説明

連結鋼線巻付機

【課題】人力ではなくモーターを利用して連結鋼線の巻付けを行うことで、作業者の労力負担の軽減を実現し、さらには、作業効率を改善することが可能な連結鋼線巻付機の提供を図る。
【解決手段】連結鋼線巻付機であって、ハンドルと、該ハンドルの上部に設置されるモーターと、該モーターに接続され下方に伸びる中空シャフトと、該中空シャフトの下端部を挿入できるシャフト受け部並びにその下方に鋼線巻付部を備え且つ下端に鋼線接触部を有する駒体を装備した回転工具からなる構成となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河岸や堤防を直接保護する護岸、河床の洗掘を防ぐ河川根固工、消波根固工、さらには堤防や擁壁などの法面覆工などで利用される土木構造物として、広く利用されるようになったコンクリート連結ブロックおよびコンクリート連結構造物の連結鋼線を容易に巻きつける装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
護岸工事は、台風やその他の雨による増水によって河川が浸食等されるのを防ぐために行うものであり、昔から河川周辺に住む人々にとっては、なくてはならないものである。従来は、鉄線の籠に玉石などを詰めてのり面に敷設する「鉄線蛇籠工」、割栗石や雑石などを用いて河床洗掘を防ぐ「捨て石工」などにより護岸工事が行われていたが、時代の流れとともに、護岸工事における工法及び土木構造物も変化し、より施工性に優れ建設コストの低減を図ることができるコンクリート連結ブロック等の連結構造物が用いられるようになった。その結果、従来工法に比べて、水の洗掘や浸食などの破壊から防護する効果は高まった。
【0003】
しかしながら、コンクリート連結ブロック等の連結構造物を用いた工法における連結方法は、主として連結構造物に通した複数本の連結鋼線を互いに巻き付けて連結されるものであるところ、その作業自体は原始的なラチェット式や手作業により行われている。そしてかかる連結に使用される連結鋼線は、6mm〜8mmという太い鋼線が使用されているため、その連結作業には過大な労力を要して作業者の負担は大きく、作業効率も悪いといった問題を生じている。また、手作業による連結不備等の不具合も生じやすく、外観的にも鋼線の連結状態が場所によって異なるといった問題があった。
【特許文献1】特開2004―283967号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題点に鑑み、人力ではなくモーターを利用して連結鋼線の巻付けを行うことで、作業者の労力負担の軽減を実現し、さらには、作業効率を改善することが可能な連結鋼線巻付機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、本発明は、ハンドルと、該ハンドルの上部に設置されるモーターと、該モーターに接続され下方に伸びる中空シャフトと、該中空シャフトの下端部を挿入できるシャフト受け部並びにその下方に鋼線巻付部を備え且つ下端に鋼線接触部を有する駒体を装備した回転工具からなる構成となっている。
【0006】
また、本発明は、前記駒体が、回転工具に対して回動自在に装備してなる構成とすることができる。
【0007】
さらに、本発明は、前記駒体の下端における鋼線と接触する鋼線接触部が、末広形状である構成を採用することもできる。
【発明の効果】
【0008】
本発明にかかる連結鋼線巻付機によれば、モーターによる機械の力で連結鋼線の巻付を行うため、従来のラチェット式あるいは手作業といった人力による作業に比して作業者の労力負担の軽減が図られ、かつ、構造が複雑なものでなく操作も簡単で、実際の作業において誰でも容易に取り扱うことが可能であり、作業効率の向上にとって非常に有益である。
【0009】
さらに、本発明にかかる連結鋼線巻付機によれば、巻付後の連結鋼線の状態も綺麗に仕上がり、また、連結鋼線同士が強固に連結されて連結不備等の不具合も発生することなく、外観・強固性・安全面においても非常に有益である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明にかかる連結鋼線巻付機は、動力としてモーターを使用し、かつ、連結鋼線の巻付に適した構造を採用したことを最大の特徴とする。以下、本発明にかかる連結鋼線巻付機の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
図1は、本発明にかかる連結鋼線巻付機を示す斜視図であり、図2は、該連結鋼線巻付機を示す側面図である。該連結鋼線巻付機は、ハンドル2と、該ハンドル2の上部に設置されるモーター1と、該モーター1に接続され下方に伸びる中空シャフト5と、該中空シャフト5の下端部に取り付けられる回転工具8とから構成される。
【0012】
ハンドル2は、図面に示すような形状に限定されるものではなく、円形状や多角形状等とすることも可能である。ただし、不使用時において連結鋼線巻付機を横たわらせる際に不安定な状態とならないよう、図面に示す四角形状のような多角形状とすることが望ましい。該ハンドル2の中心部分には、モーター1を設置するためのモーター設置部3が設けられており、該モーター設置部3には、モーター1と中空シャフト5とを接続する接続部6が貫通可能な貫通孔が設けられている。また、ハンドル2の所定箇所には、モーターのON・OFF操作を行うモータースイッチ4が取り付けられている。ただし、かかるモータースイッチ4は、必ずしもハンドル2に取り付ける必要はなく、モーター1自体に装備させたり、モーター設置部3に取り付ける等の態様も考え得る。
【0013】
モーター1は、ハンドル2の中心部分に設けられたモーター設置部3の上部に設置される。かかるモーター1の出力については特に限定はないが、本発明の目的上、少なくとも6mm〜8mmの鋼線を曲げることが可能な出力を有することを要する。尚、場合によっては、より細い鋼線の曲げ加工を行うためモーター1の出力があまり必要でなかったり、あるいはその逆で、太い鋼線の曲げ加工を行うべくより強い出力を有するモーター1が必要となり得るため、モーター設置部3に対して該モーター1を自由に取り外し可能とし、用途に応じた出力を有するモーター1への交換ができるようにする態様も考え得る。
【0014】
中空シャフト5は、内部に被巻付鋼線H1が進入可能な中空部を有する筒状となっており、かつ、該被巻付鋼線H1が全て収まる程度の長さを有する。該中空シャフト5の上端は、止め具7により接続部6でモーター1と堅固に接続されており、モーター1の回転と連動して中空シャフト5も回転することとなる。そしてまた、該中空シャフト5の下端には、回転工具8が取り付けられている。
【0015】
尚、利便性を考慮し、モーター1あるいは中空シャフト5の回転方向について、正転・逆転の切換え機能を装備させることも可能である。かかる機能の装備態様について特に限定はないが、モーター1自体に切換え機能を装備したり、あるいは、モーター1と中空シャフト5との接続部6において切換え機能を装備する態様等が考えられる。モーター1自体に切換え機能を装備する場合には、前記モータースイッチ4に正逆切換えスイッチを兼備させればよく、接続部6に切換え機能を装備する場合は、前記モータースイッチ4あるいは接続部6自体に正逆切換えスイッチを兼備させればよい。
【0016】
図3及び図4は、本発明にかかる連結鋼線巻付機の回転工具8を示す部分断面図であり、図3は分解図、図4は組立図である。該回転工具8は、シャフト受け部11を備えており、該シャフト受け部11に前記中空シャフト5の下端を挿入し止め具12で固定することによって、中空シャフト5と回転工具8とが取り付け固定される。そしてまた、該シャフト受け部11の下方には、鋼線巻付部10を備えており、該鋼線巻付部10の内部は、中空状であってその下端からシャフト受け部11まで貫通している鋼線挿入孔13を有している。さらにまた、回転工具8において、シャフト受け部11並びに鋼線巻付部10の中心軸からずれた位置を中心軸とする駒体14が装備されている。
【0017】
該駒体14は、その下端に鋼線接触部15を有しており、鋼線接触部15が前記鋼線巻付部10の上端位置近辺に位置するように回転工具8に対して装備される。装備方法については特に限定はなく、回転工具8と一体成型としたり、図面に示すように、回転工具8に駒体挿入孔9を設け、該駒体挿入孔9に駒体14を挿入・固定する等が考え得る。駒体挿入孔9に挿入・固定する場合には、図面に示す通り、駒体14を該駒体挿入孔9に挿入した際に、駒体14の上部に設けた溝14aに固定用リング16を差込むことで固定される。該固定用リングとしては、CリングやEリング等が考えられる。
【0018】
また、駒体14について、回転工具8に対して完全2固定するのではなく、駒体挿入孔9をすべり軸受けとして、回動自在に装備させることが望ましい。かかる構造とすることにより、鋼線巻付け時に鋼線H2の弾性による応力が中空シャフト5の中心から該駒体14にラジアル方向に働くことになり、鋼線H2に接触した鋼線接触部15が回転工具8の回転に伴って反対回転方向に自在に回転することとなる。なお、駒体14を回動自在とすることによる磨耗を低減させるための方策として、すべり軸受けブッシュを駒体挿入工9内に挿入して、該駒体14を挿入する装備方法とすることも可能である。
【0019】
鋼線接触部15については、末広形状であって、鋼線H2の半径よりも大きな幅を有するものとすることが考え得る。かかる末広形状とすることにより、鋼線H2が鋼線巻付部10に巻付けられる際、一回転目から二回転目に向けて同一円周上に巻付けられないようにして、巻付鋼線H2が上方へ逃げるよう、すなわち、カール形状が重畳的に形成されるようにすることができる。なお、単に末広形状といっても、図に示すようなV形状や、U形状等の凹形状とすることも考えられる。このように、鋼線接触部15を末広形状とした場合、該鋼線接触部15は鋼線H2の半径より大きな幅を有する必要がある。すなわち、半径より該幅を小さくした場合には、鋼線H2が巻付けられる際に下方へ押圧されることとなり、やがて該鋼線H2は鋼線接触部15から外れて接触しなくなってしまう。したがって、鋼線接触部15の幅を鋼線H2の半径より大きくしなければならない。
【0020】
図5は、本発明にかかる連結鋼線巻付機の実施形態を示した作用状態を示した説明図である。被巻付鋼線H1を中空シャフト5及び鋼線挿入孔13に挿入し、連結構造物Bの上面に水平とした巻付鋼線H2を鋼線巻付部10と鋼線接触部15の隙間に配置して、その状態でモーター1を駆動することによって、巻付鋼線H2が鋼線接触部15により案内されて、鋼線巻付部10の外周にカール形状が重畳的に形成されることを示している。
【0021】
図6から図9は、本発明にかかる連結鋼線巻付機の作業状態を示す説明図である。まず、図6に示すように、連結構造物Bの上面から突き出している被巻付鋼線H1の上端に鋼線巻付部10を差込み、図7に示すように、回転体8に装備された駒体14における鋼線接触部15と巻付け鋼線H2とが接触する位置まで完全に挿入する。このとき、巻付鋼線H2を、鋼線巻付部10と鋼線接触部15との隙間に配置する。このようにして被巻付け鋼線H1は、鋼線挿入孔13及び中空シャフト5内に完全に収まった状態となる。その後は、図8に示すように、モータースイッチ4を操作してモーター1を駆動し、巻付鋼線H2が所定数巻付けられるまで回転工具8を回転させる。このとき、前記鋼線挿入孔13及び中空シャフト5内に収まった被巻付け鋼線H1が、回転軸として機能することとなる。そして最後に、図面9に示すように、本発明にかかる連結鋼線巻付機を上方へ抜き取り、巻付け作業が終了する。作業を繰り返すことにより、連結鋼線の巻付け作業が行われる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明によれば、河岸や堤防を直接保護する護岸工事等のみならず、機械加工の分野に応用することも可能である。例えば、人力では曲げることが困難な材料であって、屋内に設置された油圧ベンダー等の大型機械を用いらなければならないような鋼線や丸棒であっても、屋外において簡易かつ迅速に曲げ加工ができる。また、バネ鋼を用いたカールバネの熱処理前の成型加工にも応用が可能である。さらには、配管等の設備工事や、建設業における建築現場においても棒状鋼材を屋外で曲げ加工を必要とする場面は多く、その応用範囲は広い。従って、本発明にかかる連結鋼線巻付機の産業上利用可能性は極めて高いものと解される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明にかかる連結鋼線巻付機を示す斜視図である。
【図2】本発明にかかる連結鋼線巻付機を示す側面図である。
【図3】本発明にかかる連結鋼線巻付機の回転工具を示す部分断面図である。
【図4】本発明にかかる連結鋼線巻付機の回転工具を示す部分断面図である。
【図5】本発明にかかる連結鋼線巻付機の作用状態を示す説明図である。
【図6】本発明にかかる連結鋼線巻付機の作業状態を示す説明図である。
【図7】本発明にかかる連結鋼線巻付機の作業状態を示す説明図である。
【図8】本発明にかかる連結鋼線巻付機の作業状態を示す説明図である。
【図9】本発明にかかる連結鋼線巻付機の作業状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0024】
1 モーター
2 ハンドル
3 モーター設置部
4 モータースイッチ
5 中空シャフト
6 接続部
7 止め具
8 回転工具
9 駒体挿入孔
10 鋼線巻付部
11 中空シャフト受け部
12 止め具
13 鋼線挿入孔
14 駒体
14a 溝
15 鋼線接触部
16 固定用リング
B 連結構造物
H1 被巻付鋼線
H2 巻付鋼線



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドルと、該ハンドルの上部に設置されるモーターと、該モーターに接続され下方に伸びる中空シャフトと、該中空シャフトの下端部を挿入できるシャフト受け部並びにその下方に鋼線巻付部を備え且つ下端に鋼線接触部を有する駒体を装備した回転工具からなることを特徴とする連結鋼線巻付機。
【請求項2】
前記駒体が、回転工具に対して回動自在に装備してなることを特徴とする請求項1に記載の連結鋼線巻付機。
【請求項3】
前記駒体の下端における鋼線と接触する鋼線接触部が、末広形状であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の連結鋼線巻付機。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−239715(P2006−239715A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−56195(P2005−56195)
【出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【出願人】(505075802)株式会社長谷川工業 (1)
【Fターム(参考)】