説明

通電制御装置

【課題】突入電流の影響を低減して、一部の負荷の断線を検出する。
【解決手段】制御器13は、負荷としての方向指示器11に断線が検出されないとき、長い第1周期TLで方向指示器11を断続制御する。制御器13は、断線が検出されるとき、短い第2周期TSで方向指示器11を断続制御する。制御器13は、短い第2周期TSを構成する第2オン期間TonSを経過するまでは、通電状態を維持する。制御器13は、第2オン期間TonSを経過した後に、繰り返して継続的に、電流信号ISに基づいて断線状態を検出する。この結果、短い第2周期TSを確実に実現しながら断線を検出することができる。さらに、短い第2周期TSのための第2オン期間TonSを利用して突入電流の影響を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、並列接続された複数の負荷への通電を制御する通電制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、並列接続された複数の負荷として車両用の方向指示器を開示している。この装置は、方向指示器の短絡故障を検出するために、過大電流を検出する回路を備えている。さらに、短絡故障に起因する過大電流と、通電開始時の突入電流とを区別するために、通電開始直後の所定期間は、過大電流の検出を禁止することを開示している。
【0003】
一方、特許文献2は、負荷の短絡および断線を検出する回路を開示している。さらに、特許文献3および特許文献4は、負荷の断線を検出する装置において、断線を判定するための閾値を補正する装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開55−106832号公報
【特許文献2】特開2000−245054号公報
【特許文献3】特開2007−15654号公報
【特許文献3】特開2009−241665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1ないし4が開示する装置では、突入電流が断線検出に与える影響が考慮されていない。このため、突入電流に起因して、誤った断線検出がなされるおそれがあった。
【0006】
例えば、並列接続された複数の負荷への供給電流に基づいて、いずれかひとつの負荷の断線を検出する場合、負荷群への供給電流の減少を検出する必要がある。ところが、通電開始時の突入電流は、断線による供給電流の減少を覆い隠してしまうおそれがある。このため、断線しているにもかかわらず、正常であると判定されるおそれがあった。また、断線が検出された後であっても、一時的な突入電流が一時的な正常判定を引き起こすおそれがあった。
【0007】
また、突入電流の影響を低減するために、通電開始から所定期間が経過した時点の供給電流をサンプリングし、サンプリングされた供給電流の値と断線検出のための閾値とを比較する手法が考えられる。しかし、この手法では、サンプリング時点の後の供給電流の減少を検出できない。
【0008】
また、車両の方向指示器のための通電制御装置では、断線を検出した場合に、点滅周期を短くすることによって、断線を通知している。この場合、一部の負荷に断線が生じていたとしても、残りの負荷へは短期間の通電を実行する必要がある。ところが、突入電流の消滅に応答して断線を検出すると、必要な点灯期間を経過する前に強制的な消灯が実行されるおそれがあった。
【0009】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、突入電流の影響を低減して、断線を検出することができる通電制御装置を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、所要の断続周期を実現するための通電期間を維持しながら、断線検出を継続することができる通電制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、並列接続された複数の負荷への通電を制御する制御手段(13、104、111)と、制御手段によって複数の負荷へ通電されるとき、複数の負荷に供給される供給電流(IS)が閾値(Ith)を下回るか否かを繰り返し判定し、または継続的に判定し、供給電流が閾値を下回ると一部の負荷の断線を検出する断線検出手段(13、108−109)と、複数の負荷への通電開始から所定の期間(TonS)の間は、断線検出手段による断線の検出を禁止し、所定の期間の経過後に断線検出手段による断線の検出を有効にする禁止手段とを備えるという技術的手段を採用する。この発明によると、所定の期間の間は断線検出が禁止されるから、突入電流の影響が低減される。また、所定の期間の経過後は、断線検出が繰り返し、または継続的に行われるから、断線の発生を迅速に検出することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、制御手段は、複数の負荷への通電を、オン状態とオフ状態とに交互に切換える手段(13、104、105−107、111、112−113)を備え、通電制御装置は、断線検出手段によって断線が検出されないとき、オン状態とオフ状態との周期を第1周期(TL)とし、断線検出手段によって断線が検出されるとき、オン状態とオフ状態との周期を第1周期より短い第2周期(TS)とする切換手段(13、110、114)をさらに備えるという技術的手段を採用する。この発明によると、負荷は、断線が検出されないときは、第1周期で作動する。また、負荷は、断線が検出されると、第2周期で作動する。この結果、断線検出手段によって迅速に検出された断線状態を、負荷の作動周期によって、利用者に知らせることができる。また、突入電流の影響を低減することができるので、作動周期の望ましくない切替が低減される。
【0013】
請求項3に記載の発明は、所定の期間(TonS)は、第2周期(TS)のためのオン期間であるという技術的手段を採用する。この発明によると、所定の期間は、断線検出が禁止されているから、第2周期におけるオン期間の間に断線が検出されることが回避される。この結果、断線の有無にかかわらず、第2周期におけるオン期間の間は、負荷への通電を継続することが可能となる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、制御手段は、断線検出手段によって断線が検出されると複数の負荷への通電を遮断する手段(111)を備え、切換手段は、断線検出手段によって断線が検出された後のオフ状態の期間を、第2周期(TS)のためのオフ期間(ToffS)に切換える手段(114)を備えるという技術的手段を採用する。この発明によると、断線が検出されると直ちに負荷への通電を遮断できる。さらに、断線が検出された直後のオフ期間を、第2周期のオフ期間とすることができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、制御手段は、第2周期のための第2オン期間(TonS)を経過した後に、第1周期(TL)のための第1オン期間(TonL)を経過するまで、オン状態を継続するオンループ(105−107)と、第1オン期間を経過した後に、第1周期(TL)のための第1オフ期間(TonL)、または第2周期(TS)のための第2オフ期間(ToffS)を経過するまで、オフ状態を継続するオフループ(112−113)とを備え、切換手段(110、114)は、オフループにおける第1オフ期間(TonL)と第2オフ期間(ToffS)とを切換えており、断線検出手段(108−109)はオンループの中に設けられ、断線を検出すると、制御手段をオンループからオフループへと移行させるという技術的手段を採用する。この発明によると、断線が検出されないとき、制御手段は、第1オン期間が経過すると、オンループからオフループに移行する。このため、負荷は、第1周期で断続的に作動する。一方で、第2オン期間を経過した後の、第1オン期間中に断線検出が繰り返される。このため、断線の発生を迅速に検出することができる。さらに、断線が発生しているときは、第2オン期間が経過した直後の断線検出によって、制御手段がオンループからオフループへ移行する。このため、断線が検出されると、負荷は第2周期で断続的に作動する。
【0016】
なお、特許請求の範囲および上記手段の項に記載した括弧内の符号は、ひとつの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る通電制御装置を示す回路図である。
【図2】第1実施形態に係る通電制御装置のフローチャートである。
【図3】第1実施形態に係る供給電流を示すグラフである。
【図4】第1実施形態に係る制御信号を示すグラフである。
【図5】第1実施形態に係る断線判定ステップによる判定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示してなくとも実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0019】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る車両用方向指示器の通電制御装置10を示す回路図である。通電制御装置10は、車両の運転者の指示に応答して、負荷群へ通電する。
【0020】
通電制御装置10は、方向指示器11を備える。方向指示器11は、負荷群としての右方向指示器11aと、負荷群としての左方向指示器11bを備える。右方向指示器11aは、複数の負荷としての複数の発光器を有している。それぞれの発光器は、電球または発光ダイオードによって提供される。複数の負荷には、発光器以外のブザーなどの負荷を含むことができる。複数の発光器には、車両の外部に設置された複数の発光器と、車両のメータ内に設置された発光器とが含まれる。複数の負荷は並列接続されている。左方向指示器11bは、右方向指示器11aと同じ構成要素を有し、車両上においては右方向指示器11aと対称に配置されている。
【0021】
通電制御装置10は、方向指示器11の作動の開始と終了とを指示するための指示装置12を備える。指示装置12は、車両のステアリングホイールの近傍に設置されている。指示装置12は、運転者によって操作されると、指示信号SSを発生する。指示装置12は、右操作スイッチ12aと左操作スイッチ12bとを備える。指示信号SSは、右指示信号SRと、左指示信号SLとを含む。指示装置12は、右指示信号SRと左指示信号SLとを選択的に出力するように構成されている。右操作スイッチ12aは、運転者によって操作されると、右指示信号SRを発生する。左操作スイッチ12bは、運転者によって操作されると、左指示信号SLを発生する。
【0022】
通電制御装置10は、負荷への通電を制御する制御器13を備える。制御器13は、予め定められたプログラムを格納する記憶装置13aを備えるマイクロコンピュータ(COM)である。記憶装置13aはメモリ(MEM)によって提供される。プログラムは、制御器13によって実行されることによって、通電制御装置10をこの明細書に記載される装置として機能させ、この明細書に記載される制御方法を実行するように通電制御装置10を機能させる。制御器13は、安定化電源Vccの供給を受けている。
【0023】
制御器13は、指示装置12からの指示信号SSに応答して方向指示器11を作動させるために、方向指示器11への通電を制御する制御手段を提供する。制御器13は、方向指示器11へ通電するオン状態と、方向指示器11への通電を遮断するオフ状態とに交互に切換える。制御器13は、指示装置12から指示信号SSを入力する。制御器13は、指示信号SSに応答して制御信号CSを出力する。制御器13は、制御信号CSを周期的にオン信号とオフ信号とに切換える。制御信号CSは、右方向指示器11aを断続制御するための右制御信号CRと、左方向指示器11bを断続制御するための左制御信号CLとを含む。
【0024】
さらに、制御器13は、電流信号ISを入力する。電流信号ISは、複数の負荷に供給される供給電流の値を示す。電流信号ISは、右方向指示器11aへの供給電流を示す右電流信号IRと、左方向指示器11bへの供給電流を示す左電流信号ILとを含む。
【0025】
制御器13は、電流信号ISに基づいて方向指示器11の部分的な断線を検出する断線検出手段を提供する。断線検出手段は、方向指示器11へ通電されているときに、繰り返して、あるいは継続的に、電流信号ISに基づいて断線を検出する。制御器13は、右電流信号IRに基づいて右方向指示器11aに含まれる負荷の断線を検出する。制御器13は、左電流信号ILに基づいて左方向指示器11bに含まれる負荷の断線を検出する。
【0026】
制御器13は断線の有無に応じて方向指示器11への通電の断続周期を、長い第1周期TLと、短い第2周期TSとに切換える切換手段を提供する。制御器13は、方向指示器11の部分的な断線が検出されないとき、制御信号CSの断続周期を第1周期TLとする。制御器13は、方向指示器11の部分的な断線が検出されるとき、制御信号CSの断続周期を、第1周期TLより短い第2周期TSとする。この結果、方向指示器11の断続周期は、部分的な断線が検出されると、第1周期TLから第2周期TSへと切換えられる。
【0027】
第1周期TLには、負荷へ通電する第1オン期間TonLと、負荷への通電を遮断する第1オフ期間ToffLとが含まれる。第2周期TSには、負荷へ通電する第2オン期間TonSと、負荷への通電を遮断する第2オフ期間ToffSとが含まれる。それぞれのオン期間は、通電期間とも呼ばれる。それぞれのオフ期間は、遮断期間とも呼ばれる。
【0028】
第1周期TLは、TL=TonL+ToffLで表すことができる。一方、第2周期TSは、TS=TonS+ToffSで表すことができる。第2オン期間TonSは、第1オン期間TonLより短い。第2オフ期間ToffSは、第1オフ期間ToffLより短い。第2オン期間TonSは、第2オフ期間ToffSより短い。例えば、第1オン期間TonLと第1オフ期間ToffLは、350msとすることができる。第2オン期間TonSは110msとすることができる。第2オフ期間ToffSは、200msとすることができる。
【0029】
さらに、制御器13は、第2オン期間TonSの間は断線検出手段による断線検出を禁止し、第2オン期間TonSの経過後に断線検出手段による断線検出を有効にする禁止手段を提供する。従って、断線検出手段と禁止手段とによって、第2オン期間TonSを経過した後のみ、繰り返して、あるいは継続的に、電流信号ISに基づいて方向指示器11の部分的な断線を検出する期間制限付の断線検出手段が提供される。
【0030】
制御器13は、負荷への通電を開始してから、第2オン期間TonSの間だけ、電流信号ISに基づく断線状態の検出を禁止する。第2オン期間TonSは、突入電流に起因する誤判定を防止するためのマスク期間でもある。第2オン期間TonSは、突入電流のうち、初期のインパルス期間を含むように、このインパルス期間よりも長く設定されている。これにより突入電流の初期部分による影響を低減することができる。第2オン期間TonSは、突入電流の一部が残留しているときに第2オン期間TonSが満了する程度の長さに設定されてもよい。制御器13は、第2オン期間TonSが満了した後であって、第1オン期間TonLが満了するまでの通電中に、継続的に、あるいは繰り返して電流信号ISを監視し、断線を検出する。
【0031】
制御器13は、制御手段、断線検出手段、切換手段、および禁止手段を一組だけ備えている。右指示信号SRと左指示信号SLとは、選択的に入力されるから、制御器13は一組の手段によって、右系統と左系統とに、同じ機能を提供する。従って、一組の手段は、右系統と左系統とを含む複数の系統で共用されている。制御器13が提供する手段は、所定の機能を達成する機能的ブロック、またはモジュールとも呼ぶことができる。
【0032】
通電制御装置10は、駆動回路14を備える。駆動回路14は、負荷を駆動するためのドライバ集積回路(Dr−IC)によって提供される。駆動回路14は、制御信号CSを入力する。駆動回路14は、制御信号CSに応答して、方向指示器11への通電を断続する。さらに、駆動回路14は、方向指示器11に供給している供給電流の値を示す電流信号ISを出力する。駆動回路14は、右制御信号CRに応答して、右方向指示器11aへの通電を断続し、同時に、右方向指示器11aへの供給電流を示す右電流信号IRを出力する。駆動回路14は、左制御信号CLに応答して、左方向指示器11bへの通電を断続し、同時に、左方向指示器11bへの供給電流を示す左電流信号ILを出力する。駆動回路14は、車載バッテリの電圧+Bの供給を受けている。
【0033】
図2は、第1実施形態に係る通電制御装置10の作動を示すフローチャートである。このフローチャートは、プログラムとして記憶装置13aに格納され、制御器13によって実行される。フローチャートは、指示信号SS、制御信号CS、および電流信号ISに、右側用の信号SR、CR、およびIR、または左側用の信号SL、CL、およびILを選択的に当てはめて実行される。
【0034】
方向指示器11を点滅させるための処理100は、所定周期で繰り返して実行されている。制御器13は、ステップ101では、指示信号SSを入力する。ステップ102では、指示信号SSがオン状態(ON)か否かを判定する。ステップ102では、指示信号SSがオフ状態のときNOに分岐し、指示信号SSがオン状態のときYESに分岐する。ステップ103では、オフ信号CS-offを出力する。これにより、方向指示器11は待機状態に置かれる。
【0035】
ステップ104では、オン信号CS-onを出力する。この結果、方向指示器11は点灯する。右指示信号SRがオン状態のときには、右方向指示器11aが点灯し、左指示信号SLがオン状態のときには、左方向指示器11bが点灯する。
【0036】
ステップ105では、方向指示器11の実オン期間Tonを計測する。ステップ106では、実オン期間Tonが第2オン期間TonSを越えたか否かを判定する。ステップ106では、実オン期間Tonが第2オン期間TonSを越えないときNOに分岐し、実オン期間Tonが第2オン期間TonSを越えるときYESに分岐する。この結果、実オン期間Tonが第2オン期間TonSを越えるまで、ステップ105および106のループを繰り返す。これにより、第2オン期間TonSの間は、方向指示器11への通電が継続される。
【0037】
ステップ107では、実オン期間Tonが第1オン期間TonLを越えたか否かを判定する。ステップ107では、実オン期間Tonが第1オン期間TonLを越えないときNOに分岐し、実オン期間Tonが第1オン期間TonLを越えるとYESに分岐する。ステップ105からステップ107を繰り返すループは、オン信号CS-onによるオン状態を、第2オン期間TonSを経過した後に、第1オン期間TonLを経過するまで継続するオンループを提供している。
【0038】
ステップ108では、電流信号ISを入力する。右方向指示器11aが点灯しているときは、右電流信号IRが入力される。左方向指示器11bが点灯しているときは、左電流信号ILが入力される。ステップ109では、電流信号ISが、閾値Ithを下回ったか否かを判定する。閾値Ithは、方向指示器11に含まれる複数の負荷の一部が断線したことを検出するための値である。閾値Ithは、方向指示器11に含まれる複数の負荷の一部が断線したときの供給電流の値よりやや高く設定されている。ステップ109では、電流信号ISが閾値Ithを下回らないときNOに分岐し、電流信号ISが閾値Ithを下回るとYESに分岐する。この結果、電流信号ISが閾値Ithを下回らないとき、ステップ105へ戻ることによって、ステップ105、106、107、108、および109を通るオンループが繰り返される。このオンループを繰り返す間は、方向指示器11への通電が継続される。また、このオンループを繰り返す間は、ステップ108および109が繰り返して実質的に継続的に実行される。ステップ104、105、106、107、108、および109は、点灯処理を提供する。また、ステップ108および109は、断線検出処理を提供する。ステップ108および109は、オンループの中に組み込まれている。
【0039】
点灯処理を繰り返す間に、第1オン期間TonLを経過すると、ステップ107からYESに分岐する。従って、第2オン期間TonSを経過した後、第1オン期間TonLを経過するまでの間は、断線検出処理が繰り返して継続的に実行される。ステップ110では、方向指示器11のオフ期間Thoffを、第1オフ期間ToffLに設定する。
【0040】
点灯処理を繰り返す間に、電流信号ISが閾値Ithを下回ると、ステップ109からYESに分岐する。ステップ114では、方向指示器11のオフ期間Thoffを、第2オフ期間ToffSに設定する。従って、第2オン期間TonSを経過した後、第1オン期間TonLを経過するまでの間に、断線が検出されると、短い第2周期TSを提供するために第2オフ期間ToffSが設定される。
【0041】
ステップ111では、オフ信号CS-offを出力する。この結果、方向指示器11は、消灯される。ステップ112では、方向指示器11の実オフ期間Toffを計測する。ステップ113では、実オフ期間Toffがオフ期間Thoffを越えたか否かを判定する。ステップ113では、実オフ期間Toffがオフ期間Thoffを越えないときNOに分岐し、実オフ期間Toffがオフ期間Thoffを越えるときYESに分岐する。この結果、実オフ期間Toffがオフ期間Thoffを越えるまで、ステップ112とステップ113とのループを繰り返す。これによって、オフ期間Thoffの間は、方向指示器11への通電が遮断される。ステップ111、112、および113は、消灯処理を提供している。ステップ112とステップ113とを繰り返すループは、オフ信号CS-offによるオフ状態を第1オフ期間ToffL、または第2オフ期間ToffSを経過するまで継続するオフループを提供している。ステップ113の後、処理はステップ101へ戻る。よって、方向指示器11の点灯と消灯とが繰り返される。
【0042】
ステップ110を経由した後に、消灯処理を実行する場合、方向指示器11は、第1オフ期間ToffLの間だけ消灯される。従って、第1オン期間TonLにわたって方向指示器11を点灯させた後は、第1オフ期間ToffLにわたって方向指示器11を消灯させる。この結果、断線が検出されないときは、長い第1周期TLで方向指示器11が点滅する。言い換えると、断線が検出されないとき、制御器13は、第1オン期間TonLが経過すると、オンループからオフループに自動的に移行する。このため、方向指示器11は、第1周期TLで断続的に作動する。
【0043】
一方、ステップ114を経由した後に、消灯処理を実行する場合、方向指示器11は、第2オフ期間ToffSの間だけ消灯される。この消灯処理は、少なくとも第2オン期間TonSの間は方向指示器11を点灯させた後に、実行される。このため、断線が検出されているときは、短い第2周期TSで方向指示器11が点滅する。さらに、点灯期間中に断線が検出された場合、直ちに消灯し、その後に、第2周期TSで方向指示器11が点滅する。言い換えると、第2オン期間TonSを経過した後の、第1オン期間TonL中に断線検出が繰り返される。このため、断線の発生が迅速に検出される。さらに、断線が検出されると、制御器13はステップ109を通ってオンループからオフループへ移行する。断線が検出された後は、第2オン期間TonSが経過した直後の断線検出によってオンループからオフループへ移行する。このため、断線が検出されると、方向指示器11は第2周期TSで断続的に作動する。
【0044】
図3は、第1実施形態に係る供給電流を示すグラフである。供給電流は、電流信号ISに対応している。図4は、第1実施形態に係る制御信号CSを示すグラフである。図5は、第1実施形態に係る断線判定ステップ109による判定結果を示すグラフである。
【0045】
図3、図4、および図5の期間Iは、方向指示器11に断線が発生していない正常状態を示している。乗員が指示装置12を操作すると、指示装置12は、指示信号SSを出力する。この指示信号SSに応答して、制御器13は、制御信号CSをオン信号CS-onとオフ信号CS-offとに交互に切換える。時刻t1において、ステップ104によってオン信号CS-onが出力されると、方向指示器11が点灯する。このとき、方向指示器11には、通電開始直後に突入電流が流れる。この結果、電流信号ISは、過渡的に大きな値をとる。方向指示器11への通電が開始されてから第2オン期間TonSを経過すると、ステップ108および109による断線検出処理が実行される。期間Iにおいては方向指示器11には断線が発生していないから、電流信号ISは、閾値Ithを下回っていない。このため、断線は検出されない。
【0046】
方向指示器11への通電を開始した後に第1オン期間TonLを経過すると、時刻t2において、ステップ111によってオフ信号CS-offが出力される。この結果、方向指示器11は消灯する。時刻t2において、電流信号ISは0に戻る。この後、制御器13は、ステップ112および113のループを繰り返す。やがて第1オフ期間ToffLを経過すると、時刻t3において、ステップ112および113のループを抜け出す。この結果、再びステップ104に到達し、方向指示器11は再び点灯される。このような作動を繰り返すことによって、長い第1周期TLで方向指示器11が点滅を繰り返す。
【0047】
図3、図4、および図5の期間IIは、方向指示器11の一部の負荷に断線が発生している故障状態を示している。時刻t4において、ステップ104によってオン信号CS-onが出力されると、方向指示器11の正常な発光器だけが点灯する。このとき、方向指示器11には、通電開始直後に突入電流が流れる。この後、一部の負荷が断線しているため、電流は急激に減少し、閾値Ithを下回る。図示の例では、第2オン期間TonSを経過する前に、電流信号ISは閾値Ithを下回っている。このような場合であっても、制御器13は、第2オン期間TonSを経過するまでは、ステップ109へ到達しない。このため、少なくとも第2オン期間TonSの間はオン状態が継続される。
【0048】
方向指示器11への通電を開始した後に第2オン期間TonSを経過すると、時刻t5において、ステップ109によって断線状態が検出される。この結果、ステップ111によってオフ信号CS-offが出力される。この場合、オフ期間Thoffは、ステップ114によって第2オフ期間ToffSに設定される。従って、方向指示器11は、第2オフ期間ToffSの間だけ消灯する。さらに、第2オフ期間ToffSを経過すると、時刻t6において、ステップ112および113のループを抜け出す。この結果、制御器13は、再びステップ104に到達し、方向指示器11が再び点灯される。このような作動を繰り返すことによって、短い第2周期TSで方向指示器11が点滅を繰り返す。
【0049】
図3、図4、および図5の期間IIIは、方向指示器11への通電期間中に断線が発生した場合、または断線に起因する電流の減少量が少ない場合を示している。時刻t7において、ステップ104によってオン信号CS-onが出力されると、方向指示器11が点灯する。このとき、方向指示器11には、突入電流が流れる。時刻t7の後に一部の負荷が断線すると、電流信号ISは正常時より速く減少する。定格電流が比較的小さい負荷が断線していると、電流信号ISは正常時より速いが、比較的ゆっくりと減少する。
【0050】
ステップ108および109による断線検出処理は、方向指示器11への通電を開始した後、第2オン期間TonSを経過した後に開始される。従って、時刻t8の後に、断線検出が開始される。方向指示器11への通電を開始した後、第2オン期間TonSを経過する前に、電流信号ISが閾値Ithを下回ると、期間IIと同じ動作が行われる。
【0051】
一方、方向指示器11への通電を開始した後、第2オン期間TonSを経過した後に、電流信号ISが閾値Ithを下回る場合、電流信号ISが閾値Ithを下回った時刻t9において、ステップ109によって断線状態が検出される。この結果、ステップ111によってオフ信号CS-offが出力される。よって、少なくとも第2オン期間TonSの間はオン状態が継続される。この場合、オフ期間Thoffは、ステップ114によって第2オフ期間ToffSに設定される。従って、方向指示器11は、第2オフ期間ToffSの間だけ消灯する。さらに、第2オフ期間ToffSを経過すると、ステップ112および113のループを抜け出す。この結果、制御器13は、再びステップ104に到達し、方向指示器11が再び点灯される。このような作動を繰り返すことによって、方向指示器11断続周期が、長い第1周期TLから短い第2周期TSへ切換えられる。
【0052】
この実施形態によると、突入電流の影響を低減して、断線を検出することができる。しかも、突入電流の影響を低減するための第2オン期間TonSを経過した後は、繰り返して継続的に断線検出が実施されるため、通電期間中の断線を早期に検出することができる。また、断線を検出した直後から、短い第2周期TSによる点滅を実現することができる。また、突入電流の影響を低減するための第2オン期間TonSの間は、方向指示器11への通電が継続されるため、通電期間が過剰に短くなることを回避できる。この結果、短い第2周期TSを確実に実現することができる。さらに、短い第2周期TSのための第2オン期間TonSを利用して突入電流の影響を低減することができる。
【0053】
(他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。上記実施形態の構造は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものである。
【0054】
例えば、制御器13が提供する手段と機能は、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、制御器13をアナログ回路によって構成してもよい。
【符号の説明】
【0055】
10 通電制御装置、 11 負荷(方向指示器)、 12 指示装置(操作スイッチ)、 13 制御器、 14 駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列接続された複数の負荷への通電を制御する制御手段(13、104、111)と、
前記制御手段によって複数の前記負荷へ通電されるとき、複数の前記負荷に供給される供給電流(IS)が閾値(Ith)を下回るか否かを繰り返し判定し、または継続的に判定し、前記供給電流が前記閾値を下回ると一部の前記負荷の断線を検出する断線検出手段(13、108−109)と、
複数の前記負荷への通電開始から所定の期間(TonS)の間は、前記断線検出手段による断線の検出を禁止し、前記所定の期間の経過後に前記断線検出手段による断線の検出を有効にする禁止手段とを備えることを特徴とする通電制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
複数の前記負荷への通電を、オン状態とオフ状態とに交互に切換える手段(13、104、105−107、111、112−113)を備え、
前記通電制御装置は、
前記断線検出手段によって断線が検出されないとき、前記オン状態と前記オフ状態との周期を第1周期(TL)とし、前記断線検出手段によって断線が検出されるとき、前記オン状態と前記オフ状態との周期を前記第1周期より短い第2周期(TS)とする切換手段(13、110、114)をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の通電制御装置。
【請求項3】
前記所定の期間(TonS)は、前記第2周期(TS)のためのオン期間であることを特徴とする請求項2に記載の通電制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、
前記断線検出手段によって断線が検出されると複数の前記負荷への通電を遮断する手段(111)を備え、
前記切換手段は、前記断線検出手段によって断線が検出された後の前記オフ状態の期間を、前記第2周期(TS)のためのオフ期間(ToffS)に切換える手段(114)を備えることを特徴とする請求項2または3に記載の通電制御装置。
【請求項5】
前記制御手段は、
前記第2周期のための第2オン期間(TonS)を経過した後に、前記第1周期(TL)のための第1オン期間(TonL)を経過するまで、前記オン状態を継続するオンループ(105−107)と、
前記第1オン期間を経過した後に、前記第1周期(TL)のための第1オフ期間(TonL)、または前記第2周期(TS)のための第2オフ期間(ToffS)を経過するまで、前記オフ状態を継続するオフループ(112−113)とを備え、
前記切換手段(110、114)は、前記オフループにおける前記第1オフ期間(TonL)と前記第2オフ期間(ToffS)とを切換えており、
前記断線検出手段(108−109)は前記オンループの中に設けられ、断線を検出すると、前記制御手段を前記オンループから前記オフループへと移行させることを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の通電制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−178320(P2011−178320A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45710(P2010−45710)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】