連結具
【課題】被連結部材に対する連結のための予めの加工作業が極めて簡単ですむとともに、施工現場でのボルトとナットの螺合作業を極めて容易に行うことができ、連結作業に要する手間を大幅に減らすことができる連結具を提供すること。
【解決手段】一方の被連結部材のボルト挿通孔に挿通された第1のボルトが挿通される第1のボルト挿通孔11と、他方の被連結部材のボルト挿通孔に挿通された第2のボルトが挿通される第2のボルト挿通孔12とを有する連結具本体10と、連結具本体10における前記第1のボルト挿通孔11に臨む位置に形成され、前記第1のボルトが螺合される第1のナットを不動状態で保持し収容する第1のナット収容部20と、連結具本体10における前記第2のボルト挿通孔12に臨む位置に形成され、前記第2のボルトが螺合される第2のナットを不動状態で保持し収容する第2のナット収容部30と、を備えた連結具である。
【解決手段】一方の被連結部材のボルト挿通孔に挿通された第1のボルトが挿通される第1のボルト挿通孔11と、他方の被連結部材のボルト挿通孔に挿通された第2のボルトが挿通される第2のボルト挿通孔12とを有する連結具本体10と、連結具本体10における前記第1のボルト挿通孔11に臨む位置に形成され、前記第1のボルトが螺合される第1のナットを不動状態で保持し収容する第1のナット収容部20と、連結具本体10における前記第2のボルト挿通孔12に臨む位置に形成され、前記第2のボルトが螺合される第2のナットを不動状態で保持し収容する第2のナット収容部30と、を備えた連結具である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば鋼管杭同士をその長手方向に連結するのに用いられる連結具であって、二つの被連結部材をボルトとナットで連結する連結具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地盤改良を行うための鋼管杭回転圧入工法では、鋼管杭を回転させながら地盤中に貫入させ、この貫入させている鋼管杭の上部が地面近くまでくると、施工装置に新たな鋼管杭をセットし、先に貫入させた鋼管杭と新たな鋼管杭とをアーク溶接により接合するようにしている。
【0003】
しかしながら、現場での鋼管杭同士の溶接は、作業者の技量に左右されやすく溶接品質の安定確保がむずかしいこと、溶接作業時間が長くかかること、などの問題が生じている。
【0004】
このような状況に鑑みて、鋼管杭同士をボルトとナットで連結(接合)するようにしたものの一例として、特許文献1に鋼管杭の機械式継手が提案されている。この従来の技術を、図13〜図15に基づいて説明する。図13は従来技術による鋼管杭の機械式継手を示す断面図である。
【0005】
図13に示すように、鋼管杭の機械式継手は、上鋼管杭71に溶接固着される内継手材74と、下鋼管杭72に溶接固着される外継手材73とからなっている。前記内継手材74は、肉厚円筒状をなした基部の一方の端縁から外側に向かって直角に肉厚円環状のつば部75が一体的に延設された鋼製のつば付き円筒状をなしている。そして、前記つば部75の外径は接合対象(連結対象)である一対の鋼管杭71,72の外径とほぼ同じに、基部の外径は外継手材73の内径よりわずかに小さくなる様にそれぞれ形成されている。また、前記つば部75の端面は上鋼管杭71の端面にその軸心を一致させた状態で溶接固着されるとともに、前記基部の周壁には軸心から直角の方向を向かって放射状に複数のボルト挿入孔76が間隔をあけて形成されている。
【0006】
また、前記外継手材73は、鋼製で肉厚円筒状をなし、鋼管杭71,72の外径とほぼ同じ外径、前記内継手材74の基部の外径よりわずかに大きな内径をそれぞれ有し、下鋼管杭72の端面にその軸心を一致させた状態で溶接固着されるとともに、前記内継手材74の基部に形成されているボルト挿入孔76に対応する箇所に同径のボルト挿入孔77が形成されている。
【0007】
そして、外継手材73の内径側に内継手材74の基部を挿入し、それぞれのボルト挿入孔76,77にボルト78を差し込み、内継手材74の外周面と外継手材73の内周面とをボルト78とナット79によって締めることにより、内継手材74と外継手材73とを結合して、下鋼管杭72と上鋼管杭71とを接合するようにしている。
【0008】
図14及び図15は図13におけるナット79の脱落防止手段を説明するための断面図である。
【0009】
前記外継手材73の内周面と内継手材74の外周面とをボルトとナットで締め付けて結合する場合、図13に示すようにナット79は内継手材74の内側に位置するので、ボルト78への螺合作業の際にその位置を適正に保持するのはなかなかむずかしい。そこで、図14に示すように、ナット79を内継手材74の適正な位置に溶接で予め固定しておくようにして、ボルト78との螺合作業がしやすくなるようにしている。また、図15に示すように、内継手材74におけるボルト挿入孔76の内側にナット79が遊転しない大きさの箱形のナットホルダー80を溶接固定しておき、この中にナット79を入れておくようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−299298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし前述した従来の機械式継手では、予め工場において、下鋼管杭の上端面には外継手材を溶接接合しておく一方、上鋼管杭の下端面には前記外継手材とは異なる形状の内継手材を溶接接合しておくと必要があり、さらに、前記内継手材には予めナットを保持しておくための溶接作業を行なうようにしており、このように、鋼管杭に対する連結のための予めの加工作業に多大の手間がかかるものであった。
【0012】
そこで、本発明の課題は、例えば鋼管杭同士をその長手方向に連結するというように二つの被連結部材をボルトとナットで連結するに際し、被連結部材に対する連結のための予めの加工作業が極めて簡単ですむとともに、施工現場でのボルトとナットの螺合作業を極めて容易に行うことができ、連結作業に要する手間を大幅に減らすことができる連結具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の課題を解決するため、本願発明は次の技術的手段を講じている。
【0014】
請求項1の発明は、端部を互いに接しさせて連結する二つの各被連結部材に当接して位置させ、該二つの被連結部材をボルトとナットで連結する連結具であって、一方の被連結部材に形成されたボルト挿通孔に挿通された第1のボルトが挿通される第1のボルト挿通孔と、他方の被連結部材に形成されたボルト挿通孔に挿通された第2のボルトが挿通される第2のボルト挿通孔とを有する連結具本体と、前記連結具本体の被連結部材反対側における前記第1のボルト挿通孔に臨む位置に該連結具本体に接合部なしに一体形成され、ナット装入口を有し、前記第1のボルトが螺合されるナットであって前記ナット装入口から装入される第1のナットを不動状態で保持し収容する第1のナット収容部と、前記連結具本体の被連結部材反対側における前記第2のボルト挿通孔に臨む位置に該連結具本体に接合部なしに一体形成され、ナット装入口を有し、前記第2のボルトが螺合されるナットであって前記ナット装入口から装入される第2のナットを不動状態で保持し収容する第2のナット収容部と、を備えたことを特徴とする連結具である。
【0015】
請求項2の発明は、請求項1記載の連結具において、前記第1及び第2のナット収容部のそれぞれは、前記連結具本体の端部に形成されるナット装入口と、前記ナット装入口から挿入されるナットのナット幅方向の位置決めを行うためのナット幅方向位置決め壁部と、前記各ナット幅方向位置決め壁部の先端部に形成され、装入されるナットを係止するための係止部と、前記ナット装入口から挿入されるナットのナット厚み方向の位置決めを行うためのナット厚み方向位置決め壁部と、前記係止部へ向けて装入されるナットの連結具本体と当接する面とは反対側のナット面に当接し、かつ、該ナットがナット装入方向へ進むにつれてその装入を妨げるように連結具本体側に徐々に近づくように傾斜し該ナットの装入を許す傾斜面、及び、該ナットが前記係止部で係止されたときに該ナットの角部に当接するナット角部当接面とを先端部に有し、前記ナット装入口の位置に形成された抜け止め係止爪部と、を備えていることを特徴とするものである。
【0016】
請求項3の発明は、請求項1又は2記載の連結具において、前記二つの被連結部材が筒状をなし、該二つの被連結部材の形状に合わせて前記連結具本体が筒状をなしており、該連結具本体の一方の端部の側に前記第1のボルト挿通孔が周方向に沿って所定間隔で複数個形成されるとともに、該連結具本体の他方の端部の側に前記第2のボルト挿通孔が周方向に沿って所定間隔で複数個形成されており、前記複数個の第1のボルト挿通孔のそれぞれに対して前記第1のナット収容部が形成されるとともに、前記複数個の第2のボルト挿通孔のそれぞれに対して前記第2のナット収容部が形成されていることを特徴とするものである。
【0017】
請求項4の発明は、請求項1〜3にいずれか1項に記載の連結具において、前記連結具が鋳鋼からなる鋳造品であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の連結具は、第1及び第2のボルト挿通孔を有する連結具本体に第1及び第2のナット収容部が接合部なしに一体形成されてなり、この本発明の連結具によると、まず、連結具を一方の被連結部材に当接した状態で位置させ、該一方の被連結部材のボルト挿通孔に挿通された第1のボルトを連結具本体の前記第1のボルト挿通孔に挿通し、この第1のボルトを前記第1のナット収容部に不動状態で保持されている第1のナットに螺合することにより、一方の被連結部材と連結具とが締結される。次いで、連結具を他方の被連結部材に当接した状態で位置させ、該他方の被連結部材のボルト挿通孔に挿通された第2のボルトを前記連結具本体の前記第2のボルト挿通孔に挿通し、この第2のボルトを前記第2のナット収容部に不動状態で保持されている第2のナットに螺合することにより、他方の被連結部材と連結具とが締結される。
【0019】
したがって、本発明の連結具によると、被連結部材にはボルト挿通孔を形成しておくだけでよく、被連結部材に対する連結のための予めの加工作業が極めて簡単ですみ、また、施工現場では連結具のナット収容部に不動状態で保持されてナットにボルトを螺合するだけでよく、施工現場でのボルトとナットの螺合作業を極めて容易に行うことができ、連結作業に要する手間を大幅に減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態による連結具を示す正面図である。
【図2】図1に示す連結具の平面図(上面図)である。
【図3】図2の要部拡大図である。
【図4】図1に示す連結具の下面側の要部を示す下面図である。
【図5】図2のA−A線断面図である。
【図6】図2のB−B線断面図である。
【図7】図2のC−C線断面図である。
【図8】図1のD−D線断面図である。
【図9】ナット収容部に装入されたナットを説明するための平面図である。
【図10】本発明の一実施形態による連結具を用いての鋼管杭同士の連結を説明するための図である。
【図11】図1の連結具を用いて連結された鋼管杭の外観を示す図である。
【図12】図11のE−E線断面図である。
【図13】従来技術による鋼管杭の機械式継手を示す断面図である。
【図14】図13におけるナット79の脱落防止手段を説明するための断面図である。
【図15】図13におけるナット79の脱落防止手段を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。以下に説明する一実施形態による連結具は、鋼管杭同士をボルトとナットで連結する連結具である。
【0022】
図1は本発明の一実施形態による連結具を示す正面図、図2は図1に示す連結具の平面図(上面図)、図3は図2の要部拡大図、図4は図1に示す連結具の下面側の要部を示す下面図、図5は図2のA−A線断面図、図6は図2のB−B線断面図、図7は図2のC−C線断面図、図8は図1のD−D線断面図、図9はナット収容部に装入されたナットを説明するための平面図である
【0023】
本実施形態による連結具1は、連結具本体10と、この連結具本体10に一体形成された第1及び第2のナット収容部20,30とを備えており、端部を互いに接しさせて連結すべき二つの鋼管杭100,200(図10〜図12参照)の内周面に当接して位置させ、該二つの鋼管杭100,200同士をボルトとナットで連結するものである。
【0024】
前記連結具本体10について説明する。図1,図2に示すように、連結具本体10は、円筒状をなし、複数、本例では6個の第1のボルト挿通孔11と、これと同数の第2のボルト挿通孔12とを有している。連結具本体10の一方の端部の側に6個の前記第1のボルト挿通孔11が周方向に沿って等間隔で形成されるとともに、連結具本体10の他方の端部の側に6個の第2のボルト挿通孔12が周方向において第1のボルト挿通孔11と同一位置に形成されている。
【0025】
前記第1のボルト挿通孔11は、後述する一方の被連結部材である上鋼管杭100に形成されたボルト挿通孔101に挿通された第1のボルトB1が挿通されるボルト挿通孔である。また、前記第2のボルト挿通孔12は、後述する他方の被連結部材である下鋼管杭200に形成されたボルト挿通孔201に挿通された第2のボルトB2が挿通されるボルト挿通孔である。
【0026】
そして、前記6個の第1のボルト挿通孔11のそれぞれに対して、前記連結具本体10の内側(被連結部材反対側)における第1のボルト挿通孔11に臨む位置に、ナット装入口21を有し、前記第1のボルトB1が螺合されるナットであってナット装入口21から装入される第1のナット(六角ナット)N1を不動状態で保持し収容する第1のナット収容部20が、連結具本体10に接合部なしに一体形成されている。
【0027】
前記の第1のナット収容部20は、図2、図3、及び図5〜図8に示すように、連結具本体10の上端内側に形成されるナット装入口21(図3参照)と、連結具本体10の内周面から内方へ所定長さ(ほぼ、第1のナットN1の厚み寸法)で突出し、前記ナット装入口21から挿入される第1のナットN1のナット装入方向(連結具本体10の長手方向)に延びて対向配置され、第1のナットN1のナット幅方向の動きを規制してナット幅方向の位置決めを行うための一対のナット幅方向位置決め壁部22,22と、前記各ナット幅方向位置決め壁部22,22の下部先端部に形成され、装入されるナットN1を係止するための係止部23,23(図7参照)と、ナット装入方向に延び、第1のナットN1のナット厚み方向の動きを規制してナット厚み方向の位置決めを行うためのナット厚み方向位置決め壁部24,24と、ナット装入口21の位置に形成され、前記係止部23,23とによって第1のナットN1を挟持するための抜け止め係止爪部25とを備えている。ここで、前記ナット幅方向位置決め壁部22,22は、連結具本体10の内周面に連なり、前記ナット厚み方向位置決め壁部24,24は、このナット幅方向位置決め壁部22,22に連なり、前記抜け止め係止爪部25は、一方のナット厚み方向位置決め壁部24に連なって形成されている。
【0028】
前記の抜け止め係止爪部25は、前記係止部23,23へ向けて装入される第1のナットN1の連結具本体10と当接する面とは反対側のナット面に当接し、かつ、該ナットN1がナット装入方向へ進むにつれてその装入を妨げるように連結具本体側に徐々に近づくように傾斜し該ナットN1の装入を許す傾斜面25a、及び、該第1のナットN1が前記係止部23,23で係止されたときに該ナットN1の角部の一部分(図9参照)に当接するナット角部当接面25b(図5参照)とを先端部に有している。
【0029】
また、前記6個の第2のボルト挿通孔12のそれぞれに対して、連結具本体10の内側(被連結部材反対側)における第2のボルト挿通孔12に臨む位置に、ナット装入口31を有し、前記第2のボルトB2が螺合されるナットであってナット装入口31から装入される第2のナット(六角ナット)N2(図示せず)を不動状態で保持し収容する第2のナット収容部30が、連結具本体10に接合部なしに一体形成されている。
【0030】
前記の第2のナット収容部30は、前記第1のナット収容部20と同一構成であって同一形状同一寸法であり、図4〜図6に示すように、連結具本体の下端内側に形成されるナット装入口31と、ナット幅方向位置決め壁部32,32と、係止部33,33と、ナット厚み方向位置決め壁部34,34と、抜け止め係止爪部35とを備えている。
【0031】
また、前記の抜け止め係止爪部35は、前記第1のナット収容部20の前記抜け止め係止爪部25と同一構成であり、前記係止部33,33へ向けて装入される第2のナットN2の連結具本体10と当接する面とは反対側のナット面に当接し、かつ、該ナットN2がナット装入方向へ進むにつれてその装入を妨げるように連結具本体側に徐々に近づくように傾斜し該ナットN2の装入を許す傾斜面35a(図4,図5参照)と、該第2のナットN2が前記係止部33,33で係止されたときに該ナットN2の角部の一部分に当接するナット角部当接面35b(図5参照)とを先端部に有している。
【0032】
このように構成される本実施形態の前記連結具1は、鋳鋼からなり、ロストワックス鋳造法あるいはセミロストワックス鋳造法(鋳肌の精度がロストワックス鋳造法によるものに比べて多少劣るが、強度は同等のもの)によって製作される鋳造品である。
【0033】
次に、前記連結具1による鋼管杭100,200の連結手順について説明する。図10は本発明の一実施形態による連結具を用いての鋼管杭同士の連結を説明するための図、図11は図10における連結具を用いて連結された鋼管杭の外観を示す図、図12は図11のE−E線断面図である。
【0034】
まず、前記連結具1を第1のナット収容部20が上側になるようにして床面に置き、第1のナット収容部20のナット装入口21に第1のナットN1を載せ置き(図7参照)、この第1のナットN1をハンマーで軽く叩き込むことにより、6個の第1のナット収容部20に、それぞれ、第1のナットN1を装入する。
【0035】
このとき、ハンマーで軽く叩き込むことにより、第1のナットN1は、連結具本体10の内周面にその裏側面(一方の端面)が接しながら、また、ナット幅方向位置決め壁部22,22にその外周二面が接しながら、また、その表側面(他方の端面)が抜け止め係止爪部25の傾斜面25aを外側へ押しながら、該傾斜面25aを通過して下方へ進み、係止部23,23によって係止される(図7参照)。このとき、第1のナットN1が通過すると、それまで該ナットN1で外側へ押されていた抜け止め係止爪部25が元に戻る。これにより、図9に示すように、第1のナットN1は、係止部23,23と、該ナットN1の角部N1aの一部分に当接する抜け止め係止爪部25のナット角部当接面25b(図5参照)とによって挟持され、不動状態で保持されることとなる。
【0036】
次に、前記連結具1を上下反転させて第2のナット収容部30が上側になるようにして床面に置く。このとき、連結具1を上下反転させても、連結具1に装着された第1のナットN1は、第1のナット収容部20に不動状態で保持されているので、抜け落ちることがない。そして、前記第1のナット収容部20へのナット装入と同様に、第2のナット収容部30のナット装入口31に第2のナットN2を載せ置き、この第2のナットN2をハンマーで軽く叩き込むことにより、6個の第2のナット収容部30に、それぞれ、第2のナットN2を装入する。なお、第1のボルト・ナットと第2のボルト・ナットは同一寸法のものである。
【0037】
そして、鋼管杭回転圧入工法により回転させながら地盤中に貫入させている下鋼管杭200の上部が地面近くまでくると、貫入を一時停止し、図10に示すように、下鋼管杭200内にナット付きの連結具1を装着し、下鋼管杭200に形成されている6個のボルト挿通孔201(連結具1のボルト挿通孔12と同径寸法)と該連結具1のボルト挿通孔12との位置合わせを行う。次に、各ボルト挿通孔201について、第2のボルトB2をボルト挿通孔201,12に挿通し、連結具1の第2のナットN2に螺合することにより、下鋼管杭200と連結具1とを締結する。
【0038】
次いで、下鋼管杭200に締結されている連結具1の上部部分に上鋼管杭100を装着し、上鋼管杭100に形成されている6個のボルト挿通孔101(連結具1のボルト挿通孔11と同径寸法)と連結具1のボルト挿通孔11との位置合わせを行う。位置合わせ後に、各ボルト挿通孔101について、第1のボルトB1をボルト挿通孔101,11に挿通し、連結具1の第1のナットN1に螺合することにより、上鋼管杭100と連結具1とを締結する。
【0039】
このようにして、下鋼管杭200と上鋼管杭100とが連結される(図11,図12参照)。
【0040】
このように、本実施形態の連結具1によると、被連結部材である鋼管杭100,200にはボルト挿通孔101,201を形成しておくだけでよく、鋼管杭100,200に対する連結のための予めの加工作業が極めて簡単ですみ、また、施工現場では連結具1のナット収容部20,30に不動状態で保持されてナットN1,N2にボルトB1,B2を螺合するだけでよく、施工現場でのボルトとナットの螺合作業を極めて容易に行うことができ、連結作業に要する手間を大幅に減らすことができる。
【0041】
本発明の連結具は、前記実施形態では被連結部材として断面中空円形の鋼管杭に適用するものについて示したが、これに限定されず、例えば平板状をなす被連結部材にも適用可能である。
【0042】
また、本発明の連結具は、前記実施形態ではその材質が鋳鋼からなるものについて示したが、これに限定されず、連結具自体の材質が例えばプラスチック(合成樹脂)製のものにも適用可能である。
【符号の説明】
【0043】
1…連結具
10…連結具本体
11…第1のボルト挿通孔
12…第2のボルト挿通孔
20…第1のナット収容部
21…ナット装入口 22…ナット幅方向位置決め壁部 23…係止部
24…ナット厚み方向位置決め壁部
25…抜け止め係止爪部 25a…傾斜面 25b…ナット角部当接面
30…第2のナット収容部
31…ナット装入口 32…ナット幅方向位置決め壁部 33…係止部
34…ナット厚み方向位置決め壁部
35…抜け止め係止爪部 35a…傾斜面 35b…ナット角部当接面
100…上鋼管杭 101…ボルト挿通孔
200…下鋼管杭 201…ボルト挿通孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば鋼管杭同士をその長手方向に連結するのに用いられる連結具であって、二つの被連結部材をボルトとナットで連結する連結具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地盤改良を行うための鋼管杭回転圧入工法では、鋼管杭を回転させながら地盤中に貫入させ、この貫入させている鋼管杭の上部が地面近くまでくると、施工装置に新たな鋼管杭をセットし、先に貫入させた鋼管杭と新たな鋼管杭とをアーク溶接により接合するようにしている。
【0003】
しかしながら、現場での鋼管杭同士の溶接は、作業者の技量に左右されやすく溶接品質の安定確保がむずかしいこと、溶接作業時間が長くかかること、などの問題が生じている。
【0004】
このような状況に鑑みて、鋼管杭同士をボルトとナットで連結(接合)するようにしたものの一例として、特許文献1に鋼管杭の機械式継手が提案されている。この従来の技術を、図13〜図15に基づいて説明する。図13は従来技術による鋼管杭の機械式継手を示す断面図である。
【0005】
図13に示すように、鋼管杭の機械式継手は、上鋼管杭71に溶接固着される内継手材74と、下鋼管杭72に溶接固着される外継手材73とからなっている。前記内継手材74は、肉厚円筒状をなした基部の一方の端縁から外側に向かって直角に肉厚円環状のつば部75が一体的に延設された鋼製のつば付き円筒状をなしている。そして、前記つば部75の外径は接合対象(連結対象)である一対の鋼管杭71,72の外径とほぼ同じに、基部の外径は外継手材73の内径よりわずかに小さくなる様にそれぞれ形成されている。また、前記つば部75の端面は上鋼管杭71の端面にその軸心を一致させた状態で溶接固着されるとともに、前記基部の周壁には軸心から直角の方向を向かって放射状に複数のボルト挿入孔76が間隔をあけて形成されている。
【0006】
また、前記外継手材73は、鋼製で肉厚円筒状をなし、鋼管杭71,72の外径とほぼ同じ外径、前記内継手材74の基部の外径よりわずかに大きな内径をそれぞれ有し、下鋼管杭72の端面にその軸心を一致させた状態で溶接固着されるとともに、前記内継手材74の基部に形成されているボルト挿入孔76に対応する箇所に同径のボルト挿入孔77が形成されている。
【0007】
そして、外継手材73の内径側に内継手材74の基部を挿入し、それぞれのボルト挿入孔76,77にボルト78を差し込み、内継手材74の外周面と外継手材73の内周面とをボルト78とナット79によって締めることにより、内継手材74と外継手材73とを結合して、下鋼管杭72と上鋼管杭71とを接合するようにしている。
【0008】
図14及び図15は図13におけるナット79の脱落防止手段を説明するための断面図である。
【0009】
前記外継手材73の内周面と内継手材74の外周面とをボルトとナットで締め付けて結合する場合、図13に示すようにナット79は内継手材74の内側に位置するので、ボルト78への螺合作業の際にその位置を適正に保持するのはなかなかむずかしい。そこで、図14に示すように、ナット79を内継手材74の適正な位置に溶接で予め固定しておくようにして、ボルト78との螺合作業がしやすくなるようにしている。また、図15に示すように、内継手材74におけるボルト挿入孔76の内側にナット79が遊転しない大きさの箱形のナットホルダー80を溶接固定しておき、この中にナット79を入れておくようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−299298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし前述した従来の機械式継手では、予め工場において、下鋼管杭の上端面には外継手材を溶接接合しておく一方、上鋼管杭の下端面には前記外継手材とは異なる形状の内継手材を溶接接合しておくと必要があり、さらに、前記内継手材には予めナットを保持しておくための溶接作業を行なうようにしており、このように、鋼管杭に対する連結のための予めの加工作業に多大の手間がかかるものであった。
【0012】
そこで、本発明の課題は、例えば鋼管杭同士をその長手方向に連結するというように二つの被連結部材をボルトとナットで連結するに際し、被連結部材に対する連結のための予めの加工作業が極めて簡単ですむとともに、施工現場でのボルトとナットの螺合作業を極めて容易に行うことができ、連結作業に要する手間を大幅に減らすことができる連結具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の課題を解決するため、本願発明は次の技術的手段を講じている。
【0014】
請求項1の発明は、端部を互いに接しさせて連結する二つの各被連結部材に当接して位置させ、該二つの被連結部材をボルトとナットで連結する連結具であって、一方の被連結部材に形成されたボルト挿通孔に挿通された第1のボルトが挿通される第1のボルト挿通孔と、他方の被連結部材に形成されたボルト挿通孔に挿通された第2のボルトが挿通される第2のボルト挿通孔とを有する連結具本体と、前記連結具本体の被連結部材反対側における前記第1のボルト挿通孔に臨む位置に該連結具本体に接合部なしに一体形成され、ナット装入口を有し、前記第1のボルトが螺合されるナットであって前記ナット装入口から装入される第1のナットを不動状態で保持し収容する第1のナット収容部と、前記連結具本体の被連結部材反対側における前記第2のボルト挿通孔に臨む位置に該連結具本体に接合部なしに一体形成され、ナット装入口を有し、前記第2のボルトが螺合されるナットであって前記ナット装入口から装入される第2のナットを不動状態で保持し収容する第2のナット収容部と、を備えたことを特徴とする連結具である。
【0015】
請求項2の発明は、請求項1記載の連結具において、前記第1及び第2のナット収容部のそれぞれは、前記連結具本体の端部に形成されるナット装入口と、前記ナット装入口から挿入されるナットのナット幅方向の位置決めを行うためのナット幅方向位置決め壁部と、前記各ナット幅方向位置決め壁部の先端部に形成され、装入されるナットを係止するための係止部と、前記ナット装入口から挿入されるナットのナット厚み方向の位置決めを行うためのナット厚み方向位置決め壁部と、前記係止部へ向けて装入されるナットの連結具本体と当接する面とは反対側のナット面に当接し、かつ、該ナットがナット装入方向へ進むにつれてその装入を妨げるように連結具本体側に徐々に近づくように傾斜し該ナットの装入を許す傾斜面、及び、該ナットが前記係止部で係止されたときに該ナットの角部に当接するナット角部当接面とを先端部に有し、前記ナット装入口の位置に形成された抜け止め係止爪部と、を備えていることを特徴とするものである。
【0016】
請求項3の発明は、請求項1又は2記載の連結具において、前記二つの被連結部材が筒状をなし、該二つの被連結部材の形状に合わせて前記連結具本体が筒状をなしており、該連結具本体の一方の端部の側に前記第1のボルト挿通孔が周方向に沿って所定間隔で複数個形成されるとともに、該連結具本体の他方の端部の側に前記第2のボルト挿通孔が周方向に沿って所定間隔で複数個形成されており、前記複数個の第1のボルト挿通孔のそれぞれに対して前記第1のナット収容部が形成されるとともに、前記複数個の第2のボルト挿通孔のそれぞれに対して前記第2のナット収容部が形成されていることを特徴とするものである。
【0017】
請求項4の発明は、請求項1〜3にいずれか1項に記載の連結具において、前記連結具が鋳鋼からなる鋳造品であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の連結具は、第1及び第2のボルト挿通孔を有する連結具本体に第1及び第2のナット収容部が接合部なしに一体形成されてなり、この本発明の連結具によると、まず、連結具を一方の被連結部材に当接した状態で位置させ、該一方の被連結部材のボルト挿通孔に挿通された第1のボルトを連結具本体の前記第1のボルト挿通孔に挿通し、この第1のボルトを前記第1のナット収容部に不動状態で保持されている第1のナットに螺合することにより、一方の被連結部材と連結具とが締結される。次いで、連結具を他方の被連結部材に当接した状態で位置させ、該他方の被連結部材のボルト挿通孔に挿通された第2のボルトを前記連結具本体の前記第2のボルト挿通孔に挿通し、この第2のボルトを前記第2のナット収容部に不動状態で保持されている第2のナットに螺合することにより、他方の被連結部材と連結具とが締結される。
【0019】
したがって、本発明の連結具によると、被連結部材にはボルト挿通孔を形成しておくだけでよく、被連結部材に対する連結のための予めの加工作業が極めて簡単ですみ、また、施工現場では連結具のナット収容部に不動状態で保持されてナットにボルトを螺合するだけでよく、施工現場でのボルトとナットの螺合作業を極めて容易に行うことができ、連結作業に要する手間を大幅に減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態による連結具を示す正面図である。
【図2】図1に示す連結具の平面図(上面図)である。
【図3】図2の要部拡大図である。
【図4】図1に示す連結具の下面側の要部を示す下面図である。
【図5】図2のA−A線断面図である。
【図6】図2のB−B線断面図である。
【図7】図2のC−C線断面図である。
【図8】図1のD−D線断面図である。
【図9】ナット収容部に装入されたナットを説明するための平面図である。
【図10】本発明の一実施形態による連結具を用いての鋼管杭同士の連結を説明するための図である。
【図11】図1の連結具を用いて連結された鋼管杭の外観を示す図である。
【図12】図11のE−E線断面図である。
【図13】従来技術による鋼管杭の機械式継手を示す断面図である。
【図14】図13におけるナット79の脱落防止手段を説明するための断面図である。
【図15】図13におけるナット79の脱落防止手段を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。以下に説明する一実施形態による連結具は、鋼管杭同士をボルトとナットで連結する連結具である。
【0022】
図1は本発明の一実施形態による連結具を示す正面図、図2は図1に示す連結具の平面図(上面図)、図3は図2の要部拡大図、図4は図1に示す連結具の下面側の要部を示す下面図、図5は図2のA−A線断面図、図6は図2のB−B線断面図、図7は図2のC−C線断面図、図8は図1のD−D線断面図、図9はナット収容部に装入されたナットを説明するための平面図である
【0023】
本実施形態による連結具1は、連結具本体10と、この連結具本体10に一体形成された第1及び第2のナット収容部20,30とを備えており、端部を互いに接しさせて連結すべき二つの鋼管杭100,200(図10〜図12参照)の内周面に当接して位置させ、該二つの鋼管杭100,200同士をボルトとナットで連結するものである。
【0024】
前記連結具本体10について説明する。図1,図2に示すように、連結具本体10は、円筒状をなし、複数、本例では6個の第1のボルト挿通孔11と、これと同数の第2のボルト挿通孔12とを有している。連結具本体10の一方の端部の側に6個の前記第1のボルト挿通孔11が周方向に沿って等間隔で形成されるとともに、連結具本体10の他方の端部の側に6個の第2のボルト挿通孔12が周方向において第1のボルト挿通孔11と同一位置に形成されている。
【0025】
前記第1のボルト挿通孔11は、後述する一方の被連結部材である上鋼管杭100に形成されたボルト挿通孔101に挿通された第1のボルトB1が挿通されるボルト挿通孔である。また、前記第2のボルト挿通孔12は、後述する他方の被連結部材である下鋼管杭200に形成されたボルト挿通孔201に挿通された第2のボルトB2が挿通されるボルト挿通孔である。
【0026】
そして、前記6個の第1のボルト挿通孔11のそれぞれに対して、前記連結具本体10の内側(被連結部材反対側)における第1のボルト挿通孔11に臨む位置に、ナット装入口21を有し、前記第1のボルトB1が螺合されるナットであってナット装入口21から装入される第1のナット(六角ナット)N1を不動状態で保持し収容する第1のナット収容部20が、連結具本体10に接合部なしに一体形成されている。
【0027】
前記の第1のナット収容部20は、図2、図3、及び図5〜図8に示すように、連結具本体10の上端内側に形成されるナット装入口21(図3参照)と、連結具本体10の内周面から内方へ所定長さ(ほぼ、第1のナットN1の厚み寸法)で突出し、前記ナット装入口21から挿入される第1のナットN1のナット装入方向(連結具本体10の長手方向)に延びて対向配置され、第1のナットN1のナット幅方向の動きを規制してナット幅方向の位置決めを行うための一対のナット幅方向位置決め壁部22,22と、前記各ナット幅方向位置決め壁部22,22の下部先端部に形成され、装入されるナットN1を係止するための係止部23,23(図7参照)と、ナット装入方向に延び、第1のナットN1のナット厚み方向の動きを規制してナット厚み方向の位置決めを行うためのナット厚み方向位置決め壁部24,24と、ナット装入口21の位置に形成され、前記係止部23,23とによって第1のナットN1を挟持するための抜け止め係止爪部25とを備えている。ここで、前記ナット幅方向位置決め壁部22,22は、連結具本体10の内周面に連なり、前記ナット厚み方向位置決め壁部24,24は、このナット幅方向位置決め壁部22,22に連なり、前記抜け止め係止爪部25は、一方のナット厚み方向位置決め壁部24に連なって形成されている。
【0028】
前記の抜け止め係止爪部25は、前記係止部23,23へ向けて装入される第1のナットN1の連結具本体10と当接する面とは反対側のナット面に当接し、かつ、該ナットN1がナット装入方向へ進むにつれてその装入を妨げるように連結具本体側に徐々に近づくように傾斜し該ナットN1の装入を許す傾斜面25a、及び、該第1のナットN1が前記係止部23,23で係止されたときに該ナットN1の角部の一部分(図9参照)に当接するナット角部当接面25b(図5参照)とを先端部に有している。
【0029】
また、前記6個の第2のボルト挿通孔12のそれぞれに対して、連結具本体10の内側(被連結部材反対側)における第2のボルト挿通孔12に臨む位置に、ナット装入口31を有し、前記第2のボルトB2が螺合されるナットであってナット装入口31から装入される第2のナット(六角ナット)N2(図示せず)を不動状態で保持し収容する第2のナット収容部30が、連結具本体10に接合部なしに一体形成されている。
【0030】
前記の第2のナット収容部30は、前記第1のナット収容部20と同一構成であって同一形状同一寸法であり、図4〜図6に示すように、連結具本体の下端内側に形成されるナット装入口31と、ナット幅方向位置決め壁部32,32と、係止部33,33と、ナット厚み方向位置決め壁部34,34と、抜け止め係止爪部35とを備えている。
【0031】
また、前記の抜け止め係止爪部35は、前記第1のナット収容部20の前記抜け止め係止爪部25と同一構成であり、前記係止部33,33へ向けて装入される第2のナットN2の連結具本体10と当接する面とは反対側のナット面に当接し、かつ、該ナットN2がナット装入方向へ進むにつれてその装入を妨げるように連結具本体側に徐々に近づくように傾斜し該ナットN2の装入を許す傾斜面35a(図4,図5参照)と、該第2のナットN2が前記係止部33,33で係止されたときに該ナットN2の角部の一部分に当接するナット角部当接面35b(図5参照)とを先端部に有している。
【0032】
このように構成される本実施形態の前記連結具1は、鋳鋼からなり、ロストワックス鋳造法あるいはセミロストワックス鋳造法(鋳肌の精度がロストワックス鋳造法によるものに比べて多少劣るが、強度は同等のもの)によって製作される鋳造品である。
【0033】
次に、前記連結具1による鋼管杭100,200の連結手順について説明する。図10は本発明の一実施形態による連結具を用いての鋼管杭同士の連結を説明するための図、図11は図10における連結具を用いて連結された鋼管杭の外観を示す図、図12は図11のE−E線断面図である。
【0034】
まず、前記連結具1を第1のナット収容部20が上側になるようにして床面に置き、第1のナット収容部20のナット装入口21に第1のナットN1を載せ置き(図7参照)、この第1のナットN1をハンマーで軽く叩き込むことにより、6個の第1のナット収容部20に、それぞれ、第1のナットN1を装入する。
【0035】
このとき、ハンマーで軽く叩き込むことにより、第1のナットN1は、連結具本体10の内周面にその裏側面(一方の端面)が接しながら、また、ナット幅方向位置決め壁部22,22にその外周二面が接しながら、また、その表側面(他方の端面)が抜け止め係止爪部25の傾斜面25aを外側へ押しながら、該傾斜面25aを通過して下方へ進み、係止部23,23によって係止される(図7参照)。このとき、第1のナットN1が通過すると、それまで該ナットN1で外側へ押されていた抜け止め係止爪部25が元に戻る。これにより、図9に示すように、第1のナットN1は、係止部23,23と、該ナットN1の角部N1aの一部分に当接する抜け止め係止爪部25のナット角部当接面25b(図5参照)とによって挟持され、不動状態で保持されることとなる。
【0036】
次に、前記連結具1を上下反転させて第2のナット収容部30が上側になるようにして床面に置く。このとき、連結具1を上下反転させても、連結具1に装着された第1のナットN1は、第1のナット収容部20に不動状態で保持されているので、抜け落ちることがない。そして、前記第1のナット収容部20へのナット装入と同様に、第2のナット収容部30のナット装入口31に第2のナットN2を載せ置き、この第2のナットN2をハンマーで軽く叩き込むことにより、6個の第2のナット収容部30に、それぞれ、第2のナットN2を装入する。なお、第1のボルト・ナットと第2のボルト・ナットは同一寸法のものである。
【0037】
そして、鋼管杭回転圧入工法により回転させながら地盤中に貫入させている下鋼管杭200の上部が地面近くまでくると、貫入を一時停止し、図10に示すように、下鋼管杭200内にナット付きの連結具1を装着し、下鋼管杭200に形成されている6個のボルト挿通孔201(連結具1のボルト挿通孔12と同径寸法)と該連結具1のボルト挿通孔12との位置合わせを行う。次に、各ボルト挿通孔201について、第2のボルトB2をボルト挿通孔201,12に挿通し、連結具1の第2のナットN2に螺合することにより、下鋼管杭200と連結具1とを締結する。
【0038】
次いで、下鋼管杭200に締結されている連結具1の上部部分に上鋼管杭100を装着し、上鋼管杭100に形成されている6個のボルト挿通孔101(連結具1のボルト挿通孔11と同径寸法)と連結具1のボルト挿通孔11との位置合わせを行う。位置合わせ後に、各ボルト挿通孔101について、第1のボルトB1をボルト挿通孔101,11に挿通し、連結具1の第1のナットN1に螺合することにより、上鋼管杭100と連結具1とを締結する。
【0039】
このようにして、下鋼管杭200と上鋼管杭100とが連結される(図11,図12参照)。
【0040】
このように、本実施形態の連結具1によると、被連結部材である鋼管杭100,200にはボルト挿通孔101,201を形成しておくだけでよく、鋼管杭100,200に対する連結のための予めの加工作業が極めて簡単ですみ、また、施工現場では連結具1のナット収容部20,30に不動状態で保持されてナットN1,N2にボルトB1,B2を螺合するだけでよく、施工現場でのボルトとナットの螺合作業を極めて容易に行うことができ、連結作業に要する手間を大幅に減らすことができる。
【0041】
本発明の連結具は、前記実施形態では被連結部材として断面中空円形の鋼管杭に適用するものについて示したが、これに限定されず、例えば平板状をなす被連結部材にも適用可能である。
【0042】
また、本発明の連結具は、前記実施形態ではその材質が鋳鋼からなるものについて示したが、これに限定されず、連結具自体の材質が例えばプラスチック(合成樹脂)製のものにも適用可能である。
【符号の説明】
【0043】
1…連結具
10…連結具本体
11…第1のボルト挿通孔
12…第2のボルト挿通孔
20…第1のナット収容部
21…ナット装入口 22…ナット幅方向位置決め壁部 23…係止部
24…ナット厚み方向位置決め壁部
25…抜け止め係止爪部 25a…傾斜面 25b…ナット角部当接面
30…第2のナット収容部
31…ナット装入口 32…ナット幅方向位置決め壁部 33…係止部
34…ナット厚み方向位置決め壁部
35…抜け止め係止爪部 35a…傾斜面 35b…ナット角部当接面
100…上鋼管杭 101…ボルト挿通孔
200…下鋼管杭 201…ボルト挿通孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部を互いに接しさせて連結する二つの各被連結部材に当接して位置させ、該二つの被連結部材をボルトとナットで連結する連結具であって、
一方の被連結部材に形成されたボルト挿通孔に挿通された第1のボルトが挿通される第1のボルト挿通孔と、他方の被連結部材に形成されたボルト挿通孔に挿通された第2のボルトが挿通される第2のボルト挿通孔とを有する連結具本体と、
前記連結具本体の被連結部材反対側における前記第1のボルト挿通孔に臨む位置に該連結具本体に接合部なしに一体形成され、ナット装入口を有し、前記第1のボルトが螺合されるナットであって前記ナット装入口から装入される第1のナットを不動状態で保持し収容する第1のナット収容部と、
前記連結具本体の被連結部材反対側における前記第2のボルト挿通孔に臨む位置に該連結具本体に接合部なしに一体形成され、ナット装入口を有し、前記第2のボルトが螺合されるナットであって前記ナット装入口から装入される第2のナットを不動状態で保持し収容する第2のナット収容部と、を備えたことを特徴とする連結具。
【請求項2】
前記第1及び第2のナット収容部のそれぞれは、前記連結具本体の端部に形成されるナット装入口と、
前記ナット装入口から挿入されるナットのナット幅方向の位置決めを行うためのナット幅方向位置決め壁部と、
前記各ナット幅方向位置決め壁部の先端部に形成され、装入されるナットを係止するための係止部と、
前記ナット装入口から挿入されるナットのナット厚み方向の位置決めを行うためのナット厚み方向位置決め壁部と、
前記係止部へ向けて装入されるナットの連結具本体と当接する面とは反対側のナット面に当接し、かつ、該ナットがナット装入方向へ進むにつれてその装入を妨げるように連結具本体側に徐々に近づくように傾斜し該ナットの装入を許す傾斜面、及び、該ナットが前記係止部で係止されたときに該ナットの角部に当接するナット角部当接面とを先端部に有し、前記ナット装入口の位置に形成された抜け止め係止爪部と、を備えていることを特徴とする請求項1記載の連結具。
【請求項3】
前記二つの被連結部材が筒状をなし、該二つの被連結部材の形状に合わせて前記連結具本体が筒状をなしており、該連結具本体の一方の端部の側に前記第1のボルト挿通孔が周方向に沿って所定間隔で複数個形成されるとともに、該連結具本体の他方の端部の側に前記第2のボルト挿通孔が周方向に沿って所定間隔で複数個形成されており、前記複数個の第1のボルト挿通孔のそれぞれに対して前記第1のナット収容部が形成されるとともに、前記複数個の第2のボルト挿通孔のそれぞれに対して前記第2のナット収容部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の連結具。
【請求項4】
前記連結具が鋳鋼からなる鋳造品であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の連結具。
【請求項1】
端部を互いに接しさせて連結する二つの各被連結部材に当接して位置させ、該二つの被連結部材をボルトとナットで連結する連結具であって、
一方の被連結部材に形成されたボルト挿通孔に挿通された第1のボルトが挿通される第1のボルト挿通孔と、他方の被連結部材に形成されたボルト挿通孔に挿通された第2のボルトが挿通される第2のボルト挿通孔とを有する連結具本体と、
前記連結具本体の被連結部材反対側における前記第1のボルト挿通孔に臨む位置に該連結具本体に接合部なしに一体形成され、ナット装入口を有し、前記第1のボルトが螺合されるナットであって前記ナット装入口から装入される第1のナットを不動状態で保持し収容する第1のナット収容部と、
前記連結具本体の被連結部材反対側における前記第2のボルト挿通孔に臨む位置に該連結具本体に接合部なしに一体形成され、ナット装入口を有し、前記第2のボルトが螺合されるナットであって前記ナット装入口から装入される第2のナットを不動状態で保持し収容する第2のナット収容部と、を備えたことを特徴とする連結具。
【請求項2】
前記第1及び第2のナット収容部のそれぞれは、前記連結具本体の端部に形成されるナット装入口と、
前記ナット装入口から挿入されるナットのナット幅方向の位置決めを行うためのナット幅方向位置決め壁部と、
前記各ナット幅方向位置決め壁部の先端部に形成され、装入されるナットを係止するための係止部と、
前記ナット装入口から挿入されるナットのナット厚み方向の位置決めを行うためのナット厚み方向位置決め壁部と、
前記係止部へ向けて装入されるナットの連結具本体と当接する面とは反対側のナット面に当接し、かつ、該ナットがナット装入方向へ進むにつれてその装入を妨げるように連結具本体側に徐々に近づくように傾斜し該ナットの装入を許す傾斜面、及び、該ナットが前記係止部で係止されたときに該ナットの角部に当接するナット角部当接面とを先端部に有し、前記ナット装入口の位置に形成された抜け止め係止爪部と、を備えていることを特徴とする請求項1記載の連結具。
【請求項3】
前記二つの被連結部材が筒状をなし、該二つの被連結部材の形状に合わせて前記連結具本体が筒状をなしており、該連結具本体の一方の端部の側に前記第1のボルト挿通孔が周方向に沿って所定間隔で複数個形成されるとともに、該連結具本体の他方の端部の側に前記第2のボルト挿通孔が周方向に沿って所定間隔で複数個形成されており、前記複数個の第1のボルト挿通孔のそれぞれに対して前記第1のナット収容部が形成されるとともに、前記複数個の第2のボルト挿通孔のそれぞれに対して前記第2のナット収容部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の連結具。
【請求項4】
前記連結具が鋳鋼からなる鋳造品であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の連結具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−12799(P2012−12799A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148832(P2010−148832)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(591281862)中井工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(591281862)中井工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】
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