説明

通気フィルター及びその製造方法

【課題】通気膜の裁断時に破損しにくく、また、通気膜本来の特性ないし機能を維持しつつ収縮対策が打てた通気フィルターを提供することを目的とする。
【解決手段】枠状に形成された接着層2と、接着層2に接着された通気膜3とを有する通気フィルターであって、通気膜3の外周部は枠状接着層2の外周部よりも外側となるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水性や防塵性が必要な電子機器に用いられる通気フィルターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話に用いられるスピーカーやマイクロフォン等の電気音響変換装置、パソコンのハードディスクドライブ、自動車のエンジンコントロールユニット、デジタルカメラ等の電子機器は、音声を通過させるための開口部、或いは、電子機器内部の気圧を調節するための開口部を有し、電子機器全体で準密閉空間を構成している。この開口部には、水滴、塵埃、或いは、有害ガス(Nox、Sox、オイルミスト等)等の侵入防止の目的で通気膜が設けられている。この通気膜は、防水性や防塵性が求められるほか、通音の役割や内圧調整の役割を果たす(特許文献1)。なお、通気膜の通気機能は、上記電子機器等の完成時以降だけでなく、電子機器の製造工程中(例えば、電子部品の半田リフロー工程において膨張した気体を逃がすために通気する場合)も含めて発揮ないし利用される。
【0003】
上記のような通気膜を構成する材料としては、多孔質ポリテトラフルオロエチレンが広く用いられている(例えば特許文献2)。
【特許文献1】特開平8−79865号公報(段落0018、図8)
【特許文献2】特開平10−165787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、通気膜や両面粘着テープの形成方法、裁断方法について特に詳細には記載されていないが、通常、通気膜と両面粘着テープ等の接着層からなる従来の通気フィルターは以下のようにして製造されている。
【0005】
図8は、通気性フィルターの通常の製造工程を示す図である。まず、図8(a)に示すようにポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と記載する)製の剥離シート1上に、開口部2aが形成されている接着層2を形成し、その上から多孔質ポリテトラフルオロエチレン製の通気膜3を貼り合わせる。
【0006】
次に、図8(b)に示すように、ダイカットロール(刃物)4により、接着層2及び通気膜3の所定の箇所に切り目を入れる。そして図8(c)に示すように、切り目の外側に位置する通気膜3の不要部3x及び接着層2の不要部2xを剥離シート1から剥がし取る。
【0007】
しかしながら、このような方法では、図8(d)に示すように、接着層2が伸びてしまうために、不要部3x及び不要部2xの剥がし取りによって通気膜3の外周部(端部)が破損してしまうという問題があった。特に、鋭い刃物を一度入れるだけでは完全には分断されにくい発泡体基材両面粘着テープや基材レスタイプの両面粘着テープを用いる際に、この問題が顕著であった。なお、ここでは、「基材レスタイプの両面粘着テープ」は、補強などを目的とした基材(芯材)を含まない両面粘着テープを意味するものとして用いている。
【0008】
上述の事情に鑑み、本発明は、枠状に形成された接着層と通気膜とから構成される通気フィルターにおいて、通気膜の裁断時に通気膜が破損しにくい構造を提供することを一つの目的としている。
【0009】
図9は、接着層2の剥がし取りがうまくいった場合の状態を示すものである。このような場合であっても、通気膜3を多孔質ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂で構成した場合においては、更に別の問題が生じる。すなわち、延伸した多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜は時間の経過や熱により収縮し易いため、図9(d)に示すように通気膜3が収縮し、接着層2が露出した状態となってしまうことがある。接着層2が露出してしまうと、そこに異物が付着したり、通気フィルターを製品として保存するための梱包材に接着されてしまうという問題がある。また、通気フィルターを梱包材から取り出した後に、電子機器へ装着する際の作業性も悪くなる。
【0010】
多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜が収縮する問題については、特許文献2においても既に指摘されているが(段落0006)、特許文献2では、多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜の片面または両面に熱可塑性樹脂製ネットを補強剤として用いることを解決手段としている(段落0010)。
【0011】
しかしながら、上記熱可塑性樹脂製ネットの取り付けには、工程負荷の増加を伴う。また、通気膜3を音響デバイスとして用いる場合には音響特性の低下という問題、通気膜3を電子機器の内外圧調整のためのフィルターとして用いる場合には通気度の低下という問題が避けられない。
【0012】
そこで、本発明は、通気膜が収縮し易い材料で構成されている場合において、通気膜本来の特性ないし機能を維持しつつ、通気膜が収縮しても接着層が露出しにくい構造を提供することを2つ目の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成し得た本発明の通気フィルターは、
枠状に形成された接着層と、該接着層に接着された通気膜とを有する通気フィルターであって、通気膜の外周部は枠状接着層の外周部よりも外側となるように構成されているものである。
【0014】
上記通気膜の外周部は、接着層側を谷として折り曲げられている態様が好ましい。
【0015】
上記通気膜がフッ素樹脂膜で構成されている態様とすることもできる。
【0016】
上記通気膜が多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜で構成されている態様とすることが推奨される。
【0017】
上記通気膜の表面に撥液剤を添加する態様とすることが好ましい。
【0018】
上記接着層が、両面粘着テープである構成とすることができる。
【0019】
上記目的を達成し得た本発明の通気フィルターの製造方法は、
剥離シート上に接着層を枠状に形成し、該接着層を通気膜で覆い、枠状接着層の外周部よりも外側で通気膜を裁断するものである。
【0020】
上記目的を達成し得た本発明の他の通気フィルターの製造方法は、
剥離シート上に接着層を枠状に形成し、該枠状の接着層よりも大きく形成したフッ素樹脂製通気膜により、枠状接着層を覆うものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の通気フィルター及びその製造方法によれば、枠状に形成された接着層と通気膜とから構成される通気フィルターにおいて、通気膜が破損しにくい構造を提供することができる。また、通気膜が収縮し易い材料で構成されている場合においては、通気膜が収縮しても接着層が露出しにくい構造を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態における通気フィルター及びその製造方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施の形態における通気フィルターの製造工程断面図である。まず、図1(a)に示すように、PET製の剥離シート1を準備し、この剥離シート1の上に、接着層2を形成する。この接着層2は、枠状に形成されるものであって、開口部2aを有する。
【0024】
次に、図1(b)に示すように、接着層2の上から多孔質ポリテトラフルオロエチレン(以下、「多孔質PTFE」と記載する)製の通気膜3を貼り合わせる。
【0025】
次に、図1(c)に示すように、この通気膜3にダイカットロール(刃物)4により、通気膜3の所定の箇所を裁断し、通気膜3を円形形状に成形する。もちろん、通気膜3の形状は、通気フィルターが貼付される電子機器の通音開口部や通気開口部の形状等に応じて決められるものであるので、円形の形状には限定されない。
【0026】
そして、図1(d)に示すように、通気膜3の外側に位置する通気膜3の不要部3xを取り除く。なお、不要部3xが剥がされるタイミングは、必ずしも通気膜3の全周囲同時ではなく、通気膜3の形状によっても異なる。
【0027】
図1(c)及び図1(d)の工程で重要なのは、通気膜3の外周部は枠状に形成されている接着層2の外周部よりも外側となるように構成されていることである。接着層2の外周部と通気膜3の外周部との位置関係をこのように構成することにより、ダイカットロールにより接着層2を切断しないため、従来は存在していた接着層2の不要部2xが発生しない。このため、通気膜3の不要部3x取り除く際に、不要部2xにより通気膜3の外周部が引きちぎられることが防止される。すなわち、通気膜3の外周部に破損が生じない。また、通気膜3の不要部3xに接着層2(不要部2x)がないため、不要部3xは非常に簡単に取り除かれる。
【0028】
本発明の効果を有効に発揮させるためには、通気膜3の外周部と接着層2の外周部との間隔は、0.1mm以上あることが好ましい。より好ましくは、0.5mm以上である。一方、上限については通気膜3外周部の未固定部分が広くなり過ぎると、通気フィルターの取り扱い時に通気膜3の外周部に、引っ掛かり、めくれ、破損が生じる可能性もあるため、上限を5.0mm以下とした。より好ましくは、2.0mm以下である。
【0029】
上記のように形成された通気フィルターは、剥離シート1が付着したままでロール状、或いは、短冊状で保管され、使用されるときには剥離シート1を剥がして、図1(e)に示すように、電子機器等の筐体6に設けられた開口部6aを塞ぐように貼付される。
【0030】
通気膜3が収縮し易い材料で構成される場合には、通気フィルターの開口部6aへの貼付時には既に、或いは、貼付後、図1(f)に示すように、通気膜3の裁断時よりも通気膜3が収縮している場合があるが、通気膜3の外周部は上記したように接着層2の外周部よりも外側となるように構成されているため、多少の収縮に対する余裕があり、接着層2の露出を防止できる。
【0031】
通気膜3が延伸された多孔質PTFEフィルムである場合、同じPTFE材料を用い、同じ膜厚のものを作製しても、延伸倍率によって通気膜3の収縮率が異なる。従って、1軸方向のみに延伸された多孔質PTFEフィルム、或いは、フィルムの面内2方向に異なる倍率で延伸された多孔質PTFEフィルムを用いる場合は、例えば円形の接着層2に対しては通気膜3を楕円形に形成するなどして、収縮率の高い方向に対する上記余裕を持たせることが好ましい。
【0032】
通気膜3の収縮対策として、図2(a)に示すように、通気膜3の外形に系合する凹部を有する治具9を通気膜3の上方から押し当てることにより、通気膜3の外周部に余らせた部分を、接着層2側を谷として折り曲げることができる。これにより、図2(b)に示すように、曲げ部分が引っ掛かりとなり、通気膜3が収縮しようとしても接着層2の露出を防止することができる。
【0033】
1枚の剥離シート1に形成する通気フィルターは一つであっても複数であってもよいが、図3に示すように通気膜3をハニカム状に配置すれば、効率よく通気フィルターを採取することができる。なお、図1(c)では、通気膜3を裁断しても剥離シート1は裁断しない形態であるが、図3に示すように、剥離シート1を含めて一気に打ち抜いてしまってもよい。
【0034】
次に、上述した本発明の実施の形態における通気フィルターの基本的構成要素である接着層2及び通気膜3、そして、通気フィルターの製造工程において用いる剥離シート1について、より詳しく説明する。
【0035】
剥離シート1に用いる材料としてPET以外に選択し得るものは、例えば、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン、ポリカーボネート等の樹脂フィルム、グラシン紙、上質紙、コート紙、含浸紙、合成紙などの紙、アルミニウム、ステンレススチール等の金属箔などが挙げられる。また、帯電防止の目的で必要に応じ剥離シート1に導電性材料をコーティングしてもよいし、剥離シート1自体に導電性材料を混合させたものを用いても良い。これにより、製品が帯電することを低減できる。
【0036】
剥離シート1の厚さは、例えば、10〜100μm、好ましくは25〜50μmとすることが望ましい。剥離シート1の基材の表面には、離型剤や粘着剤との接着性を向上させるため、コロナ放電処理、プラズマ処理、フレームプラズマ処理などを施してもよく、プライマー層などを設けてもよい。プライマー層としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン系共重合体、ポリエステル、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、これらの変性物などの高分子材料(所謂アンカーコート剤)を使用することが出来る。
【0037】
接着層2は、枠状に形成されるものであって、開口部2aを有する。枠の形状は特に限定されず、円状、楕円状、矩形状、多角形状のものであってもよい。枠状パターンを持った接着層2を形成する方法としては、例えば、スクリーン印刷による方法や、接着剤の融液をグラビアパターンロールで剥離シート1に転写する方法や、予め枠状に裁断した両面粘着テープを接着層2として使用する方法等がある。
【0038】
両面粘着テープには、ポリエチレン不織布、ポリプロピレン不織布、ナイロン不織布等を芯材とした不織布基材両面粘着テープ、PET基材両面粘着テープ、ポリイミド基材両面粘着テープ、ナイロン基材両面粘着テープ、発泡体(例えば、ウレタンフォーム、シリコーンフォーム、アクリルフォーム、ポリエチレンフォーム)基材両面粘着テープ、基材レス両面粘着テープなど様々なタイプのものを用いることができる。
【0039】
発泡体基材両面粘着テープまたは基材レス両面粘着テープは、鋭い刃物で一度裁断されても再付着するために完全には分断されにくい。したがって、通気膜3と接着層2の外径寸法が同じである上記した従来の通気フィルターの構造では、通気膜3端部の破断問題が非常に顕著であるため、本発明の適用が一層効果的である。
【0040】
なお、本発明において接着剤とは、物と物を貼り合わせるのに用いる物質一般を指すものであり、粘着剤と呼ばれるものを含むものとする。
【0041】
通気膜3の微視的形状としては、ネット状、メッシュ状、多孔質のものを用いることができる。通気膜3の構成材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイミド等を使用することができるが、好ましくは防水性に優れたフッ素樹脂、更に好ましくは、多孔質ポリテトラフルオロエチレン(多孔質PTFE)のフィルムを用いることが推奨される。多孔質PTFEフィルムは、防水性に優れる他、多孔質構造で質量が小さいため、音声を通過させる用途にも、水滴、塵埃、有害ガス等の侵入を防止しつつ電子機器の内外の通気性を持たせる用途にも適している。
【0042】
多孔質PTFEフィルムは、PTFEのファインパウダーを成形助剤と混合することにより得られるペーストの成形体から、成形助剤を除去した後、高温高速度で延伸、さらに必要に応じて焼成することにより得られるものである。一軸延伸の場合、ノード(折り畳み結晶)が延伸方向に直角に細い島状となっていて、このノード間を繋ぐようにすだれ状にフィブリル(折り畳み結晶が延伸により解けて引出された直鎖状の分子束)が延伸方向に配向している。そして、フィブリル間、又はフィブリルとノードとで画される空間が空孔となった繊維質構造となっている。また、二軸延伸の場合には、フィブリルが放射状に広がり、フィブリルを繋ぐノードが島状に点在して、フィブリルとノードとで画された空間が多数存在するクモの巣状の繊維質構造となっている。
【0043】
本発明の通気フィルターの構成材料である通気膜3は、1軸延伸多孔質PTFEフィルムであっても良いし、2軸延伸多孔質PTFEフィルムであってもよい。
【0044】
通気膜3は、その細孔内表面に撥液性ポリマーを被覆させて用いるのが好ましい。なお、特許請求の範囲及び本明細書において「撥液剤」とは、液体をはじく性質乃至は機能を有する物質を指すものであるとし、「撥液剤」には、「撥水剤」、「撥油剤」、「撥水撥油剤」等を含むものとする。以下、撥水撥油性ポリマーを例に挙げて説明する。
【0045】
通気膜3の細孔内表面を撥水撥油性ポリマーで被覆しておくことによって、体脂や機械油、飲料、洗濯洗剤などの様々な汚染物が、通気膜の細孔内に浸透若しくは保持されるのを抑制できる。これらの汚染物質は、通気膜に好適に使用される多孔質PTFEの疎水性を低下させて、防水性を損なわせる原因となるからである。
【0046】
撥水撥油性ポリマーとしては、含フッ素側鎖を有するポリマーを用いることができる。撥水撥油性ポリマーおよびそれを多孔質PTFEフィルムに複合化する方法の詳細についてはWO94/22928号公報などに開示されており、その一例を下記に示す。
撥水撥油性ポリマーとしては、下記一般式(1)
【0047】
【化1】

【0048】
(式中、nは3〜13の整数、Rは水素またはメチル基である)
で表されるフルオロアルキルアクリレートおよび/またはフルオロアルキルメタクリレートを重合して得られる含フッ素側鎖を有するポリマー(フッ素化アルキル部分は4〜16の炭素原子を有することが好ましい)を好ましく用いることができる。このポリマーを用いて上記多孔質PTFEフィルムの細孔内を被覆するには、このポリマーの水性マイクロエマルジョン(平均粒径0.01〜0.5μm)を含フッ素界面活性剤(例、アンモニウムパーフルオロオクタネート)を用いて作製し、これを多孔質PTFEフィルムの細孔内に含浸させた後、加熱する。この加熱によって、水と含フッ素界面活性剤が除去されるとともに、含フッ素側鎖を有するポリマーが溶融して多孔質PTFEフィルムの細孔内表面を連続気孔が維持された状態で被覆し、撥水性・撥油性の優れた通気膜が得られる。
【0049】
また、その他の撥水撥油性ポリマーとして、「AFポリマー」(デュポン社の商品名)や、「サイトップ」(旭硝子社の商品名)なども使用できる。これらのポリマーを防水透湿フィルムの細孔内表面に被覆するには、例えば「フロリナート」(住友スリーエム社の商品名)などの不活性溶剤に前記ポリマーを溶解させ、多孔質PTFEフィルムに含浸させた後、溶剤を蒸発除去すればよい。
【0050】
なお、本実施の形態においては、通気膜3の片側面に接着層2を貼付した場合について説明したが、接着層2を携帯電話の筐体に貼付した場合、通気膜3の他の片面にマイクロフォンやスピーカー等の電気音響変換装置を貼付するための接着層を設けてもよい。
【実施例】
【0051】
(実施例)
以下の接着層及び通気膜を積層した通気フィルターを試作した。
[通気膜]
乳化重合により得られたポリテトラフルオロエチレンの粉末(ファインパウダー)100重量部に、ソルベントナフサ22重量部を混合してなるペースト樹脂をフィルム状にし、このフィルム状のペースト成形体をソルベントナフサの沸点以上に加熱してソルベントナフサを蒸発除去した後、ポリテトラフルオロエチレンの融点以下の温度で毎秒10%以上の速度で二軸延伸して、厚さ20μm、空孔率90%の多孔質PTFEフィルムを作製し、これを幅105mmの帯状の通気膜とした。
【0052】
[接着層の構成]
接着層2には、アクリルフォーム基材の両面にアクリル系粘着剤を塗布した両面粘着テープ(住友スリーエム社製、品番:VHB−Y4914、厚さ:0.25mm)を内径10mm、外径15mmの環状に形成したものを用いた。
【0053】
この実施例では、接着層2上に上記の帯状の通気膜を形成した上で、上記通気膜にダイカットロールの刃を入れる(裁断する)ことにより複数の円形の通気膜3を形成した。各通気膜3の外径は15.4mmとし、この通気膜3の外周部が、外径15mmの接着層2の外周部よりも外側となるようにした。このような構成において、帯状通気膜の不要部を剥がす試験を行った。その様子を撮影した写真を図4に示す。各通気膜3は、20mmピッチ(中心間距離)として形成されている。図4に示すように、帯状通気膜の不要部は通気膜3に破断や変形等を与えることなく、問題なく引き剥がされている。
【0054】
(比較例)
他方、図8に示されるような従来の通気フィルターの製造工程を追試した。この追試では、両面粘着テープ上に上記帯状の通気膜を形成した上で、通気膜及び両面粘着テープの双方に刃を入れることにより(図8(b)参照)、円形の通気膜3を形成した。通気膜3の外形は15mmとした。なお、両面粘着テープには上記実施例で使用したものと同じもの(住友スリーエム社製、品番:VHB−Y4914、厚さ:0.25mm)を用いた。また、両面粘着テープに設けた開口(図8(a)参照)の内径は10mmである。
【0055】
この比較例おいて、帯状通気膜の不要部を剥がす様子を写真撮影したので、その写真を図5〜7に示す。図5及び6に示すように、帯状通気膜の不要部は通気膜3の一部から引き剥がれないまま剥離されている。そして図7に示すように、いくつかの部分において通気膜3ごと引き剥がされてしまい、通気フィルターの歩留まりが80%未満となった。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1(a)〜(f)は、本発明の実施の形態にかかる通気フィルターの工程断面図である。
【図2】図2(a)〜(b)は、本発明の実施の形態にかかる通気フィルターの工程断面図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態にかかる通気フィルターの鳥瞰図である。
【図4】図4は、本発明の実施例にかかる通気フィルターの製造工程を撮影した写真である。
【図5】図5は、比較例にかかる通気フィルターの製造工程を撮影した写真である。
【図6】図6は、比較例にかかる通気フィルターの製造工程を撮影した写真である。
【図7】図7は、比較例にかかる通気フィルターの製造工程を撮影した写真である。
【図8】図8(a)〜(d)は、従来の通気フィルターの工程断面図である。
【図9】図9(a)〜(d)は、従来の通気フィルターの工程断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 剥離シート
2 接着層
2a 開口部
2x 不要部
3 通気膜
3x 不要部
4 ダイカットロール
6 筐体
6a 開口部
8 枠体
9 治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠状に形成された接着層と、該接着層に接着された通気膜とを有する通気フィルターであって、前記通気膜の外周部は前記枠状接着層の外周部よりも外側となるように構成されていることを特徴とする通気フィルター。
【請求項2】
前記通気膜の外周部は、前記接着層側を谷として折り曲げられている請求項1に記載の通気フィルター。
【請求項3】
前記通気膜がフッ素樹脂膜で構成されている請求項1または2に記載の通気フィルター。
【請求項4】
前記通気膜が多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜で構成されている請求項3に記載の通気フィルター。
【請求項5】
前記通気膜の表面に撥液剤を添加した請求項1〜4のいずれかに記載の通気フィルター。
【請求項6】
前記接着層が、両面粘着テープである請求項1〜5のいずれかに記載の通気フィルター。
【請求項7】
剥離シート上に接着層を枠状に形成し、該接着層を通気膜で覆い、前記枠状接着層の外周部よりも外側で前記通気膜を裁断することを特徴とする通気フィルターの製造方法。
【請求項8】
剥離シート上に接着層を枠状に形成し、該枠状の接着層よりも大きく形成したフッ素樹脂製通気膜により、枠状接着層を覆うことを特徴とする通気フィルターの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−464(P2010−464A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−162375(P2008−162375)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(000107387)ジャパンゴアテックス株式会社 (121)
【出願人】(505048460)オーティス株式会社 (8)
【Fターム(参考)】