説明

連続紙印刷装置

【課題】高速で高精度な用紙搬送を行なう連続紙印刷装置において、用紙ジャムの検知精度を向上することが可能な連続紙印刷装置を提供することを目的とする。
【解決手段】ジャム検知手段は、記録媒体50の搬送の異常を判断するために予め定められた操作量の上限値、操作量の下限値と、補償器82において演算した操作量とを比較する手段を設け、操作量が上限値以上、または下限値以下となった場合に、記録媒体50の搬送異常として判断し、記録媒体50のジャムとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続紙に印字を行なう印刷装置の用紙ジャムを検知することが可能な連続紙印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、連続紙印刷装置に用いる用紙搬送機構にあっては、紙質、紙厚、寸法など多岐にわたる印刷用紙の対応が要求されている。
一方、近年、プリンタの印字速度がますます速くなる傾向にあり、更に、印刷品質の面で高精度な用紙搬送が求められている。
これら、多種・多様な用紙を高速且つ高精度で搬送する用紙搬送機構は、用紙ジャムに関する問題も発生し易く、その検知方法が考案されている。
連続紙印刷装置の用紙ジャムを検知する方法としては、従動ローラや駆動ローラまたは駆動部に回転センサを用いて検知する方法などが知られている。
【0003】
特許文献1には、連続紙を駆動ローラと従動ローラで挟持して搬送する方法であり、従動ローラに回転検出センサを設け、紙詰まりや用紙切れ等の用紙ジャムによって従動ローラが停止したことを回転検出センサにより検知することで用紙ジャムと認識する方法が報告されている。
この方法は、紙詰まり等の用紙ジャムが発生し始めてから従動ローラが完全に停止するまでの間、用紙ジャムを検知することができないため、用紙ジャム検知が遅れる。
例えば、毎分100メートルを超える紙送りを行なう高速連続紙印刷装置では、用紙ジャムを検知して装置が停止するまでに数メートルの用紙を余分に搬送してしまい、これによって、ローラに用紙が巻き付いたり、用紙切れが発生してしまう場合がある。ローラへの用紙の巻き付きや用紙切れは用紙ジャムの修復が困難となる場合があり、用紙を再装填するために余分な時間を要してしまい、オペレータの負担が増加してしまう。また、場合によっては紙詰まりが過大な負荷となってギヤや駆動部を破損させたり、切れた用紙が印字ヘッドに接触して印字ヘッドを破損させてしまう可能性もある。
【0004】
特許文献2は、従動ローラに限らず紙送りモータとその回転伝達機構のいずれかに回転検出センサを設けて、回転検出センサからの回転検出信号を紙送りモータの駆動信号と比較し、モータや駆動部の回転の遅れを基に用紙ジャムを検知する方法が報告されている。
この方法は、用紙が完全に停止する前に用紙ジャムを検知することができ、予め決められた一定の速度で紙送りを行なう方法では有効である。
しかし、高精度な用紙搬送をするために回転検出センサからの回転検出信号をフィードバック制御してモータの速度を可変する方法では、紙送りの加速中や減速中にモータの駆動信号が変化する。モータ駆動信号が変化した場合、ギヤやタイミングベルト等の回転伝達機構により回転検出信号は微小な遅れが発生するため、モータ駆動信号と回転信号とを比較してジャムを精度良く検知しようとした場合、用紙ジャムを誤検知することや、ジャム検知精度を悪くすると用紙ジャム検知が遅れることが考えられる。
このように、高速・高精度用紙搬送を行なう連続紙印刷装置にあっては、用紙ジャムを素早く検知する方法自体に様々な課題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高速連続紙印刷装置では、用紙ジャム検知が遅れた場合、用紙ジャムが発生してから装置が停止するまで数メートルの用紙が余分に搬送されてしまうため、用紙ジャムの修復が困難となったり、用紙を再装填するために余分な時間を要してしまい、オペレータの負担が増加してしまう。場合によっては用紙がローラに巻き付き過大な負荷となってギヤや駆動部を破損させたり、用紙切れが発生する。用紙切れが発生した場合、インクジェット方式の連続紙印刷装置では切れた用紙が印字ヘッドに接触して印字ヘッドを破損させてしまう恐れがあった。このため、用紙ジャムを直ちに検知し、印字や紙送りを停止させる必要があった。
一方、高精度で用紙を搬送するには、張力検出器等を設けて用紙の張力を一定となるように制御しながら、従動ローラや駆動部に取り付けられた回転検出センサの回転検出信号を基にモータ駆動信号から回転量を算出し、速度をフィードバックする必要がある。速度をフィードバック制御や紙送りの加速中や減速中では、モータ駆動信号に対して、回転検出信号の微小な遅れが発生する可能性があり、精度良くジャム検知しようとした場合、用紙ジャムを誤検知する可能性がある。誤検出を防止するためにジャム検知精度を低下させたり、加速・減速中は用紙ジャム検知をしない場合は、用紙ジャム検知が遅れることが考えられる。
そこで、用紙ジャムを検知して直ちに停止させて、オペレータへの用紙装填の負担低減や用紙ジャム検知遅れによる装置の故障を防ぐことが切望されている。
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、高速で高精度な用紙搬送を行なう連続紙印刷装置において、用紙ジャムの検知精度を向上することが可能な連続紙印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に係る発明は、長尺に連続した記録媒体を複数のローラにより搬送する搬送機構部と、前記記録媒体に画像を印刷する印字ヘッドと、前記複数のローラを駆動する複数のモータと、前記モータ内に実装されモータの回転数に応じて回転信号を出力する回転検出器と、前記モータを駆動するモータドライバ部と、前記複数のローラ間に実装され記録媒体の張力を測定し、張力を電気信号に変換して出力する張力検出器と、前記記録媒体の搬送速度と張力とが目標速度、目標張力となるように演算する補償器を有し、前記回転検出器からの回転信号と前記張力検出器からの電気信号を制御量とし、前記複数のモータへの駆動信号を操作量とする多入出力系のフィードバック制御手段と、前記記録媒体の搬送を制御する制御部とを備えた連続紙印刷装置において、前記フィードバック手段の補償器において演算した操作量に基づいて、前記記録媒体の搬送異常を判断するジャム検知手段を設けたことを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、前記ジャム検知手段は、記録媒体の搬送の異常を判断するために予め定められた操作量の上限値、操作量の下限値と、前記補償器において演算した操作量とを比較する手段を設け、前記操作量が上限値以上、または下限値以下となった場合に、前記記録媒体の搬送異常として判断し、前記記録媒体のジャムとすることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、前記記録媒体のサイズ、厚さ、種類を設定する手段を備え、
搬送する記録媒体のサイズ・厚さ・種類毎に、搬送異常と判断するために予め定められた操作量の上限値と操作量の下限値を可変することを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明は、装置の状態を表示する表示器を備え、前記ジャム検知手段は、前記上限値と前記下限値とを前記複数のモータ毎に設け、前記補償器において演算したモータ毎の操作量とモータ毎の上限値、下限値とを比較し、操作量が上限値以上、または下限値以下となったモータから前記記録媒体のジャム発生部位を特定し、前記ジャム発生部位を前記操作パネルに表示することを特徴とする。
【0010】
請求項5に係る発明は、前記ジャム検知手段によって、前記記録媒体のジャムを検知した場合に、全てのモータへの出力を止めて、前記記録媒体の搬送を即座に停止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、高速で高精度な用紙搬送を行なう連続紙印刷装置において、用紙ジャムの検知精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係わる連続紙印刷装置の概要を示した図である。
【図2】フィードバック制御による用紙搬送の張力・速度制御方法を示したブロック図である。
【図3】用紙に加わる張力を示した図である。
【図4】用紙の速度を示した図である。
【図5】モータ駆動用アナログ電圧値を示した図である。
【図6】張力速度制御に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。
まず、図1を参照して、本発明の実施形態に係わる連続紙印刷装置の概要について説明する。
本実施形態の連続紙印刷装置は、用紙50を印刷装置1へ供給する巻き出し装置60と、印刷装置1で印刷された用紙50を巻き取る巻き取り装置61とを備えており、巻き出し装置60から巻き取り装置61まで帯状に繋がった連続紙を印刷装置1において印刷する構成となっている。
印刷装置1は、インフィードローラ10とヒートロール20とアウトフィードローラ30の3つのローラを駆動して用紙50を搬送する。巻き出し装置60から供給された用紙50は、最初にインフィードローラ10により搬送される。インフィードローラ10は、駆動ローラ10aと従動ローラ10bで用紙50を狭持し、インフィードモータ11を回転することで用紙50を下流方向へ搬送する。
【0014】
インフィード張力検出器40は、インフィードローラ10とヒートロール20との間に実装され、この間の用紙の張力を計測するためのセンサである。インフィード張力検出器40は、例えば、印刷用紙50の張力によってローラが受ける圧力を、歪みゲージ等の圧力センサにより計測する構成とする。インフィード張力検出器40は、制御部3と接続しており、用紙50の圧力を電気信号に変換して制御部3へ出力する。
印刷ヘッド部2は、インクジェット方式により、用紙50へ印刷するものである。上位装置71からの印刷データに基づきインクを吐出して印刷用紙50上に画像を形成させる。
ヒートロール20は、加熱により用紙50上に吐出されたインクを乾燥させるためのものである。ヒートロール20は、駆動ローラ20aと従動ローラ20bで用紙50を狭持し、ヒートロールモータ21を回転することで、用紙50を加熱しながら下流方向へ搬送する。
【0015】
アウトフィード張力検出器41は、ヒートロール20とアウトフィードローラ30との間に実装され、この間の用紙の張力を計測するためのセンサである。アウトフィード張力検出器41は、例えば、印刷用紙50の張力によってローラが受ける圧力を、歪みゲージ等の圧力センサにより計測する構成とする。アウトフィード張力検出器41は、制御部3と接続しており、用紙50の圧力を電気信号に変換して制御部3へ出力する。
アウトフィードローラ30は、駆動ローラ30aと従動ローラ30bとで用紙を狭持し、アウトフィードモータ31を回転することで用紙50を巻き取り装置61へ排出する。
【0016】
制御部3は、印刷装置1の全体を制御する装置であり、CPU、メモリ、制御プログラムを記憶するROMによって構成されている。
モータドライバ12は、制御部3と接続しており、制御部3からのモータ駆動信号によってインフィードモータ11が回転する。インフィードモータ11にはエンコーダ13が実装され、制御部3に接続されている。エンコーダ13はインフィードモータ11の回転数に応じてパルス状のエンコーダ信号を出力する。
モータドライバ22は制御部3と接続しており、制御部3からのモータ駆動信号によってヒートロールモータ21が回転する。ヒートロールモータ21にはエンコーダ23が実装され、制御部3に接続されている。エンコーダ23はヒートロールモータ21の回転数に応じてパルス状のエンコーダ信号を出力する。
モータドライバ32は、制御部3と接続しており、制御部3からのモータ駆動信号によってアウトフィードモータ31が回転する。アウトフィードモータ31にはエンコーダ33が実装され、制御部3に接続されている。エンコーダ33はアウトフィードモータ31の回転数に応じてパルス状のエンコーダ信号を出力する。
【0017】
上位装置71は、制御部3と接続している。上位装置71は、印刷データを受信すると制御部3への印刷指示を出力する。制御部3は、印刷中、印刷待機中、異常停止中などの印刷装置1の状態を上位装置71へ出力する。
操作パネル72は、上位装置71と接続されており、制御部3から上位装置71へ出力された印刷装置1の状態を表示する。オペレータは、操作パネル72に表示された内容によって、印刷装置1の状態が判断できる。例えば、印刷中に用紙ジャムが発生し、操作パネル72に「インフィード部ジャム」と表示された場合、オペレータはインフィードモータ近傍のジャム用紙を修復し、用紙50を再装填する。また、操作パネル72には用紙のサイズ、厚さ、種類を設定する手段が搭載されており、オペレータが予め印刷する用紙の情報を登録しておくことが可能である。用紙のサイズ、厚さ、種類の情報は、上位装置71を経由して制御部3に通知される。
【0018】
次に、用紙搬送の張力・速度制御方法について説明する。
本実施形態における張力・速度制御方法は、アウトフィードローラ30の速度V、インフィード張力検出器40の張力Te1、アウトフィード張力検出器41の張力Te2が目標値となるように、インフィードモータ11、ヒートロールモータ21、アウトフィードモータ31の回転数を制御し、一定張力、一定速度で搬送する方法である。
【0019】
図2は、フィードバック制御による用紙搬送の張力・速度制御方法を示したブロック図である。目標値81は、用紙搬送の速度と用紙張力の目標値であり、速度目標値はVref、インフィード張力目標値はTe1ref、アウトフィード張力目標値はTe2refである。検出器84は、エンコーダ13、エンコーダ23、エンコーダ33、インフィード張力検出器40、アウトフィード張力検出器41であり、各モータの回転数と張力検出器の出力から、用紙搬送速度V、インフィード張力Te1、アウトフィード張力Te2を制御量として検知する。検知した制御量は、目標値と比較され、目標値と制御量との偏差から補償器82によって最適な操作量を演算する。
【0020】
補償器は、PI制御や状態フィードバック制御等の公知の技術を用いて、制御量と目標値の偏差が0となるような操作量を演算する。操作量は、モータの回転数を制御するモータ駆動用アナログ電圧値であり、インフィードモータ11用の駆動電圧はVm1,ヒートロールモータ21用の電圧値はVm2,アウトフィード用の電圧値はVm3である。モータ駆動用アナログ電圧値(Vm1,Vm2,Vm3)はモータドライバを経由してモータへ出力し、モータの回転数を変化させることによって、制御対象83である搬送機構部によりローラの速度から用紙搬送速度V、インフィードローラ10とヒートロール20との速度差からインフィード張力Te1、ヒートロール20とアウトフィードローラ30との速度差からアウトフィード張力Te2が制御量として出力される。上述の通り、本実施形態における用紙搬送制御は、入力、出力共に複数設けた多入力多出力のフィードバック制御によって構成される。
【0021】
次に上述した用紙搬送の張力・速度フィードバック制御を用いて、18インチ(45.72cm)幅、連量70kgの普通紙を印刷した場合の用紙張力、用紙速度、モータ駆動用アナログ電圧値の結果について図3、図4、図5を用いて説明する。
図3は、用紙に加わる張力を示した図であり、縦軸は張力(N)、横軸は時間(秒)である。[1]はインフィード張力値Te1、[2]はアウトフィード張力値Te2である。図3は、目標値Te1ref、Te2refを0秒から5秒までに98Nとし、25秒から30秒で98Nから50Nと設定したときのインフィード張力値Te1[1]、アウトフィード張力値Te2[2]の波形であり、共にほぼ目標値通りに制御されていることを示す。
【0022】
図4は用紙の速度を示した図であり、縦軸は速度(m/分)、横軸は時間(秒)である。[3]は、用紙搬送速度Vである。図4では目標値Vrefを10秒から15秒で150m/sまで加速し、25秒から30秒で0m/分に減速したときの用紙搬送速度V[3]の波形であり、ほぼ目標値通りに制御されていることを示す。
【0023】
図5は、図3に示す張力Te1、Te2と、図4に示す速度Vとを目標値とするため操作量として、モータ駆動用アナログ電圧値を示した図であり、縦軸は電圧値(V)、横軸は時間(秒)である。[4]はインフィードモータ11のモータ駆動用アナログ電圧値Vm1、[5]はヒートロールモータ21のモータ駆動用アナログ電圧値Vm2、[6]はアウトフィードモータのモータ駆動用アナログ電圧値Vm3である。これらのモータ駆動用アナログ電圧値Vm1、Vm2、Vm3は、補償器82によって演算され、モータ駆動用アナログ電圧値を可変することで各モータの回転数が変化し、インフィードローラ10とヒートロール20との速度差によりインフィード張力値Te1、ヒートロール20とアウトフィードローラ30との速度差によりアウトフィード張力値Te2、アウトフィードモータ21が制御対象83から出力される。
【0024】
図5は、18インチ幅、連量70kgの普通紙を搬送した場合の波形であり、Vm1は−0.2〜0.3V、Vm2は0〜0.7V、Vm3は0〜1.2Vの範囲で出力されている。用紙のサイズや厚さ、種類による摩擦やバネ定数の違いの影響を受けてVm1、Vm2、Vm3の値は変化する。
また、用紙50がジャム傾向にある場合、用紙張力Te1やTe2が変動し始めたり、モータ速度Vが低下し始めたりする。この場合、目標速度、目標張力に近づけるために補償器82にて演算されたモータ駆動用アナログ電圧Vm1、Vm2、Vm3は、正常時より過大、過小で出力される。
【0025】
上述のように、用紙ジャム要因が複数あるケースにおいて、張力センサやモータエンコーダを直接ジャム検知に使用せずに、補償器82で演算した結果を基にジャムを検知する方法について、図6を参照して説明する。図6は張力速度制御のフローチャートである。張力・速度制御は、制御部3により規定のサンプリング周期で実行される。なお、図6に示すフローチャートは制御部3に設けられたROMに張力速度制御プログラムとして記憶されている。
【0026】
まず、ステップS10では、制御部3は、インフィードモータ11、ヒートロールモータ21、アウトフィードモータ31のそれぞれからのエンコーダ信号と、インフィード張力検出器40、アウトフィード張力検出器41のそれぞれの張力センサ信号を読み込む。
次いで、ステップS15では、制御部3は、読み込んだ各モータのエンコーダ信号のパルス数を用紙速度に換算し、各張力センサからの電気信号を用紙張力に換算する。
次いで、ステップS20では、制御部3は、目標速度とステップS15で換算した用紙速度との偏差を算出し、目標張力とステップS15で換算した用紙張力との偏差を算出する。
次いで、ステップS25では、制御部3は、用紙速度の偏差と、用紙張力の偏差とが0となるように補償器82にてモータ駆動用アナログ値を算出する。
【0027】
ところで、従来は、ステップS25で算出した操作量をそのままモータドライバへ出力していた。
これに対して、本実施形態では、ステップS25で算出した操作量を基にステップS30において用紙ジャムの検知手段を追加した。
具体的には、ステップS30では、制御部3は、各モータや用紙のサイズ・厚さ・種類毎に異なる予め制御部3内のメモリに格納された操作量の上限値、下限値と、ステップS25で算出した操作量とを比較し、操作量が上限値、下限値内のケースでは、搬送状態は正常であるため、ステップS35へ移行しモータドライバへ操作量を出力して処理は終了する。
一方、用紙がジャムの場合は、張力センサ値やエンコーダ値が急激に変化するため、ステップS25で算出したモータへの操作量が過大、または過小となるため、操作量が上限値、下限値内を超えた場合は、ステップS40へ移行する。
【0028】
一例として、アウトフィードモータ30の近傍で用紙ジャムが発生した場合について説明する。図3に示すようにアウトフィードモータ駆動用アナログ電圧値は、18インチ幅、連量70kgの普通紙を印刷した場合、0〜1.2Vの範囲であるため、18インチ幅、連量70kg、普通紙でのアウトフィードモータ駆動用アナログ電圧値の上限値を1.5V、下限値を−0.5Vと予め設定しておく。用紙サイズ、厚さ、種類が異なれば、上限値、下限値はその用紙に合わせた値とする。例えば、用紙ジャムによってモータ速度が低下した場合、アウトフィードモータ30の速度を上昇させるために補償器82の演算によりモータ駆動用アナログ電圧値は大きくなる。
【0029】
ステップS30では、制御部3は、モータ駆動用アナログ電圧値が上限値の1.5Vを超えた場合は用紙ジャムと判断し、それ以上にモータ駆動用アナログ電圧値を出力することで用紙切れや巻き付きが発生する前にジャムにすることができる。また、更に用紙ジャムを早く検知するために演算結果が正常範囲内でも急激な変化があった場合は、用紙ジャムとなる傾向にあると判断して用紙ジャムとしても良い。用紙ジャムと判断するとステップS40へ移行し、全てのモータドライバへの駆動信号を停止し、即座にローラを停止する。
次いで、ステップS45では、制御部3は、アウトフィードモータ30のモータ駆動用アナログ電圧値が範囲外となったため、制御部3は上位装置71にアウトフィードモータ部ジャムを報告し、上位装置71は操作パネル72に「装置出口部ジャム」と表示する。
【0030】
上述のように、本実施形態によれば、高精度用紙搬送のための張力・速度フィードバック制御の補償器にて算出した操作量に基づいて記録媒体の搬送異常を判断することで、用紙ジャムの検知精度を向上することができ、用紙ジャムを検知して直ちに印刷装置を停止することができ、更に、ジャム発生部位を特定して操作パネルへ表示することで、オペレータへの用紙ジャム修復の負担低減や用紙ジャム検知遅れによる装置の故障を防止できる。
【0031】
本実施形態の連続紙印刷装置においては、長尺に連続した記録媒体を複数のローラにより搬送する搬送機構部と、前記記録媒体に画像を印刷する印字ヘッドと、前記複数のローラを駆動する複数のモータと、前記モータ内に実装されモータの回転数に応じて回転信号を出力する回転検出器と、前記モータを駆動するモータドライバ部と、前記複数のローラ間に実装され記録媒体の張力を測定し、張力を電気信号に変換して出力する張力検出器と、前記記録媒体の搬送速度と張力とが目標速度、目標張力となるように演算する補償器を有し、前記回転検出器からの回転信号と前記張力検出器からの電気信号を制御量とし、前記複数のモータへの駆動信号を操作量とする多入出力系のフィードバック制御手段と、前記記録媒体の搬送を制御する制御部とを備えた連続紙印刷装置において、前記フィードバック手段の補償器において演算した操作量に基づいて、前記記録媒体の搬送異常を判断するジャム検知手段を設けているので、用紙ジャムの検知精度を向上することができる。また、ジャム検知専用のセンサを用いずに記録媒体ジャムを検知することができる。これにより、用紙ジャムを検知して直ちに停止させて、オペレータへの用紙装填の負担低減や用紙ジャム検知遅れによる装置の故障を防ぐことができる。
【0032】
本実施形態の連続紙印刷装置においては、前記ジャム検知手段は、記録媒体の搬送の異常を判断するために予め定められた操作量の上限値、操作量の下限値と、前記補償器において演算した操作量とを比較する手段を設け、前記操作量が上限値以上、または下限値以下となった場合に、前記記録媒体の搬送異常として判断しているので、記録媒体のジャムを検知することができる。
【0033】
本実施形態の連続紙印刷装置においては、前記記録媒体のサイズ、厚さ、種類を設定する手段を備え、搬送する記録媒体のサイズ・厚さ・種類毎に、搬送異常と判断するために予め定められた操作量の上限値と操作量の下限値を可変して設定しているので、記録媒体の種類毎に正確な記録媒体のジャムを検知することができる。
【0034】
本実施形態の連続紙印刷装置においては、 装置の状態を表示する表示器を備え、前記ジャム検知手段は、前記上限値と前記下限値とを前記複数のモータ毎に設け、前記補償器において演算したモータ毎の操作量とモータ毎の上限値、下限値とを比較し、操作量が上限値以上、または下限値以下となったモータから前記記録媒体のジャム発生部位を特定し、前記ジャム発生部位を前記操作パネルに表示しているので、オペレータにジャム部位の詳細を報告することができ、ジャム修復作業の負荷を低減することができる。
【0035】
本実施形態の連続紙印刷装置においては、前記ジャム検知手段によって、前記記録媒体のジャムを検知した場合に、全てのモータへの出力を止めて、前記記録媒体の搬送を即座に停止しているので、用紙ジャム検知遅れによるオペレータのジャム修復の負担低減や装置の故障を防止することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 印刷装置
2 印刷ヘッド部
3 制御部
10 インフィードローラ
11 インフィードモータ
12 モータドライバ
13 エンコーダ
20 ヒートロール
21 ヒートロールモータ
22 エンコーダ
30 アウトフィードローラ
31 アウトフィードモータ
32 モータドライバ
33 エンコーダ
40 インフィード張力検出器
41 アウトフィード張力検出器
50 用紙
60 巻き出し装置
61 巻き取り装置
71 上位装置
72 操作パネル
81 目標値
82 補償器
83 制御対象
84 検出器
【先行技術文献】
【特許文献】
【0037】
【特許文献1】特開平2−295840号公報
【特許文献2】特開平10−245140号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺に連続した記録媒体を複数のローラにより搬送する搬送機構部と、
前記記録媒体に画像を印刷する印字ヘッドと、
前記複数のローラを駆動する複数のモータと、
前記モータ内に実装されモータの回転数に応じて回転信号を出力する回転検出器と、
前記モータを駆動するモータドライバ部と、
前記複数のローラ間に実装され記録媒体の張力を測定し、張力を電気信号に変換して出力する張力検出器と、
前記記録媒体の搬送速度と張力とが目標速度、目標張力となるように演算する補償器を有し、前記回転検出器からの回転信号と前記張力検出器からの電気信号を制御量とし、前記複数のモータへの駆動信号を操作量とする多入出力系のフィードバック制御手段と、
前記記録媒体の搬送を制御する制御部とを備えた連続紙印刷装置において、
前記フィードバック手段の補償器において演算した操作量に基づいて、前記記録媒体の搬送異常を判断するジャム検知手段を設けたことを特徴とする連続紙印刷装置。
【請求項2】
前記ジャム検知手段は、記録媒体の搬送の異常を判断するために予め定められた操作量の上限値、操作量の下限値と、前記補償器において演算した操作量とを比較する手段を設け、前記操作量が上限値以上、または下限値以下となった場合に、前記記録媒体の搬送異常として判断し、前記記録媒体のジャムとすることを特徴とする請求項1記載の連続紙印刷装置。
【請求項3】
前記記録媒体のサイズ、厚さ、種類を設定する手段を備え、
搬送する記録媒体のサイズ・厚さ・種類毎に、搬送異常と判断するために予め定められた操作量の上限値と操作量の下限値を可変することを特徴とする請求項1記載の連続紙印刷装置。
【請求項4】
装置の状態を表示する表示器を備え、
前記ジャム検知手段は、前記上限値と前記下限値とを前記複数のモータ毎に設け、前記補償器において演算したモータ毎の操作量とモータ毎の上限値、下限値とを比較し、操作量が上限値以上、または下限値以下となったモータから前記記録媒体のジャム発生部位を特定し、前記ジャム発生部位を前記操作パネルに表示することを特徴とする請求項1記載の連続紙印刷装置。
【請求項5】
前記ジャム検知手段によって、前記記録媒体のジャムを検知した場合に、全てのモータへの出力を止めて、前記記録媒体の搬送を即座に停止することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1つに記載の連続紙印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−101889(P2012−101889A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251166(P2010−251166)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】