連結車を安定にする方法及び装置
連結車を安定にする本発明の方法は、少なくとも1つのダイナミック運動の入力値を検出及び評価することによって構成される。前記連結車は、前輪と後輪を備える牽引車とトレーラから成る。連結車の横転運動が上記の評価に基づいて検出されるとき、連結車のダイナミック運動が安定化されるように、少なくともブレーキ動作が牽引車に生成される。連結車の横転運動効果を相殺するヨーモーメントは、牽引車の前輪をブレーキ作動することによってのみ、生成される。前記方法を実施するための本発明の装置も、開示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連結車を安定にするための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
連結車は、速度が大きくなるにつれて、横転運動を生じやすい現象を呈する。
【0003】
簡単にするために、本発明の方法又は本発明による装置を用いて除去し得る連結車の不安定な状態を示すのに、以下、横転運動という用語が用いられる。これは、限定することを意図していない。振り子運動または振動運動という2つの用語も、前述の状態を示すのに、用いられ得る。
【0004】
ここで、横転運動という用語によって理解されるべきことについて、まず説明すると、もし連結車が横転運動を受けた場合、トレーラはその垂直軸を中心として振動し、また、トレーラの連結棒を介して、牽引車に振動を励起する。もし車両の速度が臨界速度と呼ばれる速度よりも低い場合、この振動は減衰される。もし車両の速度が臨界速度と等しい場合、振動は減衰されない。もし車両の速度が臨界速度よりも高い場合、励起された振動は、もはや自動的に減衰せず、互いに強め合う。連結車は、その横方向運動において、ますます大きい揺れを受け、これによって、状況によっては、事故が生じ得る。横転運動の励起は、例えば、地面の隆起を乗り越える走行の結果として、又は横風の影響の結果として、特定の運転状況下において、運転手によってなされる不適切な操舵介入によって、生じることがある。
【0005】
臨界速度の値は、とりわけ、車軸間距離及び牽引棒のような幾何学的なデータ、牽引車及びトレーラの質量とヨー慣性モーメント、並びにタイヤ及び/又は車軸の斜め走行の剛性に依存する。臨界速度の値は、乗用車の分野における連結車の場合、典型的には、70km/hから130km/hの範囲内において、変動する。横転運動の周期は、略0.5Hzから2Hzの間にある。
【0006】
もし横転運動が生じると、実質的に周期的な横方向運動が、トレーラを牽引する牽引車に生じる。前記横方向運動は、例えば、牽引車の横加速度又はヨー角速度で表される。その結果、横転運動中に、横加速度又はヨー速度の実質的に周期的な信号が生じる。これは、厳密に周期的な振動現象ではない。何故なら、連結車は、理想的な振動システムを構成しないからである。その代わりに、トレーラの振動運動の周期長さの一時的な変動が生じ得る。これらは、例えば、横加速度センサによって生成される繰り返し又は実質的に周期的な信号で表される。すなわち、この信号は、小さな範囲で変化するが、理想的には、経時的に一定と考えられる周期長さを有している。同じことがヨー速度センサの信号にも当てはまる。
【0007】
同様に、横転運動から生じるヨーモーメントを補償するために付加されるヨーモーメントも、厳密には周期的ではない。付加されるヨーモーメントの周期長さも、連結車の横転運動又は振動運動の周期の変動に従って変化される。
【0008】
連結車を安定にするための方法及び装置は、先行技術による多数の変形例から知られている。
【0009】
例えば、非特許文献1は、連結車を安定にするための装置を記載している。この装置によって、その特定の連結車の特性とは無関係に生じる振動と走行速度が検出され、ある制限値を超えた場合、連結車は、牽引車のアクティブブレーキ作動によって、安全な走行状態に再び復帰され得る。振動の検出は、実質的に、測定されたヨー速度の解析に基づいている。ヨー速度は、0.5Hzから1.0Hzの周波数帯域の大きさを有するバンドパスフィルタによって、フィルター処理され、このフィルター処理された信号の振幅が決定される。このヨー振幅に基づいて、ブレーキ作動介入が連結車を安定にするのに必要であるかどうかが判断される。ヨー振幅の瞬間的な値に加えて、ヨー振幅の経時的な挙動も評価される。もし連結車の不安定な状態が検出された場合、振動運動が十分に減衰されるまで、圧力を積極的に増大させることによって、牽引車は、その4つの車輪の全てが対称的にブレーキ作動される。この目的のために、減速の一定の設定値が予め定められ、前記値は、減速制御装置によって設定される。同時に、駆動トルクが零に制限される。対称的なブレーキ作動介入に加えて、ヨー速度制御装置に基づく車輪に固有のブレーキ作動介入も振動運動中に実施され、対称的なブレーキ作動介入に重畳されるようにすることもできる。
【0010】
特許文献1は、連結車の横方向安定性を改良するための方法を記載している。この方法によれば、もしダイナミック横方向車両変数、例えば、ヨー角速度の横方向加速度の振幅が、所定の周波数帯域内で振動し、同時に制限値を超えた場合、車両を減速させる対策が取られる。車両を減速させる対策は、駆動トルクを低下させるためのスロットル弁の開口の角度を減少させるための介入、及び/又は牽引車の前輪と後輪にブレーキ圧力を送給するための介入である。
【0011】
特許文献2は、車両の振動運動を検出するための方法及び装置を記載している。車両はエンジンによって出力されるトルクに影響を与える手段と、車両の車輪に割り当てられるブレーキとを備えている。振動運動が検出されたとき、車両の速度を低下させるために、エンジンから出力されるトルクに影響を与える手段とブレーキが作動される。前記手段と前記ブレーキは、同程度に作動される。代替的に、車両の振動運動が検出されたときに、車両に作用して振動運動を相殺するヨーモーメントが結果的に生じるように、車両ブレーキを個別に作動させる対策もある。
【0012】
特許文献3は、連結車を安定にするための方法及び装置を記載している。もし横転運動が検出された場合、安定化介入が実施される。第1の手順において、正確に位相が合わされたブレーキ作動介入が、牽引車のブレーキに実施される。同時に、トレーラのブレーキが均一に作動される。牽引車における正確に位相が合わされたブレーキ作動介入に対する代替案として、対応する操舵介入を行なうこともできる。第2の手順として、トレーラのみが選択的にブレーキ作動される。
【0013】
特許文献4は、連結車を安定にするための方法及び装置を記載している。もし連結車の横転運動が検出された場合、その横転運動とは実質的に逆位相の実質的に周期的なヨーモーメントが付加される。このヨーモーメントは、路上走行車を自動的にブレーキ作動することによって、付加される。この場合、異なるブレーキ作動力が、路上走行車両の片側がブレーキ作動されるように、路上走行車の両側に付加される。実質的に周期的なヨーモーメントの付加の後、及び/又はそれに加えて、路上走行車は、トレーラの超過制動が引き起こされるように、自動的に短期間だけブレーキ作動される。この短いブレーキ作動は、牽引車の車両ブレーキに介入することによって、又は駆動トルクを低下させることによって、実施され得る。車両の機器のレベルに依存して、異なるブレーキ作動介入が実施される。もし車両がヨー速度制御装置(ESP、FDR)を備えている場合、実質的に周期的なヨーモーメントを付加するために、牽引車の車輪の全てが個別にブレーキ作動され得る。さらに、トレーラの超過制動が始動されるように、車輪の全てが同時にブレーキ作動されるか、又はエンジン出力が対応するエンジン介入によって低減され得る。もし車両が後輪駆動又は全車輪駆動で、牽引制御装置(TCS)を備えている場合、実質的に周期的なヨーモーメントは、後車軸へのブレーキ作動介入によって、付加され得る。もし対照的に、車両が前輪駆動で、牽引制御装置(TCS)を備えている場合、前述の安定化は利用され得ない。この場合、可能であるのは、牽引車の車輪の全てをブレーキ作動することだけである。アンチロックブレーキシステム(ABS)を備えるだけの車両の場合においても、連結車を安定にするために、牽引車の車輪の全てがブレーキ作動され、これによって、同時に、トレーラの超過制動の始動がもたらされる。
【0014】
特許文献5は、連結車のダイナミック運動状態を安定にするための方法及び装置を記載している。もし不安定なダイナミック運動状態が検出された場合、牽引車の長手方向の速度が、牽引車のエンジン及び/又はブレーキへの介入によって、低減される。牽引車の長手方向の速度を低減させるための介入の代替案として、牽引車の片側へのブレーキ作動介入を実施することも可能であり、これによって、曲げ角度の減少がもたらされる。
【0015】
先行技術によって知られている連結車を安定にするための方法又は装置の欠点は、ブレーキ作動介入が主に、すなわち、限定的に後輪に対して実施されるか、又は前輪と後輪が常に一緒に、すなわち、同時に、特に均一又は個別に、ブレーキ作動される点にある。この種のブレーキ作動介入は、長手方向力、すなわち、周方向力を後輪に生じさせ、これは、同時に横方向案内力(コーナリングフォース)をもたらす。この横方向案内力は、横転運動している連結車の場合、前記コンビネーションを安定にするのに必要とされる力である。換言すれば、後輪へのこれらのブレーキ作動介入は、前記車輪における潜在的な横方向案内力を低減させる。もし路面の状態が、例えば、低摩擦係数の路面(湿った、雪に覆われた、又は氷に覆われた路面)の状態に対応している場合、これによって、安定化のためになされたブレーキ作動介入が連結車の不安定な挙動をなくすことが実質的に意図されているにもかかわらず、連結車の不安定な挙動の振幅、すなわち、連結車の横転運動の増大がもたらされる。
【0016】
【特許文献1】独国特許出願公開第195 36 620 A1号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第100 31 266 A1号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第100 34 222 A1号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第199 64 048 A1号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第100 07 526 A1号明細書
【非特許文献1】「自動車の定期雑誌(Automobiltechnischen Zeitschift(ATZ)」104、2002、4号の330〜339ページに記載されている「BMW X5のアクティブ連結車安定化(Aktive Gespannstabilisierung beim BMW X5]
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
この背景技術に対して、以下の目的、すなわち、連結車を安定にする既存の方法及び装置が改良されるべきであるという目的が、当業者には生じている。
【0018】
とりわけ、連結車を安定にするための介入が実施されている期間中、連結車を安定にするのに十分に高い潜在的な横方向案内力が、牽引車の主に後輪において存在するか又は確保されることが、意図されている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この目的は、請求項1に記載の方法及び請求項29に記載の装置によって、達成される。
【0020】
前記目的を実施するために提案される連結車を安定にするための方法において、少なくとも1つのダイナミック運動の入力変数が測定及び評価される。もし連結車の横転運動がこの評価によって検出された場合、連結車のダイナミック運動状態を安定にする少なくともブレーキ作動介入が、牽引車に対してもたらされる。本発明によれば、連結車の横転運動を相殺するヨーモーメントは、牽引車の前輪に対してもたらされるブレーキ作動介入によってのみ生成される。前輪に対してもたらされるこれらのブレーキ作動介入は、運転手とは無関係になされるブレーキ作動介入である。
【0021】
連結車の横転運動を相殺するヨーモーメントは、前輪に対してもたらされるブレーキ作動介入によってのみ生成されるという事実によって、連結車を安定にするのに必要な潜在的な横方向案内力が、特に後輪において、十分な程度に利用可能であることが確実になる。
【0022】
ここで採用される原理によれば、重要なこの潜在的な横方向案内力が低下しないので、牽引車の後輪へのブレーキ作動介入を実行しなくても済む。すなわち、後輪へのブレーキ作動介入の実行が大幅に省略される。牽引車の後輪に対するブレーキ作動介入は、連結車の所定の作動状態が生じたときのみ、前輪に対する前述のブレーキ作動介入に加えて、許容されるか又はもたらされる。これによって、前輪にもたらされるブレーキ作動効果が永続的に連結車を安定にする、すなわち、減速するのに十分ではない特定の状況において、連結車に作用する全ブレーキ作動効果を増大させ、これによって、減速をもたらし、その結果として、連結車がより安定にされ得る状況をもたらし得ることが確実になる。
【0023】
本発明によれば、各場合において、基本力とダイナミック力成分から成るブレーキ作動力を生じさせるブレーキ作動介入が、前輪に対して、有利にもたらされる。振動ブレーキ作動介入と呼ばれるこのようなブレーキ作動介入は、均一又は一定のブレーキ作動力を生成するのみのブレーキ作動介入と比較して、このような振動ブレーキ作動介入によって、連結車の横転運動を相殺する反ヨーモーメントを生成することができるという利点がある。この反ヨーモーメントは、実質的に、連結車の横転運動とは逆位相にある。反ヨーモーメントは、均一又は一定のブレーキ作動効果を生成させるブレーキ作動介入を用いる場合には、生成され得ない。もし、例えば、車両の全ての車輪が、均一又は一定のブレーキ作動効果が前記車輪に生成されるように、同時にブレーキ作動される場合、これらのブレーキ作動介入によって生成されて車輪に作用するモーメントは、互いに相殺されるので、反ヨーモーメントは、この種のブレーキ作動介入によって、生成され得ない。
【0024】
連結車に作用する減速の増加をもたらすために、後輪に付加的に許容されるか又はもたらされるブレーキ作動介入を用いることが意図されているので、これらのブレーキ作動介入は、それらが実質的に一定のブレーキ作動効果をもたらすように、後輪に対して実施される。後輪に対してなされるブレーキ作動介入の作動の効果が一定でないような調整は、その調整による後輪における横方向案内力の低下をもたらすので、実行されない。
【0025】
後輪への付加的なブレーキ作動効果の付加は、有利には、運転手によって始動又は実施されたブレーキ作動プロセスによって生じた車両の減速の値が維持されるように、実施される。従って、運転手は減速を継続し、それを運転手が察知することができる。運転手とは無関係に実施される安定化介入中、変化し得る減速の結果として、運転手が動揺することはない。
【0026】
運転手によって始動又は実施されるブレーキ作動プロセスは、運転手によるブレーキペダルの作動に基づく、運転手に依存するブレーキ作動と呼ばれるものである。このようなブレーキ作動は、運転手によって設定された初期圧力、又はブレーキライトスイッチによって出力される信号、又はブレーキペダルの偏位を表す信号によって、検知され得る。
【0027】
例えば、もし連結車の横転運動が検出され、同時に、運転者によるブレーキ作動がなく、連結車が低摩擦係数の路面に位置している場合、後輪のためのブレーキ作動介入が許容されるような連結車の所定の作動状態が生じる。すなわち、もし連結車の横転運動が検出され、運転手によるブレーキ作動がなく、連結車が低摩擦係数の路面に位置する場合、後輪に対するブレーキ作動介入が付加的に許容される。この構成において、運転手とは無関係な安定化介入は、必ずしもなされない。その代わりに、もしこのような介入が必要な場合、それらの介入がなされ得ることを確実にするために、予め準備をする必要がある。その結果、必要に応じて、連結車の迅速な安定化が可能である。
【0028】
例えば、もし連結車の横転運動が検出され、同時に、運転者によるブレーキ作動がなく、前輪に対してもたらされるブレーキ作動介入が前輪のロックの危険をもたらす場合、後輪に対してブレーキ作動介入がもたらされるような連結車の所定の作動状態が生じる。すなわち、もし連結車の横転運動が検出され、同時に、運転者によるブレーキ作動がなく、前輪に対してもたらされるブレーキ作動介入が前輪のロックの危険をもたらす場合、後輪に対するブレーキ作動介入が付加的にもたらされる。この構成において、連結車の横転運動によって生じた不安定さに加えて、更なる不安定さ、具体的には、前輪が場合によってロックされることによって生じる不安定さが生じる。この更なる不安定さは、連結車が備えているアンチロックブレーキシステム(ABS)によって、自動的に除去される。この目的のために、前輪に作用するブレーキ作動力を前輪のロックが回避される範囲まで低減又は付加させるように、アンチロックブレーキシステムは、前輪に割り当てられたブレーキアクチュエータを作動させる。連結車を安定にするために前輪に必要なブレーキ作動力は、連結車の当該作動状態においては、単独で加えることができない、すなわち、連結車の著しい減速は、前輪におけるブレーキ作動介入によって生じさせることができないので、対応するブレーキ作動介入が牽引車の後輪にもたらされる。この構成では、連結車の減速、従って、運動エネルギーの低減を実施するために、車輪の全てを同時にブレーキ作動するとよい。
【0029】
前輪がロックする危険があるかどうかについての検出は、例えば、前輪のスリップを評価するか、又は当該作動状態において、ブレーキ作動介入が、少なくとも前輪に対して、この車輪のロックを回避するために、アンチロックブレーキシステムによって実施されることを示すABSフラグを評価することによって、なされ得る。すなわち、前輪の1つがアンチロックブレーキシステムによって車輪スリップ制御を受けているかどうかを確認するための検証を行なうことが適切である。
【0030】
ブレーキ作動介入が後輪に対してもたらされる連結車のさらに他の所定の作動状態が、例えば、もし運転手によって始動又は実施されたブレーキ作動プロセス中に横転運動が検出され、この運転手によって始動又は実施されたブレーキ作動プロセスの結果として生じる車両減速が所定の比較基準を満たす場合に、生じる。すなわち、運転手によって始動又は実施されたブレーキ作動プロセス中に、横転運動が検出され、運転手によって始動又は実施されたブレーキ作動プロセスの結果として生じる車両の減速が所定の比較基準を満たす場合、後輪に対する付加的なブレーキ作動介入がもたらされる。
【0031】
もし生じる車両の減速が所定の閾値よりも小さい場合、運転手によって始動又は実施されたブレーキ作動プロセスの結果として後輪に生じるブレーキ作動の結果は、後輪に対してもたらされるブレーキ作動介入によって、少なくとも部分的に低減される。従って、この手段は、牽引車の後輪における潜在的な横方向案内力が連結車を安定にするのに十分であることを確実にするために、なされる。後輪において生じるブレーキ作動効果のこの損失は、基本力の結果として前輪に生じるブレーキ作動効果によって、補償される。同時に、運転手は、その運転手とは無関係に実施された安定化介入によって、運転手によって設定された減速のいかなる知覚できる変化をも感じないことが確実になる。
【0032】
運転手によって始動又は実施されたブレーキ作動プロセスの結果として後輪に生じるブレーキ作動効果は、好ましくは、この運転手によって始動又は実施されたブレーキ作動プロセスの結果として生じた車両の減速の値が少なくとも維持される範囲まで、低減される。しかし、より高いブレーキ作動効果、従って、より大きい車両の減速を要求することができ、従って、このような効果とこのような減速を設定し得る牽引車に内蔵される安全システム、例えばESPシステムを実現することが意図される。
【0033】
もし、他方で、生じる連結車が所定の閾値よりも大きい場合、運転手によって始動又は実施されたブレーキ作動プロセスの結果として後輪に生じるブレーキ作動効果は、後輪に対してもたらされるブレーキ作動介入によって、少なくとも維持される。この手段は、対応する交通状況の結果として運転手によって必要となり得る強力なブレーキ作動が維持されることを確実にすることが、意図されている。この例として、回避できない後端の衝突が生じた場合、運転手によって望まれ、連結車の運動エネルギーを最小値まで低減することを目的とする連結車の強力なブレーキ作動が、挙げられる。
【0034】
もし、所定の閾値よりも大きい車両の減速が存在するときに、アンチロックブレーキシステム(ABS)が片方の前輪又は両方の前輪に同時になされた場合、後輪に対してもたらされるブレーキ作動介入によって、後車軸における付加的なブレーキ作動効果が増大される。前輪における基本力の低減によるアンチロックブレーキシステムの介入によって生じる減速の低減は、このようにして、補償される。
【0035】
後輪において実施されるブレーキ作動介入に関して、ここで検討されている事柄について、以下の手順も考えられる。すなわち、まず、本発明による方法による基本的な構想に基づいて、ブレーキ作動効果の低減が、対応するブレーキ作動介入によって、まず、後輪において許容される。しかし、もし前輪の少なくとも1つに対するアンチロックブレーキシステムの介入が検知され、同時に、現在の車両の減速が運転手に望まれた車両の減速ではないことが確認された場合、後輪におけるブレーキ作動効果は、対応するブレーキ作動介入によって、再び増大される。
【0036】
もし少なくとも牽引車が、油圧、電気油圧、空圧、又は電気空圧ブレーキシステムを備える場合、前輪に対してもたらされるブレーキ作動介入は、各場合に、基本圧力とダイナミック圧力ピークから成るブレーキ圧力が、前輪に割り当てられた車輪ブレーキシリンダー内に送給される状況をもたらす。この分割は、基本力とダイナミック力成分への前述された分割に対応する。これに関連し、連結車の横転運動を相殺するヨーモーメントが、ダイナミック力成分又はダイナミック圧力ピークによって、生成される。2つの前輪に送給される基本圧力は、その基本圧力が両方の前輪に対称的に送給されるので、各場合に、個々の前輪に関して車輪に作用するモーメントをもたらすが、これらのモーメントは、互いに重畳されたいかなるヨーモーメントも生じない。従って、前輪に送給される基本圧力は、車両のその垂直軸を中心とするいかなる回転をも生じない。
【0037】
基本力の値又は基本圧力の値は、有利には、ヨー角速度の偏差の関数として決定される。この変位は、有利には、ヨー角速度センサを用いて測定されるヨー角速度の実値と数学的モデルを用いて決定されるヨー角速度の設定値との間の差である。ヨー角速度の偏差の関数としての基本力の値又は基本圧力の値の決定は、以下の利点を有している。もし、例えば、設定値が実値から引き算される場合、その設定値は、励起エネルギーに関するゼロラインとして表示され得る一方、実値は、横転している連結車の励起エネルギーを表示する。その結果、この偏差は、安定化ブレーキ作動介入によって低減されるべき励起エネルギーの目安を表す。連結車の横転運動は、臨界速度を超える速度で増大し、従って、それを保障するために安定化ブレーキ介入が必要なので、この偏差は、同時に低減されるべき運動エネルギーの目安でもある。従って、この偏差の値は、実施されるべき、かつ確定されるべきブレーキ作動介入の強さをもたらす。
【0038】
ダイナミック力成分の値又はダイナミック圧力ピークの値は、有利には、ヨー角速度の偏差の経時的変化を示す変数の関数として、決定される。この変数を決定するための種々の手順が可能である。例えば、この変数は、ヨー角速度に対して存在する制御エラーの経時的な偏差、すなわち、ヨーモーメントの実値の関連する設定値からの偏差として決定される。その結果、この変数は、言わば、ヨー角度加速度の実値とヨー角度加速度の設定値との間の偏差に対応する。また、この偏差は、各駆動状況に存在するヨー角度加速度の関連する設定値からの偏差として、直接的に決定され得る。このダイナミック力成分の値又はダイナミック圧力ピークの値が、この変数の関数として決定される理由は、以下の通りである。すなわち、連結車の横転運動から生じるヨーモーメントは、ヨー加速度に比例する。この理由から、横転運動の最も有効な補償が、圧力ピークによって達成され得る。補償を行なうための圧力ピークの送給も、ヨー角速度に比例する。もしヨー角速度の設定値が、値ゼロの場合、ヨー角速度の偏差は、ヨー角速度の実値に対応する。同時に、ヨー角速度の偏差の経時的な変化を示す変数は、ヨー角速度の実値に対応する。
【0039】
横転運動が減少するにつれて、基本圧力とダイナミック圧力ピークの両方が減少するのが有利であることがわかっている。従って、運転手と無関係に実施される安定化介入は、不安定さの程度に適合するようにされている。
【0040】
ブレーキ作動介入に加えて、エンジン介入も有利に実施され、その結果、連結車への良好な減速の効果が達成され得る。エンジンから出力されるトルクは、有利には、周方向力が全く牽引車の被駆動車輪に生じないか又は零に近い周方向力が牽引車の被駆動車輪に生じるように、これらのエンジン介入によって設定される。換言すれば、駆動伝達系に生じる摩擦トルクが補償され、被駆動輪には、周方向力に関してニュートラルの設定が与えられる。すなわち、被駆動輪には、実質的に、周方向力のない設定が与えられる。最後に述べた手段によって、潜在的な横方向案内力が大幅に利用可能になることが確実になる。駆動伝達系を介して被駆動輪に加えられる適切な駆動トルクは、連結車の横転運動の補償の改良を可能にする。車両エンジンの設計に依存して、例えば、エンジン介入は、スロットル弁の位置、又は点火角度、又は噴射量に影響を与える。
【0041】
安定化ブレーキ作動介入が始動された後、有利には、連結車の不安定さが減少したかどうかが確認される。もし連結車が安定状態に再び達したことが、プロセスにおいて、検出された場合、更なる安定化ブレーキ作動介入は、行なわれない。同時に、駆動トルクは、運転手によって予め定められる値であって、アクセルペダルの作動によって得られる値に従って、設定される。この手段は、運転手とは無関係な安定化介入が実施された前に存在していた走行状況から、前記介入が実施された後に存在する走行状況に、快適さを強調して移行がなされることを確実にする。長手方向の動力学の突発的で、場合によっては急激な変化が回避される。
【0042】
牽引車の少なくともヨー角速度は、有利には、ダイナミック運動の入力変数として、測定及び評価される。車両速度、ヨー角速度、及びかじ取り角が、有利には、横転運動が生じているかどうかを決定するために、評価される。これに関連して、もし運転手がいかなる操舵介入を行なっていないにもかかわらず、車両速度が関連する閾値よりも高い連結車の作動状態において振動挙動を示す場合、横転運動が生じている。車両速度に対して与えられる上記の閾値は、有利には、臨界速度よりは低い。この閾値は、例えば、55km/hを超える範囲内、好ましくは、55km/hから60km/hの範囲内にある。
【0043】
連結車に対して生じる横転運動の決定のための以下の手順は、特に有利であることが分かっている。連結車の横転運動の存在が、ヨー角速度の実値と関連する設定値との間の偏差を含む偏差変数の関数として、決定される。もしこの偏差が所定の閾値に達するか又は超える場合、これは、連結車の横転運動が生じているという事実を示している。制御エラーを考慮又は評価することによって、例えば、運転手にとって望ましく、連結車が不安定ではなく、従って、安定化介入の必要もないジグザグに縫うように進む回転運動を検出することができる。
【0044】
本発明による方法及び本発明による装置を用いることによって、平均的な運転手が、不安定な連結車、すなわち、横転運動している連結車に対処することができる。本発明による方法及び本発明による装置は、ヨー反応の急速な減衰を可能にする。さらに他の利点は、今日、すでに連続生産されている車両ダイナミックシステム(これは、実質的に、出願人によってECPの名称で知られている車両用のヨー速度制御装置を意味している)に基づいて、いかなる付加的な作動システム又はセンサシステムの必要がない点にある。さらに、トレーラに対する変更は必要がない。すなわち、アクチュエータシステム又はセンサシステムをトレーラに取り付ける必要がない。すでに使用されているトレーラは、改造される必要がない。
【0045】
もし連結車の横転運動が存在するか、又はもし車両が横転運動を生じる傾斜又は傾向を検出した場合、安定化介入が行なわれる。これらは、第1に、運転手とは無関係に実施されるブレーキ作動介入であり、第2に、エンジン介入である。
【0046】
ブレーキ作動介入は、横転運動から生じて車両に作用するヨーモーメントを低減させるために用いられることが、意図されている。従って、ブレーキ作動介入は、結果的に車両に作用する反ヨーモーメントが生成されるように、行なわれるべきである。この目的のために、ブレーキ作動介入は、まず、それらが横転運動から生じるヨーモーメントを相殺するように、車両に作用する検知されたヨーモーメントの値及び/又は検知されたヨー加速度の値の関数として、車両の前輪に実施される。その結果、横転運動のエネルギー、すなわち、振動エネルギーは低減され、連結車は安定し、再び安定して走行する。
【0047】
以下、図面を参照して、例示的実施形態をさらに詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
図1は、本発明の方法による前輪に実施されるブレーキ作動介入の基本的な手順を示している。左側の図において、トレーラ102は右に揺れ、牽引車101に、左回りの矢印によって示されるその垂直軸を中心とする左回転を生じさせる。連結車104の検出された横転運動によって、基本ブレーキ力が、牽引車の両方の前輪103vl、103vrに送給される。加えて、牽引車101に作用する右向きのヨーモーメントをもたらすダイナミックブレーキ力が、右側の前輪103vrに送給される。ダイナミックブレーキ力によって生じるこのヨーモーメントは、横転運動によって生じたヨーモーメントを相殺し、これによって、連結車104を安定にする。
【0049】
右側の図において、トレーラ102は左に揺れ、牽引車101に、右回りの矢印によって示されるその垂直軸を中心とする右回転を生じさせる。連結車104の検出された横転運動によって、基本ブレーキ力が、牽引車の両方の前輪103vl、103vrに送給される。加えて、牽引車101に作用する左回りのヨーモーメントをもたらすダイナミックブレーキ力が、左側の前輪103vlに送給される。ダイナミックブレーキ力によって生じるこのヨーモーメントは、横転運動によって生じたヨーモーメントを相殺し、これによって、連結車104を安定にする。
【0050】
この手順は、図2の線図においても示されている。この線図の上部に、ヨー速度とかじ取り角の信号形状が示されている。この線図の下部に、牽引車の個々の車輪103vl、103vr、103hl、103hrに設定されるブレーキ圧力の信号形状、及び前輪103vl、103vrに一緒に送給される基本ブレーキ圧力の信号形状が、示されている。2つの前輪103vl、103vrに送給されるブレーキ圧力の信号形状から明らかなように、前輪103vl、103vrにそれぞれ送給されるブレーキ圧力は、基本ブレーキ圧力とダイナミック圧力ピークからなる。
【0051】
線図の上部は、以下の事実又は以下の走行状況、すなわち、運転手が、対応するハンドルの運動、従って、操舵運動によって、連結車104の横転運動を生じさせ、この場合、この操舵運動は急旋回操舵であることを示している。従って、図示された走行状況において、連結車104の横転運動は、運転手によって起こされた操舵運動による。形状2は、これらの操舵運動を示している。連結車104の横転運動は、ヨー角速度センサを用いて検出されたヨー角速度の信号形状の揺れ挙動に示されている。この信号形状は、形状1として示されている。ここで、以下の事柄、すなわち、ヨー角速度の正の値はトレーラ102の右側への偏位、従って、同時に牽引車101の左側への偏位であることが、適用される。ヨー角速度の負の値は、トレーラ102の左側への偏位、従って、同時に牽引車101の右側への偏位を表している。
【0052】
前述した横転運動を引き起こす手法が、本発明の方法に制限的な影響を及ぼすことが意図されているわけではない。勿論、これは、本発明の方法を実施するための実際的な原動力ではあるが、本発明の方法によれば、外部から、すなわち、運転手とは無関係に、引き起こされる連結車104の横転運動を排除することができる。
【0053】
図の下部に、連結車104の検出された横転運動に基づいて、本発明による方法を用いて実施されるブレーキ作動介入が、示されている。まず、振動しているヨー角速度の生成と圧力の送給との間にある時間が経過していることが、明らかである。これは、横転運動が、まず、さらに詳細は以下に述べる対応する評価を用いて、検出されねばならないという事実による。加えて、形状5と6を参照するに、2つの後輪103hlと103hrにいかなる圧力をも送給されていないことが明らかである。すでに述べたように、一方では、前述した基本ブレーキ力をもたらす基本圧力が、2つの前輪103vlと103vrに送給され、他方では、前述したダイナミックブレーキ力をもたらす車輪に特有の圧力ピークが、2つの前輪103vlと103vrに送給される。基本圧力は、形状7に示されている。圧力ピークは、形状3と4に示されている。図2に示される図から明らかなように、トレーラ102が右側に偏位され、従って、牽引車101の左側への偏位が存在するとき、圧力ピークは、右側の前輪103vrに送給される。同様に、トレーラ102が左側に偏位され、従って、牽引車101の右側への偏位が存在するとき、圧力ピークは、左側の前輪103vlに送給される。
【0054】
送給されるべき基本圧力の値は、ヨー角速度の偏差の関数として決定される。この偏差は、ヨー角速度センサを用いて測定されるヨー角速度の実値と、数学的モデル、この場合、車両モデルを用いて決定されるヨー角速度の設定値との間の差から得られる。
【0055】
送給されるべき圧力ピークの値は、ヨー角速度の偏差の経時的変化を表す値、すなわち、変数の関数として決定される。この変数は、例えば、ヨー角速度に現れる制御エラーの経時的導関数、すなわち、関連する設定値に対するヨー角速度の実値の偏差として決定され得る。この変数は、関連する設定値に対する各走行状況に現れるヨー角加速度の偏差として直接的に決定されるようにもすることができ、ここで、実値が設定値から引き算される。複雑さがより低いという点から、最初の代替案が好ましい。
【0056】
前輪103vl、103vrに送給される基本ブレーキ圧力による基本ブレーキ力によって、連結車104のブレーキ作動が生じる。その結果、連結車104の速度が、冒頭に述べた臨界速度よりも低い値にまで低減される。
【0057】
圧力ピークによって前輪103vl、103vrに生成されたブレーキ力は、一方では、連結車104のブレーキ作動をもたらす。他方では、振動している圧力ピークの送給は、与えられるべき反ヨーモーメントを生じ、前記反ヨーモーメントは、横転運動によって生じているヨーモーメントに対して逆位相、すなわち、対向している。この反ヨーモーメントは、連結車104の横転運動を著しく急速に低下させる。連結車104は、安定化される。
【0058】
安定化ブレーキ作動介入が始動された後、連結車104の不安定性、すなわち、連結車の横転運動が低下したかどうかが確認される。もし連結車104が再び安定状態に達したことがプロセスにおいて検出された場合、基本ブレーキ圧力と圧力ピークを生じさせるための更なるブレーキ作動介入は、行なわれない。同時に、駆動トルクが、運転手によって予め定められて前記運転手によってなされる加速ペダルの作動によって生じ得る値に従って、再び設定される。
【0059】
前述したブレーキ作動介入の手順は、図2の線図にも示されている。時点t1から始まって、ヨー角速度の信号形状のみは極めて小さい振幅を有し、この理由から、更なるブレーキ作動介入はこの時点から行なわれない。また、この図から推察されるように、一般的に、横転運動が減少するにつれて、基本ブレーキ圧力と圧力ピークは減少する。連結車の速度は、臨界速度よりも低い。
【0060】
図2の線図に示され手順において、基本的な走行状況において、ブレーキ作動介入が前輪103vl、103vrにのみ実施される。すなわち、連結車104の横転運動を相殺するヨーモーメントは、牽引車101の前輪103vl、103vrにもたらされるブレーキ作動介入によってのみ生成され、従って、連結車が安定にされる。検討されている走行状況は、後輪103hl、103hrへの付加的なブレーキ作動介入が許容されるか又はもたらされる連結車104の作動状態に対応することが意図されていない。後輪103hl、103hrのブレーキ作動介入及び連結車104の対応する作動状態に関して、以下に、さらに詳しく説明する。
【0061】
すでに述べたように、ブレーキ作動介入に加えて、エンジン介入も実施され得る。この目的のために、例えば、スパーク点火エンジンの場合、零トルクが被駆動輪に生じるように、スロットル弁が設定される。牽引車が後輪駆動の車両の場合、2つの後輪103hl、103hrは被駆動輪である。これに関連して設定されるスロットル弁の角度は、6°から10°の間である。換言すれば、エンジン介入の結果として、スロットル弁は、周方向力が全く零に近い被駆動輪に生じないか又はゼロに近い周方向力が被駆動輪に生じるように、設定される。すなわち、スロットル弁は、駆動伝達系に生じる摩擦損失が補償され、被駆動輪に周方向力に関する限りニュートラル設定が与えられる、ように設定される。
【0062】
図2に関して、連結車104の横転運動を相殺するヨーモーメントが、牽引車101の前輪103vl、103vrにもたらされるブレーキ作動介入によってのみ実施され、その結果として、連結車104が安定にされることに留意すべきである。前輪103vl、103vrのこれらのブレーキ作動介入に加えて、ブレーキ作動介入が、後輪103hl、103hrに許容されるか又はもたらされ得る。運転手とは無関係な安定化ブレーキ作動介入が、前輪103vl、103vr及び後輪103hl、103hrの両方に対して実施される様式に関しては、以下に、さらに詳細に説明する。
【0063】
運転手によるブレーキ作動がない場合、前輪103vl、103vrがブレーキ作動される。この目的のために、基本ブレーキ圧力が、両方の前輪103vl、103vrに送給される。この基本ブレーキ圧力の値は、ヨー角速度の設定値に対するヨー角速度の実値の偏差の関数として、決定される。さらに、圧力ピークが、前輪103vl、103vrに加えられる。この圧力ピークの値は、各々、ヨー加速度の偏差の関数として、決定される。運転手によるブレーキ作動のないこのような作動状態において、前輪103vl、103vrにのみ実施されるブレーキ作動介入によって、連結車104を安定にする試みがなされる。しかし、路面の状態が、安定にするためのブレーキ力が必要な、例えば、雪などによる低摩擦係数の路面である場合、連結車104は、前記103vl、103vrにのみブレーキ作動を加えることができず、後輪103hl、103hrもこのような状況においてブレーキ作動される。これに関連して、ブレーキ圧力は、前記103vl、103vrから後輪103hl、103hrに再分配され得る。低摩擦係数の路面においてブレーキ作動が生じているという事実は、例えば、ABSフラグを評価することによって、検出され得る。ABSフラグによって、アンチロックブレーキシステムは、ブレーキ作動介入が少なくとも1つの車輪に対して、この車輪がロックするのを防ぐためになされることを示す。原理上、車両が低摩擦係数の路面に位置しているかどうかを検出するために、摩擦係数を表す変数を評価することもできる。このような変数は、例えば、車両のヨー速度が制御されるダイナミック運動システム内に存在する。
【0064】
連結車104の横転運動が、運転手によって始動されたブレーキ作動プロセス中に生じる場合、連結車104は、ブレーキ作動介入によって、以下のように、安定化される。まず、運転手によって始動されたブレーキ作動プロセスの結果として生じる車両の減速が測定される。もしこの車両の減速が所定の閾値よりも低い場合、これは低減速のブレーキ作動プロセスが運転手によって始動されたことを意味しているが、生じているブレーキ作動プロセスの結果として、後輪103hl、103hrに設定されるブレーキ圧力は少なくとも部分的に低減される。同時に、ブレーキ圧力が、一方では、基本圧力が両方の前輪103vl、103vrに送給され、他方では、圧力ピークが各前輪に特定して送給されるように、前輪103vl、103vrに加えられる。この場合、もしブレーキ作動が低摩擦係数の路面に実施されている場合、前輪103vl、103vrから後輪103hl、103hrに、ブレーキ圧力の再分配を行なうこともできる。
【0065】
他方で、もし車両の減速が所定の閾値よりも高い場合、これは高減速のブレーキ作動プロセスが運転手によって始動されたことを意味しているが、後輪103hl、103hrのブレーキ圧力はそのままにされる。前輪103vl、103vrでは、ブレーキ圧力が、連結車104の横転運動によって生じるヨーモーメントと逆位相のダイナミックヨーモーメントを生成するように、調整される。このようなブレーキ作動中に、アンチロックブレーキシステム(ABS制御装置)の介入が片方又は両方の前輪103vl、103vrになされている場合、ブレーキ圧力は、後車軸に付加的に加えられる。
【0066】
その結果、アンチロックブレーキシステムは、調整態様において、連結車104に作用する減速をプロセス中に減少させずに、片方又は両方の前輪103vl、103vrのロックが避けられる程度に、前輪103vl、103vrのブレーキ圧力を低下させることができる。圧力は、後輪103hl、103hrがそれらのロック制限値に至る範囲まで、後車軸に加えられるようにもすることができる。
【0067】
車両の減速を評価するのに対する代替案として、前輪103vl、103vrの状態を評価することによって、高減速のブレーキ作動プロセスが生じているのか又は低減速のブレーキ作動プロセスが生じているのかどうかを検出することもできる。この目的のために、例えば、前輪103vl、103vrの車輪ブレーキシリンダー内にそれぞれ送給されるブレーキ圧力の値を評価することができ、又は前輪103vl、103vrの入口及び出口弁の作動を評価することができる。この代替案として、前輪103vl、103vrに生じるブレーキスリップを評価することもできる。
【0068】
要約すると、ブレーキ作動介入に関して、まず第1に、安定化ブレーキ作動介入が、前輪103vl、103vrに実施されることに留意すべきである。所定の基準を評価することによって、又は連結車104の所定の作動状態が生じたとき、前輪103vl、103vrに対して実施されたブレーキ作動介入に加えて、ブレーキ作動介入が、ブレーキ力を生成するために、後輪103hl、103hrにも実施されるようにすることもできる。
【0069】
連結車104の横転運動が、牽引車101が装備するダイナミック運動システムに基づいて、牽引車101に設けられるセンサシステムを用いて、検知される。
【0070】
このダイナミック運動システムは、ヨー速度制御装置(ESP)と呼ばれるものである。その結果、少なくとも車両速度、ヨー角速度、及びかじ取り角は、横転運動が生じるかどうかを決定するように、評価される。
【0071】
本発明による方法は、図3に示されるように、2つの主部分からなる。第1は、連結車104の横転運動を検出する検出論理コンポーネント301である。第2は、連結車104の横転運動が生じた場合、安定ブレーキ作動介入及び/又はエンジン介入、又は操舵介入を実施する介入論理コンポーネント302である。検出論理コンポーネント301において処理に必要とされる変数は、牽引車101に設けられるCANバスを介して、検出論理コンポーネント301に利用可能とされている。介入論理コンポーネント302において必要とされる変数は、検出論理コンポーネント301に基づいて、及び同じようにCANバスを介して、介入論理コンポーネント302に利用可能とされている。検出論理コンポーネント301によって生成された変数と、介入論理コンポーネント302によって生成された変数の両方が、CANバスに出力される。この変数の出力は、各場合に、各論理要素に含まれる適切なインターフェイスを介して、行なわれる。
【0072】
以下、図4を参照して、検出論理コンポーネント301を機能させる方法について、説明する。検出論理コンポーネント301は、連結車104の横転運動が生じているかどうか、すなわち、連結車104のトレーラ102の横転運動が生じているかどうかを検出するのに用いられる。この目的のために、異なる車両変数が評価される。特に、ヨー角速度、かじ取り角、及び車両が評価される。
【0073】
連結車104の横転運動の生成、従って、トレーラ102の横転運動の生成が検出され得る基準は、一般的に、以下のように、定式化され得る。すなわち、車両速度が関連する閾値以上である連結車104の作動状態が、考察される。この閾値は、ここでは、臨界速度未満である。もし、運転手がハンドルを作動させず、従って、いかなる操舵介入をも実施していなくても、ヨー角速度がこの作動状態において振動挙動を示すなら、これは、連結車104の横転運動、従って、トレーラ102の横転運動、従って、連結車の不安定な状態が生じていることを示す目安になる。これは、連結車104の横転運動が生じているかどうかを検出するために、車両速度、ヨー角速度、及びかじ取り角を評価するのが適切である、ことを意味している。
【0074】
横転運動は、臨界速度未満の速度の連結車104において生じ得るが、前記横転運動は、再び、自動的に消散されるので、車両速度が臨界速度に達しない作動状態において、本発明の方法によって実施されるような安定化介入は不必要である、と前提とすることができる。他方では、もし連結車が臨界速度を超えるなら、連結車の横転運動は増大し、この理由から、適切な安定化介入が、この作動状態において実施される。
【0075】
図4から明らかなように、異なる変数が、検出論理要素301に送給される。まず第1に、これらは、変数Delta_Gier_PID、変数LW_Diff、及び変数vから成る、評価されるべき変数である。変数Delta_Gier_PIDは、図5aと関連して述べられるブロック401において、ヨー角速度の関数として決定される。変数LW_Diffは、図5dと関連して述べられるブロック402においてかじ取り角の関数として決定される。変数vは、参照速度とも呼ばれる連結車104の速度である。第2に、これらの変数は、Erk_Delta_Gier_PID、Erk_Delta_Gier_PIDa、Erk_LW_Diff、Erk_LW_Diffa、及びErk_Vである。これらの変数は、設定可能で、閾値の機能を有し、前述の変数Delta_Gier_PID、変数LW_Diff、及び変数vが比較されるパラメータを表している。
【0076】
図4の2つの説明部分から明らかなように、2つの質問が検出論理要素301においてなされる。A1によって示され、連結車104が生じているかどうかを検出するための第1の質問が、行なわれる。この第1の質問において、もし、変数Delta_Gier_PIDが閾値Erk_Delta_Gier_PID以上であり、同時に変数LW_Diffが閾値Erk_LW_Diffよりも小さく、同時に車両速度Vが閾値Erk_V以上である場合、連結車104の横転運動が生じている。もし、横転運動が生じていると検出された場合、安定化介入が必要であり、この理由から、フラグStab_Erk_Pが設定される、すなわち、このフラグに値1が割り当てられる。
【0077】
加えて、A2によって示され、横転運動が減衰したかどうかを検出するための第2の質問が、行なわれる。この第2の質問によれば、もし、変数Delta_Gier_PIDが閾値Erk_Delta_Gier_PIDaよりも小さいか、又は変数LW_Diffが閾値Erk_LW_Diffa以上である場合、連結車104の横転運動はもはや生じていない。もし横転運動がもはや生じていないことが検出された場合、安定化介入はもはや必要ではない。この理由から、フラグStab_Erk_Pは消去され、このフラグに値0が割り当てられる。
【0078】
2つの質問A1及びA2から明らかなように、異なる閾値が2つの変数Delta_Gier_PIDとLW_Diffに対して用いられ、その結果、ヒステレシス機能が果たされる。
フラグStab_Erk_Pは、検出論理要素301に出力され、従って、この要素に対して利用可能であり、この要素において、このフラグはさらに処理される。特に、それは、介入論理要素302に対して利用可能である。
【0079】
検出論理要素301に必要な異なる変数を決定する方法について、図5a、5b、5c、及び5dを用いて説明する。図5a、5b、5cは、変数Delta_Gier_PIDがいかに決定されるかを示している。
【0080】
図5aによれば、まず第1に、ヨー角速度センサを用いて測定されるヨー角速度の実値GIER_ROH、第2に、運転手による所定の値から決定されるヨー角速度の設定値Gier_Statが、変数Delta_Gier_PIDを決定するための手段に入力される。実値GIER_ROHは、CANバスを介して利用可能とされ、設定値Gier_Statは、ブロック501において決定される。下流のバンドパスフィルター503に送給される差分Delta_Gierは、差分生成器502によって、これらの2つの変数から生成される。
【0081】
図5bのブロック501の説明図から明らかなように、設定値Gier_Statは、運転手によって設定されるかじ取り角LWと運転手によって設定される車両速度VREFの関数として、数学モデルを用いて決定される。例えば、文献から知られているアッケルマン(Ackermann)の関係が、数学モデルとして、用いられ得る。
【0082】
図5aから明らかなように、差分Delta_Gierは、0.5Hzから2Hzの範囲の周波数にある信号のみを伝達するバンドパスフィルター503に送給される。この周波数範囲は、連結車104の横転運動の代表的な周波数範囲に相当し、これは、連結車104の自然な周波数範囲とも呼ばれる。差分Delta_Gierは、その意味から、牽引車101に配置されてヨー速度を制御する目的を有するダイナミック運動システム(ESP)の制御エラーであるが、この差分Delta_Gierが、バンドパスフィルターを用いて、生じ得る連結車104の横転運動が検出され得るための後続の評価のために、このようにフィルター処理される。もし連結車104が横転している場合、バンドパスフィルター処理の後、経時的に変化して振動の形態にある信号が現れる。前記信号は、一般的に、純粋な正弦曲線又は余弦曲線の振動である。バンドパスフィルター503を用いて決定された信号Delta_Gier_BPは、下流のブロック504に送給される、このブロック504の機能は、図5cを用いて、後述する。
【0083】
変数Delta_Gier_BP、すなわち、バンドパスフィルター503によって準備されたフィルター処理された制御エラーは、図5cに示されるユニットを用いて、さらに処理され、連結車104の横転運動を検出するのに用いられる変数Delta_Gier_PIDを作成する。同時に、この変数は、前輪に送給されるべき基本圧力を決定するのに、用いられる。制御エラー、すなわち、関連する設定値に対するヨー角速度の実値の偏差を評価することは、ヨー速度センサを用いて測定された信号、すなわち、ヨー速度の実値を単純に評価するのに対して、以下の利点を有する。すなわち、制御エラーを評価することによって、例えば、運転手にとって望ましく、連結車の不安定さが存在せず、従って、安定化介入の必要もないジグザグに縫うように進む回転運動を検出することができる。
【0084】
最初に、信号Delta_Gier_BPの絶対値が、ローパスフィルター505を用いて、決定される。因子Erk_Pを掛け算することによって、比例成分が得られ、これは、横転運動がいかに強いかを検証するのに用いられ得る。比例成分は、混乱が連結車に作用した後に著しい大きさの振動が生じたかどうかを示す。さらに、ローパスフィルター505を用いて生成された絶対値は、絶対値の信号の経時的偏差が作成されるブロック506に送給される。ブロック506で生成された信号に、因子Erk_Dが掛け算され、その結果、横転運動が増加しているか又は減少しているかどうかを検証することができる微分成分が得られる。微分成分は、連結車に作用する短期の混乱、例えば、突風による不安定さも示す。代替的に、ローパスフィルター505を用いて生成された絶対値が、それが積分されるブロック507に送給されるようにすることもできる。ブロック507において決定された信号に、因子Erk_Iを掛け算することによって、以下の意味を有する積分成分が得られる。すなわち、例えば、連結車が、臨界速度に近い速度で走行しているとき、連結車の連続的な小さい横転が生じることが可能であることを意味する積分成分が得られる。このような横転挙動は、積分成分を用いて、検知される。もし積分成分が所定値を超えた場合、これは、この少ない横転プロセスがすでに比較的長い時間にわたって生じていたことを示し、この理由から、それをなくすために、安定化介入が必要であり、実施もされる。積分成分は、必ずしも本発明による方法に設けられる必要がなく、従って、任意であると考えられる。
【0085】
その後、比例成分と微分成分、及びもし存在しているなら、積分成分は、組み合わされ、信号Delta_Gier_PIDを生成する。ブロック504から出力された信号Delta_Gier_PIDは、更なる処理のために、検出論理要素301及び図8bに示される要素805に送給される。
【0086】
図5dは、変数LW_Diffを決定する方法を示している。変数LW_Diffは、連結車104の横転運動が生じているかどうかが決定されるとき、検出論理要素301においても評価される。何故なら、ヨー角速度のみ又はヨー角速度の関数として決定される変数の評価は、余りにも不正確だからである。もしかじ取り角も一緒に評価されないなら、連結車104の横転運動による不安定さと、運転手によって意図的に始動されるジグザグに縫うように進む回転運動との差を、操舵介入によって識別することは不可能であろう。図5dの説明図によれば、まず、経時的なかじ取り角の導関数がブロック508において生成され、次いで、前記導関数がブロック509においてローパスフィルター処理されるように、かじ取り角は評価され、従って、変数LW_Diffが決定される。これらの手段は、重要でない運転手の小さい操舵運動をフィルターによって取除く。
【0087】
図6の説明図は、介入論理要素302の構造を示している。図から明らかなように、連結車104を安定にするために、2種類の介入、すなわち、一方では、主として、ブロック602を用いてもたらされるブレーキ作動介入と、他方では、補助的に、必要に応じて、ブロック601を用いてもたらされるエンジン介入が実施される。図7aは、ブロック601の実施、従って、エンジン介入を実施するための作動信号が決定されるときの手順を示している。図示される回路は、以下の機能を有している。すなわち、もし、フラグStab_Erk_Pが、連結車104の横転運動が存在するのと同じ意味を有する値1の場合、信号EIN_M_ESP_MOTの値はこの点において運転手によって予め定められたエンジントルクに対応するが、その信号EIN_M_ESP_MOTは、値EIN_M_ESP_MOT_WERTと見なされる。その結果、エンジントルクは、牽引車101の被駆動輪に周方向力が全く生じないか又は零に近い周方向力が生じるように、低減される。値EIN_M_ESP_MOT_WERTは、例えば、駆動伝達系の効率の程度及び/又は選択されたギア速度及び/又は牽引車の牽引トルクの関数として、決定される。もし、フラグStab_Erk_Pが、検討している状況下においてもはや横転運動が存在しないのと同じ意味を有する値0の場合、信号EIN_M_ESP_MOTは、値AUS_M_ESP_MOT_WERTと見なされる。その結果、駆動トルクは、再び、運転手によって予め定められた値に従って、設定される。これに関連して、駆動トルクの移行は、その移行が運転者に悪影響を与えないように、適切に選択された移行機能を用いて、行なわれる。
【0088】
図7bは、ブロック602の実施、及びブレーキ作動介入を行なうための作動信号が決定されるときの手順を示している。2つのブロック701と702が、前輪103vl、103vrに対する安定化ブレーキ作動介入を行なうための作動信号を決定するのに、用いられ得る。ここで、これらのブロック701と702の役割は、以下のように、割り当てられる。すなわち、右側の前輪103vrに対する作動信号は、ブロック701を用いて決定され、左側の前輪103vlに対する作動信号は、ブロック702を用いて決定される。後輪103hl、103hrにおいてブレーキ作動介入を行なうための作動信号は、2つのブロック703と704を用いて決定される。
【0089】
図7bに示されるブロック701、702、703、及び704は、車両の車輪に対して、ブレーキ圧力を個別に送給するように用いられ得る。このようにして、基本圧力又は基本力、及び圧力ピーク又はダイナミック力は、前輪103vl、103vrに設定され得る。さらに、ブレーキ圧力は、連結車の所定の作動状態において、必要に応じて、前輪と後輪との間で分配されるようにすることもできる。
【0090】
ヨー加速度Gier_Beschlが、ブロック705を用いて決定される。この目的のために、このブロックに送給された信号GIER_ROHがまずローパスフィルター処理される。次いで、経時的にローパスフィルター処理された信号の導関数が生成され、この経時的導関数そのものがローパスフィルター処理される。次いで、このプロセスにおいて生成された信号Gier_Beschlは、ブロック705から出力され、例えば、ブロック701と702に送給される。さらに、信号グループStab_Erknに含まれるフラグStab_Erk_P及び変数Delta_Gier_PIDも2つのブロック701と702に送給される。
【0091】
以下、2つのブロック701と702の構造について、図8a、8b、及び8cを用いて、説明する。まず、これらのブロックの詳細について、説明する。次いで、これらの2つのブロック703と704の実施に関する詳細について、説明する。
【0092】
図8aは、左側の前輪103vlに対してブレーキ作動介入を行なうための作動信号EIN_P_SOLL_VLを決定するブロック702の構造を示している。右側の前輪103vrに対して割り当てられたブロック701の構造も同じである。これは、図8bと8cの説明図にも当てはまる。
【0093】
図8aの説明図は、作動信号が2つの成分、すなわち、ブロック801において決定される基本圧力又は基本力を設定するための第1成分と、ブロック802において決定される圧力ピーク又はダイナミック力を設定するための第2成分から成る。これら2つの成分は、加算要素804において、加算される。ブロック803は、この加算信号を制限するのに用いられる。この手段は、前輪103vl、103vrに設定されるべきブレーキ圧力が、各ブレーキシステムに対して予め定められた値を越さないことを確実にする。制限された加算信号は、作動信号EIN_P_SOLL_VLとして出力される。
【0094】
図8bは、ブロック801の構造、及び基本圧力を設定するための作動信号の成分が決定されるときの手順を示している。図8bの説明図から明らかなように、この成分は、変数Delta_Gier_PIDに比例する。すなわち、この成分は、ヨー角速度に対して存在する偏差の関数として決定される。変数Delta_Gier_PIDに比例するので、基本力は、比較的過酷な振動の場合に増大し、この場合、P成分がより大きい。同じことが、減衰されていない振動にも当てはまる。
【0095】
もしフラグStab_Erk_Pが値1を有し、連結車104の横転運動が生じている場合、乗算器805において、変数Delta_Gier_PIDとEin_Basis_Druck_VLの積として生成された信号が、出力される。変数Ein_Basis_Druck_VLは、適用される利得因子であり、この利得因子は、ブレーキシステムの構成に依存し、好ましくは、70バールから140バールの範囲内の一定値を有する。もし、一方において、フラグStab_Erk_Pが値0を有する場合、所定の小さい値を有する信号Aus_Basis_Druckが出力され、これによって、ブレーキ圧力を送給する。これは、もし横転運動が存在しない場合、ブレーキ圧力の不注意な送給が生じないことが確実になることを、意図している。出力される信号は、ブロック806を用いて、平滑化される。
【0096】
図8cは、ブロック802の構造、及び圧力ピークを設定するための作動信号の成分が決定されるときの手順を示している。図8cの説明図から明らかなように、この成分は、変数Gier_Beschl_TP、従って、ヨー加速度に比例する。すなわち、圧力ピークを生成するための作動信号の成分は、ヨー加速度の関数として決定される。横転運動から生じるヨーモーメントは、ヨー加速度に比例するので、横転運動に対して逆位相のヨーモーメントを生成することを可能とするために、どちらの前輪がブレーキ作動されるべきかに関する情報が利用可能となる。ブロック702において、前記ブロックに送給される信号Gier_Beschlのローパスフィルター処理によって、変数Gier_Beschl_TPが得られる。
【0097】
もしフラグStab_Erk_Pが、連結車104の横転運動が生じていることと同じ意味を有する値1を有する場合、ブロック807によって利用可能とされ、圧力ピークをもたらす作動信号の成分が、出力される。さもなければ、値0が出力される。
【0098】
2つの変数Gier_Beschl_TPとEin_Dyn_VLの積が、乗算器808を用いて、決定される。変数Gier_Beschl_TPに変換因子を構成する変数Ein_Dyn_VLを乗算することによって、物理的にヨー加速度に対応する変数Gier_Beschl_TPは、物理的に圧力に対応する変数P_Brems_VLに変換される。変数P_Brems_VLは、ブロック807に送給される。
【0099】
ブロック807を用いて、信号P_Brems_VLに基づく信号が決定され、出力される。前記信号は、左側の前輪において、勿論、右側の前輪において実施される対応するブレーキ作動介入と関連して、横転運動を相殺するヨーモーメントを生成するブレーキ作動介入を実施するのに用いられる。
【0100】
すでに説明したように、信号Gier_Beschl_TPは、ヨー加速度に対応する。数学的な観点から、この信号は、図2に示されるヨー角速度の形状1の経時的導関数を構成する。明確さを期すために、ヨー加速度の信号形状は、図2において示されていない。しかし、この信号は、実質的に、90°だけずれ、ヨー角速度の信号よりも進角している信号である。信号Gier_Beschl_TPと信号P_Brems_VLの両方は、振動挙動を示す。
【0101】
振動信号P_Brems_VLに基づいて、左側の前輪に正確な位相のブレーキ作動介入を実施するのに用いられる信号を生成することを可能にするために、ブロック807は、以下のように機能する比較器として実施される。
【0102】
本発明の例示的実施形態の範囲内において、ブロック807は、信号P_Brems_VLの正の信号成分を出力することのみを意図している。この目的のために、信号P_Brems_VLは、ブロック807において、比較変数Ein_Dyn_Richt_VLと比較される。もし信号P_Brems_VLが比較変数Ein_Dyn_Richt_VLの値であるか又はこの値を超えている場合、信号P_Brems_VLの余分の成分がブロック807から出力される。比較変数Ein_Dyn_Richt_VLの値に達しない信号P_Brems_VLの成分は出力されず、その代わりに、ブロック807は、信号0を出力する。
【0103】
比較変数Ein_Dyn_Richt_VLは、好ましくは、値0を有する。この値の定義から、信号P_Brems_VLの正の半波長が、ブロック807を用いて出力され、負の半波長が抑制される。ブロック807を機能させる方法は、それが2つの変数P_Brems_VLとEin_Dyn_Richt_VLの最大値を出力するような方法によって、記載されるようにすることも可能である。
【0104】
ブロック701において右側の前輪103vrに対して用いられるブロック802は、その構造に関して、図8cに示されるものに対応するが、右側の前輪103vrに用いられる因子Ein_Dyn_VRは負であるという違いがある。この結果、圧力ピークを右側の前輪103vrにおいて生成される作動信号を決定するため、信号Gier_Beschl_TPに含まれる負の半波長が、右側の前輪103vrに対して考慮され、正の半波長は、フィルター処理によって除去される。
【0105】
要約すると、信号Gier_Beschl_TPの正の半波長は、左側の前輪103vlに対して考慮され、前記信号の負の半波長は、右側の前輪103vrに対して考慮されることに留意するべきである。
【0106】
2つのブロック701と702の作動方法について説明したが、この後、図7bに示される2つのブロック703と704について説明する。
【0107】
ブロック703は、牽引車に配置されてその牽引車のヨー角速度を制御するためのESPシステムを構成している。このESPシステムは、牽引車の個々の車輪の速度、かじ取り角、横方向加速度、及びヨー角速度を検知するセンサ手段を有している。車輪速度とかじ取り角の関数として決定される車両速度を用いて、ヨー角速度用の設定値は、数学的モデルによって決定される。前記設定値は、ヨー角速度用に決定された実値と比較され、偏差が存在するとき、安定化のための車輪に固有のブレーキ作動介入とエンジン介入とが実施される。ブレーキ作動介入は、牽引車に作用するヨーモーメントを生成するのに用いられ、牽引車の過剰又は不足操舵の走行挙動を補償する目的を有している。エンジンによって出力されるエンジントルクは、最終的に車両速度の減少をもたらすエンジン介入を用いて、低減される。
【0108】
ESPシステム703から出力された信号S_ESPは、ブロック704に送給される。信号S_ESPは、とりわけ、ESPシステムによって決定されて安定化ブレーキ作動介入を実施する目的を有する作動信号、及びブロック704において、とりわけ、連結車の作動状態を決定するのに必要とされる更なる信号を含んでいる。具体的に、これらの更なる信号は、以下の信号である。すなわち、連結車の長手方向の加速度を示す変数;連結車が移動している路面の摩擦係数を示す変数、この変数は、例えば、横方向加速度を示す変数と長手方向の加速度を示す変数に基づいて、評価される;及び、運転手のブレーキ作動要求を表す変数、ブレーキペダルの作動を表す変数、及び/又は運転手によって設定されるブレーキ圧力を表す変数である。さらに、フラグStab_Erk_Pとブロック701と702を用いて生成される作動信号EHB_Eingriff_Vが、ブロック704に送給される。
【0109】
フラグStab_Erk_Pが、連結車に対して横転運動が生じていないのと同じ意味を有する値0を有している限り、ESPシステム703から生成された作動信号は、信号EHB_Eingriffとして出力される。フラグStab_Erk_Pが、連結車に対して横転運動が生じているのと同じ意味を有する値1を有するやいなや、ブロック701と702において前輪に対して生成された信号EHB_Eingriff_Vと後輪に対する作動信号が、信号EHB_Eingriffとして出力される。前記作動信号は、後輪にそれぞれの作動状態に対応するブレーキ作動介入を実施する。後輪に対する作動信号は、ブロック704において、生成又は修正される。
【0110】
ここで、ESPシステムに含まれる下位のアンチロックブレーキシステムの機能は、表面に出ずに永久的に存在していることに留意すべきである。車輪がロックされる傾向が検出されるやいなや、ブレーキ圧力を低減させるために、適当にブレーキ作動介入がなされる。
【0111】
図9に示される詳細について、以下に説明する。前記の図は、本発明による装置、及び本発明による装置で実施される本発明による方法の不可欠なステップの略図を示すブロック回路図の形態にある。ここで、ブロック301、302、401、及び402の機能又は構造に関する説明は、すでに詳細に説明したので、ここでは、さらに詳細には行なわない。
【0112】
以下の変数、すなわち、ブロック401から出力された変数Delta_Gier_PID及びブロック402から出力された変数LW_Diffが、検出論理要素301に送給される。さらに、ブロック901から出力された車両速度である変数Vが、検出論理要素301に送給される。ブロック901は、牽引車101の個々の車輪に割り当てられた車輪速度センサ、及び車輪速度センサによって入手可能な信号を変数Vに変換するための適切な手段から成る。供給されたこれらの変数の効用として、検出論理要素301は、横転運動が連結車104のために生じているかどうかを検出する。もし横転運動が生じていることが検出された場合、検出論理要素301は、フラグStab_Erk_Pに対して値1を出力する。値1がフラグStab_Erk_Pに対して与えられている場合、変数MOT_Eingriff及びEHB_Eingriffが、介入論理要素302において決定され、ブロック902に送給される。安定化ブレーキ介入が、組み合わされて変数EHB_Eingriffを生成する個々の作動信号を用いて、実施される。この目的のために、牽引車101の個々の車輪に直接的に割り当てられたブレーキアクチェータがこれらの作動信号によって作動され得るか、又はこれらの作動信号は、牽引車101のブレーキシステムに割り当てられた制御装置に送給される。さらに、エンジン介入は、変数Mot_Engriffを用いて、なされる。ブロック902は、牽引車のブレーキアクチェータ及び/又はブレーキシステムに割り当てられた制御装置及び/又はエンジン介入を実施するためのアクチェータを備える。
【0113】
車両は、油圧、電気油圧、空圧、電気空圧、又は電気機械ブレーキシステムを備えることができる。重要な因子は、このブレーキシステムが、特にブレーキ力が個々の車輪に加えられ、保持され、又は低減されるように、運転手とは無関係に、車両に固有のブレーキ作動介入を実施するのに用いられ得る、ことである。この条件は、例えば、ダイナミック運動システム(ESP)を備える今日車両で用いられているようなブレーキシステムによって、実現される。このようなダイナミック運動システムは、ヨー角速度を制御することによって、車両をその垂直軸を中心として安定にするために、用いられる。
【0114】
安定化ブレーキ作動介入に加えて又はその代わりに、もし車両が対応する作動システムを有している場合、安定化操舵介入を実施することもできる。これらの操舵介入は、前記操舵介入が連結車の横転運動を相殺するヨーモーメントを生成するように、安定化ブレーキ作動介入による正確な位相で実施されねばならない。
【0115】
本発明による方法及び本発明による装置と関連して検討される連結車は、例えば、牽引車とトレーラ、例えば、トレーラハウス、車輸送トレーラ、又はボートトレーラから成る乗用車の分野におけるコンビネーションであることが意図されている。しかし、本発明による方法と本発明による装置を、牽引車とセミトレーラ又はポールトレーラから成る実用車の分野における連結車に用いることも考えられる。
【0116】
横転運動の問題が連結車において大幅に生じ、個々の車両におけるよりもこのようなコンビネーションにおいてより大きい危険をもたらすので、本発明による方法及び本発明による装置を、連結車に関連して限定的に説明したが、ここで、本発明による方法及び本発明による装置は、個々の車両に対しても使用され得ることに留意すべきである。
【0117】
結論的に、本発明による方法及び本発明による装置が基づく着想について、すでに存在する先行技術を考慮せずに、もう一度、要約すると、本発明による方法は、牽引車とトレーラから構成される連結車を安定にする方法であって、少なくとも1つのダイナミック運動モーメントの入力変数が測定及び評価され、もし不安定なダイナミック運動状態が上記の評価によって検出された場合、連結車のダイナミック運動状態を安定にするためのブレーキ作動介入及び/又はエンジン介入が、牽引車に対してもたらされる方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明による方法の基本的な手順を説明するための不安定な連結車の2つの検測状況を示す。
【図2】本発明による方法と関連して重要な種々の変数の信号形状を線図の形態で示す。
【図3】本発明による方法が基づく作動の方法を機能的ブロック図の形態で示す。
【図4】本発明による方法に用いられる検出論理を機能化する方法を機能的ブロック図の形態で示す。
【図5a】検出論理における種々の変数の決定を機能的ブロック図の形態で示す。
【図5b】検出論理における種々の変数の決定を機能的ブロック図の形態で示す。
【図5c】検出論理における種々の変数の決定を機能的ブロック図の形態で示す。
【図5d】検出論理における種々の変数の決定を機能的ブロック図の形態で示す。
【図6】本発明による方法に用いられる介入論理の構造を機能的ブロック図の形態で示す。
【図7a】ブレーキ作動介入とエンジン介入を実施するための作動信号を決定するための介入論理の要素を機能的ブロック図の形態で示す。
【図7b】ブレーキ作動介入とエンジン介入を実施するための作動信号を決定するための介入論理の要素を機能的ブロック図の形態で示す。
【図8a】ブレーキ作動介入を実施するための作動信号を決定するときの手順を機能的ブロック図の形態で示す。
【図8b】ブレーキ作動介入を実施するための作動信号を決定するときの手順を機能的ブロック図の形態で示す。
【図8c】ブレーキ作動介入を実施するための作動信号を決定するときの手順を機能的ブロック図の形態で示す。
【図9】一方で、本発明による装置の略図、他方で、本発明の装置で行なう本発明の方法による不可欠なステップをブロック回路図の形態で示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、連結車を安定にするための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
連結車は、速度が大きくなるにつれて、横転運動を生じやすい現象を呈する。
【0003】
簡単にするために、本発明の方法又は本発明による装置を用いて除去し得る連結車の不安定な状態を示すのに、以下、横転運動という用語が用いられる。これは、限定することを意図していない。振り子運動または振動運動という2つの用語も、前述の状態を示すのに、用いられ得る。
【0004】
ここで、横転運動という用語によって理解されるべきことについて、まず説明すると、もし連結車が横転運動を受けた場合、トレーラはその垂直軸を中心として振動し、また、トレーラの連結棒を介して、牽引車に振動を励起する。もし車両の速度が臨界速度と呼ばれる速度よりも低い場合、この振動は減衰される。もし車両の速度が臨界速度と等しい場合、振動は減衰されない。もし車両の速度が臨界速度よりも高い場合、励起された振動は、もはや自動的に減衰せず、互いに強め合う。連結車は、その横方向運動において、ますます大きい揺れを受け、これによって、状況によっては、事故が生じ得る。横転運動の励起は、例えば、地面の隆起を乗り越える走行の結果として、又は横風の影響の結果として、特定の運転状況下において、運転手によってなされる不適切な操舵介入によって、生じることがある。
【0005】
臨界速度の値は、とりわけ、車軸間距離及び牽引棒のような幾何学的なデータ、牽引車及びトレーラの質量とヨー慣性モーメント、並びにタイヤ及び/又は車軸の斜め走行の剛性に依存する。臨界速度の値は、乗用車の分野における連結車の場合、典型的には、70km/hから130km/hの範囲内において、変動する。横転運動の周期は、略0.5Hzから2Hzの間にある。
【0006】
もし横転運動が生じると、実質的に周期的な横方向運動が、トレーラを牽引する牽引車に生じる。前記横方向運動は、例えば、牽引車の横加速度又はヨー角速度で表される。その結果、横転運動中に、横加速度又はヨー速度の実質的に周期的な信号が生じる。これは、厳密に周期的な振動現象ではない。何故なら、連結車は、理想的な振動システムを構成しないからである。その代わりに、トレーラの振動運動の周期長さの一時的な変動が生じ得る。これらは、例えば、横加速度センサによって生成される繰り返し又は実質的に周期的な信号で表される。すなわち、この信号は、小さな範囲で変化するが、理想的には、経時的に一定と考えられる周期長さを有している。同じことがヨー速度センサの信号にも当てはまる。
【0007】
同様に、横転運動から生じるヨーモーメントを補償するために付加されるヨーモーメントも、厳密には周期的ではない。付加されるヨーモーメントの周期長さも、連結車の横転運動又は振動運動の周期の変動に従って変化される。
【0008】
連結車を安定にするための方法及び装置は、先行技術による多数の変形例から知られている。
【0009】
例えば、非特許文献1は、連結車を安定にするための装置を記載している。この装置によって、その特定の連結車の特性とは無関係に生じる振動と走行速度が検出され、ある制限値を超えた場合、連結車は、牽引車のアクティブブレーキ作動によって、安全な走行状態に再び復帰され得る。振動の検出は、実質的に、測定されたヨー速度の解析に基づいている。ヨー速度は、0.5Hzから1.0Hzの周波数帯域の大きさを有するバンドパスフィルタによって、フィルター処理され、このフィルター処理された信号の振幅が決定される。このヨー振幅に基づいて、ブレーキ作動介入が連結車を安定にするのに必要であるかどうかが判断される。ヨー振幅の瞬間的な値に加えて、ヨー振幅の経時的な挙動も評価される。もし連結車の不安定な状態が検出された場合、振動運動が十分に減衰されるまで、圧力を積極的に増大させることによって、牽引車は、その4つの車輪の全てが対称的にブレーキ作動される。この目的のために、減速の一定の設定値が予め定められ、前記値は、減速制御装置によって設定される。同時に、駆動トルクが零に制限される。対称的なブレーキ作動介入に加えて、ヨー速度制御装置に基づく車輪に固有のブレーキ作動介入も振動運動中に実施され、対称的なブレーキ作動介入に重畳されるようにすることもできる。
【0010】
特許文献1は、連結車の横方向安定性を改良するための方法を記載している。この方法によれば、もしダイナミック横方向車両変数、例えば、ヨー角速度の横方向加速度の振幅が、所定の周波数帯域内で振動し、同時に制限値を超えた場合、車両を減速させる対策が取られる。車両を減速させる対策は、駆動トルクを低下させるためのスロットル弁の開口の角度を減少させるための介入、及び/又は牽引車の前輪と後輪にブレーキ圧力を送給するための介入である。
【0011】
特許文献2は、車両の振動運動を検出するための方法及び装置を記載している。車両はエンジンによって出力されるトルクに影響を与える手段と、車両の車輪に割り当てられるブレーキとを備えている。振動運動が検出されたとき、車両の速度を低下させるために、エンジンから出力されるトルクに影響を与える手段とブレーキが作動される。前記手段と前記ブレーキは、同程度に作動される。代替的に、車両の振動運動が検出されたときに、車両に作用して振動運動を相殺するヨーモーメントが結果的に生じるように、車両ブレーキを個別に作動させる対策もある。
【0012】
特許文献3は、連結車を安定にするための方法及び装置を記載している。もし横転運動が検出された場合、安定化介入が実施される。第1の手順において、正確に位相が合わされたブレーキ作動介入が、牽引車のブレーキに実施される。同時に、トレーラのブレーキが均一に作動される。牽引車における正確に位相が合わされたブレーキ作動介入に対する代替案として、対応する操舵介入を行なうこともできる。第2の手順として、トレーラのみが選択的にブレーキ作動される。
【0013】
特許文献4は、連結車を安定にするための方法及び装置を記載している。もし連結車の横転運動が検出された場合、その横転運動とは実質的に逆位相の実質的に周期的なヨーモーメントが付加される。このヨーモーメントは、路上走行車を自動的にブレーキ作動することによって、付加される。この場合、異なるブレーキ作動力が、路上走行車両の片側がブレーキ作動されるように、路上走行車の両側に付加される。実質的に周期的なヨーモーメントの付加の後、及び/又はそれに加えて、路上走行車は、トレーラの超過制動が引き起こされるように、自動的に短期間だけブレーキ作動される。この短いブレーキ作動は、牽引車の車両ブレーキに介入することによって、又は駆動トルクを低下させることによって、実施され得る。車両の機器のレベルに依存して、異なるブレーキ作動介入が実施される。もし車両がヨー速度制御装置(ESP、FDR)を備えている場合、実質的に周期的なヨーモーメントを付加するために、牽引車の車輪の全てが個別にブレーキ作動され得る。さらに、トレーラの超過制動が始動されるように、車輪の全てが同時にブレーキ作動されるか、又はエンジン出力が対応するエンジン介入によって低減され得る。もし車両が後輪駆動又は全車輪駆動で、牽引制御装置(TCS)を備えている場合、実質的に周期的なヨーモーメントは、後車軸へのブレーキ作動介入によって、付加され得る。もし対照的に、車両が前輪駆動で、牽引制御装置(TCS)を備えている場合、前述の安定化は利用され得ない。この場合、可能であるのは、牽引車の車輪の全てをブレーキ作動することだけである。アンチロックブレーキシステム(ABS)を備えるだけの車両の場合においても、連結車を安定にするために、牽引車の車輪の全てがブレーキ作動され、これによって、同時に、トレーラの超過制動の始動がもたらされる。
【0014】
特許文献5は、連結車のダイナミック運動状態を安定にするための方法及び装置を記載している。もし不安定なダイナミック運動状態が検出された場合、牽引車の長手方向の速度が、牽引車のエンジン及び/又はブレーキへの介入によって、低減される。牽引車の長手方向の速度を低減させるための介入の代替案として、牽引車の片側へのブレーキ作動介入を実施することも可能であり、これによって、曲げ角度の減少がもたらされる。
【0015】
先行技術によって知られている連結車を安定にするための方法又は装置の欠点は、ブレーキ作動介入が主に、すなわち、限定的に後輪に対して実施されるか、又は前輪と後輪が常に一緒に、すなわち、同時に、特に均一又は個別に、ブレーキ作動される点にある。この種のブレーキ作動介入は、長手方向力、すなわち、周方向力を後輪に生じさせ、これは、同時に横方向案内力(コーナリングフォース)をもたらす。この横方向案内力は、横転運動している連結車の場合、前記コンビネーションを安定にするのに必要とされる力である。換言すれば、後輪へのこれらのブレーキ作動介入は、前記車輪における潜在的な横方向案内力を低減させる。もし路面の状態が、例えば、低摩擦係数の路面(湿った、雪に覆われた、又は氷に覆われた路面)の状態に対応している場合、これによって、安定化のためになされたブレーキ作動介入が連結車の不安定な挙動をなくすことが実質的に意図されているにもかかわらず、連結車の不安定な挙動の振幅、すなわち、連結車の横転運動の増大がもたらされる。
【0016】
【特許文献1】独国特許出願公開第195 36 620 A1号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第100 31 266 A1号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第100 34 222 A1号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第199 64 048 A1号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第100 07 526 A1号明細書
【非特許文献1】「自動車の定期雑誌(Automobiltechnischen Zeitschift(ATZ)」104、2002、4号の330〜339ページに記載されている「BMW X5のアクティブ連結車安定化(Aktive Gespannstabilisierung beim BMW X5]
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
この背景技術に対して、以下の目的、すなわち、連結車を安定にする既存の方法及び装置が改良されるべきであるという目的が、当業者には生じている。
【0018】
とりわけ、連結車を安定にするための介入が実施されている期間中、連結車を安定にするのに十分に高い潜在的な横方向案内力が、牽引車の主に後輪において存在するか又は確保されることが、意図されている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この目的は、請求項1に記載の方法及び請求項29に記載の装置によって、達成される。
【0020】
前記目的を実施するために提案される連結車を安定にするための方法において、少なくとも1つのダイナミック運動の入力変数が測定及び評価される。もし連結車の横転運動がこの評価によって検出された場合、連結車のダイナミック運動状態を安定にする少なくともブレーキ作動介入が、牽引車に対してもたらされる。本発明によれば、連結車の横転運動を相殺するヨーモーメントは、牽引車の前輪に対してもたらされるブレーキ作動介入によってのみ生成される。前輪に対してもたらされるこれらのブレーキ作動介入は、運転手とは無関係になされるブレーキ作動介入である。
【0021】
連結車の横転運動を相殺するヨーモーメントは、前輪に対してもたらされるブレーキ作動介入によってのみ生成されるという事実によって、連結車を安定にするのに必要な潜在的な横方向案内力が、特に後輪において、十分な程度に利用可能であることが確実になる。
【0022】
ここで採用される原理によれば、重要なこの潜在的な横方向案内力が低下しないので、牽引車の後輪へのブレーキ作動介入を実行しなくても済む。すなわち、後輪へのブレーキ作動介入の実行が大幅に省略される。牽引車の後輪に対するブレーキ作動介入は、連結車の所定の作動状態が生じたときのみ、前輪に対する前述のブレーキ作動介入に加えて、許容されるか又はもたらされる。これによって、前輪にもたらされるブレーキ作動効果が永続的に連結車を安定にする、すなわち、減速するのに十分ではない特定の状況において、連結車に作用する全ブレーキ作動効果を増大させ、これによって、減速をもたらし、その結果として、連結車がより安定にされ得る状況をもたらし得ることが確実になる。
【0023】
本発明によれば、各場合において、基本力とダイナミック力成分から成るブレーキ作動力を生じさせるブレーキ作動介入が、前輪に対して、有利にもたらされる。振動ブレーキ作動介入と呼ばれるこのようなブレーキ作動介入は、均一又は一定のブレーキ作動力を生成するのみのブレーキ作動介入と比較して、このような振動ブレーキ作動介入によって、連結車の横転運動を相殺する反ヨーモーメントを生成することができるという利点がある。この反ヨーモーメントは、実質的に、連結車の横転運動とは逆位相にある。反ヨーモーメントは、均一又は一定のブレーキ作動効果を生成させるブレーキ作動介入を用いる場合には、生成され得ない。もし、例えば、車両の全ての車輪が、均一又は一定のブレーキ作動効果が前記車輪に生成されるように、同時にブレーキ作動される場合、これらのブレーキ作動介入によって生成されて車輪に作用するモーメントは、互いに相殺されるので、反ヨーモーメントは、この種のブレーキ作動介入によって、生成され得ない。
【0024】
連結車に作用する減速の増加をもたらすために、後輪に付加的に許容されるか又はもたらされるブレーキ作動介入を用いることが意図されているので、これらのブレーキ作動介入は、それらが実質的に一定のブレーキ作動効果をもたらすように、後輪に対して実施される。後輪に対してなされるブレーキ作動介入の作動の効果が一定でないような調整は、その調整による後輪における横方向案内力の低下をもたらすので、実行されない。
【0025】
後輪への付加的なブレーキ作動効果の付加は、有利には、運転手によって始動又は実施されたブレーキ作動プロセスによって生じた車両の減速の値が維持されるように、実施される。従って、運転手は減速を継続し、それを運転手が察知することができる。運転手とは無関係に実施される安定化介入中、変化し得る減速の結果として、運転手が動揺することはない。
【0026】
運転手によって始動又は実施されるブレーキ作動プロセスは、運転手によるブレーキペダルの作動に基づく、運転手に依存するブレーキ作動と呼ばれるものである。このようなブレーキ作動は、運転手によって設定された初期圧力、又はブレーキライトスイッチによって出力される信号、又はブレーキペダルの偏位を表す信号によって、検知され得る。
【0027】
例えば、もし連結車の横転運動が検出され、同時に、運転者によるブレーキ作動がなく、連結車が低摩擦係数の路面に位置している場合、後輪のためのブレーキ作動介入が許容されるような連結車の所定の作動状態が生じる。すなわち、もし連結車の横転運動が検出され、運転手によるブレーキ作動がなく、連結車が低摩擦係数の路面に位置する場合、後輪に対するブレーキ作動介入が付加的に許容される。この構成において、運転手とは無関係な安定化介入は、必ずしもなされない。その代わりに、もしこのような介入が必要な場合、それらの介入がなされ得ることを確実にするために、予め準備をする必要がある。その結果、必要に応じて、連結車の迅速な安定化が可能である。
【0028】
例えば、もし連結車の横転運動が検出され、同時に、運転者によるブレーキ作動がなく、前輪に対してもたらされるブレーキ作動介入が前輪のロックの危険をもたらす場合、後輪に対してブレーキ作動介入がもたらされるような連結車の所定の作動状態が生じる。すなわち、もし連結車の横転運動が検出され、同時に、運転者によるブレーキ作動がなく、前輪に対してもたらされるブレーキ作動介入が前輪のロックの危険をもたらす場合、後輪に対するブレーキ作動介入が付加的にもたらされる。この構成において、連結車の横転運動によって生じた不安定さに加えて、更なる不安定さ、具体的には、前輪が場合によってロックされることによって生じる不安定さが生じる。この更なる不安定さは、連結車が備えているアンチロックブレーキシステム(ABS)によって、自動的に除去される。この目的のために、前輪に作用するブレーキ作動力を前輪のロックが回避される範囲まで低減又は付加させるように、アンチロックブレーキシステムは、前輪に割り当てられたブレーキアクチュエータを作動させる。連結車を安定にするために前輪に必要なブレーキ作動力は、連結車の当該作動状態においては、単独で加えることができない、すなわち、連結車の著しい減速は、前輪におけるブレーキ作動介入によって生じさせることができないので、対応するブレーキ作動介入が牽引車の後輪にもたらされる。この構成では、連結車の減速、従って、運動エネルギーの低減を実施するために、車輪の全てを同時にブレーキ作動するとよい。
【0029】
前輪がロックする危険があるかどうかについての検出は、例えば、前輪のスリップを評価するか、又は当該作動状態において、ブレーキ作動介入が、少なくとも前輪に対して、この車輪のロックを回避するために、アンチロックブレーキシステムによって実施されることを示すABSフラグを評価することによって、なされ得る。すなわち、前輪の1つがアンチロックブレーキシステムによって車輪スリップ制御を受けているかどうかを確認するための検証を行なうことが適切である。
【0030】
ブレーキ作動介入が後輪に対してもたらされる連結車のさらに他の所定の作動状態が、例えば、もし運転手によって始動又は実施されたブレーキ作動プロセス中に横転運動が検出され、この運転手によって始動又は実施されたブレーキ作動プロセスの結果として生じる車両減速が所定の比較基準を満たす場合に、生じる。すなわち、運転手によって始動又は実施されたブレーキ作動プロセス中に、横転運動が検出され、運転手によって始動又は実施されたブレーキ作動プロセスの結果として生じる車両の減速が所定の比較基準を満たす場合、後輪に対する付加的なブレーキ作動介入がもたらされる。
【0031】
もし生じる車両の減速が所定の閾値よりも小さい場合、運転手によって始動又は実施されたブレーキ作動プロセスの結果として後輪に生じるブレーキ作動の結果は、後輪に対してもたらされるブレーキ作動介入によって、少なくとも部分的に低減される。従って、この手段は、牽引車の後輪における潜在的な横方向案内力が連結車を安定にするのに十分であることを確実にするために、なされる。後輪において生じるブレーキ作動効果のこの損失は、基本力の結果として前輪に生じるブレーキ作動効果によって、補償される。同時に、運転手は、その運転手とは無関係に実施された安定化介入によって、運転手によって設定された減速のいかなる知覚できる変化をも感じないことが確実になる。
【0032】
運転手によって始動又は実施されたブレーキ作動プロセスの結果として後輪に生じるブレーキ作動効果は、好ましくは、この運転手によって始動又は実施されたブレーキ作動プロセスの結果として生じた車両の減速の値が少なくとも維持される範囲まで、低減される。しかし、より高いブレーキ作動効果、従って、より大きい車両の減速を要求することができ、従って、このような効果とこのような減速を設定し得る牽引車に内蔵される安全システム、例えばESPシステムを実現することが意図される。
【0033】
もし、他方で、生じる連結車が所定の閾値よりも大きい場合、運転手によって始動又は実施されたブレーキ作動プロセスの結果として後輪に生じるブレーキ作動効果は、後輪に対してもたらされるブレーキ作動介入によって、少なくとも維持される。この手段は、対応する交通状況の結果として運転手によって必要となり得る強力なブレーキ作動が維持されることを確実にすることが、意図されている。この例として、回避できない後端の衝突が生じた場合、運転手によって望まれ、連結車の運動エネルギーを最小値まで低減することを目的とする連結車の強力なブレーキ作動が、挙げられる。
【0034】
もし、所定の閾値よりも大きい車両の減速が存在するときに、アンチロックブレーキシステム(ABS)が片方の前輪又は両方の前輪に同時になされた場合、後輪に対してもたらされるブレーキ作動介入によって、後車軸における付加的なブレーキ作動効果が増大される。前輪における基本力の低減によるアンチロックブレーキシステムの介入によって生じる減速の低減は、このようにして、補償される。
【0035】
後輪において実施されるブレーキ作動介入に関して、ここで検討されている事柄について、以下の手順も考えられる。すなわち、まず、本発明による方法による基本的な構想に基づいて、ブレーキ作動効果の低減が、対応するブレーキ作動介入によって、まず、後輪において許容される。しかし、もし前輪の少なくとも1つに対するアンチロックブレーキシステムの介入が検知され、同時に、現在の車両の減速が運転手に望まれた車両の減速ではないことが確認された場合、後輪におけるブレーキ作動効果は、対応するブレーキ作動介入によって、再び増大される。
【0036】
もし少なくとも牽引車が、油圧、電気油圧、空圧、又は電気空圧ブレーキシステムを備える場合、前輪に対してもたらされるブレーキ作動介入は、各場合に、基本圧力とダイナミック圧力ピークから成るブレーキ圧力が、前輪に割り当てられた車輪ブレーキシリンダー内に送給される状況をもたらす。この分割は、基本力とダイナミック力成分への前述された分割に対応する。これに関連し、連結車の横転運動を相殺するヨーモーメントが、ダイナミック力成分又はダイナミック圧力ピークによって、生成される。2つの前輪に送給される基本圧力は、その基本圧力が両方の前輪に対称的に送給されるので、各場合に、個々の前輪に関して車輪に作用するモーメントをもたらすが、これらのモーメントは、互いに重畳されたいかなるヨーモーメントも生じない。従って、前輪に送給される基本圧力は、車両のその垂直軸を中心とするいかなる回転をも生じない。
【0037】
基本力の値又は基本圧力の値は、有利には、ヨー角速度の偏差の関数として決定される。この変位は、有利には、ヨー角速度センサを用いて測定されるヨー角速度の実値と数学的モデルを用いて決定されるヨー角速度の設定値との間の差である。ヨー角速度の偏差の関数としての基本力の値又は基本圧力の値の決定は、以下の利点を有している。もし、例えば、設定値が実値から引き算される場合、その設定値は、励起エネルギーに関するゼロラインとして表示され得る一方、実値は、横転している連結車の励起エネルギーを表示する。その結果、この偏差は、安定化ブレーキ作動介入によって低減されるべき励起エネルギーの目安を表す。連結車の横転運動は、臨界速度を超える速度で増大し、従って、それを保障するために安定化ブレーキ介入が必要なので、この偏差は、同時に低減されるべき運動エネルギーの目安でもある。従って、この偏差の値は、実施されるべき、かつ確定されるべきブレーキ作動介入の強さをもたらす。
【0038】
ダイナミック力成分の値又はダイナミック圧力ピークの値は、有利には、ヨー角速度の偏差の経時的変化を示す変数の関数として、決定される。この変数を決定するための種々の手順が可能である。例えば、この変数は、ヨー角速度に対して存在する制御エラーの経時的な偏差、すなわち、ヨーモーメントの実値の関連する設定値からの偏差として決定される。その結果、この変数は、言わば、ヨー角度加速度の実値とヨー角度加速度の設定値との間の偏差に対応する。また、この偏差は、各駆動状況に存在するヨー角度加速度の関連する設定値からの偏差として、直接的に決定され得る。このダイナミック力成分の値又はダイナミック圧力ピークの値が、この変数の関数として決定される理由は、以下の通りである。すなわち、連結車の横転運動から生じるヨーモーメントは、ヨー加速度に比例する。この理由から、横転運動の最も有効な補償が、圧力ピークによって達成され得る。補償を行なうための圧力ピークの送給も、ヨー角速度に比例する。もしヨー角速度の設定値が、値ゼロの場合、ヨー角速度の偏差は、ヨー角速度の実値に対応する。同時に、ヨー角速度の偏差の経時的な変化を示す変数は、ヨー角速度の実値に対応する。
【0039】
横転運動が減少するにつれて、基本圧力とダイナミック圧力ピークの両方が減少するのが有利であることがわかっている。従って、運転手と無関係に実施される安定化介入は、不安定さの程度に適合するようにされている。
【0040】
ブレーキ作動介入に加えて、エンジン介入も有利に実施され、その結果、連結車への良好な減速の効果が達成され得る。エンジンから出力されるトルクは、有利には、周方向力が全く牽引車の被駆動車輪に生じないか又は零に近い周方向力が牽引車の被駆動車輪に生じるように、これらのエンジン介入によって設定される。換言すれば、駆動伝達系に生じる摩擦トルクが補償され、被駆動輪には、周方向力に関してニュートラルの設定が与えられる。すなわち、被駆動輪には、実質的に、周方向力のない設定が与えられる。最後に述べた手段によって、潜在的な横方向案内力が大幅に利用可能になることが確実になる。駆動伝達系を介して被駆動輪に加えられる適切な駆動トルクは、連結車の横転運動の補償の改良を可能にする。車両エンジンの設計に依存して、例えば、エンジン介入は、スロットル弁の位置、又は点火角度、又は噴射量に影響を与える。
【0041】
安定化ブレーキ作動介入が始動された後、有利には、連結車の不安定さが減少したかどうかが確認される。もし連結車が安定状態に再び達したことが、プロセスにおいて、検出された場合、更なる安定化ブレーキ作動介入は、行なわれない。同時に、駆動トルクは、運転手によって予め定められる値であって、アクセルペダルの作動によって得られる値に従って、設定される。この手段は、運転手とは無関係な安定化介入が実施された前に存在していた走行状況から、前記介入が実施された後に存在する走行状況に、快適さを強調して移行がなされることを確実にする。長手方向の動力学の突発的で、場合によっては急激な変化が回避される。
【0042】
牽引車の少なくともヨー角速度は、有利には、ダイナミック運動の入力変数として、測定及び評価される。車両速度、ヨー角速度、及びかじ取り角が、有利には、横転運動が生じているかどうかを決定するために、評価される。これに関連して、もし運転手がいかなる操舵介入を行なっていないにもかかわらず、車両速度が関連する閾値よりも高い連結車の作動状態において振動挙動を示す場合、横転運動が生じている。車両速度に対して与えられる上記の閾値は、有利には、臨界速度よりは低い。この閾値は、例えば、55km/hを超える範囲内、好ましくは、55km/hから60km/hの範囲内にある。
【0043】
連結車に対して生じる横転運動の決定のための以下の手順は、特に有利であることが分かっている。連結車の横転運動の存在が、ヨー角速度の実値と関連する設定値との間の偏差を含む偏差変数の関数として、決定される。もしこの偏差が所定の閾値に達するか又は超える場合、これは、連結車の横転運動が生じているという事実を示している。制御エラーを考慮又は評価することによって、例えば、運転手にとって望ましく、連結車が不安定ではなく、従って、安定化介入の必要もないジグザグに縫うように進む回転運動を検出することができる。
【0044】
本発明による方法及び本発明による装置を用いることによって、平均的な運転手が、不安定な連結車、すなわち、横転運動している連結車に対処することができる。本発明による方法及び本発明による装置は、ヨー反応の急速な減衰を可能にする。さらに他の利点は、今日、すでに連続生産されている車両ダイナミックシステム(これは、実質的に、出願人によってECPの名称で知られている車両用のヨー速度制御装置を意味している)に基づいて、いかなる付加的な作動システム又はセンサシステムの必要がない点にある。さらに、トレーラに対する変更は必要がない。すなわち、アクチュエータシステム又はセンサシステムをトレーラに取り付ける必要がない。すでに使用されているトレーラは、改造される必要がない。
【0045】
もし連結車の横転運動が存在するか、又はもし車両が横転運動を生じる傾斜又は傾向を検出した場合、安定化介入が行なわれる。これらは、第1に、運転手とは無関係に実施されるブレーキ作動介入であり、第2に、エンジン介入である。
【0046】
ブレーキ作動介入は、横転運動から生じて車両に作用するヨーモーメントを低減させるために用いられることが、意図されている。従って、ブレーキ作動介入は、結果的に車両に作用する反ヨーモーメントが生成されるように、行なわれるべきである。この目的のために、ブレーキ作動介入は、まず、それらが横転運動から生じるヨーモーメントを相殺するように、車両に作用する検知されたヨーモーメントの値及び/又は検知されたヨー加速度の値の関数として、車両の前輪に実施される。その結果、横転運動のエネルギー、すなわち、振動エネルギーは低減され、連結車は安定し、再び安定して走行する。
【0047】
以下、図面を参照して、例示的実施形態をさらに詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
図1は、本発明の方法による前輪に実施されるブレーキ作動介入の基本的な手順を示している。左側の図において、トレーラ102は右に揺れ、牽引車101に、左回りの矢印によって示されるその垂直軸を中心とする左回転を生じさせる。連結車104の検出された横転運動によって、基本ブレーキ力が、牽引車の両方の前輪103vl、103vrに送給される。加えて、牽引車101に作用する右向きのヨーモーメントをもたらすダイナミックブレーキ力が、右側の前輪103vrに送給される。ダイナミックブレーキ力によって生じるこのヨーモーメントは、横転運動によって生じたヨーモーメントを相殺し、これによって、連結車104を安定にする。
【0049】
右側の図において、トレーラ102は左に揺れ、牽引車101に、右回りの矢印によって示されるその垂直軸を中心とする右回転を生じさせる。連結車104の検出された横転運動によって、基本ブレーキ力が、牽引車の両方の前輪103vl、103vrに送給される。加えて、牽引車101に作用する左回りのヨーモーメントをもたらすダイナミックブレーキ力が、左側の前輪103vlに送給される。ダイナミックブレーキ力によって生じるこのヨーモーメントは、横転運動によって生じたヨーモーメントを相殺し、これによって、連結車104を安定にする。
【0050】
この手順は、図2の線図においても示されている。この線図の上部に、ヨー速度とかじ取り角の信号形状が示されている。この線図の下部に、牽引車の個々の車輪103vl、103vr、103hl、103hrに設定されるブレーキ圧力の信号形状、及び前輪103vl、103vrに一緒に送給される基本ブレーキ圧力の信号形状が、示されている。2つの前輪103vl、103vrに送給されるブレーキ圧力の信号形状から明らかなように、前輪103vl、103vrにそれぞれ送給されるブレーキ圧力は、基本ブレーキ圧力とダイナミック圧力ピークからなる。
【0051】
線図の上部は、以下の事実又は以下の走行状況、すなわち、運転手が、対応するハンドルの運動、従って、操舵運動によって、連結車104の横転運動を生じさせ、この場合、この操舵運動は急旋回操舵であることを示している。従って、図示された走行状況において、連結車104の横転運動は、運転手によって起こされた操舵運動による。形状2は、これらの操舵運動を示している。連結車104の横転運動は、ヨー角速度センサを用いて検出されたヨー角速度の信号形状の揺れ挙動に示されている。この信号形状は、形状1として示されている。ここで、以下の事柄、すなわち、ヨー角速度の正の値はトレーラ102の右側への偏位、従って、同時に牽引車101の左側への偏位であることが、適用される。ヨー角速度の負の値は、トレーラ102の左側への偏位、従って、同時に牽引車101の右側への偏位を表している。
【0052】
前述した横転運動を引き起こす手法が、本発明の方法に制限的な影響を及ぼすことが意図されているわけではない。勿論、これは、本発明の方法を実施するための実際的な原動力ではあるが、本発明の方法によれば、外部から、すなわち、運転手とは無関係に、引き起こされる連結車104の横転運動を排除することができる。
【0053】
図の下部に、連結車104の検出された横転運動に基づいて、本発明による方法を用いて実施されるブレーキ作動介入が、示されている。まず、振動しているヨー角速度の生成と圧力の送給との間にある時間が経過していることが、明らかである。これは、横転運動が、まず、さらに詳細は以下に述べる対応する評価を用いて、検出されねばならないという事実による。加えて、形状5と6を参照するに、2つの後輪103hlと103hrにいかなる圧力をも送給されていないことが明らかである。すでに述べたように、一方では、前述した基本ブレーキ力をもたらす基本圧力が、2つの前輪103vlと103vrに送給され、他方では、前述したダイナミックブレーキ力をもたらす車輪に特有の圧力ピークが、2つの前輪103vlと103vrに送給される。基本圧力は、形状7に示されている。圧力ピークは、形状3と4に示されている。図2に示される図から明らかなように、トレーラ102が右側に偏位され、従って、牽引車101の左側への偏位が存在するとき、圧力ピークは、右側の前輪103vrに送給される。同様に、トレーラ102が左側に偏位され、従って、牽引車101の右側への偏位が存在するとき、圧力ピークは、左側の前輪103vlに送給される。
【0054】
送給されるべき基本圧力の値は、ヨー角速度の偏差の関数として決定される。この偏差は、ヨー角速度センサを用いて測定されるヨー角速度の実値と、数学的モデル、この場合、車両モデルを用いて決定されるヨー角速度の設定値との間の差から得られる。
【0055】
送給されるべき圧力ピークの値は、ヨー角速度の偏差の経時的変化を表す値、すなわち、変数の関数として決定される。この変数は、例えば、ヨー角速度に現れる制御エラーの経時的導関数、すなわち、関連する設定値に対するヨー角速度の実値の偏差として決定され得る。この変数は、関連する設定値に対する各走行状況に現れるヨー角加速度の偏差として直接的に決定されるようにもすることができ、ここで、実値が設定値から引き算される。複雑さがより低いという点から、最初の代替案が好ましい。
【0056】
前輪103vl、103vrに送給される基本ブレーキ圧力による基本ブレーキ力によって、連結車104のブレーキ作動が生じる。その結果、連結車104の速度が、冒頭に述べた臨界速度よりも低い値にまで低減される。
【0057】
圧力ピークによって前輪103vl、103vrに生成されたブレーキ力は、一方では、連結車104のブレーキ作動をもたらす。他方では、振動している圧力ピークの送給は、与えられるべき反ヨーモーメントを生じ、前記反ヨーモーメントは、横転運動によって生じているヨーモーメントに対して逆位相、すなわち、対向している。この反ヨーモーメントは、連結車104の横転運動を著しく急速に低下させる。連結車104は、安定化される。
【0058】
安定化ブレーキ作動介入が始動された後、連結車104の不安定性、すなわち、連結車の横転運動が低下したかどうかが確認される。もし連結車104が再び安定状態に達したことがプロセスにおいて検出された場合、基本ブレーキ圧力と圧力ピークを生じさせるための更なるブレーキ作動介入は、行なわれない。同時に、駆動トルクが、運転手によって予め定められて前記運転手によってなされる加速ペダルの作動によって生じ得る値に従って、再び設定される。
【0059】
前述したブレーキ作動介入の手順は、図2の線図にも示されている。時点t1から始まって、ヨー角速度の信号形状のみは極めて小さい振幅を有し、この理由から、更なるブレーキ作動介入はこの時点から行なわれない。また、この図から推察されるように、一般的に、横転運動が減少するにつれて、基本ブレーキ圧力と圧力ピークは減少する。連結車の速度は、臨界速度よりも低い。
【0060】
図2の線図に示され手順において、基本的な走行状況において、ブレーキ作動介入が前輪103vl、103vrにのみ実施される。すなわち、連結車104の横転運動を相殺するヨーモーメントは、牽引車101の前輪103vl、103vrにもたらされるブレーキ作動介入によってのみ生成され、従って、連結車が安定にされる。検討されている走行状況は、後輪103hl、103hrへの付加的なブレーキ作動介入が許容されるか又はもたらされる連結車104の作動状態に対応することが意図されていない。後輪103hl、103hrのブレーキ作動介入及び連結車104の対応する作動状態に関して、以下に、さらに詳しく説明する。
【0061】
すでに述べたように、ブレーキ作動介入に加えて、エンジン介入も実施され得る。この目的のために、例えば、スパーク点火エンジンの場合、零トルクが被駆動輪に生じるように、スロットル弁が設定される。牽引車が後輪駆動の車両の場合、2つの後輪103hl、103hrは被駆動輪である。これに関連して設定されるスロットル弁の角度は、6°から10°の間である。換言すれば、エンジン介入の結果として、スロットル弁は、周方向力が全く零に近い被駆動輪に生じないか又はゼロに近い周方向力が被駆動輪に生じるように、設定される。すなわち、スロットル弁は、駆動伝達系に生じる摩擦損失が補償され、被駆動輪に周方向力に関する限りニュートラル設定が与えられる、ように設定される。
【0062】
図2に関して、連結車104の横転運動を相殺するヨーモーメントが、牽引車101の前輪103vl、103vrにもたらされるブレーキ作動介入によってのみ実施され、その結果として、連結車104が安定にされることに留意すべきである。前輪103vl、103vrのこれらのブレーキ作動介入に加えて、ブレーキ作動介入が、後輪103hl、103hrに許容されるか又はもたらされ得る。運転手とは無関係な安定化ブレーキ作動介入が、前輪103vl、103vr及び後輪103hl、103hrの両方に対して実施される様式に関しては、以下に、さらに詳細に説明する。
【0063】
運転手によるブレーキ作動がない場合、前輪103vl、103vrがブレーキ作動される。この目的のために、基本ブレーキ圧力が、両方の前輪103vl、103vrに送給される。この基本ブレーキ圧力の値は、ヨー角速度の設定値に対するヨー角速度の実値の偏差の関数として、決定される。さらに、圧力ピークが、前輪103vl、103vrに加えられる。この圧力ピークの値は、各々、ヨー加速度の偏差の関数として、決定される。運転手によるブレーキ作動のないこのような作動状態において、前輪103vl、103vrにのみ実施されるブレーキ作動介入によって、連結車104を安定にする試みがなされる。しかし、路面の状態が、安定にするためのブレーキ力が必要な、例えば、雪などによる低摩擦係数の路面である場合、連結車104は、前記103vl、103vrにのみブレーキ作動を加えることができず、後輪103hl、103hrもこのような状況においてブレーキ作動される。これに関連して、ブレーキ圧力は、前記103vl、103vrから後輪103hl、103hrに再分配され得る。低摩擦係数の路面においてブレーキ作動が生じているという事実は、例えば、ABSフラグを評価することによって、検出され得る。ABSフラグによって、アンチロックブレーキシステムは、ブレーキ作動介入が少なくとも1つの車輪に対して、この車輪がロックするのを防ぐためになされることを示す。原理上、車両が低摩擦係数の路面に位置しているかどうかを検出するために、摩擦係数を表す変数を評価することもできる。このような変数は、例えば、車両のヨー速度が制御されるダイナミック運動システム内に存在する。
【0064】
連結車104の横転運動が、運転手によって始動されたブレーキ作動プロセス中に生じる場合、連結車104は、ブレーキ作動介入によって、以下のように、安定化される。まず、運転手によって始動されたブレーキ作動プロセスの結果として生じる車両の減速が測定される。もしこの車両の減速が所定の閾値よりも低い場合、これは低減速のブレーキ作動プロセスが運転手によって始動されたことを意味しているが、生じているブレーキ作動プロセスの結果として、後輪103hl、103hrに設定されるブレーキ圧力は少なくとも部分的に低減される。同時に、ブレーキ圧力が、一方では、基本圧力が両方の前輪103vl、103vrに送給され、他方では、圧力ピークが各前輪に特定して送給されるように、前輪103vl、103vrに加えられる。この場合、もしブレーキ作動が低摩擦係数の路面に実施されている場合、前輪103vl、103vrから後輪103hl、103hrに、ブレーキ圧力の再分配を行なうこともできる。
【0065】
他方で、もし車両の減速が所定の閾値よりも高い場合、これは高減速のブレーキ作動プロセスが運転手によって始動されたことを意味しているが、後輪103hl、103hrのブレーキ圧力はそのままにされる。前輪103vl、103vrでは、ブレーキ圧力が、連結車104の横転運動によって生じるヨーモーメントと逆位相のダイナミックヨーモーメントを生成するように、調整される。このようなブレーキ作動中に、アンチロックブレーキシステム(ABS制御装置)の介入が片方又は両方の前輪103vl、103vrになされている場合、ブレーキ圧力は、後車軸に付加的に加えられる。
【0066】
その結果、アンチロックブレーキシステムは、調整態様において、連結車104に作用する減速をプロセス中に減少させずに、片方又は両方の前輪103vl、103vrのロックが避けられる程度に、前輪103vl、103vrのブレーキ圧力を低下させることができる。圧力は、後輪103hl、103hrがそれらのロック制限値に至る範囲まで、後車軸に加えられるようにもすることができる。
【0067】
車両の減速を評価するのに対する代替案として、前輪103vl、103vrの状態を評価することによって、高減速のブレーキ作動プロセスが生じているのか又は低減速のブレーキ作動プロセスが生じているのかどうかを検出することもできる。この目的のために、例えば、前輪103vl、103vrの車輪ブレーキシリンダー内にそれぞれ送給されるブレーキ圧力の値を評価することができ、又は前輪103vl、103vrの入口及び出口弁の作動を評価することができる。この代替案として、前輪103vl、103vrに生じるブレーキスリップを評価することもできる。
【0068】
要約すると、ブレーキ作動介入に関して、まず第1に、安定化ブレーキ作動介入が、前輪103vl、103vrに実施されることに留意すべきである。所定の基準を評価することによって、又は連結車104の所定の作動状態が生じたとき、前輪103vl、103vrに対して実施されたブレーキ作動介入に加えて、ブレーキ作動介入が、ブレーキ力を生成するために、後輪103hl、103hrにも実施されるようにすることもできる。
【0069】
連結車104の横転運動が、牽引車101が装備するダイナミック運動システムに基づいて、牽引車101に設けられるセンサシステムを用いて、検知される。
【0070】
このダイナミック運動システムは、ヨー速度制御装置(ESP)と呼ばれるものである。その結果、少なくとも車両速度、ヨー角速度、及びかじ取り角は、横転運動が生じるかどうかを決定するように、評価される。
【0071】
本発明による方法は、図3に示されるように、2つの主部分からなる。第1は、連結車104の横転運動を検出する検出論理コンポーネント301である。第2は、連結車104の横転運動が生じた場合、安定ブレーキ作動介入及び/又はエンジン介入、又は操舵介入を実施する介入論理コンポーネント302である。検出論理コンポーネント301において処理に必要とされる変数は、牽引車101に設けられるCANバスを介して、検出論理コンポーネント301に利用可能とされている。介入論理コンポーネント302において必要とされる変数は、検出論理コンポーネント301に基づいて、及び同じようにCANバスを介して、介入論理コンポーネント302に利用可能とされている。検出論理コンポーネント301によって生成された変数と、介入論理コンポーネント302によって生成された変数の両方が、CANバスに出力される。この変数の出力は、各場合に、各論理要素に含まれる適切なインターフェイスを介して、行なわれる。
【0072】
以下、図4を参照して、検出論理コンポーネント301を機能させる方法について、説明する。検出論理コンポーネント301は、連結車104の横転運動が生じているかどうか、すなわち、連結車104のトレーラ102の横転運動が生じているかどうかを検出するのに用いられる。この目的のために、異なる車両変数が評価される。特に、ヨー角速度、かじ取り角、及び車両が評価される。
【0073】
連結車104の横転運動の生成、従って、トレーラ102の横転運動の生成が検出され得る基準は、一般的に、以下のように、定式化され得る。すなわち、車両速度が関連する閾値以上である連結車104の作動状態が、考察される。この閾値は、ここでは、臨界速度未満である。もし、運転手がハンドルを作動させず、従って、いかなる操舵介入をも実施していなくても、ヨー角速度がこの作動状態において振動挙動を示すなら、これは、連結車104の横転運動、従って、トレーラ102の横転運動、従って、連結車の不安定な状態が生じていることを示す目安になる。これは、連結車104の横転運動が生じているかどうかを検出するために、車両速度、ヨー角速度、及びかじ取り角を評価するのが適切である、ことを意味している。
【0074】
横転運動は、臨界速度未満の速度の連結車104において生じ得るが、前記横転運動は、再び、自動的に消散されるので、車両速度が臨界速度に達しない作動状態において、本発明の方法によって実施されるような安定化介入は不必要である、と前提とすることができる。他方では、もし連結車が臨界速度を超えるなら、連結車の横転運動は増大し、この理由から、適切な安定化介入が、この作動状態において実施される。
【0075】
図4から明らかなように、異なる変数が、検出論理要素301に送給される。まず第1に、これらは、変数Delta_Gier_PID、変数LW_Diff、及び変数vから成る、評価されるべき変数である。変数Delta_Gier_PIDは、図5aと関連して述べられるブロック401において、ヨー角速度の関数として決定される。変数LW_Diffは、図5dと関連して述べられるブロック402においてかじ取り角の関数として決定される。変数vは、参照速度とも呼ばれる連結車104の速度である。第2に、これらの変数は、Erk_Delta_Gier_PID、Erk_Delta_Gier_PIDa、Erk_LW_Diff、Erk_LW_Diffa、及びErk_Vである。これらの変数は、設定可能で、閾値の機能を有し、前述の変数Delta_Gier_PID、変数LW_Diff、及び変数vが比較されるパラメータを表している。
【0076】
図4の2つの説明部分から明らかなように、2つの質問が検出論理要素301においてなされる。A1によって示され、連結車104が生じているかどうかを検出するための第1の質問が、行なわれる。この第1の質問において、もし、変数Delta_Gier_PIDが閾値Erk_Delta_Gier_PID以上であり、同時に変数LW_Diffが閾値Erk_LW_Diffよりも小さく、同時に車両速度Vが閾値Erk_V以上である場合、連結車104の横転運動が生じている。もし、横転運動が生じていると検出された場合、安定化介入が必要であり、この理由から、フラグStab_Erk_Pが設定される、すなわち、このフラグに値1が割り当てられる。
【0077】
加えて、A2によって示され、横転運動が減衰したかどうかを検出するための第2の質問が、行なわれる。この第2の質問によれば、もし、変数Delta_Gier_PIDが閾値Erk_Delta_Gier_PIDaよりも小さいか、又は変数LW_Diffが閾値Erk_LW_Diffa以上である場合、連結車104の横転運動はもはや生じていない。もし横転運動がもはや生じていないことが検出された場合、安定化介入はもはや必要ではない。この理由から、フラグStab_Erk_Pは消去され、このフラグに値0が割り当てられる。
【0078】
2つの質問A1及びA2から明らかなように、異なる閾値が2つの変数Delta_Gier_PIDとLW_Diffに対して用いられ、その結果、ヒステレシス機能が果たされる。
フラグStab_Erk_Pは、検出論理要素301に出力され、従って、この要素に対して利用可能であり、この要素において、このフラグはさらに処理される。特に、それは、介入論理要素302に対して利用可能である。
【0079】
検出論理要素301に必要な異なる変数を決定する方法について、図5a、5b、5c、及び5dを用いて説明する。図5a、5b、5cは、変数Delta_Gier_PIDがいかに決定されるかを示している。
【0080】
図5aによれば、まず第1に、ヨー角速度センサを用いて測定されるヨー角速度の実値GIER_ROH、第2に、運転手による所定の値から決定されるヨー角速度の設定値Gier_Statが、変数Delta_Gier_PIDを決定するための手段に入力される。実値GIER_ROHは、CANバスを介して利用可能とされ、設定値Gier_Statは、ブロック501において決定される。下流のバンドパスフィルター503に送給される差分Delta_Gierは、差分生成器502によって、これらの2つの変数から生成される。
【0081】
図5bのブロック501の説明図から明らかなように、設定値Gier_Statは、運転手によって設定されるかじ取り角LWと運転手によって設定される車両速度VREFの関数として、数学モデルを用いて決定される。例えば、文献から知られているアッケルマン(Ackermann)の関係が、数学モデルとして、用いられ得る。
【0082】
図5aから明らかなように、差分Delta_Gierは、0.5Hzから2Hzの範囲の周波数にある信号のみを伝達するバンドパスフィルター503に送給される。この周波数範囲は、連結車104の横転運動の代表的な周波数範囲に相当し、これは、連結車104の自然な周波数範囲とも呼ばれる。差分Delta_Gierは、その意味から、牽引車101に配置されてヨー速度を制御する目的を有するダイナミック運動システム(ESP)の制御エラーであるが、この差分Delta_Gierが、バンドパスフィルターを用いて、生じ得る連結車104の横転運動が検出され得るための後続の評価のために、このようにフィルター処理される。もし連結車104が横転している場合、バンドパスフィルター処理の後、経時的に変化して振動の形態にある信号が現れる。前記信号は、一般的に、純粋な正弦曲線又は余弦曲線の振動である。バンドパスフィルター503を用いて決定された信号Delta_Gier_BPは、下流のブロック504に送給される、このブロック504の機能は、図5cを用いて、後述する。
【0083】
変数Delta_Gier_BP、すなわち、バンドパスフィルター503によって準備されたフィルター処理された制御エラーは、図5cに示されるユニットを用いて、さらに処理され、連結車104の横転運動を検出するのに用いられる変数Delta_Gier_PIDを作成する。同時に、この変数は、前輪に送給されるべき基本圧力を決定するのに、用いられる。制御エラー、すなわち、関連する設定値に対するヨー角速度の実値の偏差を評価することは、ヨー速度センサを用いて測定された信号、すなわち、ヨー速度の実値を単純に評価するのに対して、以下の利点を有する。すなわち、制御エラーを評価することによって、例えば、運転手にとって望ましく、連結車の不安定さが存在せず、従って、安定化介入の必要もないジグザグに縫うように進む回転運動を検出することができる。
【0084】
最初に、信号Delta_Gier_BPの絶対値が、ローパスフィルター505を用いて、決定される。因子Erk_Pを掛け算することによって、比例成分が得られ、これは、横転運動がいかに強いかを検証するのに用いられ得る。比例成分は、混乱が連結車に作用した後に著しい大きさの振動が生じたかどうかを示す。さらに、ローパスフィルター505を用いて生成された絶対値は、絶対値の信号の経時的偏差が作成されるブロック506に送給される。ブロック506で生成された信号に、因子Erk_Dが掛け算され、その結果、横転運動が増加しているか又は減少しているかどうかを検証することができる微分成分が得られる。微分成分は、連結車に作用する短期の混乱、例えば、突風による不安定さも示す。代替的に、ローパスフィルター505を用いて生成された絶対値が、それが積分されるブロック507に送給されるようにすることもできる。ブロック507において決定された信号に、因子Erk_Iを掛け算することによって、以下の意味を有する積分成分が得られる。すなわち、例えば、連結車が、臨界速度に近い速度で走行しているとき、連結車の連続的な小さい横転が生じることが可能であることを意味する積分成分が得られる。このような横転挙動は、積分成分を用いて、検知される。もし積分成分が所定値を超えた場合、これは、この少ない横転プロセスがすでに比較的長い時間にわたって生じていたことを示し、この理由から、それをなくすために、安定化介入が必要であり、実施もされる。積分成分は、必ずしも本発明による方法に設けられる必要がなく、従って、任意であると考えられる。
【0085】
その後、比例成分と微分成分、及びもし存在しているなら、積分成分は、組み合わされ、信号Delta_Gier_PIDを生成する。ブロック504から出力された信号Delta_Gier_PIDは、更なる処理のために、検出論理要素301及び図8bに示される要素805に送給される。
【0086】
図5dは、変数LW_Diffを決定する方法を示している。変数LW_Diffは、連結車104の横転運動が生じているかどうかが決定されるとき、検出論理要素301においても評価される。何故なら、ヨー角速度のみ又はヨー角速度の関数として決定される変数の評価は、余りにも不正確だからである。もしかじ取り角も一緒に評価されないなら、連結車104の横転運動による不安定さと、運転手によって意図的に始動されるジグザグに縫うように進む回転運動との差を、操舵介入によって識別することは不可能であろう。図5dの説明図によれば、まず、経時的なかじ取り角の導関数がブロック508において生成され、次いで、前記導関数がブロック509においてローパスフィルター処理されるように、かじ取り角は評価され、従って、変数LW_Diffが決定される。これらの手段は、重要でない運転手の小さい操舵運動をフィルターによって取除く。
【0087】
図6の説明図は、介入論理要素302の構造を示している。図から明らかなように、連結車104を安定にするために、2種類の介入、すなわち、一方では、主として、ブロック602を用いてもたらされるブレーキ作動介入と、他方では、補助的に、必要に応じて、ブロック601を用いてもたらされるエンジン介入が実施される。図7aは、ブロック601の実施、従って、エンジン介入を実施するための作動信号が決定されるときの手順を示している。図示される回路は、以下の機能を有している。すなわち、もし、フラグStab_Erk_Pが、連結車104の横転運動が存在するのと同じ意味を有する値1の場合、信号EIN_M_ESP_MOTの値はこの点において運転手によって予め定められたエンジントルクに対応するが、その信号EIN_M_ESP_MOTは、値EIN_M_ESP_MOT_WERTと見なされる。その結果、エンジントルクは、牽引車101の被駆動輪に周方向力が全く生じないか又は零に近い周方向力が生じるように、低減される。値EIN_M_ESP_MOT_WERTは、例えば、駆動伝達系の効率の程度及び/又は選択されたギア速度及び/又は牽引車の牽引トルクの関数として、決定される。もし、フラグStab_Erk_Pが、検討している状況下においてもはや横転運動が存在しないのと同じ意味を有する値0の場合、信号EIN_M_ESP_MOTは、値AUS_M_ESP_MOT_WERTと見なされる。その結果、駆動トルクは、再び、運転手によって予め定められた値に従って、設定される。これに関連して、駆動トルクの移行は、その移行が運転者に悪影響を与えないように、適切に選択された移行機能を用いて、行なわれる。
【0088】
図7bは、ブロック602の実施、及びブレーキ作動介入を行なうための作動信号が決定されるときの手順を示している。2つのブロック701と702が、前輪103vl、103vrに対する安定化ブレーキ作動介入を行なうための作動信号を決定するのに、用いられ得る。ここで、これらのブロック701と702の役割は、以下のように、割り当てられる。すなわち、右側の前輪103vrに対する作動信号は、ブロック701を用いて決定され、左側の前輪103vlに対する作動信号は、ブロック702を用いて決定される。後輪103hl、103hrにおいてブレーキ作動介入を行なうための作動信号は、2つのブロック703と704を用いて決定される。
【0089】
図7bに示されるブロック701、702、703、及び704は、車両の車輪に対して、ブレーキ圧力を個別に送給するように用いられ得る。このようにして、基本圧力又は基本力、及び圧力ピーク又はダイナミック力は、前輪103vl、103vrに設定され得る。さらに、ブレーキ圧力は、連結車の所定の作動状態において、必要に応じて、前輪と後輪との間で分配されるようにすることもできる。
【0090】
ヨー加速度Gier_Beschlが、ブロック705を用いて決定される。この目的のために、このブロックに送給された信号GIER_ROHがまずローパスフィルター処理される。次いで、経時的にローパスフィルター処理された信号の導関数が生成され、この経時的導関数そのものがローパスフィルター処理される。次いで、このプロセスにおいて生成された信号Gier_Beschlは、ブロック705から出力され、例えば、ブロック701と702に送給される。さらに、信号グループStab_Erknに含まれるフラグStab_Erk_P及び変数Delta_Gier_PIDも2つのブロック701と702に送給される。
【0091】
以下、2つのブロック701と702の構造について、図8a、8b、及び8cを用いて、説明する。まず、これらのブロックの詳細について、説明する。次いで、これらの2つのブロック703と704の実施に関する詳細について、説明する。
【0092】
図8aは、左側の前輪103vlに対してブレーキ作動介入を行なうための作動信号EIN_P_SOLL_VLを決定するブロック702の構造を示している。右側の前輪103vrに対して割り当てられたブロック701の構造も同じである。これは、図8bと8cの説明図にも当てはまる。
【0093】
図8aの説明図は、作動信号が2つの成分、すなわち、ブロック801において決定される基本圧力又は基本力を設定するための第1成分と、ブロック802において決定される圧力ピーク又はダイナミック力を設定するための第2成分から成る。これら2つの成分は、加算要素804において、加算される。ブロック803は、この加算信号を制限するのに用いられる。この手段は、前輪103vl、103vrに設定されるべきブレーキ圧力が、各ブレーキシステムに対して予め定められた値を越さないことを確実にする。制限された加算信号は、作動信号EIN_P_SOLL_VLとして出力される。
【0094】
図8bは、ブロック801の構造、及び基本圧力を設定するための作動信号の成分が決定されるときの手順を示している。図8bの説明図から明らかなように、この成分は、変数Delta_Gier_PIDに比例する。すなわち、この成分は、ヨー角速度に対して存在する偏差の関数として決定される。変数Delta_Gier_PIDに比例するので、基本力は、比較的過酷な振動の場合に増大し、この場合、P成分がより大きい。同じことが、減衰されていない振動にも当てはまる。
【0095】
もしフラグStab_Erk_Pが値1を有し、連結車104の横転運動が生じている場合、乗算器805において、変数Delta_Gier_PIDとEin_Basis_Druck_VLの積として生成された信号が、出力される。変数Ein_Basis_Druck_VLは、適用される利得因子であり、この利得因子は、ブレーキシステムの構成に依存し、好ましくは、70バールから140バールの範囲内の一定値を有する。もし、一方において、フラグStab_Erk_Pが値0を有する場合、所定の小さい値を有する信号Aus_Basis_Druckが出力され、これによって、ブレーキ圧力を送給する。これは、もし横転運動が存在しない場合、ブレーキ圧力の不注意な送給が生じないことが確実になることを、意図している。出力される信号は、ブロック806を用いて、平滑化される。
【0096】
図8cは、ブロック802の構造、及び圧力ピークを設定するための作動信号の成分が決定されるときの手順を示している。図8cの説明図から明らかなように、この成分は、変数Gier_Beschl_TP、従って、ヨー加速度に比例する。すなわち、圧力ピークを生成するための作動信号の成分は、ヨー加速度の関数として決定される。横転運動から生じるヨーモーメントは、ヨー加速度に比例するので、横転運動に対して逆位相のヨーモーメントを生成することを可能とするために、どちらの前輪がブレーキ作動されるべきかに関する情報が利用可能となる。ブロック702において、前記ブロックに送給される信号Gier_Beschlのローパスフィルター処理によって、変数Gier_Beschl_TPが得られる。
【0097】
もしフラグStab_Erk_Pが、連結車104の横転運動が生じていることと同じ意味を有する値1を有する場合、ブロック807によって利用可能とされ、圧力ピークをもたらす作動信号の成分が、出力される。さもなければ、値0が出力される。
【0098】
2つの変数Gier_Beschl_TPとEin_Dyn_VLの積が、乗算器808を用いて、決定される。変数Gier_Beschl_TPに変換因子を構成する変数Ein_Dyn_VLを乗算することによって、物理的にヨー加速度に対応する変数Gier_Beschl_TPは、物理的に圧力に対応する変数P_Brems_VLに変換される。変数P_Brems_VLは、ブロック807に送給される。
【0099】
ブロック807を用いて、信号P_Brems_VLに基づく信号が決定され、出力される。前記信号は、左側の前輪において、勿論、右側の前輪において実施される対応するブレーキ作動介入と関連して、横転運動を相殺するヨーモーメントを生成するブレーキ作動介入を実施するのに用いられる。
【0100】
すでに説明したように、信号Gier_Beschl_TPは、ヨー加速度に対応する。数学的な観点から、この信号は、図2に示されるヨー角速度の形状1の経時的導関数を構成する。明確さを期すために、ヨー加速度の信号形状は、図2において示されていない。しかし、この信号は、実質的に、90°だけずれ、ヨー角速度の信号よりも進角している信号である。信号Gier_Beschl_TPと信号P_Brems_VLの両方は、振動挙動を示す。
【0101】
振動信号P_Brems_VLに基づいて、左側の前輪に正確な位相のブレーキ作動介入を実施するのに用いられる信号を生成することを可能にするために、ブロック807は、以下のように機能する比較器として実施される。
【0102】
本発明の例示的実施形態の範囲内において、ブロック807は、信号P_Brems_VLの正の信号成分を出力することのみを意図している。この目的のために、信号P_Brems_VLは、ブロック807において、比較変数Ein_Dyn_Richt_VLと比較される。もし信号P_Brems_VLが比較変数Ein_Dyn_Richt_VLの値であるか又はこの値を超えている場合、信号P_Brems_VLの余分の成分がブロック807から出力される。比較変数Ein_Dyn_Richt_VLの値に達しない信号P_Brems_VLの成分は出力されず、その代わりに、ブロック807は、信号0を出力する。
【0103】
比較変数Ein_Dyn_Richt_VLは、好ましくは、値0を有する。この値の定義から、信号P_Brems_VLの正の半波長が、ブロック807を用いて出力され、負の半波長が抑制される。ブロック807を機能させる方法は、それが2つの変数P_Brems_VLとEin_Dyn_Richt_VLの最大値を出力するような方法によって、記載されるようにすることも可能である。
【0104】
ブロック701において右側の前輪103vrに対して用いられるブロック802は、その構造に関して、図8cに示されるものに対応するが、右側の前輪103vrに用いられる因子Ein_Dyn_VRは負であるという違いがある。この結果、圧力ピークを右側の前輪103vrにおいて生成される作動信号を決定するため、信号Gier_Beschl_TPに含まれる負の半波長が、右側の前輪103vrに対して考慮され、正の半波長は、フィルター処理によって除去される。
【0105】
要約すると、信号Gier_Beschl_TPの正の半波長は、左側の前輪103vlに対して考慮され、前記信号の負の半波長は、右側の前輪103vrに対して考慮されることに留意するべきである。
【0106】
2つのブロック701と702の作動方法について説明したが、この後、図7bに示される2つのブロック703と704について説明する。
【0107】
ブロック703は、牽引車に配置されてその牽引車のヨー角速度を制御するためのESPシステムを構成している。このESPシステムは、牽引車の個々の車輪の速度、かじ取り角、横方向加速度、及びヨー角速度を検知するセンサ手段を有している。車輪速度とかじ取り角の関数として決定される車両速度を用いて、ヨー角速度用の設定値は、数学的モデルによって決定される。前記設定値は、ヨー角速度用に決定された実値と比較され、偏差が存在するとき、安定化のための車輪に固有のブレーキ作動介入とエンジン介入とが実施される。ブレーキ作動介入は、牽引車に作用するヨーモーメントを生成するのに用いられ、牽引車の過剰又は不足操舵の走行挙動を補償する目的を有している。エンジンによって出力されるエンジントルクは、最終的に車両速度の減少をもたらすエンジン介入を用いて、低減される。
【0108】
ESPシステム703から出力された信号S_ESPは、ブロック704に送給される。信号S_ESPは、とりわけ、ESPシステムによって決定されて安定化ブレーキ作動介入を実施する目的を有する作動信号、及びブロック704において、とりわけ、連結車の作動状態を決定するのに必要とされる更なる信号を含んでいる。具体的に、これらの更なる信号は、以下の信号である。すなわち、連結車の長手方向の加速度を示す変数;連結車が移動している路面の摩擦係数を示す変数、この変数は、例えば、横方向加速度を示す変数と長手方向の加速度を示す変数に基づいて、評価される;及び、運転手のブレーキ作動要求を表す変数、ブレーキペダルの作動を表す変数、及び/又は運転手によって設定されるブレーキ圧力を表す変数である。さらに、フラグStab_Erk_Pとブロック701と702を用いて生成される作動信号EHB_Eingriff_Vが、ブロック704に送給される。
【0109】
フラグStab_Erk_Pが、連結車に対して横転運動が生じていないのと同じ意味を有する値0を有している限り、ESPシステム703から生成された作動信号は、信号EHB_Eingriffとして出力される。フラグStab_Erk_Pが、連結車に対して横転運動が生じているのと同じ意味を有する値1を有するやいなや、ブロック701と702において前輪に対して生成された信号EHB_Eingriff_Vと後輪に対する作動信号が、信号EHB_Eingriffとして出力される。前記作動信号は、後輪にそれぞれの作動状態に対応するブレーキ作動介入を実施する。後輪に対する作動信号は、ブロック704において、生成又は修正される。
【0110】
ここで、ESPシステムに含まれる下位のアンチロックブレーキシステムの機能は、表面に出ずに永久的に存在していることに留意すべきである。車輪がロックされる傾向が検出されるやいなや、ブレーキ圧力を低減させるために、適当にブレーキ作動介入がなされる。
【0111】
図9に示される詳細について、以下に説明する。前記の図は、本発明による装置、及び本発明による装置で実施される本発明による方法の不可欠なステップの略図を示すブロック回路図の形態にある。ここで、ブロック301、302、401、及び402の機能又は構造に関する説明は、すでに詳細に説明したので、ここでは、さらに詳細には行なわない。
【0112】
以下の変数、すなわち、ブロック401から出力された変数Delta_Gier_PID及びブロック402から出力された変数LW_Diffが、検出論理要素301に送給される。さらに、ブロック901から出力された車両速度である変数Vが、検出論理要素301に送給される。ブロック901は、牽引車101の個々の車輪に割り当てられた車輪速度センサ、及び車輪速度センサによって入手可能な信号を変数Vに変換するための適切な手段から成る。供給されたこれらの変数の効用として、検出論理要素301は、横転運動が連結車104のために生じているかどうかを検出する。もし横転運動が生じていることが検出された場合、検出論理要素301は、フラグStab_Erk_Pに対して値1を出力する。値1がフラグStab_Erk_Pに対して与えられている場合、変数MOT_Eingriff及びEHB_Eingriffが、介入論理要素302において決定され、ブロック902に送給される。安定化ブレーキ介入が、組み合わされて変数EHB_Eingriffを生成する個々の作動信号を用いて、実施される。この目的のために、牽引車101の個々の車輪に直接的に割り当てられたブレーキアクチェータがこれらの作動信号によって作動され得るか、又はこれらの作動信号は、牽引車101のブレーキシステムに割り当てられた制御装置に送給される。さらに、エンジン介入は、変数Mot_Engriffを用いて、なされる。ブロック902は、牽引車のブレーキアクチェータ及び/又はブレーキシステムに割り当てられた制御装置及び/又はエンジン介入を実施するためのアクチェータを備える。
【0113】
車両は、油圧、電気油圧、空圧、電気空圧、又は電気機械ブレーキシステムを備えることができる。重要な因子は、このブレーキシステムが、特にブレーキ力が個々の車輪に加えられ、保持され、又は低減されるように、運転手とは無関係に、車両に固有のブレーキ作動介入を実施するのに用いられ得る、ことである。この条件は、例えば、ダイナミック運動システム(ESP)を備える今日車両で用いられているようなブレーキシステムによって、実現される。このようなダイナミック運動システムは、ヨー角速度を制御することによって、車両をその垂直軸を中心として安定にするために、用いられる。
【0114】
安定化ブレーキ作動介入に加えて又はその代わりに、もし車両が対応する作動システムを有している場合、安定化操舵介入を実施することもできる。これらの操舵介入は、前記操舵介入が連結車の横転運動を相殺するヨーモーメントを生成するように、安定化ブレーキ作動介入による正確な位相で実施されねばならない。
【0115】
本発明による方法及び本発明による装置と関連して検討される連結車は、例えば、牽引車とトレーラ、例えば、トレーラハウス、車輸送トレーラ、又はボートトレーラから成る乗用車の分野におけるコンビネーションであることが意図されている。しかし、本発明による方法と本発明による装置を、牽引車とセミトレーラ又はポールトレーラから成る実用車の分野における連結車に用いることも考えられる。
【0116】
横転運動の問題が連結車において大幅に生じ、個々の車両におけるよりもこのようなコンビネーションにおいてより大きい危険をもたらすので、本発明による方法及び本発明による装置を、連結車に関連して限定的に説明したが、ここで、本発明による方法及び本発明による装置は、個々の車両に対しても使用され得ることに留意すべきである。
【0117】
結論的に、本発明による方法及び本発明による装置が基づく着想について、すでに存在する先行技術を考慮せずに、もう一度、要約すると、本発明による方法は、牽引車とトレーラから構成される連結車を安定にする方法であって、少なくとも1つのダイナミック運動モーメントの入力変数が測定及び評価され、もし不安定なダイナミック運動状態が上記の評価によって検出された場合、連結車のダイナミック運動状態を安定にするためのブレーキ作動介入及び/又はエンジン介入が、牽引車に対してもたらされる方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明による方法の基本的な手順を説明するための不安定な連結車の2つの検測状況を示す。
【図2】本発明による方法と関連して重要な種々の変数の信号形状を線図の形態で示す。
【図3】本発明による方法が基づく作動の方法を機能的ブロック図の形態で示す。
【図4】本発明による方法に用いられる検出論理を機能化する方法を機能的ブロック図の形態で示す。
【図5a】検出論理における種々の変数の決定を機能的ブロック図の形態で示す。
【図5b】検出論理における種々の変数の決定を機能的ブロック図の形態で示す。
【図5c】検出論理における種々の変数の決定を機能的ブロック図の形態で示す。
【図5d】検出論理における種々の変数の決定を機能的ブロック図の形態で示す。
【図6】本発明による方法に用いられる介入論理の構造を機能的ブロック図の形態で示す。
【図7a】ブレーキ作動介入とエンジン介入を実施するための作動信号を決定するための介入論理の要素を機能的ブロック図の形態で示す。
【図7b】ブレーキ作動介入とエンジン介入を実施するための作動信号を決定するための介入論理の要素を機能的ブロック図の形態で示す。
【図8a】ブレーキ作動介入を実施するための作動信号を決定するときの手順を機能的ブロック図の形態で示す。
【図8b】ブレーキ作動介入を実施するための作動信号を決定するときの手順を機能的ブロック図の形態で示す。
【図8c】ブレーキ作動介入を実施するための作動信号を決定するときの手順を機能的ブロック図の形態で示す。
【図9】一方で、本発明による装置の略図、他方で、本発明の装置で行なう本発明の方法による不可欠なステップをブロック回路図の形態で示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
牽引車(101)とトレーラ又はセミトレーラ(102)から構成される連結車(104)を安定にする方法であって、前記牽引車(101)は、前輪(103vl、103vr)と後輪(103hl、103hr)とを有し、少なくとも1つのダイナミック運動の入力変数(GIER_ROH)が測定及び評価され、前記連結車(104)の横転運動が前記評価によって検出された場合、前記連結車(104)のダイナミック運動状態を安定にするための少なくともブレーキ作動介入が、前記牽引車(101)に対してもたらされる方法において、前記連結車(104)の前記横転運動を相殺するヨーモーメントが、前記牽引車(101)の前記前輪(103vl、103vr)に対してもたらされる前記ブレーキ作動介入によってのみ生成されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記牽引車(101)の前記後輪(103hl、103hr)に対するブレーキ作動介入が、前記連結車(104)の所定の作動状態が生じたときにのみ、付加的に許容されるか又はもたらされることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記後輪(103hl、103hr)に対するブレーキ作動介入が許容される前記連結車(104)の前記所定の作動状態は、前記連結車(104)の横転運動が検出され、同時に、運転手によるブレーキ作動がなく、前記連結車(104)が低摩擦係数を有している路面に位置している場合に、生じることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記後輪(103hl、103hr)に対するブレーキ作動介入がもたらされる前記連結車(104)の前記所定の作動状態は、前記連結車(104)の横転運動が検出され、同時に、運転手によるブレーキ作動がなく、前記前輪(103vl、103vr)に対してもたらされる前記ブレーキ作動介入が前記前輪(103vl、103vr)をロックする危険をもたらす場合に、生じることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記後輪(103hl、103hr)に対するブレーキ作動介入は、前記連結車(104)の横転運動が検出され、運転手によるブレーキ作動がなく、前記連結車(104)が低摩擦係数を有する路面に位置している場合に、付加的に許容されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記後輪(103hl、103hr)に対するブレーキ作動介入は、前記連結車(104)の横転運動が検出され、運転手によるブレーキ作動がなく、前記前輪(103vl、103vr)に対してもたらされるブレーキ作動介入が、前記前輪(103vl、103vr)をロックする危険をもたらす場合に、付加的にもたらされることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記後輪(103hl、103hr)に対するブレーキ作動介入がもたらされる前記連結車(104)の前記所定の作動状態は、前記横転運動が前記運転手によって始動又は実施されるブレーキ作動プロセス中に検出され、前記運転手によって始動又は実施される前記ブレーキ作動プロセスの結果として生じる車両の減速が所定の比較基準を満足する場合に、生じることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記後輪(103hl、103hr)に対するブレーキ作動介入は、前記横転運動が前記運転手によって始動又は実施されるブレーキ作動プロセス中に検出され、前記運転手によって始動又は実施される前記ブレーキ作動プロセスの結果として生じる車両の減速が所定の比較基準を満足する場合に、付加的にもたらされることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
生じる前記車両の減速が、所定の閾値よりも小さい場合、前記運転手によって始動又は実施される前記ブレーキ作動プロセスの結果として前記後輪(103hl、103hr)に生じるブレーキ作動効果は、前記後輪(103hl、103hr)に対してもたらされる前記ブレーキ作動介入によって、少なくとも部分的に低減されることを特徴とする請求項7あるいは8に記載の方法。
【請求項10】
前記ブレーキ作動効果は、前記運転手によって始動又は実施される前記ブレーキ作動プロセスの結果として生じた前記車両の減速の値が少なくとも維持される範囲まで、低減されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
生じる前記車両の減速が所定の閾値よりも大きい場合、前記運転手によって始動又は実施される前記ブレーキ作動プロセスの結果として前記後輪(103hl、103hr)に生じる前記ブレーキ作動効果は、前記後輪(103hl、103hr)に対してもたらされる前記ブレーキ作動介入によって、少なくとも維持されることを特徴とする請求項7あるいは8に記載の方法。
【請求項12】
アンチロックブレーキシステムの介入が片方又は両方の前輪(103vl、103vr)においてなされる場合、前記後輪(103hl、103hr)に対してもたらされる前記ブレーキ作動介入によって、付加的なブレーキ効果が後車軸において増大されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記後車軸における前記付加的なブレーキ作動効果の増大は、前記運転手によって始動又は実施される前記ブレーキ作動プロセスの結果として生じた前記車両の減速の値が維持されるように、実施されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
実質的に一定のブレーキ作動効果が、前記後輪(103hl、103hr)に対して付加的に許容されるか又はもたらされる前記ブレーキ作動介入によって、前記後輪(103hl、103hr)において達成されることを特徴とする請求項3〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記前輪(103vl、103vr)に対してもたらされる前記ブレーキ作動介入は、各場合に、基本力とダイナミック力成分から成るブレーキ作動力を生じることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも前記牽引車(101)は、油圧、電気油圧、空圧、又は電気空圧ブレーキシステムを備え、前記前輪(103vl、103vr)に対してもたらされる前記ブレーキ作動介入は、各場合に、基本圧力とダイナミック圧力ピークから成るブレーキ圧力が、前記前輪(103vl、103vr)に割り当てられた車輪ブレーキシリンダーに送給される状況をもたらすことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記連結車(104)の前記横転運動を相殺する前記ヨーモーメントは、前記ダイナミック力成分又は前記ダイナミック圧ピークによって、生成されることを特徴とする請求項15あるいは16に記載の方法。
【請求項18】
前記基本力の値又は前記基本圧力の値は、ヨー角速度の偏差、特に、ヨー角速度センサを用いて測定される前記ヨー角速度の実値(GIER_ROH)と数学モデルを用いて決定される前記ヨー角速度の設定値(Gier_Stat)との間の差から得られる偏差の関数として、決定されることを特徴とする請求項15あるいは16に記載の方法。
【請求項19】
前記ダイナミック力成分の値又は前記ダイナミック圧力ピークの値は、前記ヨー角速度の偏差の経時変化を示す変数の関数として決定されることを特徴とする請求項15あるいは16に記載の方法。
【請求項20】
前記横転運動が減少するにつれて、前記基本圧力と前記ダイナミック圧ピークの両方が減少することを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記ブレーキ作動介入に加えて、エンジン介入も実施され、前記エンジンによって出力されるモーメントは、周方向力が全く前記牽引車の前記被駆動輪に生じないか又は零に近い周方向力が前記牽引車の前記被駆動輪に生じるように、これらのエンジン介入によって設定されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記ブレーキ作動介入に加えて、エンジン介入も実施され、前記エンジンによって出力されるモーメントは、駆動伝達系に生じる摩擦損失が補償され、前記被駆動輪には周方向力に関してニュートラルな設定が与えられるように、これらのエンジン介入によって設定されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項23】
安定化ブレーキ作動介入が始動された後、前記連結車(104)の不安定さが減少しているかどうかが確認され、前記連結車(104)が再び安定状態に達したとき、更なる安定化ブレーキ作動介入は行なわれず、同時に、駆動トルクは、前記運転手によって予め定められてアクセルペダルの作動から得られる値に従って、設定されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記ブレーキ作動介入は、前記車両に作用する前記検知されたヨーモーメントの値の関数として、及び/又は前記検知されたヨー加速度の値の関数として、前記前輪(103vl、103vr)において実施されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記牽引車の少なくとも前記ヨー角速度(GIER_ROH)が決定され、ダイナミック運動の入力変数として評価されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記車両の速度(V)、前記ヨー角速度(GIER_ROH)、及びかじ取り角(LW)が、横転運動が生じているかどうかを決定するために、評価されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記運転手がいかなる操舵介入を行っていないにもかかわらず、前記車両の速度(V)が関連する閾値よりも高い前記連結車(104)の作動状態において、前記ヨー角速度が振動挙動を示す場合、横転運動が生じていることを特徴とする請求項1〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記連結車(104)の横転運動の存在が、前記ヨー角速度の実値(GIER_ROH)と関連する設定値(Gier_Stat)との間の偏差を含む偏差変数(Delta_Gier_PID)の関数として検出されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項29】
牽引車(101)とトレーラ又はセミトレーラ(102)から構成される連結車(104)を安定にする装置であって、前記牽引車(101)は、前輪(103vl、103vr)と後輪(103hl、103hr)とを有し、前記装置は、少なくとも1つのダイナミック運動の入力変数を測定及び評価する手段(301、401、402、901)を備え、前記装置は、前記連結車の横転運動が前記評価によって検出された場合に前記連結車の前記ダイナミック運動状態を安定にするための少なくともブレーキ作動介入を前記牽引車に対してもたらす手段(302、902)も備えるような装置において、前記連結車(104)の前記横転運動を相殺するヨーモーメントが、前記牽引車(101)の前記前輪(103vl、103vr)に対してもたらされる前記ブレーキ作動介入によってのみ生成されることを特徴とする装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
牽引車(101)とトレーラ又はセミトレーラ(102)から構成される連結車(104)を安定にする方法であって、前記牽引車(101)は、前輪(103vl、103vr)と後輪(103hl、103hr)とを有し、少なくとも1つのダイナミック運動の入力変数(GIER_ROH)が測定及び評価され、前記連結車(104)の横転運動が前記評価によって検出された場合、前記連結車(104)のダイナミック運動状態を安定にするための少なくともブレーキ作動介入が、前記牽引車(101)に対してなされ、前記連結車(104)の前記横転運動を相殺するヨーモーメントが、前記牽引車(101)の前記前輪(103vl、103vr)に対してもたらされるブレーキ作動介入によってのみ生成され、前記牽引車(101)の前記後輪(103hl、103hr)に対するブレーキ作動介入が、前記連結車(104)の所定の作動状態が生じたときにのみ、付加的に許容されるか又はもたらされ、前記後輪(103hl、103hr)に対して付加的に許容されるか又はもたらされる前記ブレーキ作動介入によって、実質的に一定のブレーキ作動効果が、前記後輪(103hl、103hr)において達成されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記後輪(103hl、103hr)に対するブレーキ作動介入が許容される前記連結車(104)の前記所定の作動状態は、前記連結車(104)の横転運動が検出され、同時に、運転手によるブレーキ作動がなく、前記連結車(104)が低摩擦係数を有している路面に位置している場合に、生じることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記後輪(103hl、103hr)に対するブレーキ作動介入がもたらされる前記連結車(104)の前記所定の作動状態は、前記連結車(104)の横転運動が検出され、同時に、運転手によるブレーキ作動がなく、前記前輪(103vl、103vr)に対してもたらされる前記ブレーキ作動介入が前記前輪(103vl、103vr)をロックする危険をもたらす場合に、生じることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記後輪(103hl、103hr)に対するブレーキ作動介入は、前記連結車(104)の横転運動が検出され、運転手によるブレーキ作動がなく、前記連結車(104)が低摩擦係数を有する路面に位置している場合に、付加的に許容されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記後輪(103hl、103hr)に対するブレーキ作動介入は、前記連結車(104)の横転運動が検出され、運転手によるブレーキ作動がなく、前記前輪(103vl、103vr)に対してもたらされるブレーキ作動介入が、前記前輪(103vl、103vr)をロックする危険をもたらす場合に、付加的にもたらされることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記後輪(103hl、103hr)に対するブレーキ作動介入がもたらされる前記連結車(104)の前記所定の作動状態は、前記横転運動が前記運転手によって始動又は実施されるブレーキ作動プロセス中に検出され、前記運転手によって始動又は実施される前記ブレーキ作動プロセスの結果として生じる車両の減速が所定の比較基準を満足する場合に、生じることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記後輪(103hl、103hr)に対するブレーキ作動介入は、前記横転運動が前記運転手によって始動又は実施されるブレーキ作動プロセス中に検出され、前記運転手によって始動又は実施される前記ブレーキ作動プロセスの結果として生じる車両の減速が所定の比較基準を満足する場合に、付加的にもたらされることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
生じる前記車両の減速が、所定の閾値よりも小さい場合、前記運転手によって始動又は実施される前記ブレーキ作動プロセスの結果として前記後輪(103hl、103hr)に生じるブレーキ作動効果は、前記後輪(103hl、103hr)に対してもたらされる前記ブレーキ作動介入によって、少なくとも部分的に低減されることを特徴とする請求項6あるいは7に記載の方法。
【請求項9】
前記ブレーキ作動効果は、前記運転手によって始動又は実施される前記ブレーキ作動プロセスの結果として生じた前記車両の減速の値が少なくとも維持される範囲まで、低減されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
生じる前記車両の減速が所定の閾値よりも大きい場合、前記運転手によって始動又は実施される前記ブレーキ作動プロセスの結果として前記後輪(103hl、103hr)に生じる前記ブレーキ作動効果は、前記後輪(103hl、103hr)に対してもたらされる前記ブレーキ作動介入によって、少なくとも維持されることを特徴とする請求項6あるいは7に記載の方法。
【請求項11】
アンチロックブレーキシステムの介入が片方又は両方の前輪(103vl、103vr)においてなされる場合、前記後輪(103hl、103hr)に対してもたらされる前記ブレーキ作動介入によって、付加的なブレーキ効果が後車軸において増大されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記後車軸における前記付加的なブレーキ作動効果の増大は、前記運転手によって始動又は実施される前記ブレーキ作動プロセスの結果として生じた前記車両の減速の値が維持されるように、実施されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記前輪(103vl、103vr)に対してもたらされる前記ブレーキ作動介入は、各場合に、基本力とダイナミック力成分から成るブレーキ作動力を生じることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも前記牽引車(101)は、油圧、電気油圧、空圧、又は電気空圧ブレーキシステムを備え、前記前輪(103vl、103vr)に対してもたらされる前記ブレーキ作動介入は、各場合に、基本圧力とダイナミック圧力ピークから成るブレーキ圧力が、前記前輪(103vl、103vr)に割り当てられた車輪ブレーキシリンダーに送給される状況をもたらすことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記連結車(104)の前記横転運動を相殺する前記ヨーモーメントは、前記ダイナミック力成分又は前記ダイナミック圧ピークによって、生成されることを特徴とする請求項13あるいは14に記載の方法。
【請求項16】
前記基本力の値又は前記基本圧力の値は、ヨー角速度の偏差、特に、ヨー角速度センサを用いて測定される前記ヨー角速度の実値(GIER_ROH)と数学モデルを用いて決定される前記ヨー角速度の設定値(Gier_Stat)との間の差から得られる偏差の関数として、決定されることを特徴とする請求項13あるいは14に記載の方法。
【請求項17】
前記ダイナミック力成分の値又は前記ダイナミック圧力ピークの値は、前記ヨー角速度の偏差の経時変化を示す変数の関数として決定されることを特徴とする請求項13あるいは14に記載の方法。
【請求項18】
前記横転運動が減少するにつれて、前記基本圧力と前記ダイナミック圧ピークの両方が減少することを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記ブレーキ作動介入に加えて、エンジン介入も実施され、前記エンジンによって出力されるモーメントは、周方向力が全く前記牽引車の前記被駆動輪に生じないか又は零に近い周方向力が前記牽引車の前記被駆動輪に生じるように、これらのエンジン介入によって設定されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記ブレーキ作動介入に加えて、エンジン介入も実施され、前記エンジンによって出力されるモーメントは、駆動伝達系に生じる摩擦損失が補償され、前記被駆動輪には周方向力に関してニュートラルな設定が与えられるように、これらのエンジン介入によって設定されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項21】
安定化ブレーキ作動介入が始動された後、前記連結車(104)の不安定さが減少しているかどうかが確認され、前記連結車(104)が再び安定状態に達したとき、更なる安定化ブレーキ作動介入は行なわれず、同時に、駆動トルクは、前記運転手によって予め定められてアクセルペダルの作動から得られる値に従って、設定されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記ブレーキ作動介入は、前記車両に作用する前記検知されたヨーモーメントの値の関数として、及び/又は前記検知されたヨー加速度の値の関数として、前記前輪(103vl、103vr)において実施されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記牽引車の少なくとも前記ヨー角速度(GIER_ROH)が決定され、ダイナミック運動の入力変数として評価されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記車両の速度(V)、前記ヨー角速度(GIER_ROH)、及びかじ取り角(LW)が、横転運動が生じているかどうかを決定するために、評価されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記運転手がいかなる操舵介入を行っていないにもかかわらず、前記車両の速度(V)が関連する閾値よりも高い前記連結車(104)の作動状態において、前記ヨー角速度が振動挙動を示す場合、横転運動が生じていることを特徴とする請求項1〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記連結車(104)の横転運動の存在が、前記ヨー角速度の実値(GIER_ROH)と関連する設定値(Gier_Stat)との間の偏差を含む偏差変数(Delta_Gier_PID)の関数として検出されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項27】
牽引車(101)とトレーラ又はセミトレーラ(102)から構成される連結車(104)を安定にする装置であって、前記牽引車(101)は、前輪(103vl、103vr)と後輪(103hl、103hr)とを有し、前記装置は、少なくとも1つのダイナミック運動の入力変数を測定及び評価する手段(301、401、402、901)を備え、前記装置は、前記連結車の横転運動が前記評価によって検出された場合に前記連結車の前記ダイナミック運動状態を安定にするための少なくともブレーキ作動介入を前記牽引車に対してもたらす手段(302、902)を備え、前記連結車(104)の前記横転運動を相殺するヨーモーメントが、前記牽引車(101)の前記前輪(103vl、103vr)に対してもたらされるブレーキ作動介入によってのみ生成され、前記牽引車(101)の前記後輪(103hl、103hr)に対するブレーキ作動介入が、前記連結車(104)の所定の作動状態が生じたときにのみ、付加的に許容されるか又はもたらされ、前記後輪(103hl、103hr)に対して付加的に許容されるか又はもたらされる前記ブレーキ作動介入によって、実質的に一定のブレーキ作動効果が、前記後輪(103hl、103hr)において達成されることを特徴とする装置。
【請求項1】
牽引車(101)とトレーラ又はセミトレーラ(102)から構成される連結車(104)を安定にする方法であって、前記牽引車(101)は、前輪(103vl、103vr)と後輪(103hl、103hr)とを有し、少なくとも1つのダイナミック運動の入力変数(GIER_ROH)が測定及び評価され、前記連結車(104)の横転運動が前記評価によって検出された場合、前記連結車(104)のダイナミック運動状態を安定にするための少なくともブレーキ作動介入が、前記牽引車(101)に対してもたらされる方法において、前記連結車(104)の前記横転運動を相殺するヨーモーメントが、前記牽引車(101)の前記前輪(103vl、103vr)に対してもたらされる前記ブレーキ作動介入によってのみ生成されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記牽引車(101)の前記後輪(103hl、103hr)に対するブレーキ作動介入が、前記連結車(104)の所定の作動状態が生じたときにのみ、付加的に許容されるか又はもたらされることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記後輪(103hl、103hr)に対するブレーキ作動介入が許容される前記連結車(104)の前記所定の作動状態は、前記連結車(104)の横転運動が検出され、同時に、運転手によるブレーキ作動がなく、前記連結車(104)が低摩擦係数を有している路面に位置している場合に、生じることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記後輪(103hl、103hr)に対するブレーキ作動介入がもたらされる前記連結車(104)の前記所定の作動状態は、前記連結車(104)の横転運動が検出され、同時に、運転手によるブレーキ作動がなく、前記前輪(103vl、103vr)に対してもたらされる前記ブレーキ作動介入が前記前輪(103vl、103vr)をロックする危険をもたらす場合に、生じることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記後輪(103hl、103hr)に対するブレーキ作動介入は、前記連結車(104)の横転運動が検出され、運転手によるブレーキ作動がなく、前記連結車(104)が低摩擦係数を有する路面に位置している場合に、付加的に許容されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記後輪(103hl、103hr)に対するブレーキ作動介入は、前記連結車(104)の横転運動が検出され、運転手によるブレーキ作動がなく、前記前輪(103vl、103vr)に対してもたらされるブレーキ作動介入が、前記前輪(103vl、103vr)をロックする危険をもたらす場合に、付加的にもたらされることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記後輪(103hl、103hr)に対するブレーキ作動介入がもたらされる前記連結車(104)の前記所定の作動状態は、前記横転運動が前記運転手によって始動又は実施されるブレーキ作動プロセス中に検出され、前記運転手によって始動又は実施される前記ブレーキ作動プロセスの結果として生じる車両の減速が所定の比較基準を満足する場合に、生じることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記後輪(103hl、103hr)に対するブレーキ作動介入は、前記横転運動が前記運転手によって始動又は実施されるブレーキ作動プロセス中に検出され、前記運転手によって始動又は実施される前記ブレーキ作動プロセスの結果として生じる車両の減速が所定の比較基準を満足する場合に、付加的にもたらされることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
生じる前記車両の減速が、所定の閾値よりも小さい場合、前記運転手によって始動又は実施される前記ブレーキ作動プロセスの結果として前記後輪(103hl、103hr)に生じるブレーキ作動効果は、前記後輪(103hl、103hr)に対してもたらされる前記ブレーキ作動介入によって、少なくとも部分的に低減されることを特徴とする請求項7あるいは8に記載の方法。
【請求項10】
前記ブレーキ作動効果は、前記運転手によって始動又は実施される前記ブレーキ作動プロセスの結果として生じた前記車両の減速の値が少なくとも維持される範囲まで、低減されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
生じる前記車両の減速が所定の閾値よりも大きい場合、前記運転手によって始動又は実施される前記ブレーキ作動プロセスの結果として前記後輪(103hl、103hr)に生じる前記ブレーキ作動効果は、前記後輪(103hl、103hr)に対してもたらされる前記ブレーキ作動介入によって、少なくとも維持されることを特徴とする請求項7あるいは8に記載の方法。
【請求項12】
アンチロックブレーキシステムの介入が片方又は両方の前輪(103vl、103vr)においてなされる場合、前記後輪(103hl、103hr)に対してもたらされる前記ブレーキ作動介入によって、付加的なブレーキ効果が後車軸において増大されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記後車軸における前記付加的なブレーキ作動効果の増大は、前記運転手によって始動又は実施される前記ブレーキ作動プロセスの結果として生じた前記車両の減速の値が維持されるように、実施されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
実質的に一定のブレーキ作動効果が、前記後輪(103hl、103hr)に対して付加的に許容されるか又はもたらされる前記ブレーキ作動介入によって、前記後輪(103hl、103hr)において達成されることを特徴とする請求項3〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記前輪(103vl、103vr)に対してもたらされる前記ブレーキ作動介入は、各場合に、基本力とダイナミック力成分から成るブレーキ作動力を生じることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも前記牽引車(101)は、油圧、電気油圧、空圧、又は電気空圧ブレーキシステムを備え、前記前輪(103vl、103vr)に対してもたらされる前記ブレーキ作動介入は、各場合に、基本圧力とダイナミック圧力ピークから成るブレーキ圧力が、前記前輪(103vl、103vr)に割り当てられた車輪ブレーキシリンダーに送給される状況をもたらすことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記連結車(104)の前記横転運動を相殺する前記ヨーモーメントは、前記ダイナミック力成分又は前記ダイナミック圧ピークによって、生成されることを特徴とする請求項15あるいは16に記載の方法。
【請求項18】
前記基本力の値又は前記基本圧力の値は、ヨー角速度の偏差、特に、ヨー角速度センサを用いて測定される前記ヨー角速度の実値(GIER_ROH)と数学モデルを用いて決定される前記ヨー角速度の設定値(Gier_Stat)との間の差から得られる偏差の関数として、決定されることを特徴とする請求項15あるいは16に記載の方法。
【請求項19】
前記ダイナミック力成分の値又は前記ダイナミック圧力ピークの値は、前記ヨー角速度の偏差の経時変化を示す変数の関数として決定されることを特徴とする請求項15あるいは16に記載の方法。
【請求項20】
前記横転運動が減少するにつれて、前記基本圧力と前記ダイナミック圧ピークの両方が減少することを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記ブレーキ作動介入に加えて、エンジン介入も実施され、前記エンジンによって出力されるモーメントは、周方向力が全く前記牽引車の前記被駆動輪に生じないか又は零に近い周方向力が前記牽引車の前記被駆動輪に生じるように、これらのエンジン介入によって設定されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記ブレーキ作動介入に加えて、エンジン介入も実施され、前記エンジンによって出力されるモーメントは、駆動伝達系に生じる摩擦損失が補償され、前記被駆動輪には周方向力に関してニュートラルな設定が与えられるように、これらのエンジン介入によって設定されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項23】
安定化ブレーキ作動介入が始動された後、前記連結車(104)の不安定さが減少しているかどうかが確認され、前記連結車(104)が再び安定状態に達したとき、更なる安定化ブレーキ作動介入は行なわれず、同時に、駆動トルクは、前記運転手によって予め定められてアクセルペダルの作動から得られる値に従って、設定されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記ブレーキ作動介入は、前記車両に作用する前記検知されたヨーモーメントの値の関数として、及び/又は前記検知されたヨー加速度の値の関数として、前記前輪(103vl、103vr)において実施されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記牽引車の少なくとも前記ヨー角速度(GIER_ROH)が決定され、ダイナミック運動の入力変数として評価されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記車両の速度(V)、前記ヨー角速度(GIER_ROH)、及びかじ取り角(LW)が、横転運動が生じているかどうかを決定するために、評価されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記運転手がいかなる操舵介入を行っていないにもかかわらず、前記車両の速度(V)が関連する閾値よりも高い前記連結車(104)の作動状態において、前記ヨー角速度が振動挙動を示す場合、横転運動が生じていることを特徴とする請求項1〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記連結車(104)の横転運動の存在が、前記ヨー角速度の実値(GIER_ROH)と関連する設定値(Gier_Stat)との間の偏差を含む偏差変数(Delta_Gier_PID)の関数として検出されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項29】
牽引車(101)とトレーラ又はセミトレーラ(102)から構成される連結車(104)を安定にする装置であって、前記牽引車(101)は、前輪(103vl、103vr)と後輪(103hl、103hr)とを有し、前記装置は、少なくとも1つのダイナミック運動の入力変数を測定及び評価する手段(301、401、402、901)を備え、前記装置は、前記連結車の横転運動が前記評価によって検出された場合に前記連結車の前記ダイナミック運動状態を安定にするための少なくともブレーキ作動介入を前記牽引車に対してもたらす手段(302、902)も備えるような装置において、前記連結車(104)の前記横転運動を相殺するヨーモーメントが、前記牽引車(101)の前記前輪(103vl、103vr)に対してもたらされる前記ブレーキ作動介入によってのみ生成されることを特徴とする装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
牽引車(101)とトレーラ又はセミトレーラ(102)から構成される連結車(104)を安定にする方法であって、前記牽引車(101)は、前輪(103vl、103vr)と後輪(103hl、103hr)とを有し、少なくとも1つのダイナミック運動の入力変数(GIER_ROH)が測定及び評価され、前記連結車(104)の横転運動が前記評価によって検出された場合、前記連結車(104)のダイナミック運動状態を安定にするための少なくともブレーキ作動介入が、前記牽引車(101)に対してなされ、前記連結車(104)の前記横転運動を相殺するヨーモーメントが、前記牽引車(101)の前記前輪(103vl、103vr)に対してもたらされるブレーキ作動介入によってのみ生成され、前記牽引車(101)の前記後輪(103hl、103hr)に対するブレーキ作動介入が、前記連結車(104)の所定の作動状態が生じたときにのみ、付加的に許容されるか又はもたらされ、前記後輪(103hl、103hr)に対して付加的に許容されるか又はもたらされる前記ブレーキ作動介入によって、実質的に一定のブレーキ作動効果が、前記後輪(103hl、103hr)において達成されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記後輪(103hl、103hr)に対するブレーキ作動介入が許容される前記連結車(104)の前記所定の作動状態は、前記連結車(104)の横転運動が検出され、同時に、運転手によるブレーキ作動がなく、前記連結車(104)が低摩擦係数を有している路面に位置している場合に、生じることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記後輪(103hl、103hr)に対するブレーキ作動介入がもたらされる前記連結車(104)の前記所定の作動状態は、前記連結車(104)の横転運動が検出され、同時に、運転手によるブレーキ作動がなく、前記前輪(103vl、103vr)に対してもたらされる前記ブレーキ作動介入が前記前輪(103vl、103vr)をロックする危険をもたらす場合に、生じることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記後輪(103hl、103hr)に対するブレーキ作動介入は、前記連結車(104)の横転運動が検出され、運転手によるブレーキ作動がなく、前記連結車(104)が低摩擦係数を有する路面に位置している場合に、付加的に許容されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記後輪(103hl、103hr)に対するブレーキ作動介入は、前記連結車(104)の横転運動が検出され、運転手によるブレーキ作動がなく、前記前輪(103vl、103vr)に対してもたらされるブレーキ作動介入が、前記前輪(103vl、103vr)をロックする危険をもたらす場合に、付加的にもたらされることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記後輪(103hl、103hr)に対するブレーキ作動介入がもたらされる前記連結車(104)の前記所定の作動状態は、前記横転運動が前記運転手によって始動又は実施されるブレーキ作動プロセス中に検出され、前記運転手によって始動又は実施される前記ブレーキ作動プロセスの結果として生じる車両の減速が所定の比較基準を満足する場合に、生じることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記後輪(103hl、103hr)に対するブレーキ作動介入は、前記横転運動が前記運転手によって始動又は実施されるブレーキ作動プロセス中に検出され、前記運転手によって始動又は実施される前記ブレーキ作動プロセスの結果として生じる車両の減速が所定の比較基準を満足する場合に、付加的にもたらされることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
生じる前記車両の減速が、所定の閾値よりも小さい場合、前記運転手によって始動又は実施される前記ブレーキ作動プロセスの結果として前記後輪(103hl、103hr)に生じるブレーキ作動効果は、前記後輪(103hl、103hr)に対してもたらされる前記ブレーキ作動介入によって、少なくとも部分的に低減されることを特徴とする請求項6あるいは7に記載の方法。
【請求項9】
前記ブレーキ作動効果は、前記運転手によって始動又は実施される前記ブレーキ作動プロセスの結果として生じた前記車両の減速の値が少なくとも維持される範囲まで、低減されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
生じる前記車両の減速が所定の閾値よりも大きい場合、前記運転手によって始動又は実施される前記ブレーキ作動プロセスの結果として前記後輪(103hl、103hr)に生じる前記ブレーキ作動効果は、前記後輪(103hl、103hr)に対してもたらされる前記ブレーキ作動介入によって、少なくとも維持されることを特徴とする請求項6あるいは7に記載の方法。
【請求項11】
アンチロックブレーキシステムの介入が片方又は両方の前輪(103vl、103vr)においてなされる場合、前記後輪(103hl、103hr)に対してもたらされる前記ブレーキ作動介入によって、付加的なブレーキ効果が後車軸において増大されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記後車軸における前記付加的なブレーキ作動効果の増大は、前記運転手によって始動又は実施される前記ブレーキ作動プロセスの結果として生じた前記車両の減速の値が維持されるように、実施されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記前輪(103vl、103vr)に対してもたらされる前記ブレーキ作動介入は、各場合に、基本力とダイナミック力成分から成るブレーキ作動力を生じることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも前記牽引車(101)は、油圧、電気油圧、空圧、又は電気空圧ブレーキシステムを備え、前記前輪(103vl、103vr)に対してもたらされる前記ブレーキ作動介入は、各場合に、基本圧力とダイナミック圧力ピークから成るブレーキ圧力が、前記前輪(103vl、103vr)に割り当てられた車輪ブレーキシリンダーに送給される状況をもたらすことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記連結車(104)の前記横転運動を相殺する前記ヨーモーメントは、前記ダイナミック力成分又は前記ダイナミック圧ピークによって、生成されることを特徴とする請求項13あるいは14に記載の方法。
【請求項16】
前記基本力の値又は前記基本圧力の値は、ヨー角速度の偏差、特に、ヨー角速度センサを用いて測定される前記ヨー角速度の実値(GIER_ROH)と数学モデルを用いて決定される前記ヨー角速度の設定値(Gier_Stat)との間の差から得られる偏差の関数として、決定されることを特徴とする請求項13あるいは14に記載の方法。
【請求項17】
前記ダイナミック力成分の値又は前記ダイナミック圧力ピークの値は、前記ヨー角速度の偏差の経時変化を示す変数の関数として決定されることを特徴とする請求項13あるいは14に記載の方法。
【請求項18】
前記横転運動が減少するにつれて、前記基本圧力と前記ダイナミック圧ピークの両方が減少することを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記ブレーキ作動介入に加えて、エンジン介入も実施され、前記エンジンによって出力されるモーメントは、周方向力が全く前記牽引車の前記被駆動輪に生じないか又は零に近い周方向力が前記牽引車の前記被駆動輪に生じるように、これらのエンジン介入によって設定されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記ブレーキ作動介入に加えて、エンジン介入も実施され、前記エンジンによって出力されるモーメントは、駆動伝達系に生じる摩擦損失が補償され、前記被駆動輪には周方向力に関してニュートラルな設定が与えられるように、これらのエンジン介入によって設定されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項21】
安定化ブレーキ作動介入が始動された後、前記連結車(104)の不安定さが減少しているかどうかが確認され、前記連結車(104)が再び安定状態に達したとき、更なる安定化ブレーキ作動介入は行なわれず、同時に、駆動トルクは、前記運転手によって予め定められてアクセルペダルの作動から得られる値に従って、設定されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記ブレーキ作動介入は、前記車両に作用する前記検知されたヨーモーメントの値の関数として、及び/又は前記検知されたヨー加速度の値の関数として、前記前輪(103vl、103vr)において実施されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記牽引車の少なくとも前記ヨー角速度(GIER_ROH)が決定され、ダイナミック運動の入力変数として評価されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記車両の速度(V)、前記ヨー角速度(GIER_ROH)、及びかじ取り角(LW)が、横転運動が生じているかどうかを決定するために、評価されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記運転手がいかなる操舵介入を行っていないにもかかわらず、前記車両の速度(V)が関連する閾値よりも高い前記連結車(104)の作動状態において、前記ヨー角速度が振動挙動を示す場合、横転運動が生じていることを特徴とする請求項1〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記連結車(104)の横転運動の存在が、前記ヨー角速度の実値(GIER_ROH)と関連する設定値(Gier_Stat)との間の偏差を含む偏差変数(Delta_Gier_PID)の関数として検出されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項27】
牽引車(101)とトレーラ又はセミトレーラ(102)から構成される連結車(104)を安定にする装置であって、前記牽引車(101)は、前輪(103vl、103vr)と後輪(103hl、103hr)とを有し、前記装置は、少なくとも1つのダイナミック運動の入力変数を測定及び評価する手段(301、401、402、901)を備え、前記装置は、前記連結車の横転運動が前記評価によって検出された場合に前記連結車の前記ダイナミック運動状態を安定にするための少なくともブレーキ作動介入を前記牽引車に対してもたらす手段(302、902)を備え、前記連結車(104)の前記横転運動を相殺するヨーモーメントが、前記牽引車(101)の前記前輪(103vl、103vr)に対してもたらされるブレーキ作動介入によってのみ生成され、前記牽引車(101)の前記後輪(103hl、103hr)に対するブレーキ作動介入が、前記連結車(104)の所定の作動状態が生じたときにのみ、付加的に許容されるか又はもたらされ、前記後輪(103hl、103hr)に対して付加的に許容されるか又はもたらされる前記ブレーキ作動介入によって、実質的に一定のブレーキ作動効果が、前記後輪(103hl、103hr)において達成されることを特徴とする装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図8a】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図8a】
【図9】
【公表番号】特表2006−507183(P2006−507183A)
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−554397(P2004−554397)
【出願日】平成15年11月20日(2003.11.20)
【国際出願番号】PCT/EP2003/012987
【国際公開番号】WO2004/048171
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(598051819)ダイムラークライスラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年11月20日(2003.11.20)
【国際出願番号】PCT/EP2003/012987
【国際公開番号】WO2004/048171
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(598051819)ダイムラークライスラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【Fターム(参考)】
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