説明

連続インクジェット用インク組成物

本発明は、主たるインク供給容器から再利用される水性着色インク組成物の連続インクジェット印刷に関し、本発明は、インクの電気抵抗率を測定できる流体搬送系備えるプリンターを用いるとともに、ビヒクル補充流体または新しいインクの必要量を付与して、所望の再生インク濃度を維持する。着色インクの電気抵抗率は、酸の有機アミン塩を添加することにより安定したインク再利用に有利に改良でき、および、同時にインクのpH安定性は、アミン塩に対して等モル量で有機アミンの中性型を更に含むことにより改良できる。着色インクジェット組成物は、幅広いプリンター稼働とインク再循環の期間において特に安定し不変の流体特性をもたらす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続インクジェット印刷用の水性の着色インク組成物と、蒸発により水分が損なわれるときにそれらを補充する方法に関する。インクジェット用の着色インク組成物は、長期に亘る印刷操作においても、極めて安定し不変の流体特性をもたらす。
【背景技術】
【0002】
連続インクジェット印刷は、個々のプリントヘッドノズルプレートのオリフィスからインク液滴を生成させる最も早い手段を提供し、その結果、それは、高い画像品質と共に、その最も高く実現できる速度にて印刷可能であるということでも評価されている。オリフィスにインクを供給するプリントヘッドノズルプレートのインクチャネルは、高い流体圧条件下で保持され、オリフィスを介してインク流を一定に押出し、そして、刺激手段が施されて、放出されたインク流から、1種または複数種の液滴の均一な集団を形成する。ドロップ・オン・デマンド型インクジェットプリントヘッドのインクチャネルを加圧せずに詰め替えるためのタイムラグは緩和されるので、液滴発生頻度および印刷速度を増加させることができる。しかしながら、連続インクジェット印刷は、印刷された基材表面に到達することを目的としない連続的に生成される液滴を妨害するための手段を必要とする。従前の商業的応用においては、単一モードで、均一形状の放出された液滴の静電帯電が使用されて、分極性電極によって帯電偏向させた液滴をもたらすことができ、ガター表面へ非印刷液滴を送り出し、次いで、真空条件下の捕捉戻りライン内へ送り出され、例えば、米国特許第4636808号明細書(ヘッロン等)、同第5801734号明細書(シュナイダー等)において記載されている。戻りラインは、噴出されたが未印刷のインクを、流体操作装置を用いて元の中央インク供給容器へ再循環させ、該インクは再使用するために加圧下、元のプリントヘッドへ送り出される。より近年には、空気衝突を使用してバイモーダルまたは多様性の液滴集団の配置を操る、偏向戦略が出現しており、それらは、例えば米国特許第6588888号明細書および同第6863385号明細書(ジーンマイヤー等)に記載されている。より小さな非印刷液滴は、ガター上を素早く通過でき、その後、インク捕捉容器内へ移動し、最後に戻りラインを通じて再循環する。その間、より多量のより大きな印刷液滴は、その元の軌道をほとんど維持する。その後、それは、基材へ衝突して印刷され、デジタル制御された印刷マークを形成する。
【0003】
静電偏向処理における材質適合性は、連続インクジェット用インク組成物の範囲に、以前は限定されていた。若干の他の機能性原料を有する、イオン性染料着色剤の単純な水溶液が最も効果的であった。消費者およびオフィス用のインクジェット印刷システムにおける、ポリマーバインダーを有する着色インク系の普及により、連続インクジェット用途においては、改良された印刷性能、耐久性および耐水性に対する要求が強調されている。しかし、バインダーとしてインク中にイオン性ポリマーが存在すること、または分散剤を有する着色した着色剤が存在することは、エアロゾル沈着から構築される物質に起因するランタイムの問題、インク沈着付着物の不十分な再溶解または再分散性、電荷リードの電気短絡、または材料のコロイド形態を含有する高電荷インク液滴の物理的な不安定さを導き得る。米国特許第6682182号明細書(ジーンマイヤー等)において開示されるような、バイモーダル液滴群に分かれる高周波流体流を刺激する、MEMSケイ素系ノズルプレートデバイスの開発は、空気衝突戦略を補完して、非印刷液滴を偏向させ、そして、それは、水性の連続インクジェット液滴形成に対して適合する材料の選択を幅広くしている。残念なことに、単純な水性のイオン性染料溶液に基づくインク用に最適化されたままの連続インクジェットプリンターサブシステム(特に、流体搬送系)は、着色した着色剤に基づくこれらのより複雑な流体によって困難を伴う。
【0004】
連続インクジェットプリンター流体の搬送系は、インクを高圧力で供給する、主たるインク供給容器と、それをプリントヘッドへ誘導すると共に、プリントヘッド方向から真空下にて戻る非印刷インクを受け取る振動ポンプ装置と、ガターおよび捕捉系を具備する。噴出されて戻ったインクは、搬送ビヒクルの蒸発の影響を受けるので、流体搬送系は、インクの溶媒濃度を修復する補充流体の供給容器を具備する。インクが過度に濃縮された場合、繊細な液滴制御処理は粘度の変化の影響を受け、視覚濃度と色彩偏差を形成する印刷画像品質も変化し得る。印刷でインクを使用すること、または印刷待機のアイドル状態でインク再循環が延長されることに起因する溶媒の蒸発によって、インク容器の流体濃度が低下する場合、インク容器にインクビヒクル補充流体またはより新しいインクを供給することにより、使用されたインク濃度レベルを調節する機会がある。再循環したインクの濃度状態を測定するために、種々のインライン分析法が試行されているが、供給された水性インクの流体イオン伝導率(またはその逆数、流体抵抗率)の定量化が証明されることが最も効果的である。染料系水性インクは、移動性のイオン性有機着色剤を含有するので、較正されたインラインセルは、着色剤の濃度に直接比例する、流体の電荷輸送支持能力について測定できる。濃縮した染料インクは、増加した伝導率(および減少した抵抗率)を示し、流体搬送系の制御装置は、その環境での補充流体溶媒でインク容器の流体濃度を正確に修復させるようにプログラム化でき、このようなことは、例えば、米国特許第3761953号明細書、同第5526026号明細書および欧州特許第0597628号明細書に記載されている。一般に、着色インクジェット用インクは、イオン性有機材料をも含有するが、それらの物理化学的特性は、大きく異なる。一般に、イオン性物質は、塩基で中和されたポリマー分散体またはポリマーバインダーから誘導される。流体のイオン強度は減少し、電荷輸送に関与する化学種のイオン移動度はより低い。その結果、流体のイオン伝導率は大きく減少し、流体の抵抗率はより高くなる。
【0005】
第二の再循環問題は、着色インクと共に生じる。噴出後に、偏向され、ガターを流れて捕捉されたインクは、回収工程中に空気で乳化され、インクは二酸化炭素を吸収する。二酸化炭素は、入手できる塩基をプロトン化することによりアルカリ性インクのpHを減少させる炭酸を生成する。その際に、更なるイオン種が生成され、着色剤強度は変化していないにも拘わらず、使用したインクの抵抗率が減少する。したがって、補充サイクルは混乱し、その結果、再生されるインク濃度の調整がより不十分となる。濃縮した連続インクジェット用顔料インクの減少したイオン伝導率は、その着色剤抵抗率と炭酸の比または補充流体中のイオン化成分の痕跡量比による偶発的な混乱を生じる危険性を深刻にする。更に、吸収された二酸化炭素から生じるpH降下は、分散顔料着色剤の安定性に対する懸念を生じる可能性がある。スチレン-アクリルコポリマーの広い種類がインクジェット用インクに極めて有用であり、有機ポリマーは、アクリル酸部分のカルボン酸官能基のイオン化によって可溶化される。ポリマー配座の効果とカルボン酸基の溶媒和状態の効果に起因して、その塩基性は、水中で示される単純形態の脂肪族カルボン酸塩の塩基度と比べ、著しく高くなり得る。インクpHの僅かな減少は、コロイドの不安定化を誘発すると共に、顔料粒子の凝集を誘発し、プリントヘッドノズルを塞ぐ特大粒子からプリントヘッドノズルを保護するインライン流体フィルターのブロッキングをもたらす。酸化されて可溶性の、表面結合したカルボン酸塩を生成する自己分散型顔料にも、同様の結果がもたらされる。良好な緩衝液から選択されると共にアミノプロパンジオール誘導体を用いる、貯蔵する際に一貫した性質をもたらす表面処理顔料から構成されるドロップ-オン-デマンド型のインクジェット用インクを安定させる有機pH緩衝液は、米国特許第7370952号明細書(イノウエ等)に記載されている。連続インクジェット用インクの再生において、インクに関して要求される伝導率についての記載はない。米国特許第5830264号明細書(フジオカ等)には、染料着色剤と、pHを8〜10の範囲に減少させる、有機弱塩基としての2-アミノ-1,3-プロパンジオール誘導体とを含有するインクを開示するが、インクの再生は開示されていない。さらに、比較的強いプロトン酸を添加して有機アミン弱塩基の共役酸を形成させることを教示しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4636808号明細書
【特許文献2】米国特許第5801734号明細書
【特許文献3】米国特許第6588888号明細書
【特許文献4】米国特許第6863385号明細書
【特許文献5】米国特許第3761953号明細書
【特許文献6】米国特許第5526026号明細書
【特許文献7】欧州特許第0597628号明細書
【特許文献8】米国特許第7370952号明細書
【特許文献9】米国特許第5830264号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、精密な流体系補充を促進すると共に、pH変動による潜在的な不安定化からコロイド的に分散した顔料を保護するために、それらに特有の物質特性に適合させる方法で、連続インクジェット用の着色インクの化学組成を変性させる必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
より均一に流体特性を制御する必要性は、分散顔料粒子と、有機アミンの酸性塩と、付加的な遊離有機アミンを含有する、連続インクジェット印刷用の水性インクジェット用インク組成物によってもたらされる。この場合、有機アミンの酸性塩と付加的な遊離有機アミンは、緩衝化したpHが8よりも大きくなり、25℃での抵抗率が500オーム-cm未満となうような濃度と相対的比率で存在し、有機アミンの酸性塩を形成するのに使用される酸の当量に対する有機アミンの当量の比は、1.1:1.0よりも高い。
【0009】
また、下記の工程を含む、連続インクジェットプリンターにおけるインクの補充方法も提供する:連続インクジェットプリンターの主たるインク供給部から得られるインクまたは該供給部中のインクの抵抗率を計測すること、および
主たるインク供給部中のインクについて測定された抵抗率の関数として、インクジェットプリンターの主たるインク供給部中のインクへ、補充キャリア流体供給部から得られるキャリア流体と追加インク供給部から得られるインクを補充すること、
ただし、主たるインク供給部と追加インク供給部中のインクは、本発明によるインクを含有する。
【0010】
さらに、下記の工程を含む連続インクジェット印刷法が提供される:
A)連続インクジェットプリンターの主たる流体供給部へ、有機アミンの酸性塩と付加的な遊離有機アミンとを含有する水性流体組成物を供給すること;
ただし、有機アミンの酸性塩と付加的な遊離有機アミンは、緩衝化したpHが8よりも大きくなり、25℃での抵抗率が500オーム-cm未満となうような濃度と相対的比率で存在し、有機アミンの酸性塩を形成するのに使用される酸の当量に対する有機アミンの当量の比は、1.1:1.0よりも高く、
B)液滴形成機構から流体組成物の液滴の連続流を噴出すること、および
C)制御機構から受信された電気信号に応じて、基材をマーキングする印刷流体液滴と、
回収され、主たる供給部へ戻され、主たるインク供給部中の流体組成物の抵抗率に応じて補充される非印刷流体液滴から選択すること。
【発明の効果】
【0011】
本発明の有利な効果
本発明は多くの利点を提供する。本発明は、顔料系インク組成物を提供し、ならびに、優れた流体特性を安定して維持する補充方法および印刷方法を提供し、このことは、液滴形成の制御と、印刷した基材上に光学密度と色相が均一な画像を表現するのに不可欠である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、主たるインク供給容器から再生された伝導性の水性着色インクを使用し、およびインク伝導率を測定することができる流体搬送系を備えるプリンターを用いる連続インクジェット印刷に対して行われる。また、本発明は、所望の再生インク濃度を維持するための補充流体または新たなインクの必要量を提供する。
【0013】
流体の電気伝導率は、流体中に浸漬させた2つの電極を横切って電位Vを印加することにより測定できる。干渉過程、例えば溶液の電気分解または電極汚染などが避けられる場合、オームの法則が得られる:
【0014】
【数1】

【0015】
式中、Iはアンペアで表わされる電流であり、比例定数Rはオームの単位で表わされる電気抵抗であり、電位Vはボルトの単位で表わされる。
【0016】
物質の抵抗は、その長さLに正比例し、その断面積Aに反比例し、比例定数ρ(物質の抵抗率)を用いて表わされる
【0017】
【数2】

【0018】
オーム-mで表わされる抵抗率は、S.I単位の場合Siemens/mで表わされる伝導率κに反比例する。
【0019】
【数3】

【0020】
流体の伝導率測定に関して、L/Aは個々の測定構造に固有の一定値であるとみなされ、それはセル定数と称される。したがって、流体の電気伝導率およびその電気抵抗率は、それらの報告単位に基づき容易に相互転換できる、逆相相関した材料特性である。これらのパラメータは以下交互に使用される。
【0021】
流体の電気抵抗率を測定する補充スキームに基づく極めて有用な連続インクジェット流体系は、US特許第5526026およびEP0597628B1に記載されている。インク濃度検出の別の手段を採用する、連続インクジェット流体系に関して有用な補助となる観念は、EP0571784B1およびEP1013450B1およびUS特許第7221440に開示されている。
【0022】
1実施態様において、基本的な補充は以下のようにして行われる:
インクは、プリントヘッドを含む、系の流体搬送部を通って再循環されるが、流体系は、インクが通過するインク抵抗率測定セルを含む。演算手段は、インク抵抗率セルの抵抗を測定する。演算手段に応答して、理論ユニットおよび制御ユニットは、所望のインク抵抗率を維持するために、追加インク供給部から系の主たるインク供給容器へのインクの移動を制御すると共に、補充キャリア流体供給部から系の主たるインク供給容器へのキャリア流体の移動を制御する。主たるインク供給部におけるインクの体積は、フロート弁部により観測され、既定体積が消耗されている場合、既定体積は追加インク供給部からのインクまたは補充キャリア流体供給部からの補充キャリア流体で補われる。
【0023】
インク抵抗率セルの対象となる抵抗を予め知っておかなければならない。具体的なセンサーに関するセル定数は、測定温度における抵抗率が既知の較正された参照流体を用いることにより、一定温度にて予め決定できる。イオン流体の伝導率が著しい温度感受性を示すので、望ましくは、抵抗率セルの温度は観測される。
【0024】
測定される流体系センサーセル抵抗の温度補正は望ましく行われ、インク濃度測定の正確性を改良する。流体系によるインク抵抗率測定に関する参照セットポイント値は、インクに関する予め組み込まれた公称照準値から得ることができる。好ましくは、対象インクの抵抗率は、主たる流体系インク供給部として製造できる交換式の流体容器中の、新しい種々の未使用インクと共に更新され、このことは、US特許第7192108(リーマン)に記載されている。
【0025】
より好ましくは、流体系は、セットポイント値を提供し更新する、第2の較正された抵抗率センサーを用いて、補給インク供給部(例えば、交換式の流体容器)から搬送される未使用インクの現実の抵抗率を測定することにより設定される。このことは、EP0597628B1に記載されている。
【0026】
本発明による好ましい実施態様においてインクジェット用インク組成物は、ポリマー分散体またはポリマーバインダーと共に、顔料着色剤粒子を含有する顔料分散体から構成される。本発明において特に有用なポリマー分散体およびバインダーは、少なくとも1種の親水性モノマー(該モノマーは、アクリル酸モノマーまたはメタクリル酸モノマーあるいはそれらの混合物である)と、12個以上の炭素を有する脂肪族鎖を含有する疎水性メタクリレートまたはアクリレートモノマーから調製されるコポリマーであり、米国特許出願公開第2007/0043144号明細に記載されるようなものである。
【0027】
望ましくは、ポリマー分散体またはバインダーは少なくとも1種の疎水性モノマーを含有する。ポリマー分散体またはバインダーを調製するのに使用される疎水性モノマーは、カルボン酸エステル含有官能基から構成される。疎水性モノマーは、わずか12個以上の炭素原子を含有する脂肪族鎖を含むという条件で、任意の脂肪族アクリレート又はメタクリレートモノマーから選択できる。該鎖は直鎖であってもよく、分岐状であってもよい。本発明において有用な具体的な疎水性モノマーの例には、下記のものが含まれる:
ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、トリデシルアクリレート、トリデシルメタクリレート、テトラデシルアクリレート、テトラデシルメタクリレート、セチルアクリレート、イソ-セチルアクリレート、ステアリルメタクリレート、イソ-ステアリルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、デシルテトラデシルアクリレート、デシルテトラデシルメタクリレートなど。好ましくは、メタクリレート又はアクリレートモノマーは、ステアリルもしくはラウリルメタクリレートもしくはアクリレートである。ポリマーの疎水性部は、1種以上の疎水性モノマーから調製できる。
【0028】
望ましくは、12個以上の炭素から成る炭素鎖を有する疎水性モノマーは、総コポリマーの少なくとも10重量%の量で存在し、より好ましくは20重量%よりも高い量で存在する。コポリマーは芳香族基を含有する疎水性モノマーを含有してもよい。例えば、付加的な芳香族基を含有するモノマーは、ベンジルアクリレートまたはベンジルメタクリレートであってもよい。
【0029】
炭素数が12以上である鎖を有するモノマー、及び所望により、芳香族基を含有するモノマーを含む疎水性モノマーの総量は、総ポリマーの20〜45重量%の量でポリマー中に好ましく存在する。疎水性芳香族基を含有するモノマーは、総ポリマーの0〜85重量%、より好ましくは0〜60重量%、最も好ましくは0〜50重量%の量で存在できる。
【0030】
モノマー含有ポリマー分散体またはバインダーは全体的にランダムであってもよく、あるいはABまたはABAなどのブロック状で配列されてもよい(なお、Aは疎水性モノマーであり、Bは親水性モノマーである)。さらに、ポリマーはランダムターポリマー構造またはABCトリブロック構造を有してもよい(なお、A、BおよびCブロックの少なくとも1つは親水性モノマーが選択され、残りのブロックは、相互に類似しない疎水性のブロックである)。好ましいコポリマーはランダムコポリマーまたはターポリマーである。
【0031】
コポリマー分散体またはバインダーの重量平均分子量は、100000未満となるような上限を有する。コポリマーの望ましい重量平均分子量は、25000ダルトン未満、より好ましくは15000ダルトン未満、最も好ましくは10000ダルトン未満である。バインダーまたは分散体の分子量は、500ダルトンよりも大きい重量平均分子量の下限値を有する。
【0032】
ポリマー分散体またはバインダーが望ましい一方で、本発明において使用される着色インクジェット用インク組成物はポリマー材料を含有する要求はない。本発明は、高い伝導率を備えるpH安定性の着色インクを提供し、連続インクジェット流体系の濃度調整を確実かつ正確におこなう。
【0033】
好ましくは、本発明による顔料系の連続インクジェット用インク組成物における顔料粒子は、150nm未満、より好ましくは100nm未満、および最も好ましくは50nm未満の平均粒径を有する。本明細書において、平均粒径は、粒子体積の50%が、示された直径よりも小さな直径を有する粒子から構成される、第50百分位数に関する。特に望ましい顔料粒径は、クラーク等によるWO2009/044096に教示されるように、安定した連続インクジェット流体の液滴形成能に関して要求される粒子ペクレ数を満足する粒径である。
【0034】
本発明において有用な顔料系インク組成物は、インクジェットの技術分野において既知の任意の方法によって調製できる。一般に、有用な方法は、2つの工程を含む:(a)顔料凝集体を1次粒子へと分割する分散工程または粉砕工程(なお該1次粒子は、粒子系において同定可能な最も小さい分割物として定義される)、および(b)工程(a)で得られた顔料分散体を残りのインク成分で希釈して、使用する粘度のインクを調製する希釈工程。
【0035】
粉砕工程(a)は、任意の種類の粉砕機、例えば、媒体ミル、ボールミル、2−ロールミル、3−ロールミル、ビーズミルおよびエアジェットミルなど、磨砕機、または液体相互作用機(liquid interaction chamber)を使用して行われる。粉砕工程(a)において、顔料は、一般的に、工程(b)において顔料分散体を希釈するために使用される媒体と同一または類似の媒体中で、必要に応じて懸濁される。不活性の粉砕媒体は、顔料を1次粒子へ分割するのを容易にするために、粉砕工程(a)において必要に応じて存在させる。不活性な粉砕媒体には、たとえば、US特許5891231に記載されているようなプラスチック、ポリマービーズ、ガラス、セラミックスおよび金属などの物質が含まれる。粉砕媒体は、工程(a)で得られた顔料分散体、または工程(b)で得られたインク組成物から取り除かれる。好ましい粉砕工程は、Majka等によるUS特許第7441717に記載されている。
【0036】
分散剤は、顔料を1次粒子に分割することを容易にするために、粉砕工程(a)で必要に応じて存在する。工程(a)で得られる顔料分散体、または工程(b)で得られるインク組成物に対して、分散剤は、粒子安定性を維持し、粒子の凝固それに続く沈殿を防止するために存在する。ポリマー分散剤に加えて、インクジェット印刷の技術分野において一般に使用されるような、本発明において使用できるポリマーまたは更なる分散剤を所望によりを存在させてもよい。水性顔料系のインク組成物に関して、有用な分散剤には、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、例えばドデシル硫酸ナトリウムまたはカリウムオレイルメチルタウレートもしくはナトリウムオレイルメチルタウレートなどが含まれる(たとえば、US特許第5679138、US5651813およびUS5985017を参照)。本発明の態様において有用な他のポリマー分散剤は、House等による米国特許出願公開第2006/0014855A1において開示されている。
【0037】
種々の有機および無機顔料を、単独でまたは相互に組合せて、本発明におけるインク組成物に使用できる。例えば、カーボンブラック顔料を、同じインク組成物中で、着色顔料、例えばシアン銅フタロシアニンまたはマゼンタキナクリドン顔料と組合せてもよい。本発明において使用できる顔料には、例えば、US特許第5026427、同5086698、同5141556、同5160370、および同5169436に記載される含量が含まれる。顔料の的確な選択は、具体的な用途および性能要件、例えば色再現および画像安定性によって決まる。
【0038】
本発明における使用に適する顔料には、以下のものが含まれる(ただし、これらに限定されない):アゾ顔料、モノアゾ顔料、ジアゾ顔料、アゾ顔料レーキ、β−ナフトール顔料、ナフトールAS顔料、ベンゾイミダゾロン顔料、ジアゾ縮合顔料、金属錯体顔料、イソインドリノン顔料およびイソインドリン顔料、多環式顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アントラピリミドン顔料、フラバントロン顔料、アンタントロン顔料、ジオキサジン顔料、トリアリールカルボニウム顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料、二酸化チタン、酸化鉄、およびカーボンブラック。好ましい顔料はカーボンブラックである。
【0039】
使用できる顔料の典型例には、以下のものが含まれる:カラーインデックス(C.I.)ピグメントイエロー1,2,3,5,6,10,12,13,14,16,17,62,65,73,74,75,81,83,87,90,93,94,95,97,98,99,100,101,104,106,108,109,110,111,113,114,116,117,120,121,123,124,126,127,128,129,130,133,136,138,139,147,148,150,151,152,153,154,155,165,166,167,168,169,170,171,172,173,174,175,176,177,179,180,181,182,183,184,185,187,188,190,191,192,193,194;C.I.ピグメントレッド1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,21,22,23,31,32,38,48:1,48:2,48:3,48:4,49:1,49:2,49:3,50:1,51,52:1,52:2,53:1,57:1,60:1,63:1,66,67,68,81,95,112,114,119,122,136,144,146,147,148,149,150,151,164,166,168,169,170,171,172,175,176,177,178,179,181,184,185,187,188,190,192,194,200,202,204,206,207,210,211,212,213,214,216,220,222,237,238,239,240,242,243,245,247,248,251,252,253,254,255,256,258,261,264;C.I.ピグメントブルー1,2,9,10,14,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,15,16,18,19,24:1,25,56,60,61,62,63,64,66、橋かけアルミニウムフタロシアニン顔料;C.I.ピグメントブラック1,7,20,31,32;C.I.ピグメントオレンジ1,2,5,6,13,15,16,17,17:1,19,22,24,31,34,36,38,40,43,44,46,48,49,51,59,60,61,62,64,65,66,67,68,69;C.I.ピグメントグリーン1,2,4,7,8,10,36,45;C.I.ピグメントバイオレット1,2,3,5:1,13,19,23,25,27,29,31,32,37,39,42,44,50;またはC.I.ピグメントブラウン1,5,22,23,25,38,41,42。特定の実施態様における連続インクジェットプリンターにおいて使用するための、本発明において使用される色素性インクジェット用インク組成物は、EP1132440A2(Botros等)、およびEP0859036A1(J-D.Chen)において記載されるような更なる水溶性の染料着色から構成されてもよい。
【0040】
本発明において使用されるインクは、顔料分散体に加えて、本発明において有用な分散剤または界面活性剤を使用することなく分散可能な自己分散顔料を、所望により含有できる。この種の顔料は、表面処理、例えば酸化/還元、酸/塩基処理、またはカップリング反応を介する官能化などに付されている顔料である。表面処理は、顔料の表面にアニオン性基、カチオン性基または非イオン性基を付与することができる。自己分散型顔料の例には、以下のものが含まれる(ただし、これらに限定されない):CAB-O-JET(登録商標)200、CAB-O-JET(登録商標)300(キャボット社)、およびBONJET(登録商標)ブラックCW−1およびCW−2およびCW-3(オリエント化学工業社)。
【0041】
本発明において使用されるインク組成物において使用される顔料は、任意の有効量で存在でき、一般に0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜6重量%である。1実施態様において、顔料に対するコポリマーの重量比は、0.15〜0.8である。
【0042】
本発明において使用されるインクは、顔料分散体に加えて、インクジェット印刷技術において既知の染料を、所望により含有できる。本発明における使用に適する水系インク組成物染料には、以下のものが含まれる(ただし、これらに限定されない):水溶性の反応染料、直接染料(direct dyes)、アニオン染料、カチオン染料、酸性染料、食品用染料、金属錯体染料、フタロシアニン染料、アントラキノン染料、アントラピリドン染料、アゾ染料、ローダミン染料、溶剤系染料など。本発明において有用な染料の具体例は、下記のとおりである:以下のものを含むイエロー染料:C.I.アシッドイエロー1,3,11,17,19,23,25,29,36,38,40,42,49,59,61,70,72,75,76,78,79,98,99,110,111,127,131,135, 142,162,164,165;C.I.ダイレクトイエロー1,8,11,12,24,26,27,33,39,44,50,58, 85,86,87,88,89,110,132,142および144;C.I.リアクティブイエロー1,2,3,4,6,7,11,12,13,14,15,16,17,18,22,23,24,25,26,27,37および42;C.I.フードイエロー3および4:以下のものを含むマゼンタ染料:C.I.アシッドレッド1,6,8,9,13,14,18,26,27,32,35,37,42,51,52,57,75,77,80,82,85,87,88,89,92,94,97,106,111,114,115,117,118,119,129,130,131,133,134,138,143,145,154,155,158,168,180,183,184,186,194,198,209,211,215,219,249,252,254,262,265,274,282,289,303,317,320,321および322;C.I.ダイレクトレッド1,2,4,9,11,13,1720,23,24,28,31,33,37,39,44,46,62,63,75,79,80,81,83,84,89,95,99, 113,197,201,218,220,224,225,226,227,228,229,230および231:C.I.リアクティブレッド1,2,3,4,5,6,7,8,11,12,13,15,16,17,19,20,21,22,23,24,28,29,31,32,33,34,35,36,37,38,39,40,41,42,43,45,46,49,50,58,59,63および64:およびC.I.フードレッド7,9および14;以下のものを含むシアン染料:C.I.アシッドブルー1,7,9,15,22,23,25,27,29,40,41,43,45,54,59,60,62,72,74,78,80,82,83,90,92,93,100,102,103,104,112,113,117,120,126,127,129,130,131,138,140,142,143,151,154,158,161,166,167,168,170,171,182,183,184,187,192,199,203,204,205,229,234,236および249C.I.ダイレクトブルー1,2,6,15,22,25,41,71,76,77,78,80,86,87,90,98,106,108,120,123,158,160,163,165,168,192,193,194,195,196,199,200,201,202,203,207,225,226,236,237,246,248および249、C.I.リアクティブブルー1,2,3,4,5,7,8,9,13,14,15,17,18,19,20,21,25,26,27,28,29,31,32,33,34,37,38,39,40,41,43,44および46,C.I.フードブルー1および2:以下のものを含むブラック染料:C.I.アシッドブラック1,2,7,24,26,29,31,48,50,51,52,58,60,62,63,64,67,72,76,77,94,107,108,109110,112,115,118,119,121,122,131,132,139,140,155,156,157,158,159および191;C.I.ダイレクトブラック17,19,22,32,38,51,56,62,71,74,75,77,94,105,106,107,108,112,113,117,118,132,133,146,154および168;C.I.リアクティブブラック1,3,4,5,6,8,9,10,12,13,14,31および18;およびC.I.フードブラック2、CAS番号224628-70-0JPDマゼンタEK-1液体として販売(日本火薬株式会社);CAS番号153204-88-7Intrajet(登録商標)マゼンタKRP(コンプトン・アンド・クノールズカラーズ社);US特許第5997622および同6001161において記載された金属アゾ染料。
【0043】
本発明のインク組成物は、非着色粒子、例えば、無機粒子またはポリマー粒子を含有してもよい。このような粒状添加剤の使用は、特に、写真品質画像をもたらすことを目的とするインクジェット用インク組成物において、近年増加している。例えば、US特許5925178においては、画像記録素子上の顔料粒子の耐摩擦性と光学濃度を改良するために、顔料を基剤とするインク中に無機粒子を使用することが開示されている。別の例の場合、例えばUS特許6508548B2においては、印刷画像の耐光性と耐オゾン性を改善するために、染料を基剤とするインクにおいて、水分散性ポリマーラテックスの使用を開示する。印刷画像の光沢差、耐光性および耐オゾン性、耐水性、耐摩擦性およびその他の種々の性質を改善するために、インク組成物は非着色粒子、例えば無機またはポリマー粒子などを含有してもよい(例えば、US特許第6598967または同6508548参照)。
【0044】
本発明において有用な無機粒子の例には以下のものが含まれる(ただし、これらに限定されない):アルミナ、ベーマイト、クレー、炭酸カルシウム、二酸化チタン、熱分解クレー、アルミノシリケート、シリカ、または硫酸バリウム。本発明において有用なポリマー粒子には以下のものが含まれる;一般に付加ポリマーまたは縮合ポリマーに分類される水分散性ポリマー(いずれもポリマー化学の当業者に既知である)。ポリマー類の例には、アクリル、スチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリ酸無水物およびそれらの組み合わせを含有するコポリマーが含まれる。このようなポリマー粒子はアイオノマー、フィルム形成性、可溶性または強く架橋し、および幅広い分子量とガラス転移温度を有するものであってもよい。
【0045】
有用なポリマー粒子の例は、商標名Joncryl(登録商標)(S.S.ジョンソン社)、Ucar(登録商標)(ダウケミカル社)、Jonrez(登録商標)(メド・ウエストバコ社)およびVancryl(登録商標)(エアープロダクツ・アンド・ケミカル社)として市販のスチレン-アクリルコポリマー;)];スルホン化ポリエステル[以下の商品名で市販されている:EASTMAN AQ(登録商標)(イーストマン・ケミカル社製)];ポリエチレンもしくはポリプロピレンの樹脂エマルション、およびポリウレタン(ウイトコ社製のWITCOBONDS(登録商標)など)である。これらのポリマー粒子が好ましい。なぜならば、それらは代表的な水系インク組成物と相溶性があると共に、物理的な摩耗、光およびオゾンに対して高い耐久を示す印刷画像を提供するからである。
【0046】
本発明において使用されるインク組成物において使用される非着色粒子は、任意の有効量で存在でき、一般に0.01〜20重量%、好ましくは0.01〜6重量%である。非着色粒子の的確な選択は、印刷画像の具体的な用途および要求される性能に基づく。
【0047】
インク組成物は、インクジェット用インク組成物の技術分野において樹脂またはバインダーと称される場合がある水溶性ポリマーを含有してもよい。インク組成物において有用な水溶性ポリマーは、水相またはインクの一体化した水/水溶性溶媒相に溶解できるポリマー粒子とは区別される。この分類に含まれるポリマーには、非イオン性、アニオン性、両性およびカチオン性ポリマーが含まれる。水溶性ポリマーの代表例には、以下のものが含まれる:ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリエチルオキサゾリン、ポリエチレンイミン、ポリアミドおよびアルカリ溶解性樹脂、ポリウレタン(US特許第6268101において記載されるものなど)、ポリアクリル酸、スチレン-アクリルメタクリル酸コポリマー(例えば、Joncryl(登録商標)70、S.Cジョンソン社、TruDot(登録商標)IJ-4655(メド・ウエストバコ社)、およびVancryl(登録商標)68S(エア・プロダクツ・アンド・ケミカル社)など)。
【0048】
インク組成物が乾燥することを防ぐため、またはプリントヘッドのノズルがクラスト形成されることを防ぐため、インク組成物中の成分の溶解性を補助するため、あるいは、印刷後の画像記録素子内におけるインク組成物の浸透を促進するために、本発明において有用なインク組成物は、保湿剤および/または共溶媒を含有できる。水系インク組成物において使用される保湿剤および共溶媒の代表例には、以下のものが含まれる:(1)アルコール、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、t-ブチルアルコール、イソ-ブチルアルコール、フルフリルアルコールおよびテトラヒドロフルフリルアルコールなど;(2)多価アルコール、例えばエチレングリコール、ジ(エチレングリコール)、トリ(エチレングリコール)、テトラ(エチレングリコール)、プロピレングリコール、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、1,2-ヘプタンジオール、1,7-ヘキサンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,8-オクタンジオール、グリセロール、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-2-ヒドロキシメチル-プロパンジオール、単糖アルコールおよび糖アルコール並びにチオグリコールなど;(3)多価アルコールから誘導された低級モノ-およびジ-アルキルエーテル、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジ(エチレングリコール)モノメチルエーテル、およびジ(エチレングリコール)モノブチルエーテルアセテートなど;(4)窒素含有化合物、例えば尿素、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、および1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン;および(5)硫黄含有化合物、例えば2,2'-チオジエタノール、ジメチルスルホキシド、及びテトラメチレンスルホンなど。
【0049】
界面活性剤をインク組成物に添加して、顔料粒子のコロイド安定性を損なわない適度な程度にインクの表面張力を調整してもよい。界面活性剤はアニオン性、カチオン性、両性または非イオン性であってよく、インク組成物の0.01〜5%の濃度で使用される。適切な非イオン性界面活性剤として、例えば、線状または第2アルコールエトキシレート(例えば、ユニオン・カーバイド(Union Carbide)社から入手できるTERGITOL(登録商標)15−SおよびTERGITOL(登録商標)TMNシリーズならびにUniquema(登録商標)から入手できるBRIJ(登録商標)シリーズ(インペリアルケミカルズ社PLC))、エトキシル化アルキルフェノール(例えば、ユニオン・カーバイド社から入手できるTRITON(登録商標)シリーズ)、フルオロ界面活性剤(例えば、デュポン社から入手できるゾニルスZONYLS(登録商標);および3M社から入手できるFLUORADS(登録商標))、脂肪酸エトキシル化物、脂肪酸アミドエトキシレート、エトキシル化およびプロポキシル化ブロックコポリマー(例えば、BASF社から入手できるPLURONIC(登録商標)およびTETRONIC(登録商標)シリーズ)、エトキシル化およびプロポキシル化ポリシロキサン系界面活性剤(例えば、GEシリコーン、ゼネラルエレクトリック社から入手できるSILWET(登録商標))、およびアセチレン性ポリエチレンオキシド界面活性剤(例えば、エアー・プロダクツ・アンド・ケミカル社から入手できるSurfynols(登録商標))が挙げられる。
【0050】
アニオン性界面活性剤の例には以下のものが含まれ:カルボキシル化物(例えば、エーテルカルボキシレートおよびスルホスクシネート)、スルフェート化物(例えば、ナトリウムドデシルスルフェート)、スルホネート化物(例えば、ドデシルベンゼンスルホネート、アルファ−オレフィンスルホネート、アルキルジフェニルオキシドジスルホネート、脂肪酸タウレート(fatty acid taurates)、およびアルキルナフタレンスルホネート)、ホスフェート化物(例えば、アルキルおよびアリールアルコールのホスフェート化エステル、例えば、デクスター・ケミカル社から入手できるSTRODEX(登録商標)シリーズ)、ホスホネート化およびアミンオキシド界面活性剤、およびアニオン性フッ素化界面活性剤。両性界面活性剤の具体例として、以下のものが含まれる:ベタイン、スルタイン(sultaines)、およびアミノプロピオネート。カチオン性界面活性剤の例には以下のものが含まれる:第4級アンモニウム化合物、カチオン性アミンオキシド、エトキシル化脂肪アミン、およびイミダゾリン界面活性剤。上記界面活性剤の追加例として、「マッカーチオンの乳化剤と洗剤(McCutcheon's Emulsifiers and Detergents)」北米版インターナショナル版1996年、第1巻、McCutcheon Division of Manufacturing Confectionar社、グレーンロックNJ(1996年)。
【0051】
殺生物剤は、インクジェット用インク組成物に添加され、水性インク中における微生物、例えばかび、菌類、などの増殖を抑制できる。有用な殺生物剤は、アルキルイソチアゾロン、クロロアルキルイソチアゾロン、およびベンズイソチアゾロンにより例示される。インク組成物向けの好ましい殺生物剤は、0.0001〜0.5wt%の最終濃度でのProxel(登録商標)GXL(Arch ケミカル社)、およびKordek(登録商標)MLX(ローム・アンド・ハース社)である。
【0052】
インクジェット用インク組成物中に所望により存在できる更なる添加剤には、増粘剤、伝導度向上剤、コゲーション防止剤(anti-kogation agent)、乾燥剤、耐水剤、染料可溶化剤、キレート化剤、バインダー、光安定化剤、粘度調節剤または増粘剤、緩衝剤、防かび剤、防しわ剤、カール防止剤、安定化剤および耐発泡剤および消泡剤が含まれる。連続インクジェットプリンターに使用する水性インクジェット用インク組成物は、主なビヒクルもしくはキャリア媒体としての水、着色剤、保湿剤、殺生物剤および界面活性剤を所望により含有し、所望によりさらに1種以上の他の成分を含有し、これらには、以下のものが含まれる(ただしこれらに限定されない);フィルム形成バインダーまたは媒染剤、第2着色剤、可溶化剤、共溶媒、塩基、酸、pH緩衝剤、湿潤剤、キレート化剤、腐食防止剤、粘度改質剤、浸透剤、耐発泡剤、消泡剤、抗真菌剤、噴出助剤、フィラメント長改質剤、多価カチオン性凝集塩の痕跡、伝導率調整剤溶液、または帯電帯状電極上でインクを乾燥させる場合に、静電偏向電荷のショートを防ぐための化合物。帯電リードのショートを抑制するために、顔料インクの乾燥フィルム抵抗率を増加させるのに有用な化合物は、US特許第5676744(Thalkkar等)に記載されている。着色インクジェット組成物の凝集を制御するのに有用な無機および有機インク添加剤は、US2004/0266908に記載されている。
【0053】
連続インクジェット印刷向けのインクジェト用インク組成物の総保湿剤濃度は、望ましくは0〜10重量%である。インクの総保湿剤濃度は、保湿剤成分の個々の源の合計であり、それは、インクの配合中に直接添加された保湿剤、および例えば追加成分としての市販の殺生物剤調合液に付随する保湿剤、または、Harz等による、US公開2005/0075415の記載のように、ボトルキャップの周囲で形成される乾燥顔料ケーキに関する所謂「ペイント-フレーク」を防ぐために存在する、市販の顔料分散調合液に付随する保湿剤を含むことができる。より望ましくは、高速プリンターにおいてインクジェット印刷用記録材料の乾燥を促進させると共に、インクによる洗浄と再分散、または流体の流入および停止による洗浄と再分散、あるいはプリントヘッド貯蔵流体による洗浄と再分散に対して、ハードウェア上の乾燥インクフィルムについてより高い平衡含水率を促すために、総保湿剤濃度は1%〜7%である。本明細書において、連続インクジェットプリンターにおいて使用するためのインクジェット用インク組成物に関して、望ましい保湿剤には、以下のものが含まれる:アルコール、例えば2-プロパノールまたは1−ペンタノールなど;ポリオール、例えばグリセロールまたはエチレングリコールなど;グリコールエーテル、例えばジ(エチレングリコール)、トリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレングリコール)-400(平均Mnが約400、ここで、簡単のためにPEG-400と称する)、またはポリ(プロピレングリコール)-425(平均Mn約425)など;芳香族グリコールエーテル、例えばプロピレングリコールフェニルエーテル(例えば、Dowanol(登録商標)PPhグリコールエーテル)などまたは脂肪族グリコールエーテル、例えばジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルまたはポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(平均M、約550)など;ラクタム、例えば2−ピロリジノン、N-メチル-2-ピロリジノン、またはポリビニルピロリジノンなど;代替的な極性溶媒、例えばジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、またはモルホリンなど;多価脂肪族有機アルコール、例えば1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオールまたは2−エチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオールなど、またはサッカライド、例えばソルビトールまたはフルクロースなど;またはウレア。水分保持および湿潤を果たす場合における湿潤剤の有効性は、その化学構造に起因する。保湿剤の化学構造が比較的低い水分保持をもたらす場合、印刷されるインクの乾燥速度に悪影響を与えることなく、より高濃度の保湿剤が使用できる。
【0054】
CIJをターゲットとするインクジェット用インク組成物のpHは、望ましくは8〜12に調製され、より望ましくは、pHは8〜10である。インク組成物を、ニッケルまたはニッケルメッキした装置部品を備えるハードウェアにおいて使用する場合、防食抑制剤、例えば4-または5-メチル-1-H-ベンゾトリアゾールのナトリウム塩などは望ましく添加され、pHは10〜11へ調製される。インク組成物が、流体と接触する、ケイ素製の部品を備えるプリントヘッドと共に使用される場合、インク組成物のpHは望ましくは8〜10に調整され、より好ましくは、pH域は8.0〜9.5、および最も好ましくは8.5〜9.0である。顔料の凝集の影響をより受けやすいインク組成物をもたらす、ポリマー分散体と併用されるカルボン酸アニオンの過剰なプロトン化のリスクを最小限にするために、望ましくは、7より低いpH値は避けられる。インク組成物と接触するケイ素製のハードウェア部品に関して、10よりも高いpH値は、著しいエッチ速度と腐食を誘発するので、時間が経つにつれて装置の稼働を損ない得る。
【0055】
ポリマー分散剤またはバインダーの溶液を調製する場合、顔料粉砕用のポリマーを可溶化させるために、(重合開始剤との処理に続く)モノマーの完全な反応に続いて形成されるコポリマーを塩基と反応させ、親水性ポリマー部(例えばカルボン酸基など)における酸性官能基を脱プロトン化させる。望ましくは、コポリマーを有機塩基と反応させ、酸性官能基を脱プロトン化させる。無機塩基、例えば水酸化カリウムを使用できる:しかしながら、50〜100%の部分を滴定できる、ポリマー分散剤またはバインダーのアミン塩基中和も、特に考慮される。印刷したインク画像の湿潤摩擦耐久性は、アミン中和により改善される。リン酸エステル、ポリシロキサン、またはアセチレンジオールから構成される消泡剤は、CIJをターゲットとするインク組成物に所望により使用され、液滴回収およびインク再循環に伴う流体の攪拌に起因する泡の形成を最小限にする。
【0056】
本発明は、有機アミンの酸性塩と、付加的な遊離有機アミンとを有する連続インクジェット用の水性インク組成物を提供し、この場合において、有機アミン塩と有機アミンは、緩衝化したpHが8よりも大きくなり、抵抗率が500オーム-cm未満となうような濃度と相対的比率で存在する。付加的な遊離有機アミンを確実に存在させるために、有機アミンの酸性塩を形成するのに使用される酸の当量に対する有機アミンの当量の比は、1.1:1.0よりも高い。液体インク中の電気的に帯電したイオンの移送は、18℃にて25メガオーム-cmである超純水において見出される程度から、その電気伝導率を生じさせることおよびインク抵抗率を減少させることに関与する。イオン種iの伝導特性は、下記のようにその電気的移動度uにより表わされる:
【0057】
【数4】

【0058】
式中、イオンiの移動度は、ストーク抵抗因子(6πで表わされる)、流体粘度ηおよびイオンiの溶媒半径Rにより除された、その電荷zと基本電荷e(単位クーロン)の絶対等級の結果に関する。溶液伝導率κは、複数のイオンの個々の移動度の合計から導かれる流体の電荷輸送能の結果であり、以下により表わされる:
【0059】
【数5】

【0060】
式中Fは、ファラデー定数であり、Cは個々のイオンiの濃度である。電気化学の基本原則によると、インク中にイオン化合物を添加することは、付与された温度でのその抵抗率を低下させ、作動する連続インクジェット用インクの化学成分の複雑性は、流体の理想的な化学状態(例えば、純粋な水性溶媒、単一の活量係数、物質の単層(すなわち、固形分のコロイド分散が無い)、および無限希釈時におけるイオン種のごく僅かな相互作用)から離れることを推進し、これらの単純な数学的記述を、定量的に信頼することはできないことを概して示す。したがって、インク組成の電気的移動度が既知であっても、それらは、上記の正確に予測されるインクの溶液伝導率として単純に考慮できない。さらに、空気中でのインク再生利用の環境効果に起因して変動するインクpHの懸案事項は、電気化学的概念により取り組まれない。
【0061】
用語pHは、水素イオン濃度の10を底とする対数の負の値を示す。水素イオンは、水性溶液中での水をプロトンと水酸化物アニオンへとの解離させることにより生成でき、あるいは下記のように、酸を水素イオンとその共役塩基へ解離させることにより生成できる。
【0062】
【数6】

【0063】
可逆反応に関する酸解離定数Kは、下記のように定義される:
【0064】
【数7】

【0065】
酸解離定数の10を底とする対数の負の値に関して検討することも同様に有用であり、該値はpKとして定義される。上記方程式が正確に再現される理想条件下、および酸とその共役塩の濃度が等しい場合、溶液のpHは酸のpKを反映する。純水のpHは7.0であり、アルカリ溶液は該値よりも高い値であり、一方、酸性溶液は該値よりも低い値で得られる。安定した連続インクジェット用インクの再循環および液滴形成を満足するために、インクをアルカリ条件下に維持することが望ましい。酸性または塩基性材料の添加に応答するインクpHの変動を最小限にするために、pH安定化を確立する必要があり、このことは緩衝作用と称される場合もある。緩衝作用または強度は、添加した酸の共役塩基の濃度に対する添加した酸濃度の比が一方に近似する条件下、および、添加した酸および塩基濃度の合計が水素イオンおよび水酸化物アニオンの濃度の合計よりも更に高い場合、付与される水性組成物に関連して増加する。驚くべきことに、発明者は、連続インクジェット用インク組成物の伝導率は、酸の有機アミン塩を添加することにより安定した再生利用ができる程度に増加でき、アミン塩に対して同様のモル比で中性型の有機アミンを含むことにより、インクのpH安定性を同時に改良できることを見出した。
【0066】
本発明において使用されるアミンは、大気温度(例えば20〜30℃)付近での、記載したような最終的なインクpHに望ましく近似する、水性溶液のpKに基づき選択される。本発明において使用される、連続インクジェット用の着色インクは、少なくとも8.0のpHを示し、典型的なポリマー安定化顔料分散体のコロイド安定性を確実にする。より望ましくは、インクpHは少なくとも8.5であり、乾燥インクの再分散能を改良する。本発明は、プリントヘッド液滴形成ノズルプレートとして機能するケイ素系MEMSデバイスと共に使用するために極めて適している。ケイ素デバイスを含有するケイ素および二酸化ケイ素層は、特に昇温条件での溶解による分解に対して、水性溶液中で不安定である。10よりも高いpH値は著しいエッチ速度と腐食を誘発し、このことは、室温においても長期に亘るデバイス操作を害し得る。インクpHは10.0を超過せず、より望ましくは9.3未満である。本発明において使用される好ましいpH域は、有機アミンの選択を分類のより少ない基本例へと誘導し、それらの多くは10.0よりも高いpK値を有する。有機アミンの塩基性度を記載し、多くのアミンpK値の例を示す、有機アミンの有用な編集物は、J.W.スミスによる第4章「塩基性度および錯体形成」アミノ基の化学、Patai,S.、Ed,John Wiley and Sons:ニューヨーク、1968年、第161頁〜第204頁である。報告された理想的な水性溶液のpK値は、単なる指針に過ぎないことがわかる。何故ならば、インクジェット用インクは、溶媒の溶媒和性を改質し、アミン塩基から、誘導された酸の機能的な酸性度にまで影響を及ぼす、有機溶媒、ミセル溶液凝集体およびコロイド的に分散した固相を含有し得るからである。さらに、その共役酸との関連で、遊離塩基のモル濃度もインクpHに影響を及ぼす。したがって、望ましいインクpH域よりも高い又は低い、報告されたpK値を有する有機アミンを使用することを、本発明の範囲に含むことができる。
【0067】
有機アミンは、少なくとも1種の有機置換基から構成されるアミンであり、本発明において使用される置換基は、望ましくは脂肪族基である。アミンと他のインク含有物の化学反応の可能性を低減させるために、第一級アミンよりも第二級アミンがより好ましい。最も好ましくは第三級アミンであり、該アミンにおける中性のアミン塩基は3つの有機置換基を有する。同様に、アミン脂肪族基は、インクジェット用インクの用途に適合する任意の適当な官能基で置換できる。具体的な例には、以下のものが含まれる:ベンジルアミン、2-フェニルエチルアミン、N-メチルベンジルアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、N-プロピルベンジルアミン、N-t-ブチル-N-エチルアニリン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、トリメチルアミン、トリ-n-ブチルアミン、N,N-ジメチル-n-プロピルアミン、N,N-ジメチル-i-ブチルアミン、テトラメチルジプロピレントリアミン、ペンタメチルジプロピレントリアミン、ペンタメチレンジエチレントリアミン、2,2,2-トリフルオロエチルアミンおよび3,3,3-トリフルオロ-n-プロピルアミン。他の例には以下のものが含まれる:モルホリン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、およびジメチルピペラジン。より好ましくは、ヒドロキシル基で置換した脂肪族アミン、例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、3-アミノ-1-プロパノール、N-メチルエタノールアミン、N-ベンジル-N-メチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、2-(2-アミノエトキシ)エタノール、N,N-ジメチル-2-(2-アミノエトキシ)エタノール、N-メチルジエタノールアミン、およびN,N-ジメチルエタノールアミンなどである。アミノプロパンジオール誘導体の例には、以下のものが含まれる:1-メチル-アミノ-2,3-プロパンジオール、1-アミノ-2,3-プロパンジオール、1-アミノ-2-エチル-2,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオールおよび2-アミノ-2,3-プロパンジオール。
【0068】
プロトン酸は、有機アミンから塩を生じさせるために使用される。代表的な無機酸には、ホウ酸、塩酸、硝酸、リン酸および硫酸が含まれる。代表的な有機酸は、メタンスルホン酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、および乳酸が含まれる。好ましくは短鎖脂肪族カルボン酸、例えば、酢酸および乳酸である。本発明に使用される最終的な水性インク組成物のpHは、有機もしくは無機酸または塩基を添加することにより調整してもよい。
【0069】
望ましくは、酸は、6.5未満のpKを有し、適切な反応を確実に行うために、好ましくは、酸は、有機アミン塩基から形成される共役酸の値よりも少なくとも2単位低い。塩は、インクの混合中にインサイチュで形成されてもよく、または希釈溶液として予め調製してもよく、あるいは純物質として分離されてもよい。理想的には、インクは、等モル比の有機アミン塩基およびその共役酸から構成され、従って、アミン塩基の共役酸を形成するのに使用される無機または有機酸の当量に対する、アミン塩基の当量比は、好ましくは少なくとも1.3:1.0、より好ましくは1.5:1.0、最も好ましくは2.0:1.0であり、好ましくは3.0:1.0未満、およびより好ましくは2.5:1.0未満である。インクは、少なくとも0.03モル/kgの一塩基性有機アミンから構成されることにより、望ましく緩衝化されたpHをもたらすことができ、または、関連する塩基性アミン基の数を考慮して、多塩基性有機アミンの同等に調整された量から構成されてもよい。望ましくは、インクは、少なくとも0.06モル/kgの一塩基性有機アミンから構成されることにより、適切な緩衝強度(buffer strength)を備える望ましいpHをもたらす。望ましくは、インクは、少なくとも0.05ミリ当量の強酸滴定可能な塩基を有し、その大部分は、緩衝有機アミンから誘導される。1種以上の有機アミンを使用することにより、望ましいインク緩衝pHをもたらすことができ、顔料分散体を調製する間に、中和されたポリマーを添加することにより、またはインク混合の間にインサイチュで形成されるまたは直接添加される中和されたポリマーバインダーを添加することにより、関与する有機アミンをインク組成物内に導入できる。
【0070】
得られるインク抵抗率は、500オーム-cm未満であり、より好ましくは、300オーム-cm未満である。インク抵抗率があまりにも低い値にならないことが望ましい。何故ならば、潜在的に、着色インクジェット用インク組成物の高いイオン強度は、分散した粒子のコロイド安定性に影響を及ぼし、それらの凝集を引き起し、インクを機能させなくすることが認められているからである。米国特許出願公開第2005/0090599において、0.2モル/リットルの濃度で塩溶液を用いることにより、水性の分散させた着色インク粒子が凝集することが記載されている。したがって、インク抵抗率は望ましくは50オーム-cmよりも大きく、より好ましくは、インク抵抗率は100オーム-cmよりも大きく、最も好ましくは200〜300オーム-cmの間である。
【0071】
補充流体はもっぱら水を含有し、および好ましくは、補充インク中での導電性無機塩の堆積を防ぐために、水は完全に脱イオン化される。望ましくは、水性の補充流体は殺生物剤を含有し、微細生物の偶発的な増殖を抑制する。補充組成物において使用するための好ましい市販の商品には、0.0001〜0.5wt%の最終濃度でのProxel(登録商標)GXL(Arch ケミカル社)、およびKordek(登録商標)MLX(ローム・アンド・ハース社)が含まれる。補充流体の抵抗率は、望ましくは5000オーム-cmを超過し、より望ましくは200000オーム-cmを超過する。
【0072】
本発明の1実施態様において、連続インクジェットプリンターにおいて使用するためのインクジェット用インク組成物は、連続的な流体流から生成される複数の液滴体積を使用する方法で印刷され、印刷液滴と異なる体積の非印刷液滴は、再循環用の溝内へ液滴偏向手段によって迂回させられる。このことは、米国特許第6588888(ジーンマイヤー等)、米国特許第6554410(ジーンマイヤー等)、米国特許第6682182(ジーンマイヤー等)、米国特許公開第2003/0202054(ジーンマイヤー等)、米国特許第6793328(ジーンマイヤー等)、米国特許第6866370(ジーンマイヤー等)、米国特許第6575566(ジーンマイヤー等)、米国特許第6517197B2(ホーキンス等)において記載されている。別の好ましい実施態様において、インクジェット用インク組成物は、液滴の崩壊を初期化し、得られる液滴を誘導する役割を果たす、流体流れへの熱を非対象的に施すことによって、形成される印刷物と非印刷液滴の方向を制御できる装置を用いて印刷され、このことは米国特許第6079821(チュワレック等)、および米国特許第6505921(チュワレック等)において開示されている。CIJ着色インクジェット用インク組成物向けの、有用なインク撹拌、熱インク供給部およびプリントヘッド、並びに流体ろ過方法は、クロケット等による米国特許第6817705に記載されている。インク品質を維持するため、および揮発性インク成分の蒸発の影響に対抗するための、更なるプリンター補給システムの提案は、マダー等による米国特許第5473350に記載されている。
【0073】
連続インクジェット印刷は、印刷物の高い光学密度、色忠実度、画像安定性、色あせおよび摩耗に対する印刷耐久性および耐水性に関する市場の要求を満足するために、改良されたインク組成物と印刷方法を提供する必要性を有している。高速連続インクジェット印刷は、商業市場用途において使用され、一般に、業務書類(例えば請求書、クレジットカードの請求明細書など)、およびスクラッチ式のインスタントくじに関する可変情報を印刷することを含む。変数データ刷り込みサブシステム(印刷機構と称される場合もある)は、プリントヘッド、制御電子回路、インク容器、インクポンプおよびインク搬送系を含むサブシステムから構成され、それらは、ラベリングまたは郵便用途におけるブラック文字印刷向けの既存の高速押圧システムに追加できる。一般に使用される染料系インクは、標準混合の紙基材、例えば無地のボンド紙、表面処理紙または、コートおよびカレンダー処理されたビジネス用の光沢紙、あるいはヘビーストック紙製カバーへ、適当な光学密度を付与することができる。しかしながら、染料系インクは、全ての基材において不十分な耐水性を示すと共に、湿潤摩擦剥離に逆らい光沢紙上で低い耐久性を示すので、該インクは、文字および普遍的な梱包コード情報の不鮮明さを生じさせる。フィルム形成ポリマーバインダーが欠けている自己分散カーボンブラック顔料系インク組成物は、電子写真印刷品質に匹敵する未処理のボンド紙上において高い光学密度を提供し、1.4の視覚濃度を示す。しかしながら、着色剤は湿潤摩擦剥離により容易に再分散し、その結果、望ましくない低い耐久性と不鮮明さを生じさせる。先行技術におけるポリマー分散させたカーボンブラック顔料インク組成物は、基材上において優れた耐水性、湿潤摩擦耐久性および乾燥摩擦を提供する。しかし、普通紙における光学密度は、着色剤が紙の内部に存在するセルロース繊維にそって外見から判断できるような芯を形成するので、印刷文字が灰色に見える弊害をもたらす。連続インクジェット用インク配合物および印刷に適合できる、耐久性のあるカーボンブラック着色インクジェット組成物は、US公開第2007/0043146に記載されている。カーボンブラック顔料と関連した水溶性ポリマー樹脂から構成される連続インクジェット印刷用インク組成物は、EP0853106(タッカー等)、US6203605(タッカー等)およびUS5512089(タッカー等)に記載されている。
【0074】
耐久性、光沢、および印刷インクジェット画像の他の特性は、例えばUS特許第7219989B2、ウアーズ等に記載されるような、(好ましくは無着色の)ポリマーオーバーコートインク組成物を施すことにより改良できる。連続インクジェットウェブ印刷と関連する速い印刷速度と処理量をもたらすために、オーバーコート組成物は、改良された印刷画像特性を有するモノクロ印刷機またはモノクロインプリンターシステムを提供する、液滴形成ノズルの、1つのモノクロ連続インクジェットプリンターラインヘッドと直列に並び連続する、連続インクジェットプリンターのプリントヘッドを用いて施すことができる。あるいは、オーバーコート組成物は、改良された印刷画像特性を備える、多色のインクジェットインプリンター系または多色の印刷機、望ましくはフルカラー印刷機を用いる場合、液滴形成ノズルの複合的な連続インクジェットプリンターラインヘッドと直列に配置される連続インクジェットプリンタープリントヘッドを用いて施すことができる。液滴サイズ、アドレス可能性、およびオーバーコート組成物のプリント分解は、発射速度と紙搬送速度の要求を満たす限り、印刷されたインクジェット用インクと同じである必要はなく、および異なる連続インクジェットプリントヘッド技術を使用できる。ポリマーオーバーコート組成物は、本発明において使用される着色インク組成物のように、同じ流体再生利用および補充操作に付すことができる。本発明の更なる実施態様において、改良された流体pH安定性および補充正確さの同じ恩恵を、上述の着色インク組成物のように、緩衝化したpHが8よりも大きくなり、抵抗率が500オーム-cm未満となることを十分にもたらす濃度と相対的比率で存在する、酸性有機アミン塩と、有機アミンと、およびポリマーオーバーコート組成物とを含有することによりもたらすことができる。
【実施例】
【0075】
連続インクジェット用インクサンプルの調製
添え字(c)は対照または比較インクジェット用インク組成物を示し、一方、添え字(e)は、実施例のインクジェット用インク組成物を示す。略記(wt%)は、構成要素の重量パーセントを表す。カーボンブラック顔料分散体の含有量は、カーボンブラックの重量パーセントに基づく。
【0076】
ポリマー分散剤の調製
ポリマー分散剤P-1
1リットルの、還流冷却器を備える3つ口の丸底フラスコ中へ、窒素雰囲気下にて、37.0gのベンジルメタクリレート、30.0gのステアリルメタクリレート、および33.0gのメタクリル酸、1.5gの1-ドデカンチオール、400mLのメチルエチルケトン、並びに1.2gのAIBNを混合させた。溶液を撹拌し、20分間窒素でパージし、一定温度の浴槽中で70℃まで加熱した。24時間後、得られた溶液を冷却した。得られたポリマー溶液を、水とジメチルアミノエタノールで混合させ、100%の酸中和をもたらした。その後、混合物全体を、減圧条件下50℃にて蒸留させ、有機溶媒を除去した。最終的なポリマー溶液は水中で約20wt%の濃度を有し、そのpHは約7であった。重量平均分子量は10800ダルトンであった。
【0077】
ポリマー分散剤P-2
5リットルの、機械撹拌器と還流冷却器およびガス注入口を備える3つ口の丸底フラスコを、225gの1-メトキシ-2-プロパノールで充填させ、窒素を拡散させた。撹拌させながら、Akzo-ノーベル化学社製の開始剤PerKadox AMBN-GR(1.9g)を添加した。反応容器を225gの1-メトキシ-2-プロパノール、23.4gの1-ドデカンチオール、203.5gのベンジルメタクリレート、165.0gのステアリルメタクリレートおよび181.5gのメタクリル酸で充填し、溶液を窒素拡散によって脱気させた。その中に、AMBN-GR(7.7g)を添加し混合させた。反応温度を77℃まで上昇させ、360分にわたり2.3mL/分の速度にて、容器から反応物を送り出した。反応混合物を77℃で少なくとも12時間撹拌させた。ジメチルアミノエタノールを用いて完全にポリマーを中和させ、45分間撹拌させた。反応混合物を2580gの水で希釈し、Pall社製のUltipleatポリプロピレンカートリッジフィルターを介してろ過した。最終的なポリマー溶液は約20wt%の固形分濃度を有し、そのpHは8.6であった。重量平均分子量の平均は9070ダルトンであった。
【0078】
顔料分散体の調製
顔料分散体K-1
2.5ガロンで、9-インチの直径と12-インチの深さを有し、4つのバッフルを具備する、2重壁のステンレススチール製混合容器へ、水(1273g)とポリマー分散体P-1の溶液(20.6wt%溶液を727g)を添加した。チャールズロス&ソン社の形式HSM-100LH-2高せん断ミキサーにより駆動される、わずか4インチの環状の分散羽根(ホックマイヤー・エクイプメント社、D-ブレード)を、撹拌容器の底から2インチ上方の中心位置へ配置し、撹拌を開始する。デグサ社製のNIPex(登録商標)180IQカーボンブラック顔料(500g)を流体内へゆっくりと調合させる。50マイクロメーターの平均粒径を有するポリスチレン樹脂ビーズ(スチレンとジビニルベンゼン/エチルビニルベンゼン混合物のコポリマー)を含有する粉砕媒体(3000g)を、羽根車の速度を上昇させながら、ゆっくりと添加する。混合物を、初期温度25〜35℃にて、20時間、約19m/秒の撹拌翼の先端速度で粉砕する。マイクロトラック社製のNanotrac(登録商標)150動的光散乱分析器によって粒径を測定するために、サンプルを定期的に取り出し、希釈および濾過した。粉砕が完了した際に、分散体/粉砕媒体混合物を、10%の最終顔料濃度と、5000gの理論分散バッチサイズを有するように、水(2475g)とローム・アンド・ハース社製のKordek(登録商標)MLX防腐剤(25g)との溶液でさらに希釈する。羽根を分散体/粉砕媒体混合物から取り出し、真空分離フィルタープローブを浸漬させる。フィルタープローブは、密閉された2−インチ長の1.25インチOD管状の、38マイクロメータスクリーン(ジョンソンスクリーン)へ連結された0.25インチのID Tygon(登録商標)プラスチックチューブから構成される。ぜん動性ポンプは、粉砕媒体から分散体を分離するために使用され、その後、それらは、0.3マイクロメーターの除去効率を示す、奥行きのあるフィルターであるパール社製のProfileII(登録商標)を用いて、除去される。おおよそ4kgの分散体が回収され、収率は約80%である。体積加重した50番目の百分位数(50th percentile)粒径での分布粒径は62nmであり、95番目の百分位数(95th percentile)粒径での分布粒径は110nmである。
【0079】
顔料分散体K-2
顔料分散体K-1に類似する手順を用いて、20時間にわたり、50マイクロメーターの平均粒径を有するポリマー樹脂製の粉砕媒体(3000g)を用いながら、NIPex180IQカーボンブラック顔料(500g)を、水(1000g)とポリマー分散剤P−2の溶液(20.1wt%溶液を1000g)との溶液中に分散させる。粉砕に続けて、分散体/粉砕媒体混合物を、10%の最終顔料濃度と、5000gの理論分散バッチサイズを有するように、水(2475g)とKordek(登録商標)MLX(25.0g)との溶液で希釈する。分散体を粉砕媒体から分離し、その後、0.3マイクロメーターの効果的な孔径を有し奥行きのあるフィルターを介して、それを濾過する。およそ4kgの分散体が回収され、収率は約80%である。体積加重した50番目の百分位数(50th percentile)粒径での分布粒径は60nmであり、95番目の百分位数(95th percentile)粒径での分布粒径は105nmである。
【0080】
連続インクジェット用インクサンプルの調製
黒色着色インクジェット用インク組成物インクA〜Eを、表Iにおいて記載された相対的比率で原料を混合することにより、顔料分散体K-1およびK-2から調製した。代表的な方法の場合、500gのインクは、下記の機能性成分オーダーで、マグネチック撹拌子を具備する1リットルのポリエチレンビーカー中に、表Iに従い均整のとれた良好な混合比で原料を混合することによって、調製される:水、酸、塩基、保湿剤、殺生物剤、腐食防止剤、着色剤、顔料分散体、界面活性剤、および消泡剤。インク組成物を、原料を添加する間に2分間混合させ、次いで、消泡剤の添加後に1時間撹拌させる。インク組成物は76Torrの真空条件下、47mmのパール社製Versapor(登録商標)1200膜を介して濾過し、次いで、密封したボトルに貯蔵した。
【0081】
【表1】

【0082】
実施例1
抵抗(Stand)安定性試験
実験用の試験台噴射付属品を備える連続インクジェットのインク容器を、インクA(約10L)で充填した。該付属品は以下の要素から構成される:インクを押圧でき、液滴形成プリントヘッドにインクを搬送し、真空下、インクをインク容器へ回収させ、抵抗率測定によりインク濃度を測定し、および消耗した場合に正確なインク濃度で、容器へ、補充流体を用いてインクを再充填するか、さらにインクを添加する流体系;および、発展的な連続インクジェット流用プリントヘッドであって、プリンターが画像ファイル印刷しない場合、または画像ファイルを印刷する場合であっても与えられたピクセルを印刷しない場合に該インクをインク容器へ戻すと共に、紙面に画像を形成する印刷に適するインクの液滴を形成するか、または空気偏向による捕獲に適するインクの液滴を形成する、MEMSケイ素系の液滴形成部を備える噴出モジュールを操作するコダック製の該発展的な連続インクジェット流用プリントヘッド。試験台を3日間稼働させ、インクを少なくとも約70psiで再循環させ、就業日のほとんどの期間、印刷または捕獲条件下でインク液滴を形成させた。インク液滴を形成させない場合、クロス-フラッシュモードでインクを再循環させた試験台または試験台を夜通しで停止させた。正確なインク着色剤濃度を維持するために、容器を溶媒で補充すべきであると、再循環単位が決定した場合、インク容器を、0.01wt%のProxel(登録商標)GXLと0.001wt%の酢酸溶液で再充填した。補充溶液のpHは8.8であり、その伝導率は0.13mS/cmであった。インク濃度制限の程度を開示する、紫外線/可視光分光光度法によって、着色剤吸光度の実験用の測定を行うため、ならびに、周囲条件で測定され、および25℃に補正された、較正された卓上計測機器によりpHと伝導率を測定するために、日々インクのサンプルを回収した。代表的なイオンプローブは、Mettler Toledo InLab(登録商標)413pH電極、NO.52000106、およびCorning Laboratory Conductivity Electrode No.476501(Nova Analytics Pinnacle Seriesにおいて入手可能)である。オーム-cmの単位で表わされるインク抵抗率は、以下の式、ρ=1000/κにより、測定したインク伝導率κ(mS/cm単位で表わされる)から計算される。
【0083】
同様の方法で、実験用の試験台噴射付属品を備えるインク容器を、完全にパージした後、インクB(約10L)で充填し、インクBの再循環安定性を別の3日間に亘り測定した。日を基準とする、再循環時の2つのインクに関する安定性能を、表2に記載し、全ての性能は、平均および標準偏差を算出することによって評価される。インクの分光光度吸光度は、表2における着色剤濃度と関連し、平均して、正確に維持されることが分かった。インクAに関する濃度の標準偏差は、インクBに関する標準偏差よりも十分に高く、元のインク濃度をより不十分に維持することを示す。インクAの出発抵抗率は、982オーム-cmであるが、インクBの出発抵抗率は156オーム-cmであった。インクAおよびインクBのpH安定性は同じであるが、いずれも幾分変動しており、このことは望ましくない。
【0084】
【表2】

【0085】
実施例2
空気分散インク補充安定性
流体濃度がしきい値を下回って減少しているとフロートセンサーが決定した場合に、インクを補充溶液溶媒で充填し、インクサンプルを介して空気または窒素ガスを泡立たせることにより、インクpHおよび抵抗率に関する、連続インクジェット用インク内への空気摂取の効果を、調査した。インクEを、1-Lインク容器内へ充填し、浸せきチューブは約4立方フィート/時の体積流量で空気を搬送した。容器を補充すべきであるとフロートセンサーが決定した場合、0.10wt%Proxel GXLと0.001wt%酢酸の溶液でインクを補充した。補充溶液は0.132mSの伝導率と8.75のpHを示した。インクのサンプルを24時間毎に4日間採取した。容器体積を維持するために、日々のサンプリング後に、除去されたインクを補う新しいインクを容器に添加した。4日間の期間が終了した後、装置からインクEを抜きとり、洗浄した。インクCを容器へ添加し、実験を繰り返した。インク特性の経時変化を表3に示す。
【0086】
【表3】

【0087】
比較対照インクEの補充モデルは、実施例インクCと同じようには制御されなかった。長時間滴下したインクEの着色剤濃度、および測定した抵抗率とのその相関関係は、実験の間に不十分となった。空気を分散させることに起因して、インク内へ導入された二酸化炭素から得られる炭酸を同様に配合するにもかかわらず、弱アルカリ性補充溶液を添加することにより、インクEのpHは経時的に上昇した。pH値の1標準偏差は0.05pHユニットである。インクCの補充は、良好に制御され、その着色剤濃度は安定したままであり、着色剤濃度と共に、測定された抵抗率の相関関係は、インクEのそれよりも良好であった。インクEのpHは、3日目の実験において、弱アルカリ性の補充溶液を添加したことに起因してごく僅かに増加し、観察されたpHの1標準偏差は、僅か0.02ユニットである。
【0088】
実施例3
伝導性インクpH安定性
表4は、表1に関する組成物から得られるインクA-Eの化学特性を示す。インクAおよびEは、代表的な機能性成分(着色剤、殺生物剤、腐食防止剤、保湿剤、界面活性剤、および耐発泡剤)から成る連続インクジェット用顔料インクの比較対照である。これらの基本的な機能性成分から誘導される組成物は、8.6の許容pH値を示すが、1000オーム-cmの抵抗率をもたらす。比較対照インクBは、0.57wt%の酢酸と0.84wt%塩基性N,N-ジメチルエタノールアミンを含有することを除き、インクAと同様に調製された。インクBにおいて、酸は、4.5のpK(酸電離定数の負の対数)と、その塩基の共役酸は8.9のppKを有し、酸性度において4.4対数単位の差がある。酸と塩基のこれらの質量分率は、表1および4において、濃度測定モリニティ(molinity)として表示され、それは、溶液または混合物(この文脈の場合インク)1kg当りの酸または塩基溶質のモル数を示す。モリニティで表わされるように、インクBにおいて併用した酸と塩基の量は、化学当量の点で等しく、酸に対する塩基のモル比は1.0である。酸塩基反応からインサイチュで形成される有機塩により提供されたイオン伝導度の増加に起因し、インクBは、インクAよりも遙かに低い156オーム-cmの抵抗率値を示す。
【0089】
インクCおよびDは、インクBと同様に調製された。顔料分散体の選択において重要でない変化があり(同じ分散体をインクEで使用した)、重要ではない、保湿剤と耐発泡剤濃度の調節を含む。インクCおよびDにおいて使用されるアルカノールアミン(N-メチルジエタノールアミン)は、僅かに弱い塩基であり、より低い共役酸であり、8.7のpKが算出される。インクCおよびDにおいて形成される酸-塩基塩の濃度は、250オーム-cmの抵抗率をもたらすように配合された。酸に対する塩基のモル比は、インクBの様に一致しないが、1.6〜1.9の範囲であり、インクpHは8.6であった。
【0090】
インクA〜Eのサンプル(0.50g)を、50mLの水で希釈し、Metrohm Titrino716自動滴定装置を用いて、0.1033-Nの水性塩酸で滴定し、塩化カリウムガラスpH電極を用いてインクpHを測定した。ミリ当量/gで表わされる、インクの滴定可能な塩基量は、各インクサンプルに対して、Titrino716装置により同定される滴定曲線の終点から決定され、表4に記載されている。さらに、酸滴定剤(0.03または0.06mL)の固定アリコートに対する希釈インクサンプルのpH反応を、表4に示す。高抵抗率インクAおよびEの滴定可能な塩基は、酸に対する添加塩基のモル比が1である、減少した抵抗率を示すインクBの滴定可能塩基と近似している(0.04ミリ当量/g)。しかしながら、減少した抵抗率を示す実施例インクCおよびDは、比較対照と比べ、2倍以上の滴定可能塩基を示す。酸滴定剤のアリコートに対するインクCおよびDのpHロバスト性は、インクA、BおよびEと比べ大きく改良されたことが判った。
【0091】
【表4】

【0092】
輪転印刷インプリンター印刷機におけるインク安定性
両面印刷可能なウェブ逆転機を備え、1000fpmよりも速く搬送可能な、市販のロール紙を用いる輪転印刷機は、広大なテスト印刷のために18インチ幅のロール紙を供給されている。ペーパーロールは、24lb基本重量の文字ボンド紙(International Paper DataspeedレーザーMOCR)と、60lb基本重量のC2Sフレッシュシート被覆NewPage Sterling(登録商標)Ultraグロスとを繰り返して用いた。搬送部はタワーが装備されており、4つのコダック社製のストリーム・プリントヘッド各々の2つのステーション(合計8個)を支持し、インプリンターに、18インチのロール紙全幅にわたって2重に(すなわち、両面に)印刷させることができる。メンテナンスおよび修理のためにプリントヘッド単位にアクセスできるレール搬送系により、プリントヘッドは、ウェブを横切るタワーに支持される。搬送は、精密なウェブマウントにより支持され、プリントヘッドの適切な横方向位置合わせを確実にすると共に、紙に対する望ましい印刷液滴軌道を確実に導く。印刷サブシステム単位は、8個のStream・Printhead(商品名)プリントヘッドのインターフェース制御ボックス単位であって、それぞれ、モノクロ600npiを駆動し、100kHzの印刷液滴発生振動数が可能な4.16インチの帯状の連続インクジェットプリントヘッド噴出モジュールである該ボックス単位と;電気配線および、各プリントヘッド噴射部へおよび該噴射モジュールからインク及び他の流体を供給および戻すための種々の流体ラインを具備する可撓性の40-ft「臍帯」チューブと;4つの二重チャネル流体系であって、インク容器、補充流体容器、フラッシング流体容器、流体押出しサブシステム、真空戻しサブシステム、および種々の電子制御装置が備え付けられる2つの個々のプリントヘッドを支持できる該流体系と;全てのプリントヘッドへ電子制御信号、例えば操作順序(開始、シャットダウン、交差したフラッシング、点検洗浄、印刷、および他の操作方法)、および文字/画像を形成する紙へインクを施すための瞬間的な印刷データ指示(ラスター画像処理)などを供給する、KODAK VERSAMARK CS410系コントローラーから構成される。広大な製造試行実験が行われた。流体系のインク供給容器は、所望により主たるインク供給容器を充填する55ガロンドラムのインクCに対して供給され、補充供給容器は、0.10wt%のローム・アンド・ハース社製KORDEX(登録商標)MLX殺生物剤を含有する水の20Lキュビテイナー(Cubitainer)に対して供給される。流体系のインク補充操作は、250オーム-cmの設定値の抵抗率を有する保守インクCに基づいた。抵抗率が、それぞれ目標値を下回るか、目標値を上回る際に、不完全真空下での容器における流体濃度が自動流体添加を必要とする段階まで低下していると、インク容器中のフロートスイッチが判断した場合、制御装置は供給弁を作動させ、補充液またはインクを供給させる。
【0093】
表5は、26日間におよぶ、インクCの単一試料を用いる稼働に関する、インクC容器の条件を記録する。一般に、インプリンター印刷系を、就業日当り2回転換する間に稼働させた。代表的な稼働の実施例において、噴出モジュールの寿命を試験するために、プリントヘッドは印刷可能な噴射モードに配置され、および、非印刷の「捕捉液滴」はインクガター内へ偏向され、インクは、再利用するためにインク容器へ、真空条件下にて回収された。輪転印刷機は、45fpmの範囲で稼働され、全幅の両面印刷は診断検査ターゲット、色調スケール、連続色調画像、代表的な顧客画像などから構成される。印刷試験のために、プレスが1000fpmまで加圧される場合がある。表5に示されるように、インク容器は、日々の測定において、インクの安定性を明らかにできる実用的な日程の頻度で抽出される。前述のように、インク分光光度分析は、測定された吸光度から着色剤濃度を決定するために行われ、抵抗率およびpHは常套の実験室的分析技法を用いて測定された。26日間の試験期間の終わりにおいて、異なるインクサンプルの新たな55ガロンドラムは、インクCの即時試験サンプルと置き換えた。インク特性に関する単純な統計値が、表5に要約され、およびインクCの濃度は、103%濃度にて僅かなバイアスを示して維持され、高い正確性を備えて維持されることが判る。なぜならば、インク濃度の1標準偏差は、僅か1.3%だからである。インク抵抗率も同様に正確に維持され、サンプルの標準偏差は2.2オーム-cm、または1%である。インクpHも、非常に安定しており、それは8.73にて維持され、0.02単位の標準偏差を有する。
【0094】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のものを含有する、連続インクジェット印刷用の水性インクジェット用インク組成物:
分散顔料粒子、
有機アミンの酸性塩、および
付加的な遊離有機アミン、
ただし、該有機アミンの酸性塩と該付加的な遊離有機アミンは、緩衝化したpHが8よりも大きくなり、25℃での抵抗率が500オーム-cm未満となうような濃度と相対的比率で存在し、該有機アミンの酸性塩を形成するのに使用される酸の当量に対する有機アミンの当量の比は、1.1:1.0よりも高い。
【請求項2】
有機アミンの酸性塩が少なくとも7.5のpKaを有する、請求項1に記載のインクジェット用インク組成物。
【請求項3】
有機アミンの酸性塩が、8.5〜9.0のpKaを有する、請求項1に記載のインクジェット用インク組成物。
【請求項4】
緩衝化したpHが8〜10の間である、請求項1に記載のインクジェット用インク組成物。
【請求項5】
緩衝化したpHが8.5〜9.0の間である、請求項1に記載のインクジェット用インク組成物。
【請求項6】
有機アミンの酸性塩および有機アミンが1種以上のアルカノールアミンを含有する、請求項1に記載のインクジェット用インク組成物。
【請求項7】
有機アミンの酸性塩を形成するのに使用される酸が6.5未満のpKaを有し、該酸のpKaが、形成された有機アミンの酸性塩のpKaよりも少なくとも2単位低い、請求項1に記載のインクジェット用インク組成物。
【請求項8】
有機アミン塩を形成するのに使用される酸がカルボン酸基を含有する、請求項1に記載のインクジェット用インク組成物。
【請求項9】
顔料がカーボンブラックを含有する請求項1に記載のインクジェット用インク組成物。
【請求項10】
顔料が、シアン、マゼンタ、またはイエロー着色顔料を含有する請求項1に記載のインクジェット用インク組成物。
【請求項11】
顔料がポリマー分散剤で分散される請求項1に記載のインクジェット用インク組成物。
【請求項12】
有機アミンの酸性塩を形成するのに使用される酸の当量に対する、有機アミンの当量の比が1.3:1.0〜3.0:1.0である、請求項1に記載のインクジェット用インク組成物。
【請求項13】
水溶性のアニオン染料を更に含有する請求項1に記載のインクジェット用インク組成物。
【請求項14】
抵抗率が300オーム-cm未満である請求項1に記載のインクジェット用インク組成物。
【請求項15】
抵抗率が200〜300オーム-cmの範囲である請求項1に記載のインクジェット用インク組成物。
【請求項16】
有機アミンの酸性塩と有機アミンが1種以上の第三級アルカノールアミンを含有する請求項1に記載のインクジェット用インク組成物。
【請求項17】
下記の工程を含む、連続インクジェットプリンターにおいてインクを補充するための方法;
連続インクジェットプリンターの主たるインク供給部から得られるインクまたは該供給部中のインクの抵抗率を計測すること、および
インクの測定された抵抗率の関数として、補充キャリア流体供給部からのキャリア流体および追加インク供給部からのインクで、インクジェットプリンターの主たるインク供給部中のインクを補充すること、
ただし、主たるインク供給部と追加インク供給部中のインクは、請求項1に記載のインクを含有する。
【請求項18】
下記の工程を含む、連続インクジェット印刷方法:
A)連続インクジェットプリンターの主たる流体供給部へ、有機アミンの酸性塩と付加的な遊離有機アミンとを含有する水性流体組成物を供給すること;
ただし、該有機アミンの酸性塩と該付加的な遊離有機アミンは、緩衝化したpHが8よりも大きくなり、25℃での抵抗率が500オーム-cm未満となうような濃度と相対的比率で存在し、該有機アミンの酸性塩を形成するのに使用される酸の当量に対する有機アミンの当量の比が、1.1:1.0よりも高く、
B)液滴形成機構から流体組成物の液滴の連続流を噴出すること、および
C)制御機構から受信された電気信号に応じて、基材をマーキングする印刷流体液滴と、
回収され、主たる供給部へ戻され、および主たる流体供給部中の流体組成物の抵抗率の関数として補充される非印刷流体液滴から選択すること。
【請求項19】
水性流体組成物が、分散顔料粒子を更に含有するインクジェット用インク組成物である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
水性流体組成物が、基材の未印刷部分または着色インク印刷部の表面に保護オーバーコートを付与するのに適する有機ポリマー溶液を更に含有する、請求項18に記載の方法。

【公表番号】特表2012−528229(P2012−528229A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513035(P2012−513035)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【国際出願番号】PCT/US2010/001395
【国際公開番号】WO2010/138156
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】