説明

連続孔穿孔装置およびこれを用いた連続孔穿孔方法

【課題】経済性に優れ、孔曲がりを防止可能であり、一定のラップで孔尻を揃え得る連続孔穿孔装置およびこれを用いた連続孔穿孔方法を提供する。
【解決手段】このガイドシェルユニット(連続孔穿孔装置)1は、ガイドロッド20が、ロッド4に対して所定の距離を隔てて並列に設けられており、その外周面には、長手方向に沿って案内溝26が案内部材24同士によって形成されている。また、ディスタンスガイド30は、ビット5に隣接してロッド4に装着されるとともに、ロッド4の軸まわりに回転可能且つ軸方向には移動が拘束されている。そして、このディスタンスガイド30は、突出部32を有しており、この突出部32は、ビット5の外径よりも外側の位置まで突出して設けられるとともに、ガイドロッド20の案内溝26に係合しつつ案内溝26に沿ってビット5とともに移動可能になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばトンネル建設現場において、岩盤に自由面を形成するために好適な連続孔の穿孔装置およびこれを用いた連続孔穿孔方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、トンネル工事等での振動や騒音を抑制するために、岩盤にさく岩機で連続孔を穿孔し、この連続孔を自由面として利用して、無発破や低振動発破で硬岩を破砕する工法が採用されている。
ところで、例えば、先端のビットに穿孔に必要な回転およびフィード力を伝達可能なロッドを備えるさく岩機によって単一孔を連続して穿孔する場合、新たに穿孔する孔に隣接する既設孔側は、穿孔に要する負荷が小さく、ビットが既設孔の側に逃げてしまう。そのため、既設孔の側に孔曲がりが発生する。
【0003】
そこで、このような隣接する既設孔側への孔曲がりを防止するために、例えば回転しているビットを案内用の部材に意図的に接触させたり、剛性の高いロッドを用いたり、あるいは、連続孔を穿孔するための専用機を用いたりすることで対策がなされている(例えば特許文献1参照)。
特許文献1に記載の技術では、並列する複数のロッドを備え、各ロッドの先端にビットが装着されており、これにより、連続孔を穿孔可能になっている。なお、隣接するビット同士は、軸方向に前後して装着されており、相互の干渉が防止されている。
【0004】
また、同文献に記載の技術では、既設孔内に挿入されるガイドロッドがロッド先端のビットに並列して設けられており、このガイドロッドによって、さらに隣接する孔を穿孔する際の位置決めおよび軸方向の向きの案内が可能になっている。
【特許文献1】実開平06−4192号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記例示した、回転しているビットを案内用の部材に意図的に接触させるものでは、高速で回転するビットを案内用の部材に接触させるので、この接触による損耗が大きく経済性の点では課題がある。また、剛性の高いロッドを用いた場合にも、この種の材料は高価なので、やはり経済性の点では課題が残る。
また、例えば形成される連続孔を自由面として利用する上では、隣接する孔同士の距離は一定の重なり量(以下、「ラップ」ともいう)をもって連続して形成されるとともに孔尻を揃えて形成されることが望ましい。
【0006】
しかし、例えば上記特許文献1に記載の技術では、隣接するビット同士は軸方向に前後して装着されるので、孔尻を揃えることは難しい。また、並列する複数のロッドで連続孔を穿孔した後に、これに隣接して新たに穿孔する孔の位置は、ガイドロッドを基準として設定される。このとき、このガイドロッドには、これに隣接するロッド先端のビットとの干渉を防止しつつ必要なラップ量を確保するために、一般的にビットに対向する位置に切り欠きを設けている。しかし、この方法では、ビットが既設孔側へ逃げてしまうことは防止されない。そのため、やはり孔曲がりが発生して、ガイドロッドの切り欠き部とビットのショルダー部とが接触してしまう。したがって、隣接する孔相互のラップを全体として一定にしつつ、孔尻を揃えた穿孔をする上では未だ検討の余地がある。
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、経済性に優れ、孔曲がりを防止可能であり、一定のラップで孔尻を揃え得る連続孔穿孔装置およびこれを用いた連続孔穿孔方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のうち第一の発明は、ビットと、そのビットが先端に装着されるロッドとを備え、前記ビットに穿孔に必要な回転およびフィード力を前記ロッドを介して伝達可能な連続孔穿孔装置であって、前記ロッドに対して並列に且つ前記ビットとは干渉しない距離を隔てて設けられて、既設孔内に挿入可能なガイドロッドと、前記ロッドの前記ビットよりも基端側の位置に、当該ロッドに対する相対回転は可能で且つ軸方向への相対移動は拘束されるように装着されてなるディスタンスガイドとを備え、前記ガイドロッドは、その外周面に長手方向に沿って連続する案内溝を有し、前記ディスタンスガイドは、その外周面から前記ビットの外径よりも外側の位置まで突出する突出部を有し、当該突出部は、前記ガイドロッドの案内溝に係合しつつ案内溝に沿って前記ビットとともに移動可能になっていることを特徴としている。
【0008】
第一の発明によれば、連続孔を穿孔するに際し、ガイドロッドを既設孔内に挿入し、そのガイドロッドの案内溝にディスタンスガイドの突出部を係合させつつ、ロッド先端のビットに穿孔に必要な回転およびフィード力を伝達して連続孔を穿孔可能なので、ディスタンスガイドの位置を案内溝で規制することができる。そのため、このディスタンスガイドが装着されたロッドの既設孔側への曲がり、およびビットの逃げが防止される。したがって、孔曲がりを防止しつつ連続孔の穿孔が可能である。
【0009】
また、このガイドロッドは、ロッドに対して並列に且つビットとは干渉しない距離を隔てて設けられており、その案内溝は、外周面に長手方向に沿って連続しているので、一定のラップで連続孔を穿孔することができる。
さらに、例えば上記例示したような、複数のロッドの先端にビットが装着され、隣接するビット同士が軸方向に前後して装着されたものとは異なり、この第一の発明によれば、連続孔の穿孔に際し、例えば所定の目印を基準にしてロッドのフィード量を設定すれば、孔尻を揃えた穿孔を行うことができる。
【0010】
そして、このディスタンスガイドは、ロッドに対する相対回転は可能で且つ軸方向への相対移動は拘束されるように装着されているので、例えば上記の回転するビットを案内用の部材に接触させるものと比べ、その摩耗が防止または抑制される。そのため、例えば剛性の高い高価な材料を用いなくとも、ディスタンスガイドの損耗等による部品交換の頻度を少なくすることができる。したがって、経済性に優れている。
【0011】
ここで、上記第一の発明に係る連続孔穿孔装置において、前記ロッドは、ロッド本体と、そのロッド本体と同軸にその先端に装着されるガイドアダプタとを有して構成されており、当該ガイドアダプタは、その先端部に前記ビットを装着可能なビット装着部と、そのビット装着部よりも基端部に前記ディスタンスガイドを装着可能なディスタンスガイド装着部とを有し、前記ビットおよび前記ディスタンスガイドは、当該ガイドアダプタを介して前記ロッドに装着されるようになっていることは好ましい。このような構成であれば、常に金属同士の接触に曝され摩耗が激しいディスタンスガイドのみを容易に交換可能とする上で好適である。
【0012】
また、第一の発明に係る連続孔穿孔装置において、前記ガイドロッドは、前記長手方向に延びる円筒形状の本体部と、その本体部の外周面に長手方向に沿って且つ周方向に等間隔に装着された複数の案内部材とを備えて構成され、隣接する案内部材同士の間が前記案内溝になっていることは好ましい。このような構成であれば、例えばフライス加工等の切削加工によらず、案内溝形状を容易に形成する上で好適である。また、周方向に複数の案内溝を形成できるので、例えば一の案内溝での摩耗が進行した場合であっても、回転させるだけで他の案内溝を使用することができる。
【0013】
また、第一の発明に係る連続孔穿孔装置において、前記案内溝は、これに係合するディスタンスガイドの突出部に、案内溝の長手方向での所定の位置で当接してディスタンスガイドの軸方向への移動を規制する当接部を、当該案内溝の凹部内に有することは好ましい。このような構成であれば、この当接部を基準にしてロッドのフィード量を設定しておくことで、孔尻を揃えた穿孔を容易に行うことができる。
【0014】
さらに、本発明のうち第二の発明は、連続孔を穿孔する方法であって、第一の発明に係る連続孔穿孔装置を用いて、前記ガイドロッドを既設孔内に挿入し、そのガイドロッドの案内溝に前記ディスタンスガイドの突出部を係合させつつ、前記ロッド先端のビットに穿孔に必要な回転およびフィード力を伝達して連続孔を穿孔することを特徴としている。
第二の発明によれば、第一の発明に係る連続孔穿孔装置を用いて、そのガイドロッドを既設孔内に挿入し、ガイドロッドの案内溝にディスタンスガイドの突出部を係合させつつ連続孔を穿孔しているので、第一の発明に係る連続孔穿孔装置による作用・効果を奏する連続孔の穿孔が可能である。
【発明の効果】
【0015】
上述のように、本発明によれば、経済性に優れ、孔曲がりを防止可能であり、一定のラップで孔尻を揃え得る連続孔穿孔装置およびこれを用いた連続孔穿孔方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。
図1は本発明に係る連続孔穿孔装置としてのガイドシェルユニットの概略説明図である。
図1に示すガイドシェルユニット1は、例えばドリルジャンボに装備されて、トンネル内の所定の空間位置に移動可能に構成されている。そして、このガイドシェルユニット1には、穿孔時にガイドシェル2上をフィードされる、公知の油圧式のドリフタ(不図示)がガイドシェル2の基端側に搭載されている。また、ガイドシェル2には、その長手方向に沿って延びるロッド4が配設されており、その基端側がドリフタに回転可能に保持されており、先端側がセントラライザ3に軸方向へのスライド移動および軸まわりに回転自在に支持されている。
【0017】
ここで、このロッド4は、基端側がドリフタに保持されるロッド本体41と、そのロッド本体41と同軸にその先端に装着されるガイドアダプタ40とを有して構成されている。そして、このガイドアダプタ40には、その先端にビット5が装着されており、このビット5に、穿孔に必要な回転およびフィード力を伝達可能になっている。さらに、ガイドアダプタ40には、ビット5よりも基端側の位置に、ディスタンスガイド30が取り付けられている。
【0018】
さらに、このガイドシェルユニット1は、図1に示すように、セントラライザ3にブラケット10が連結されており、このブラケット10の上部にガイドロッド20が装備されている。このガイドロッド20は、ロッド4に対して並列に且つビット5とは干渉しない距離を隔ててブラケット10に固定されている。そして、このガイドロッド20は、その外周面に長手方向に沿って連続する案内溝26を有している。
【0019】
以下、上記ガイドアダプタ40、ビット5およびディスタンスガイド30、並びにガイドロッド20についてより詳しく説明する。
図2はガイドアダプタ40を説明する図である。
同図に示すように、このガイドアダプタ40は二段の段部を有し、基端側(同図での右側)の基端部46と、基端部46よりも小径に軸方向中央に形成されたディスタンスガイド装着部44と、先端側(同図での左側)に設けられてビット5を装着可能なビット装着部42と、を同軸に備えて構成されている。これら基端部46、ディスタンスガイド装着部44およびビット装着部42はいずれも円筒状をなしており、中央には同軸に貫通孔49が形成されている。
そして、このガイドアダプタ40の基端部46には、ガイドアダプタ40をロッド本体41の先端部の雄ねじ4a(図1(a)参照)に装着するための雌ねじ48が設けられている。また、ガイドアダプタ40の先端側のビット装着部42には、その外周面にビット5を装着するための雄ねじ43が設けられている。
【0020】
図3はビット5を説明する図である。
同図に示すビット5は穿孔用ビットであり、略円筒状の先端部5s(同図での左側)と、その先端部5sよりも小径の基端部5kとを同軸に有しており、先端部5sには、穿孔用の刃(図示略)が複数形成されている。そして、このビット5は、同図に示すように、小径の基端部5kにこれと同軸に雌ねじ5aを有している。この雌ねじ5aは、ガイドアダプタ40のビット装着部42がもつ雄ねじ43に螺合可能に形成されている。
【0021】
図4はディスタンスガイド30を説明する図である。
同図に示すように、このディスタンスガイド30は、ガイド本体31と、このガイド本体31の外周面から突出する突出部32とを有している。ガイド本体31は、軸方向に所定の長さをもつ円筒部材であり、その内径は、上記ディスタンスガイド装着部44の外径よりも僅かに大きく、ガイドアダプタ40の略中央部のディスタンスガイド装着部44まわりに回転可能に嵌合する径に形成されている。
【0022】
一方、ディスタンスガイド30の突出部32は、図1に示す装着状態において、ビット5の、穿孔用の刃が形成された先端部5sの外径Dよりも外側の位置まで突出している。つまり、ロッド4の軸線CLを基準とした突出した端部までの寸法H(図4(b)参照)は、H>D/2となる寸法に設定されている。また、この突出部32の幅W(図4(a)参照)は、案内溝26の幅よりも狭くなっており、ガイドロッド20の案内溝26に係合しつつ案内溝26に沿って移動可能になっている。
【0023】
そして、上記のビット5およびディスタンスガイド30を、ガイドアダプタ40に装着するときには、まず、ガイドアダプタ40のディスタンスガイド装着部44に対し小径のビット装着部42の側からディスタンスガイド30を挿入し、次いで、ビット5を、その雌ねじ5aをガイドアダプタ40の雄ねじ43に螺合させてビット装着部42に固定する。ここで、ディスタンスガイド装着部44の軸方向の長さは、ディスタンスガイド30の軸方向長さよりも僅かに長くなっており、さらに、ビット5がねじ込まれる軸方向での位置は、ディスタンスガイド30のビット5側の面を押圧しないように設定されている。なお、上述した各ねじ部は、ロッド4の回転方向に対してねじ緩みの生じない方向に設定されている。これにより、ディスタンスガイド30は、ビット5の基端側端面およびガイドアダプタ40の基端部46のディスタンスガイド30側端面で軸方向両側から挟持されるとともに、ロッド4に対し、その軸まわりに回転可能且つ軸方向での移動が拘束されるようになっている。
【0024】
図5はガイドロッド20を説明する図である。
ガイドロッド20は、同図に示すように、その基端部23が矩形断面を有して形成されており(同図(c)参照)、上記ブラケット10に対してその矩形断面が二面幅の方向に固定されることで、その軸まわりの回転および軸方向への移動がともに防止されている。なお、軸方向への移動については、この基端部23両側に設けられた二つの円環状の鍔部23aを、ブラケット10の側端面に当接することでより確実に防止されている。
【0025】
そして、このガイドロッド20は、基端部23の反対側が、既設孔内に挿入される既設孔挿入部21になっている。この既設孔挿入部21は、長手方向に延びる円筒形状の本体部22と、その本体部22の外周面に長手方向に沿って且つ周方向に等間隔に装着された4本の円形断面をもつ棒状の案内部材24とを備えて構成されている。各案内部材24の既設孔内に挿入される側の端部は、先端側に向かうにつれて細くなる斜面部24が、それぞれの外周を向く側に形成されており、先端部分を尖頭状に形成することで既設孔への挿入を容易にしている。
【0026】
さらに、このガイドロッド20は、隣接する案内部材24同士の間が、その外周面に長手方向に沿って一定の深さで連続する案内溝26になっている。そして、上述したディスタンスガイド30は、その突出部32がこの案内溝26に係合しつつ案内溝26に沿ってビット5とともに移動可能になっている。また、この案内溝26には、案内溝26の長手方向先端側での所定の位置で突出部32に当接してディスタンスガイド30の軸方向への移動を規制する当接部28が、当該案内溝の凹部内に設けられている。
【0027】
ここで、図1(b)に示すように、このガイドロッド20の周方向での固定位置は、丁度ロッド4に対向する向きに案内溝26が向いた位置で固定されている。これにより、案内溝26による凹部が、ビット5に対する逃げ溝としても機能しており、ロッド4に対して並列に且つビット5とは干渉しない距離を隔てて配置される。すなわち、ビット5の先端部5sの外径が、案内部材24および当接部28に干渉しない距離を隔てて配置される(図5(b)参照)。なお、この既設孔挿入部21の最大径D1は、ビット5の先端部5sの外径D2と等しい径に設定されている(本実施形態の例では、D1=D2=85mmである)。また、既設孔挿入部21の最大径D1とビット5の先端部5sとの径方向でのラップ量Tは、5.5mmである(図1(b)参照)。
【0028】
次に、このガイドシェルユニット1での穿孔作業(連続孔穿孔方法)、およびその作用・効果について説明する。なお、図6は連続孔の穿孔作業の説明図である。
同図に示す一連の穿孔作業を行なって連続孔を穿孔する場合には、まず、既設孔近傍の穿孔位置付近までガイドシェルユニット1を移動させる。
そして、壁面Sに対し、連続孔を穿孔するのに必要な位置にガイドシェルユニット1を位置決めし、次いで、図6(a)に示すように、ガイドロッド20をその先端が孔尻に当接する位置まで既設孔K内に挿入し、ドリフタ(不図示)を駆動して穿孔作業を開始する。
【0029】
このとき、このガイドロッド20は、その既設孔挿入部21の最大径D1が、ビット5の先端部5sの外径D2と等しい径に設定されており、この外径D2のビット5で穿孔した既設孔Kの内径は、この外径D2(=D1)よりも若干大きくなるので、最大径D1のガイドロッド20を既設孔K内に確実に挿入可能であり、また、既設孔Kを確実に支持することができる。
【0030】
次いで、図6(b)に示すように、ロッド4を回転させつつ、ガイドシェル2上でドリフタをフィードすることにより、ロッド4先端のビット5で連続孔Rの穿孔を行なうことができる。このとき、ディスタンスガイド30は、ガイドロッド20の案内溝26に係合するとともに軸方向では案内溝26に沿って摺動可能になっているので、同図(b)の状態では、フィード方向に移動しつつもビット5の回転には影響を与えない。
【0031】
そして、このガイドシェルユニット1によれば、ガイドロッド20の案内溝26は、ガイドロッド20の外周面に長手方向に沿って一定の深さで連続して形成され、ロッド4にはこの案内溝26に係合可能な突出部32を有するディスタンスガイド30を設けているので、連続孔Rの穿孔に際し、ディスタンスガイド30の位置が案内溝26で規制される。そのため、ディスタンスガイド30を同軸に支持しているロッド4の振れや既設孔Kの側への曲がりが防止され、これにより、穿孔される連続孔Rの孔曲がりが防止される。また、既設孔Kの側に逃げるビット5の動きが規制されるので、一定のラップで真っ直ぐな連続孔Rの穿孔が可能である。また、この案内溝26は、ガイドロッド20の長手方向に沿って連続した溝として形成されているので、繰り粉の排出性の向上に寄与しており、繰り粉を連続的に排出可能である。
【0032】
次いで、図6(c)に示すように、さらにガイドシェル2上でドリフタがフィードすると、ビット5とガイドアダプタ40との間に介装されているディスタンスガイド30がフィード方向に移動することで、ビット5で壁面Sに連続孔Rを穿孔することができる。
ここで、案内溝26には、これに係合するディスタンスガイド30の突出部32に、案内溝26の長手方向での所定の位置で当接してディスタンスガイド30の軸方向への移動を規制する当接部28を有しているので、この当接部28を基準にしてロッドのフィード量が一定になる。そのため、孔尻を揃えた連続孔Rを穿孔することができる。
【0033】
そして、このディスタンスガイド30は、ビット5に隣接してロッド4に装着されており、さらに、ロッド4に対してその軸まわりに回転可能且つ軸方向には移動が拘束されており、ガイドロッド20とビット5とは、案内溝26による凹部がビット5に対する逃げ溝として機能することで、対向方向に一定のラップを確保しつつも、相互に干渉しない距離を隔てた配置を可能としている。したがって、ガイドロッド20に対し高速で回転するビット5の接触が防止されるとともに、例えば上記の回転するビットを案内用の部材に接触させるものと比べ、ディスタンスガイド30についてもその摩耗が防止または抑制される。そのため、例えば剛性の高い高価な材料を用いなくとも、ディスタンスガイド30の損耗等による部品交換の頻度を少なくすることができる。さらに、部品を交換する場合であっても、常に金属同士の接触に曝される部品はガイドロッド20に案内されるディスタンスガイド30のみなので、交換部品がディスタンスガイド30だけで済む。したがって、経済性に優れている。
【0034】
以上説明したように、このガイドシェルユニット1およびこれを用いた穿孔作業(連続孔穿孔方法)によれば、経済性に優れ、孔曲がりを防止可能であり、一定のラップで孔尻を揃えることができる。
なお、本発明に係る連続孔穿孔装置およびこれを用いた連続孔穿孔方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能であることは勿論である。
【0035】
例えば、上記実施形態では、ガイドロッドは、円筒形状の本体部と、その本体部の外周面に装着された複数の案内部材とを備える例で説明したが、これに限定されず、例えば、既設孔内に挿入可能な軸部材を本体部とし、その外周面に長手方向に沿って一定の深さで連続する案内溝を、例えばフライス加工で直接形成すれば、ガイドロッドとして適用することができる。
【0036】
しかし、例えばフライス加工等の切削加工によらず、案内溝形状を容易に形成する上では、ガイドロッドを上記実施形態に例示した構成とすることは好ましい。また、上記実施形態の構成であれば、ガイドロッドの周方向に複数の案内溝を形成できるので、例えば一の案内溝での摩耗が進行した場合であっても、回転させるだけで他の案内溝を使用することができる。なお、ガイドロッドを回転させて他の案内溝を用いる場合、孔尻を揃える上では、全ての案内溝(上記実施形態の例では4箇所)に対し、上述したような、ディスタンスガイドの軸方向への移動を規制する当接部を案内溝の凹部内に設けておくことは好ましい。
【0037】
また、上記実施形態では、ガイドロッドの案内溝に当接部を設けた例で説明したが、これに限定されず、例えば案内溝に当接部を設けることなく構成してもよい。例えば所定の目印を基準にしてロッドのフィード量を設定すれば、孔尻を揃えた穿孔を行うことができる。しかし、孔尻を揃えた穿孔を容易に行う上では、上記実施形態のような当接部を設け、この当接部を基準にしてロッドのフィード量を設定しておくことは好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る連続孔穿孔装置としてのガイドシェルユニットの概略説明図であり、同図(a)はその正面図、同図(b)は同図(a)でのA−A断面図である。
【図2】本発明に係るガイドアダプタを説明するための正面図である。
【図3】本発明に係るビットを説明するための正面図である。
【図4】本発明に係るディスタンスガイドを説明する図であり、同図(a)はその右側面図、同図(b)は正面図である。
【図5】本発明に係るガイドロッドの説明図であり、同図(a)はその正面図、同図(b)は左側面図、同図(b)は右側面図である。
【図6】連続孔の穿孔作業の説明図である。
【符号の説明】
【0039】
1 ガイドシェルユニット(連続孔穿孔装置)
2 ガイドシェル
3 セントラライザ
4 ロッド
5 ビット
10 ブラケット
20 ガイドロッド
22 本体部
24 案内部材
26 案内溝
28 当接部
30 ディスタンスガイド
31 ガイド本体
32 突出部
40 ガイドアダプタ
41 ロッド本体
42 ビット装着部
44 ディスタンスガイド装着部
S 壁面
K 既設孔
R 連続孔
T ラップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビットと、そのビットが先端に装着されるロッドとを備え、前記ビットに穿孔に必要な回転およびフィード力を前記ロッドを介して伝達可能な連続孔穿孔装置であって、
前記ロッドに対して並列に且つ前記ビットとは干渉しない距離を隔てて設けられて、既設孔内に挿入可能なガイドロッドと、前記ロッドの前記ビットよりも基端側の位置に、当該ロッドに対する相対回転は可能で且つ軸方向への相対移動は拘束されるように装着されてなるディスタンスガイドとを備え、
前記ガイドロッドは、その外周面に長手方向に沿って連続する案内溝を有し、
前記ディスタンスガイドは、その外周面から前記ビットの外径よりも外側の位置まで突出する突出部を有し、当該突出部は、前記ガイドロッドの案内溝に係合しつつ案内溝に沿って前記ビットとともに移動可能になっていることを特徴とする連続孔穿孔装置。
【請求項2】
前記ロッドは、ロッド本体と、そのロッド本体と同軸にその先端に装着されるガイドアダプタとを有して構成されており、
当該ガイドアダプタは、その先端部に前記ビットを装着可能なビット装着部と、そのビット装着部よりも基端部に前記ディスタンスガイドを装着可能なディスタンスガイド装着部とを有し、
前記ビットおよび前記ディスタンスガイドは、当該ガイドアダプタを介して前記ロッドに装着されるようになっていることを特徴とする請求項1に記載の連続孔穿孔装置。
【請求項3】
前記ガイドロッドは、前記長手方向に延びる円筒形状の本体部と、その本体部の外周面に長手方向に沿って且つ周方向に等間隔に装着された複数の案内部材とを備えて構成され、隣接する案内部材同士の間が前記案内溝になっていることを特徴とする請求項1または2に記載の連続孔穿孔装置。
【請求項4】
前記案内溝は、これに係合するディスタンスガイドの突出部に、案内溝の長手方向での所定の位置で当接してディスタンスガイドの軸方向への移動を規制する当接部を、当該案内溝の凹部内に有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の連続孔穿孔装置。
【請求項5】
連続孔を穿孔する方法であって、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の連続孔穿孔装置を用いて、
前記ガイドロッドを既設孔内に挿入し、そのガイドロッドの案内溝に前記ディスタンスガイドの突出部を係合させつつ、前記ロッド先端のビットに穿孔に必要な回転およびフィード力を伝達して連続孔を穿孔することを特徴とする連続孔穿孔方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−8011(P2008−8011A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−178530(P2006−178530)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【出願人】(594149398)古河ロックドリル株式会社 (50)
【Fターム(参考)】