信されるものである。よって、基地局103は、移動局101のレンジング信号以降の信号送信における送信電力を制御することができる。これにより、通信接続の確立までに発生しうる通信エラーを最小限に抑えることができる。
【0045】
本発明を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。
【0046】
例えば、各部材、各手段、各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段やステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0047】
上記の実施形態においては、通信接続確立前の電力制御において相関値を利用するとして説明したが、通信接続確立後の電力制御においても相関値を利用することができる。通信接続確立後の電力制御において通信環境を表す指標であるRSSIと相関値との双方を用いることにより、通信環境の評価の信頼性を高めることができる。例えば、通信環境が良ければ、理論的にはRSSI及び相関値の双方の値が良くなるはずであるが、現実の通信環境ではRSSI及び相関値は誤差を含みうるため、一方の値のみが良い場合は、RSSI及び相関値のいずれかのデータの信頼性が低いと判断できる。そのため、信頼性の高いデータのみを使用することにより、信頼性の高い通信環境評価が可能になる。
【0048】
上記の実施形態においては、本発明の通信装置を基地局に適用した場合について説明したが、本発明は、基地局に限定されるものではない。本発明は、相関値を算出する無線LANのアクセスポイントに適用することもできる。
【0049】
また、上述の本発明の実施形態の説明において、例えば、相関閾値「以上」または相関閾値「未満」のような表現の技術的思想が意味する内容は必ずしも厳密な意味ではなく、通信装置の仕様に応じて、基準となる値を含む場合又は含まない場合の意味を包含するものとする。例えば、相関閾値「以上」とは、相関値ピークが相関閾値に達した場合のみならず、相関閾値を超えた場合も含意し得るものとする。また、例えば相関閾値「未満」とは、相関値ピークが相関閾値を下回った場合のみならず、相関閾値に達した場合、つまり相関閾値以下になった場合も含意し得るものとする。
【0050】
上述したように本発明の解決手段を装置として説明してきたが、本発明はこれらに実質的に相当する方法、プログラム、プログラムを記録した記憶媒体としても実現し得るものであり、本発明の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
【符号の説明】
【0051】
11 通信システム
101 移動局
103 基地局
111 基地局送受信部
113 基地局ベースバンド部
115 記憶部
117 基地局制御部
121 相関値算出部
123 電力制御部
131 相関値データ
141 移動局送受信部
143 移動局ベースバンド部
147 移動局制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線信号を送受信する送受信部と、
相手通信装置が接続要求時に送信した無線信号と既知信号との相関値を算出し、前記算出された相関値から推定される通信環境に基づいて、前記相手通信装置の次の送信時に必要な送信電力値を算出し、当該算出された送信電力値を無線信号に含めて前記送受信部に送信させる制御部と
を備える通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の通信装置において、前記接続要求時の前記無線信号はレンジング信号であることを特徴とする通信装置。
【請求項3】
第1通信装置と、当該通信装置との通信を希望する第2通信装置とから構成される通信システムであって、
前記第1通信装置は、
無線信号を送受信する第1送受信部と、
前記第2通信装置が接続要求時に送信した無線信号における相関値を算出し、前記算出された相関値から推定される通信環境に基づいて、前記第2通信装置の次の送信時に必要な送信電力値を算出し、当該算出された送信電力値を無線信号に含めて前記送受信部に送信させる第1制御部と
を備え、
前記第2通信装置は、
無線信号を送受信する第2送受信部と、
前記第2送受信部が前記送信電力値を含む前記無線信号を受信すると、当該送信電力値に基づき送信電力を制御する第2制御部と
を備える通信システム。
【請求項4】
相手通信装置の送信電力を制御する通信装置における通信方法において、
相手通信装置が接続要求時に送信した無線信号における相関値を算出するステップと、
前記算出された相関値から推定される通信環境に基づいて、前記相手通信装置の次の送信時に必要な送信電力値を算出するステップと、
当該算出された送信電力値を無線信号に含めて送信するステップと
を含む通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−222652(P2012−222652A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87364(P2011−87364)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】