説明

通信装置、通信制御方法、及び通信システム

【課題】アンテナの指向性を制御すべきタイミングを受信装置が認識した上で、そのタイミングにおいて最適なアンテナビームを形成すること。
【解決手段】第1の通信方式に従って無線通信可能な第1無線通信部と、前記第1の通信方式よりも高い周波数帯を使用する第2の通信方式に従って無線通信可能な第2無線通信部と、を備え、前記第2無線通信部は、前記第2の通信方式に従って送信されるビーコンを受信すべき受信タイミングを、前記第1無線通信部により所定の制御信号が受信された時点に基づいて決定し、及び、決定した当該受信タイミングにおいて、事前に学習された指向性を有する受信ビームを形成する、通信装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置、通信制御方法、及び通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ミリ波と呼ばれる高周波の電磁波を用いて無線通信の通信速度を高速化させるための新たな通信方式の開発が進められている。ミリ波の波長は10mm〜1mm、周波数は30GHz〜300GHzとされており、例えば60GHz帯などにおいてGHz単位でのチャネルの割当てが可能である。
【0003】
一般的に、ミリ波は、マイクロ波に比べて直進性が強く、反射時の減衰が大きいという特性を有している。そのため、ミリ波通信での無線の伝達経路は、主に直接波又は1回程度の反射波となる。また、ミリ波は、自由空間伝搬損失が大きい(電波到達距離が短い)という特性も有している。そのため、ミリ波を用いて無線通信する場合には、マイクロ波を用いる場合と比較して空間分割をし易いという利点がある一方、通信距離が短くなるという側面もある。
【0004】
このようなミリ波の弱点を補い、ミリ波を用いた高速な無線通信をより多くの場面で活用するためには、送受信装置のアンテナに指向性を持たせ、その送信ビーム及び受信ビームを通信相手の位置する方向に向けて通信距離を長くすることが考えられる。ビームの指向性は、例えば、送受信装置にそれぞれ複数のアンテナを設け、アンテナごとの重みを変化させることで制御され得る。例えば、下記特許文献1では、音波、赤外線又は光などの通信媒体を用いて予め制御信号を交換し、アンテナの最適な指向性を学習した上でミリ波での無線通信を行う手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−307494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、アンテナの最適な指向性を学習したとしても、どのタイミングでミリ波での無線通信が発生するかを知ることができなければ、そのタイミングで特定の方向にアンテナビームを向けることができない。特に、アンテナを複数の通信方式で共用する場合、又は複数の通信相手が存在するような場合には、アンテナビームを常に特定の方向に向けておくことが難しい。よって、アンテナの指向性を制御すべきミリ波のような高速な無線通信を行うに際しては、アンテナの指向性を制御すべきタイミングを受信装置が認識し、そのタイミングにおいて最適なアンテナビームを形成することのできる仕組みが提供されることが望ましい。
【0007】
そこで、本発明は、アンテナの指向性を制御すべきタイミングを受信装置が認識した上で、そのタイミングにおいて最適なアンテナビームを形成することのできる、新規かつ改良された通信装置、通信制御方法、及び通信システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある実施形態によれば、第1の通信方式に従って無線通信可能な第1無線通信部と、上記第1の通信方式よりも高い周波数帯を使用する第2の通信方式に従って無線通信可能な第2無線通信部と、を備え、上記第2無線通信部は、上記第2の通信方式に従って送信されるビーコンを受信すべき受信タイミングを、上記第1無線通信部により所定の制御信号が受信された時点に基づいて決定し、及び、決定した当該受信タイミングにおいて、事前に学習された指向性を有する受信ビームを形成する、通信装置が提供される。
【0009】
また、上記制御信号は、当該制御信号の後に続いて上記ビーコンが送信されるか否かを表す情報を含んでもよい。
【0010】
また、上記第2無線通信部は、上記受信タイミングにおいて上記ビーコンを正常に受信できなかった場合には、受信ビームの指向性の学習を再試行してもよい。
【0011】
また、上記制御信号は、当該制御信号が受信される時点から上記ビーコンの上記受信タイミングまでの時間差を表す情報を含んでもよい。
【0012】
また、上記第2無線通信部は、上記第1無線通信部により上記制御信号が受信された時点から予め定められた時間が経過したタイミングを、上記ビーコンの上記受信タイミングであると決定してもよい。
【0013】
また、本発明の別の実施形態によれば、第1の通信方式及び上記第1の通信方式よりも高い周波数帯を使用する第2の通信方式に従ってそれぞれ無線通信可能な送信装置と受信装置との間の通信制御方法であって、上記送信装置から上記受信装置へ、上記第1の通信方式に従って所定の制御信号を送信するステップと、上記受信装置において、上記第2の通信方式に従って送信されるビーコンを受信すべき受信タイミングを、上記制御信号が受信された時点に基づいて決定するステップと、上記送信装置から上記受信装置へ、上記第2の通信方式に従って上記ビーコンを送信するステップと、上記受信装置において、決定した上記受信タイミングにおいて、事前に学習された指向性を有する受信ビームを形成することにより、上記送信装置から送信された上記ビーコンを受信するステップと、を含む通信制御方法が提供される。
【0014】
また、本発明の別の実施形態によれば、第1の通信方式に従って無線通信可能な第1無線通信部、及び、上記第1の通信方式よりも高い周波数帯を使用する第2の通信方式に従って無線通信可能な第2無線通信部、をそれぞれ備える送信装置と受信装置とを含み、上記送信装置の上記第1無線通信部は、上記受信装置へ上記第1の通信方式に従って所定の制御信号を送信し、上記受信装置の上記第2無線通信部は、上記第2の通信方式に従って送信されるビーコンを受信すべき受信タイミングを、上記制御信号が受信された時点に基づいて決定し、上記送信装置の上記第2無線通信部は、上記受信装置へ上記第2の通信方式に従って上記ビーコンを送信し、上記受信装置の上記第2無線通信部は、決定した上記受信タイミングにおいて、事前に学習された指向性を有する受信ビームを形成することにより、上記送信装置から送信される上記ビーコンを受信する、通信システムが提供される。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明に係る通信装置、通信制御方法、及び通信システムによれば、アンテナの指向性を制御すべきタイミングを受信装置が認識した上で、そのタイミングにおいて最適なアンテナビームを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】一実施形態に係る通信システムの概要を示す模式図である。
【図2】一実施形態に係る送信装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図3】一実施形態に係る送信装置の第2デジタル部のより具体的な構成の一例を示すブロック図である。
【図4】学習指示信号及びビーム学習用信号のフォーマットの一例を示す説明図である。
【図5】ビームパターンの一例を示す説明図である。
【図6】制御信号及びビーコンのフォーマットの一例を示す説明図である。
【図7】一実施形態に係る受信装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図8】一実施形態に係る受信装置の第2デジタル部のより具体的な構成の一例を示すブロック図である。
【図9】一実施形態に係る指向性学習処理について説明するための説明図である。
【図10】一実施形態に係る通信制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付すことにより重複説明を省略する。
【0018】
また、以下の順序にしたがって当該「発明を実施するための形態」を説明する。
1.一実施形態に係る通信システムの概要
2.一実施形態の説明
2−1.送信側の構成例
2−2.信号フォーマットの例
2−3.受信側の構成例
2−4.処理の流れ
3.まとめ
【0019】
<1.一実施形態に係る通信システムの概要>
図1は、本発明の一実施形態に係る通信システム1の概要を示す模式図である。図1を参照すると、通信システム1は、通信装置100及び通信装置200を含む。本実施形態において、通信装置100は、通信装置100と通信装置200との間の高速通信の開始のきっかけとなる制御信号を送信する。通信装置200は、通信装置100から送信される制御信号を受信し、当該制御信号に基づいて決定するタイミングで、通信装置100の存在する方向へアンテナビームの指向性を向ける。そのため、本明細書において、通信装置100を送信側の装置又は送信装置、通信装置200を受信側の装置又は受信装置という場合がある。
【0020】
通信装置100及び200は、第1及び第2の通信方式に従って互いに無線通信することができる。このうち、第1の通信方式は、上述したミリ波と比較して直進性が強くなく、反射時の減衰の小さい例えばマイクロ波などの電磁波を用いた通信方式である。第1の通信方式は、例えばIEEE802.11a/b/g/nなどの無線LAN(Local Area Network)規格に基づく通信方式であってよい。即ち、第1の通信方式に従って無線通信する場合には、通信装置100及び200は、アンテナビームの指向性を考慮することなく互いに通信することができる。一方、第2の通信方式は、上述したミリ波に代表される電磁波であって、直進性が強く反射時の減衰の大きい電磁波を用いた通信方式である。第2の通信方式は、例えば60GHz帯を使用する802.11ad(VHT(Very High Throughput)ともいう)規格に基づく通信方式であってよい。即ち、第2の通信方式に従って無線通信する場合には、通信装置100及び200は、アンテナビームを通信相手に向けて無線信号を送受信するのが好適である。
【0021】
図1の例では、通信装置100は、第1の通信方式に従って無線信号を送受信するためのアンテナ110、及び第2の通信方式に従って無線信号を送受信するための複数のアンテナ160a〜160nを備える。アンテナ110は、複数のアンテナ160a〜160nのいずれか1つと物理的に同一のアンテナであってもよい。また、通信装置200は、第1の通信方式に従って無線信号を送受信するためのアンテナ210、及び第2の通信方式に従って無線信号を送受信するための複数のアンテナ260a〜260nを備える。アンテナ210は、複数のアンテナ260a〜260nのいずれか1つと物理的に同一のアンテナであってもよい。通信装置100及び200は、このような複数のアンテナ160a〜160nと複数のアンテナ260a〜260nとを用いて、第2の通信方式に従い、所謂MIMO(Multiple Input Multiple Output)通信を行うことができる。そして、各アンテナを介して送受信される信号の重みを調整することにより、第2の通信方式に従った無線通信時のアンテナビームの指向性が制御される。図1を参照すると、例えば通信装置100から通信装置200の方向へ、送信ビームBtが向けられている。また、例えば通信装置200から通信装置100の方向へ、受信ビームBrが向けられている。
【0022】
なお、通信装置100及び200は、例えばPC(Personal Computer)、携帯電話端末、携帯情報端末、音楽プレーヤ若しくはゲーム端末などの端末装置、又はテレビジョン受像機などの家電機器であってよい。また、通信装置100及び200は、ブロードバンドルータや無線アクセスポイントなどのネットワーク機器であってもよい。さらに、通信装置100及び200は、これら機器に搭載される無線通信モジュールなどであってもよい。
【0023】
<2.一実施形態の説明>
[2−1.送信側の構成例]
図2は、本実施形態に係る通信装置100の構成の一例を示すブロック図である。図2を参照すると、通信装置100は、アンテナ110、第1無線通信部120、記憶部150、複数のアンテナ160a〜160n、及び第2無線通信部170を備える。また、第1無線通信部120は、第1アナログ部122、AD(Analog-to-Digital)変換部124、DA(Digital-to-Analog)変換部126、第1デジタル部130、及び制御部140を有する。第2無線通信部170は、第2アナログ部172、AD変換部174、DA変換部176、第2デジタル部180、及び制御部190を有する。
【0024】
第1アナログ部122は、典型的には、第1の通信方式に従った無線信号を送受信するためのRF(Radio Frequency)回路に相当する。即ち、第1アナログ部122は、例えば、アンテナ110により受信された受信信号を増幅及び周波数変換し、AD変換部124へ出力する。また、第1アナログ部122は、DA変換部126によりアナログ信号に変換された送信信号を周波数変換してアンテナ110へ出力する。
【0025】
AD変換部124は、第1アナログ部122から入力されるアナログ信号である受信信号をデジタル信号に変換し、第1デジタル部130へ出力する。DA変換部126は、第1デジタル部130から入力されるデジタル信号である送信信号をアナログ信号に変換し、第1アナログ部122へ出力する。
【0026】
第1デジタル部130は、典型的には、第1の通信方式に従って受信信号を復調及び復号するための回路、並びに第1の通信方式に従って送信信号を符号化及び変調するための回路を有する。第1デジタル部130は、例えば、制御部140から送信信号が入力されると、当該送信信号を符号化及び変調してDA変換部126へ出力する。第1デジタル部130により処理される送信信号には、通常のデータ通信のための信号に加えて、例えば、後に説明する学習指示信号及び制御信号が含まれる。また、第1デジタル部130は、例えば、AD変換部124から受信信号が入力されると、当該受信信号を復調及び復号して制御部140へ出力する。
【0027】
制御部140は、例えばCPU(Central Processing Unit)などの演算装置を用いて、第1無線通信部120の動作全般を制御する。例えば、制御部140は、通信装置200からの要求に応じて、まず、ビームの指向性の学習を指示する学習指示信号を、第1無線通信部120から通信装置200へ送信させる。その後、制御部140は、ビームの指向性の学習結果を通知する通知信号が通信装置200から受信されると、当該通知信号に含まれる最適なビームパターンを特定するためのパラメータ値を記憶部150に保存する。さらに、制御部140は、例えば、第2の通信方式に従った無線通信の開始の要求に応じて、第2の通信方式に従った無線通信を開始させるための制御信号を第1無線通信部120から通信装置200へ送信させる。
【0028】
記憶部150は、例えば、半導体メモリなどの記録媒体を用いて、通信装置100による通信処理に使用されるプログラムやパラメータ値などを記憶する。例えば、本実施形態において、記憶部150は、第2の通信方式に従った第2無線通信部170による無線通信の際の最適なビームパターンを特定するためのパラメータ値を、例えば通信相手の装置の識別子と関連付けて記憶する。
【0029】
複数のアンテナ160a〜160nは、第2の通信方式に従った無線通信に使用されるアンテナである。複数のアンテナ160a〜160nは、典型的には、MIMOアンテナとして構成される。即ち、例えば、アンテナ160a〜160nは、所定の重み係数を用いて重み付けされた無線信号をミリ波を用いてそれぞれ送信する。また、例えば、アンテナ160a〜160nは、ミリ波である無線信号を受信して第2アナログ部172へ出力する。
【0030】
第2アナログ部172は、典型的には、第2の通信方式に従った無線信号を送受信するためのRF回路に相当する。即ち、第2アナログ部172は、例えば、アンテナ160a〜160nによりそれぞれ受信された複数の受信信号を増幅及び周波数変換し、AD変換部174へ出力する。また、第2アナログ部172は、DA変換部176によりそれぞれアナログ信号に変換された複数の送信信号を周波数変換してアンテナ160a〜160nへ出力する。
【0031】
AD変換部174は、第2アナログ部172から入力されるアナログ信号である複数の受信信号をそれぞれデジタル信号に変換し、第2デジタル部180へ出力する。DA変換部176は、第2デジタル部180から入力されるデジタル信号である複数の送信信号をアナログ信号に変換し、第2アナログ部172へ出力する。
【0032】
第2デジタル部180は、典型的には、第2の通信方式に従って受信信号を復調及び復号するための回路、並びに第2の通信方式に従って送信信号を符号化及び変調するための回路を有する。
【0033】
図3は、第2デジタル部180のより具体的な構成の一例を示すブロック図である。図3を参照すると、第2デジタル部180は、同期部181、受信ビーム処理部182、復調復号部183、符号化変調部184、及び送信ビーム処理部185を有する。
【0034】
同期部181は、複数のアンテナ160a〜160nにより受信された複数の受信信号について、例えばパケットの先頭のプリアンブルに応じて受信処理の開始タイミングを同期させて受信ビーム処理部182へ出力する。
【0035】
受信ビーム処理部182は、同期部181から入力される複数の受信信号について、例えば一様分布又はテイラー分布に従って重み付け処理を行うことにより、受信ビームの指向性を制御する。受信ビーム処理部182により使用される重みの値は、例えば、制御部190から入力される指向性制御信号により指定される。その代わりに、受信ビーム処理部182は、複数のアンテナ160a〜160nをアレイアンテナとみなして受信ビームを形成してもよい。
【0036】
復調復号部183は、受信ビーム処理部182により重み付けされた受信信号を第2の通信方式に使用される任意の変調方式及び符号化方式に従って復調及び復号し、データ信号を取得する。そして、復調復号部183は、取得したデータ信号を制御部190へ出力する。
【0037】
符号化変調部184は、制御部190から入力されるデータ信号を第2の通信方式に使用される任意の符号化方式及び変調方式に従って符号化及び変調し、送信信号を生成する。そして、符号化変調部184は、生成した送信信号を送信ビーム処理部185へ出力する。
【0038】
送信ビーム処理部185は、符号化変調部184から入力された送信信号から、例えば一様分布又はテイラー分布に従って重み付けされた複数の送信信号を生成し、送信ビームの指向性を制御する。送信ビーム処理部185により使用される重みの値は、例えば、制御部190から入力される指向性制御信号により指定される。その代わりに、送信ビーム処理部185は、複数のアンテナ160a〜160nをアレイアンテナとみなして送信ビームを形成してもよい。送信ビーム処理部185により重み付けされた複数の送信信号は、DA変換部176へそれぞれ出力される。
【0039】
なお、図3には示していないが、第2デジタル部180において、さらに複数のアンテナ160a〜160nにより受信された受信信号からMIMOチャネルのチャネル特性を推定し、その推定結果に応じてチャネル等化が行われてもよい。
【0040】
図2に戻り、通信装置100の構成の一例についての説明を継続する。
【0041】
制御部190は、例えばCPUなどの演算装置を用いて、第2無線通信部170の動作全般を制御する。例えば、制御部190は、上述した学習指示信号が第1無線通信部120から送信された後所定の時間T1(以下、オフセットT1という)の経過後に、ビーム学習用信号を第2無線通信部170から送信させる。また、例えば、制御部190は、上述した制御信号が第1無線通信部120から送信された後所定の時間T2(以下、オフセットT2という)の経過後に、第2の通信方式に従った無線通信のためのビーコンを第2無線通信部170から送信させる。また、制御部190は、最適なビームパターンを特定するためのパラメータ値を記憶部150から取得し、取得したパラメータ値に応じて第2デジタル部180の受信ビーム処理部182又は送信ビーム処理部185へ指向性制御信号を出力してもよい。
【0042】
[2−2.信号フォーマットの例]
図4は、通信装置100から送信される学習指示信号及びビーム学習用信号の信号フォーマットの一例を示す説明図である。
【0043】
図4を参照すると、第1の通信方式に従って送信される学習指示信号S1は、プリアンブルのほかに、「信号種別」と「オフセット」という2つのフィールドを含む。プリアンブルは、例えば、L−STF(Legacy-Short Training Field)及びL−LTF(Legacy-Long Training Field)などに相当し、パケットの検出、自動利得制御、同期処理及びチャネル推定などのために用いられる。図示していないが、プリアンブルに続いて、信号長、システムID及びタイムスタンプなどの情報も、学習指示信号S1に付加され得る。「信号種別」は、信号のタイプを表すフィールドである。学習指示信号S1の「信号種別」フィールドには、当該信号が学習指示信号であることを示す値が格納される。受信装置は、かかる「信号種別」フィールドを参照することにより、当該信号に続いてビーム学習用信号S2が送信されることを認識することができる。「オフセット」フィールドには、ビーム学習用信号を受信すべき受信タイミングを決定するためのオフセットT1の値が格納される。オフセットT1は、例えば、学習指示信号S1の受信終了時点からビーム学習用信号S2の受信開始時点までの時間差であってよい。オフセットT1は、ゼロであってもよい。また、例えば、学習指示信号S1の受信終了時点からビーム学習用信号S2の受信開始時点までの時間差が通信規格により(又は通信装置間の事前の交渉により)予め定められている場合には、「オフセット」フィールドは省略されてもよい。
【0044】
一方、第2の通信方式に従って送信されるビーム学習用信号S2は、ビーム学習用フィールドBTFを含む。かかるBTFは、制御部190による制御に応じて、上述した学習指示信号の送信終了時点からオフセットT1が経過するタイミングで送信される。
【0045】
本実施形態において、ビーム学習用信号S2のBTFは、一例としての10種類の送信ビームパターンBt0〜Bt9にそれぞれ対応する10個のタイムスロットT0〜T9により構成される。各タイムスロットT0〜T9では、受信側におけるビームの学習に使用される既知の信号系列が、対応する送信ビームパターンBt0〜Bt9をそれぞれ形成するための重み係数を用いて重み付けされる。即ち、ビーム学習用信号の送信ビームの指向性は、タイムスロットT0〜T9ごとに順次変化する。従って、通信装置100の周囲に位置する受信装置では、その位置に応じてビーム学習用信号のいずれかのタイムスロットで受信信号の電力レベルが突出した値となり、最適な送信ビームパターンを決定することができる。なお、既知の信号系列とは、例えばBPSK(Binary Phase Shift Keying)のランダムパターンなどであってよい。
【0046】
図5は、通信装置100が形成することのできるビームパターンの一例を示す説明図である。
【0047】
図5を参照すると、本実施形態において通信装置100により形成可能な10個の送信ビームパターンBt0〜Bt9が示されている。送信ビームパターンBt0〜Bt9は、通信装置100が位置する平面上で36度ずつ異なる方向への指向性をそれぞれ有している。通信装置100の送信ビーム処理部185は、制御部190からの指向性制御信号に応じて、かかる10個の送信ビームパターンBt0〜Bt9のうちいずれかの送信ビームパターンを用いて、アンテナ160a〜160nから無線信号を送信させることができる。また、通信装置100により形成可能な受信ビームパターンも、図5に示した送信ビームパターンBt0〜Bt9と同様のビームパターンであってよい。通信装置100の記憶部150には、例えば、これらビームパターンを形成するためのアンテナ160a〜160nごとの重み係数が予め記憶されている。なお、通信装置100により形成可能な送信ビームパターン及び受信ビームパターンは、かかる例に限定されない。例えば、三次元空間上の様々な方向に指向性を有する送信ビームパターン又は受信ビームパターンが形成されてもよい。また、通信装置200により形成可能なビームパターンも、通信装置100により形成可能なビームパターンと同様である。
【0048】
図6は、通信装置100から送信される上述した制御信号及びビーコンの信号フォーマットの一例を示す説明図である。
【0049】
図6を参照すると、第1の通信方式に従って送信される制御信号S3は、プリアンブルのほかに、「信号種別」と「オフセット」という2つのフィールドを含む。「信号種別」は、信号のタイプを表すフィールドである。制御信号S3の「信号種別」フィールドには、当該信号が第2の通信方式に従って送信されるビーコンの受信タイミングの決定のために使用可能な制御信号であることを示す値が格納される。受信装置は、かかる「信号種別」フィールドを参照することにより、当該信号に続いてビーコンS4が送信されることを認識することができる。「オフセット」フィールドには、ビーコンS4を受信すべき受信タイミングを決定するためのオフセットT2の値が格納される。オフセットT2は、例えば、制御信号S3の受信終了時点からビーコンS4の受信開始時点までの時間差であってよい。オフセットT2は、ゼロであってもよい。また、例えば、制御信号S3の受信終了時点からビーコンS4の受信開始時点までの時間差が通信規格により(又は通信装置間の事前の交渉により)予め定められている場合には、「オフセット」フィールドは省略されてもよい。
【0050】
なお、制御信号S3は、既存のIEEE802.11a/b/g/nなどの通信規格において規定されたビーコン又はRTS(Request To Send)などの既存の信号であってもよい。その場合には、「信号種別」及び「オフセット」フィールドは、既存の信号フォーマットの拡張用領域に設けられ得る。その代わりに、制御信号S3は、全体として新たに定義される信号であってもよい。
【0051】
一方、第2の通信方式に従って送信されるビーコンS4は、プリアンブルのほかに、「信号種別」と「ビーコン周期」という2つのフィールドを含む。制御信号S3の「信号種別」フィールドには、当該信号が第2の通信方式に従った無線通信のためのビーコンであることを示す値が格納される。「ビーコン周期」フィールドは、ビーコンS4が周期的に送信される場合の周期を示す。受信装置は、一度ビーコンS4の受信に成功した後は、かかる「ビーコン周期」フィールドを参照することにより、その後も継続してビーコンを受信すべき受信タイミングを調整することができる。なお、図示していないが、信号長、システムID及びタイムスタンプなどの情報も、ビーコンS4に付加され得る。
【0052】
[2−3.受信側の構成例]
図7は、本実施形態に係る通信装置200の構成の一例を示すブロック図である。図7を参照すると、通信装置200は、アンテナ210、第1無線通信部220、記憶部250、複数のアンテナ260a〜260n、及び第2無線通信部270を備える。また、第1無線通信部220は、第1アナログ部222、AD変換部224、DA変換部226、第1デジタル部230、及び制御部240を有する。第2無線通信部270は、第2アナログ部272、AD変換部274、DA変換部276、第2デジタル部280、及び制御部290を有する。
【0053】
第1アナログ部222は、典型的には、第1の通信方式に従った無線信号を送受信するためのRF回路に相当する。即ち、第1アナログ部222は、例えば、アンテナ210により受信された受信信号を増幅及び周波数変換し、AD変換部224へ出力する。また、第1アナログ部222は、DA変換部226によりアナログ信号に変換された送信信号を周波数変換してアンテナ210へ出力する。
【0054】
AD変換部224は、第1アナログ部222から入力されるアナログ信号である受信信号をデジタル信号に変換し、第1デジタル部230へ出力する。DA変換部226は、第1デジタル部230から入力されるデジタル信号である送信信号をアナログ信号に変換し、第1アナログ部222へ出力する。
【0055】
第1デジタル部230は、典型的には、第1の通信方式に従って受信信号を復調及び復号するための回路、並びに第1の通信方式に従って送信信号を符号化及び変調するための回路を有する。第1デジタル部230は、例えば、制御部240から送信信号が入力されると、当該送信信号を符号化及び変調してDA変換部226へ出力する。第1デジタル部230により処理される送信信号には、通常のデータ通信のための信号に加えて、例えば、アンテナビームの指向性の学習結果を通信装置100に通知するための通知信号が含まれる。また、第1デジタル部230は、例えば、AD変換部224から受信信号が入力されると、当該受信信号を復調及び復号して制御部240へ出力する。第1デジタル部230により処理される受信信号には、通常のデータ通信のための信号に加えて、例えば、図4及び図6を用いて説明した学習指示信号及び制御信号が含まれる。
【0056】
制御部240は、例えばCPUなどの演算装置を用いて、第1無線通信部220の動作全般を制御する。例えば、制御部240は、第2の通信方式に従った無線通信のためのビームの指向性が未だ学習されていない場合、又は学習済みの指向性が最適な指向性でなくなったと判断される場合に、ビーム学習用信号の送信要求を第1無線通信部220から通信装置100へ送信させる。そして、制御部240は、通信装置100から上述した学習指示信号が受信されると、第2無線通信部270にビームの指向性の学習を指示する。このとき、学習指示信号にオフセットT1の値が含まれる場合には、制御部240は、学習の指示と共にオフセットT1の値を第2無線通信部270に通知する。また、制御部240は、第2無線通信部270により最適なビームパターンが決定されると、決定された最適なビームパターンを特定するパラメータ値を記憶部250から取得し、取得した当該パラメータ値を通知するための通知信号を第1無線通信部220から通信装置100へ送信させる。また、制御部240は、通信装置100から上述した制御信号が受信されると、第2無線通信部270に第2の通信方式に従った無線通信のためのビーコンの受信を指示する。
【0057】
記憶部250は、例えば、半導体メモリなどの記録媒体を用いて、通信装置200による通信処理に使用されるプログラムやパラメータ値などを記憶する。例えば、本実施形態において、記憶部250は、第2の通信方式に従った第2無線通信部270による無線通信の際の最適なビームパターンを特定するためのパラメータ値を記憶する。また、記憶部250は、例えば、後述する第2無線通信部270により決定された送信側の最適なビームパターンを特定するためのパラメータ値を記憶する。
【0058】
複数のアンテナ260a〜260nは、第2の通信方式に従った無線通信に使用されるアンテナである。複数のアンテナ260a〜260nは、典型的には、MIMOアンテナとして構成される。即ち、例えば、アンテナ260a〜260nは、所定の重み係数を用いて重み付けされた無線信号をミリ波を用いてそれぞれ送信する。また、例えば、アンテナ260a〜260nは、ミリ波である無線信号を受信して第2アナログ部272へ出力する。
【0059】
第2アナログ部272は、典型的には、第2の通信方式に従った無線信号を送受信するためのRF回路に相当する。即ち、第2アナログ部272は、例えば、アンテナ260a〜260nによりそれぞれ受信された複数の受信信号を増幅及び周波数変換し、AD変換部274へ出力する。また、第2アナログ部272は、DA変換部276によりそれぞれアナログ信号に変換された複数の送信信号を周波数変換してアンテナ260a〜260nへ出力する。
【0060】
AD変換部274は、第2アナログ部272から入力されるアナログ信号である複数の受信信号をそれぞれデジタル信号に変換し、第2デジタル部280へ出力する。DA変換部276は、第2デジタル部280から入力されるデジタル信号である複数の送信信号をアナログ信号に変換し、第2アナログ部272へ出力する。
【0061】
第2デジタル部280は、典型的には、第2の通信方式に従って受信信号を復調及び復号するための回路、並びに第2の通信方式に従って送信信号を符号化及び変調するための回路を有する。第2デジタル部280は、例えば、制御部290から送信信号が入力されると、当該送信信号を符号化及び変調してDA変換部276へ出力する。また、第2デジタル部280は、例えば、AD変換部274から受信信号が入力されると、当該受信信号を復調及び復号して制御部290へ出力する。第2デジタル部280により処理される受信信号には、通常のデータ通信のための信号に加えて、例えば、図4及び図6を用いて説明したビーム学習用信号及び第2の通信方式に従った無線通信のためのビーコンが含まれる。
【0062】
図8は、第2デジタル部280のより具体的な構成の一例を示すブロック図である。図8を参照すると、第2デジタル部280は、同期部281、受信ビーム処理部282、電力計算部283、決定部284、復調復号部285、符号化変調部286、及び送信ビーム処理部287を有する。
【0063】
同期部281は、例えば、複数のアンテナ260a〜260nにより受信された複数の受信信号について、パケットの先頭のプリアンブルに応じて受信処理の開始タイミングを同期させて受信ビーム処理部282へ出力する。また、同期部281は、制御部290からビーム学習用信号の受信タイミングが通知されると、当該受信タイミングからビーム学習用信号の受信を開始する。そして、同期部281は、受信したビーム学習用信号を受信ビーム処理部282へ出力すると共に、電力計算部283に受信電力の計算を指示する。また、同期部281は、制御部290からビーコンの受信タイミングが通知されると、当該受信タイミングからビーコンの受信を開始する。
【0064】
受信ビーム処理部282は、同期部281から入力される複数の受信信号について、上述した受信ビーム処理部182と同様に、例えば一様分布又はテイラー分布に従って重み付け処理を行うことにより、受信ビームの指向性を制御する。そして、受信ビーム処理部282は、重み付けされた受信信号を電力計算部283及び復調復号部285へ出力する。
【0065】
図9は、受信ビーム処理部282によるアンテナビームの指向性の学習処理について説明するための説明図である。
【0066】
図9を参照すると、通信装置100から第2の通信方式に従って送信されるビーム学習用信号S2の信号フォーマットの一例があらためて示されている。ビーム学習用信号S2は、送信ビームパターンBt0〜Bt9にそれぞれ対応する10個のタイムスロットT0〜T9により構成されるBTFを含む。受信ビーム処理部282は、かかるビーム学習用信号S2の各タイムスロットT0〜T9をさらに10個ずつの区間ST0〜ST9に分け、各区間ST0〜ST9においてそれぞれ異なる10通りの受信ビームパターンで受信信号を重み付け処理する。例えば、タイムスロットT0の第1区間ST0は受信ビームパターンBr0、タイムスロットT0の第2区間ST1は受信ビームパターンBr1などと関連付けられる。このような指向性学習処理により、1つのビーム学習用信号において、10通りの送信ビームパターン×10通りの受信ビームパターン=計100通りの送受信ビームパターンで送受信された受信信号を得ることができる。
【0067】
電力計算部283は、同期部281からの指示に応じて、上述した計100通りの送受信パターンで送受信された受信信号の受信電力をそれぞれ計算する。そして、電力計算部283は、計算した受信電力値を決定部284へ順次出力する。
【0068】
決定部284は、電力計算部283から入力される受信電力値に基づいて、最適な送信ビームパターン及び受信ビームパターンを特定するためのパラメータ値を決定する。最適なビームパターンとは、典型的には、1つのビーム学習用信号について電力計算部283から入力される一連の受信電力値が最大値となるビームパターンである。最適な送信ビームパターンを特定するためのパラメータ値とは、例えば、図9に示したいずれかのタイムスロット番号(T0〜T9)であってよい。その代わりに、最適な送信ビームパターンを特定するためのパラメータ値とは、例えば、送信ビーム処理部287により送信信号に乗算される重み付け係数などであってもよい。また、最適な受信ビームパターンを特定するためのパラメータ値とは、例えば、図9に示した区間番号(ST0〜ST9)であってよい。その代わりに、最適な受信ビームパターンを特定するためのパラメータ値とは、例えば、受信ビーム処理部282により複数の受信信号にそれぞれ乗算される重み付け係数などであってもよい。決定部284は、このように決定したパラメータ値を、制御部290へ出力する。
【0069】
復調復号部285は、受信ビーム処理部282により重み付けされた受信信号を第2の通信方式に使用される任意の変調方式及び符号化方式に従って復調及び復号し、データ信号を取得する。そして、復調復号部285は、取得したデータ信号を制御部290へ出力する。
【0070】
符号化変調部286は、制御部290から入力されるデータ信号を第2の通信方式に使用される任意の符号化方式及び変調方式に従って符号化及び変調し、送信信号を生成する。そして、符号化変調部286は、生成した送信信号を送信ビーム処理部287へ出力する。
【0071】
送信ビーム処理部287は、上述した送信ビーム処理部187と同様に、符号化変調部286から入力された送信信号から、例えば一様分布又はテイラー分布に従って重み付けされた複数の送信信号を生成し、送信ビームの指向性を制御する。送信ビーム処理部287により使用される重みの値は、例えば、制御部290から入力される指向性制御信号により指定される。送信ビーム処理部287により重み付けされた複数の送信信号は、DA変換部276へそれぞれ出力される。
【0072】
なお、図8には示していないが、第2デジタル部280において、さらに複数のアンテナ260a〜260nにより受信された受信信号からMIMOチャネルのチャネル特性を推定し、その推定結果に応じてチャネル等化が行われてもよい。
【0073】
図7に戻り、通信装置200の構成の一例についての説明を継続する。
【0074】
制御部290は、例えばCPUなどの演算装置を用いて、第2無線通信部270の動作全般を制御する。例えば、制御部290は、第1無線通信部220からビームの指向性の学習が指示されると、第1無線通信部220による学習指示信号の受信の後オフセットT1の経過後に、第2デジタル部280にビーム学習用信号を用いて最適なビームパターンを決定させる。また、制御部290は、第2の通信方式に従った無線通信のためのビーコンの受信が指示されると、第1無線通信部220による制御信号の受信の後オフセットT2の経過後に、第2無線通信部270に第2の通信方式に従った無線通信のためのビーコンを受信させる。その際、制御部290は、学習済みの最適な受信ビームパターンを特定するためのパラメータ値を含む指向性制御信号を受信ビーム処理部282へ出力し、通信装置100の方向への指向性を有する受信ビームを形成させる。それにより、通信装置200は、上記ビーコンを良好に受信することができる。かかるビーコンには、例えば、システムID及びビーコン周期など、第2の通信方式に従った無線通信に参加するために必要とされる情報が記載されている。
【0075】
また、制御部290は、第2の通信方式に従った無線通信のためのビーコンの受信に成功すると、その後の無線通信に際して、指向性制御信号を受信ビーム処理部282へ出力し、通信相手の方向への指向性を有する受信ビームを形成させる。また、制御部290は、受信ビームの形成に使用した値と同じパラメータ値を含む指向性制御信号を送信ビーム処理部287へ出力し、同一の方向への指向性を有する送信ビームを形成させてもよい。それにより、例えば通信装置100と通信装置200との間で、第2の通信方式に従って良好に無線通信を行うことが可能となる。
【0076】
また、制御部290は、ビーコンを受信しようとしたタイミングにおいてビーコンを正常に受信できなかった場合には、ビームの指向性の学習のための学習指示信号の送信を、第1無線通信部220を介して通信装置100に要求してもよい。それにより、通信装置100又は200の移動などを原因とする位置関係の変化に迅速に適応することができる。なお、ビーコンを正常に受信できなかった場合とは、ビーコンそのものを検出できなかった場合だけでなく、ビーコンを検出できたものの受信レベル(又は品質レベル)が期待されるレベルよりも低い場合などを含んでよい。
【0077】
[2−4.処理の流れ]
図10は、本実施形態に係る第2の通信方式に従った無線通信の開始に際しての通信制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、図10は、図6に示した制御信号S3及びビーコンS4を受信する通信装置200、即ち受信側の視点での処理の流れを示している。
【0078】
図10を参照すると、まず、通信装置200は、第2の通信方式に従った無線通信を開始する前に、通信相手である通信装置100についての最適なビームパターンを学習済みであるか否かを判定する(ステップS102)。ここで、最適なビームパターンを学習済みであれば、処理はステップS112へ進む。一方、最適なビームパターンを学習済みでなければ、処理はステップS104へ進む。
【0079】
ステップS104において、通信装置200は、第1の通信方式(System 1)に従って通信装置100から送信される学習指示信号の受信を待ち受ける(ステップS104)。そして、学習指示信号が受信されると、処理はステップS106へ進む。次に、通信装置200は、学習指示信号とビーム学習用信号との時間差、即ちオフセットT1を用いて、ビーム学習用信号の受信タイミングを決定する(ステップS106)。次に、通信装置200は、決定した受信タイミングにおいて、第2の通信方式(System 2)に従って通信装置100から送信されるビーム学習用信号を受信する(ステップS108)。その際、通信装置200の第2無線通信部270は、図9に例示した指向性学習処理に従って、通信装置100と通信装置200との間の最適なビームパターンを学習する(ステップS110)。ここで学習された最適なビームパターンは、通信装置200の記憶部250に保存されると共に、通信装置100へ通知され得る。その後、処理はステップS102へ戻る。
【0080】
ステップS102において、最適なビームパターンを学習済みである場合には、通信装置200は、第1の通信方式(System 1)に従って通信装置100から送信される指示信号の受信を待ち受ける(ステップS112)。そして、指示信号が受信されると、処理はステップS114へ進む。次に、通信装置200は、指示信号と第2の通信方式に従った無線通信のためのビーコンとの間の時間差、即ちオフセットT2を用いて、当該ビーコンの受信タイミングを決定する(ステップS114)。次に、通信装置200は、決定した受信タイミングにおいて、学習済みのビームパターンを受信信号に適用することにより、即ち受信ビームを形成することにより、第2の通信方式における無線信号の到達距離を拡大させる(ステップS116)。そして、通信装置200は、第2の通信方式(System 2)に従って通信装置100から送信されるビーコンの受信が成功した否かを判定する(ステップS118)。ここで、通信装置100から送信されるビーコンが正常に受信されなかった場合には、通信装置200は、アンテナビームの指向性の学習を再試行する(ステップS104〜S110)。一方、通信装置100から送信されるビーコンが正常に受信された場合には、通信装置200は、ビーコンから取得される情報を用いて、第2の通信方式に従った無線通信を開始する(ステップS120)。
【0081】
<3.まとめ>
ここまで、図1〜図10を用いて、本発明の一実施形態について説明した。本実施形態によれば、第2の通信方式に従った無線通信の開始に際して、第1の通信方式に従って送信される制御信号が受信された時点に基づいて、第2の通信方式のためのビーコンの受信タイミングが決定される。第2の通信方式は、アンテナの指向性により通信距離を拡大することが望ましい方式である。一方、第1の通信方式は、指向性を有さずとも十分な通信距離を確保できる方式である。それにより、受信側の通信装置において、ビーコンが届くと予測される受信タイミングで事前に学習された指向性を有する受信ビームを形成することができるため、アンテナビームを常に特定の方向に向けておくことなく、柔軟に第2の通信方式に従った高速な無線通信を開始することができる。
【0082】
また、本実施形態によれば、上記制御信号は、当該制御信号の後に続いて上記ビーコンが送信されるか否かを表す情報を含む。それにより、第1の通信方式における既存の信号を拡張して上記制御信号として用いると共に、第2の通信方式に従った無線通信の開始が求められる場合にのみ後続の処理を進めることが可能となる。
【0083】
また、本実施形態によれば、上記制御信号を用いて決定された受信タイミングにおいて上記ビーコンが正常に受信されなかった場合には、ビームパターンの学習が再試行される。それにより、ビームパターンの学習後に通信装置が移動した場合には、通信の必要性が生じた時点でビームパターンの学習の必要性を自動的に認識し、ビームパターンを再度迅速に学習することができる。
【0084】
また、本実施形態によれば、上記制御信号は、当該制御信号が受信される時点から上記ビーコンの受信タイミングまでの時間差を表す「オフセット」フィールドを含む。それにより、ビーコンを送信する側の通信装置が能動的にビーコンの受信タイミングを指定することができる。
【0085】
なお、本明細書では、ビーム学習用信号がビームパターン数と同等の数のタイムスロットに分割される例について主に説明した。しかしながら、ビーム学習用信号は、かかる例に限定されず、ビームパターン数と同等の数の拡散符号により拡散された信号系列が多重化された信号であってもよい。
【0086】
また、本明細書では、通信装置100を送信側の装置、通信装置200を受信側の装置として説明したが、これら2つの装置の機能を共に備える通信装置が提供されてもよいことは言うまでもない。
【0087】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0088】
1 通信システム
100 通信装置(送信装置)
120 第1無線通信部
170 第2無線通信部
200 通信装置(受信装置)
220 第1無線通信部
270 第2無線通信部
S1 学習指示信号
S2 ビーム学習用信号
S3 制御信号
S4 (第2の通信方式のための)ビーコン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の通信方式に従って無線通信可能な第1無線通信部と、
前記第1の通信方式よりも高い周波数帯を使用する第2の通信方式に従って無線通信可能な第2無線通信部と、
を備え、
前記第2無線通信部は、前記第2の通信方式に従って送信されるビーコンを受信すべき受信タイミングを、前記第1無線通信部により所定の制御信号が受信された時点に基づいて決定し、及び、決定した当該受信タイミングにおいて、事前に学習された指向性を有する受信ビームを形成する、
通信装置。
【請求項2】
前記制御信号は、当該制御信号の後に続いて前記ビーコンが送信されるか否かを表す情報を含む、請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記第2無線通信部は、前記受信タイミングにおいて前記ビーコンを正常に受信できなかった場合には、受信ビームの指向性の学習を再試行する、請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記制御信号は、当該制御信号が受信される時点から前記ビーコンの前記受信タイミングまでの時間差を表す情報を含む、請求項3に記載の通信装置。
【請求項5】
前記第2無線通信部は、前記第1無線通信部により前記制御信号が受信された時点から予め定められた時間が経過したタイミングを、前記ビーコンの前記受信タイミングであると決定する、請求項3に記載の通信装置。
【請求項6】
第1の通信方式及び前記第1の通信方式よりも高い周波数帯を使用する第2の通信方式に従ってそれぞれ無線通信可能な送信装置と受信装置との間の通信制御方法であって:
前記送信装置から前記受信装置へ、前記第1の通信方式に従って所定の制御信号を送信するステップと;
前記受信装置において、前記第2の通信方式に従って送信されるビーコンを受信すべき受信タイミングを、前記制御信号が受信された時点に基づいて決定するステップと;
前記送信装置から前記受信装置へ、前記第2の通信方式に従って前記ビーコンを送信するステップと;
前記受信装置において、決定した前記受信タイミングにおいて、事前に学習された指向性を有する受信ビームを形成することにより、前記送信装置から送信された前記ビーコンを受信するステップと;
を含む通信制御方法。
【請求項7】
第1の通信方式に従って無線通信可能な第1無線通信部、
及び、前記第1の通信方式よりも高い周波数帯を使用する第2の通信方式に従って無線通信可能な第2無線通信部、
をそれぞれ備える送信装置と受信装置とを含み、
前記送信装置の前記第1無線通信部は、前記受信装置へ前記第1の通信方式に従って所定の制御信号を送信し、
前記受信装置の前記第2無線通信部は、前記第2の通信方式に従って送信されるビーコンを受信すべき受信タイミングを、前記制御信号が受信された時点に基づいて決定し、
前記送信装置の前記第2無線通信部は、前記受信装置へ前記第2の通信方式に従って前記ビーコンを送信し、
前記受信装置の前記第2無線通信部は、決定した前記受信タイミングにおいて、事前に学習された指向性を有する受信ビームを形成することにより、前記送信装置から送信される前記ビーコンを受信する、
通信システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−193044(P2011−193044A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54935(P2010−54935)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】