説明

連結車両用の制御システム

本発明は、牽引車両(4)及びトレーラー(5)を含む連結車両(3)用の制御システム(1)に関するもので、この連結車両は、電子作動させることができるドライブトレイン(2)を備えている。牽引車両に固定される手動の運転操作装置(13)が、連結車両(3)の手動運転に対する運転要求(FW)を入力するために、車両の運転者によって使用されることができ、その運転要求から基準化された動きベクトル(BV)が生成される。牽引車両に固定される制御装置(19)が、入力側における動きベクトル(BV)から、ドライブトレイン(2)を作動させるための制御信号(SS)を出力側に発生させ、制御信号(SS)を伝送するためにドライブトレイン(2)に接続され、このドライブトレインが制御信号(SS)を処理して、運転要求(FW)を実行する。この制御システム(1)の機能性を改善するため、トレーラー調整装置(20)が牽引車両に設けられ、この装置は、入力側における少なくとも1つのトレーラー固有の実際値(IW)を読み込むために使用されることができ、その実際値(IW)を制御装置(19)に伝送し、さらに、制御装置(19)は、この少なくとも1つのトレーラー固有の実際値(IW)に応じて制御信号(SS)を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牽引車両及びトレーラーを含む連結車両用の制御システムに関する。この連結車両は、請求項1の前段に記載の、少なくともかじ取り装置、ブレーキ装置、及び駆動ユニットを含むドライブトレインであって電子作動させることができるドライブトレインを備えた連結車両である。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、車両に、少なくともかじ取り装置、ブレーキ装置及び駆動ユニットを含むドライブトレインであって電子制御できるドライブトレインを装備した車両制御システムを開示している。この場合、車両に固定して取り付けられる運転操作装置が入力段階を規定するが、車両の運転者はその運転操作装置を用いて運転要求を入力することができ、運転操作装置はその運転要求から基準化された動きベクトルを発生させる。入力側における動きベクトルから、ドライブトレインを作動させるための制御信号を出力側に発生させる制御装置が信号調整レベルを規定する。この場合、制御信号の伝送のために、この制御装置がドライブトレインに接続され、ドライブトレインが制御信号を処理して運転要求を実行する。この周知の制御システムは、きわめて多様性に富むという際立った特徴を有している。なぜなら、制御信号への変換によって運転要求を実行することが常に基準化された動きベクトルを介して行われる限り、さまざまに構成された入力段階とさまざまに構成された信号調整レベルとを、特に簡単に互に組み合わせることができるからである。
【0003】
例えばトラックのような商用車の場合は、車両と障害物との間の衝突の危険性を低減するために、難しい操縦、主としてバック走行のために、運転誘導要員が必要である。さらに、難しい操縦、特にバック走行は、牽引車両及びトレーラーによる連結車両として構成された多要素車両の場合、牽引車両とトレーラーとの間の運動学的連結のために格段に難しくなる。この点からも、運転誘導要員が、車両の運転者にとって、難しい操縦を容易にするために有用となるであろう。
【0004】
しかし、運転誘導要員の必要性は、少なくともトラックの場合、経済的見地からはきわめて厄介な問題である。トラックは、運転中は、運転誘導要員を必要とせずにその輸送機能を大部分達成するからである。トラックは、これに比べて、その運転時間のごく短い時間だけ難しい操縦をされなければならない。従って、運転誘導要員を省く要求が存在する。
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第100 32 179 A1号公報 (対応する特表2004−502581号公報)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、制御システムを装備した連結車両の難しい操縦を特に簡単化するような、冒頭に述べたタイプの制御システムに対する改善された実施形態を提供するという課題に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、本発明によれば、独立請求項の主題によって解決される。有利な実施形態が従属請求項の主題である。
【0008】
本発明は、トレーラー固有のパラメータもしくは実際値を、トレーラー調整装置を用いて、制御システムの中に読み込むあるいは入力する可能性を作り出すという一般的な着想に基づいている。さらに、制御装置は、また、供給された動きベクトルから、このトレーラー固有のパラメータもしくは実際値に応じて制御信号を発生させるようにも設計される。トレーラー固有の実際値を制御信号の決定に反映することによって、連結車両の難しい操縦、特にバック運転中の操作の困難性や危険を自動的に低減することができる。
【0009】
制御信号の決定に反映することができるトレーラー固有の実際値は、例えば、操舵牽引棒によって操舵することができるトレーラーの場合には、牽引車両と操舵牽引棒との間に形成される連接角度であり、セミトレーラーとして構成されるトレーラーの場合には、牽引車両とセミトレーラーとの間に形成される連接角度であり、固定牽引棒に固定して連結されるトレーラーの場合には、牽引車両と固定牽引棒との間に形成される連接角度である。トレーラー固有の実際値のもう1つの例は、操舵牽引棒によって操舵することができるトレーラーの場合に、トレーラーと操舵牽引棒との間に形成される牽引棒角度である。連接角度及び/又は牽引棒角度を反映することによって、例えば、不安定状態を避けるために、実現し得る車両速度を制限することができる。同様に、バック走行中に上記の角度の少なくとも1つを反映することによって、連結車両がV字型になることを防ぐことができる。
【0010】
1つの発展形態においては、トレーラー調整装置は、原則的に、ハードウェアに関しては制御装置に統合してもよく、ソフトウェアに関しても制御装置にインプリメントしてよい。本発明による制御システムを実現するための余分な出費は、この方法によって、少なくとも商用車の場合には比較的低くすることができる。これとは異なって、トレーラー調整装置を、別個に、特に単独の制御ユニットに設計することも可能である。このタイプの構造によって、制御装置で作動させることができるドライブトレインを備えた車両を、比較的低い経費で、本発明による制御装置を実現するために改造又は転換することが可能になる。制御信号の決定にトレーラー固有の実際値を反映することは、制御装置において対応するプログラムを変更することによって実現することができる。
【0011】
特に有利な実施形態によれば、制御システムに少なくとも1つの自律運転操作装置を設けることができる。この自律運転操作装置は、連結車両からは独立していて、連結車両の自律自動運転のための運転要求を入力するのに用いることができ、その運転要求から基準化された動きベクトルを発生させる。このようにして、連結車両を、手動操作によって、すなわち牽引車両の運転席に座っている車両運転者によって運転することができ、また、自律的に、すなわち本来の車両運転者とは無関係に自動運転することができる。このタイプの自律運転操作装置は、例えば、運転者が連結車両を遠方から操作できるようにする遠隔制御方式として設計してもよい。この方式も、特に、車両の難しい操縦を簡単化するという効果を有している。このタイプの自律運転操作装置は、例えば、自律自動運転可能な車両用の自動化された検査ヤード又は操作ヤード又は物流センターにおいて使用することができる。
【0012】
有利な発展形態によれば、車両のかじ取り装置は、例えばハンドル又は操作レバー(ジョイスティック)のような手動操舵手段を車両の操舵可能車輪に機械的及び/又は油圧的に連結するためのステアリングコラムを備えることができる。この場合、このかじ取り装置は、また、電子作動させることができる操舵アクチュエータを備えており、この操舵アクチュエータは、ステアリングコラムに駆動連結されていて、少なくとも連結車両の自律自動運転中は制御装置の制御信号によって作動させることができる。この操舵アクチュエータによって、機械的及び/又は油圧的ステアリングコラムを備えた従来の牽引車両を、本発明による制御システムを実現するために、きわめて簡単に転換あるいは改造することができる。従って、この特徴によって、手動運転のみしかできない従来型の車両を、簡単かつ安価な方法で自律自動運転可能な車両に転換することができる。これによって、これらの従来型車両を、特に、自動化された貨物発送ヤード又は操作ヤード又は物流センターで使用することが可能になる。
【0013】
本発明のさらに重要な特徴及び利点は、従属請求項、図面、及び図面に基づく図の関連説明から明らかになる。
【0014】
上記の特徴並びに以下に説明される特徴は、言うまでもないが、それぞれに規定される組み合わせにおいて用いることができるだけでなく、他の組み合わせにおいてもあるいは単独でも、本発明の範囲を逸脱することなく使用することができる。
【0015】
本発明の好ましい例示的実施形態が図面に示されており、以下の記述において、これをより詳細に説明する。以下の記述において、同じ指示呼称は、同じ構成要素、又は機能的に同じかもしくは類似の構成要素を指している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1によれば、本発明による制御システム1は、図4a〜4cに示す車両のドライブトレイン2を含んでいる。この車両は連結車両3として構成され、従って牽引車両4及びトレーラー5を含んでいる。ドライブトレイン2は、電子的に駆動制御することができるように設計されているので、制御システム1をドライブ・バイ・ワイヤー(drive−by−wire)システム又はX・バイ・ワイヤー(x−by−wire)システムと呼称することもできる。
【0017】
連結車両3のドライブトレイン2は、かじ取り装置6、ブレーキ装置7及び駆動ユニット8を含む。ドライブトレイン2は、さらに、電子作動させることができる変速機、及びレベル制御、並びにさらに別の構成要素を含んでもよい。
【0018】
図1に表現される実施形態においては、かじ取り装置6は、ステアリング・バイ・ワイヤーシステムとして構成され、少なくとも通常運転においては、ハンドルである手動操舵手段9と操舵輪10との間の機械的及び/又は油圧的な連結なしに作動する。このため、かじ取り装置6は操舵アクチュエータ11を備えており、操舵輪10に所望のかじ取り角を、サーボモータに類似の方法で設定する。
【0019】
ブレーキ装置7は、1つ以上のブレーキアクチュエータ12を備えており、作動させられると制動可能な車輪にそれぞれ必要なブレーキ力を付与する。駆動ユニット8は電気モータでもよいし、電気的に制御可能な内燃機関でもよい。
【0020】
制御システム1は、さらに、牽引車両4に固定して配置される手動の運転操作装置13を含んでいる。ドライブトレイン2が出力段階を構成するのに対して、手動の運転操作装置13は制御システム1の入力段階を規定する。手動の運転操作装置13は、牽引車両4の運動席14(図4参照)に配置され、車両の運転者によって手動作動させることができる多くの運転要素、例えば、上述のハンドル9、ブレーキペダル15、アクセルペダル16、及び、例えばレベル制御装置を作動させるための操作スイッチ17を含んでいる。この手動の運転操作装置13は、さらに、例えば、牽引車両4の変速機のシフトレバーを含んでもよい。手動の運転操作装置13は、車両の運転者が、連結車両3を手動運転するためにこの手動の運転操作装置13を用いて運転要求FWを制御システム1に入力することができるように設計される。この運転要求FWは、手動の運転操作装置13が、入力側における運転要求FWから基準化された動きベクトルBVを出力側に発生させるように、手動の運転操作装置13において処理される。
【0021】
制御システム1は、また、主としてバス、特にCANバスとして構築される信号データ伝送路18を備えている。制御システム1の個々の構成要素は、このデータ伝送路18を介して相互に連絡することができる。このため、対応する構成要素がこのデータ伝送路18に接続される。これに応じて、手動の運転操作装置13は、発生させた動きベクトルBVをデータ伝送路18に送り込む。
【0022】
制御システム1は、さらに、例えばプロセッサーとメモリーとを含む制御装置19を有する。この制御装置19は、牽引車両4に搭載され、入力側における動きベクトルBVから制御信号SSを出力側に発生させるように、設計されるかあるいはプログラムされる。続いて、これらの制御信号は、またデータ伝送路18を経由してドライブトレイン2の個々の構成要素に送られる。次いで、ドライブトレイン2は制御信号SSを処理することができ、それによって、入力された運転要求FWが最終的に実行される。従って、制御装置19は制御システム1の信号調整レベルを規定する。
【0023】
本発明によれば、制御システム1はトレーラー調整装置20をも装備している。このトレーラー調整装置20は、牽引車両4に固定的に配置されて制御装置19と適切な方法で相互作用するもので、入力側の1つ以上のトレーラー固有の実際値IWを制御システム1に読み込むかあるいは入力するために用いることができるように設計される。この場合、トレーラー調整装置20は、トレーラー固有の実際値IWをデータ伝送路18によって制御装置19に伝送することができる。本発明によれば、制御装置19は、動きベクトルBVの処理中に、トレーラー固有の実際値IWに応じて制御信号SSを発生させるように設計される。これは、とりわけ難しい操縦、特にバック走行の場合に、制御信号の決定中に重大な干渉に至る可能性がある。多要素車両、つまり連結車両3の運動は単一要素の車両の運動よりも格段に複雑であるからである。トレーラー固有の実際値IWを制御信号SSに反映することによって、安全性を高めて車両を運転することができるようになる。
【0024】
トレーラー固有の実際値IWを決定するために、制御システム1は、連接角度センサー21及び/又は牽引棒角度センサー22を備えてもよい。連接角度センサー21は連接角度αを決定し、それに相関する連接角度信号を発生させる。この結果、連接角度αもしくはそれに相関する信号が、データ伝送路18によってトレーラー調整装置20に伝送されることが可能になり、トレーラー調整装置20が、連接角度αを、トレーラー固有の実際値IWとして制御システム1に送る。同様に、牽引棒角度センサー22は牽引棒角度βを感知して、この角度又はこれに相関する牽引棒角度信号をデータ伝送路18に送り、これによって、牽引棒角度βがトレーラー調整装置20に達する。トレーラー調整装置20は牽引棒角度βをトレーラー固有の実際値IWと解釈して、これを対応する形式又はコードで制御システム1に送り込む。
【0025】
図4aにおいては、連結車両3が、トレーラー5をセミトレーラー5aとして設計して構成されている。この実施形態では、連接角度αが、牽引車両4とセミトレーラー5aとの間すなわち牽引車両の縦軸23とトレーラーの縦軸24との間に形成される。この両縦軸は回転継手軸25で交差しており、この回転継手軸において、トレーラー5aが牽引車両4に対して旋回することができる。
【0026】
図4bの実施形態においては、トレーラー5は、5bで示される別の形態を有しており、トレーラー5bに剛接連結されている固定牽引棒26を備えている。このタイプの実施形態においては、トレーラー5bは通常ただ1本の中心車軸もしくは中心二車軸を備えている。この実施形態では、連接角度αは、同様に、牽引車両4とトレーラー5bとの間すなわち牽引車両の縦軸23とトレーラーの縦軸24(この縦軸24は固定牽引棒の縦軸と一致する)との間に形成される。この実施形態の場合、回転継手軸25は、固定牽引棒26と牽引車両4のトレーラー連結器27との間の連結点を貫通している。
【0027】
図4cの実施形態においては、トレーラー5に操舵牽引棒28が装備されており、その操舵牽引棒28によって、トレーラー5を操舵することができる。トレーラー5のこの特別な実施形態を以後5cで表示する。トレーラー5を操舵するため、簡単化した形で表現されているが操舵牽引棒28がトレーラー5cの操舵可能車軸29に連結される。操舵可能車軸29は牽引車両4の方を向いており、旋回軸30の周りにトレーラー5cに対して旋回させることができる。この実施形態では、連接角度αは、牽引車両4と操舵牽引棒28との間すなわち牽引車両の縦軸23と操舵牽引棒の縦軸31との間に形成される。この場合、牽引棒の縦軸は、回転継手軸25と旋回軸30とを貫通して延びている。この角度とは別の角度として、牽引棒角度βが、牽引棒28とトレーラー5cとの間すなわち操舵牽引棒の縦軸31とトレーラーの縦軸24との間に形成される。
【0028】
図1によれば、本発明による制御システムは、トレーラー制御装置32を備えることができる。このトレーラー制御装置32は、トレーラーに固定され、例えば連接角度α及び/又は牽引棒角度βのようなトレーラー固有の実際値を制御システム1の中に読み込んで、それをトレーラー調整装置20に伝送することを同様に可能にする。トレーラー制御装置32はさらに別の機能を含んでもよい。例えば、トレーラー制御装置32がトレーラー側のブレーキ装置33を作動させてもよい。同様に、トレーラー制御装置32が支持具作動装置34を作動させることも可能である。これによって、トレーラー5を降ろすために、支持具(図示せず)を自動的に伸張し引き込むことが可能になる。この場合、支持具作動装置34は、手動の運転操作装置13によって作動させてもよい。そうすると、対応する制御指令を同様に動きベクトルBVに組み込むことが都合よく可能になる。
【0029】
トレーラーに固定される牽引棒角度センサー22はトレーラー制御装置32に接続すると好都合である。連接角度センサー21は、図1に示す実施形態に準拠して牽引車両側に搭載することができ、トレーラー調整装置20に接続するのが好都合である。
【0030】
これとは異なった方式として、牽引棒角度センサー22をトレーラー調整装置20に直接接続する(図2参照)ことも、及び/又は、連接角度センサー(21)をトレーラー制御装置32に直接接続する(図3参照)ことも原則的に可能である。
【0031】
図1によれば、制御システム1は、牽引車両に固定して配置されるバック走行補助装置35を備えてもよい。このバック走行補助装置35は、連結車両3がバックする際に作動し、入力側における動きベクトルBVを、出力側における修正されたバック走行動きベクトルBV’に変換する。このようにして、続いて、制御装置19が修正されたバック走行動きベクトルBV’を受け取って処理し、そのバック走行動きベクトルBV’から、以後その都度のバック走行状況に適合する制御信号SSを決定する。バック走行補助装置35は、動きベクトルBVを変換する際、トレーラー調整装置20によって制御システム1が利用できるようにされたトレーラー固有の実際値IWを反映する。
【0032】
バック走行補助装置35は、例えば、連結車両3をバック走行させる際に、車両が連結車両3ではなくて単一要素の前進制御車両である場合と同じくらい正確に、運転要求を入力することができるように設計すればよい。このようにして、車両の運転者または他のどのような運転者も、ある制限範囲内では、従来の乗用車とほとんど同様に容易に連結車両3を操縦することができる。これを実現するため、バック走行補助装置35は、供給されるトレーラー固有の実際値IW、すなわち例えば連接角度α及び牽引棒角度βを用いて、連結車両3の複雑な運動を反映し、それによって難しい操縦操作を大幅に簡単化する。
【0033】
図1によれば、制御システム1は、連結車両からは独立した少なくとも1つの自律運転操作装置36を備えてもよい。ここに示す好ましい変形例においては、この自律運転操作装置36は、制御システム1の他の構成要素と無線で連絡する。このために、自律運転操作装置36に当てがわれる送受信機ユニット38と、データ伝送路18に接続される送受信機ユニット39とを有する適当な送受信機配置37が設けられる。例えば、送受信機ユニット38、39は無線及び赤外線信号で連絡する。
【0034】
自律運転操作装置36は、原則的には、車両に固定される手動の運転操作装置13と同じ運転要素を、但し相応に適合する形で、含んでいてもよい。従って、自律運転操作装置36は、特に詳細には表現されていない運転要素、例えば、連結車両3を制動し、加速し、操舵し、また特にギアシフトし、レベル制御するための運転要素を有する。
【0035】
車両に固定される手動の運転操作装置13と同様に、連結車両からは独立している各自律運転操作装置36は、連結車両3の自律自動運転に対する運転要求FWを制御システム1に入力するために用いることができるように設計される。この場合、自律運転操作装置36は、この運転要求FWから基準化された動きベクトルBVを発生させる。従って、制御装置19は、連結車両3を手動運転する場合は手動の運転操作装置13の動きベクトルBVを処理し、連結車両3を自律自動運転する場合は自律運転操作装置36の動きベクトルBVを処理する。
【0036】
簡単な場合には、自律運転操作装置36を、連結車両3用の携帯可搬式遠隔制御器とする。車両の運転者又は他の運転者は、この遠隔制御器を用いて、操縦のために運動席14に座る必要なしに連結車両3を操縦することができる。これは、例えば、積み込みヤードその他類似の場所にバック走行させる際に有利であろう。
【0037】
このような自律運転操作装置36の別の実施形態は径路コンピュータ40を備えることができる。この種の径路コンピュータ40は、入力側における牽引車両4及びトレーラー5の方位と位置とに対する実際値及び目標点の値から、一連の動きベクトルBVから構成される移動径路を計算するように設計される。この移動径路の動きベクトルBVは、制御装置19によって制御信号SSに変換され、ドライブトレイン2によって処理されることができる。その結果、連結車両3は、その実際の方位及び実際の位置から、所望の目標点の方位及び目標点の位置に、自動的に動かされることになる。例えば、目標点の方位及び目標点の位置は、予め決められた積み込みステーションに関して、連結車両3の最適の相対方位を規定する。連結車両3の方位及び位置に対する実際値は、例えば方位及び位置決定装置(図には表現されていない)によって決定することができ、径路コンピュータ40が利用できるようにされる。このタイプの方位及び位置決定装置は、例えば連結車両3に組み込んでもよく、また、例えば少なくとも1つの読み出し可能な羅針儀と衛星支援のナビゲーション装置とを含む。このような内部的な方位及び位置決定装置の代替装置として、例えば画像処理装置によって、あるいはソナー又はレーダー原理に基づいて作動する外部装置を設けることもできる。このような外部的方位及び位置決定装置は、連結車両3を自律自動的に運転することができる、例えば自動化された貨物発送ヤードあるいは操作ヤードあるいは物流センターの現場を監視してもよい。このようなヤード又はセンターにおいては、少なくとも1つの予め決定された目標点の方位及び目標点の位置が、例えば駐車スペース又は積み込みステーションの形状で、トレーラー5又は牽引車両4に対して設定される。この場合、自律運転操作装置36及び径路コンピュータ40は、それぞれ、この自動化された貨物発送ヤードあるいは操作ヤードあるいは物流センターの構成要素とするのが好ましい。このようにして、連結車両3を、上記の施設のヤード内において、遠隔制御の下で自律自動的に、原則的に運転者なしで運転することができる。
【0038】
制御装置19は、入力側における動きベクトルBVが、手動の運転操作装置13と自律運転操作装置36とのいずれに由来するものであるかを検知するように設計すると好都合である。また、制御装置19は、連結車両3の自律自動運転においては、その最大速度を低い値、例えば歩行速度に制限するように設計するのが好都合である。
【0039】
さらに、例えば物流センターの内部では、連結車両3を、車両の運転者が運転席14に座っていても、自律運転操作装置36によって自律自動的に運転することが原理的に可能である。その結果、車両の運転者が、意図的にあるいは意図することなく、手動の運転操作装置13によって連結車両3の自律自動運転に介入することがあり得る。制御装置19は、一方では、連結車両3の自律自動運転において手動の運転操作装置13の動きベクトルBVをも実現可能にし、手動の運転操作装置13の動きベクトルBVが自律運転操作装置36の動きベクトルBVと一致しない場合には、予め定めた基準に基づいて、どちらの動きベクトルBVを完全に又は部分的に実際に反映して制御信号SSに変換するかを決定するように設計するのが好都合である。例えば、制御装置19は、自律運転操作装置36の操舵指令及び加速指令を優先するが、一方では、手動の運転操作装置13のブレーキ指令を優先するように設計してもよい。これは、連結車両3の自律自動運転においては、手動の運転操作装置13のハンドル9及びアクセルペダル16の作動は無効のままになっており、その結果、車両の運転者は、ブレーキペダル15によってのみ連結車両3の運転操作に介入することができることを意味している。一致しない動きベクトルBVの優先付けも、原則的には、他の何らかの安全上の方針に基づいて定めてもよい。例えば、自律自動運転においては、手動の運転操作装置13の動きベクトルBVを完全に無視してもよい。
【0040】
図1及び3の実施形態においては、かじ取り装置6がステア・バイ・ワイヤーシステムとして設計されているのに対して、図2は、かじ取り装置6が、ハンドル9と操舵輪10との間に、正確に言えばステアリングコラム41の形で、機械的及び/又は油圧的な連結を有する実施形態を示している。本発明による制御システム1を実現するために、基本的に機械及び/又は油圧方式のこのかじ取り機構に、電子作動させることができる操舵アクチュエータ11が付加的に装備される。この実施形態では、この操舵アクチュエータ11はステアリングコラム41に駆動連結される。このようにして、ハンドル9とステアリングコラム41と操舵輪10とによる基本的に従来型の車両かじ取り機構を、ステアリングコラム41を適切に駆動する操舵アクチュエータ11によって、制御信号SSでもって作動させることができる。従って、この実施形態においては、従来型のかじ取り機構を有する牽引車両4の場合、このタイプの操舵アクチュエータ11を取り付けることによって、本発明による制御システム1を実現することが原理的に可能である。このようにして、例えば、作動させることができるドライブトレイン2を備えた従来型の車両を、上述の種類の物流センターにおける運転用に改造することができる。
【0041】
図2に示す実施形態は、また、バック走行補助装置35がハードウェアに関しては制御装置19に統合され、ソフトウェアに関しても制御装置にインプリメントされるという点で、図1に基づく変形例と異なる。
【0042】
図3は、さらに別の変形例を示しており、これは、トレーラー調整装置20が、ハードウェアに関しては制御装置19に統合され、ソフトウェアに関しても制御装置19にインプリメントされるという点で、図1及び2の変形例と異なっている。図3の実施形態の変形例として、図1の実施形態と同様に、バック走行補助装置35をも制御装置19に関して外部配置してもよいことは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の1つの実施形態における制御システムの回路図のきわめて簡単な基本的概略図である。
【図2】本発明の別の実施形態における制御システムの回路図のきわめて簡単な基本的概略図である。
【図3】本発明のさらに別の実施形態における制御システムの回路図のきわめて簡単な基本的概略図である。
【図4a】本発明の制御システムを装備することができる1つのタイプの連結車両であって、牽引車両及びトレーラーを含む連結車両の概略平面図である。
【図4b】本発明の制御システムを装備することができる別のタイプの連結車両であって、牽引車両及びトレーラーを含む連結車両の概略平面図である。
【図4c】本発明の制御システムを装備することができるさらに別のタイプの連結車両であって、牽引車両及びトレーラーを含む連結車両の概略平面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
牽引車両(4)及びトレーラー(5)を含む連結車両(3)用の制御システムであって、
少なくともかじ取り装置(6)とブレーキ装置(7)と駆動ユニット(8)とを有し、電子作動させることができるドライブトレイン(2)を備え、
手動の運転操作装置(13)が前記牽引車両に設けられ、この装置は、前記連結車両(3)を手動運転するための運転要求(FW)を入力するために、前記車両の運転者によって使用され、前記運転要求(FW)から基準化された動きベクトル(BV)を発生させ、
制御装置(19)が前記牽引車両に設けられ、この装置は、入力側における動きベクトル(BV)から、前記ドライブトレイン(2)を作動させるための制御信号(SS)を出力側に発生させ、前記制御信号(SS)を伝送するために前記ドライブトレイン(2)に接続され、このドライブトレインが前記制御信号(SS)を処理して、前記運転要求(FW)を実行する制御システムにおいて、
トレーラー調整装置(20)が前記牽引車両に設けられ、この装置は、入力側における少なくとも1つのトレーラー固有の実際値(IW)を読み込むために使用され、その実際値(IW)は前記制御装置(19)に伝送され、
前記制御装置(19)は、前記少なくとも1つのトレーラー固有の実際値(IW)に応じて前記制御信号(SS)を発生させることを特徴とする連結車両用の制御システム。
【請求項2】
連接角度センサー(21)が設けられ、このセンサーは、前記牽引車両(4)と、トレーラー(5c)の操舵牽引棒(28)であってこのトレーラー(5c)が前記操舵牽引棒(28)によって操舵されることができる操舵牽引棒(28)との間、あるいは、前記牽引車両(4)とセミトレーラー(5a)として形成されたトレーラー(5a)との間、あるいは、前記牽引車両(4)と固定牽引棒(26)に剛接連結されたトレーラー(5b)との間に現在存在する連接角度(α)を、トレーラー固有の実際値(IW)として検知して、それに相関する連接角度信号を発生させること、
前記連接角度センサー(21)は、前記牽引車両あるいは前記トレーラーに固定して配置されること、
を特徴とする請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
牽引棒角度センサー(22)が前記トレーラーに設けられ、このセンサーは、前記牽引棒(26;28)と前記トレーラー(5)との間の牽引棒角度(β)を、トレーラー固有の実際値(IW)として検知して、それに対応する牽引棒角度信号を発生させることを特徴とする請求項1あるいは2に記載の制御システム。
【請求項4】
前記連接角度信号又は前記牽引棒角度信号を伝送するために、前記連接角度センサー(21)及び/又は前記牽引棒角度センサー(22)が前記トレーラー調整装置(20)に接続されることを特徴とする請求項2あるいは3に記載の制御システム。
【請求項5】
トレーラー制御装置(32)が前記トレーラーに設けられ、この装置は、トレーラー固有の実際値(IW)を記録するために使用されることができ、前記実際値IWを前記トレーラー調整装置(20)に伝送することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項6】
前記連接角度信号又は前記牽引棒角度信号を伝送するために、前記連接角度センサー(21)及び前記牽引棒角度センサー(22)が前記トレーラー制御装置(32)に接続されることを特徴とする請求項5に記載の制御システム。
【請求項7】
前記トレーラー調整装置(20)が、ハードウェアに関して前記制御装置(19)に統合され、及び/又は、ソフトウェアに関して前記制御装置(19)にインプリメントされることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項8】
バック走行補助装置(35)が前記牽引車両に設けられ、この装置は、前記連結車両(3)のバック走行の間、入力側における動きベクトル(BV)を、前記少なくとも1つのトレーラー固有の実際値(IW)に応じて、出力側におけるバック走行動きベクトル(BV’)に変換し、それを前記制御装置(19)が利用できるようにすることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項9】
前記バック走行補助装置(35)が、前記連結車両(3)のバック走行中に、バック走行時に単一要素の前進制御車両と同じように前記運転要求(FW)を入力することを可能にするように構成されることを特徴とする請求項8に記載の制御システム。
【請求項10】
前記バック走行補助装置(35)が、ハードウェアに関して前記制御装置(19)に統合され、及び/又は、ソフトウェアに関して前記制御装置(19)にインプリメントされることを特徴とする請求項8あるいは9に記載の制御システム。
【請求項11】
少なくとも1つの自律運転操作装置(36)が前記連結車両とは独立に設けられ、この装置は、前記連結車両(3)の自律自動運転のための運転要求(FW)を入力するのに使用されることができ、前記運転要求(FW)から基準化された動きベクトル(BV)を発生させることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項12】
前記かじ取り装置(6)がステア・バイ・ワイヤーシステムとして設計されていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項13】
前記かじ取り装置(6)が、手動操舵手段(9)を前記牽引車両(4)の操舵可能車輪(10)に機械的及び/又は油圧的に連結するためのステアリングコラム(41)を有していること、
前記かじ取り装置(6)が、前記ステアリングコラム(41)に駆動連結される操舵アクチュエータ(11)であって電子作動させることができる操舵アクチュエータ(11)をも備え、少なくとも前記連結車両(3)の自律自動運転中は、前記制御装置(19)の制御信号(SS)によって作動させられることができること、を特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項14】
少なくとも1つの自律運転操作装置(36)が径路コンピュータ(40)を有しており、このコンピュータは、入力側における前記牽引車両(4)及び前記トレーラー(5)の方位と位置とに対する実際値及び目標点の値から、一連の動きベクトル(BV)から構成される移動径路を計算し、この動きベクトルは、前記移動径路の動きベクトル(BV)が処理される際に、連結車両(3)を、その実際の方位及び実際の位置から目標点の方位及び目標点の位置に移動させることを特徴とする少なくとも請求項11に記載の制御システム。
【請求項15】
この自律運転操作装置(36)及び/又は径路コンピュータ(40)が、それぞれ、自律自動的に運転することができる車両用の自動化された貨物発送ヤードあるいは操作ヤードあるいは物流センターの構成要素であることを特徴とする請求項14に記載の制御システム。
【請求項16】
前記制御装置(19)及び前記自律運転操作装置(36)が無線にて通信されるように構成されることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項17】
自律自動運転時に、前記制御装置(19)が、前記連結車両(3)の最大速度を低い値に制限することを特徴とする請求項1〜16のいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項18】
自律自動運転時に、前記制御装置(19)が、前記手動の運転操作装置(13)の動きベクトル(BV)の入力を許容し、前記手動の運転操作装置(13)の動きベクトル(BV)が前記自律運転操作装置(36)の動きベクトル(BV)と一致しない場合は、操舵指令及び加速指令に関しては前記自律運転操作装置(36)を優先し、ブレーキ指令に関しては前記手動の運転操作装置(13)を優先する、ことを特徴とする請求項1〜17のいずれか1項に記載の制御システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【公表番号】特表2007−525378(P2007−525378A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−506672(P2007−506672)
【出願日】平成17年2月22日(2005.2.22)
【国際出願番号】PCT/EP2005/001808
【国際公開番号】WO2006/094519
【国際公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(598051819)ダイムラークライスラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【Fターム(参考)】