説明

連続気泡多孔質体およびそれを用いた吸水材料、並びにそれらの製造方法

【課題】 フラワーアレンジメント用台座として好ましく使用することができる連続気泡多孔質体および吸水材料を提供する。
【解決手段】 樹脂組成物の発泡体を粉砕してなる粉体の粉砕片が相互に接合してなる細孔壁が、連続気泡構造を形成している連続気泡多孔質体であって、切花延命剤および、粉体100重量部に対して0.1重量部以上30重量部以下の界面活性剤を含有してなり、
見かけ密度が0.01g/cm3以上0.2g/cm3以下、かつ、10%圧縮応力が0.02MPa以上0.3MPa以下、圧縮回復率が95%以下である連続気泡多孔質体、該多孔質体からなる吸水材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続気泡多孔質体およびそれを用いた吸水材料、並びにそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質体は、多数の空洞を有する固体である。また、空洞が互いに連結した構造は、連続気泡構造と呼ばれる。前記連続気泡構造を有する多孔質体は、液体を吸収する性質を有していることが多い。
【0003】
例えば、連続気泡構造を有するポリウレタンフォームは、その吸水性を利用して食器の洗浄用スポンジとして広く用いられている。また、連続気泡構造を有するポリウレタンフォームやフェノールフォームが、フラワーアレンジメント用台座として使用されている。この用途は、連続気泡多孔質体による吸水性を利用したものであり、生花を長期間にわたり枯らさずに保持する機能を有している。更に、農業分野において、ロックウールを固めて得られる連続気泡多孔質体が、養液栽培等で用いる培地として使用されるようになってきている。この用途において使用される連続気泡多孔質体は、栽培される植物の根を保持するとともに、それ自身が養分を含んだ水を吸い上げて根へ供給するという機能を担っている。
【0004】
以上のように、連続気泡多孔体は極めて有用なものである。更に、前記したフラワーアレンジメント用台座や植物の養液栽培等で用いる培地のうち、生分解性を示す樹脂で構成されたものは、環境中で分解されるために、使用後に廃棄等する際の処理が容易であるといったメリットを有することから、更にその有用性は高いものとなる。
【0005】
生分解性を示す多孔質体の提案として、特許文献1には、乳酸を主成分とする重合体からなる、平均孔径1〜30μmの連通孔を有するポリ乳酸多孔質体が開示されている。該多孔質体は、乳酸を主成分とする重合体と水溶性のポリアルキレンエーテルと乳酸の共重合体とを溶媒に溶解して溶液とし、該溶液を乾燥して固形物とした後に、別の液体で前記共重合体を溶出させて製造される。しかしながら、この製造法は手順が極めて煩雑であり、コストアップにつながりやすいという問題がある。また、この製造法では、フィルム状のものは容易に得ることができるが、乾燥時に連通構造が変化しやすいだけでなく、比較的厚みのあるものを得ることが困難であるという問題もある。
【0006】
また、特許文献2には、生分解性樹脂、発泡剤、無機充填剤等からなる配合物を混練押し出し発泡させることにより製造される、生分解性プラスチックを主成分とする連続気泡体及びフラワーアレンジメント用台座が開示されている。しかしながら、生分解性プラスチックを単に発泡剤等と共に成形するだけでは、良好な連続気泡構造を得ることは難しい。また、押出発泡法では、得られる成形体の形状に制限があり、任意の形状に成形することはできない。
【0007】
更に、特許文献3には、ポリ乳酸系樹脂等の脂肪族ポリエステルからなる発泡体をフラワーアレンジメント用台座に用いることが開示されている。しかしながら、この脂肪族ポリエステル系樹脂発泡体は、連続気泡発泡体ではあるが、吸水性に適した気泡構造を必ずしも有しておらず、そのため吸水速度が遅く、吸水量も十分ではない。
【0008】
なお、特許文献4には、ポリマー被覆を有する発泡粒子を金型内で加圧することにより、蒸気を用いずに焼結して発泡成形体を製造する方法が開示されており、前記発泡粒子として再利用による発泡成形体から得られた粉砕粒子を用いることが記載されている。しかしながら、特許文献4は、発泡ポリオレフィン又は発泡性スチレンポリマーの予備発泡粒子を発泡粒子として使用するものであり、生分解性ポリマーについては記載されていない。また、特許文献4には、発泡成形体から得られた粉砕粒子を用いた実施例の記載はない。更に、特許文献4には、連続気泡構造を有する発泡体についても記載されていない。
【0009】
他方、連続気泡構造を有するポリウレタンフォームやフェノールフォームは、フラワーアレンジメント台座として好適に使用されている。フラワーアレンジメント台座として使用する場合、これらの連続気泡構造を有するポリマーフォームに、アレンジした花の鮮度を長期間維持し、長期間観賞できるようにすることを目的とし、糖、抗菌剤等を含む切花延命剤を含有させることが有効である。
【0010】
その技術として、例えば、特許文献5には、連続気泡フォームを生成するための所望の樹脂に、切花延命剤、界面活性剤、発泡剤、触媒を混合して発泡させて連続気泡フォーム生成物を製造する方法が開示されている。しかし、該製造方法は、樹脂の発泡と硬化反応が同時に起こるため、発泡や硬化反応を阻害させるような化合物は用いることが困難であることから、用いることが可能な化合物に制限がある。
【0011】
また、特許文献6には、抗菌剤を含有することを特徴とする、吸水性フェノール樹脂発泡体が開示されている。しかし、該吸水性フェノール樹脂発泡体は、製造時に発泡と硬化反応が同時に起こるため、発泡や硬化反応を阻害させるような化合物は用いることが困難であることから、用いることが可能な化合物に制限がある。
また、フラワーアレンジメント用台座として使用されているフェノール樹脂発泡体は、熱硬化性樹脂であるため、再生(リサイクル)使用ができない、さらに、廃棄された際、内分泌かく乱物質として疑いがあるビスフェノールが発生する恐れがあるという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−306983号公報
【特許文献2】特開2000−217683号公報
【特許文献3】国際公開第2009/119325号
【特許文献4】特表2009−506149号公報
【特許文献5】特開2001−247708号公報
【特許文献6】特開2008−150423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、連続気泡構造を有する多孔質体であって、吸水性を有すると共に、生分解性を示す樹脂で構成されており、環境中で分解されるために、使用後の廃棄処理などが容易であり、さらに切り花の日持ち性に優れた多孔質発泡体及びその製造方法を提供することにある。
【0014】
本発明の別の目的は、吸水性を有すると共に、生分解性を有し、さらに切り花の日持ち性に優れたフラワーアレンジメント用台座を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、前記課題に対して鋭意検討した結果、樹脂組成物の発泡体を粉砕してなる粉体の粉砕片が相互に接合してなる細孔壁が、連続気泡構造を形成している多孔質体は、良好な連続気泡構造を有し、吸水性に優れ、さらに、切花延命剤を含有することにより、切り花の日持ち性に優れ、フラワーアレンジメント用台座として好ましくに使用できることを見出した。本発明は、これらの知見に基づき、完成されたものである。
【0016】
本発明は、樹脂組成物の発泡体を粉砕してなる粉体の粉砕片が相互に接合してなる細孔壁が、連続気泡構造を形成している連続気泡多孔質体であって、
切花延命剤および、粉体100重量部に対して0.1重量部以上30重量部以下の界面活性剤を含有してなり、
見かけ密度が0.01g/cm以上0.2g/cm以下、かつ、10%圧縮応力が0.02MPa以上0.3MPa以下、圧縮回復率が95%以下であることを特徴とする、連続気泡多孔質体を提供する。
【0017】
一実施形態では、前記粉体を構成する樹脂組成物がポリ乳酸系樹脂を主成分とするものである。
一実施形態では、前記粉砕片が、融着により相互に接合してなる。
一実施形態では、前記粉体のかさ密度が0.001g/cm以上0.1g/cm以下である。
一実施形態では、前記粉体の平均径が100μm以上2000μm以下である。
一実施形態では、前記樹脂組成物の発泡体が、加水分解処理されたものである。
一実施形態では、前記切花延命剤が、pH調整剤、殺菌剤または抗菌剤、糖類、無機養分、植物生長調節剤、エチレン阻害剤よりなる群から選択される少なくとも1種である。
一実施形態では、前記連続気泡多孔質体が界面活性剤を含有する。
【0018】
また、本発明は、樹脂組成物からなる連続気泡多孔質体の製造方法であって、
前記多孔質体の見かけ密度が0.01g/cm以上0.2g/cm以下、10%圧縮応力が0.02MPa以上0.3MPa以下、圧縮回復率が95%以下であり、
下記(1)〜(5)の工程を含むこと特徴とする、連続気泡多孔質体の製造方法を提供する。
(1)樹脂組成物を発泡させて発泡体を得る、発泡体の作製工程、
(2)前記発泡体を粉砕して粉体を得る、粉体の作製工程、
(3)前記粉体を所定の形状に成形し、前記発泡体の粉砕片を相互に接合することにより孔壁を形成して、連続気泡構造を有する連続気泡多孔質体を得る、多孔質体を作製する工程。
(4)前記粉体の作製工程または多孔質体の作製工程において、切花延命剤を添加することにより、前記連続気泡多孔質体中に切花延命剤を含有させる、切花延命剤の添加工程。
(5)前記発泡体の作製工程または多孔質体の作製工程において、粉体100重量部に対して0.1重量部以上30重量部以下の界面活性剤を添加することにより、前記連続気泡多孔質体中に界面活性剤を含有させる、界面活性剤の添加工程。
【0019】
一実施形態では、前記粉体を構成する樹脂組成物がポリ乳酸系樹脂を主成分とするものである。
一実施形態では、前記粉砕片を、融着により相互に接合する。
一実施形態では、前記融着を、加熱により行う。
一実施形態では、前記粉体のかさ密度が0.001g/cm以上0.1g/cm以下である。
一実施形態では、前記粉体の平均径が100μm以上2000μm以下である。
一実施形態では、前記発泡体の作製工程後、前記粉体の作製工程前に、前記発泡体を加水分解処理する。
一実施形態では、前記切花延命剤が、pH調整剤、殺菌剤または抗菌剤、糖類、無機養分、植物生長調節剤、エチレン阻害剤よりなる群から選択される少なくとも1種である。
【0020】
また、本発明は、前記のような本発明の連続気泡多孔質体、または、本発明の方法により製造される連続気泡多孔質体からなる吸水材料、特にフラワーアレンジメント用台座を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の連続気泡多孔質体は、発泡体を粉砕した粉体を成形するという簡便な方法により得られる。本発明の連続気泡多孔質体は、樹脂組成物からなる発泡体を粉砕してなる粉体の粉砕片が相互に接合してなる細孔壁が、多孔質体の連続気泡構造を形成しており、また、全体にわたり均一な連続気泡構造を有しているため、優れた吸水性を示す。また、本発明の連続気泡多孔質体は、圧縮変形に対して比較的低い応力を示し、かつ圧縮に際して比較的低い回復率を示す。
さらに、本発明の連続気泡多孔質体は、切花延命剤を含有することにより、装飾した切り花の日持ち性に優れる。これらにより、本発明の連続気泡多孔質体は、フラワーアレンジメント用台座として、非常に好適に用いられる。
しかも、本発明の連続気泡多孔質体は、生分解性を示すポリ乳酸系樹脂を主成分とする樹脂組成物からなる場合、環境中で分解されるため、使用後の廃棄処理などが容易である。
【0022】
本発明の連続気泡多孔質体は、界面活性剤を含ませることにより、より高い吸水性を示し、フラワーアレンジメント用台座として好ましく使用できる。
【0023】
本発明の連続気泡多孔質体の製造方法によれば、大型であっても、粉体の粉砕片相互の融着状態にむらのない、ポリ乳酸系樹脂等の粉体からなる連続気泡多孔質体が、容易に、かつ高い生産効率で得られる。本発明の連続気泡多孔質体の製造方法によれば、より高い吸水性を示し、装飾した切り花の日持ち性に優れるフラワーアレンジメント用台座に好適な連続気泡多孔質体を簡便に得ることができる。
【0024】
本発明の吸水材料は、連続気泡構造を有し、吸水性に優れており、さらに切り花の日持ち性に優れ、フラワーアレンジメント用台座として好ましく使用できる。更に、本発明の吸水材料は、生分解性を示すポリ乳酸系樹脂を主成分とする樹脂組成物からなる場合、環境中で分解されるため、使用後の廃棄処理などが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】ポリ乳酸系樹脂発泡体を粉砕した粉体を成形して得られた連続気泡多孔質体の断面の顕微鏡写真である。
【図2】ポリ乳酸系樹脂発泡体を粉砕して得られた粉体の顕微鏡写真である。
【図3】粉砕前のポリ乳酸系樹脂発泡体(粒子)の断面の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の連続気泡多孔質体は、樹脂組成物の発泡体(図3参照。)を粉砕した粉体の粉砕片(図2参照。)が相互に接合してなる細孔壁が、連続気泡構造を形成している(例えば、図1参照。)。
【0027】
本発明で好適に用いられる粉体を構成する樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、セルロース及びその誘導体、芳香族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリエステル系樹脂が挙げられる。
【0028】
これらの内、熱可塑性を示し、かつ、加工性が比較的良好であるという理由から、脂肪族ポリエステル系樹脂であることが好ましい。さらに、脂肪族ポリエステル系樹脂は、良好な生分解性を示す傾向にあるため、フラワーアレンジメント用台座等の農業園芸資材に使用した後の廃棄処理にする際、特段の処理を必要としないため、好適に用いることができる。
【0029】
本発明における脂肪族ポリエステル系樹脂とは、脂肪族ポリエステルを50重量%以上含有するものをいい、例えば、ポリ乳酸を主たる成分とするポリ乳酸系樹脂、ポリ3−(ヒドロキシブチレート)、ポリ3−(ヒドロキシブチレート−コ−バリレート)、ポリ3−(ヒドロキシブチレート−コ−ヘキサノエート)等を代表とするヒドロキシ酸重縮合物;ポリカプロラクトン等のラクトンの開環重合物;ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)等の脂肪族多価アルコールと脂肪族カルボン酸との重縮合物などがあげられる。これらは、単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0030】
これらの中でも、本発明の効果を得るには、脂肪族ポリエステル系樹脂として、ポリ乳酸系樹脂あるいはヒドロキシ酸重縮合物が好ましく、特にポリ乳酸系樹脂が、汎用的であり、良好な発泡性やより良好な生分解性を示すため、好ましい。
【0031】
本発明におけるポリ乳酸系樹脂とは、ポリ乳酸を50重量%以上含むものをいう。
【0032】
本発明におけるポリ乳酸系樹脂として、乳酸成分の異性体比率が5%以上、好ましくは8%以上であるポリ乳酸を主成分としたものであることが好ましい。異性体比率が当該範囲であれば、ポリ乳酸系樹脂は非晶性であるため、発泡性、成形性の点から低密度の発泡体を得やすいため、好ましい。
【0033】
本発明で用いられるポリ乳酸系樹脂は特に限定されるものではなく、商業的に入手可能なポリ乳酸をそのまま用いることも可能であるが、より密度の低い(発泡倍率の高い)発泡体を得たい場合には架橋剤を用いて溶融粘度を高めたものを用いてもよく、特にイソシアネート化合物はポリ乳酸の溶融粘度を効率的に向上させることができるため、架橋剤として好ましい。
前記ポリイソシアネート化合物としては、芳香族、脂肪族系のポリイソシアネートがある。例えば、芳香族ポリイソシアネートとしては、トリレン、ジフェニルメタン、ナフチレン、トリフェニルメタンを骨格とするポリイソシアネート化合物がある。また、脂環族ポリイソシアネートとしては、イソホロン、水素化ジフェニルメタンを骨格とするポリイソシアネート化合物がある。また、脂肪族ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレン、リジンを骨格とするポリイソシアネート化合物がある。これらはいずれも使用可能であるが、汎用性、ハンドリング性等から、トリレン、ジフェニルメタン系のポリイソシアネート類が好ましく、特に好ましくはジフェニルメタン系ポリイソシアネートが使用される。
【0034】
また、本発明において、基材樹脂としてポリ乳酸系樹脂を主成分とする樹脂組成物を用いる場合、前記ポリ乳酸系樹脂以外に、生分解性樹脂を混合して使用することもできる。前記生分解性樹脂としては、例えば、前述のポリ3−(ヒドロキシブチレート)、ポリ3−(ヒドロキシブチレート−コ−バリレート)、ポリ3−(ヒドロキシブチレート−コ−ヘキサノエート)等を代表とするヒドロキシ酸重縮合物;ポリカプロラクトン等のラクトンの開環重合物;ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)等、主成分として脂肪族多価アルコールと脂肪族多価カルボン酸との重縮合物からなる樹脂;などの脂肪族ポリエステル系樹脂の他、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドンなどの合成高分子、ゼラチン、コラーゲン、ゼイン、フィブロインなどのタンパク質、セルロース、アセチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、キチン、キトサンなどのセルロース誘導体などが挙げられる。これらは、ポリ乳酸系樹脂に対して、単独で含まれてもよいし、2種以上を組み合わせて含まれてもよい。
【0035】
更に、本発明で用いられるポリ乳酸系樹脂を主成分とする樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、生分解性樹脂以外の樹脂を、10重量%未満含んでいてもよい。その具体例として、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂が挙げられる。これらは、ポリ乳酸系樹脂に対して、単独で含まれてもよいし、2種以上を組み合わせて含まれてもよい。
【0036】
本発明におけるポリ乳酸系樹脂のメルトフローレートに特段の制限はないが、発泡体を構成するポリ乳酸系樹脂のメルトフローレート(以下、「MFR」と略す。)を0.001〜10g/10分の範囲としておくことにより、容易に低密度のものが得られる傾向にある。
なお、ポリ乳酸系樹脂のMFRは、JIS K7210に従い、190℃、2.16kgの条件にて測定した値である。
【0037】
本発明に使用する粉体は、前記ポリ乳酸系樹脂を主成分とする樹脂組成物の発泡体の粉砕片からなり、前記発泡体を粉砕加工することにより得ることができる。発泡体の粉砕加工は、公知の技術を用いて容易に行うことができる。好ましい具体例として、ジェットミル、カッターミル、ボールミル、スパイラルミル、ハンマーミル、オシレーター等の粉砕機を用いる方法が挙げられる。またこの際、粉砕機を通過後の処理物をふるいにかけ、十分に微細化された粉体のみを選別する方法を併用してもよい。また、粉砕時の基材樹脂の溶融を防止する目的で、発泡体や粉砕機を冷却する方法も好ましく用いられる。
【0038】
前記発泡体を粉砕した粉体の粉砕片は、元の発泡体のセル壁に由来する薄片状の部分を含む微細構造を有している(例えば、図2参照。)。また、この粉体は、低いかさ密度を有する。これにより、連続気泡多孔質体が軽量となるのみならず、内部の空洞比率を大きくとることができるようになるため、体積当たりの吸水量を大幅に高めることができる。
【0039】
前述の微細構造を有する粉体とするため、粉砕前の発泡体(例えば、図3参照)の平均気泡径を、100μm以上1000μm、更には150μm以上700μm以下にしておくことが好ましい。前記発泡体の平均気泡径が100μm未満であると、粉体に独立気泡が含まれ、吸水性が低下する傾向がある。また、1000μmを超えると、粉体のかさ密度が大きくなる傾向がある。
【0040】
前記粉体の平均径は、得ようとする多孔質体の性状によって異なるが、100μm以上2000μm以下であることが好ましい。粉体の平均径が100μm未満であると、粉体のかさ密度が大きくなる傾向がある。また、粉体の平均径が2000μmを超えると、粉体に独立気泡が含まれ、吸水性が低下する傾向がある。
なお、本発明でいう平均径とは、JIS K0069に規定された乾式ふるい分け試験方法で求めた乾式ふるい分け粒子径の質量基準の粒子径分布において、積算百分率が50%となる径をいう。具体的には、JIS Z8801−1に規定された標準ふるいを用いた上記試験で得られた、各ふるいの目開きに対する積算百分率(%)をプロットし、各点を直線でつないだ図において、積算百分率が50%となる目開きの値をもって平均径とする。
【0041】
前記粉体のかさ密度は、粉砕加工に供する発泡体の密度および、粉体の形状に依存する傾向があり、一般には発泡体の見かけ密度が小さいほど、また粉砕片のアスペクト比が大きいほど小さくなる傾向がある。
【0042】
前記粉体のかさ密度は、0.001g/cm以上0.1g/cm以下であることが好ましく、より好ましくは0.002g/cm以上0.05g/cm以下である。
なお、粉体のかさ密度は、JIS K6911に準拠して測定されるものであり、下式(1)に基づいて算出できる。
粉体のかさ密度(g/cm)=〔試料を入れたメスシリンダの質量(g)−メスシリンダの質量(g)〕/〔メスシリンダの容量(cm)〕…(1)
【0043】
本発明で用いられる粉体は、硬さを調節する目的で、加水分解処理を施されているものであっても良い。特に、本発明で得られる連続気泡多孔質体をフラワーアレンジメント用台座や植物の培地として用いる場合、加水分解処理により脆性が発現し、連続気泡多孔質体の硬さをこれら用途に好適な程度に調節することができる。
【0044】
加水分解処理を施された粉体を用いる場合、加水分解処理は、前記の粉砕加工に先立って行われることが好ましい。また、好ましい加水分解処理条件の例としては、高温高湿度下(具体的には40℃以上140℃以下、好ましくは60℃以上100℃以下、かつ、相対湿度60%RH以上、より好ましくは80%RH以上)、時間は、処理前発泡体を構成する基材樹脂の種類にもよるが、一般に3時間以上48時間以下である。また、このときに加水分解時間を短縮する目的で、微量のアルカリ成分を含んだアルカリ蒸気により加水分解処理をしてもよい。
【0045】
前記加水分解処理を行う具体的な手段についても特段の限定はないが、温調および水蒸気またはアルカリ蒸気によりチャンバー内を所定の相対湿度に保つことができる調湿機能を有するバッチ式の加熱処理炉を使用する方法が挙げられる。
【0046】
本発明の連続気泡多孔質体の見かけ密度は、軽量かつ吸水量に優れ、また、適度な機械的強度とすることができるという点から0.01g/cm以上0.2g/cm以下であることが好ましく、更には0.02g/cm以上0.1g/cm以下であることが好ましい。
なお、連続気泡多孔質体の見かけ密度は、多孔質体から5cm×5cm×5cmの立方体を切り出し、該立方体の重量を測定し、下式(2)から算出される値である。
見かけ密度(g/cm)=[立方体の重量(g)]/[125(cm)]…(2)
【0047】
また、本発明の連続気泡多孔質体は、圧縮変形に際して比較的低い応力を示す。具体的には、本発明の連続気泡多孔質体の10%圧縮応力は、0.02MPa以上0.3MPa以下、好ましくは0.03MPa以上0.25MPa以下である。
なお、前記10%圧縮応力は、JIS K7220に準拠して測定を行う。
【0048】
また、本発明の連続気泡多孔質体は、圧縮に際して、比較的低い回復率を示す。具体的には、本発明の連続気泡多孔質体は、10%圧縮後、回復した際に観察される回復率が95%以下である。
なお、前記回復率とは、常温下、プレスにより荷重をかけて多孔質体(縦4cm×横4cm×厚さ2.5cm)を10%(元の厚みの90%まで)圧縮した状態で1分間保持し、荷重を除いた後、常温に静置して1日経過後の多孔質体の厚み(即ち、回復後の厚み)から、下式(3)に従って算出される値である。
回復率(%)=[回復後の厚み(mm)/元の厚み(mm)]×100…(3)
【0049】
本発明においては、殊に、連続気泡多孔質体をフラワーアレンジメント用台座の用途にて用いる際は、切花延命剤を含んでなることにより、装飾した切り花の日持ち日数を増大させることができる。
【0050】
本発明で用いられる切花延命剤としては、例えば、pH調整剤、殺菌剤または抗菌剤、糖類、無機養分、植物生長調節剤、エチレン阻害剤、等を含むものが好ましい。
これに対して、特許文献5のように、フェノールフォルムアルデヒド樹脂等を用いて、発泡と硬化反応が同時に起こしながら、連続気泡フォーム体を得る方法では、発泡や硬化反応を阻害させるような化合物は用いることが困難であることから、用いることが可能な切り花延命剤に制限がある。
【0051】
本発明で用いられる具体的な切花延命剤としてのpH調整剤は、例えば、蟻酸、酢酸、酒石酸、アスコルビン酸、クエン酸、コハク酸、乳酸、リンゴ酸、2−オキソグルタル酸、5−アミノレブリン酸等の有機酸やそれらの有機酸塩類、リン酸等の無機酸やそれらの無機酸塩が挙げられ、これらを単体または2種類以上を混合して用いることが好ましい。
【0052】
これらpH調整剤の含有量は、前記粉体100重量部に対して0.01重量部以上10重量部以下であることが好ましく、0.01重量部以上5重量部以下がより好ましく、0.01重量部以上3重量部以下であることがさらに好ましい。該当範囲内にあると、連続気泡多孔質体中に吸水された水のpH値が7以下となるため、切花の延命効果を増加させることができる。
【0053】
本発明で用いられる具体的な切花延命剤としての殺菌剤または抗菌剤は、例えば、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、アルミン酸ナトリウム、乳酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム等のアルミニウム化合物;ジメチルアミノエチルメタクリレートの中和塩、ポリアクリルアミドのマンニッヒ反応物、ポリアクリルアミドのホフマン転移反応物、アルキルアミン・エピクロルヒドリン縮合物、ポリビニルアミン、キトサン等の高分子体;硝酸銀、酢酸銀、サリチル酸銀、メタンスルホン酸銀、硫酸銀、グルコン酸銀、クエン酸銀、乳酸銀等の銀化合物;硫酸銅、塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅、リン酸銅、ピロリン酸銅、酢酸銅、クエン酸銅、グルコン酸銅、酒石酸銅、乳酸銅、コハク酸銅、スルファミン酸銅、ホウフッ化銅、ギ酸銅、ケイフッ化銅等の銅化合物;次亜塩素酸ソーダ、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム(DCIA)、8−ヒドロキシキノリン硫酸塩(8−HQS)、8−ヒドロキシキノリンクエン酸塩(8−HQC)、エタノール、イソプロパノール、アンモニウムミョウバン、パラヒドロキシ安息香酸メチル(又はエチル、プロピル、ブチル)、チアゾリン系抗菌剤、イソチアゾリン系抗菌剤;アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルジメチルアンモニウムクロライド、ベンザルコニウムクロライド、ポリオキシエチレンモノメチルアンモニウムクロライド等の陽イオン性界面活性剤等が挙げられ、これらを単体または2種類以上を混合して用いることが好ましい。
なお、陽イオン性界面活性剤については、後述する連続気泡多孔質体の吸水性を発現させる効果も有する。
【0054】
これら殺菌剤または抗菌剤の含有量は、前記粉体100重量部に対して0.0001重量部以上10重量部以下であることが好ましく、0.0005重量部以上1重量部以下がより好ましく、0.001重量部以上1重量部以下であることがさらに好ましい。該当範囲内にあると、連続気泡多孔質体内に吸水させた水に菌が繁殖するのを効果的に抑制できるため、切花の延命効果を増加させることができる。
【0055】
本発明で用いられる具体的な切花延命剤としての糖類は、切花の栄養源又はエネルギー源となる糖類であれば限定はされないが、例えば、グルコース、キシロース、アラビノース、リボース、ガラクトース、フルクトース、マンノース、ラムノース、イノシトール、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、グリセロール、エリスリトール、グルコサミン、ガラクトサミン等の単糖類;スクロース、トレハロース、マルトース、セロビオース、パラチノース、ラクトース等の二糖類;シクロデキストリン、キシロオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イヌロオリゴ糖、乳酸オリゴ糖等のオリゴ糖類;ラフィノース、アガロース、アミロース、グリコーゲン、セルロース、デキストリン、イヌリン、マンナン、キチン等の多糖類が挙げられ、これらを単体または2種類以上を混合して用いることが好ましい。
【0056】
これら糖類の含量量は、前記粉体100重量部に対して0.5重量部以上50重量部以下であることが好ましく、0.5重量部以上30重量部以下がより好ましく、0.5重量部以上20重量部以下であることがさらに好ましい。該当範囲内にあると、切花への薬害を起こさせずエネルギー源を与えることが出来るため、切花の延命効果を増加させることができる。
【0057】
本発明で用いられる具体的な切花延命剤としての無機養分は、例えば、塩化カルシウム、硫酸アンモニウム、りん酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸カリウム、塩化カリウム等が挙げられ、これらを単体または2種類以上を混合して用いることが好ましい。
【0058】
これら無機養分の含量量は、前記粉体100重量部に対して0.0001重量部以上10重量部以下であることが好ましく、0.0001重量部以上5重量部以下がより好ましく、0.0001重量部以上3重量部以下であることがさらに好ましい。該当範囲内にあると、切花に対して無機養分を適量補給できるため、無機養分不足による切花への影響を阻害できることから、切花の延命効果を増加できる。
【0059】
本発明で用いられる具体的な切花延命剤としての植物生長調節剤は、例えば、インドール−3−酢酸(IAA)、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸、2,6−ジクロロ安息香酸、ナフタレン酢酸等の天然または合成オーキシン類;ゼアチン、カイネチン、4−ベンジルアミノベンズイミダゾール、ベンジルアデニン等の天然又は合成サイトカイニン類;ジベレリン類、アブシジン酸類、ブラシノライド、カスタステロン等のブラシノステロイド類等が挙げられ、これらを単体または2種類以上を混合して用いることが好ましい。
【0060】
これら植物生長調節剤の含有量は、前記粉体100重量部に対して0.0001重量部以上1重量部以下であることが好ましく、0.0001重量部以上0.5重量部以下がより好ましく、0.0001重量部以上0.1重量部以下であることがさらに好ましい。該当範囲内にあると、切花の生長を効果的に調整できるため、切花の延命効果が増加する傾向にある。
【0061】
本発明で用いられる具体的な切花延命剤としてのエチレン阻害剤は、エチレンの発生または作用を阻害する働きを持ち、切花の老化を防止するものであれば限定はされないが、例えば、アミノエトキシビニルグリシン(AVG)、アミノオキシ酢酸ヘミ塩酸塩(AOA)、イソプロピリジン−アミノオキシ酢酸−2−メトキシ−2−オキソエチルエステル(PACME)、チオ硫酸銀又はチオスルファト銀錯塩(STS)、アミノイソ酪酸(AIB)、1,1−ジメチル−4−フェニルスルホニルセミカルバジド(DPSS)、シスプロペニルホスホン酸(PPOH)、四ホウ酸ナトリウム(STB)、アロコロナミン酸、アミノトリアゾール、フェナントロリン、ジアゾシクロペンタジエン(DACP)、アリルイソチアシアネート(AITC)、2,5−ノルボルナジエン(NBD)、1−メチルシクロプロペン(1−MCP)、エチオニン等が挙げられ、これらを単体または2種類以上を混合して用いることが好ましい。
【0062】
これらエチレン阻害剤は前記粉体100重量部に対して、0.0001重量部以上1重量部以下であることが好ましく、0.0001重量部以上0.5重量部以下がより好ましく、0.0001重量部以上0.1重量部以下であることがさらに好ましい。該当範囲内にあると、切花のエチレンへの影響を阻害できるため、切花の延命効果を増加させることができる。
【0063】
本発明において、切花延命剤を前記粉体に添加する方法に特段の限定はないが、好ましい具体例としては、例えば、
前記発泡体および切花延命剤を粉砕工程に供給して発泡体を粉砕すると同時に切花延命剤を混合する方法、
前記粉体と粉末状にした切花延命剤をブレンドする方法、
切花延命剤を水に溶解させた水溶液を前記粉体に混合してブレンドする方法、
これらを組み合わせた方法などが挙げられる。
【0064】
本発明においては、殊に、連続気泡多孔質体をフラワーアレンジメント用台座といった吸水性が要求される用途に用いる際は、界面活性剤を含有させることにより、より良好な吸水性を発現させることができる。
【0065】
本発明の連続気泡多孔質体に含まれる界面活性剤の含有量は、粉体100重量部に対して0.1重量部以上30重量部以下であることが好ましく、0.1重量部以上10重量部以下がより好ましく、0.1重量部以上5重量部以下がさらに好ましい。該当範囲内であれば、吸水量および吸水速度を大幅に高めることができる。界面活性剤の含有量が0.1重量部未満では吸水量および吸水速度の向上効果が得られない傾向があり、また、30重量部を超える場合は、吸水させた後の多孔質体の強度が不十分になる傾向がある。
【0066】
本発明で用いられる界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤いずれの種類も好適に用いることができるが、安全性が比較的高く、安価である点から、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が好ましい。
【0067】
本発明で好ましく用いられる界面活性剤の具体例としては、例えば、脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸カリウム、高級アルコール硫酸ナトリウム、高級アルコール硫酸カリウム、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、アルキルエーテル硫酸エステルカリウム、α−スルホ脂肪酸エステル、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸カリウム、モノアルキル硫酸ナトリウム、モノアルキル硫酸カリウム、モノアルキルリン酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライドなどのカチオン性界面活性剤;アルキルカルボキシベタインなどの両性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、アルキルグルコシド、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミド、アルキルモノグリセリルエーテルなどのノニオン性界面活性剤;などが挙げられる。
これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
界面活性剤の添加方法に特段の限定はないが、好ましい方法の具体例として、連続気泡多孔質体を得る前に界面活性剤を前記粉体と混合した後、粉体を互いに結着させる方法、粉体を構成する基材樹脂中に予め界面活性剤を練りこんでおく方法などが挙げられる。
【0069】
本発明の連続気泡多孔質体は、発泡体を粉砕した粉体の粉砕片を互いに結着させることによって得ることができる。ここでいう粉砕片の結着とは、前記粉砕片同士が一部で接合していることをいう。前記粉砕片同士を互いに結着させる方法に特段の制限はないが、好ましい例として、前記粉体の粉砕片同士を熱により融着させる方法が挙げられる。
【0070】
本発明の連続気泡多孔質体の具体的な製造方法は、
(1)樹脂組成物を発泡させて発泡体を得る、発泡体の作製工程、
(2)前記発泡体を粉砕して粉体を得る、粉体の作製工程、
(3)前記粉体を所定の形状に成形し、前記発泡体の粉砕片を相互に接合することにより細孔壁を形成して、連続気泡構造を有する多孔質体を得る、多孔質体の作製工程、
(4)前記粉体の作製工程または前記多孔質体の作製工程において、切花延命剤を添加することにより、前記連続気泡多孔質体中に切花延命剤を含有させる、切花延命剤の添加工程、
(5)前記発泡体の作製工程または多孔質体の作製工程において、粉体100重量部に対して0.1重量部以上30重量部以下の界面活性剤を添加することにより、前記連続気泡多孔質体中に界面活性剤を含有させる、界面活性剤の添加工程、
からなる。
【0071】
前記工程(1)では、前記のような樹脂組成物を用いて、発泡体を作製する。該発泡体の作製方法としては、公知の方法がいずれも好ましく用いられる。例えば、特開2005−162804号公報に記載の押出発泡法、特開2004−149649号公報に記載のビーズ法等が例示できる。
【0072】
次いで、工程(2)において、前記発泡体を粉砕して粉体を作製する。粉砕の方法は既述の通りである。
【0073】
更に、工程(3)により、前記発泡体の粉砕片を相互に接合して細孔壁を形成して連続気泡構造を有する多孔質体を作製する。前記接合の方法は、特に限定はないが、融着による接合が好ましく、加熱による融着がより好ましい。
【0074】
また、工程(4)により、前記連続気泡多孔質体中に切花延命剤を含有させる。添加の方法は、既述のとおりである。
【0075】
また、工程(5)により、前記連続気泡多孔質体中に界面活性剤を含有させる。添加の方法は、既述のとおりである。
【0076】
加熱により前記発泡体の粉砕片を相互に融着させて多孔質体を得る方法の具体例としては、粉体を型に入れ、粉体が軟化して融着可能であり、かつ溶融しない温度に加熱し、該温度において所定時間処理する方法、粉体が軟化して融着可能であり、かつ溶融しない温度に調節された熱盤の上に徐々に粉体を堆積させながら融着させる方法などが挙げられる。
【0077】
このときの温度は、粉体を構成する基材樹脂の種類、および得ようとする多孔質体の形状や大きさ等により異なるが、後述する、水蒸気を含む雰囲気中で加熱を行う場合以外は、80℃以上200℃以下であることが好ましい。温度が80℃未満であると融着が十分に起こらず、十分に固化した連続気泡多孔質体が得られない傾向がある。また、温度が200℃を超える場合、多孔質体の密度が高くなりやすく、吸水性に劣る連続気泡多孔質体となりやすい傾向がある。
【0078】
また、加熱処理時間は粉体を構成する基材樹脂の種類、および得ようとする連続気泡多孔質体の形状や大きさ、更には処理温度、処理方法等によっても異なるが、水蒸気を含む雰囲気中で加熱を行う場合以外は、10分以上24時間以下であることが好ましく、10分以上10時間以下がより好ましい。加熱処理時間が10分より短い場合、粉体同士の融着が十分進まず、十分に固化した連続気泡多孔質体が得られない場合がある。例えば、フラワーアレンジメント用台座として一般的なサイズである11cm×23cm×8cmのブロック状の連続気泡多孔質体などの比較的大型の多孔質体を成形する場合には、加熱処理時間がより長くなる傾向がある。一方で、加熱処理時間が24時間を超える場合、得られる連続気泡多孔体が時間と共に収縮し、密度が高くなる傾向がある。
【0079】
更に、加熱により前記発泡体の粉砕片を相互に融着させる方法において、加熱を、水蒸気を含み、温度60〜140℃、相対湿度20%以上である雰囲気中で行うことが好ましい。この製造方法によれば、前記粉砕片相互の融着が効率的に進むようになる。このような効果が発現する理由については必ずしも明らかではないが、水蒸気が比較的大きな熱容量を有しているために粉体へ熱を伝える効率が高まること、また、ポリ乳酸系樹脂が比較的高い水蒸気透過性を有しているために、水蒸気が粉体の間隙に比較的容易に浸透し、内部を効率的に加熱できることが影響しているものと考えられる。
【0080】
前記水蒸気を含む雰囲気の温度の下限は60℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましい。水蒸気を含む雰囲気の温度の下限が60℃未満である場合、粉体相互の融着に必要な処理時間が長くなる傾向にある他、融着が十分進まなくなる場合もある。
【0081】
また、水蒸気を含む雰囲気の温度の上限は140℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましい。水蒸気を含む雰囲気の温度の上限が140℃を超える場合、融着に伴う収縮度合いが大きくなりやすい傾向にある。
【0082】
前記水蒸気を含む雰囲気の例としては、常圧下において所定の温度とされた、水蒸気と空気の混合物からなる雰囲気が、最も好ましい例として挙げられる。また、常圧下において所定の温度とされた、水蒸気のみからなる雰囲気も、本発明では好ましく用いることができる。更に、雰囲気温度を調節する目的で、加圧下、若しくは減圧下において所定の温度とされた水蒸気と空気の混合物からなる、または、水蒸気のみからなる雰囲気も好ましく用いることができる。加圧雰囲気を用いる場合、その圧力は必要な温度及び水蒸気/空気の比に応じて適宜設定すればよいが、通常、絶対圧力で常圧〜0.3MPaの範囲にあり、減圧雰囲気を用いる場合、その圧力は通常絶対圧力で0.04MPa〜常圧の範囲にある。
【0083】
前記水蒸気を含む雰囲気は、粉体の融着を促進する等の目的で、水蒸気、空気以外の蒸気成分を少量含んでいても良く、その具体例として、メタノール、エタノール等の低級アルコール;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル等の低級エーテル;アセトン、メチルエチルケトン等の低級ケトンが挙げられる。通常、これら水蒸気、空気以外の蒸気成分の組成比は、重量比で10%以下である。
【0084】
前記水蒸気を含む雰囲気を達成するための具体的方法について特段の制限はないが、粉体の成形を行う観点から好ましい具体例として、温調および調湿機能を有するバッチ式の加熱処理炉を使用する方法が挙げられる。また、好ましい別の具体例として、粉体を輸送する機能を有する連続式炉の中に、水蒸気もしくは水蒸気と空気の混合物を吹き出して、炉内を所定の雰囲気とする方法が挙げられる。この場合、測定された炉内の温度に応じて前記混合物の吹き出し量等を調節して炉内の雰囲気の状態を維持する方法も好ましく用いられる。
【0085】
以上述べた本発明で用いられる、水蒸気を含む雰囲気のうち、雰囲気の状態を一定に保つのが容易な点から、雰囲気は、実質的に常圧であり、かつ相対湿度60〜100%であることが特に好ましい。雰囲気の相対湿度が60%未満であると、発泡体を粉砕してなる粉体の粉砕片相互の融着に必要な処理時間が長くなる傾向にある。
【0086】
本発明において加熱処理を行う際に必要な水蒸気を含む雰囲気の条件については前記したとおりであるが、加熱処理を行う時間については、用いる基材の種類、雰囲気の条件、得ようとする連続気泡多孔質体の大きさにより異なり、適宜設定すればよいが、概ね2分〜3時間程度である。例えば、フラワーアレンジメント用台座として一般的なサイズである11cm×23cm×8cmのブロック状の連続気泡多孔質体を成形するのに必要な処理時間は、概ね2〜40分の範囲内にある。
【0087】
具体的に好ましく用いられる連続気泡多孔質体の成形方法としては、必要なサイズを有する型内に、粉体、または粉体と後述する任意成分との混合物を入れ、型に入った状態で加熱処理する方法が挙げられる。この際、型の形状に特段の制限はないが、水蒸気が効率的に粉体間に浸透していきやすいことから、少なくとも一部に水蒸気が浸透できる開口部分を有していることが好ましい。具体的には、天面が開口した型、若しくは、水蒸気が通過するに十分な微細な孔が多数開けられた型を用いる方法が挙げられる。
【0088】
本発明において、粉体を型に充填する方法、および充填状態に特段の制限はないが、成形体とした際、全体に均一な密度となるよう、粉体の充填密度がなるべく均一となっていることが好ましい。また、前記の目的から、粉体の一部または全部を型に充填した後に、型に軽く衝撃を加える方法、また、粉体の一部または全部が充填された型を加振することによって充填密度を均一化する方法は、本発明において好ましく用いられる。
【0089】
また、具体的に好ましく用いられる別の連続気泡多孔質体の成形方法として、粉体、または粉体と後述する任意成分との混合物を、型内もしくは連続的にわずかに圧縮する等の方法で予備的に賦形することにより予備成形体を得、該予備成形体を加熱成形する方法が挙げられる。
【0090】
以上、本発明の製造方法により、連続気泡多孔質体を得ることができ、ブロック状、シート状など用途に応じて適した形状とすることができる。
【0091】
本発明における連続気泡多孔質体は、本発明の効果を阻害しない範囲の任意成分として、各種の添加剤を含んでいてもよい。添加剤として、具体的には、顔料;染料;タルク、炭酸カルシウム、ホウ砂、ほう酸亜鉛、水酸化アルミニウム、ステアリン酸カルシウム等の無機物;難燃剤;帯電防止剤;耐候剤;充填剤;防曇剤;潤滑剤などが挙げられる。これらの添加剤は、粉体を加熱成形する際に混合したり、粉体を構成する基材樹脂などに予め混合しておくことで添加することができる。
【0092】
本発明の連続気泡多孔質体の連続気泡率は、60%以上100%未満がより好ましく、90%以上100%未満がさらに好ましい。連続気泡率が60%未満の場合、連続気泡多孔質体の特徴である吸水性が十分でなくなる傾向がある。
また、本発明の連続気泡多孔質体のおける連続気泡は、全体にわたり均一であることが好ましい。なお、連続気泡が全体にわたり均一であることは、成形体の表層部と中心部から試料片を切り出し、それぞれの連続気泡率測定することにより評価することができる。
本発明の連続気泡多孔質体の連続気泡率は、表層部、中心部とも60%以上100%未満の範囲が好ましい。
【0093】
本発明の連続気泡多孔質体の吸水性(多孔質体1gあたりの吸水量)は5〜100g/gが好ましく、10〜100g/gがより好ましい。吸水性が5g/g未満の場合、フラワーアレンジメント用台座や植物の培地としての性能が不十分となる傾向がある。
【0094】
本発明の連続気泡多孔質体は、低密度で、全体にわたり均一な連続気泡を有するものとすることが容易であり、その結果、良好な液体吸収性を示しやすい構造となる(例えば、図1参照。)。更に、前記構造を有する連続気泡多孔質体に特定量の界面活性剤を含有させることによって、きわめて優れた吸水性を発現させることが可能となる。したがって本発明の連続気泡多孔質体は、吸水材料として好適に使用することができる。
【0095】
前記吸水材料とは、常温常圧下において水と接触することで、自然に水が内部に浸透すると共に、水が浸透した状態でそれ自身が水を保持する材料をいう。本発明の吸水材料は、いわゆる毛細管現象などの物理現象に基づいた吸水性を示すことで水の保持力が適度に弱く、例えば植物の根が水を吸収するのに対応して水を放出することができるという特徴を有しているものをいう。具体的には、フラワーアレンジメント用台座、また植物の培地、土壌改良剤などが例示でき、これらに好適に用いられる。
【0096】
本発明の連続多孔質体は、さらに、切り花の日持ち性に優れる為、フラワーアレンジメント用台座として特に好適に用いられる。
【実施例】
【0097】
以下、本発明を具体的な実施例により詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0098】
各実施例、比較例で得られた多孔質体について、見かけ密度、10%圧縮応力、回復率、連続気泡率、吸水性、脆性評価、切り花日持ち性を以下の基準で評価した。
【0099】
(見かけ密度)
得られた多孔質体から5cm×5cm×5cmの立方体を切り出すと共に、その重量を測定し、見かけ密度を、下式(2)に従って算出した。
見かけ密度(g/cm)=[立方体の重量(g)]/[125(cm)]…(2)
【0100】
(10%圧縮応力)
JIS K7220に準拠して測定を行った。
【0101】
(回復率)
常温下、プレスにより荷重をかけて多孔質体(縦4cm×横4cm×厚さ2.5cm)を10%(元の厚みの90%まで)圧縮した状態で1分間保持し、荷重を除いた後、常温に静置して1日経過後の多孔質体の厚み(即ち、回復後の厚み)から、下式(3)に従って算出した。
回復率(%)=[回復後の厚み(mm)/元の厚み(mm)]×100…(3)
【0102】
(連続気泡率)
得られた連続気泡多孔質体の表層部と中心部を切り出した。なお、表層部とは、表面を含む1辺が1.5cmの立方体として切り出した時の立方体であり、中心部とは、連続気泡多孔質体の重心部を中心とする1辺が1.5cmの立方体として切り出した時の立方体である。
各立方体に関して、空気比較式比重計[東京サイエンス(株)製、1000型]を用い、ASTM D−2856に準じて測定した。連続気泡率は、下式(4)に従って算出した。
連続気泡率(%)={1−〔エアピクノメーターを用いて測定した発泡体体積(cm)/1(cm)〕}×100…(4)
表層部と中心部の連続気泡率が60%以上100%以下であるとき、連続気泡率が全体に渡って均一であるとした。
【0103】
(吸水性)
長さ11cm×幅23cm×高さ8cmのサイズで成形した連続気泡多孔質体の重量を測定した。次に、容器に入れた水道水の水面に多孔質体を静置し、多孔質体上面まで自然に吸水させた。そして、吸水後の多孔質体の重量を測り、吸水前後の重量差を吸水量として式(5)に従い、吸水性として算出した。
吸水性(g/g)=[吸水量(g)]/[浸漬前の直方体の重量(g)] …(5)
また、静置から多孔質体上面まで吸水するまでの時間を測定し、吸水時間とした。
ただし、静置しても自然に多孔質体上面まで吸水しない多孔質体は、多孔質体を水中に沈め、減圧乾燥機にて周囲を減圧下にすることにより、多孔質体内の空気を抜き出すことで強制的に吸水させた。
【0104】
(脆性評価)
得られた連続多孔質体に対して、テクスチャーアナライザーTA.XT.Plus[Stable Micro Systems社製]を用いて突き刺し試験を行い、多孔質体の脆性評価を行った。
得られた連続多孔質体から、1辺50mmの立方体状の測定用サンプルを切り出した。測定用サンプルに対して、直径4mmのSUS製円柱棒をプローブとして用い、突き刺し速度40mm/秒にて、深さ35mmまで突き刺した際の最大応力(MPa)を測定した。
この際の最大応力が0.6MPa以下である時、花卉類を多孔質体に差し込めるような、適度な脆性を有する多孔質体である。
【0105】
(切り花の日持ち性評価)
得られた連続気泡多孔質体に水道水を完全に吸水させ、アレンジした花の日持ち性を評価した。花はバラ、ガーベラ、アルストロメリアの切り花を、それぞれ3本ずつ用いた。各切り花は、できるだけ生長状態及び鮮度状態が同じものを選び、水中で茎を鋭利なハサミにより斜めに切断して、茎が連続気泡多孔質体の上面に対して、垂直に4cm入るようにアレンジした。評価環境条件は、温度25℃、湿度50%Rhとした。
切り花の日持ちの評価は、目視により行い、花弁の枯れ具合、ベントネック(花が垂れ下がる現象)の発生、茎葉の変色、枯れ具合等から、観賞に耐えられない程度になるまでの日数を、日持ち日数として評価した。
【0106】
(実施例1)
[発泡粒子の作製]
D体比率10%、メルトフローレート3.7g/10分の非晶性ポリ乳酸樹脂100重量部とポリイソシアネート化合物[日本ポリウレタン(株)製、MR−200]2.0重量部を、二軸押出機[東芝機械(株)製、TEM35B]を用いて、シリンダー温度185℃で溶融混練し、水中カッターを用いて約1mmφ(約1.5mg)のビーズ状のポリ乳酸系樹脂粒子を得た。
得られたポリ乳酸系樹脂粒子100重量部に対して、水100重量部、発泡剤として脱臭ブタン(ノルマルブタン/イソブタン重量比=7/3)12重量部、食塩10重量部、分散助剤としてポリオキシエチレンオレイルエーテル0.3重量部を、オートクレーブに仕込み、84℃で90分間保持した。十分に冷却した後、取出し、乾燥して、ポリ乳酸系樹脂発泡性粒子を得た。得られたポリ乳酸系樹脂発泡性粒子の発泡剤含浸率は5.5%であった。
得られたポリ乳酸系樹脂発泡性粒子を予備発泡機[ダイセン工業(株)製、BHP−300]に投入し、90℃の蒸気に40〜60秒間保持してポリ乳酸系樹脂発泡粒子を得た。得られたポリ乳酸系樹脂発泡粒子を風乾した後、ふるいを使用し融着粒子を分別した。分取されたポリ乳酸系樹脂発泡粒子のかさ密度は0.025g/cm、平均気泡径は400μmであった。
[発泡粒子の湿熱処理]
得られたポリ乳酸系発泡粒子を、温度80℃、相対湿度95%とした恒温恒湿機[いすず製作所製、プログラム温湿度調節器、HPAV−120−40型]中に20時間静置し、加水分解処理を行った。
[粉体の作製]
湿熱処理した発泡粒子を、オシュレーター[菊水製作所製OGシリーズ ]を用いて、粉砕した。得られた粉体のかさ密度は、0.04g/cmであった。
[連続気泡多孔質体の作製]
得られたポリ乳酸粉体100重量部に対して、切花へのエネルギー源として糖類であるD−グルコース[和光純薬(株)]10重量部を加え、よく混合した。
次に、界面活性剤としてアルカン硫酸ナトリウム[花王(株)製、ラテムル]および抗菌剤として硫酸アルミニウム[和光純薬(株)製]を、それぞれの濃度が2重量%、5重量%となるよう水溶液を作製した。そして、この水溶液を、ポリ乳酸粉末100重量部に対して10重量部となるよう、スプレーで噴霧し、よく混合した(この際、ポリ乳酸粉末100重量部に対して、界面活性剤は0.2重量部、抗菌剤は0.5重量部含まれる)。
得られた混合粉末を、型(長さ11cm×幅23cm×高さ8cm)に全て入れ、温度98℃および相対湿度100%Rhのスチーマ[(株)品川工業所製、トラックインスチーマー]内にて10分間加熱成形を行い、連続気泡多孔質体を得た。
得られた連続気泡多孔質体に対し、見かけ密度測定、10%圧縮応力測定、回復率測定、連続気泡率測定、吸水性試験、脆性評価、切り花の日持ち性評価を行った。その結果を、表1に示す。
【0107】
(実施例2)
[連続気泡多孔質体の作製]において、水溶液中に含まれる界面活性剤をポリエキシエチレンソルビタン酸モノラウレート[和光純薬(株)製、Tween20]7重量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、連続気泡多孔質体を得た。
得られた連続気泡多孔質体に対し、見かけ密度測定、10%圧縮応力測定、回復率測定、連続気泡率測定、吸水性試験、脆性評価、切り花の日持ち性評価を行った。その結果を、表1に示す。
【0108】
(実施例3)
[連続気泡多孔質体の作製]において、水溶液中に含まれる界面活性剤をアルカン硫酸ナトリウム2.5重量%およびポリエキシエチレンソルビタン酸モノラウレート2.5重量%の混合物に変更した以外は、実施例1と同様にして、連続気泡多孔質体を得た。
得られた連続気泡多孔質体に対し、見かけ密度測定、10%圧縮応力測定、回復率測定、連続気泡率測定、吸水性試験、脆性評価、切り花の日持ち性評価を行った。その結果を、表1に示す。
【0109】
(実施例4)
[連続気泡多孔質体の作製]において、水溶液中に植物生長調節剤としてジベレリン1重量%を追加した以外は、実施例3と同等にして、連続気泡多孔質体を得た。
得られた連続気泡多孔質体に対し、見かけ密度測定、10%圧縮応力測定、回復率測定、連続気泡率測定、吸水性試験、脆性評価、切り花の日持ち性評価を行った。その結果を、表1に示す。
【0110】
(実施例5)
[連続気泡多孔質体の作製]において、水溶液中にpH調整剤としてクエン酸2重量%を追加した以外は、実施例3と同等にして、連続気泡多孔質体を得た。
得られた連続気泡多孔質体に対し、見かけ密度測定、10%圧縮応力測定、回復率測定、連続気泡率測定、吸水性試験、脆性評価、切り花の日持ち性評価を行った。その結果を、表1に示す。
【0111】
(実施例6)
[連続気泡多孔質体の作製]において、水溶液中に含まれる界面活性剤をポリエキシエチレンソルビタン酸モノオレエート[Tween80、和光純薬(株)製]7重量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、連続気泡多孔質体を得た。
得られた連続気泡多孔質体に対し、見かけ密度測定、10%圧縮応力測定、回復率測定、連続気泡率測定、吸水性試験、脆性評価、切り花の日持ち性評価を行った。その結果を、表1に示す。
【0112】
(実施例7)
[連続気泡多孔質体の作製]において、グルコースの含有量を10重量部から5重量部に変更した以外は、実施例6と同様にして、連続気泡多孔質体を得た。
得られた連続気泡多孔質体に対し、見かけ密度測定、10%圧縮応力測定、回復率測定、連続気泡率測定、吸水性試験、脆性評価、切り花の日持ち性評価を行った。その結果を、表1に示す。
【0113】
(実施例8)
[連続気泡多孔質体の作製]において、水溶液中に含まれる硫酸アルミニウムの含有量を5重量%から10重量%に変更した以外は、実施例6と同様にして、連続気泡多孔質体を得た。
得られた連続気泡多孔質体に対し、見かけ密度測定、10%圧縮応力測定、回復率測定、連続気泡率測定、吸水性試験、脆性評価、切り花の日持ち性評価を行った。その結果を、表1に示す。
【0114】
(実施例9)
[連続気泡多孔質体の作製]において、糖質をグルコース10重量部からスクロース10重量部に変更した以外は、実施例6と同様にして、連続気泡多孔質体を得た。
得られた連続気泡多孔質体に対し、見かけ密度測定、10%圧縮応力測定、回復率測定、連続気泡率測定、吸水性試験、脆性評価、切り花の日持ち性評価を行った。その結果を、表1に示す。
【0115】
(比較例1)
[連続気泡多孔質体の作製]において、界面活性剤および切花延命剤を用いなかった以外は、実施例1と同様にして、連続気泡多孔質体を得た。
得られた連続気泡多孔質体に対し、見かけ密度測定、10%圧縮応力測定、回復率測定、連続気泡率測定、吸水性試験、脆性評価、切り花の日持ち性評価を行った。その結果を、表1に示す。
【0116】
(比較例2)
[連続気泡多孔質体の作製]において、ポリ乳酸粉末100重量部に対して、7重量%Tween80水溶液のみを10重量部となるようスプレーで噴霧して良く混合した(この際、ポリ乳酸粉末100重量部に対して、界面活性剤Tween80は0.7重量部含まれる)。
得られた混合粉末を、実施例1と同様にして、連続気泡多孔質体を得た。
得られた連続気泡多孔質体に対し、見かけ密度測定、10%圧縮応力測定、回復率測定、連続気泡率測定、吸水性試験、脆性評価、切り花の日持ち性評価を行った。その結果を、表1に示す。
【0117】
(比較例3)
[連続気泡多孔質体の作製]において、界面活性剤を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして連続気泡多孔質体を得た。
得られた連続気泡多孔質体に対し、見かけ密度測定、10%圧縮応力測定、回復率測定、連続気泡率測定、吸水性試験、脆性評価、切り花の日持ち性評価を行った。その結果を、表1に示す。
【0118】
(比較例4)
市販されているフラワーアレンジメント台座であるフェノール樹脂発泡成形体からなるOasis−delux(スミザーズオアシス社製)を用いた。
該発泡成形体に対し、見かけ密度測定、10%圧縮応力測定、回復率測定、連続気泡率測定、吸水性試験、脆性評価、切り花の日持ち性評価を行った。その結果を、表1に示す。
ただし、フェノール樹脂は、元来、生分解性を示さないものであり、環境中で分解され難く、使用後の廃棄処理などが容易ではない。
【0119】
【表1】

【0120】
表1に示した結果から、実施例で得られた界面活性剤および切花延命剤を含む連続気泡多孔質体は、高い吸水性、適度な脆性および優れた切り花の日持ち性を示していることが確認できる。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明の連続気泡多孔質体および吸水材料は、フラワーアレンジメント用台座として好ましく使用することができる。また、本発明の連続気泡多孔質体および吸水材料は、生分解性を示す樹脂組成物を主成分とすることから、使用後の廃棄処分などに際して特別な処理を必要とせず、後処理が容易である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂組成物の発泡体を粉砕してなる粉体の粉砕片が相互に接合してなる細孔壁が、連続気泡構造を形成している連続気泡多孔質体であって、
切花延命剤および、粉体100重量部に対して0.1重量部以上30重量部以下の界面活性剤を含有してなり、
見かけ密度が0.01g/cm以上0.2g/cm以下、かつ、10%圧縮応力が0.02MPa以上0.3MPa以下、圧縮回復率が95%以下であることを特徴とする、連続気泡多孔質体。
【請求項2】
前記粉体を構成する樹脂組成物が、ポリ乳酸系樹脂を主成分とするものであることを特徴とする、請求項1記載の連続気泡多孔質体。
【請求項3】
前記粉砕片が、融着により相互に接合してなることを特徴とする、請求項1または2に記載の連続気泡多孔質体。
【請求項4】
前記粉体のかさ密度が0.001g/cm以上0.1g/cm以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の連続気泡多孔質体。
【請求項5】
前記粉体の平均径が100μm以上2000μm以下であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の連続気泡多孔質体。
【請求項6】
前記樹脂組成物の発泡体が、加水分解処理されたものであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の連続気泡多孔質体。
【請求項7】
前記切花延命剤が、pH調整剤、殺菌剤または抗菌剤、糖類、無機養分、植物生長調節剤、エチレン阻害剤よりなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1〜6の何れか一項に記載の連続気泡多孔質体。
【請求項8】
樹脂組成物からなる連続気泡多孔質体の製造方法であって、
前記多孔質体の見かけ密度が0.01g/cm以上0.2g/cm以下、10%圧縮応力が0.02MPa以上0.3MPa以下、圧縮回復率が95%以下であり、
下記(1)〜(5)の工程を含むこと特徴とする連続気泡多孔質体の製造方法。
(1)ポリ乳酸系樹脂を主成分とする樹脂組成物を発泡させて発泡体を得る、発泡体の作製工程、
(2)前記発泡体を粉砕して粉体を得る、粉体の作製工程、
(3)前記粉体を所定の形状に成形し、前記発泡体の粉砕片を相互に接合することにより細孔壁を形成して、連続気泡構造を有する多孔質体を得る、多孔質体の作製工程。
(4)前記粉体の作製工程または前記多孔質体の作製工程において、切花延命剤を添加することにより、前記連続気泡多孔質体中に切花延命剤を含有させる、切花延命剤の添加工程。
(5)前記発泡体の作製工程または多孔質体の作製工程において、粉体100重量部に対して0.1重量部以上30重量部以下の界面活性剤を添加することにより、前記連続気泡多孔質体中に界面活性剤を含有させる、界面活性剤の添加工程。
【請求項9】
前記粉体を構成する樹脂組成物が、ポリ乳酸系樹脂を主成分とするものであることを特徴とする、請求項8記載の連続気泡多孔質体の製造方法。
【請求項10】
前記粉砕片を、融着により相互に接合することを特徴とする、請求項8または9記載の連続気泡多孔質体の製造方法。
【請求項11】
前記融着を、加熱により行うことを特徴とする、請求項10記載の連続気泡多孔質体の製造方法。
【請求項12】
前記粉体のかさ密度が0.001g/cm以上0.1g/cm以下であることを特徴とする、請求項8〜11のいずれか1項に記載の連続気泡多孔質体の製造方法。
【請求項13】
前記粉体の平均径が100μm以上2000μm以下であることを特徴とする、請求項8〜12のいずれか1項に記載の連続気泡多孔質体の製造方法。
【請求項14】
前記発泡体の作製工程後、前記粉体の作製工程前に、前記発泡体を加水分解処理することを特徴とする、請求項8〜13のいずれか1項に記載の連続気泡多孔質体の製造方法。
【請求項15】
切花延命剤が、pH調整剤、殺菌剤または抗菌剤、糖類、無機養分、植物生長調節剤、エチレン阻害剤よりなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項8〜14の何れか一項に記載の連続気泡多孔質体の製造方法。
【請求項16】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の連続気泡多孔質体からなることを特徴とする、吸水材料。
【請求項17】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の連続気泡多孔質体からなることを特徴とする、フラワーアレンジメント用台座。
【請求項18】
請求項8〜15のいずれか1項に記載の方法により製造される連続気泡多孔質体からなることを特徴とする、吸水材料。
【請求項19】
請求項8〜15のいずれか1項に記載の方法により製造される、連続気泡多孔質体からなることを特徴とする、フラワーアレンジメント用台座。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−136008(P2012−136008A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111182(P2011−111182)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】