説明

通流制御構造

【課題】気流の無い場所と有る場所とで使用する際に生じ得る差異を小さくすることができる通流制御構造を提供する。
【解決手段】容器体11に嵌着されるキャップ12の周壁32に通流口41を設け、通流口41の下側に、容器体11内のゲル状脱臭剤13の上部空間を周囲から覆う包囲部53を形成する。包囲部53の内側に通流制御部61を設ける。通流制御部61を縦横に延在する壁面71で格子状に形成し、四方が壁面71で包囲された小部屋73を通流制御部61の全域に分散して配置する。通流制御部61上を通過する冷気によって小部屋73内に乱流を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器体内に流れ込む流体の通流量を制御する通流制御構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷蔵庫内を脱臭する際には、脱臭装置が使用されている。
【0003】
この脱臭装置としては、例えば容器体にゲル状の脱臭剤を収容したものが知られており、該ゲル状脱臭剤としては、活性炭が含まれているものが提案されている。
【0004】
前記容器体には、図9に示すようなキャップ801が嵌着されており、該キャップ801の天面802及び側面803には、前記容器体内に連通する通流口804,・・・が設けられている。
【0005】
これにより、前記通流口804,・・・から進入した庫内の空気が前記容器体内のゲル状脱臭剤に接触することで、当該空気に含まれた悪臭成分を前記ゲル状脱臭剤含有の活性炭に吸着できるように構成されている。
【0006】
このとき、前記ゲル状脱臭剤中に含まれる揮散成分が揮散して小さくなることを利用して、交換時期が解るように構成されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような従来の脱臭剤にあっては、急速冷蔵タイプの冷蔵庫で使用すると、容器体の上部開口部から前記ゲル状脱臭剤に冷気が直接吹き付けられるとともに、当該ゲル状脱臭剤の上部空間に空気が流入し、ゲル状脱臭剤中に含まれる揮散成分の揮散速度が設計時より速くなる。
【0008】
一方、前記容器体に活性炭などの粒状脱臭剤を収容した脱臭装置も知られている。このような脱臭装置であっても、容器体の上部開口部から前記粒状脱臭剤に冷気が直接吹き付けられるとともに、当該粒状脱臭剤の上部空間の空気が乱れ、通常の庫内で使用する場合と比較して、粒状脱臭剤による脱臭効力が設計時より早めに消失してしまう恐れがあった。
【0009】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、気流の無い場所と有る場所とで使用する際に生じ得る差異を小さくすることができる通流制御構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために本発明の請求項1の通流制御構造にあっては、容器体の上面開口部から内部へ流入する流体の通流を制御する通流制御構造であって、前記容器体に収容された収容物の上部空間を周囲から覆う包囲部と、該包囲部の内側に設けられ前記収容物の上側に延設される通流制御部とを備え、該通流制御部上を通過する流体によって乱流が発生する小部屋を当該通流制御部に設けるとともに、該小部屋を上下に貫通して流体の通流路を形成した。
【0011】
すなわち、容器体に収容された収容物の上部空間は、包囲部によって周囲から覆われており、該包囲部の内側には、通流制御部が設けられている。このため、前記包囲部によって、その外周部から前記収容物への流体の直接吹き付けが防止される。そして、この流体は、そのほとんどが前記通流制御部上を通過するとともに、その一部が該通流制御部の小部屋で構成された通流路へ流れる。
【0012】
このとき、前記通流制御部上を通過する流体によって前記小部屋には、乱流が発生しており、この乱流によって前記通流路には、空気の壁が作られる。すると、この空気の壁によって、流体の通流が妨げられ、当該通流制御部と前記収容物との空間が無風状態となる。
【0013】
また、請求項2の通流制御構造においては、前記小部屋を複数設けるとともに前記通流制御部の全域に分散して配置した。
【0014】
すなわち、前記包囲部内へ吹き込んだ流体を通流する前記小部屋は複数設けられ、前記通流制御部の全域に分散して配置されている。
【0015】
これにより、前記各小部屋が構成する通流路を通過する流体は、当該通流制御部下部の広範囲に渡って分配される。
【0016】
さらに、請求項3の通流制御構造では、格子状に形成された壁面で前記通流制御部を構成し、前記壁面で包囲された前記小部屋を前記通流制御部に設けた。
【0017】
すなわち、前記壁面を格子状に設けて通流制御部を構成することにより、壁面で包囲された前記小部屋が形成される。
【0018】
これにより、前記小部屋が前記通流制御部の全域に渡って分散して配置される。
【0019】
加えて、請求項4の通流制御構造にあっては、格子状に形成された壁面で構成した前記通流制御部の前記各壁面の高さが、各格子間の距離より長い。
【0020】
すなわち、前記壁面の高さが短い場合、流体の乱流から漏れ出る気流によって当該通流制御部と前記収容物間の空間に流体が少なからず流れ込んでしまうことがあり、十分な効果が得られない場合があり得る。
【0021】
しかし、前記通流制御部の前記壁面を高く設定することで、前記小部屋内の乱流から前記空間へ漏れ出る気流を減衰し、当該空間内にほとんど流体が流れ込むことが無くなる。このとき、壁面の高さを短く設定した場合と比べても、各格子間の開口面積は変わらないため、揮散乃至脱臭に悪影響を与えることなく、前述した作用効果が十分に発揮される。
【0022】
また、請求項5の通流制御構造においては、前記容器体の上面開口部を覆うキャップを周壁と天面とで構成し、前記周壁に通流口を設けるとともに、該通流口を前記周壁の上側領域に配置して前記通流口より下側に前記包囲部を設定し、前記通流制御部を当該キャップに設けた。
【0023】
これにより、収容物を収容した容器体に、前記キャップを取り付けることによって、前記包囲部と前記通流制御部とを設けることができる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように本発明の請求項1の通流制御構造にあっては、前記通流制御部上を通過する流体により前記小部屋に乱流を発生させ、この乱流で前記小部屋が構成する通流路に空気の壁を形成することによって、当該通流制御部と前記収容物との空間を無風状態にすることができる。
【0025】
これにより、流体に流れの無い場所で使用した場合と同じ環境を形成することができ、流体に流れの無い場所で使用する場合と、流れの有る場所で使用する場合とにおいて、生じ得る差異を小さくすることができる。
【0026】
具体的に説明すると、前記容器体にゲル状脱臭剤が収容された消臭装置を気流の有る急速冷蔵タイプの冷蔵庫で使用する場合であっても、前記通流制御部と前記ゲル状脱臭剤との空間を無風状態にすることによって、冷気の前記ゲル状脱臭剤への直接吹き付けを防止するとともに、当該ゲル状脱臭剤の上部空間の空気の乱れを防止することができる。
【0027】
これにより、前記ゲル状脱臭剤の減少量を、気流の無い通常の庫内で使用する場合に近付けることができ、気流による影響を受け難い脱臭装置を提供することができる。
【0028】
また、前記容器体に活性炭などの粒状脱臭剤を収容した脱臭装置を、気流の有る急速冷蔵タイプの冷蔵庫で使用する場合であっても、前記通流制御部と前記粒状脱臭剤との空間を無風状態とすることによって、冷気の前記粒状脱臭剤への直接吹き付けを防止するとともに、当該粒状脱臭剤の上部空間の空気の乱れを防止することができる。
【0029】
これにより、前記粒状脱臭剤が脱臭効力を発揮する使用期間を、気流の無い通常の庫内で使用する場合に近づけることができ、気流による影響を受け難い脱臭装置を提供することができる。
【0030】
一方、香料などの薬剤を揮散する揮散装置に応用した場合には、前記通流制御部と前記薬剤との空間を無風状態とすることで、扇風機やエアコン等の風が当たった場合でも、風が当たらなかった場合と比較して前記薬剤の揮散量の差を抑えることができるので、常に薬剤の揮散速度を一定に保つことができる。
【0031】
また、請求項2の通流制御構造においては、前記包囲部内へ吹き込んだ流体を通流する前記小部屋を、前記通流制御部の全域に分散して複数配置することによって、当該通流制御部を通過する流体を、前記収容物の広範囲へ渡って分配することができる。
【0032】
このため、前記通流制御部を通過した流体が前記収容物の一部に偏って供給される場合と比較して、前記流体の前記収容物への接触面積を広げることができる。
【0033】
特に、前記収容物がゲル剤の場合には、当該ゲル剤を偏り無く均等に減少させることができる。
【0034】
さらに、請求項3の通流制御構造では、前記通流制御部の壁面を格子状に設けることによって、壁面で包囲された前記小部屋を形成することができる。
【0035】
これにより、前記小部屋を前記通流制御部の全域に渡って分散して配置することができる。
【0036】
加えて、請求項4の通流制御構造にあっては、前記通流制御部の前記壁面を高く設定することで、前記小部屋内の乱流から前記空間へ漏れ出る気流を減衰することができ、当該空間内に流れ込む流体をほとんど無くすことができる。
【0037】
これにより、揮散乃至脱臭に悪影響を与えることなく、前述した作用効果を十分に発揮することができる。
【0038】
また、請求項5の通流制御構造にあっては、収容物を収容した容器体に、前記キャップを取り付けるだけで、前記包囲部と前記通流制御部とを設けることができる。
【0039】
これにより、前記容器体の周壁を前記包囲部として利用する場合と比較して、前記容器体を、前記収容物の収容部として有効に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明の一実施の形態を図に従って説明する。図1は、本実施の形態にかかる通流制御構造を備えた脱臭装置1を示す図である。
【0041】
ここで、本実施の形態では、ゲル状脱臭剤を使用する冷蔵庫用の脱臭装置1に応用した場合を例に挙げて説明するが、これに限定されるものでは無い。例えば粒状の脱臭剤を使用した脱臭装置や、消臭剤、芳香剤、防虫剤、殺虫剤等の薬剤を含有したゲル剤を揮散する、あるいは室内等の他の場所で使用される揮散装置に応用しても良い。
【0042】
前記脱臭装置1は、上面開口状の容器体11と、該容器体11の上部に嵌着され前記容器体11の上面開口部を覆うキャップ12とによって構成されている。前記容器体11には、収容物ゲル状脱臭剤13が収容されており、該ゲル状脱臭剤13には、活性炭が含まれている。
【0043】
これにより、庫内の空気が前記ゲル状脱臭剤13の接触面21に接触することで、当該空気に含まれた悪臭成分をゲル状脱臭剤13含有の活性炭に吸着できるように構成されている。このとき、前記ゲル状脱臭剤13に含まれた水分が前記接触面21から揮散して小さくなる様子を前記容器体11の側面22から見ることによって交換時期を把握できるように構成されている。
【0044】
前記キャップ12は、図1及び図2に示すように、前記容器体11の上面開口部に適合した楕円形状の天面31と、該天面31の周縁より垂下した周壁32とによって構成されており、前記天面31の中央部には、長方形状の中央開口部33が開設されている。該中央開口部33の両端部には、細長のスリット部34,・・・が並設されており、前記中央開口部33及び前記スリット部34,・・・を介して内部に連通している。
【0045】
前記周壁32には、図1に示したように、矩形状の通流口41,・・・が複数開設されており、各通流口41,・・・は、周面に沿って配列されている。各通流口41,41の間には、外側に膨出した柱部42,・・・が形成されており、該柱部42の内側には、図3及び図4に示すように、上下に延在する板状のリブ43,・・・が突設されている。前記各柱部42,・・・は、前記容器体11の上端部に外嵌する外嵌部44に接続されており、該外嵌部44の内側面には、前記容器体11上縁の鍔部と係合する係合突起45,・・・が複数箇所に設けられている。
【0046】
これにより、前記外嵌部44を前記容器体11の上端部に外嵌した状態で、前記リブ43,・・・の下端が前記容器体11の上縁に当接するように構成されており、この当接状態において、前記容器体11に対する前記キャップ12の挿入量を規制できるように構成されている。
【0047】
前記各通流口41,・・・は、図1に示したように、前記周壁32の上側領域に配置されており、前記各通流口41,・・・下縁から前記外嵌部44上縁までの下側領域51には(図3及び図4参照)、薄肉部52,・・・が形成されている。この薄肉部52,・・・によって隣接する柱部42,42は前記下部領域51が連設されており、当該キャップ12には、前記外嵌部44から前記各通流口41,・・・までの前記下側領域51が前記柱部42,・・・及び前記薄肉部52,・・・により全周に渡って閉鎖されるとともに、当該キャップ12を前記容器体11に嵌着した状態で該容器体11内の前記ゲル状脱臭剤13における前記接触面21の上部空間を周囲から覆う包囲部53が形成されている。
【0048】
この包囲部53の内側には、図2及び図3に示すように、板形状の通流制御部61が設けられており、この通流制御部61によって前記容器体11の上面開口部から内部へ流入する流体としての空気の通流を制御する通流制御構造が構成されている。
【0049】
この通流制御部61は、図2に示したように、当該キャップ12の長さ方向に延在する長方形状に形成されており、前記中央開口部33の下部に配設されている。この通流制御部61は、前記中央開口部33の開口縁部より下方へ垂下した支持部62,・・・によって各辺が支持されており、キャップ12成形時に上下方向に型抜きされる金型によって当該キャップ12に一体形成できるように構成されている。
【0050】
前記通流制御部61は、図3及び図4に示したように、前記通流口41下縁の高さ位置から前記外嵌部44上縁の高さ位置までの範囲内に設けられており、当該キャップ12を前記容器体11に装着した状態で、前記包囲部53上端の高さ位置から前記容器体11に収容された前記ゲル状脱臭剤13の接触面21の高さ位置までの範囲内であって、前記ゲル状脱臭剤13から浮いた状態で前記接触面21に沿って延在するように配置されている。
【0051】
前記通流制御部61は、図2及び図3に示したように、縦横に延在する壁面71,・・・によって格子状に形成されており、格子状に形成された前記通流制御部61の前記各壁面71,・・・の高さは、各格子間の距離よりも長く設定されている。前記各壁面71,・・・が交差する交差点には、円柱状の円柱部72,・・・が一体形成されている。
【0052】
前記通流制御部61には、四方が前記壁面71,・・・によって包囲された矩形状の小部屋73,・・・が複数形成されており、各小部屋73,・・・は、当該通流制御部61の全域に分散して配置されている。
【0053】
これにより、図5の(a)に示すように、当該脱臭装置1に吹き付けられた冷気75が前記キャップ12の前記通流口41,・・・を通過した場合、この冷気75が前記通流制御部61上を通過する際に、その一部が前記各小部屋73,・・・に斜め上方から入り込むことによって、各小部屋73,・・・内には、渦流等の乱流76が発生するように構成されている。
【0054】
そして、前記各小部屋73,・・・は、当該通流制御部61を上下に貫通しており、前記冷気を前記ゲル状脱臭剤13側へ通流する通流路77,・・・を構成している。
【0055】
以上の構成にかかる本実施の形態において、前記容器体11に収容されたゲル状脱臭剤13の接触面21の上部空間は、前記容器体11に装着されたキャップ12の包囲部53によって周囲から覆われており、該包囲部53の内側には、通流制御部61が設けられている。このため、前記包囲部53によって、その外周部から前記接触面21への直接の冷気の吹き付けが防止される。
【0056】
そして、前記包囲部53上方の通流口41,・・・から流入した冷気75は、図5の(a)に示したように、そのほとんどが前記通流制御部61上を通過するとともに、その一部が該通流制御部61の各小部屋73,・・・で構成された通流路77,・・・へ流れる。
【0057】
このとき、前記通流制御部61上を通過する冷気75によって前記各小部屋73,・・・には、乱流76,・・・が発生しており、この乱流76,・・・によって前記通流路77,・・・には、空気の壁が作られる。すると、この空気の壁によって、冷気75の空間101への通流が妨げられ、当該通流制御部61から前記ゲル状脱臭剤13までの空間101が無風状態となる。
【0058】
このため、気流の無い場所で使用した場合と同じ環境を形成することができ、冷気の流れの無い場所で使用する場合と、流れの有る場所で使用する場合とにおいて、生じ得る差異を小さくすることができる。
【0059】
すなわち、前記ゲル状脱臭剤13から揮散した水分は、図5に示すように、湿気となって当該ゲル状脱臭剤13上部の空間101に貯まり、この空間101には、前記水分を含んだ高湿領域が形成されている。この高湿領域では、前記ゲル状脱臭剤13から上方へ離れるに従って湿度が低下する濃度勾配となっており、この状態が保たれることによって、前記ゲル状脱臭剤13からの揮散効率が一定となるように保持されている。
【0060】
なお、図6の(a)に示すように、上部に前記通流制御部61が設けられた場合と、図6の(b)に示すように、上部に前記通流制御部61が設けられていない場合とで、前記ゲル状脱臭剤13からの揮散量に大きな変化ができないように、前記各小部屋73,・・・の面積や数が設定されている。
【0061】
しかし、本実施の形態の通流制御構造を不具備な消臭装置1を気流の有る急速冷蔵タイプの冷蔵庫で使用すると、図5の(b)に示すように、前記キャップ12の通流口41,・・・から流入した冷気75が、前記ゲル状脱臭剤13上部の空間101に吹き付けられてしまう。すると、前記濃度勾配が変化して前記ゲル状脱臭剤13近傍の湿度が低下してしまい、前記ゲル状脱臭剤13からの水分の揮散速度が高められてしまう。
【0062】
そこで、前記通流制御構造を備えた前記消臭装置1を気流の有る急速冷蔵タイプの冷蔵庫で使用すると、前記通流制御部61と前記ゲル状脱臭剤13との空間101を無風状態にすることができ、冷気の前記ゲル状脱臭剤13への直接吹き付け及び前記空間101での濃度勾配の変化を防止することができる。
【0063】
これにより、気流の有る急冷タイプの冷蔵庫で使用した場合であっても、前記ゲル状脱臭剤13の減少量を、気流の無い潤いタイプ冷蔵庫で使用する場合に近付けることができ、使用期間の差を小さくすることができる。よって、気流による影響を受け難い脱臭装置1を提供することができる。
【0064】
一方、前記ゲル状脱臭剤13で冷気75中に含まれる悪臭を脱臭する際に、本実施の形態の通流制御構造を不具備な消臭装置を気流の有る急速冷蔵タイプの冷蔵庫で使用すると、図7の(b)に示すように、前記キャップ12の通流口41,・・・から流入した冷気75が、前記ゲル状脱臭剤13上部の空間101に吹き付けられてしまう。
【0065】
すると、この空間101において、前記ゲル状脱臭剤13へ近づくに従って低下するように分布されていた悪臭濃度に乱れが生じ、前記ゲル状脱臭剤13近傍での悪臭濃度が常に高い状態となってしまう。これにより、前記ゲル状脱臭剤13による脱臭速度が速くなりすぎてしまい脱臭効力が設計時より早めに消失してしまうこととなる。
【0066】
そこで、本実施の形成の脱臭装置1を急速冷蔵タイプの冷蔵庫で使用して脱臭すると、図7の(a)に示したように、前記通流制御部61上を通過する冷気75によって前記各小部屋73,・・・に乱流76,・・・が発生し、前記通流路77,・・・に空気の壁を作ることにより、当該通流制御部61から前記粒状脱臭剤までの空間101を無風状態にすることができる。
【0067】
これにより、この空間101における悪臭成分の濃度が前記ゲル状脱臭剤13へ近づくに従って低下した通常の濃度分布を維持することができ、前記ゲル状脱臭剤13による脱臭効率を安定化することができる。よって、前記ゲル状脱臭剤13による脱臭効力を設計通りの期間を保持することができる。
【0068】
なお、図8の(a)に示すように、上部に前記通流制御部61が設けられた場合と、図8の(b)に示すように、上部に前記通流制御部61が設けられていない場合とで、前記ゲル状脱臭剤13による脱臭力に大きな変化ができないように、前記各小部屋73,・・・の面積や数が設定されている。
【0069】
また、前記小部屋73,・・・は複数設けられており、前記通流制御部61の全域に分散して配置されている。これにより、当該通流制御部61を通過する冷気を、前記ゲル状脱臭剤13の接触面21の広範囲に渡って分散することができる。
【0070】
このため、前記通流制御部61を通過した冷気が前記接触面21の一部に偏って供給される場合と比較して、前記ゲル状脱臭剤13を偏り無く均等に減少させることができる。
【0071】
そして、前記通流制御部61の前記壁面71,・・・を格子状に設けることによって、四方が壁面71,・・・で包囲された前記小部屋73,・・・を形成することができる。
【0072】
これにより、前記壁面71,・・・及び前記小部屋73,・・・を、前記通流制御部61の全域に渡って分散して配置することができる。
【0073】
また、格子状に形成された前記通流制御部61の前記各壁面71,・・・の高さは、各格子間の距離よりも長く設定されている。
【0074】
ここで、前記各壁面71,・・・の高さが短い場合、冷気の乱流76,・・・から漏れ出る気流によって当該通流制御部61と前記ゲル状脱臭剤13間の空間101に冷気75が少なからず流れ込んでしまうことがあり、この場合、十分な効果が得られないことがあり得る。
【0075】
しかし、本実施の形態では、前記通流制御部61の前記壁面71,・・・を高く設定することで、前記小部屋73,・・・内の乱流76,・・・から前記空間101へ漏れ出る気流を減衰し、冷気75が前記空間101内に流れ込むことは無い。これにより、前述した作用効果を確実に発揮することができる。
【0076】
そして、前記ゲル状脱臭剤13を収容した前記容器体11の上面開口部に前記キャップ12を取り付けるだけで、当該脱臭装置1に、前記包囲部53と前記通流制御部61とを設けることができる。
【0077】
これにより、前記容器体11の周壁を前記包囲部53として利用する場合と比較して、前記容器体11全体を、前記ゲル状脱臭剤13の収容部として有効に利用することができる。
【0078】
なお、本実施の形態では、ゲル状脱臭剤13を用いた脱臭装置1を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。
【0079】
すなわち、前記容器体11に活性炭などの粒状脱臭剤を収容した脱臭装置であっても良い。
【0080】
この場合においても、気流の有る急速冷蔵タイプの冷蔵庫で使用する場合であっても、前記通流制御部61と前記粒状脱臭剤との空間101を無風状態とすることで、冷気75の前記粒状脱臭剤への直接吹き付け及び前記空間101内の空気の乱れを防止することができる。
【0081】
これにより、前記粒状脱臭剤が脱臭効力を発揮する期間を、気流の無い通常の庫内で使用する場合に近づけることができ、気流による影響を受け難い脱臭装置を提供することができる。
【0082】
また、この通流制御構造は、香料などの薬剤を揮散する揮散装置に応用することもできる。
【0083】
このような揮散装置の場合には、前記通流制御部61と前記薬剤との空間101を無風状態とすることで、扇風機やエアコン等の風が当たった場合でも、風が当たらなかった場合と比較して前記薬剤の揮散量の差を抑えることができるので、常に薬剤の揮散速度を一定に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の一実施の形態を示す側面図である。
【図2】同実施の形態を示す平面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】図3の要部拡大図である。
【図5】(a)は同実施の形態の脱臭装置を気流が有る場所で使用した際の揮散状態を示す説明図であり、(b)は一般構造の脱臭装置を気流が有る場所で使用した際の揮散状態を示す図である。
【図6】(a)は同実施の形態の脱臭装置を気流の無い場所で使用した際の揮散状態を示す説明図であり、(b)は一般構造の脱臭装置を気流の無い場所で使用した際の揮散状態を示す図である。
【図7】(a)は同実施の形態の脱臭装置を気流が有る場所で使用した際の脱臭状態を示す説明図であり、(b)は一般構造の脱臭装置を気流が有る場所で使用した際の脱臭状態を示す図である。
【図8】(a)は同実施の形態の脱臭装置を気流の無い場所で使用した際の脱臭状態を示す説明図であり、(b)は一般構造の脱臭装置を気流の無い場所で使用した際の脱臭状態を示す図である。
【図9】従来の消臭装置を示す平面図である。
【符号の説明】
【0085】
1 通流制御構造
11 容器体
12 キャップ
13 ゲル化剤
21 接触面
31 天面
32 周壁
33 中央開口部
41 通流口
53 包囲部
61 通流制御部
71 壁面
73 小部屋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器体の上面開口部から内部へ流入する流体の通流を制御する通流制御構造であって、
前記容器体に収容された収容物の上部空間を周囲から覆う包囲部と、該包囲部の内側に設けられ前記収容物の上側に延設される通流制御部とを備え、
該通流制御部上を通過する流体によって乱流が発生する小部屋を当該通流制御部に設けるとともに、該小部屋を上下に貫通して流体の通流路を形成したことを特徴とする通流制御構造。
【請求項2】
前記小部屋を複数設けるとともに前記通流制御部の全域に分散して配置したことを特徴とする請求項1記載の通流制御構造。
【請求項3】
格子状に形成された壁面で前記通流制御部を構成し、前記壁面で包囲された前記小部屋を前記通流制御部に設けたことを特徴とする請求項2記載の通流制御構造。
【請求項4】
格子状に形成された壁面で構成した前記通流制御部の前記各壁面の高さが、各格子間の距離より長いことを特徴とする請求項3記載の通流制御構造。
【請求項5】
前記容器体の上面開口部を覆うキャップを周壁と天面とで構成し、前記周壁に通流口を設けるとともに、該通流口を前記周壁の上側領域に配置して前記通流口より下側に前記包囲部を設定し、前記通流制御部を当該キャップに設けたことを特徴とする請求項1から4にいずれか記載の通流制御構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−303921(P2008−303921A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−149865(P2007−149865)
【出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【出願人】(000102544)エステー株式会社 (127)
【Fターム(参考)】