説明

連続紙印刷装置

【課題】
印刷開始時の用紙のガイドを負荷なく行なうことが可能となり、用紙の衝撃による振動がなく、印刷起動時ぶれの生じない良好な印刷品質が得られる連続紙印刷装置を提供する。
【解決手段】
感光体(1)上に形成されたトナー像を用紙に転写させる転写器(3)と、転写器に対し用紙搬送方向上流部および下流部に配置され、感光体表面に対して接近および後退可能に設けられた上流ガイド部材(25)および下流ガイド部材(26)と、上流ガイド部材に対しさらに上流部に配置され、ガイド部材の接近および後退動作に伴い発生する用紙の弛みを吸収するバッファ手段とを備えた連続紙印刷装置において、バッファ手段を、独立した駆動源を備え、ガイド部材の接近および後退動作に伴い発生する用紙の弛み量に応じて回転角が制御される偏心ローラ(6)で構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続紙に画像を形成する連続紙印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7に連続紙印刷装置の概略構成を示す。感光体ドラム1の表面に帯電器11により電荷が付与され、露光光源12により印刷データに基づく露光パターンが照射され、感光体ドラム1には静電潜像が形成される。感光体ドラム1上の静電潜像は、現像機13で現像され、トナー像として可視化される。
【0003】
用紙7は、搬送装置14、15、16により転写機構部10に搬送され、コロナ転写器により感光体ドラム1上のトナー像が用紙7に転写され、サクションベルト装置21にてエアーで吸着されながら定着部へ送られ、プレヒータ17を通過時に、トナー樹脂の転移温度付近まで加熱された後、ヒータを内蔵した加熱ローラ18とバックアップローラ19からなる定着機によりトナー像は用紙7に溶融固着される。
【0004】
連続紙印刷装置は、従来は主に帳票へのコンピュータ出力印刷に使用されていたが、最近では高速可変情報印刷としての機能を活かし、ダイレクトメールや請求書、マニュアル、書物等の多用途印刷に使用されるようになった。また、連続紙の種類においても、薄紙から厚紙、上質紙から粗面紙等、多種にわたっている。このような多用途に対応する場合、画質を支配するのは転写性能である。
【0005】
そのため、転写機構部10には図4に示すように、感光体ドラム1と用紙7との密着性を上げ転写性向上を実現するため転写ハウジング2の上下に用紙搬送のための入口ガイド25および出口ガイド26を設けている。
【0006】
各ガイド25、26は、印刷中には感光体ドラム1から極少ない間隔をもって保持され、用紙7と感光体ドラム1の密着性を上げる構成となっている。しかしながら、用紙7の装填時あるいは用紙ジャム時において用紙7を取り除く際には、転写機構部10を感光体ドラム1から離す必要があるため、本体に設けられたサーボモータ4(以下、リトラクタモータという)にリンク5を介して転写器ハウジング2が連結されており、感光体ドラム1に対し、支軸Aを回転中心として接近および後退動作が可能な構成となっている。
【0007】
また、転写機構部10は、転写器3を囲む転写器ハウジング2と、転写ハウジング2に連結されたリンク23に設けられた板状の転写補助ガイド板22を有しており、転写ハウジング2が印刷状態になる時は転写補助ガイド板22も用紙7をガイドし、転写機構部10に用紙7を案内する機構となっている。なお、20は本体に設けられた用紙7をガイドする用紙ガイド板である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
印刷が開始されると、感光体ドラム1上のトナー像9を用紙7に転写するべく用紙7の搬送が開始される。したがって、用紙7は転写器3に対向した位置に至る頃には、転写機構部10は図4の状態になるが、転写補助ガイド板22は、リンク23により転写ハウジング2の動作と連動しているため、リンク23と支軸24のがたで振動しながら図4の状態となる。
【0009】
このため、用紙7も転写補助ガイド板22にて一定の張力をもって裏面よりガイドされているため転写補助ガイド板22が当接した際に衝撃により振動する。その結果、用紙7の振動が転写部へ伝播し用紙7と感光体ドラム1の密着が保てず、用紙2上において画像ぶれとなり印刷品質が劣化してしまう(以下、起動時印刷ぶれという)。
【0010】
また、印刷停止時には次の印刷開始に備えるため用紙7の先頭を転写点Cより、用紙の進行方向上流側に戻しているため、図7に示すサクションベルト装置21の用紙7のエアー吸引も解除され、揺動プレート27の反力により用紙7が持ち上げられ転写部で用紙7の弛みが生じる。そして、図5のように転写部で用紙7の弛みが生じると、用紙7の弛みが感光体ドラム1上に静電吸着し、感光体ドラム1上のトナー像9と接触して用紙7が汚れるといった不具合を招いてしまう(以下、印刷停止時汚れという)。
【0011】
図6に印刷停止時に転写器ハウジング2が後退動作を開始してから完了した時の用紙7の弛み量のプロフィールを示す。図のように後退動作が完了した時が最も弛み量が多くなる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、感光体上に形成されたトナー像を用紙に転写させる転写器と、転写器に対し用紙搬送方向上流部および下流部に配置され、感光体表面に対して接近および後退可能に設けられた上流ガイド部材および下流ガイド部材と、前記上流ガイド部材に対しさらに上流部に配置され、前記ガイド部材の接近および後退動作に伴い発生する用紙の弛みを吸収するバッファ手段とを備えた連続紙印刷装置において、前記バッファ手段を、独立した駆動源を備え、前記ガイド部材の接近および後退動作に伴い発生する用紙の弛み量に応じて回転角が制御される偏心ローラで構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、印刷開始時の用紙のガイドを負荷なく行なうことが可能となり、用紙の衝撃による振動がなく、印刷起動時ぶれの生じない良好な印刷品質が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の一実施例を図1、図2および図3を用いて説明する。図1は本発明の実施例である転写機構部10を示したものであり、本実施例では、感光体ドラム1としてセレン感光体やプラスOPC、アモルファスシリコン(a−Si)等のプラス帯電感光体を用いた場合を示す。
【0015】
感光体ドラム1の現像方式は反転現像方式であり、トナーの帯電極性はプラス極性である。転写機構部10は転写器ハウジング2の内部に負帯電の転写器3が格納されている。転写器3が格納された転写器ハウジング2はリトラクタモータ4にリンク5を介し連結されており感光体ドラム1面に対し、支軸Aを回転中心に接近と後退が可能な構成である。
【0016】
印刷開始時は、転写ハウジング2に設けられた入口ガイド25と出口ガイド26が感光体ドラム1の表面に対して極めて小さい間隔(0.5mm〜0.9mm)を保って保持される。印刷動作が中断あるいは停止した時は、用紙7と接触している両ガイド25、26の後退動作を早急に行なう必要がある。
【0017】
6は用紙ガイド機構(ローラ)である。本発明では用紙ガイド機構に偏心ローラを採用している。図1は印刷中の転写機構部10の状態であり、図2は印刷開始時直後の状態を表した図である。用紙7先頭頁の1行目が転写点Cに到達する以前に、転写ハウジング2は、図1の状態になるように制御されている。
【0018】
一方、偏心ローラ6の回転軸8は駆動用のステップモータ(図示せず)に結合されており、ステップモータの回転に従って偏心ローラ6も時計回りに回転する。印刷動作が開始される信号によりリトラクタモータ4が回転し、転写器ハウジング2が接近動作を始める時、その信号はステップモータの駆動を制御するための制御信号として用いられる。リトラクタモータ4のオン出力信号はステップモータの駆動回路(図示せず)を介してステップモータに伝達される。
【0019】
印刷開始から用紙7の走行が進むにしたがって徐々に偏心ローラ6を回転させ、用紙7に常にガイド(接触した)状態になるようにステップモータの回転を制御する。そして、最終的に偏心ローラ6が図1の位置までくるようにモータの回転を制御する。こうして、用紙搬送開始時に急激かつ過剰な衝撃による振動を用紙7に与えることを防ぐことができ、印刷起動時ぶれを低減することが可能となる。
【0020】
図3は印刷停止時の状態である。用紙ガイド機構として偏心ローラ6を用いることにより、従来、印刷停止時に次の印刷開始に備えるため用紙7の先頭頁を転写点Cより、用紙の進行方向上流側に戻すため、図6および図7に示すサクションベルト装置21の用紙7のエア吸引を解除する時に転写部で発生していた用紙7の弛みが、偏心ローラ6を常に用紙7に接触させるように(張力をかけながら)偏心ローラ6の回転角を制御しているためなくすことが可能となり、用紙7が感光体ドラム1と接触することがなく印刷停止時汚れをなくすことが可能となる。なお、偏心ローラ6は、転写ハウジング2に設けても本体に設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】印刷中の本発明の転写部を示す説明図である。
【図2】印刷開始直後の本発明の転写部を示す説明図である。
【図3】印刷停止時の本発明の転写部を示す説明図である。
【図4】印刷中の従来の転写部を示す説明図である。
【図5】印刷停止時の従来の転写部を示す説明図である。
【図6】転写ハウジングが後進することによる従来の用紙の弛み量を示す説明図である。
【図7】連続紙印刷装置の構成を示す全体構成図である。
【符号の説明】
【0022】
1 感光体ドラム
2 転写器ハウジング
3 転写器
4 リトラクタモータ
5 リンク
6 偏心ローラ
7 用紙
8 偏心ローラ回転軸
9 トナー画像
10 転写機構部
11 帯電器
12 露光光源
13 現像機
14、15、16 用紙搬送装置
17 プレヒータ
18 加熱ローラ
19 バックアップローラ
20 用紙ガイド板
21 サクションベルト装置
22 転写補助ガイド板
23 リンク
24 支軸
25 入口ガイド
26 出口ガイド
27 揺動プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体上に形成されたトナー像を用紙に転写させる転写器と、転写器に対し用紙搬送方向上流部および下流部に配置され、感光体表面に対して接近および後退可能に設けられた上流ガイド部材および下流ガイド部材と、前記上流ガイド部材に対しさらに上流部に配置され、前記ガイド部材の接近および後退動作に伴い発生する用紙の弛みを吸収するバッファ手段とを備えた連続紙印刷装置において、
前記バッファ手段を、独立した駆動源を備え、前記ガイド部材の接近および後退動作に伴い発生する用紙の弛み量に応じて回転角が制御される偏心ローラで構成したことを特徴とする連続紙印刷装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−308269(P2007−308269A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−139768(P2006−139768)
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【出願人】(302057199)リコープリンティングシステムズ株式会社 (1,130)
【Fターム(参考)】