説明

通信装置及び通信方法

【課題】通信システム全体のスループットが向上するように無線チャネルの割当てが可能な通信装置及び通信方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る通信装置103は、キャリアセンスを実行し、キャリアセンス結果に基づいて無線チャネルを相手通信装置に割り当てる通信装置103であって、無線信号を送受信する送受信部111と、相手通信装置が接続要求時に送信した無線信号と既知信号との相関値を算出し、算出された相関値から推定される通信環境とキャリアセンス結果とに基づいて無線チャネルを割り当てる制御部117とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置及び通信方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access:直交周波数分割多元接続)といったマルチキャリア方式が採用された通信システムとして、LTE(Long Term Evolution)システムや次世代PHS(Personal Handy-phone System)であるXGP(eXtended Global Platform)システムが知られている。これらのシステムでは、同一無線チャネルの同時使用によるデータの衝突を回避するために、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)制御に基づく通信チャネル割当制御が行われる。当該通信チャネル割当制御では、使用可能なチャネルの有無の判定を行うためにキャリアセンスが行われる。
【0003】
ここで従来のキャリアセンスについて説明する(例えば、特許文献1参照)。キャリアセンスとは、例えば、受信可能な信号の受信電界強度(RSSI:Received Signal Strength Indicator)が所定のキャリアセンス閾値未満である周波数帯域(無線チャネル)を干渉の少ない(使用可能な)無線チャネルであると判断する機能である。キャリアセンス機能を有する基地局は、キャリアセンス結果に基づき、最も干渉の少ない、つまり最も無線状態の良い無線チャネルを移動局の接続要求順に割り当てる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−72285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、基地局が無線状態の良い無線チャネルから割り当てた場合、無線状態の悪い無線チャネルが残ることになる。割当可能な無線チャネルであっても無線状態の悪い無線チャネルが通信環境の悪い移動局(例えば、セルエッジ付近の移動局)に割り当てられると、通信が困難になるおそれがある。すると、通信システム全体のスループットの低下を招くことになる。
【0006】
従って、上記のような問題点に鑑みてなされた本発明の目的は、通信システム全体のスループットが向上するように無線チャネルの割当てが可能な通信装置及び通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した諸課題を解決すべく、第1の発明による通信装置は、
キャリアセンスを実行し、キャリアセンス結果に基づいて無線チャネルを相手通信装置に割り当てる通信装置であって、
無線信号を送受信する送受信部と、
前記相手通信装置が接続要求時に送信した無線信号と既知信号との相関値を算出し、前記算出された相関値から推定される通信環境とキャリアセンス結果とに基づいて無線チャネルを割り当てる制御部と
を備える通信装置である。
【0008】
また、前記制御部は、無線チャネルの使用可否を判断する際に利用される所定のキャリアセンス閾値未満の受信電力の無線チャネルを割当可能な無線チャネルであると判断し、相関値から推定される通信環境が良い相手通信装置であるほど、割当可能な無線チャネルのうち前記所定のキャリアセンス閾値に近い受信電力の無線チャネルを割り当てることが望ましい。
【0009】
また、前記制御部は、キャリアセンス結果より割当可能な無線チャネルが存在しない場合、
前記制御部は、
‐ 前記所定のキャリアセンス閾値を引き上げ、
‐ 当該引き上げにより割当可能となった無線チャネルを相関値が所定の相関閾値以上である相手通信装置に割り当てることが望ましい。
【0010】
本発明の第1の発明を方法として実現させた通信方法は、
キャリアセンスを実行し、キャリアセンス結果に基づいて無線チャネルを相手通信装置に割り当てる通信装置における通信方法であって、
無線信号を送受信するステップと、
前記相手通信装置が接続要求時に送信した無線信号と既知信号との相関値を算出し、前記算出された相関値から推定される通信環境とキャリアセンス結果とに基づいて無線チャネルを割り当てるステップとを含む通信方法である。
【発明の効果】
【0011】
上記のように構成された本発明に係る通信装置及び通信方法によれば、相手通信装置が接続要求時に送信する無線信号における相関値から推定される通信環境とキャリアセンス結果とに基づいて無線チャネルが割り当てられる。これにより、相手通信装置の通信環境に基づいて割り当てられる無線チャネルが決定されるので、通信環境の悪い相手通信装置に無線状態の悪い無線チャネルが割り当てられなくなり、通信システム全体のシステムスループットが向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る概略的な通信システム構成図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係る基地局の概略構成を示す機能ブロック図である。
【図3】図3は、相関値データの一例を示す図である。
【図4】図4は、キャリアセンス閾値の一例を示す図である。
【図5】図5は、本発明の一実施形態に係る基地局の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の通信装置を基地局に適用した場合の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る概略的な通信システム構成図である。通信システム11は、移動局101a及び101bと、基地局103a及び103bとを有する。通信システム11は、マルチキャリア通信方式が採用されたシステムであり、例えば、OFDMA通信方式を採用するLTEシステムやXGPシステムである。移動局101a及び101bは、無線通信端末であり、LTEシステムではUE(User Equipment)と、XGPシステムではMS(Mobile Station)と称されるものである。基地局103a及び103bは、相手通信装置である移動局101a及び101bと無線通信を行うものであり、例えば、LTEシステムではeNB(evolved Node B)と、XGPシステムでは、BS(Base Station)と称されるものである。図1において、領域105aは、基地局103aのセル(通信可能エリア)を示している。領域105bは、基地局103bのセルを示している。移動局101bは、基地局103bと無線チャネル(周波数帯域)107で通信中であり、移動局101aは、基地局103aとの通信を希望しているものとする。
【0015】
図2は、本発明の一実施形態に係る基地局の概略構成を示す機能ブロック図である。基地局103(図1における基地局103a及び103b)は、送受信部111と、ベースバンド部113と、記憶部115と、制御部117とで構成されている。
【0016】
送受信部111は、アンテナを介して移動局101(図1における基地局101a及び101b)とRF(Radio Frequency)信号(無線信号)を送受信する。送受信部111は、受信したRF信号をダウンコンバートする。また、送受信部111は、信号の送信時には、ベースバンド部113からの信号をRF信号にアップコンバートする。無線信号には、各種通信メッセージや情報が含まれる。
【0017】
ベースバンド部113は、送受信部111からの受信信号に対してAD変換や高速フーリエ変換などを行うことにより、受信信号を復調し、ベースバンド信号を取り出す。また、ベースバンド部113は、送信するベースバンド信号に対して逆高速フーリエ変換やDA変換などを行うことにより、ベースバンド信号を変調する。
【0018】
記憶部115は、後述する相関閾値やキャリアセンス閾値などの各種情報を記憶するものであり、ワークメモリなどとしても機能する。
【0019】
制御部117は、基地局103の各機能ブロックをはじめとして基地局103の全体を制御及び管理している。制御部117は、CPU(中央処理装置)等の任意の好適なプロセッサ上で実行されるソフトウェアとして構成したり、処理ごとに特化した専用のプロセッサ(例えばDSP(デジタルシグナルプロセッサ))によって構成したりすることもできる。
【0020】
制御部117についてより詳細に説明する。制御部117は、相関値算出部121と、キャリアセンス部123と、割当部125とを有して構成されている。
【0021】
相関値算出部121は、受信信号に含まれる参照シンボルを抽出する。参照シンボルとは、例えばパイロット信号である。そして、相関値算出部121は、参照シンボルと、記憶部115に記憶されている理想的な参照シンボルである既知シンボル(既知信号)との相関演算を行う。相関値算出部121は、相関演算として、例えば、まず数式1のように、k番目のサブキャリアの参照シンボル(X(k))と既知シンボル(R(k))の複素共役(R’(k))を乗算し伝達関数S(k)を求める。
【0022】
S(k)=X(k)・R(k)’ (1)
【0023】
そして、相関値算出部121は、以下の式で示される伝達関数S(k)を逆フーリエ変換することにより、複素インパルス応答S(n)を求める。
【0024】
【数1】

(2)
【0025】
続いて、相関値算出部121は、複素インパルス応答S(n)を二乗演算することにより、図3のような参照シンボルと既知シンボルとの相関を示す電力信号(相関値データ)131を生成する。横軸は、逆フーリエ変換におけるポイント数(例えば、−256〜256)であり、縦軸は電力値(相関値)である。相関値ピークが高いほど、通信環境の良さを表している。つまり、移動局がLOS(Line Of Sight:見通し)環境や基地局に近いエリアに位置すると相関値の値は大きくなる。また、移動局がNLOS(Non Line Of Sight)環境や基地局のセルエッジに近いエリアに位置すると相関値の値は小さくなる。よって、相関値算出部121は、移動局と基地局との間の通信環境の良さを相関値から推定することができる。
【0026】
相関値算出部121は、算出した相関値ピークと記憶部115に記憶されている相関閾値とを比較する。相関閾値の値及び種類は、任意に設定されうるものである。本実施形態では、図3に示されるように、第1相関閾値CS1、第2相関閾値CS2及び第3相関閾値CS3の3つの相関閾値が設定されているとする。第1相関閾値CS1は、基地局が受信した信号が、移動局からの発呼要求に基づく信号か、又は雑音信号かを判断するための指標である。つまり基地局は、第1相関閾値CS1未満の相関値ピークを有する信号は単なる雑音信号と判断し、第1相関閾値CS1以上の相関値ピークを有する信号の受信から、接続を要求する移動局が存在すると判断する。第2相関閾値CS2(第2相関閾値CS2>第1相関閾値CS1)及び第3相関閾値CS3(第3相関閾値CS3>第2相関閾値CS2)は、接続を要求する移動局の通信環境の良さを判断するための指標である。以下、第1相関閾値CS1以上第2相関閾値CS2未満である相関値ピークを有する信号を送信した移動局を低環境移動局と、第2相関閾値CS2以上第3相関閾値CS3未満である相関値ピークを有する信号を送信した移動局を中環境移動局と、第3相関閾値CS3以上である相関値ピークを有する信号を送信した移動局を高環境移動局と称するとする。
【0027】
キャリアセンス部123は、キャリアセンスを実行し、割当可能な(使用可能な)無線チャネルを特定する。まず、キャリアセンス部123は、受信信号の受信電力を算出する。受信電力とは、受信電界強度(RSSI:Received Signal Strength Indicator)や搬送波対雑音比(CNR:carrier to noise ratio)などである。本実施形態では、受信電力は、受信電界強度であるとする。そして、キャリアセンス部123は、受信電界強度と記憶部115に記憶されている所定のキャリアセンス閾値(第1キャリアセンス閾値)とを比較する。第1キャリアセンス閾値とは、無線チャネルの使用可否を判断する際に利用されるものである。第1キャリアセンス閾値以上の受信電界強度が測定された信号に対応する無線チャネルは、割当不可能な無線チャネルと判断される。また、第1キャリアセンス閾値未満の受信電界強度が測定された信号に対応する無線チャネルは、新たな通信のために割当可能な無線チャネルであると判断される。
【0028】
本実施形態では、図4に示すように、第1キャリアセンス閾値以外に更に第2キャリアセンス閾値(第2キャリアセンス閾値<第1キャリアセンス閾値)及び第3キャリアセンス閾値(第3キャリアセンス閾値<第2キャリアセンス閾値)が設定されているとする。第2キャリアセンス閾値及び第3キャリアセンス閾値は、割当可能な無線チャネルの無線状態の良さを判断するための指標である。受信電界強度は小さいほど、干渉が少ない無線チャネルを意味するので、第2キャリアセンス閾値以上第1キャリアセンス閾値未満の受信電界強度に関する無線チャネルを高干渉無線チャネルと、第3キャリアセンス閾値以上第2キャリアセンス閾値未満の受信電界強度に関する無線チャネルを中干渉無線チャネルと、第3キャリアセンス閾値未満の受信電界強度に関する無線チャネルを低干渉無線チャネルと称するとする。なお、キャリアセンス閾値の種類は上記の3つに限定されるわけではなく、任意に設定できる事項である点に留意すべきである。
【0029】
割当部125は、相関値算出部121により推定された通信環境と、キャリアセンス部123によるキャリアセンス結果から通信接続を希望する移動局に割り当てる無線チャネルを決定する。割当方法については、後述の図5の説明にて詳述する。
【0030】
続いて、図1に示される基地局103aが相手通信装置となる移動局101aに無線チャネルを割り当てる方法について、図5を参照して説明する。図5は、本発明の一実施形態に係る基地局の処理を示すフローチャートである。なお、図2の基地局103に示した各機能ブロックに関する参照符号として、基地局103aに関する機能ブロックの参照符号にはaを付して説明する。
【0031】
基地局103aのキャリアセンス部123aは、移動局からの接続要求とは関係なく毎回の受信フレーム期間においてキャリアセンスを実行し、基地局103aのセル内の通信環境について把握しておく(ステップS101)。つまり、キャリアセンス部123aは、受信フレーム期間中の受信信号から当該受信信号の受信電界強度と記憶部115aに記憶されている第1〜第3キャリアセンス閾値とを比較して、割当可能な無線チャネルの情報を記憶部115aに記憶する。割当可能な無線チャネルの情報とは、無線チャネルのチャネル番号(周波数帯域情報)及び当該無線チャネルの属性(高干渉無線チャネル、中干渉無線チャネル、低干渉無線チャネルのいずれか)等である。
【0032】
その後、移動局101aが基地局103aとの接続を要求する場合、移動局101aは、まず受信タイミングの同期を図る。受信タイミングの同期に成功した後、移動局101aは、送信タイミングの同期を図るため、基地局103aにレンジング信号を送信する。レンジング信号は、XGPシステムにおいてはTCCH(Timing Correct CHannel:タイミングコレクトチャネル)で送信されるもので、移動局と基地局との間の伝播遅延を求めるために参照シンボルを含む。
【0033】
基地局103aの送受信部111aがレンジング信号を受信すると(ステップS102)、ベースバンド部113aが当該信号を復調する。そして、相関値算出部121aは、復調された信号内の参照シンボルと記憶部115aに記憶されている既知シンボルとの相関値を算出する(ステップS103)。相関値算出部121aは、算出した相関値のピークと記憶部115aに記憶されている第1〜第3相関閾値CS1、CS2、CS3とを比較して、移動局101a(接続要求移動局)が低環境移動局、中環境移動局、高環境移動局のいずれの属性であるかを判断する(ステップS104)。なお、相関値算出部121aは、当該相関値から基地局103aと移動局101aとの間のタイミング遅延量を求めることもできる。そして、タイミング遅延量が移動局101aに通知されることにより、移動局101aは、送信タイミングをタイミング遅延量分ずらすことになる。これにより、移動局101aは送信タイミングの同期をとることができる。
【0034】
続いて、割当部125aは、記憶部115aの記憶情報から、割当可能な無線チャネルが存在するか判断する(ステップS105)。割当可能な無線チャネルが存在する場合(ステップS105のYes)、割当部125aは、割当可能な無線チャネルの属性及び接続要求移動局の属性に基づいて、移動局に割り当てる無線チャネルを決定する。具体的には、割当部125aは、通信環境が良い相手通信装置であるほど、割当可能な無線チャネルのうち所定のキャリアセンス閾値(第1キャリアセンス閾値)に近い受信電界強度の無線チャネルを割り当てる。つまり、通信環境の悪い接続要求移動局に無線状態の良い無線チャネルが割り当てられる。例えば、移動局101aが低環境移動局である場合(ステップS106のYes)、割当部125aは、移動局101aに低干渉無線チャネルを割り当てることができる(ステップS107)。また、移動局101aが中環境移動局である場合(ステップS106のNo及びステップS108のYes)、割当部125aは、移動局101aに中干渉無線チャネルを割り当てることができる(ステップS109)。更に、移動局101aが高環境移動局である場合(ステップS108のNo)、割当部125aは、移動局101aに高干渉無線チャネルを割り当てることができる(ステップS110)。
【0035】
ステップS105において、割当可能な無線チャネルが存在しない場合(ステップS105のNo)、基地局103aは以下の処理を行うことができる。
【0036】
第1キャリアセンス閾値は、上述したように、基地局が電波を受信できる範囲内で使用されている無線チャネルを特定するための指標である。つまり、第1キャリアセンス閾値以上の受信電界強度に関する無線チャネルは、干渉の影響を強く受けるために割当不可能であることを意味する。しかし、第1キャリアセンス閾値は、無線チャネルの割り当て可否を判断するものであるが、第1キャリアセンス閾値以上の受信電界強度に関する無線チャネルであっても相関値が所定の相関閾値以上である移動局であれば使用できる場合がある。本実施形態では、所定の相関閾値とは第3相関閾値であるとする。なお、当該閾値は第3相関閾値に限定されるものではなく、任意に設定できる事項である点に留意すべきである。
【0037】
そこで、キャリアセンス部123aは、第1キャリアセンス閾値を引き上げる(ステップS111)。引き上げ量は、相関値が第3相関閾値以上である移動局(高環境移動局)が使用可能な無線チャネルの無線状態に依存するものである。つまり、引き上げ量は、所定の相関閾値に応じて変化するものである。
【0038】
そして、割当部125aは、引き上げ後の第1キャリアセンス閾値と受信電界強度との比較により、再度割当可能な無線チャネル(以下、高環境移動局用無線チャネル)が存在するか判断する(ステップS112)。例えば、移動局101bが発する電波の受信電界強度が引き上げ前の第1キャリアセンス閾値以上引き上げ後の第1キャリアセンス閾値未満である場合、無線チャネル107が高環境移動局用無線チャネルであると特定される。
【0039】
高環境移動局用無線チャネルが存在する場合(ステップS112のYes)、割当部125aは、接続要求移動局が高環境移動局であるか判断する(ステップS113)。
【0040】
移動局101aが高環境移動局である場合(ステップS113のYes)、割当部125aは、移動局101aに高環境移動局用無線チャネルを割り当てる(ステップS114)。
【0041】
このように本実施形態では、基地局103aの制御部117aは、移動局101aが接続要求時に送信したレンジング信号(無線信号)と既知信号との相関値を算出し、算出された相関値から推定される通信環境とキャリアセンス結果とに基づいて、相関値から推定される通信環境が良い移動局であるほど、割当可能な無線チャネルのうち第1キャリアセンス閾値に近い受信電界強度の無線チャネルを割り当てる。つまり、制御部117aは、キャリアセンス結果により最も無線状態が良いと判断される無線チャネルを移動局101aに割り当てるわけではなく、移動局101aの通信環境に応じて割り当てる無線チャネルを変更する。よって、制御部117aは、通信環境の良い移動局には無線状態の悪い無線チャネルを割り当て、通信環境の悪い移動局には無線状態の良い無線チャネルを割り当てることができる。これにより、通信システム全体のスループットを改善することができる。また、本実施形態では、本発明を実現するためのみに相関値の算出を行っているわけではなく、接続要求移動局が送信タイミングの同期をとるために必要な相関値の算出結果を利用している。つまり、本実施形態では、割り当てる無線チャネルの決定のための相関値の考慮に伴う処理負担を抑えることができる。
【0042】
また、本実施形態では、キャリアセンス結果より割当可能な無線チャネルが存在しない場合、制御部117aは、第1キャリアセンス閾値を引き上げ、当該引き上げにより割当可能となった無線チャネルを相関値が第3相関閾値以上である移動局に割り当てることができる。制御部117aは、接続要求移動局の通信環境を考慮することにより、第1キャリアセンス閾値の引き上げが可能となる。これにより、制御部117aは、割当可能な無線チャネルを増やすことができる。よって、周波数帯域の利用効率及びユーザ(移動局)の収容率が向上する。
【0043】
第1キャリアセンス閾値の引き上げは、実際には割当可能(使用可能)な無線チャネルであるにもかかわらず、キャリアセンス実行時に偶発的に発生した干渉により、使用不可能な無線チャネルであると判断されることを防ぐこともできる。マルチキャリア方式が採用された通信システムでは、様々な干渉が発生することがあり、当該干渉はキャリアセンスの精度に影響を及ぼすことになる。様々な干渉とは、隣接する基地局同士の電波の干渉、遅延波によるシンボル間干渉(ISI:Inter Symbol Interference)、サブキャリア間の直交性が崩れることにより生じる搬送波間干渉(ICI:Inter Carrier Interference)などが挙げられる。サブキャリア間の直交性の崩れは、端末の周波数誤差やドップラーシフトなどにより生じる周波数オフセットを原因とする。上記のような干渉が発生すると、干渉波の周波数帯域の信号レベルが上がることになり、キャリアセンスにより割当不可能であると判断される無線チャネルが増えることになる。本実施形態は、このような状況を、接続要求移動局の通信環境を考慮して第1キャリアセンス閾値を引き上げることにより回避できる。
【0044】
本発明を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。
【0045】
例えば、各部材、各手段、各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段やステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0046】
上記の実施形態においては、本発明の通信装置を基地局に適用した場合について説明したが、本発明は、基地局に限定されるものではない。本発明は、例えば、キャリアセンスを実行でき、割り当てる無線チャネルを決定する無線LANのアクセスポイントに適用することもできる。
【0047】
また、上述の本発明の実施形態の説明において、例えば、キャリアセンス閾値(相関閾値についても同様。以下同じ。)「以上」またはキャリアセンス閾値「未満」のような表現の技術的思想が意味する内容は必ずしも厳密な意味ではなく、通信装置の仕様に応じて、基準となる値を含む場合又は含まない場合の意味を包含するものとする。例えば、キャリアセンス閾値「以上」とは、キャリアセンス結果がキャリアセンス閾値に達した場合のみならず、キャリアセンス閾値を超えた場合も含意し得るものとする。また、例えばキャリアセンス閾値「未満」とは、キャリアセンス結果がキャリアセンス閾値を下回った場合のみならず、キャリアセンス閾値に達した場合、つまりキャリアセンス閾値以下になった場合も含意し得るものとする。
【0048】
上述したように本発明の解決手段を装置として説明してきたが、本発明はこれらに実質的に相当する方法、プログラム、プログラムを記録した記憶媒体としても実現し得るものであり、本発明の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
【符号の説明】
【0049】
11 通信システム
101a、101b 移動局
103、103a、103b 基地局
105a、105b 領域(セル)
107 無線チャネル
111 送受信部
113 ベースバンド部
115 記憶部
117 制御部
121 相関値算出部
123 キャリアセンス部
125 割当部
131 相関値データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアセンスを実行し、キャリアセンス結果に基づいて無線チャネルを相手通信装置に割り当てる通信装置であって、
無線信号を送受信する送受信部と、
前記相手通信装置が接続要求時に送信した無線信号と既知信号との相関値を算出し、前記算出された相関値から推定される通信環境とキャリアセンス結果とに基づいて無線チャネルを割り当てる制御部と
を備える通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の通信装置において、前記制御部は、
無線チャネルの使用可否を判断する際に利用される所定のキャリアセンス閾値未満の受信電力の無線チャネルを割当可能な無線チャネルであると判断し、
相関値から推定される通信環境が良い相手通信装置であるほど、割当可能な無線チャネルのうち前記所定のキャリアセンス閾値に近い受信電力の無線チャネルを割り当てることを特徴とする通信装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の通信装置において、キャリアセンス結果より割当可能な無線チャネルが存在しない場合、
前記制御部は、
‐ 前記所定のキャリアセンス閾値を引き上げ、
‐ 当該引き上げにより割当可能となった無線チャネルを相関値が所定の相関閾値以上である相手通信装置に割り当てる
ことを特徴とする通信装置。
【請求項4】
キャリアセンスを実行し、キャリアセンス結果に基づいて無線チャネルを相手通信装置に割り当てる通信装置における通信方法であって、
無線信号を送受信するステップと、
前記相手通信装置が接続要求時に送信した無線信号と既知信号との相関値を算出し、前記算出された相関値から推定される通信環境とキャリアセンス結果とに基づいて無線チャネルを割り当てるステップと
を含む通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−222647(P2012−222647A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87316(P2011−87316)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】