説明

通信装置およびデータ復調方法

【課題】FM0方式を用いるリーダ装置との間に干渉問題が発生した場合においても、通信速度を低下させることなく、干渉回避を行う通信装置を得ること。
【解決手段】本発明は、ミラーサブキャリア変調を用いて通信を行う通信装置であって、受信したミラーサブキャリア信号の正側サブキャリア成分および負側サブキャリア成分それぞれに含まれている干渉信号成分に基づいて、各サブキャリア成分に含まれている干渉信号成分を抑圧しつつ各サブキャリア成分を合成するサブキャリア成分合成手段(正側サブキャリア成分抽出部111,負側サブキャリア成分抽出部112,希望信号対干渉雑音電力比算出部121,122,重み付け係数算出部131,132,重み付け係数乗算部141,142,合成部15)と、合成後のサブキャリア成分からデータを復調するデータ復調部16と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミラーサブキャリア変調を用いて通信を行う通信装置およびデータ復調方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パッシブ型RFID(Radio Frequency IDentification)システムは、リーダ装置からタグにCW(Continuous Wave)を送信し、タグ側は、受信したCWに対して自身の反射係数を変化させ、ON/OFF信号を生成することにより、自タグ内に埋め込まれているID情報をリーダ装置へと応答するシステムである。本システムは、タグ側に電池を内蔵する必要がないことから、タグを安価かつ小型に実現することができ、物流管理や入退場管理など、様々な分野で運用が開始されている。なかでも、UHF(Ultra High Frequency)帯の電波を用いたRFIDシステムのリーダ装置−タグ間通信規約(エアプロトコル)として、EPC Global C1G2(Class1 Generation2)規格が規定されており、タグからの応答方式の1つとして、ミラーサブキャリア方式が規定されている。ミラーサブキャリア方式では、リーダ装置がCW送信を行う周波数チャネルとは別の周波数チャネルでタグからの応答がなされるため、リーダ装置間の深刻な干渉問題が回避できる利点がある。一方、もう1つの応答方式として、FM0方式が規定されている。FM0方式は、リーダ装置がCW送信を行う周波数チャネルと、タグから応答を行う周波数チャネルが同一であり、ミラーサブキャリア方式と比較して、リーダ装置間の干渉回避が困難という問題がある。
【0003】
ミラーサブキャリア方式を用いるリーダ装置と、FM0方式を用いるリーダ装置が混在した場合、FM0方式のリーダ装置から送信する信号が、ミラーサブキャリア信号に対する干渉となり、タグ読み取り性能が劣化する問題が生じる。本問題を解決する手段の1つとして、特許文献1に記載の方式では、ミラーサブキャリア信号が有する負側サブキャリア成分と正側サブキャリア成分の受信電力を比較して、受信電力がより低い成分、つまり、干渉信号が重畳されていないと推定される成分を選択して復調することにより、干渉存在下におけるタグ読み取り性能を改善している。また、特許文献2に記載の方式では、キャリアセンスにより各周波数チャネルの空き状態を検索し、既に使用されている周波数チャネルではタグが応答を行わないように、空きチャネル数に応じた通信速度を選択することにより、干渉回避を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−88089号公報
【特許文献2】特開2010−35038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の技術においては、以下に示すような課題を有している。まず、特許文献1に記載の技術では、ミラーサブキャリア信号が有する負側サブキャリア成分と正側サブキャリア成分の2つの信号成分のうち、干渉信号が重畳されていない信号成分を選択して復調することにより、干渉存在下におけるタグ読み取り性能を改善しているが、除去対象となるサブキャリア成分に対する干渉信号電力が、希望信号電力に比べて比較的小さい場合でも、当該成分(負側サブキャリア成分と正側サブキャリア成分のいずれか一方)を完全に除去してしまうこととなり、貴重な受信信号成分を必要以上に損失してしまうという問題がある。
【0006】
次に、特許文献2に記載の技術では、通信開始前にキャリアセンスを行って各周波数チャネルの空き状態を検索し、既に使用されている周波数チャネルではタグが応答を行わないように、空きチャネル数に応じた通信速度を選択することにより、干渉回避を行っているが、タグの読み取り速度が低下してしまうという問題がある。この問題について、具体例を挙げて説明する。例えば、タグからの応答が、チャネル番号1,2,3を同時使用する通信モードに対応している場合を想定すると、タグ応答の通信速度は、使用する周波数帯域幅に比例して増大することから、同時使用するチャネル数が多ければ多いほど、リーダ装置は、高い通信速度でタグ読み取りを行うことができる。ここで、特許文献2のリーダ装置は、通信開始前に全チャネルのキャリアセンスを行い、例えば、チャネル番号3に他リーダ装置からの干渉信号を検出した場合には、タグに対して、チャネル番号1,2のみを用いて応答を行うよう指令を送信する。これにより、タグはチャネル3を使用しない形で応答を行うため、リーダ装置はチャネル3を受信する必要がなくなり、リーダ装置受信側における干渉回避を実現することができる。しかしながら、この方式では、干渉を回避するために同時使用するチャネル数を削減する結果、タグの読み取り速度が低下してしまい、問題となる。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ミラーサブキャリア方式を用いるリーダ装置とFM0方式を用いるリーダ装置との間に干渉問題が発生した場合においても、通信速度を低下させることなく、受信した信号成分を有効活用した上で、干渉回避を行う通信装置およびデータ復調方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、ミラーサブキャリア変調を用いて通信を行う通信装置であって、受信したミラーサブキャリア信号の正側サブキャリア成分および負側サブキャリア成分それぞれに含まれている干渉信号成分に基づいて、当該各サブキャリア成分に含まれている干渉信号成分を抑圧しつつ当該各サブキャリア成分を合成するサブキャリア成分合成手段と、前記サブキャリア成分合成手段により合成された後のサブキャリア成分からデータを復調するデータ復調手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、FM0方式を適用したリーダ装置の送信がミラーサブキャリア方式を適用したリーダ装置の受信信号の干渉となる環境下においても、ミラーサブキャリア方式を適用したリーダ装置として動作する通信装置は、通信速度を低下させることなく、受信した信号成分を有効活用した上で、干渉回避を実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明にかかる通信装置を適用した通信システムの構成例を示す図である。
【図2】図2は、実施の形態1の通信装置が備えている復調処理部の機能構成例を示す図である。
【図3】図3は、希望信号、干渉信号および雑音信号の関係例を示す図である。
【図4】図4は、実施の形態2の通信装置が備えている復調処理部の機能構成例を示す図である。
【図5】図5は、ノッチフィルタ部の周波数特性の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明にかかる通信装置およびデータ復調方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
実施の形態1.
図1は、本発明にかかる通信装置を適用した通信システムの構成例を示す図である。この通信システムは、ミラーサブキャリア方式を使用しているRFIDシステム(システムA)とFM0方式を使用しているRFIDシステム(システムB)とを含んで構成されている。システムAは、本発明にかかる通信装置に相当するリーダ装置1Aと、タグ2A−1および2A−2とを含み、システムBは、リーダ装置1Bと、タグ2B−1および2B−2とを含んでいる。
【0013】
本実施の形態では、リーダ装置1Aとリーダ装置1Bとが近接しており、リーダ装置1Bからタグ2B−1,2B−2に対して送信する信号が、タグ2A−1からリーダ装置1Aへの応答信号(ミラーサブキャリア信号)に対する干渉となる場合を想定する。リーダ装置1Aは、このような状況においても干渉を回避した上で、良好なタグ読み取り性能を実現する。
【0014】
図2は、図1に示した通信システムのリーダ装置1Aにおいて、タグ2A−1,2A−2から送信されたミラーサブキャリア信号を復調する復調処理部の機能構成例を示す図である。この復調処理部は、図示したように、正側サブキャリア成分抽出部111と、負側サブキャリア成分抽出部112と、希望信号対干渉雑音電力比算出部121および122と、重み付け係数算出部131および132と、重み付け係数乗算部141および142と、合成部15と、データ復調部16とを備える。
【0015】
復調処理部において、正側サブキャリア成分抽出部111は、受信したミラーサブキャリア信号から正側サブキャリア成分を抽出する。負側サブキャリア成分抽出部112は、受信したミラーサブキャリア信号から負側サブキャリア成分を抽出する。希望信号対干渉雑音電力比算出部121および122は、各サブキャリア成分(入力された正側サブキャリア成分または負側サブキャリア成分)の希望信号対干渉雑音電力比を算出する。重み付け係数算出部131および132は、希望信号対干渉雑音電力比算出部121および122で算出された希望信号対干渉雑音電力比より、各サブキャリア成分の重み付け係数を算出する。重み付け係数乗算部141は、重み付け係数算出部131で算出された重み付け係数を、正側サブキャリア成分抽出部111で抽出された正側サブキャリア成分に対して乗算する。重み付け係数乗算部142は、重み付け係数算出部132で算出された重み付け係数を、負側サブキャリア成分抽出部112で抽出された負側サブキャリア成分に対して乗算する。合成部15は、重み付け係数乗算部141において重み付け係数が乗算された後の正側サブキャリア成分と重み付け係数乗算部142において重み付け係数が乗算された後の負側サブキャリア成分とを合成する。データ復調部16は、合成部15の出力信号からデータを復調する。
【0016】
以下、図2に示した復調処理部におけるミラーサブキャリア信号の復調動作の詳細について説明する。
【0017】
まず、受信したミラーサブキャリア信号より、正側サブキャリア成分抽出部111において正側サブキャリア成分を、負側サブキャリア成分抽出部112において負側サブキャリア成分を、別々に抽出する。この抽出方法としては、例えば、バンドパスフィルタを用いる方法、もしくは、各成分をベースバンドにダウンコンバートした後に、ローパスフィルタで抽出する方法などが考えられる。
【0018】
次に、希望信号対干渉雑音電力比算出部121および122において、各サブキャリア成分のSINR(希望信号対干渉雑音電力比)を算出する。ここでSINRは、希望信号電力をS、干渉信号電力をI、雑音電力をNとして、次式(1)で与えられる。
SINR = S/(I+N) …(1)
【0019】
SINRは、信号品質を規定する重要なパラメータの1つであり、このSINRの値が大きいほど、ビット誤りの少ない優れた受信性能を実現することができる。SINRの算出方法としては、タグ応答の先頭に配置されるリターンプリアンブル(送受信機間でビットパターンが既知のパターン)の受信データを平均化することで理想の受信点位置を求め、理想位置からのユークリッド距離に基づき算出する方法などが考えられる。このとき、理想の受信点位置における原点からの距離の2乗がSに相当し、理想位置からのユークリッド距離の2乗平均値が(I+N)に相当する。他の方法としては、例えば、通信開始前に実施するキャリアセンスにより、各サブキャリア成分における(I+N)を先に観測しておき、通信開始後に観測される各サブキャリア成分の(S+I+N)の値から逆算してもよい。一例として、図3を用いて説明する。なお、図3は、希望信号(正側サブキャリア成分,負側サブキャリア成分)、干渉信号および雑音信号の関係例を示す図である。キャリアセンスの時間帯では、リーダ装置は送信停止、タグは無応答の状態であり、この状態で、周囲のリーダ装置から送信されている電波を検出する。このときに観測される電力は、干渉信号電力Iと受信機の雑音電力Nの和(I+N)である。例えば、図3に示したケース2の場合であれば、負側サブキャリア成分の(I+N)は2(=干渉信号1の電力+雑音信号の電力)であり、正側サブキャリア成分の(I+N)は1(=雑音信号の電力)である。次に、リーダ装置が送信を開始し、タグからの応答信号が受信されたとする。この際に観測される電力は、希望信号電力Sと干渉信号電力Iと受信機の雑音電力Nの総和(S+I+N)である。例えば、図3のケース2の場合であれば、負側サブキャリア成分の(S+I+N)は12であり、正側サブキャリア成分の(S+I+N)は11である。これら結果より逆算すると、負側サブキャリア成分はS=10,I+N=2、すなわちSINR=5であり、正側サブキャリア成分はS=10,I+N=1、すなわちSINR=10であることがわかる。同様に、例えばケース1の場合には、負側正側ともにSINR=10であり、ケース3の場合には、負側はSINR=10、正側はSINR=1である。
【0020】
次に、重み付け係数算出部131および132において、各サブキャリア成分の重み付け係数を算出する。これら重み付け係数は、直前に算出したSINRの値に比例した値を設定する。例えば、図3のケース2の場合であれば、重み付け係数算出部132が、負側サブキャリア成分(SINR=5)の重み付け係数を0.5に設定し、重み付け係数算出部131が、正側サブキャリア成分(SINR=10)の重み付け係数を1に設定する。同様に、例えばケース1の場合には、負側正側ともに重み付け係数=1、ケース3の場合には、負側は重み付け係数=1、正側は重み付け係数=0.1に設定する。なお、この重み付け係数決定の際に、一方の成分のSINRが、もう一方の成分のSINRと比較して極端に小さい場合(干渉信号電力が圧倒的に大きい場合)については、当該成分の重み付け係数を0に設定する構成としてもよい。
【0021】
次に、重み付け係数乗算部141および142において、重み付け係数算出部131および132で求めた重み付け係数を各サブキャリア成分に対して乗算し、合成部15において、重み付け係数乗算後の正側サブキャリア成分と負側サブキャリア成分を合成する。最後に、データ復調部16において、合成部15出力を用いたデータ復調処理を実施する。
【0022】
以上のように、本実施の形態によれば、ミラーサブキャリア方式を用いるリーダ装置は、各サブキャリア成分のSINRに基づいて各サブキャリア成分を重み付け合成し、合成後のサブキャリア成分を用いてデータ復調を行うこととしたので、ミラーサブキャリア方式を用いるリーダ装置とFM0方式を用いるリーダ装置との間に干渉問題が発生するおそれがある環境下においても、通信速度を低下させることなく、受信した信号成分を有効活用した上で、干渉回避を実現することができる。なお、本実施の形態においては、各サブキャリア成分のSINRに基づいて重み付け合成を行う構成について説明したが、SINRではなく、別の信号品質を規定するパラメータを用いる構成としてもよい。
【0023】
実施の形態2.
つづいて、実施の形態2について説明する。なお、本実施の形態においても、実施の形態1と同様の通信システムを想定する(図1参照)。
【0024】
図4は、実施の形態2の通信装置が備えている復調処理部の機能構成例を示す図である。なお、図4では、実施の形態1で説明した復調処理部(図2参照)と同様の構成要素に同一の符号を付している。実施の形態1の復調処理部と同一の符号を付した構成要素については説明を省略する。
【0025】
本実施の形態の復調処理部は、図示したように、正側サブキャリア成分抽出部111と、負側サブキャリア成分抽出部112と、干渉信号諸元検出部171および172と、ノッチフィルタ調整部181および182と、ノッチフィルタ部191および192と、合成部15と、データ復調部16とを備える。
【0026】
干渉信号諸元検出部171および172は、各サブキャリア成分(入力された正側サブキャリア成分または負側サブキャリア成分)に重畳されている干渉信号の諸元を検出する。ノッチフィルタ調整部181および182は、前段の干渉信号諸元検出部(干渉信号諸元検出部171または172)において検出した干渉信号の諸元に基づき、干渉信号を抑圧するノッチフィルタ部191および192の設定を調整する。ノッチフィルタ部191は、ノッチフィルタ調整部181により調整された設定値に従って、正側サブキャリア成分抽出部111で抽出された正側サブキャリア成分に含まれる干渉信号を抑圧し、ノッチフィルタ部192は、ノッチフィルタ調整部182により調整された設定値に従って、負側サブキャリア成分抽出部112で抽出された負側サブキャリア成分に含まれる干渉信号を抑圧する。
【0027】
以下、図4に示した復調処理部におけるミラーサブキャリア信号の復調動作の詳細について説明する。
【0028】
まず、受信したミラーサブキャリア信号より、正側サブキャリア成分抽出部111において正側サブキャリア成分を、負側サブキャリア成分抽出部112において負側サブキャリア成分を、別々に抽出する。
【0029】
次に、干渉信号諸元検出部171および172において、干渉信号の中心周波数および周波数帯域幅を検出する。この検出方法としては、例えば、通信開始前に実施するキャリアセンスの時間帯において、各サブキャリア成分の周波数帯域を対象としたFFT(Fast Fourier Transform)処理を実施し、当該結果から検出する方法などが考えられる。
【0030】
次に、ノッチフィルタ調整部181および182において、干渉信号諸元検出部171および172において検出した干渉信号の諸元(中心周波数および周波数帯域幅)に基づき、干渉信号を抑圧するためのノッチフィルタ部191および192を調整してフィルタ特性を変更する。この調整方法としては、例えば、ディジタルフィルタのタップ係数を変更する方法や、チューナブルなアナログフィルタの諸元を変更するなどの方法が考えられる。なお、このとき、干渉信号が含まれていないサブキャリア成分に関しては、特に干渉を除去する必要がないことから、周波数特性がフラットとなるようノッチフィルタ部の設定を調整する。図5は、ノッチフィルタ部191および192の周波数特性の概念図である。ノッチフィルタ調整部181および182は、サブキャリア成分に干渉信号が含まれていない場合、図5の上段に示したように、サブキャリア成分を全て通過させるよう、対応するノッチフィルタ部(ノッチフィルタ部191または192)を調整する。これに対して、サブキャリア成分に干渉信号が含まれる場合には、下段に示したように、干渉信号の諸元に対応する帯域の成分を除去(抑圧)するよう、対応するノッチフィルタ部を調整する。
【0031】
次に、ノッチフィルタ部191および192において、ノッチフィルタ調整部181および182による調整結果に従い、特定の周波数成分を抑圧する。次に、合成部15において、ノッチフィルタ通過後の正側サブキャリア成分と負側サブキャリア成分を合成し、最後に、データ復調部16において、合成部15出力を用いたデータ復調処理を実施する。
【0032】
以上のように、本実施の形態によれば、ミラーサブキャリア方式を用いるリーダ装置は、負側サブキャリア成分と正側サブキャリア成分各々に重畳されている干渉信号の中心周波数および周波数帯域幅を観測し、観測結果に従って周波数特性を調整したノッチフィルタを用いて、各サブキャリア成分から干渉成分を除去し、さらに、干渉信号除去後の各サブキャリア成分を合成した後、データ復調を行うこととしたので、ミラーサブキャリア方式を用いるリーダ装置とFM0方式を用いるリーダ装置との間に干渉問題が発生するおそれがある環境下においても、通信速度を低下させることなく、受信した信号成分を有効活用した上で、干渉回避を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上のように、本発明にかかる通信装置は、RFIDシステムに有用であり、特に、ミラーサブキャリア方式を適用したRFIDシステムのリーダ装置に適している。
【符号の説明】
【0034】
1A,1B リーダ装置
2A−1,2A−2,2B−1,2B−2 タグ
111 正側サブキャリア成分抽出部
112 負側サブキャリア成分抽出部
121,122 希望信号対干渉雑音電力比算出部
131,132 重み付け係数算出部
141,142 重み付け係数乗算部
15 合成部
16 データ復調部
171,172 干渉信号諸元検出部
181,182 ノッチフィルタ調整部
191,192 ノッチフィルタ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミラーサブキャリア変調を用いて通信を行う通信装置であって、
受信したミラーサブキャリア信号の正側サブキャリア成分および負側サブキャリア成分それぞれに含まれている干渉信号成分に基づいて、当該各サブキャリア成分に含まれている干渉信号成分を抑圧しつつ当該各サブキャリア成分を合成するサブキャリア成分合成手段と、
前記サブキャリア成分合成手段により合成された後のサブキャリア成分からデータを復調するデータ復調手段と、
を備えることを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記サブキャリア成分合成手段は、
受信したミラーサブキャリア信号から、正側サブキャリア成分および負側サブキャリア成分をそれぞれ抽出するサブキャリア成分抽出手段と、
前記サブキャリア成分抽出手段により抽出された正側サブキャリア成分および負側サブキャリア成分それぞれについての信号品質を算出する信号品質算出手段と、
前記信号品質算出手段により算出された各信号品質に基づいて、前記サブキャリア成分抽出手段により抽出された正側サブキャリア成分および負側サブキャリア成分の重み付け係数をそれぞれ算出する重み付け係数算出手段と、
前記重み付け係数算出手段により算出された重み付け係数に基づいて、前記サブキャリア成分抽出手段により抽出された正側サブキャリア成分と負側サブキャリア成分を重み付け合成する合成手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記サブキャリア成分合成手段は、
受信したミラーサブキャリア信号から、正側サブキャリア成分および負側サブキャリア成分をそれぞれ抽出するサブキャリア成分抽出手段と、
前記サブキャリア成分抽出手段により抽出された正側サブキャリア成分および負側サブキャリア成分について、重畳されている干渉信号の諸元をそれぞれ検出する干渉信号諸元検出手段と、
前記干渉信号諸元検出手段により検出された各諸元に基づいて、干渉信号を抑圧するノッチフィルタの設定値を調整するノッチフィルタ調整手段と、
前記ノッチフィルタ調整手段により調整された設定値に従って、前記サブキャリア成分抽出手段により抽出された正側サブキャリア成分および負側サブキャリア成分に含まれる干渉信号を抑圧する干渉信号抑圧手段と、
前記干渉信号抑圧手段により干渉信号が抑圧された後の正側サブキャリア成分と前記干渉信号抑圧手段により干渉信号が抑圧された後の負側サブキャリア成分を合成する合成手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項4】
ミラーサブキャリア変調を用いて通信を行う通信装置において実行するデータ復調方法であって、
受信したミラーサブキャリア信号の正側サブキャリア成分および負側サブキャリア成分それぞれに含まれている干渉信号成分に基づいて、当該各サブキャリア成分に含まれている干渉信号成分を抑圧しつつ当該各サブキャリア成分を合成するサブキャリア成分合成ステップと、
前記サブキャリア成分合成ステップを実行して得られた合成後のサブキャリア成分からデータを復調するデータ復調ステップと、
を含むことを特徴とするデータ復調方法。
【請求項5】
前記サブキャリア成分合成ステップは、
受信したミラーサブキャリア信号から、正側サブキャリア成分および負側サブキャリア成分をそれぞれ抽出するサブキャリア成分抽出ステップと、
前記抽出した正側サブキャリア成分および負側サブキャリア成分それぞれについての信号品質を算出する信号品質算出ステップと、
前記算出した各信号品質に基づいて、前記抽出した正側サブキャリア成分および負側サブキャリア成分の重み付け係数をそれぞれ算出する重み付け係数算出ステップと、
前記算出した重み付け係数に基づいて、前記抽出した正側サブキャリア成分と負側サブキャリア成分を重み付け合成する合成ステップと、
を含むことを特徴とする請求項4に記載のデータ復調方法。
【請求項6】
前記サブキャリア成分合成ステップは、
受信したミラーサブキャリア信号から、正側サブキャリア成分および負側サブキャリア成分をそれぞれ抽出するサブキャリア成分抽出ステップと、
前記抽出した正側サブキャリア成分および負側サブキャリア成分について、重畳されている干渉信号の諸元をそれぞれ検出する干渉信号諸元検出ステップと、
前記検出した各諸元に基づいて、干渉信号を抑圧するノッチフィルタの設定値を調整するノッチフィルタ調整ステップと、
前記ノッチフィルタ調整ステップで設定を調整した後のノッチフィルタを用いて、前記抽出した正側サブキャリア成分および負側サブキャリア成分に含まれる干渉信号を抑圧する干渉信号抑圧ステップと、
前記干渉信号を抑圧した後の正側サブキャリア成分と負側サブキャリア成分を合成する合成ステップと、
を含むことを特徴とする請求項4に記載のデータ復調方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−105137(P2012−105137A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−252820(P2010−252820)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】