説明

連結式コネクタ

【課題】生産性の向上が図れるとともに、搬送するための容積効率の向上が図れる連結式コネクタを実現する。
【解決手段】相手方接続部に接続される挿し込み部12を有する連結式コネクタ10であって、この連結式コネクタ10には、別の挿し込み部12を嵌合可能な連結部13が設けられ、この連結部13に別の挿し込み部12を嵌合させて複数の連結式コネクタ10が連結されたときに、連結部13は、挿し込み部12を保持する適宜の保持力を有するように形成した。これにより、生産性および搬送するための容積効率の向上が図れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線の末端に設けられるコネクタを複数個連結することが可能な連結式コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電気機器などの艤装組立ラインでは、例えば、相手方接続部を有する電気機器を組み立てた後にコネクタ付きの電線を組み立てる工程がある。この場合において、コネクタは電線の末端に設けられて電線にぶら下がった状態で複数個重ねて配置されている。
【0003】
そして、相手方接続部に接続する組み立てのときに複数個の電線のうち、一つの電線、およびその電線の末端にあるコネクタを摘んで相手方接続部にそのコネクタを配置させて組み立てを行っている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電線にぶら下がった状態で配置されるコネクタは、それそれがばらばらの状態で配置されていると、そのコネクタを摘むための段取り時間にばらつきが発生する問題がある。
【0005】
また、上記ばらつきを一定にさせるためにコネクタを所定の位置に配置させる方法がある。ところが、この方法では、それぞれのコネクタを同じ位置に配置することができる専用の保管ケース、もしくはその保管ケースに電線を配置させる段取り時間が必要となることで生産性の低下を招く問題がある。
【0006】
また、コネクタに電線を組み立てた後に、コネクタを所定の位置に配置させる方法があるが、この方法では、相手方接続部にコネクタを組み立てる艤装組立ラインの近傍に搬送するときにおいて、搬送するための容積効率が低下する問題がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上記点を鑑みたものであり、生産性の向上が図れるとともに、搬送するための容積効率の向上が図れる連結式コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1ないし請求項5に記載の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1に記載の発明では、相手方接続部に接続される挿し込み部(12)を有するコネクタ(10)であって、このコネクタ(10)には、別の挿し込み部(12)を嵌合可能な連結部(13)が設けられていることを特徴としている。
【0009】
この発明によれば、複数のコネクタ(10)を連結させることができる。従って、コネクタ(10)に電線を組み立てた後に複数のコネクタ(10)を段積みすることができる。つまり、相手方接続部にコネクタ(10)を組み立てる艤装組立ラインの近傍に搬送するときに、搬送するための容積効率の向上が図れる。
【0010】
また、相手方接続部にコネクタ(10)を組み立てるときに、所定の位置に配置された複数のコネクタ(10)のうちからコネクタ(10)を取り外して、所定の相手方接続部に配置することができることで生産性の向上が図れる。
【0011】
さらに、挿し込み部(12)内に設けられる端子が連結部(13)内に収容されることになるので、埃、異物などが挿し込み部(12)内に浸入することはない。これにより、端子保護カバーなどが不要となる。
【0012】
請求項2に記載の発明では、連結部(13)は、挿し込み部(12)の背面側に形成されていることを特徴としている。この発明によれば、簡素な形状のコネクタ(10)を形成することができる。また、複数のコネクタ(10)を段積み状に連結することができる。これにより、複数のコネクタ(10)のうちから容易にコネクタ(10)を取り外すことができる。
【0013】
請求項3に記載の発明では、連結部(13)に別の挿し込み部(12)を嵌合させて複数のコネクタ(10)が連結されたときに、連結部(13)は、挿し込み部(12)を保持する適宜の保持力を有するように形成したことを特徴としている。この発明によれば、複数のコネクタ(10)のうちから順番に一つずつコネクタ(10)を容易に取り外すことができる。
【0014】
請求項4に記載の発明では、コネクタ(10)は、連結部(13)に挿し込み部(12)を挿入するための案内部(13a)が形成されていることを特徴としている。この発明によれば、嵌合部の接触面積を増大させることができるので適宜の保持力を確保することができる。
【0015】
請求項5に記載の発明では、コネクタ(10)は、連結部(13)に別の挿し込み部(12)を嵌合させたときに、ロック解除容易なロック部(12b、13b)が形成されていることを特徴としている。この発明によれば、上述した請求項4よりも保持力が増大することで複数のコネクタ(10)のうちから順番に一つずつコネクタ(10)を確実に取り外すことができる。
【0016】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態における連結式コネクタを図1ないし図3に基づいて説明する。図1は連結式コネクタの全体構成を示す斜視図、図2は図1A矢視図、図3は複数の連結式コネクタを段積み状に連結した状態を示す斜視図である。
【0018】
本実施形態のコネクタである連結式コネクタ10は、図1および図2に示すように、ハウジング11、挿し込み部12、連結部13、およびロックアーム14から構成されている。ハウジング11は略角柱状に形成されている。このハウジング11の一端側に挿し込み部12が形成され、他端側に連結部13が形成されている。つまり、連結部13は挿し込み部12の背面側に形成されている。
【0019】
挿し込み部12は、図示しない相手方接続部に挿入して電気的に接続する接続部であり、略角柱状に形成され、図示しない複数の端子が内設されている。複数の端子には、電線15の末端が圧着により接続されている。なお、挿し込み部12の一側面中央には可撓性を有するロックアーム14と、そのロックアーム14の両側に平面視凹状の溝部12bとが一体に形成されている。
【0020】
言い換えれば、挿し込み部12の外形は一側面に二つの凹状の溝部12bを有する平面視略角形状に形成している。ここで、ロックアーム14は、挿し込み部12が相手方接続部に接続した後に、不意に挿し込み部12が外れないように、挿し込み部12と相手方接続部とが機械的に拘束するロック部材である。
【0021】
このロックアーム14は、弾性変形自在に形成されており、その外側面には、図示しない相手方接続部に形成された係止部(図示せず)に係止される係合部(図示せず)が設けられている。
【0022】
また、ロックアーム14の外側面下方には、外方に突き出した係止解除用の操作部14aを有している。この操作部14aは、ロックアーム14を弾性変形させる際に指で押す部分であって、外部から操作できるような大きさ、および高さに形成されている。
【0023】
一方、連結部13は、別の連結式コネクタ10に形成された挿し込み部12を挿入して嵌合することで複数の連結式コネクタ10を連結するための嵌合部である。本実施形態では、連結部13の形状は、挿し込み部12の外形に応じた平面視略角状の凹状に形成している。
【0024】
さらに、後述するが、図3に示すように、複数の連結式コネクタ10が段積み状に連結された状態において、特に下方に配置する嵌合部が容易に外れないように、例えば、連結部13の断面積を挿し込み部12の断面積よりも小さくして、適宜の保持力を有するように連結部13を形成している。
【0025】
次に、以上の構成による連結式コネクタ10を用いた電線15を相手方接続部(図示せず)に接続する電気機器などの艤装組立ラインにおける組立工程について説明する。つまり、この組立工程は、例えば、相手方接続部(図示せず)を有する電気機器を組み立てた後に連結式コネクタ10付きの電線15を組み立てる工程であって、この工程では、艤装組立ラインの近傍に配置された複数個の電線15のうち、一つの電線15、およびその電線15の末端にある連結式コネクタ10を摘んで相手方接続部にその連結式コネクタ10を配置させて組み立てを行なっている。
【0026】
ここで、複数個の電線15は、図3に示すように、連結部13に別の挿し込み部12を嵌合させることで、複数の連結式コネクタ10を段積み状に連結している。これにより、複数の連結式コネクタ10のうちから順番に一つずつ連結式コネクタ10を取り外して相手方接続部にその連結式コネクタ10を配置させて組み立てすることができる。つまり、複数の連結式コネクタ10のうち、一つずつ上から順番に容易に取り外すことができる。
【0027】
以上の第1実施形態による連結式コネクタによれば、連結式コネクタ10には、別の挿し込み部12を嵌合可能な連結部13が設けられていることにより、複数の連結式コネクタ10を連結させることができる。従って、連結式コネクタ10に電線15を組み立てた後に複数の連結式コネクタ10を段積みすることができる。つまり、相手方接続部に連結式コネクタ10を組み立てる艤装組立ラインの近傍に搬送するときに、搬送するための容積効率の向上が図れる。
【0028】
また、相手方接続部に連結式コネクタ10を組み立てるときに、所定の位置に配置された複数の連結式コネクタ10のうちから連結式コネクタ10を取り外して、所定の相手方接続部に配置することができることで生産性の向上が図れる。
【0029】
さらに、挿し込み部12内に設けられる端子が連結部13内に収容されることになるので、埃、異物などが挿し込み部12内に浸入することはない。これにより、端子保護カバーなどが不要となる。
【0030】
また、連結部13は、挿し込み部12の背面側に形成されていることにより、簡素な形状の連結式コネクタ10を形成することができる。また、複数の連結式コネクタ10を段積み状に連結することができる。これにより、複数の連結式コネクタ10のうちから容易に連結式コネクタ10を取り外すことができる。
【0031】
さらに、連結部13に別の挿し込み部12を嵌合させて複数の連結式コネクタ10が連結されたときに、連結部13は、挿し込み部12を保持する適宜の保持力を有するように形成したことにより、複数の連結式コネクタ10のうちから順番に一つずつ連結式コネクタ10を容易に取り外すことができる。
【0032】
(第2実施形態)
以上の第1実施形態では、連結部13の形状を挿し込み部12の外形に応じた平面視略角状の凹状に形成させたが、これに限らず、連結部13に二つの案内部13aを形成しても良い。つまり、一側面に二つの凹状の溝部12bを有する略角形状に形成された挿し込み部12の外形形状に対応するように連結部13を形成している。
【0033】
具体的には、図4に示すように、連結部13の一面側に溝部12bに嵌合する凸状の二つの案内部13aを形成したものであって、この案内部13aに挿し込み部12の溝部12bが挿し込まれることで嵌合部の接触面積を増加させることができる。これによれば、適宜の保持力を確保することができる。
【0034】
また、複数の連結式コネクタ10を段積み状に連結するときに、挿し込み部12内に設けられる端子を同一方向に配設させることができる。これにより、相手方接続部に連結式コネクタ10を組み立てるときに、所定の相手方接続部に配置することができることで生産性の向上が図れる。
【0035】
(第3実施形態)
本実施形態では、連結部13に挿し込み部12を挿入した後に、不意に挿し込み部12が外れないように、挿し込み部12と連結部13とが機械的に拘束するように形成しても良い。
【0036】
具体的には、図5に示すように、連結部13に爪状に突き出したロック部である爪部13bを形成するとともに、挿し込み部12側のその爪部13bが係合する部位にロック部である溝部12bを形成する。
【0037】
ただし、連結部13側に形成する爪部13bは、弾性変形自在となる板厚で形成することでロック解除容易な構造とすることが望ましい。これによれば、上述した第2実施形態よりも保持力が増大することで複数の連結式コネクタ10のうちから順番に一つずつ連結式コネクタ10を確実に取り外すことができる。
【0038】
(第4実施形態)
以上の実施形態では、挿し込み部12を連結部13に挿入した際に、連結部13の形状を挿し込み部12の全周を覆うように平面視略角状に形成したが、以下に示すように形成しても良い。具体的には、図6に示すように、短辺側に断面略コの字状の連結部13を対向配置するように形成するとともに、対向配置される連結部13との間に形成される空間の下方にロックアーム14の操作部14aが位置するように形成している。
【0039】
なお、対向配置される連結部13は、その内側(図中に示す2点鎖線も含む)に挿し込み部12の外形が嵌合するように形成するとともに、挿し込み部12が挿入される内側の断面積を挿し込み部12の断面積よりも小さくして、適宜の保持力を有するように形成している。
【0040】
これによれば、相手方接続部(図示せず)に挿し込み部12を接続した後において、係止解除用の操作部14aを操作するときに、操作部14aの上方に空間が形成されることで、以上の実施形態よりも操作部14aの操作がし易くなる。
【0041】
ここで、本実施形態では、短辺側に断面略コの字状の連結部13を対向配置するように形成したが、操作部14aが形成される一面側のみに空間を形成するように連結部13を断面略C字状に形成しても良い。
【0042】
(第5実施形態)
以上の実施形態では、連結部13を挿し込み部12の外形に応じた平面視略角状の凹状に形成したが、これに限らず、挿し込み部12の外形面を部分的に覆うように複数の突設部13cを用いて連結部13を形成しても良い。
【0043】
具体的には、図7に示すように、挿し込み部12の外形面に対応する位置に柱状からなる4個の突設部13cを形成するとともに、その4個の突設部13cに囲まれた内側(図中に示す2点鎖線)に挿し込み部12の外形が嵌合するように形成している。
【0044】
つまり、挿し込み部12の4面の外形面を囲うように4個の突設部13cを用いて、突設部13cに囲まれた内側が断面略角状になるように突設部13cを形成している。これによれば、連結部13を簡素な形状で形成することができる。
【0045】
(他の実施形態)
以上の実施形態では、挿し込み部12側を凸状に形成し、連結部13側を凹状に形成して嵌合するように構成したが、これに限らず、挿し込み部12側を凹状に形成し、連結部13側を凸状に形成して嵌合するように構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1実施形態における連結式コネクタの全体構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示すA矢視図である。
【図3】本発明の第1実施形態における複数の連結式コネクタを段積み状に連結した状態を示す斜視図である。
【図4】本発明の第2実施形態における連結式コネクタの全体構成を示す斜視図である。
【図5】本発明の第3実施形態における連結式コネクタの全体構成を示す斜視図である。
【図6】本発明の第4実施形態における連結式コネクタの全体構成を示す斜視図である。
【図7】本発明の第5実施形態における連結式コネクタの全体構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
10…連結式コネクタ(コネクタ)
12…挿し込み部
12b…溝部(ロック部)
13…連結部
13a…案内部
13b…爪部(ロック部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手方接続部に接続される挿し込み部(12)を有するコネクタ(10)であって、
前記コネクタ(10)には、別の挿し込み部(12)を嵌合可能な連結部(13)が設けられていることを特徴とする連結式コネクタ。
【請求項2】
前記連結部(13)は、前記挿し込み部(12)の背面側に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の連結式コネクタ。
【請求項3】
前記連結部(13)に別の前記挿し込み部(12)を嵌合させて複数の前記コネクタ(10)が連結されたときに、前記連結部(13)は、前記挿し込み部(12)を保持する適宜の保持力を有するように形成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の連結式コネクタ。
【請求項4】
前記コネクタ(10)は、前記連結部(13)に前記挿し込み部(12)を挿入するための案内部(13a)が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の連結式コネクタ。
【請求項5】
前記コネクタ(10)は、前記連結部(13)に別の前記挿し込み部(12)を嵌合させたときに、ロック解除容易なロック部(12b、13b)が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の連結式コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−115448(P2007−115448A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−303661(P2005−303661)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】