説明

通信装置

【課題】情報通信の安定化を図りうる通信装置を提供する。
【解決手段】通信装置は、送信機1と受信機2を含む。送信機1は、送信すべき情報INを変調して出力する変調回路3と、この変調回路3からの送信出力信号を放射する送信アンテナ電極4と、を有する。受信機2は 送信アンテナ電極4と対をなし、送信アンテナ電極4から放射された送信出力を受信する受信アンテナ電極5と、この受信アンテナ電極5と送信アンテナ電極4との間に存在する準静電界の静電容量Cを回路要素として発振動作を行う発振回路6と、この発振回路6からの出力信号を復調する復調回路7と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、準静電界を利用して情報の送受信を行う通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、静電容量の変化を利用して操作指示情報を送信するようにした電子楽器として、テルミンが知られている。テルミンは、アンテナと操作者の手との相対間隔の変化、すなわち操作者の手とアンテナとの間の静電容量の変化に対応させて発信周波数を変化させることにより操作者が意図する音階の電子音を発生させるものである。
一方、準静電界を利用して情報の送受信を行うようにした通信システムとして、特許文献1に開示されたものが知られている。この通信システムによれば、人体に帯電する準静電界を介して送信すべき情報の送受信が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4088896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記静電容量を利用して情報の送受信を行う電子楽器の場合、人体ノイズの影響を受けやすく、操作情報の通信動作が不安定になりやすい。
また、準静電界を利用した通信システムの場合、受信機側において電界の変化を直接的に電圧の変化として捉えるものであるため、動作が不安定になることがあり、S/N比が必ずしも良好でない場合が起こる。S/N比を向上させるためには信号成分S、すなわち電圧を高くしなければならない。しかし、高い電圧を用いるためには部品の数を増やし、また、耐圧の高い部品を使用する必要があり、必然的にコスト高となる。
本発明の課題は、情報通信の安定化を図りうる通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、
送信すべき情報をFSK変調又はPSK変調する変調回路、及び、当該変調回路からの送信出力信号を放射する送信電極、を含む送信機と、
前記送信電極と対をなし前記放射された送信出力信号を受信する受信電極、当該受信電極と前記送信電極との間の準静電界の静電容量を回路要素として発振動作を行う発振回路、及び、当該発振回路からの出力信号をFSK復調又はPSK復調する復調回路、を含む受信機と、
を備えた通信装置である。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の通信装置において、前記変調回路を、送信すべき情報をプログラムに基づいて変調処理するコンピュータで構成し、前記復調回路を、前記発振回路からの出力信号をプログラムに基づいて復調処理するコンピュータで構成したものである。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の通信装置において、前記送信電極を送信アンテナ電極としたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、送信すべき情報を周波数偏移変調(FSK変調)又は位相偏移変調(PSK変調)した送信出力信号として受信機に送信し、受信機の発振回路では、受信電極と送信電極との間の準静電界の静電容量を回路要素として発振動作を行い、この発振回路からの出力信号を周波数偏移復調(FSK復調)又は位相偏移復調(PSK復調)しているので、受信機において、確実に、送信すべき情報の判別が可能となることから、情報通信の安定化を図りうる通信装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態を示すブロック図である。
【図2】受信機の発振回路の例を示す回路図である。
【図3】本発明の第2の実施形態を示すブロック図である。
【図4】第2の実施形態における送信機側コンピュータの送信処理プログラムの例を示すフローチャートである。
【図5】第2の実施形態における受信機側コンピュータの受信処理プログラムの例を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第3の実施形態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
[第1の実施形態]
図1に、本発明に係る通信装置の第1の実施形態を示す。
まず、構成を説明する。
通信装置は、図1に示すように、送信機1と、受信機2とからなる。
送信機1は、送信すべき情報INを変調するFSK(Frequency Shift Keying)変調回路3と、FSK変調回路3の送信出力を放射する送信電極である送信アンテナ電極4と、を有する。
【0011】
受信機2は、送信アンテナ電極4から放射された送信出力を受信する受信電極である受信アンテナ電極5と、受信アンテナ電極5と送信アンテナ電極4との間に存在するコンデンサ(静電容量)Cを回路要素として発振動作を行う発振回路6と、発振回路6からの出力信号を復調するFSK復調回路7と、を有する。
受信アンテナ電極5は、送信アンテナ電極4と対をなし、送信アンテナ電極4との間に存在するコンデンサ(静電容量)Cを介して静電誘導により送信アンテナ電極4からの送信出力を受信する。
【0012】
発振回路6は、CR型の発振回路であり、その例を図2に示す。発振回路6は、受信アンテナ電極5と送信アンテナ電極4との間のコンデンサCを回路要素とし、このコンデンサC、受信アンテナ電極5に接続された抵抗器R1、R2及びフィードバックループに接続されたC-MOS等のインバータ(ゲートIC)NOTを有し、インバータNOTのヒステリシス特性を利用してある固有周波数F0の矩形波信号を発振する。
次に動作を説明する。
【0013】
今、送信すべき情報信号INのデータを上記固有周波数F0より低い周波数FLの場合に論理“0”、固有周波数F0より高い周波数FHの場合に論理“1”と定義する。
FSK変調回路3は、送信すべき情報信号INのデータ内容に応じてFSK変調を行い、論理“0”又は“1”に応じた周波数の信号電圧を発生する。
この変調された送信信号電圧は、送信アンテナ電極4に印加される。
このとき、送信アンテナ電極4には送信信号電圧の周波数に応じた交番電界が発生する。この交番電界の静電誘導により受信機2の受信アンテナ電極5に電圧が誘起される。
誘起された電圧は受信機2の発振回路6に入力される。
発振回路6は、入力信号電圧の周波数に変化がない場合、自己の固有周波数F0の電圧をFSK復調回路7に出力する。発振回路6は、入力信号電圧の周波数が低い周波数FLに変化した場合、その周波数の変化に応じて低い周波数の信号電圧をFSK復調回路7に出力する。これとは逆に、発振回路6は、入力信号電圧の周波数が高い周波数FHに変化した場合、その周波数の変化に応じて高い周波数の信号電圧をFSK復調回路7に出力する。
FSK復調回路7は、入力信号電圧の周波数の変化の有無により情報の送信の有無を検出し、入力信号電圧の周波数がFLの場合にデータは“0”であり、FHの場合に“1”と復調する。
このようにして、送信機1から送信すべき情報信号電圧の周波数の変化に伴う準静電界の変動、すなわちコンデンサCの変化により論理“0”または“1”のディジタル信号として受信機2に伝えることができる。
【0014】
[第2の実施形態]
図3に、本発明に係る通信装置の第2の実施形態を示す。
まず、構成を説明する。
この通信装置は、送信機1のFSK変調回路3をマイクロコンピュータ8により構成し、且つ受信機2のFSK復調回路7をマイクロコンピュータ9により構成した例である。
その他の送信アンテナ電極4、受信アンテナ電極5については図1に示すものと同様であり、発振回路6も図2に示す例と同様とする。以下、図3において図1又は図2と同様の部分については、同一の符号若しくは番号を付してその詳細な説明を省略する。
【0015】
マイクロコンピュータ8は、図示しないが、CPU、ROM、RAM、I/Oポートを備えている。マイクロコンピュータ8は、CPUの統括的な制御下においてROMに格納された送信処理プログラムをワークエリアのRAMに展開し、この展開された送信処理プログラムとCPUとの協働により、後述する送信動作を実行する。
マイクロコンピュータ9は、図示しないが、CPU、ROM、RAM、I/Oポートを備えている。マイクロコンピュータ9は、CPUの統括的な制御下においてROMに格納された受信処理プログラムをワークエリアであるRAMに展開し、この展開された受信処理プログラムとCPUとの協働により、後述する受信動作を実行する。
なお、マイクロコンピュータ8、9に代えて、各プログラムと等価なハードウエアロジックで組まれたASIC等の専用ICを用いることも可能である。
【0016】
次に動作を説明する。
図4に、マイクロコンピュータ8が実行するFSK変調処理アルゴリズムのフローチャートを示す。
マイクロコンピュータ8は、ステップS1において送信すべき情報信号の入力の有無を検出する。入力がない場合は入力があるまで待機する(ステップS1:NO)。送信すべき情報信号の入力があると(ステップS1:YES)、処理はステップS2に進む。
ステップS2では、FSK変調処理が行われる。この変調処理は、第1の実施形態と同様である。すなわち、ある固有周波数F0より低い周波数FLの場合に論理“0”、固有周波数F0より高い周波数FHの場合に論理“1”と定義された送信すべき情報信号INのデータ内容に応じてFSK変調を行い、論理“0”又は“1”に応じた周波数の信号電圧(交番電圧)を発生させ、この変調された送信信号電圧を送信アンテナ電極4に印加する。
以上の処理は、送信すべき情報信号の入力が終了するまで繰り返され(ステップS3:NO)、入力データがなくなった段階で終了する(ステップS3:YES、END)。
【0017】
変調された送信信号電圧が送信アンテナ電極4に印加されると、上記第1の実施形態と同様に、送信アンテナ電極4には送信信号電圧の周波数に応じた交番電界が発生する。この交番電界の静電誘導により受信機2の受信アンテナ電極5に電圧が誘起される。誘起された電圧は受信機2の発振回路6に入力される。
発振回路6は、入力信号電圧の周波数に変化がない場合、自己の固有周波数F0の電圧をFSK復調回路7に出力する。発振回路6は、入力信号電圧の周波数が低い周波数FLに変化した場合、その周波数の変化に応じて低い周波数の信号電圧をFSK復調回路7に出力する。これとは逆に、発振回路6は、入力信号電圧の周波数が高い周波数FHに変化した場合、その周波数の変化に応じて高い周波数の信号電圧をマイクロコンピュータ9に出力する。
【0018】
ここで、図5に、マイクロコンピュータ9が実行するFSK復調処理アルゴリズムのフローチャートを示す。
マイクロコンピュータ9は、ステップS10において入力信号電圧の周波数の変化の有無を検出する。変化がない場合は変化があるまで待機する(ステップS10:NO)。入力信号電圧の周波数の変化があると(ステップS10:YES)、処理はステップS20に進む。
ステップS20では、FSK復調処理が行われる。この復調処理は、第1の実施形態と同様である。すなわち、発振回路6から出力される信号電圧の周波数がFLに変化した場合にデータは論理“0”であり、FHに変化した場合は論理“1”と復調する。
このようにして、マイクロコンピュータを利用して、送信機1から送信すべき情報信号電圧の周波数の変化に伴う準静電界の変動、すなわちコンデンサCの変化により論理“0”または“1”のディジタル信号として受信機2に送信し、受信機2においてデータ解析が可能となる。
【0019】
[第3の実施形態]
図6に、本発明に係る通信装置の第3の実施形態を示す。
この第3の実施形態の通信装置は、上記第1の通信装置のFSK変調回路3に代えてPSK(Phase Shift Keying)変調回路13を設け、上記FSK復調回路7に代えてPSK復調回路17を設けたものである。この第3の実施形態の通信装置における発振回路6としては、特に限定はされないが、図2に示すものが用いられている。
なお、この第2の実施形態の通信装置において、その他の点については、上記第1の実施形態の通信装置と同様の構成となっている。
【0020】
この第2の実施形態の通信装置によれば、送信すべき情報信号INのデータ内容に応じてPSK変調を行い、論理“0”又は“1”に応じた信号電圧を発生する。例えば、2PSKにおいては、基準位相の場合に論理“0”、基準位相から位相が180度ずれた場合に論理“1”とする。
この変調された送信信号電圧は、送信アンテナ電極4に印加される。
このとき、送信アンテナ電極4には送信信号電圧の周波数及び位相に応じた交番電界が発生する。この交番電界の静電誘導により受信機2の受信アンテナ電極5に電圧が誘起される。
誘起された電圧は受信機2の発振回路6に入力される。
発振回路6は、入力信号電圧の位相に変化がない場合、自己の固有周波数F0及び基準位相を持つ電圧をPSK復調回路17に出力する。発振回路6は、入力信号電圧の位相が180度ずれた場合、その位相の変化に応じた位相の信号電圧をFSK復調回路7に出力する。
PSK復調回路17は、入力信号電圧の位相の変化の有無により情報の送信の有無を検出し、入力信号電圧の位相に変化がない場合にはデータは“0”であり、位相変化がある場合に“1”と復調する。
このようにして、送信機1から送信すべき情報信号電圧の周波数の変化に伴う準静電界の変動、すなわちコンデンサCの変化により論理“0”または“1”のディジタル信号として受信機2に伝えることができる。
【0021】
[変形例]
上記第1の実施形態の説明では、データの定義をある固有周波数F0を基準として、それより低い周波数FLの場合に論理“0”、高い周波数FHの場合に“1”として復調する例を示したが、逆であってもよい。
また、一定期間内に周波数の変化がない場合に論理“0”、変化があった場合に論理“1”と定義し、変調/復調を行うことで、上記同様のデータ通信が可能である。この場合も逆とすることができる。
【0022】
また、上記第3の実施形態の説明では、2PSKの場合を例に説明したが、4PSK、8PSKその他の位相偏移変調を用いることもできる。
【0023】
また、上記第3の実施形態のPSK変調回路13及びPSK復調回路17をマイクロコンピュータで構成してもよい。
【0024】
また、通信装置及び受信装置で使用される発振回路の基準又は固有の周波数は、必ずしも、同じである必要はない。
【0025】
また、通信装置及び受信装置で使用される発振回路の基準又は固有の周波数は、室内の電源の周波数(50Hz又は60Hz)によるノイズが影響しないように、10倍程度以上の基準又は固有の周波数を持つ発振回路を使用することが好ましい。特に、100KHz〜2MHzの発振回路を持つことが好ましい。
【符号の説明】
【0026】
1 送信機
2 受信機
3 FSK変調回路
4 送信アンテナ電極
5 受信アンテナ電極
6 発振回路
7 FSK復調回路
8 マイクロコンピュータ
9 マイクロコンピュータ
C コンデンサ(静電容量)
R1、R2 抵抗器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信すべき情報をFSK変調又はPSK変調する変調回路、及び、当該変調回路からの送信出力信号を放射する送信電極、を含む送信機と、
前記送信電極と対をなし前記放射された送信出力信号を受信する受信電極、当該受信電極と前記送信電極との間の準静電界の静電容量を回路要素として発振動作を行う発振回路、及び、当該発振回路からの出力信号をFSK復調又はPSK復調する復調回路、を含む受信機と、
を備えた通信装置。
【請求項2】
前記変調回路を、送信すべき情報をプログラムに基づいて変調処理するコンピュータで構成し、前記復調回路を、前記発振回路からの出力信号をプログラムに基づいて復調処理するコンピュータで構成した請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記送信電極を送信アンテナ電極とした請求項1又は請求項2に記載の通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−199545(P2011−199545A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63503(P2010−63503)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000003584)株式会社タカラトミー (248)
【Fターム(参考)】