説明

通信装置

【課題】 IPFAX送信を実行不可能であることをユーザに適切に通知すること。
【解決手段】 FAX装置は、S32,S34,S46において、SIPの通信方式に従ってIPFAX送信を実行可能であるのか否かを判断する(第1種の判断処理)。FAX装置は、S40,S44において、SIPの通信方式に従ってIPFAX送信を実行可能であるのか否かを判断する(第2種の判断処理)。FAX装置は、第1種及び第2種の判断処理で肯定的に判断される場合に、SIPの通信方式に従ったFAX送信を実行する(S52)。FAX装置は、第1種又は第2種の判断処理において否定的に判断される場合に、G.3の通信方式に従ったFAX送信を実行する(S66)。FAX装置は、第1種の判断処理で否定的に判断されてもユーザに通知せず、第2種の判断処理で否定的に判断されるとユーザに通知する(S60)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、G3−FAX、IP−FAX等の複数の通信方式に従って、FAX通信を実行可能なFAX装置が開示されている。G3−FAXは、一般公衆回線網(PSTN(Public Switched Telephone Network))を介したFAX通信を実行するための通信方式である。IP−FAXは、IP(Internet Protocol)に従ったFAX通信を実行するための通信方式である。なお、特許文献1には、G3−FAXは通信エラーが発生し易く、IP−FAXは通信エラーが発生し難い、ということが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−208448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、通信装置が通信を実行不可能である場合には、通信を実行不可能であることを示す情報をユーザに通知することが好ましい。上記の特許文献1には、ユーザへの通知について、何ら開示されていない。
【0005】
本明細書では、通信装置が通信を実行不可能であることをユーザに適切に通知し得る技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書によって開示される通信装置は、第1の判断部と、第2の判断部と、第1の通信部と、第2の通信部と、通知部と、を備える。第1の判断部は、第1種の判断基準に基づいて、通信装置が、第1の通信方式に従って、通信対象の対象データの通信を実行可能であるのか否かを判断する第1種の判断処理を実行する。第2の判断部は、第1種の判断基準と異なる第2種の判断基準に基づいて、通信装置が、第1の通信方式に従って、対象データの通信を実行可能であるのか否かを判断する第2種の判断処理を実行する。第1の通信部は、第1種の判断処理において、対象データの通信を実行可能であると判断され、かつ、第2種の判断処理において、対象データの通信を実行可能であると判断される場合に、第1の通信方式に従って、対象データの通信を実行する。第2の通信部は、第1種の判断処理において、対象データの通信を実行不可能であると判断される場合に、第1の通信方式と異なる第2の通信方式に従って、対象データの通信を実行する。通知部は、第1種の判断処理において、対象データの通信を実行不可能であると判断される場合に、第1の通信方式に従った対象データの通信を実行不可能であることを示す特定の情報をユーザに通知せずに、第2種の判断処理において、対象データの通信を実行不可能であると判断される場合に、上記の特定の情報をユーザに通知する。
【0007】
上記の構成によると、通信装置は、第1種及び第2種の判断処理を実行して、第1の通信方式に従って通信可能であるのか否かを判断する。通信装置は、第1種及び第2種の判断処理において、第1の通信方式に従って通信可能であると判断される場合には、第1の通信方式に従った通信を実行し、第1種の判断処理において、第1の通信方式に従って通信不可能であると判断される場合には、第2の通信方式に従った通信を実行する。このために、通信装置は、第1の通信方式に従って通信不可能である場合でも、第2の通信方式に従った通信を実行することができるために、対象データの通信を適切に実行し得る。特に、上記の構成では、通信装置は、第1種の判断処理において、通信を実行不可能であると判断される場合に、ユーザに通知せずに、第2種の判断処理において、通信を実行不可能であると判断される場合に、ユーザに通知する。この技術を利用すれば、例えば、ユーザに通知する必要がない原因(即ち第1種の判断基準)で通信不可能であると判断される場合には、ユーザに通知せず、ユーザに通知する必要がある原因(即ち第2種の判断基準)で通信不可能であると判断される場合には、ユーザに通知する、という構成を採用し得る。このために、通信装置が通信を実行不可能であることをユーザに適切に通知し得る。
【0008】
第2の通信部は、さらに、第2種の判断処理において、対象データの通信を実行不可能であると判断される場合に、通知部が上記の特定の情報をユーザに通知した後に、第2の通信方式に従って、対象データの通信を実行してもよい。この構成によると、通信装置は、第1の通信方式に従って通信不可能である場合に、第2の通信方式に従った通信を実行することができる。
【0009】
第1種の判断処理は、通信装置が、ユーザが第1の通信方式に従った通信の実行を望むことを示す第1の情報を、格納しているのか否かを判断する第1の判断処理と、通信装置が、第1の通信方式に従った通信のための第2の情報を、取得可能であるのか否かを判断する第2の判断処理と、の少なくとも一方を含んでいてもよい。第2種の判断処理は、通信装置がネットワークに接続されているのか否かを判断する第3の判断処理と、通信装置が、第1の通信方式に従った通信を仲介する仲介サーバに信号を送信した際に、仲介サーバから応答を受信したのか否かを判断する第4の判断処理と、の少なくとも一方を含んでいてもよい。この構成によると、通信装置は、第1の通信方式に従って、対象データの通信を実行可能であるのか否かを、適切に判断し得る。
【0010】
第1の判断部は、第2の判断処理の前に、第1の判断処理を実行してもよい。第1の判断部は、第1の判断処理において、通信装置が第1の情報を格納していると判断される場合に、第2の判断処理を実行し、第1の判断処理において、通信装置が第1の情報を格納していないと判断される場合に、第2の判断処理を実行せずに、対象データの通信を実行不可能であると判断してもよい。この構成によると、通信装置は、第1の判断処理で否定的に判断される場合に、第2の判断処理を実行しない。従って、通信装置の処理負荷を低減し得る。
【0011】
第1の判断部は、第2の判断部が第2種の判断処理を実行する前に、第2の判断処理を実行してもよい。第2の判断部は、第2の判断処理において、通信装置が第2の情報を取得可能であると判断される場合に、第2種の判断処理を実行し、第2の判断処理において、通信装置が第2の情報を取得不可能であると判断される場合に、第2種の判断処理を実行しなくてもよい。この構成によると、通信装置は、第2の判断処理で否定的に判断される場合に、第2種の判断処理を実行しない。従って、通信装置の処理負荷を低減し得る。
【0012】
通信装置は、第3の判断部をさらに備えていてもよい。第3の判断部は、通信装置が、ユーザが第2の通信方式に従った対象データの通信の実行を望むことを示す第3の情報を、格納しているのか否かを判断する第3種の判断処理を実行してもよい。第2の通信部は、第1種の判断処理において、対象データの通信を実行不可能であると判断される場合において、(1)第3種の判断処理において、通信装置が第3の情報を格納していると判断される場合に、第2の通信方式に従って、対象データの通信を実行し、(2)第3種の判断処理において、通信装置が第3の情報を格納していないと判断される場合に、第2の通信方式に従って、対象データの通信を実行しなくてもよい。この構成によると、通信装置は、ユーザの意図に応じて、第2の通信方式に従った対象データの通信を実行することができる。
【0013】
上記の特定の情報は、第1の通信方式に従った通信を実行不可能である原因と、第1の通信方式に従った通信を実行可能にするための対策と、の少なくとも一方を含んでいてもよい。この構成によると、ユーザは、上記の特定の情報に従って、第1の通信方式に従った通信を実行不可能である原因を取り除くための作業(即ち第1の通信方式に従った通信を実行可能にするための対策)を実行し得る。
【0014】
第1の通信方式は、対象データの送信先としてユーザによって指定される識別情報に所定のドメインを付加することによって得られるIP識別情報を用いて、IP通信を実行するための通信方式であってもよい。第2の通信方式は、対象データの送信先としてユーザによって指定される識別情報を用いて、一般公衆回線網を介した通信を実行するための通信方式であってもよい。
【0015】
なお、上記の通信装置を実現するための制御方法、コンピュータプログラム、及び、当該コンピュータプログラムを格納するコンピュータ読取可能記録媒体も、新規で有用である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】通信システムの構成の一例を示す。
【図2】モードと設定との関係を示す。
【図3】メイン処理のフローチャートを示す。
【図4】起動時処理のフローチャートを示す。
【図5】FAX送信処理のフローチャートを示す。
【図6】判断結果と通知の有無と通信種別との関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施例)
(システムの構成)
図1に示されるように、通信システム2は、複数のFAX装置10,110を備える。
FAX装置10,110のそれぞれは、PSTN4に接続されている。従って、FAX装置10,110のそれぞれは、PSTN4を介して、相互に通信可能である。また、FAX装置10は、LAN6に接続されており、FAX装置110は、LAN9に接続されている。LAN6,9のそれぞれは、インターネット8に接続されている。従って、FAX装置10,110のそれぞれは、LAN6,9及びインターネット8を介して、相互に通信可能である。LAN6には、DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)サーバ70が接続されている。インターネット8には、SIP(Session Initiation Protocol)サーバ60が設けられている。
【0018】
(FAX装置10の構成)
FAX装置10は、PSTNFAX機能、IPFAX機能、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能等の多機能を備える。PSTNFAX機能は、PSTN4で利用されるFAX番号(即ち所定の桁数(例えば10桁)の数字列)を用いて、PSTN4を介したFAX通信(即ちFAXデータの送受信)を実行するための機能である。PSTNFAX機能は、G.3の通信方式に従って実現される。また、IPFAX機能は、URI(Uniform Resource Identifier)を用いて、IP網(LAN6、インターネット8等)を介したFAX通信を実行するための機能である。IPFAX機能は、SIPの通信方式に従って実現される。ただし、IPFAX機能は、IPを前提とするプロトコルであれば、他のプロトコルに従って実現されてもよい。
【0019】
FAX装置10は、表示部12と、操作部14と、スキャン実行部16と、PSTNインターフェイス18と、印刷実行部20と、ネットワークインターフェイス22と、制御部24と、を備える。上記の各部12〜24は、バス線25に接続されている。表示部12は、様々な情報を表示するためのディスプレイである。操作部14は、複数のキーによって構成される。ユーザは、操作部14を操作することによって、様々な指示をFAX装置10に入力することができる。スキャン実行部16は、CIS、CCD等のスキャン機構を備え、スキャン対象物をスキャンすることによって画像データを生成する。PSTNインターフェイス18は、PSTN4に接続されている。印刷実行部20は、インクジェットヘッド方式、レーザ方式等の印刷機構を備え、制御部24からの指示に従って印刷を行う。ネットワークインターフェイス22は、LAN6に接続されている。
【0020】
制御部24は、CPU30とメモリ32とを備える。CPU30は、メモリ32に格納されているプログラム(図示省略)に従って処理を実行する。CPU30が当該プログラムに従って処理を実行することによって、各部40〜50の機能が実現される。メモリ32は、テーブル34と、アドレス帳36と、を格納する。テーブル34は、少なくとも1個の特定のプロバイダを示す少なくとも1個のenterprise-numberを含む。上記の「特定のプロバイダ」は、FAX番号を含むSIPURI(即ちFAX番号に所定のドメインを付加することによって得られるSIPURI)を用いたIPFAX機能を提供するプロバイダである。なお、enterprise-numberは、各プロバイダに特有の企業コード番号である。また、アドレス帳36は、ユーザによって入力される複数のFAX番号、電話番号等を含む。
【0021】
なお、テーブル34は、メモリ32内に予め格納されている。例えば、テーブル34は、FAX装置10のベンダによって、メモリ32内に予め格納されてもよい。また、例えば、FAX装置10は、所定のサーバ(例えばFAX装置10のベンダが提供しているサーバ)から、テーブル34を取得して、メモリ32内に予め格納してもよい。
【0022】
(SIPサーバ60の構成)
SIPサーバ60は、上記の特定のプロバイダによって提供されるサーバである。SIPサーバ60は、SIP通信を仲介するためのサーバ(「呼制御サーバ」と呼ぶこともできる)である。例えば、FAX装置10とFAX装置110との間では、SIPの通信セッションを確立するための各種コマンドが通信されるが、これらのコマンドは、SIPサーバ60を経由して送信される。SIPの通信セッションが確立された後には、通常、FAX装置10,110は、SIPサーバ60を介さずに、電話のための音声データ、又は、FAXデータ(即ち画像データ)の通信を実行する(即ちピアツーピアの通信を実行する)。なお、FAX装置(例えばFAX装置10,110)のユーザが上記の特定のプロバイダと契約している状況では、SIPサーバ60は、当該FAX装置のIPアドレスと、当該FAX装置のSIPURIと、を対応付けて記憶する。
【0023】
(DHCPサーバ70の構成)
DHCPサーバ70は、LAN6に接続されている各デバイス(FAX装置10等)にIPアドレスを割り当てる。また、DHCPサーバ70は、DHCP情報を記憶している。DHCP情報は、後で説明するoption120(SIPサーバのIPアドレス)、及び、option125(プロバイダを示すプロバイダ情報)を含む。
【0024】
(FAX装置110の構成)
FAX装置110は、上記のFAX装置10と同様の各機能を備える。本実施例では、FAX装置110のユーザは、上記の特定のプロバイダ(即ちFAX番号を含むSIPURIを用いたIPFAX機能を提供するプロバイダ)と契約している。従って、FAX装置110には、FAX装置110のFAX番号「xxxyyyzzzz」を含むSIPURI「xxxyyyzzzz@sip.com」(FAX装置110のFAX番号にSIPサーバ60のドメインが付加されたSIPURI)が割り当てられている。
【0025】
(ユーザの事前準備;プロバイダとの契約)
FAX装置10のユーザが行うべき事前準備について説明する。ユーザは、上記の特定のプロバイダと契約する。この場合、FAX装置10には、FAX装置10のFAX番号を含むSIPURIが割り当てられる。これにより、FAX装置10は、IPFAX機能を実行することができるようになる。
【0026】
(ユーザの事前準備;モードの選択)
ユーザは、操作部14を操作することによって、FAXデータを送信するためのモードを選択することができる。図2に示されるように、ユーザは、「IPFAX優先」、「IPFAX専用」、及び、「IPFAXOFF」の3つのモードの中から、1つのモードを選択することができる。「IPFAX優先」では、FAX装置10は、IPFAX機能を実行してFAXデータを送信し、当該送信が失敗した場合に、PSTNFAX機能を実行してFAXデータを送信する。「IPFAX専用」では、FAX装置10は、IPFAX機能を実行してFAXデータを送信し、当該送信が失敗しても、PSTNFAX機能を実行しない。「IPFAXOFF」では、FAX装置10は、IPFAX機能を実行せずに、PSTNFAX機能を実行する。
【0027】
ユーザによって上記の3つのモードのうちの1つのモードが選択されると、メモリ32には、選択されたモードに対応する情報が格納される。具体的に言うと、「IPFAX優先」が選択される場合には、メモリ32は、IPFAX設定として「ON」を格納し、リトライ設定として「ON」を格納する。「IPFAX専用」が選択される場合には、メモリ32は、IPFAX設定として「ON」を格納し、リトライ設定として「OFF」を格納する。「IPFAXOFF」が選択される場合には、メモリ32は、IPFAX設定として「OFF」を格納し、リトライ設定として「ON」を格納する。なお、本実施例では、IPFAX設定として「OFF」が格納されると共に、リトライ設定として「OFF」が格納されることはない。
【0028】
(メイン処理)
続いて、FAX装置10が実行する処理について説明する。図3に示されるように、FAX装置10の制御部24は、FAX装置10の電源がONされると、メイン処理を実行する。S2において、制御部24は、起動時処理(図4参照)を実行する。次いで、S4において、制御部24は、指示が入力されることを監視する。指示は、操作部14が操作されることによって入力されることもあるし、PSTN4又はLAN6を介して外部から入力されることもある。
【0029】
指示が入力された場合(S4でYESの場合)には、S6において、制御部24は、当該指示がFAX送信指示であるのか否かを判断する。ユーザは、操作部14を操作することによって、FAX送信指示を入力することができる。なお、FAX送信指示は、ユーザがFAXデータの送信先のFAX番号(PSTN4で利用されるFAX番号)を指定することを含む。ユーザは、アドレス帳36からFAX番号を指定してもよいし、操作部14のテンキーを操作してFAX番号を指定してもよい。
【0030】
FAX送信指示が入力された場合(S6でYESの場合)には、S8において、制御部24は、FAX送信処理を実行する(図5参照)。一方において、FAX送信指示が入力されなかった場合(S6でNOの場合)には、S10において、制御部24は、入力された指示(例えば、印刷実行指示、FAXデータの受信指示等)に応じた処理を実行する。
【0031】
(起動時処理)
続いて、図3のS2で実行される起動時処理の内容を説明する。起動時処理は、FAX装置10が特定の状態であるか否かを判断するための処理である。上記の「特定の状態」は、FAX装置10が、FAXデータの送信先としてユーザによって指定されるFAX番号(PSTN4で利用されるFAX番号)を含むSIPURI(上記のFAX番号に所定のドメインが付加されることによって得られるSIPURI)を用いて、FAXデータを送信するIPFAX送信処理を実行可能な状態である。なお、上記の「特定の状態」は、例えば、ユーザが上記の特定のプロバイダと契約している状態である、と言い換えることができる。
【0032】
図4に示されるように、S12において、制御部24は、LAN6に接続されているDHCPサーバ70を探索するための探索コマンドをブロードキャストする。DHCPサーバ70は、探索コマンドを受信すると、DHCPサーバ70のIPアドレスを含む応答パケットをFAX装置10に送信する。次いで、S14において、制御部24は、DHCPサーバ70が発見されたのか否かを判断する。制御部24は、探索コマンドをブロードキャストしてから所定時間内に応答パケットを受信した場合に、S14でYESと判断する。S14でYESの場合に、S16に進み、S14でNOの場合に、S28Bに進む。
【0033】
S16では、制御部24は、応答パケットに含まれるDHCPサーバ70のIPアドレスを送信先として、要求コマンドを送信する。要求コマンドは、option120及びoption125を含むDHCP情報を要求するためのコマンドである。option120及びoption125については、後で述べる。DHCPサーバ70は、要求コマンドを受信すると、DHCP情報をFAX装置10に送信する。これにより、S18において、制御部24は、DHCP情報を受信する。
【0034】
次いで、S20において、制御部24は、DHCP情報がoption120を含むのか否かを判断する。例えば、FAX装置10のユーザが上記の特定のプロバイダと契約している場合には、ユーザは、通常、上記の特定のプロバイダによって提供されるSIPサーバ60のIPアドレスをDHCPサーバ70に登録する。この場合、DHCP情報は、SIPサーバ60のIPアドレスを示すoption120を含む。この場合、S20でYESと判断され、S22に進む。一方において、例えば、ユーザが上記の特定のプロバイダと契約していない場合には、DHCP情報は、通常、option120を含まない。この場合、S20でNOと判断され、S28Bに進む。
【0035】
S22では、制御部24は、DHCP情報がoption125を含むか否かを判断する。例えば、FAX装置10のユーザが上記の特定のプロバイダと契約している場合には、ユーザは、通常、上記の特定のプロバイダのenterprise-numberをDHCPサーバ70に登録する。この場合、DHCP情報は、上記の特定のプロバイダのenterprise-numberを示すoption125を含む。この場合、S22でYESと判断され、S24に進む。一方において、例えば、ユーザが、上記の特定のプロバイダと契約しているが、上記の特定のプロバイダのenterprise-numberをDHCPサーバ70に登録していない場合には、DHCP情報が、option120を含むが、option125を含まない可能性がある。また、例えば、ユーザが、上記の特定のプロバイダと契約していないが、SIP通信を提供する他のプロバイダと契約している場合にも、DHCP情報が、option120を含むが、option125を含まない可能性がある。この場合、S22でNOと判断され、S28Bに進む。なお、上記の「他のプロバイダ」は、例えば、FAX番号に所定のドメインを付加したSIPURIを用いたIPFAX機能ではなく、FAX番号と無関係なSIPURIを用いたIPFAX機能を提供するプロバイダである。
【0036】
S24では、制御部24は、option125に含まれるenterprise-numberが、テーブル34(図1参照)に含まれるいずれかのenterprise-numberに一致するのか否かを判断する。ユーザが上記の特定のプロバイダと契約している場合には、option125に含まれるenterprise-numberは、テーブル34に含まれるいずれかのenterprise-numberに一致する。この場合、S24でYESと判断され、S26に進む。一方において、例えば、ユーザが上記の他のプロバイダと契約している場合には、DHCP情報がoption125を含むが、当該option125に含まれるenterprise-numberが、テーブル34に含まれるいずれのenterprise-numberにも一致しない可能性がある。この場合、S24でNOと判断され、S28Bに進む。
【0037】
S24でYESの場合は、FAX装置10が上記の特定の状態であると判断されたことを意味する。この場合、本実施例では、S18で取得されたDHCP情報に含まれるoption120が示す値は、SIPサーバ60のIPアドレスである。S26では、制御部24は、SIPサーバ60のIPアドレスを、メモリ32に記憶させる。さらに、制御部24は、S28Aにおいて、FAX装置10が上記の特定の状態であることを示す判断結果情報を、メモリ32に記憶させる。
【0038】
なお、上記のS14、S20、S22、及び、S24のいずれかにおいてNOと判断される場合は、FAX装置10が上記の特定の状態でないと判断されたことを意味する。その場合、S28Bにおいて、制御部24は、FAX装置10が上記の特定の状態でないことを示す判断結果情報を、メモリ32に記憶させる。
【0039】
(FAX送信処理)
続いて、図3のS8で実行されるFAX送信処理の内容を説明する。なお、以下では、FAX装置10のユーザが、FAXデータの送信先として、FAX装置110のFAX番号「xxxyyyzzzz」を指定した場合を例として、FAX送信処理の内容を説明する。
【0040】
図5に示されるように、S30において、制御部24は、原稿のスキャンをスキャン実行部16に実行させることによって、FAXデータを生成する。次いで、S32において、第1の判断部40(図1参照)は、IPFAX設定(図2参照)をメモリ32から読み出して、IPFAX設定が「ON」であるのか否かを判断する。第1の判断部40は、IPFAX設定が「ON」である場合(S32でYESの場合)には、IPFAX送信を実行可能であると判断して、S34に進む。一方において、第1の判断部40は、IPFAX設定が「OFF」である場合(S32でNOの場合)には、IPFAX送信を実行不可能であると判断して、S34を実行しない。この場合、後述のS60をスキップして(即ち通知部50(図1参照)がユーザへの通知を実行せずに)、S62に進む。
【0041】
S34では、第1の判断部40は、判断結果情報(図4のS28A,S28B参照)をメモリ32から読み出して、判断結果情報が、FAX装置10が上記の特定の状態であることを示すのか、FAX装置10が上記の特定の状態でないことを示すのか、を判断する。第1の判断部40は、判断結果情報が、FAX装置10が上記の特定の状態であることを示す場合(S34でYESの場合)には、IPFAX送信を実行可能であると判断して、S36に進む。一方において、第1の判断部40は、判断結果情報が、FAX装置10が上記の特定の状態でないことを示す場合(S34でNOの場合)には、IPFAX送信を実行不可能であると判断して、S36〜S52の処理を実行しない。この場合、後述のS60をスキップして(即ち通知部50がユーザへの通知を実行せずに)、S62に進む。
【0042】
S36では、第1の通信部46(図1参照)は、SIPサーバのIPアドレス及びSIPドメインを、メモリ32から読み出す。上述したように、FAX装置10が上記の特定の状態である場合には、図4のS26でSIPサーバ60のIPアドレスがメモリ32に記憶される。従って、S36では、第1の通信部46は、図4のS26で予め記憶されたIPアドレスを、メモリ32から読み出すことができる。
【0043】
ただし、図4の起動時処理が実行されても、SIPサーバ60のSIPドメイン「sip.com」は、メモリ32に記憶されない。一般的には、上記の特定のプロバイダは、ユーザと契約を結ぶ際(又は契約を結んだ後)に、SIPサーバ60のSIPドメインをユーザに提供する。例えば、上記の特定のプロバイダは、SIPサーバ60のSIPドメインが記載された媒体(例えば紙)をユーザに渡すことによって、SIPサーバ60のSIPドメインをユーザに提供することができる。また、上記の特定のプロバイダは、ウェブサイト等においてSIPサーバ60のSIPドメインを公開することによって、SIPサーバ60のSIPドメインをユーザに提供することができる。従って、例えば、ユーザは、操作部14に所定の記憶操作を加えることによって、SIPサーバ60のSIPドメインを、メモリ32に記憶させることができる。S36では、第1の通信部46は、ユーザによって記憶されたSIPサーバ60のSIPドメインを、メモリ32から読み出すことができる。なお、変形例では、SIPサーバ60のSIPドメインがDHCPサーバ70に予め記憶されている場合には、FAX装置10は、DHCPサーバ70からSIPサーバ60のSIPドメインを取得してもよい。
【0044】
次いで、S38において、第1の通信部46は、FAXデータの送信先としてユーザによって指定されたFAX番号「xxxyyyzzzz」に、S36で読み出されたSIPドメイン「sip.com」を付加することによって、FAX装置110のSIPURI「xxxyyyzzzz@sip.com」(図1参照)を生成する。
【0045】
次いで、S40において、第2の判断部42(図1参照)は、FAX装置10がネットワーク(即ちLAN6)に接続されているのか否かを判断する。即ち、第2の判断部42は、FAX装置10が、リンクアップ状態であるのか、リンクダウン状態であるのか、を判断する。具体的に言うと、例えば、FAX装置10のネットワークインターフェイス22にLANケーブルが接続されている場合には、第2の判断部42は、IPFAX送信を実行可能であると判断する(S40でYESと判断する)。また、例えば、ネットワークインターフェイス22にLANケーブルが接続されていなくても、FAX装置10が無線でLAN6に接続されている場合(即ちアクセスポイントと通信可能な状態が構築されている場合)にも、第2の判断部42は、IPFAX送信を実行可能であると判断する(S40でYESと判断する)。従って、ネットワークインターフェイス22にLANケーブルが接続されておらず、かつ、FAX装置10が無線でLAN6に接続されていない場合には、第2の判断部42は、IPFAX送信を実行不可能であると判断する(S40でNOと判断する)。
【0046】
FAX装置10がネットワークに接続されていると判断される場合(S40でYESの場合)には、S42において、第1の通信部46は、S36で読み出されたSIPサーバ60のIPアドレスがSIPサーバアドレスとして指定されたINVITEコマンドを送信する。なお、INVITEコマンドでは、さらに、S38で生成されたFAX装置110のSIPURIが送信先アドレスとして指定されている。S42を終えると、S44に進む。
【0047】
上述したように、INVITEコマンドでは、SIPサーバ60のIPアドレスがSIPサーバアドレスとして指定されている。従って、INVITEコマンドは、まず、SIPサーバ60に到達する。上述したように、SIPサーバ60は、FAX装置110のSIPURIと、FAX装置110のIPアドレスと、を対応付けて記憶している。SIPサーバ60は、まず、INVITEコマンドの中から、送信先アドレスとして指定されているFAX装置110のSIPURIを特定する。次いで、SIPサーバ60は、自身のメモリの中から、FAX装置110のSIPURIに対応付けられているFAX装置110のIPアドレスを特定する。次いで、SIPサーバ60は、FAX装置110のIPアドレスを送信先として、INVITEコマンドを送信する(即ちINVITEコマンドをFAX装置110に転送する)。
【0048】
FAX装置110は、INVITEコマンドを受信すると、通常、200OKコマンドをSIPサーバ60に送信する。この場合、SIPサーバ60は、200OKコマンドをFAX装置10に転送する。従って、FAX装置10は、SIPサーバ60から200OKコマンドを受信し得る。
【0049】
ただし、例えば、FAX装置110がIPFAX機能を実行不可能である場合(例えばFAX装置110のユーザがIPFAX通信を禁止する設定を行なっている場合)には、FAX装置10は、200OKコマンドをSIPサーバ60に送信しない。この場合、SIPサーバ60は、200OKではなく、他のコマンドをFAX装置10に送信する。従って、FAX装置10は、SIPサーバ60から上記の他のコマンドも受信し得る。
【0050】
なお、上記の説明は、SIPサーバ60が正常に機能していることを前提としているが、SIPサーバ60が正常に機能していない可能性がある(例えばSIPサーバ60の電源がOFFされている)。この場合、SIPサーバ60は、INVITEコマンドを受信及び転送を実行することができず、いかなるコマンドもFAX装置10に送信しない。従って、FAX装置10がSIPサーバ60からコマンドを受信しないこともあり得る。
【0051】
S44では、第2の判断部42(図1参照)は、SIPサーバ60からいずれかのコマンドを受信したのか否かを判断する。第2の判断部42は、S42でINVITEコマンドを送信した後の所定時間内に、SIPサーバ60からいずれかのコマンドを受信しない場合(例えばSIPサーバ60が正常に機能していない場合)には、IPFAX送信を実行不可能であると判断する(S44でNOと判断する)。この場合、S60に進む。一方において、第2の判断部42は、SIPサーバ60からいずれかのコマンドを受信した場合には、IPFAX送信を実行可能であると判断する(S44でYESと判断する)。この場合、S46に進む。
【0052】
S46では、第1の判断部40は、SIPサーバ60から受信したコマンドが、200OKコマンドであるのか否かを判断する。SIPサーバ60から上記の他のコマンドが受信された場合(例えばFAX装置110のユーザがIPFAX通信を禁止する設定を行なっている場合)には、第1の判断部40は、IPFAX送信を実行不可能であると判断する(S46でNOと判断する)。この場合、後述のS60をスキップして(即ち通知部50がユーザへの通知を実行せずに)、S62に進む。
【0053】
一方において、SIPサーバ60から200OKコマンドが受信された場合には、第1の判断部40は、IPFAX送信を実行可能であると判断する(S46でYESと判断する)。この場合、S48において、第1の通信部46は、ACKコマンドをSIPサーバ60に送信する。ACKコマンドは、SIPサーバ60を介して、FAX装置110に送信される。これにより、S50において、FAX装置10とFAX装置110との間で通信セッションが確立される。次いで、S52において、第1の通信部46は、S50で確立された通信セッションを用いて、S30で生成されたFAXデータをFAX装置110に送信する。なお、S52では、FAXデータは、SIPサーバ60を中継することなく、FAX装置10からFAX装置110に送信される(即ちピアツーピアの通信が実行される)。FAXデータの送信が完了すると、FAX送信処理が終了する。
【0054】
S60では、通知部50は、IPFAXを送信することができないことを示すメッセージを、表示部12に表示させる。なお、このメッセージは、送信不可能なエラーが発生した原因と、当該原因を解消させるための対策と、の両方を含む。例えば、FAX装置10がネットワークに接続されていない場合(S40でNOの場合)には、通知部50は、FAX装置10がネットワークに接続されていないことを示す文字列(即ち原因)と、LANケーブルをネットワークインターフェイス22に接続することを促す文字列(即ち対策)と、を表示部12に表示させる。また、例えば、SIPサーバ60からコマンドを受信しなかった場合(S44でNOの場合)には、通知部50は、SIPサーバ60が正常に機能していないことを示す文字列(即ち原因)と、プロバイダに問い合わせることを促す文字列(即ち対策)と、を表示部12に表示させる。なお、上記の説明から明らかなように、S40でNOの場合とS44でNOの場合とでは、表示部12に表示される内容(即ちユーザに通知する内容)が異なる。
【0055】
S60でエラーの原因と対策とが通知されるために、ユーザは、IPFAXの送信を実行不可能である原因を取り除く作業(即ちSIPに従った通信を実行可能にするための対策)を実行し得る。S60を終えると、S62に進む。
【0056】
S62では、第3の判断部44(図1参照)は、リトライ設定(図2参照)をメモリ32から読み出して、リトライ設定が「ON」であるのか否かを判断する。リトライ設定が「ON」である場合(S62でYESの場合)には、S64に進み、リトライ設定が「OFF」である場合(S62でNOの場合)には、S64及びS66をスキップして、FAX送信処理を終了する。
【0057】
S64では、第2の通信部48(図1参照)は、FAXデータの送信先としてユーザによって指定されたFAX番号「xxxyyyzzzz」を用いて、G.3の通信方式に従った発呼処理を実行する。これにより、FAX装置10とFAX装置110との間にPSTN4を介した通信路が確立される。次いで、S66において、第2の通信部48は、S64で確立された通信路を用いて、S30で生成されたFAXデータをFAX装置110に送信する。FAXデータの送信が完了すると、FAX送信処理が終了する。
【0058】
(本実施例の効果)
従来から知られているFAX装置では、ユーザは、PSTN4を介してFAXデータを送信するために、FAXデータの送信先としてFAX番号(即ち数字列)を指定する。これと同様の操作をユーザが実行すれば、本実施例のFAX装置10は、PSTN4を介してFAXデータを送信するのではなく、IPFAX機能に従ってFAXデータを送信することができる。即ち、FAXデータを送信するためのモードとして、「IPFAX優先」又は「IPFAX専用」(図2参照)が選択された場合には、ユーザが、FAXデータの送信先としてFAX番号を指定すれば、FAX装置10は、IPFAX機能に従ってFAXデータを送信することができる(図5のS30〜S52参照)。従って、ユーザは、FAXデータの送信先としてSIPURIを指定しなくても、FAX番号を指定すれば、IPFAX機能をFAX装置10に実行させることができる。SIPURIは、通常、FAX番号よりも複雑な文字列である。本実施例によると、ユーザが単純な数字列であるFAX番号を指定すれば、FAX装置10は、IPFAX機能に従ってFAXデータを送信する。従って、ユーザは、IPFAX機能をFAX装置10に容易に実行させることができる。
【0059】
特に、本実施例では、図5のFAX送信処理において、様々な判断処理(S32,S34,S40,S44,S46)が実行される。この構成によると、FAX装置10は、SIPの通信方式に従って、IPFAX送信を実行可能であるのか否かを、適切に判断することができる。図5から明らかなように、S32,S34,S46でNOと判断されてもS60の通知処理が実行されないが、S40,S44でNOと判断されるとS60の通知処理が実行される。以下では、前者の各判断処理(S32,S34,S46)を「第1種の判断処理」と呼び、後者の各判断処理(S40,S44)を「第2種の判断処理」と呼ぶ。なお、S62の判断処理を「第3種の判断処理」と呼ぶ。
【0060】
本実施例では、FAX装置10は、第1種及び第2種の判断処理を実行して、SIPの通信方式に従ってFAX送信可能であるのか否かを判断する。図6に示されるように、FAX装置10は、第1種及び第2種の判断処理において、SIPの通信方式に従ってFAX送信可能であると判断される場合には、SIPの通信方式に従ったFAX送信を実行する(図5のS52)。一方において、FAX装置10は、第1種の判断処理又は第2種の判断処理において、SIPの通信方式に従ってFAX送信不可能であると判断される場合であり、かつ、第3種の判断処理において、リトライ設定がONであると判断される場合に、G.3の通信方式に従ったFAX送信を実行する(図5のS66)。このために、FAX装置10は、SIPの通信方式に従ってIPFAX送信を実行不可能である場合でも、G.3の通信方式に従ったFAX送信を実行することができるために、FAXデータの送信を適切に実行することができる。
【0061】
特に、図6に示されるように、FAX装置10は、第1種の判断処理で否定的に判断される場合には、ユーザに通知しないが、第2種の判断処理で否定的に判断される場合には、ユーザに通知する(図5のS60)。以下では、第1種及び第2種の判断処理に含まれる各処理について、詳しく説明する。
【0062】
第1種の判断処理に含まれるS32でNOの場合は、ユーザがIPFAX送信を実行することを望んでいないことを意味する。従って、S32でNOの場合には、ユーザへの通知が不要であると考えられるために、FAX装置10は、ユーザに通知しない。また、第1種の判断処理に含まれるS34でNOの場合は、例えば、ユーザが上記の特定のプロバイダと契約していないことを意味する。即ち、ユーザが、FAX番号を含むSIPURIを用いたIPFAX送信を実行することを望んでいないことを意味する。従って、S34でNOの場合には、ユーザへの通知が不要であると考えられるために、FAX装置10は、ユーザに通知しない。また、第1種の判断処理に含まれるS46でNOの場合は、例えば、FAX装置110がIPFAX機能を実行不可能であることを意味する。FAX装置10のユーザは、他のユーザによって所有されるFAX装置110を、IPFAX機能を実行可能な状態にすることができない。従って、S46でNOの場合も、ユーザへの通知が不要であると考えられるために、FAX装置10は、ユーザに通知しない。
【0063】
第2種の判断処理に含まれるS40でNOの場合は、ユーザがIPFAX送信を実行することを望んでいるにもかかわらず、FAX装置10がネットワークに接続されていないことを意味する。従って、S40でNOの場合には、ユーザへの通知が必要であると考えられるために、FAX装置10は、ユーザに通知する(図5のS60)。また、第2種の判断処理に含まれるS44でNOの場合は、ユーザがIPFAX送信を実行することを望んでいるにもかかわらず、SIPサーバ60が正常に機能していないことを意味する。従って、S44でNOの場合には、ユーザへの通知が必要であると考えられるために、FAX装置10は、ユーザに通知する(図5のS60)。
【0064】
上述したように、本実施例では、ユーザに通知する必要がない原因でIPFAX送信を実行不可能であると判断される場合(第1種の判断処理でNOの場合)には、ユーザに通知せず、ユーザに通知する必要がある原因でIPFAX送信を実行不可能であると判断される場合(第2種の判断処理でNOの場合)には、ユーザに通知する、という構成を採用している。このために、IPFAX送信を実行不可能であることをユーザに適切に通知することができる。
【0065】
また、本実施例では、FAX装置10は、第1種の判断処理に含まれるS34の前に、第1種の判断処理に含まれるS32を実行する。FAX装置10は、S32でNOの場合に、S34を実行しない。従って、FAX装置10の処理負荷を低減することができる。
【0066】
さらに、FAX装置10は、S40及びS44の第2種の判断処理を実行する前に、S34の判断処理を実行する。FAX装置10は、S34でNOの場合に、S40及びS44の第2種の判断処理を実行しない。従って、FAX装置10の処理負荷を低減することができる。
【0067】
なお、FAX装置10は、リトライ設定がONである場合(S62でYESの場合)には、G.3の通信方式に従ったFAX送信を実行し、リトライ設定がOFFである場合(S62でNOの場合)には、G.3の通信方式に従ったFAX送信を実行しない。従って、FAX装置10は、ユーザの意図に応じて(即ち図2のモードの選択に応じて)、G.3の通信方式に従ったFAX送信を実行することができる。
【0068】
(対応関係)
FAX装置10が「通信装置」の一例である。SIPの通信方式、G.3の通信方式が、それぞれ、「第1の通信方式」、「第2の通信方式」の一例である。図5のS60で通知される情報が「特定の情報」の一例である。また、図2のIPFAX設定=ON、図1のテーブル34に含まれるenterprise-number、図2のリトライ設定=ONが、それぞれ、「第1の情報」、「第2の情報」、「第3の情報」の一例である。また、S32の判断処理、S34の判断処理が、それぞれ、「第1の判断処理」、「第2の判断処理」の一例であり、S40の判断処理、S44の判断処理が、それぞれ、「第3の判断処理」、「第4の判断処理」の一例である。
【0069】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。上記の実施例の変形例を以下に列挙する。
【0070】
(1)上記の実施例では、図5のS32,S34,S46が「第1種の判断処理」の一例であるが、S32,S34,S46のうちの1又は2つの処理のみが実行されてもよい。即ち、「第1種の判断処理」は、S32,S34,S46のうちの少なくとも1つの判断処理を含んでいればよい。同様に、「第2種の判断処理」は、図5のS40,S44のうちの少なくとも1つの判断処理を含んでいればよい。なお、図5のS46の判断処理は、「第1種の判断処理」ではなく、「第2種の判断処理」に含まれていてもよい。即ち、図5のS46でNOの場合に、S60に進んでもよい。
【0071】
(2)通知部50は、図5のS60において、原因及び対策の両方をユーザに通知するが、原因及び対策の一方のみをユーザに通知してもよい。即ち、通知部50は、原因及び対策の少なくとも一方をユーザに通知すればよい。
【0072】
(3)DHCPサーバ70は、SIPサーバを兼用していてもよい。即ち、LAN6の外部のSIPサーバ60のみならず、LAN6の内部のSIPサーバが設けられてもよい。この場合、INVITEコマンドは、LAN6の内部のSIPサーバを経由して、LAN6の外部のSIPサーバ60に送信されてもよい。
【0073】
(4)上記の実施例では、FAX装置10が「通信装置」の一例であるが、「通信装置」は、例えば、電話装置であってもよい。この場合、音声データが「対象データ」の一例である。なお、テキストデータ等の他の種類のデータを「対象データ」として採用してもよい。例えば、「通信装置」は、PC、サーバ、スキャナ等であってもよい。
【0074】
(5)FAX装置10の起動時に図4の処理が実行される構成の代わりに、FAX装置10の起動時と異なるタイミング(例えばユーザから指示を受けたタイミング)で図4の処理が実行される構成を採用してもよい。
【0075】
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0076】
2:通信システム、4:PSTN、6,9:LAN、8:インターネット、10,110:FAX装置、60:SIPサーバ、70:DHCPサーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信装置であって、
第1種の判断基準に基づいて、前記通信装置が、第1の通信方式に従って、通信対象の対象データの通信を実行可能であるのか否かを判断する第1種の判断処理を実行する第1の判断部と、
前記第1種の判断基準と異なる第2種の判断基準に基づいて、前記通信装置が、前記第1の通信方式に従って、前記対象データの通信を実行可能であるのか否かを判断する第2種の判断処理を実行する第2の判断部と、
前記第1種の判断処理において、前記対象データの通信を実行可能であると判断され、かつ、前記第2種の判断処理において、前記対象データの通信を実行可能であると判断される場合に、前記第1の通信方式に従って、前記対象データの通信を実行する第1の通信部と、
前記第1種の判断処理において、前記対象データの通信を実行不可能であると判断される場合に、前記第1の通信方式と異なる第2の通信方式に従って、前記対象データの通信を実行する第2の通信部と、
前記第1種の判断処理において、前記対象データの通信を実行不可能であると判断される場合に、前記第1の通信方式に従った前記対象データの通信を実行不可能であることを示す特定の情報をユーザに通知せずに、前記第2種の判断処理において、前記対象データの通信を実行不可能であると判断される場合に、前記特定の情報を前記ユーザに通知する通知部と、
を備える通信装置。
【請求項2】
前記第2の通信部は、さらに、前記第2種の判断処理において、前記対象データの通信を実行不可能であると判断される場合に、前記通知部が前記特定の情報を前記ユーザに通知した後に、前記第2の通信方式に従って、前記対象データの通信を実行する、請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記第1種の判断処理は、
前記通信装置が、前記ユーザが前記第1の通信方式に従った通信の実行を望むことを示す第1の情報を、格納しているのか否かを判断する第1の判断処理と、
前記通信装置が、前記第1の通信方式に従った通信のための第2の情報を、取得可能であるのか否かを判断する第2の判断処理と、
の少なくとも一方を含み、
前記第2種の判断処理は、
前記通信装置がネットワークに接続されているのか否かを判断する第3の判断処理と、
前記通信装置が、前記第1の通信方式に従った通信を仲介する仲介サーバに信号を送信した際に、前記仲介サーバから応答を受信したのか否かを判断する第4の判断処理と、
の少なくとも一方を含む、請求項1又は2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記第1の判断部は、前記第2の判断処理の前に、前記第1の判断処理を実行し、
前記第1の判断部は、
前記第1の判断処理において、前記通信装置が前記第1の情報を格納していると判断される場合に、前記第2の判断処理を実行し、
前記第1の判断処理において、前記通信装置が前記第1の情報を格納していないと判断される場合に、前記第2の判断処理を実行せずに、前記対象データの通信を実行不可能であると判断する、請求項3に記載の通信装置。
【請求項5】
前記第1の判断部は、前記第2の判断部が前記第2種の判断処理を実行する前に、前記第2の判断処理を実行し、
前記第2の判断部は、
前記第2の判断処理において、前記通信装置が前記第2の情報を取得可能であると判断される場合に、前記第2種の判断処理を実行し、
前記第2の判断処理において、前記通信装置が前記第2の情報を取得不可能であると判断される場合に、前記第2種の判断処理を実行しない、請求項3又は4に記載の通信装置。
【請求項6】
前記通信装置が、前記ユーザが前記第2の通信方式に従った前記対象データの通信の実行を望むことを示す第3の情報を、格納しているのか否かを判断する第3種の判断処理を実行する第3の判断部をさらに備え、
前記第2の通信部は、前記第1種の判断処理において、前記対象データの通信を実行不可能であると判断される場合において、
前記第3種の判断処理において、前記通信装置が前記第3の情報を格納していると判断される場合に、前記第2の通信方式に従って、前記対象データの通信を実行し、
前記第3種の判断処理において、前記通信装置が前記第3の情報を格納していないと判断される場合に、前記第2の通信方式に従って、前記対象データの通信を実行しない、請求項1から5のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項7】
前記特定の情報は、前記第1の通信方式に従った通信を実行不可能である原因と、前記第1の通信方式に従った通信を実行可能にするための対策と、の少なくとも一方を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項8】
前記第1の通信方式は、前記対象データの送信先として前記ユーザによって指定される識別情報に所定のドメインを付加することによって得られるIP識別情報を用いて、IP通信を実行するための通信方式であり、
前記第2の通信方式は、前記対象データの送信先として前記ユーザによって指定される前記識別情報を用いて、一般公衆回線網を介した通信を実行するための通信方式である、請求項1から7のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項9】
通信装置に搭載されるコンピュータに、以下の各処理、即ち、
第1種の判断基準に基づいて、前記通信装置が、第1の通信方式に従って、通信対象の対象データの通信を実行可能であるのか否かを判断する第1種の判断処理と、
前記第1種の判断基準と異なる第2種の判断基準に基づいて、前記通信装置が、前記第1の通信方式に従って、前記対象データの通信を実行可能であるのか否かを判断する第2種の判断処理と、
前記第1種の判断処理において、前記対象データの通信を実行可能であると判断され、かつ、前記第2種の判断処理において、前記対象データの通信を実行可能であると判断される場合に、前記第1の通信方式に従って、前記対象データの通信を実行する第1の通信処理と、
前記第1種の判断処理において、前記対象データの通信を実行不可能であると判断される場合に、前記第1の通信方式と異なる第2の通信方式に従って、前記対象データの通信を実行する第2の通信処理と、
前記第1種の判断処理において、前記対象データの通信を実行不可能であると判断される場合に、前記第1の通信方式に従った前記対象データの通信を実行不可能であることを示す特定の情報をユーザに通知せずに、前記第2種の判断処理において、前記対象データの通信を実行不可能であると判断される場合に、前記特定の情報を前記ユーザに通知する通知処理と、
を実行させるコンピュータプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−134857(P2012−134857A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286428(P2010−286428)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】