説明

連続作動モード設定機構および、この連続作動モード設定機構を備えたエアゾール式製品

【課題】連続作動モード(ガス抜きモード,内容物連続噴射モード)設定機能を持つカバー体のデザイン上の制約をなくし、また、連続作動モードの設定操作における簡単化,確実化を図ることを目的とする。
【解決手段】外部スリット6eに挟まっている誤操作防止用の連結片5gの薄肉部分5hを切り取り、容器本体1に対してカバー体6を回動する。操作ボタン4は、内側スリット6に案内されたリブ4dによりカバー体6と一体になって回動するので、その凸状部4cが螺旋状カム面5e,5e’に倣って(操作ボタン4は)押し下げられる。そして、凸状部4cが螺旋状カム面に続く水平状カム面5fまで移動して連続作動モードとなる。連続作動モードを解除させるにはカバー体6を逆方向に回動させればよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール式製品に用いられる連続作動モード設定機構などに関し、特にエアゾール式製品をその作動モードに設定する例えば上下動タイプの操作ボタンを、(操作ボタン保護用の)容器側に取り付けられたカバー体に対する回動操作により、その作動モード対応位置に簡単,確実に継続して保持できる、すなわちエアゾール式製品をガス抜き状態または内容物連続噴射状態の連続作動モードに設定できるようにしたものである。
【0002】
本明細書では、
・「作動モード」の語を、操作ボタンに対する利用者の噴射操作といわば1対1の対応関係にたつ内容物噴射状態(エアゾール容器のバルブが開いて容器内部と外部空間とが連通した状態)を示す意で用い、
・「連続作動モード」の語を、利用者の噴射操作終了後もその操作ボタンがそれまでの操作位置に自己保持されたままとなって、ガス,内容物などが続けて噴射される連続噴射状態を示す意で用い、
・「静止モード」の語を、エアゾール容器のバルブが閉じて容器内部と外部空間とが連通していない状態を示す意で用い、
・「カバー体」の語を、エアゾール容器(マウンティングキャップなど)に取り付けられて、エアゾール式製品の通常の使用状態(作動モードなど)においても取り外されることのないタイプのカバー部材を示す意で用いる。
【0003】
また、通常の作動モードにおける容器内容物の噴射孔の側を「前」とし、それとは容器平面図の中心を挟んで反対の側を「後」とする。すなわち図1の左側方向が「前」で、右側方向が「後」となる。
【0004】
なお、エアゾール式製品の連続作動モードが設定された場合、容器内容物をまだ使い切っていないときは内容物連続噴射状態となり、容器内容物を略使い切っているときはガス抜き状態となる。
【0005】
内容物連続噴射状態とガス抜き状態とはもっぱら用途上の違いにすぎず、エアゾール式製品の動作機構としては、これら各状態ともにアクチュエータ(操作部材,ステムなど)がその作動位置に継続的に保持されているものである。すなわち当該状態のそれぞれにおけるバルブ機構などの動作メカニズムの違いはない。
【0006】
一般にガス抜きモードの設定は、使用済みエアゾール容器を廃棄するときに初めて必要となり、まだ容器に内容物が存在している通常の使用段階では不要なものである。
【0007】
そのため、ガス抜きモード保持機構は、エアゾール式製品の通常の使用段階では内容物噴射動作の障害とならず、また利用者にとっていわば目障りにもならず、ガス抜きモードの設定操作自体は利用者が簡単に行えることが望ましい。
【0008】
また、比較的長時間にわたってエアゾール式製品を連続噴射モードに設定する場合に、利用者がそのための操作自体を継続的に行わなくても済むことが望ましい。
【0009】
連続作動モード位置への操作部材の設定はより正確であることが必要とされ、本発明はこのような要請にも応えるものである。
【背景技術】
【0010】
従来、エアゾール容器のカバー体および、これから外れないように設けられた噴射ボタン(操作ボタン)の両者を静止モード・作動モードでの使用時とは上下逆にした状態で、カバー体のもともとの上端側を容器本体側(マウンティングキャップ)に嵌合させることにより、噴射ボタンの天面側でステムを作動モード対応位置まで押下げてエアゾール式製品のガス抜きモードを設定する噴射ボタン装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0011】
この噴射ボタン装置のカバー体は、その正立状態のみなならず倒立状態でも容器本体のマウンティングキャップに嵌合する。すなわち正立状態での嵌合により通常の静止・作動モードが設定され、倒立状態での嵌合によりガス抜きモードが設定される。
【0012】
したがってカバー体は、下端側および上端側のそれぞれにマウンティングキャップ対応形状の嵌合部分を備えている。
【特許文献1】特開2002−293388号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
以上のエアゾール容器の噴射ボタン装置の場合、利用者の操作対象域であるカバー体上面側にも、カバー体下端側のマウンティングキャップ嵌合用の環状突状部と同様の形状部分を作成することが前提になっている。
【0014】
そのため、カバー体(上面側)のデザイン設計上の自由度がきわめて小さくなり、またエアゾール容器に組み込む前のカバー体保管作業の際などに作業者がその上下関係を瞬時に判断しにくいなどの問題点があった。
【0015】
また、カバー体を容器本体側からいったん外し、その上下を逆にした倒立状態でマウンティングキャップに再嵌合させると必然的にガス抜きモードとなってしまい、ガス抜きの準備状態(=倒立カバー体はマウンティングキャップに嵌合し、かつ、ステムはまだ噴射ボタンで作動モード対応位置まで移動してない状態)を設定できず、ガス抜き操作の選択性,利便性にかけるという問題点があった。
【0016】
そこで本発明では、回動可能な形で容器側に取り付けられたカバー体を容器側とのいわゆるバージン部材によって回動できない状態に保持しておき、ガス抜きなどの連続作動モードを設定する場合、先ずこの部材を例えば切り取ってからの(通常の正立状態の)カバー体と容器側との間の回動操作に基づいて操作ボタンが作動モード対応位置に保持されるようにしている。
【0017】
これにより、連続作動モード設定機能を有するカバー体のデザイン上の制約をなくすとともに、連続作動モードの設定操作における簡単化,確実化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、以上の課題を次のようにして解決する。
(1)ステムと一体化してエアゾール式製品を通常の作動モードに設定するための操作ボタン(例えば後述の操作ボタン4,4(1))を、少なくとも当該カバー体と容器側との間の回動操作をともなうことにより、作動モード対応位置に移動させて保持するようにした連続作動モード設定機構において、
前記操作ボタンに対する作動モード移行用の空間域(例えば後述の開口域5c)および連続作動モードの保持部分(例えば後述の水平状カム面5f,係止用底面5k,係止用段部5m)を備えた基部(例えば後述の筒状基部5,5(1),5(2))を、回動しない態様で前記容器側に取り付け、
前記カバー体は、静止モードと作動モードとの間での前記操作ボタンの移動を許容して、前記回動操作の際には前記操作ボタンを一体化させる第1のガイド要素(例えば後述の内側スリット6g)を備え、
前記操作ボタンは、前記第1のガイド要素に対応した第2のガイド要素(例えば後述の位置合わせ・回転用のリブ4d)および、作動モード設定操作に際しては前記保持部分から独立した形で移動し、前記回動操作に基づく連続作動モード設定後には当該保持部分に保持される被保持部分(例えば後述の凸状部4c,突状部4e)を備え、
前記基部および前記カバー体の一方に前記回動操作を阻止するための第1の規制要素(例えば後述の連結片5g)を分離可能な形で設けるとともに、これらの他方に当該規制要素を受ける第2の規制要素(例えば後述の外側スリット6e)を設け、
前記基部および前記カバー体の一方から前記第1の規制要素を分離してこれら相互間の回動操作阻止機能をなくすことにより、前記回動操作ができるようにする。
(2)上記(1)において、
前記基部は、前記容器側のマウンティングキャップ(例えば後述のマウンティングキャップ2)に嵌合する筒状部であり、
前記カバー体は、その操作ボタン保護用の内側筒状部(例えば後述の内側筒状部6b)に前記第1のガイド要素としてのスリット状部分を有し、
前記操作ボタンは、その周面部分に前記第2のガイド要素としての片部および前記被保持部分としての突状部を有したものにする。
(3)上記(1),(2)において、
前記基部は、前記保持部分に続く案内部分(例えば後述の螺旋状カム面5e,5e’)を有し、
前記案内部分および前記被保持部分は、前記回動操作の際にカム作用を呈して当該操作ボタンを作動モード対応位置に移動させるものにする。
(4)上記(1),(2)において、
前記基部の保持部分および前記操作ボタンの被保持部分は、それぞれ係止面(例えば後述の係止用底面5k,係止用上面4f)であり、
前記係止面のそれぞれに続く斜面(例えば後述の基部テーパ面5j,操作ボタンテーパ面4g)を、前記回動操作の後で前記操作ボタンを押下げることにより被保持部分側斜面が保持部分側斜面を乗り越える態様で、形成したものにする。
(5)上記(1),(2)において、
前記基部の保持部分および前記操作ボタンの被保持部分は、それぞれ静止モード位置の当該操作ボタンを押下げた後で前記回動操作を行なうことにより当該被保持部分が当該保持部分に係止されるための、係止面(例えば後述の凸状部4c上面部分,係止用段部5m)を有したものにする。
【0019】
以上の構成からなる連続作動モード設定機構や、この連続作動モード設定機構を備えたエアゾール式製品を本発明の対象としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、このように回動可能な形で容器側に取り付けられたカバー体を容器側とのいわゆるバージン部材によって回動不能状態に保持しておき、ガス抜きなどの連続作動モードを設定する場合、先ずこの部材を例えば切り取ってからの(通常の正立状態の)カバー体と容器側との間の回動操作に基づいて操作ボタンが作動モード対応位置に保持されるようにしているので、連続作動モード設定機能を有するカバー体のデザイン上の制約をなくすとともに、連続作動モードの設定操作における簡単化,確実化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1乃至図5を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0022】
これまでも繰り返し述べたように、本発明は、ガス抜きや内容物連続噴射といった連続作動モードの設定機構に関するものである。
【0023】
この連続作動モード設定機構がガス抜きまたは内容物連続噴射の何れの状態で使用されているかということは、いわば利用者の意識の違いにすぎず、当該連続作動モード設定機構の動作メカニズム自体はいずれの使用状態でも同じである。
【0024】
以下の説明では単なる説明の便宜上、必要に応じて、噴射用ガスを単に「ガス」と略記し、ガス抜きモードに設定する場合を前提とする。
【0025】
なお、以下の「(噴射用)ガス」,「ガス抜き」の用語をそれぞれ「内容物」,「内容物連続噴射」に置き換えても個々の説明内容の妥当性が担保されるのは勿論である。
【0026】
図1〜図3は、(回動操作阻止用の連結片を取り外して回動可能な)カバー体を回動操作することのみによって、ガス抜きモードに移行するガス抜きモード設定機構を示す説明図である。
【0027】
なお、図1は通常の静止モード(連結片の取外し前)を示し、図2は回動操作後のガス抜きモードを示し、図3は図1におけるカバー体・操作ボタンと(容器側のマウンティングキャップに強く嵌合して回動しない態様の)筒状基部との関係を示している。
【0028】
図4は、(回動操作阻止用の連結片を取り外して回動可能な)カバー体を回動操作した後で操作ボタンを押下げることによって、ガス抜きモードに移行するガス抜きモード設定機構における、連結片取外し前のカバー体・操作ボタンと筒状基部との関係を示す説明図である。
【0029】
図5は、操作ボタンを押下げた状態で(回動操作阻止用の連結片を取り外して回動可能な)カバー体を回動操作することによって、ガス抜きモードに移行するガス抜きモード設定機構における、連結片取外し前のカバー体・操作ボタンと筒状基部との関係を示す説明図である。
【0030】
なお、以下のアルファベット付き参照番号の構成要素(例えば通路部分4a)は原則として、当該参照番号の数字部分の構成要素(例えば操作ボタン4)の一部であることを示している。
【0031】
図1〜図3において、
1は後述の内容物および噴射用ガスを収納したエアゾール式製品の容器本体,
2は容器本体1の開口端部側に取り付けられたマウンティングキャップ,
3はマウンティングキャップ2に取り付けられて周知のバルブ機構(図示省略)を収容するハウジング,
4はバルブ機構の構成要素である周知のステム(図示省略)に取り付けられて利用者の押圧操作に基づき上下動するタイプの操作ボタン,
4aは内容物や噴射用ガスの通路部分,
4bは当該通路部分に続く噴射孔,
4cは当該操作ボタンの外周面下端部分に形成されたガス抜きモード設定保持用の一対の凸状部,
4dは当該操作ボタンの外周面の前後の部分にそれぞれ形成されて後述のカバー体6の回動操作(=ガス抜きモードの設定操作)のときにこれと連動する一対の位置合わせ・回転用のリブ,
5はマウンティングキャップ2の内側環状凹部に強く嵌合して当該マウンティングキャップとの間で回動しないように設定された筒状基部,
5aは当該筒状基部の外周面に形成されてマウンティングキャップ2の内側凹状部と嵌合する突状環部,
5bは天面側の環状鍔部,
5cは操作ボタン4を収容して上下動させるための開口域,
5dは当該開口域に操作ボタン4を上方からセットする際にその凸状部4cを案内して通過させる一対の凹状案内部(内周面の一部),
5e,5e’は当該凹状案内部の下端側から内周面周方向の(後述の水平状カム面も含めて略90度にわたる)範囲にそれぞれ下り傾斜で形成された一対の螺旋状カム面,
5fは当該螺旋状カム面の下端側に続く一対の水平状カム面,
5gは環状鍔部5bから外方に延びる形で設けられて後述のカバー体6の回動操作を阻止するためのいわばバージンシール作用を呈する連結片,
5hは当該連結片と環状鍔部5bとの間の薄肉部分,
6はマウンティングキャップ2の外端環状部分と環状鍔部5bの下面端部分との間に回動可能な形で嵌合するカバー体,
6aはガス抜きモード設定用の回動操作の際などに利用者が把持する外側筒状部,
6bは操作ボタン4を取り囲んで(当該操作ボタンの横方向断面形状が例えば楕円状の場合には)それと当該カバー体との位置関係を特定するための内側筒状部,
6cは外側筒状部6aの内周面に形成された環状の嵌合用突状部,
6dは外側筒状部6aの噴射孔4bとの対向部分に形成された噴射用外側開口部,
6eは外側筒状部6aの下端側に縦方向に形成され、筒状基部5の連結片5gをその両側からいわば保持・拘束して(容器側の筒状基部5,マウンティングキャップ2に対する)当該カバー体の回動を阻止するための外側スリット,
6fは内側筒状部6bの噴射孔4bとの対向部分に形成された噴射用内側開口部,
6gは内側筒状部6bの下端側に縦方向に形成され、操作ボタン4のリブ4dを収容して静止モードと作動モードとの間における操作ボタン4の上下動を許容し、当該カバー体の回動操作の際には操作ボタン4を同じ方向に移動させるための一対の内側スリット,
Aはガス抜きモードを設定する際の回動操作の方向,
Bはガス抜きモード設定操作にともなって操作ボタンが回動する方向,
をそれぞれ示している。
【0032】
図4では操作ボタンおよび筒状基部に関して以下の新たな参照番号を用い、それ以外の構成要素については図1〜図3の参照番号をそのまま用いる。
【0033】
すなわち図4において、
4(1)はガス抜きモード設定保持用の凸状部4cの部分が図1〜図3の操作ボタン4とは異なっている操作ボタン,
4eは当該操作ボタンの外周面下端部分に形成されたガス抜きモード設定保持用の一対の突状部,
4fは突状部4dの略水平状の係止用上面,
4gは係止用上面4fの外端部分から下り傾斜で内方に延びる操作ボタンテーパ面,
5(1)は螺旋状カム面5e,5e’の部分が図1〜図3の筒状基部5とは異なっている筒状基部,
5jは凹状案内部5dの底面と同じ厚み部分から内方への下り傾斜で周方向の略90度にわたって形成された一対の基部テーパ面,
5kは基部テーパ面5jの下端部分から外方に続く略水平状の一対の係止用底面,
をそれぞれ示している。
【0034】
図5では筒状基部に関して以下の新たな参照番号を用い、それ以外の構成要素については図1〜図3の参照番号をそのまま用いる。
【0035】
すなわち図5において、
5(2)は螺旋状カム面5e,5e’の部分が図1〜図3の筒状基部5とは異なっている筒状基部,
5mは凹状案内部5dから水平状カム面5fと略上同じ高さで周方向の略90度にわたって形成された一対の係止用段部,
をそれぞれ示している。
【0036】
ここで、ハウジング3,操作ボタン4,4(1),筒状基部5,5(1),5(2)およびカバー体6などはポリプロピレン,ポリエチレン,ポリアセタール,ナイロン,ポリブチレンテレフタレートなどからなるプラスチック製のものである。
【0037】
図1〜図5のガス抜きモード設定機構(その1〜3)のそれぞれに共通する基本的特徴は、通常の使用状態でも容器側に取り付けられたままであるカバー体6と容器本体1との間の相対的な回動操作を利用して、操作ボタン4,4(1)を作動モード対応位置に移動させて保持することである。
【0038】
以下の記載では、単なる説明の便宜上、容器本体1に対してカバー体6を回動させる形の回動操作を前提とする。なお、回動操作に先立って筒状基部5,5(1),5(2)の連結片5gを分離しなければならないことは勿論である。
【0039】
図1〜図3のガス抜きモード設定機構(その1)の場合、静止モードのカバー体6を図示A方向に回動操作するだけで操作ボタン4が作動モード対応位置に移動して保持される。すなわちエアゾール式製品はガス抜きモードに設定保持される。
【0040】
また、図4のガス抜きモード設定機構(その2)の場合は例えば静止モードのカバー体6を時計方向(=A方向)に回動操作してから操作ボタン4(1)を下方に押し込むことにより、図5のガス抜きモード設定機構(その3)の場合は静止モードの操作ボタン4を下方に押し込んだ状態でカバー体6を時計方向(=A方向)に回動操作することにより、それぞれ操作ボタン4,4(1)が作動モード対応位置に移動して保持される。すなわちエアゾール式製品はガス抜きモードに設定保持される。
【0041】
そして、いずれのガス抜きモード設定機構においてもそのガス抜きモードを解除する場合には、カバー体6を設定時とは逆方向に回動操作して元の位置まで戻せばよい。
【0042】
なお、マウンティングキャップ2に取り付けた筒状基部5,5(1),5(2)に対して操作ボタン4,4(1)およびカバー体6をセットするには、
(11)先ず、操作ボタン4,4(1)を、その一対の突状部4c,4eと筒状基部5,5(1),5(2)の一対の凹状案内部5dとをそれぞれ一致させながら開口域5cに入れて、当該操作ボタンの通路部分の上流側端部を周知のステム(図示省略)の出力端部分に結合させ、
(12)続いて、カバー体6を、その外側スリット6eと筒状基部5,5(1),5(2)の連結片5gとを一致させ、またその一対の内側スリット6gと操作ボタン4,4(1)の一対のリブ4dとをそれぞれ一致させながら当該筒状基部に押し込んで、当該カバー体の嵌合用突状部6cを図1のように容器側に回動可能な状態で嵌合させればよい。
【0043】
これにより操作ボタン4,4(1)は静止モード(図1参照)に設定される。このとき、カバー体6の内側筒状部6bの下端部分は筒状基部5,5(1),5(2)の環状鍔部5bに略当接している。
【0044】
また、各操作ボタンは周知のバルブ機構のコイルスプリング(図示省略)の作用により図面上方向の弾性力を受けて(当該バルブ機構で決まる)図示の位置で停止している。
【0045】
図1はエアゾール式製品の静止モードを示している。ここで操作ボタン4を押し下げると、上記ステムが上記コイルスプリングの上方向への付勢力に抗しながら下動し、弁作用部(図示省略)が開状態となって作動モードに移行する。なお、このような静止モードから作動モードへの移行メカニズム自体は周知である。
【0046】
その結果、容器本体の内容物は、上記ステム−通路部分4a−噴射孔4bの経路により外部空間に直接噴射される。利用者が押下げ操作を止めると、操作ボタン4および上記ステムは上記コイルスプリングの付勢力により静止モード位置へと復帰する。
【0047】
操作ボタン4が静止モードと作動モードとの間で上下動するとき、その一対のリブ4dはそれぞれカバー体6の内側スリット6gの中を移動する。
【0048】
以上の操作ボタン4の作動モードへの移行動作および静止モードへの復帰動作が図4および図5のガス抜きモード設定機構の場合にもあてはまることは勿論である。
【0049】
図1〜図3のガス抜きモード設定機構の場合、静止モードにおける操作ボタン4の凸状部4cは、その天面が筒状基部5の螺旋状カム面5e,5e’の上端側の始まり部分よりも、少なくとも高くない状態になっている。
【0050】
そのため、利用者が連結片5gを筒状基部5から取り外して(例えば当該連結片の外側への露出部分を引っ張るなどして薄肉部分5hを引き裂いて)カバー体6と容器側との拘束状態を解除した後で、当該カバー体6を図示のA方向に回動して操作ボタン4を同じ方向に連動させると、操作ボタン4は、その図1で示す凸状部4cが図3の螺旋状カム面5eに倣いながら下方向へ移動する。
【0051】
すなわち操作ボタン4は、回動方向に対するリブ4dと内側スリット6gとのいわばロック作用によりカバー体6とともに回動しながら作動モード対応位置まで下動して、その上記凸状部4cが筒状基部5の(上記螺旋状カム面5eに続く)水平状カム面5fに安定的に保持された図2のガス抜きモードとなる。このときリブ4dは筒状基部5の嵌合鍔部5bの上面近くまで移動している。
【0052】
ガス抜きモードでは、操作ボタン4が通常の作動モードと同じように、上記ステムを押し下げて上記弁作用部を開状態にするので容器本体1の残留ガスなどが上記経路により噴射孔4bから外部空間に放出される。
【0053】
図2のガス抜きモードを解除するには、カバー体6をA方向とは逆の方向に少しだけ回動して、上記凸状部4cを、筒状基部5の水平状カム面5fから上記螺旋状カム面5eに移行させればよい。
【0054】
操作ボタン4は、もともと上述のようにコイルスプリングから上方向への弾性力を受けているので、その上記凸状部4cが上記螺旋状カム面5eと当接したフリー状態にいったん遷移すると、(当該凸状部が)当該螺旋状カム面に沿いながら上方向に移動して略図1の静止モードまで自動復帰する。なお、凸状部4cが凹状案内部5dの位置まで自動復帰しない場合にはカバー体6をA方向とは逆の方向に回動すればよい。
【0055】
図4のガス抜きモード設定機構の場合、静止モードにおける操作ボタン4(1)の凸状部4eと筒状基部5(1)との位置関係が、上述のように連結片5gを当該筒状基部から取り外した後でカバー体6を時計方向(=図2のA方向)に回動したときに、当該凸状部の操作ボタンテーパ面4gがそれまでの凹状案内部5dから基部テーパ面5jとの対向状態にスムーズに移行できる形になっている。
【0056】
そのため、連結片5gを筒状基部5(1)から取り外した状態で、
(21)先ずカバー体6(およびこれと連動する操作ボタン4)を任意の角度(図示の場合は略90度以下の範囲)だけ時計方向に回動して操作ボタンテーパ面4gを基部テーパ面5jに対向させ、
(22)その後、操作ボタン4(1)を下方に押圧して操作ボタンテーパ面4gが基部テーパ面5jを乗り越えることにより、
操作ボタン4(1)は、その係止用上面4fが筒状基部5(1)の係止用底面5kに当接してガス抜きモードに保持される。この保持状態は上記コイルスプリングの上方向への付勢力によって確実に担保される。
【0057】
なお、操作ボタンテーパ面4gが基部テーパ面5jを乗り越えるのはそれぞれ自らの弾性に抗するかたちで変形できるからである。乗り越えた後は自弾性力によって元の形状に復帰する。
【0058】
図5のガス抜きモード設定機構の場合は連結片5gを筒状基部5(2)から取り外した状態で、
(31)先ず操作ボタン4を押し下げて凸状部4cが係止用段部5mよりも下方に位置するようにし、
(32)この押下げ状態のまま、カバー体6(およびこれと連動する操作ボタン4)を時計方向に回動することにより、
操作ボタン4は、その凸状部4cの上面が筒状基部5(2)の係止用段部5mに当接してガス抜きモードに保持される。この保持状態は上記コイルスプリングの上方向への付勢力によって確実に担保される。
【0059】
図4および図5のガス抜きモード設定機構においてガス抜きモードを解除する場合は、カバー体6(およびこれと連動する操作ボタン4(1),4)を先の回動操作時とは逆の反時計方向に回して、それぞれの突状部4e(係止用上面4f)および凸状部4cと筒状基部5(1),5(2)それぞれの係止用底面5kおよび係止用段部5mとの係合状態を消失させればよい。
【0060】
すなわち操作ボタン4(1),4の突状部4e,凸状部4cをそれぞれ筒状基部5(1),5(2)の凹状案内部5dの部分まで戻して係止用底面5k,係止用段部5mとの係合状態を解除することにより、上方向への移動が自由になった当該操作ボタンは上記コイルスプリングの付勢力により静止モード位置へ自動復帰する。
【0061】
本発明が、図1〜図5に係るガス抜き機構(連続作動モード設定機構)に限定されないことは勿論である。
【0062】
本発明の基本的特徴は、容器側との連結を解除した上でカバー体(およびこれと連動する操作ボタン)を容器側との間で相対的な回動操作を行なうことにより、操作ボタンを作動モード対応位置に保持する、すなわちガス抜きモードなどの連続作動モードを設定することである。
【0063】
このように本発明は、カバー体および容器側の間の回動操作のときに当該カバー体と一対化するタイプの操作ボタンを対象としており、図示の上下動タイプの他、傾動タイプの操作ボタンなどにも適用可能である。
【0064】
また、
(41)「一対の」と記載した上述の各構成要素として1個を含む任意の個数だけ設ける、
(42)凹形状と凸(突)形状との間の相対的作用を呈している上述の各構成要素の凹凸の形状関係を逆にする、
(43)操作ボタン4に螺旋状カム面および水平状カム面を設けて、筒状基部5に当該カム面に対応した倣い部を設ける、
(44)横方向の断面形状が「円」ではない例えば楕円状の操作ボタンを用いる場合に位置合わせ・回転用のリブ4dおよび内側スリット6gを設けないで、操作ボタンとそれを取り囲む筒状部とのそれぞれに位置合わせ・連動機能を持たせる、
(45)操作ボタン4,4(1)および筒状基部5,5(1),5(2)を切断可能な連結部を介した一体成形部材として、当該筒状基部をマウンティングキャップ2に嵌合させた上で当該操作ボタンを押下げることにより、当該連結部が切断されて、当該操作ボタンが上記ステムに取り付けられた状態にする、
(46)あらかじめカバー体6に操作ボタン4,4(1)と筒状基部5,5(1),5(2)を組み込んだ形のセット状態(筒状基部の環状鍔部5bがカバー体の嵌合用突状部6cに保持され、操作ボタンのリブ4dが筒状基部の上面に当接した状態)にして、この全体をマウンティングキャップ2の方に押し込むことにより当該筒状基部を当該マウンティングキャップの内側凹状部に勘合させ、さらには当該操作ボタンを押圧して上記ステムに取り付ける、
ようにしてもよい。
【0065】
本発明が適用されるエアゾール式製品としては、洗浄剤,清掃剤,制汗剤,冷却剤,筋肉消炎剤,ヘアスタイリング剤,ヘアトリートメント剤,染毛剤,育毛剤,化粧品,シェービングフォーム,食品,液滴状のもの(ビタミンなど),医薬品,医薬部外品,塗料,園芸用剤,忌避剤(殺虫剤),クリーナー,消臭剤,洗濯のり,ウレタンフォーム,消火器,接着剤,潤滑剤などの各種用途のものがある。
【0066】
容器本体に収納する内容物は、例えば、粉状物,油成分,アルコール類,界面活性剤,高分子化合物,各用途に応じた有効成分などである。
【0067】
粉状物としては、金属塩類粉末,無機物粉末や樹脂粉末などを用いる。例えば、タルク,カオリン,アルミニウムヒドロキシクロライド(アルミ塩),アルギン酸カルシウム,金粉,銀粉,雲母,炭酸塩,硫酸バリウム,セルロース,これらの混合物などを用いる。
【0068】
油成分としては、シリコーン油,パーム油,ユーカリ油,ツバキ油,オリーブ油,ホホバ油,パラフィン油,ミリスチン酸,パルミチン酸,ステアリン酸,リノール酸,リノレン酸などを用いる。
【0069】
アルコール類としては、エタノールなどの1価の低級アルコール,ラウリルアルコールなどの1価の高級アルコール,エチレングリコールなどの多価アルコールなどを用いる。
【0070】
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどの非イオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどの両性界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウムなどのカチオン性界面活性剤などを用いる。
【0071】
高分子化合物としては、メチルセルロース,ゼラチン,デンプン,カゼインなどを用いる。
【0072】
各用途に応じた有効成分としては、サリチル酸メチル,インドメタシンなどの消炎鎮痛剤、安息香酸ナトリウム,クレゾールなどの除菌剤、ヒレスロイド,ジエチルトルアミドなどの害虫忌避剤、酸化亜鉛などの制汗剤、カンフル,メントールなどの清涼剤、エフェドリン,アドレナリンなどの抗喘息薬、スクラロース,アスパルテームなどの甘味料、エポキシ樹脂,ウレタンなどの接着剤や塗料、パラフェニレンジアミン,アミノフェノールなどの染料,リン酸二水素アンモニウム,炭酸水素ナトリウム・カリウムなどの消火剤などを用いる。
【0073】
さらに、上記内容物以外の、懸濁剤,紫外線吸収剤,乳化剤,保湿剤,酸化防止剤、金属イオン封鎖剤なども用いることができる。
【0074】
エアゾール式製品における内容物噴射用ガスとしては、炭酸ガス,窒素ガス,圧縮空気,酸素ガス,希ガス,これらの混合ガスなどの圧縮ガスや、液化石油ガス,ジメチルエーテル,フロロカーボンなどの液化ガスを用いる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】通常の静止モード(連結片の取外し前)を示す説明図である。
【図2】図1に対応した回動操作のみで設定されるガス抜きモードを示す説明図である。
【図3】図1におけるカバー体・操作ボタンと(容器側のマウンティングキャップに強く嵌合して回動しない態様の)筒状基部との関係を示す説明図である。
【図4】(回動操作阻止用の連結片を取り外して回動可能な)カバー体を回動操作した後で操作ボタンを押下げることによって、ガス抜きモードに移行するガス抜きモード設定機構における、連結片取外し前のカバー体・操作ボタンと筒状基部との関係を示す説明図である。
【図5】操作ボタンを押下げた状態で(回動操作阻止用の連結片を取り外して回動可能な)カバー体を回動操作することによって、ガス抜きモードに移行するガス抜きモード設定機構における、連結片取外し前のカバー体・操作ボタンと筒状基部との関係を示す説明図である。
【符号の説明】
【0076】
1:エアゾール式製品の容器本体
2:マウンティングキャップ
3:ハウジング
4:上下動タイプの操作ボタン
4a:通路部分
4b:噴射孔
4c:ガス抜きモード設定保持用の一対の凸状部
4d:一対の位置合わせ・回転用のリブ
5:筒状基部
5a:突状環部
5b:天面側の環状鍔部
5c:開口域
5d:一対の凹状案内部(内周面の一部)
5e,5e’:一対の螺旋状カム面
5f:一対の水平状カム面
5g:バージンシール作用を呈する連結片
5h:薄肉部分
6:カバー体
6a:外側筒状部
6b:内側筒状部
6c:環状の嵌合用突状部
6d:噴射用外側開口部
6e:外側スリット
6f:噴射用内側開口部
6g:一対の内側スリット
A:ガス抜きモードを設定する際の回動操作の方向
B:ガス抜きモード設定操作にともなって操作ボタンが回動する方向
【0077】
(図4のみで使用)
4(1):操作ボタン
4e:ガス抜きモード設定保持用の一対の突状部
4f:係止用上面
4g:操作ボタンテーパ面,
5(1):筒状基部,
5j:一対の基部テーパ面
5k:一対の係止用底面
【0078】
(図5のみで使用)
5(2):筒状基部,
5m:一対の係止用段部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステムと一体化してエアゾール式製品を通常の作動モードに設定するための操作ボタンを、少なくとも当該カバー体と容器側との間の回動操作をともなうことにより、作動モード対応位置に移動させて保持するようにした連続作動モード設定機構において、
前記操作ボタンに対する作動モード移行用の空間域および連続作動モードの保持部分を備えた基部を、回動しない態様で前記容器側に取り付け、
前記カバー体は、静止モードと作動モードとの間での前記操作ボタンの移動を許容して、前記回動操作の際には前記操作ボタンを一体化させる第1のガイド要素を備え、
前記操作ボタンは、前記第1のガイド要素に対応した第2のガイド要素および、作動モード設定操作に際しては前記保持部分から独立した形で移動し、前記回動操作に基づく連続作動モード設定後には当該保持部分に保持される被保持部分を備え、
前記基部および前記カバー体の一方に前記回動操作を阻止するための第1の規制要素を分離可能な形で設けるとともに、これらの他方に当該規制要素を受ける第2の規制要素を設け、
前記基部および前記カバー体の一方から前記第1の規制要素を分離してこれら相互間の回動操作阻止機能をなくすことにより、前記回動操作が可能となる、
ことを特徴とする連続作動モード設定機構。
【請求項2】
前記基部は、前記容器側のマウンティングキャップに嵌合する筒状部であり、
前記カバー体は、その操作ボタン保護用の内側筒状部に前記第1のガイド要素としてのスリット状部分を有し、
前記操作ボタンは、その周面部分に前記第2のガイド要素としての片部および前記被保持部分としての突状部を有している、
ことを特徴とする請求項1記載の連続作動モード設定機構。
【請求項3】
前記基部は、前記保持部分にいたる案内部分を有し、
前記案内部分および前記被保持部分は、前記回動操作の際にカム作用を呈して当該操作ボタンを作動モード対応位置に移動させるものである、
ことを特徴とする請求項1または2記載の連続作動モード設定機構。
【請求項4】
前記基部の保持部分および前記操作ボタンの被保持部分は、それぞれ係止面であり、
前記係止面のそれぞれに続く斜面を、前記回動操作の後で前記操作ボタンを押下げることにより被保持部分側斜面が保持部分側斜面を乗り越える態様で、形成した、
ことを特徴とする請求項1または2記載の連続作動モード設定機構。
【請求項5】
前記基部の保持部分および前記操作ボタンの被保持部分は、それぞれ静止モード位置の当該操作ボタンを押下げた後で前記回動操作を行なうことにより当該被保持部分が当該保持部分に係止されるための、係止面を有している、
ことを特徴とする請求項1または2記載の連続作動モード設定機構。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載の連続作動モード設定機構を備え、かつ、噴射用ガスおよび内容物を収容した、
ことを特徴とするエアゾール式製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−284122(P2007−284122A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−114966(P2006−114966)
【出願日】平成18年4月18日(2006.4.18)
【出願人】(000144463)株式会社三谷バルブ (142)
【Fターム(参考)】