説明

連続作動モード設定用治具およびエアゾール式製品

【課題】エアゾール容器の底部側に取り付けられたガス抜き用治具が不注意や悪戯などを原因に使用されることにより、エアゾール式製品が不用意にガス抜きモードに移行してしまうことを防止し、容器内容物の効率的利用を図る。
【解決手段】ガス抜き用治具は、エアゾール容器1の底部1bと脱着可能な外側部材4aと、これと分離可能に一体化している内側部材4cと、で構成されている。ガス抜き時には、まずガス抜き用治具をエアゾール容器1の底部1bから取り外し、その後外側部材4aから引き裂くなどして分離した内側部材4cをマウンティングキャップ2に係合させる。これにより内側部材4cの鞘状部4mがステム3を押下げたままとなり、連続作動モードになる。ステム3から放出された内容物は溝状部4nを通って外部空間に放出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール容器の底部に取り付けられる連続作動モード設定用治具などに関し、特にエアゾール式製品をその連続作動モード位置に簡単,確実に継続して保持できる、すなわちエアゾール式製品をガス抜き状態または内容物連続噴射状態の連続作動モードに設定できるようにしたものである。
【0002】
本明細書では、
・「作動モード」の語を、操作ボタンに対する利用者の噴射操作といわば1対1の対応関係にたつ内容物噴射状態(エアゾール容器のバルブが開いて容器内部と外部空間とが連通した状態)を示す意で用い、
・「連続作動モード」の語を、利用者の噴射操作終了後もその操作ボタンがそれまでの操作位置に自己保持されたままとなって、噴射用ガス,内容物などが続けて噴射される連続噴射状態を示す意で用い、
・「静止モード」の語を、エアゾール容器のバルブが閉じて容器内部と外部空間とが連通していない状態を示す意で用いる。また、噴射用ガスのことを必要に応じて単に「ガス」という。
【0003】
なお、エアゾール式製品の連続作動モードが設定された場合、容器内容物をまだ使い切っていないときは内容物連続噴射状態となり、容器内容物を略使い切っているときはガス抜き状態となる。
【0004】
内容物連続噴射状態とガス抜き状態とはもっぱら用途上の違いにすぎず、エアゾール式製品の動作機構としては、これら各状態ともにアクチュエータ(操作部材,ステムなど)がその作動位置に継続的に保持されているものである。すなわち当該状態のそれぞれにおけるバルブ機構などの動作メカニズムの違いはない。
【0005】
一般にガス抜きモードの設定は、使用済みエアゾール容器を廃棄するときに初めて必要となり、まだ容器に内容物が存在している通常の使用段階では不要なものである。
【0006】
そのため、ガス抜きモードや内容物連続噴射モードの連続作動モードを設定するための治具は、エアゾール式製品の通常の使用段階では内容物噴射動作の障害とならず、さらには利用者にとっていわば目障りにもならない態様のものが望ましい。
【0007】
また、連続作動モードの設定操作自体は本来の利用者が簡単に行えるようにし、その一方では不注意や子供のいたずらなどで連続作動モードに設定されてしまうのを少しでも防止できることが望ましい。
【0008】
また、比較的長時間にわたってエアゾール式製品を連続噴射モードに設定する場合に、利用者がそのための操作自体を継続的に行わなくても済むことが望ましい。
【0009】
本発明はこのような多くの要請に応えるものである。
【背景技術】
【0010】
エアゾール容器の底部に一体的に取り付けられ、使用時には、当該底部から外した状態で当該容器のマウンティングキャップなどに設定されることによりバルブ機構のステムを作動モード対応位置に保持するためのガス抜き用治具は、すでに提案されている(特許文献1参照)。
【0011】
このガス抜き用治具は、通常の製品状態ではエアゾール容器(スプレー缶)の底部に嵌合している。
【0012】
この治具を使用するときは、エアゾール容器の底部からこれを取り外して容器上部のステム側に持っていき、それの被係止部分をマウンティングキャップ(巻締部)の環状凹部分に係合させている。なお、この係合に先立って操作ボタン(キャップ)をステムから取り外し、ステムの先端側を露出させる。
【0013】
このガス抜き用治具とマウンティングキャップとの嵌合作用により、エアゾール容器のステムは、その露出した先端側部分がガス抜き用治具の挿入孔に入り込んで下方に押圧された状態、すなわちステム下側部分の周知のバルブ作用部が「開いた」状態に、継続的に保持される。
【0014】
その結果、容器本体の残留内容物や残留ガスなどがバルブ作用部およびステムを介して外部空間に噴射される。
【特許文献1】特開2000−17786号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
以上のエアゾール式製品のガス抜き用治具の場合、エアゾール容器の底部から取り外したものを、そのままの形で容器上部のステム側のマウンティングキャップ(巻締部)の環状凹部分に係合させるようになっている。
【0016】
そのため、利用者が、ガス抜き用治具を取り外してそのままマウンティングキャップに係合させるといった簡単な操作で、つい不用意にガス抜きモードを設定してしまうことや、子供などが、エアゾール容器の上下にそれぞれいわば単品の形で取り付けられている操作ボタン(キャップ)とガス抜き用治具とを遊び心で個々に取り外してから当該治具をそのままマウンティングキャップに取り付けてしまうことなどが起こりやすい。
【0017】
その結果、まだガス抜きが不要であるにもかかわらず、不用意にガス抜きモードに移行してしまうという問題点があった。
【0018】
そこで本発明では、通常はエアゾール式製品の容器底部側に取り付けられたままで、使用時にはそこから取り外される(ガス抜き状態や内容物連続噴射状態を設定するための)連続作動モード設定用治具を、この容器底部側と取り外し可能な形で係合する外側部材と、これに分離可能な形で一体化して使用時には容器上部のマウンティングキャップなどに係合することによりステムをその作動モード対応位置に保持する機能を備えた内側部材と、を備えたものにしている。
【0019】
このような外側部材と内側部材とからなる連続作動モード設定用治具を用いているため、この治具を容器底部側から取り外して例えばマウンティングキャップに係合させて連続作動モードへ移行させる操作手順は、通常、当該治具(外側部材+内側部材)を容器底部側から取り外す第1段階と、その後で内側部材を外側部材から分離する第2段階とを含むことになる。
【0020】
すなわち本発明では、容器底部側に一体化されている連続作動モード設定用治具を利用者が取り外してから連続作動モードの所定位置にセットするまでの操作手順を増やすことにより、不注意や悪戯などでエアゾール式製品が不用意にガス抜きモードに移行してしまうことを防止し、容器内容物の効率的利用を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、以上の課題を次の連続作動モード設定用治具を用いて解決する。
(1)エアゾール容器の底部側(例えば後述の容器本体1の胴部1aと底部1bとの巻締め部分の凹状部)に一体的に取り付けられ、使用時には、当該底部側から外した状態で当該容器の他の部分(例えば後述のマウンティングキャップ2)に設定されることによりバルブ機構のステム(例えば後述のステム3)を作動モード対応位置に保持するための連続作動モード設定用治具において、
前記底部側と取り外し可能な形で係合する外側部材(例えば後述の外側部材4a,5a)および、分離可能な形でこれと一体化している内側部材(例えば後述の内側部材4c)からなり、
前記内側部材は、
前記外側部材から分離して前記他の部分に設定され、この設定状態で前記ステムを作動モード対応位置に押圧保持し、かつ、当該ステムの流出口を外部空間に連通させる機能を持つものである、
ことを特徴とする連続作動モード設定用治具
(2)上記(1)において、
前記内側部材は、
前記設定状態に移行する途中、前記ステムを押圧して作動モード対応位置に移動させる押圧駆動部(例えば後述の鞘状部4m)と、
前記設定状態で前記容器に保持される被保持部(例えば後述の被係合部4j)と、
前記設定状態で前記流出口を外部空間に連通させるための空間域(例えば後述の溝状部4nおよび第1の縦スリット状部4p)と、を備えている、
ことを特徴とする連続作動モード設定用治具
(3)上記(2)において、
前記外側部材は、前記底部(例えば後述の容器本体1の底部1b)の縁部分と嵌合する環状部材であり、
前記内側部材は、前記押圧駆動部および前記空間域を有して前記設定状態では前記ステムの流出口側に被さる形となる、鞘状部分(例えば後述の鞘状部4m)を備えている、
ことを特徴とする連続作動モード設定用治具
【0022】
このような構成からなる連続作動モード設定用治具および、この連続作動モード設定用治具を備えたエアゾール式製品を本発明の対象としている。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、このように、使用時にはエアゾール式製品の容器底部側から取り外される連続作動モード設定用治具を、容器底部側との係合機能を備えた外側部材と、これに分離可能な形で一体化してステムに対する作動モード対応位置への保持機能を備えた内側部材とで構成している。
【0024】
そのため、容器底部側に一体化された連続作動モード設定用治具を連続作動モードの所定位置に保持するまでの利用者の操作手順が増える、すなわち容器底部側から取り外した治具の内側部材を外側部材から分離するといった手順が追加されることになり、不注意や悪戯などにともなうエアゾール式製品の不用意なガス抜きモードへの移行を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1乃至図4を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0026】
これまでも繰り返し述べたように、本発明は、ガス抜きや内容物連続噴射といった連続作動モードの設定機構に関するものである。
【0027】
この連続作動モード設定機構がガス抜きまたは内容物連続噴射の何れの状態で使用されているかということは、いわば利用者の意識の違いにすぎず、当該連続作動モード設定機構の動作メカニズム自体はいずれの使用状態でも同じである。
【0028】
以下の説明では単なる説明の便宜上、ガス抜きモードに設定する場合を前提とし、必要に応じてガス抜きモード設定用(連続作動モード設定用)治具を単に「治具」という。
【0029】
なお、以下の「(噴射用)ガス」,「ガス抜き」の用語をそれぞれ「内容物」,「内容物連続噴射」に置き換えても個々の説明内容の妥当性が担保されるのは勿論である。
【0030】
ここで、
図1は、容器底部側に取り付けられた治具(その1)などを示すもので、(a)は容器底部側および治具の断面図、(b)は治具の底面図をそれぞれ示している。
図2は、図1の治具の斜視状態(一部断面)を示し、
図3は、図1の容器底部側から取り外した治具の内側部材を分離してマウンティングキャップに係合させた状態を示し、
図4は、容器底部側に取り付けられた治具(その2)などを示すもので、(a)は容器底部側および治具の断面図、(b)は治具の底面図をそれぞれ示している。
【0031】
以下のアルファベット付き参照番号の構成要素(例えば胴部1a)は原則として、当該参照番号の数字部分の構成要素(例えば容器本体1)の一部であることを示している。ただ、治具の内側部材およびそれの構成要素を示す参照番号4c,4d・・・は治具5の場合にも用いている。
【0032】
なお、治具(その1,その2)に関する参照番号4,5およびそれぞれのアルファベット付きの参照番号の中、
・4,4a,4b,4gは図1〜図3の治具(その1)のみで用い、
・5,5a,5b,5gは図4の治具(その2)のみで用い、
・その他のものは図1〜図4の治具(その1,その2)の双方で用いている。
【0033】
図1〜図4において、
1は後述の内容物および噴射用ガスを収納したエアゾール式製品の容器本体,
1aは当該容器本体の胴部,
1bは当該胴部の下側縁部分に巻締め加工で取り付けられた(容器本体の)底部,
1cは当該底部の湾曲面部分の下方に形成される凹状空間域,
2は容器本体1の開口端部側に取り付けられたマウンティングキャップ,
3は周知のバルブ機構(図示省略)の構成要素であるステム,
4は容器本体1の胴部1aと底部1bとの巻締め部分の凹状部に係合(嵌合)しているガス抜きモード設定用の治具(図1〜図3参照),
4aは底部1bから取り外し可能であって容器本体1の上記凹状部との係合(嵌合)機能を備えた環状の外側部材,
4bは当該外側部材の外縁に形成されてその内周面部分には間歇的な複数の嵌合用の突状部を持つ環状起立部,
4cは外側部材4aから分離可能であってガス抜きモード設定機能を備えた円板状の内側部材,
4dは当該内側部材の最も外側の部分であって外側部材4aと略同一高さの面からなる環状の下段部,
4eは当該下段部の内側に続く環状の中段部,
4fは当該中段部の内側に続く略円状の上段部,
4gは外側部材4aと内側部材4cの下段部4dとを接続する8個の薄肉状片部,
4hは円状の上段部4fの縁部分の3箇所に形成されてガス抜きモード設定時にマウンティングキャップ2の環状の外側下端部分に係合する垂下部,
4jは当該垂下部の下端側に形成されて係合用の水平面部分とガイド用のテーパ状内周面部分とからなる被係合部,
4kは垂下部4h(被係合部4j)を成形加工するときの金型の使用によって当該垂下部の内側に生じる開口部,
4mは円状の上段部4fの中央部分に形成されてガス抜きモード設定時にステム3の上端側部分(内容物の出力部分)を押圧保持する鞘状部,
4nは当該鞘状部の天井面に形成されたガス(内容物)通過用の溝状部,
4pは当該鞘状部の(下方にいくほど外側に広がったテーパ態様の)胴部分の当該溝状部に続く2箇所に形成された上下方向の第1の縦スリット状部,
4p’は当該胴部分における当該第1の縦スリット状部の中間部分の2箇所に形成された上下方向の第2の縦スリット状部,
4qは鞘状部4mを支持するための計8個の横方向(水平方向)の連結片部,
4rは当該連結片部の間にそれぞれ縦スリット状部4pに続く態様で形成された計4個の横スリット状部,
4sは当該連結片部の間にそれぞれ縦スリット状部4pから独立した態様で形成された4個の扇状開口部,
5は容器本体1の胴部1aと底部1bとの巻締め部分の凹状部に係合(嵌合)しているガス抜きモード設定用の治具(図4参照),
5aは底部1bから取り外し可能であって容器本体1の上記凹状部との係合(嵌合)機能を備えた環状の外側部材,
5bは当該外側部材の外縁に形成されてその内周面部分には間歇的な複数の嵌合用の突状部を持つ環状起立部,
5gは外側部材5aと内側部材4cの下段部4dとを接続する環状薄肉部,
をそれぞれ示している。
【0034】
ここで、図示していないが、ステム3はコイルスプリングで上方向に付勢されており、ステム3には操作ボタンが取り外し可能な形で嵌合している。
【0035】
また、環状起立部4b,5bに形成された容器本体嵌合用の突状部はそれぞれ下側テーパ面と上側テーパ面からなっているので、治具4,5を容器本体1に取り付けることや、治具4,5を容器本体から取り外すことは比較的楽に実行できる。
【0036】
ステム3や治具4,5などはポリプロピレン,ポリエチレン,ポリアセタール,ナイロン,ポリブチレンテレフタレートなどからなるプラスチック製のものである。
【0037】
なお、本明細書で用いる「容器」とは、胴部1a,底部1bおよびマウンティングキャップ2などによって形成される内容物収納用の内部空間を備えたもののことである。すなわちマウンティングキャップ2も容器の構成要素となる。
【0038】
図1〜図3のガス抜きモード設定用の治具4は、図1で明示されるように、容器本体1の胴部1aと底部1bとの巻締め部分の凹状部に係合(嵌合)しているとき、当該治具の環状起立部4bの外周面部分が胴部1aの外周面といわゆる面一の状態になっている。
【0039】
また、治具4の内側部材4cを構成する中段部4e,上段部4fおよび鞘状部4mなどは容器本体1の凹状空間域1cの内部に収納された形になっている。すなわち治具1の底面側にはその外側部材4aの底面より下方に突出する部分がない。
【0040】
そしてこの治具4を用いて面とガス抜きモードを設定する場合、利用者は、
(1)操作ボタン(図示省略)をステムから取り外し、
(2)例えば治具4の環状起立部4bの外周面を押下げることにより、当該治具と容器底部側との上記係合状態を解除し、
(3)この解除後の治具4の外側部材4aに対し内側部材4cを押圧するなどして両者の接続部分である薄肉状片部4gのそれぞれを、いわば裂いた形の切断状態にし、
(4)この切断後の内側部材4cを、その中段部4eから上段部4fにいたる環状起立壁および垂下部4hの内周面がマウンティングキャップ2の外側縁部分に倣うような態様で、ステム3の上方から入れていくことにより、当該内側部材の鞘状部4mでステム3を押下げて(図3参照)、
(5)この垂下部4hの被係合部4jをマウンティングキャップ2の環状の外側下端部分に係合させる(図3参照)。
【0041】
なお、上記(4)のプロセスにおける被係合部4j(垂下部4h)は、そのテーパ状の内周面部分とマウンティングキャップ2の外側縁部分との当接作用により自らの弾性に抗する形で外側へと変形し、当該内周面部分が当該外側縁部分を通過しきった時点で元の状態に弾性復帰する。
【0042】
そして、この弾性復帰により垂下部4hの被係合部4jがマウンティングキャップ2に係合する。すなわちガス抜きモードに設定される。
【0043】
このときのステム3は、鞘状部4mの押圧作用により、作動モード対応位置(=ステム3と一体の操作ボタンを押下げて作動モードに設定したときと略同じ位置)まで下動している。
【0044】
この移動の結果、ステム3の周知のバルブ機構(図示省略)が「開」となり、容器内部のガスなどはステム内部を通ってその先端側出口から流出する。
【0045】
この流出ガスなどは、鞘状部(天井面)4mの溝状部4nおよびこれに続く方の縦スリット状部4pを介して外部空間に噴射される。
【0046】
なお、ステム3と鞘状部4mとの関係を、垂下部4hの被係合部4jがマウンティングキャップ2に係合したガス抜きモードにおいてステム3の先端側出口が鞘状部4mの天井面から離れるような形にしてもよい。
【0047】
この場合、ステム内部を通ってその先端側出口から流出するガスなどは縦スリット状部4p,4p’の双方から外部空間に噴射される。
【0048】
また鞘状部4mは、いわばその周りに間歇的に形成された(弾性を有する)多くの連結片部4qにより支持されているので、例えばステム3の作動モード対応位置におけるその先端側出口が鞘状部4mの天井面よりもいくらか高くなる製品の場合にも、当該天井面が持上げられるような形でガス抜きモードを設定する、すなわち当該製品の内側部材4cの垂下部4h(被係合部4j)をマウンティングキャップ2の環状の外側下端部分に係合させることができる。
【0049】
図4のガス抜きモード設定用の治具5と図1〜図3の治具4との相違点は、
(11)容器底部側に取り付けられた治具5の環状起立部5bの外周面部分が容器胴部1aの外周面よりも外側に位置している(治具4の場合はその環状起立部4bの外周面部分と容器胴部1aの外周面とが面一の状態になっている)、
(12)治具5の外側部材5aと内側部材4とが環状薄肉部5gで接続されている(治具4の場合は飛び飛びに形成された薄肉状片部4gで接続されている),
ことである。
【0050】
治具5のこれら以外の内側部材4の形状などは治具4のそれと同じになっている。したがって、容器底部側から取り外した治具5の内側部材4をマウンティングキャップ2の環状の外側下端部分に係合(嵌合)させるときの操作手順,係合動作も治具4の場合と同様である。
【0051】
ただ、容器本体1に係合(嵌合)している図4の治具5を容器本体から取り外す際には、環状起立部5bの上端部分をいわば取っ掛かりにして治具を下方に押下げることができるので、取り外し作業が比較的簡単なものとなる。
【0052】
ガス抜きモードに設定した内側部材4cをその係合相手のマウンティングキャップ2から取り外すには、例えば開口部4kに所定の治具(工具)などを入れて垂下部4hを外側に押しやることにより被係合部4jの係合状態を解除しながら当該内側部材を上方に持上げればよい。
【0053】
なお、容器本体1から取り外した治具4,5の全体を把持するなどした状態で、すなわち内側部材4cを外側部材4a,5aから分離することなしにマウンティングキャップ2に取り付けようとしても、この内側部材と外側部材との接続態様(薄肉状片部4g,環状の薄肉部5g)が強固でないため、当該治具の内側部材4c(被係合部4j)を正しくマウンティングキャップ2に係合(嵌合)させるのは簡単でない。
【0054】
本発明が、図1〜図4に係るガス抜きモード設定用治具(連続作動モード設定用治具)に限定されないことは勿論である。
【0055】
本発明の基本的特徴は、不使用時には容器底部側に取り付けられて、使用時には容器底部側から外してステム側にセットされることによりステムを作動モード対応位置に移動させてその状態を保持する連続作動モード設定用治具を、容器底部側との係合機能を備えた外側部材および、これとは分離可能であって当該保持のための例えばマウンティングキャップとの係合機能やステム流出口と外部空間との連通機能を備えた内側部材で構成したことである。
【0056】
このように本発明は、操作ボタンを取り外した状態のステムを作動モード対応位置に移動させて保持するための連続作動モード設定用治具を対象とするものであり、上下動タイプの他、傾動タイプの操作ボタンなどにも適用可能である。
【0057】
また、内側部材4cを外側部材4a,5aから分離しやすくするため、利用者が指などを引っ掛けることができる開口部を双方の部材の境界部分(接続部)などに形成してもよい。
【0058】
本発明が適用されるエアゾール式製品としては、洗浄剤,清掃剤,制汗剤,冷却剤,筋肉消炎剤,ヘアスタイリング剤,ヘアトリートメント剤,染毛剤,育毛剤,化粧品,シェービングフォーム,食品,液滴状のもの(ビタミンなど),医薬品,医薬部外品,塗料,園芸用剤,忌避剤(殺虫剤),クリーナー,消臭剤,洗濯のり,ウレタンフォーム,消火器,接着剤,潤滑剤などの各種用途のものがある。
【0059】
容器本体に収納する内容物は、例えば、粉状物,油成分,アルコール類,界面活性剤,高分子化合物,各用途に応じた有効成分などである。
【0060】
粉状物としては、金属塩類粉末,無機物粉末や樹脂粉末などを用いる。例えば、タルク,カオリン,アルミニウムヒドロキシクロライド(アルミ塩),アルギン酸カルシウム,金粉,銀粉,雲母,炭酸塩,硫酸バリウム,セルロース,これらの混合物などを用いる。
【0061】
油成分としては、シリコーン油,パーム油,ユーカリ油,ツバキ油,オリーブ油,ホホバ油,パラフィン油,ミリスチン酸,パルミチン酸,ステアリン酸,リノール酸,リノレン酸などを用いる。
【0062】
アルコール類としては、エタノールなどの1価の低級アルコール,ラウリルアルコールなどの1価の高級アルコール,エチレングリコールなどの多価アルコールなどを用いる。
【0063】
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどの非イオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどの両性界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウムなどのカチオン性界面活性剤などを用いる。
【0064】
高分子化合物としては、メチルセルロース,ゼラチン,デンプン,カゼインなどを用いる。
【0065】
各用途に応じた有効成分としては、サリチル酸メチル,インドメタシンなどの消炎鎮痛剤、安息香酸ナトリウム,クレゾールなどの除菌剤、ヒレスロイド,ジエチルトルアミドなどの害虫忌避剤、酸化亜鉛などの制汗剤、カンフル,メントールなどの清涼剤、エフェドリン,アドレナリンなどの抗喘息薬、スクラロース,アスパルテームなどの甘味料、エポキシ樹脂,ウレタンなどの接着剤や塗料、パラフェニレンジアミン,アミノフェノールなどの染料,リン酸二水素アンモニウム,炭酸水素ナトリウム・カリウムなどの消火剤などを用いる。
【0066】
さらに、上記内容物以外の、懸濁剤,紫外線吸収剤,乳化剤,保湿剤,酸化防止剤、金属イオン封鎖剤なども用いることができる。
【0067】
エアゾール式製品における内容物噴射用ガスとしては、炭酸ガス,窒素ガス,圧縮空気,酸素ガス,希ガス,これらの混合ガスなどの圧縮ガスや、液化石油ガス,ジメチルエーテル,フロロカーボンなどの液化ガスを用いる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】容器底部側に取り付けられた治具(その1)などを示す説明図であり、(a)は容器底部側および治具の断面図、(b)は治具の底面図をそれぞれ示している。
【図2】図1の治具の斜視状態(一部断面)を示す説明図である。
【図3】図1の容器底部側から取り外した治具の内側部材を分離してマウンティングキャップに係合させた状態を示す説明図である。
【図4】容器底部側に取り付けられた治具(その2)などを示す説明図であり、(a)は容器底部側および治具の断面図、(b)は治具の底面図をそれぞれ示している。
【符号の説明】
【0069】
1:エアゾール式製品の容器本体
1a:容器本体の胴部
1b:容器本体の底部
1c:凹状空間域
2:マウンティングキャップ
3:ステム
4:ガス抜きモード設定用の治具(図1〜図3参照)
4a:環状の外側部材
4b:環状起立部
4c:円板状の内側部材
4d:環状の下段部
4e:環状の中段部
4f:略円状の上段部
4g:薄肉状片部
4h:垂下部
4j:被係合部
4k:開口部
4m:鞘状部
4n:ガス(内容物)通過用の溝状部
4p:当該溝状部に続く第1の縦スリット状部
4p’:縦スリット状部4pの中間部分に形成された第2の縦スリット状部
4q:計8個の横方向(水平方向)の連結片部
4r:横スリット状部
4s:扇状開口部
5:ガス抜きモード設定用の治具(図4参照)
5a:環状の外側部材
5b:環状起立部
5g:環状薄肉部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール容器の底部側に一体的に取り付けられ、使用時には、当該底部側から外した状態で当該容器の他の部分に設定されることによりバルブ機構のステムを作動モード対応位置に保持するための連続作動モード設定用治具において、
前記底部側と取り外し可能な形で係合する外側部材および、分離可能な形でこれと一体化している内側部材からなり、
前記内側部材は、
前記外側部材から分離して前記他の部分に設定され、この設定状態で前記ステムを作動モード対応位置に押圧保持し、かつ、当該ステムの流出口を外部空間に連通させる機能を持つものである、
ことを特徴とする連続作動モード設定用治具。
【請求項2】
前記内側部材は、
前記設定状態に移行する途中、前記ステムを押圧して作動モード対応位置に移動させる押圧駆動部と、
前記設定状態で前記容器に保持される被保持部と、
前記設定状態で前記流出口を外部空間に連通させるための空間域と、を備えている、
ことを特徴とする請求項1記載の連続作動モード設定用治具。
【請求項3】
前記外側部材は、前記底部の縁部分と嵌合する環状部材であり、
前記内側部材は、前記押圧駆動部および前記空間域を有して前記設定状態では前記ステムの流出口側に被さる形となる、鞘状部分を備えている、
ことを特徴とする請求項2記載の連続作動モード設定用治具。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の連続作動モード設定用治具を備え、かつ、噴射用ガスおよび内容物を収容した、
ことを特徴とするエアゾール式製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−1402(P2008−1402A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−173469(P2006−173469)
【出願日】平成18年6月23日(2006.6.23)
【出願人】(000144463)株式会社三谷バルブ (142)
【Fターム(参考)】