説明

連続調整可能な振動振幅及び/又は起振力を有する、円振動又は方向性振動を発生する装置

【課題】円振動又は方向性振動を生じさせるための装置を極めてコンパクトな構成で提供する。
【解決手段】不均等ウェイト12,13は、主軸10に、この軸上で回転可能に取り付けられ、カップリング40は、主軸に対して回転固定して接続された伝達媒体46を含んで構成され、伝達媒体は、不均等ウェイトの駆動体として機能し、起振力の振動振幅の調整に際して不均等ウェイトの逆方向のピボット移動を生じさせるように構成された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円振動又は方向性振動を発生する、独立請求項の前提部分に記載の装置に関する。このような装置は、特に締固め(soil compaction)用建設機械に用いられる。典型的には、同一のハウジング内で平行配置された2つの主軸が用いられ、これらの各々に不均等ウェイト(unbalance weight)が取り付けられる。方向性振動を生じさせるには、例えば、直に噛み合う平歯車を用いて、主軸を同時、かつ逆方向に回転作動させる。振動振幅又は起振力の連続調整のため、不均等ウェイトの角度を変化させて、個々の不均等ウェイトの遠心力からなる有効起振力を所定の範囲内で連続的に増加又は減少させる。
【背景技術】
【0002】
不均等ウェイトが設けられた軸は、振動振幅及び/又は起振力を調整するのに一般的に用いられ、不均等ウェイトは、一方で軸に対して回転方向に固定して接続され、他方で軸上で回転可能に取り付けられる。角度を調整するため、回転可能に取り付けられた不均等ウェイトが、回転方向に固定された不均等ウェイトに対する所定の位置、典型的には、突当りの位置にのみ、調整及び固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許出願公開第2736264号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
相互に移動可能な2つの不均等体を有する振動起振器は、独国特許出願公開第2736264号から知られるところであり、動作中での調整をも可能とする。この目的のため、横方向軸を中心として回転可能な、分岐部内の第1の不均等体が設けられ、この不均等体を、回転軸上を軸方向に移動可能なスライドに対してプッシュロッドを用いて接続し、移動させる。更なる不均等体が歯車を用いて上記第1の不均等体に噛合接続される。スライドが軸方向に動かされることで、2つの不均等体が互いに近づくか又は離れる方向にピボット移動する。このようにして、起振力の振幅が変化する。しかしながら、この目的については軸方向に移動可能なスライド及びプッシュロッドによる接続のために回転軸上の広範なスペースが占められるため、振動起振器をコンパクトに構成することができない、という不利がある。
【0005】
また、独国特許出願公開第2736264号の振動起振器には、回転軸ごとに常に2つの不均等体のみが配置されるため、不均等体の構成に関して余裕が与えられない、という不利がある。例えば、2つの更なる不均等体を同一の回転軸上に配置しようとするならば、更なるプッシュロッドを有する追加のスライドを当該軸の他方の前面に配置しなければならず、設置スペースが一層拡大することになる。更に、プッシュロッドは、調整要素に対する接続部として感知部に相当するものである。更に加えて、プッシュロッドの非対称構成及び不均等体自体の形状により、不均等体を完全に移動させた状態であっても起振力の「ゼロ設定」ができないため、機械は、軸が回転している限り、不安定で方向性のある振動を継続して生じさせる。
【0006】
従って、本発明は、冒頭部分で引用した種類の装置を開示する目的に基づくものであり、公知の先行技術の不利を解消する。特に、本発明の目的は、円振動又は方向性振動を生じさせるための装置の極めてコンパクトな構成を可能とすることを目的とし、起振力の振動振幅が、0とすることも可能であるがその必要もない最小値と、最大値との間で確実、かつ快適に連続調整される。更に、本発明の目的は、追加の不均等ウェイトを備える主軸のモジュール拡張が容易、低コスト、かつコンパクトに可能である装置を開示することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、独立請求項に記載の主題によって達成される。独立請求項は、本発明の有利な実施形態に関するものである。
【0008】
本発明による装置は、特定の主軸に、この主軸上で回転可能に取り付けられた不均等ウェイトを備える。また、主軸に対して回転方向に固定して接続された伝達媒体を含んで構成されるカップリングを備える。この伝達媒体は、一方で不均等ウェイトの駆動体として機能し、他方で起振力の振幅振動の調整に際して不均等ウェイトの逆方向のピボット移動を生じさせるように構成される。
【0009】
本発明によるカップリングの伝達媒体は、本質的に2つの機能を担うものである。一方において、隣り合わせて配置された不均等ウェイトの駆動体として使用され、通常動作、即ち起振力の振動振幅を固定する設定が選択された場合に、これらの不均等ウェイトを主軸と同時、かつ同方向に回転させる。更に、伝達媒体は、装置の動作中に起振力の振動振幅を変化させるために不均等ウェイトの角度の変化が望まれる場合に、隣り合う不均等ウェイトの逆方向のピボット移動を生じさせる。
【0010】
本発明による装置を用いることで、装置全体のコンパクト性、カップリングのロバスト性、及び簡単、かつ迅速な調整の可能性に関して、とりわけ大きな利点が達成される。更に、簡単で同一の構成要素を用いることで、製作コストを削減することができる。本発明による装置は、軸を用いて円振動を生じさせるために使用するか、又は逆方向に回転する少なくとも2つの主軸を用いて方向性振動を生じさせるのに使用するのが好ましい。
【0011】
本発明の有利な設計において、カップリングは、好ましくはかさ歯車を、特に少なくとも1つのピニオン及び2つのクラウンホイールを備える、歯車部を有する装置を含んで構成され、1つの不均等ウェイトがそれぞれのケース内に1つのクラウンホイールを備え、伝達媒体が上記少なくとも1つのピニオンであって、上記2つのクラウンホイールと噛み合わされる。クラウンホイール/ピニオンの対は、独立請求項に特徴付けられた機能を満たすのに特に適することが判明している。
【0012】
カップリングが複数の伝達媒体を備え、各伝達媒体が好ましくは等しい角度だけオフセットして配置されるのが特に好都合である。対称的な力分配の理由から、2つの伝達媒体が用いられるのが好ましい。しかしながら、用途に応じて3つ以上の伝達媒体を用いることも可能である。
【0013】
伝達媒体は、伝達媒体キャリア上で回転可能であるとともに、主軸の回転軸に垂直に交差する回転軸を有するように配置されるのが好ましい。この条件により、伝達媒体の作用、即ち上記駆動体としての作用及び調整時における逆回転方向の作用がより容易になされる。しかしながら、他の実施形態も可能である。
【0014】
主軸は、伝達媒体キャリアを収める少なくとも1つの横方向孔を有するのが好ましい。伝達媒体キャリアは、この横方向孔を用いることで主軸に挿入され、更にその両側から伝達媒体、特にかさ歯車及び更なる部品が設けられる。
【0015】
好ましい実施形態によれば、伝達媒体が生じた遠心力を吸収する手段、特にアキシャル軸受けが伝達媒体キャリア上に設けられる。伝達媒体のコンパクトな実施形態により、いかなる場合においても標準的な装置と比べて生じる遠心力が小さく抑えられる。それでもなお動作の信頼性及び運転の円滑性を一層高めるためには、遠心力を吸収するために小型のアキシャル玉軸受けを設ければよい。
【0016】
伝達媒体は、伝達媒体キャリア上に浮動状態で取り付けられるのが有利であることが判明している。これにより、伝達媒体キャリアの縦方向軸に沿った伝達媒体の僅かな動きが可能となる。そして、曲げトルク及び張力の結果として生じる過剰な歪みから伝達媒体キャリアが保護される。
【0017】
本発明の更なる基本的な概念は、調整ユニットに対して不均等ウェイトのうち1つのみを接続することである。これにより、同一の主軸上に配置されている全ての不均等ウェイトを、1つのウェイトの調整のみによって調整することが可能となる。
【0018】
本発明の更なる他の好ましい実施形態は、主軸が不均等ウェイトの複数の対を備え、それぞれの対が2つの不均等ウェイトと、これらの不均等ウェイトの間に配置されたカップリングとを備えることを提供する。全ての不均等ウェイトに同一の寸法及び質量を持たせることが可能である。不均等ウェイトの質量が等しい場合は、伝達媒体キャリアを挟んで支持トルクが相互に打ち消し合う。これにより、要求される支持及び調整力が極めて低く抑えられる。用途に応じて、1つの主軸上に任意の多数の不均等ウェイトの対を設けてもよい。
【0019】
特に好ましい他の実施形態では、不均等ウェイトの対の隣接する不均等ウェイトが夫々互いに同位相に接続されて、不均等ウェイトの対が直列に接続される。この意味において、同位相とは、これらの不均等ウェイトの主軸に対する角度が等しいことをいうものと理解される。従って、位相差というときは、不均等ウェイトの互いに対する角度の差として理解される。
【0020】
主軸は、直列に接続された不均等ウェイトの偶数個の対を有するのが特に好ましい。例えば、2つ、4つ又は6つの不均等ウェイトの対(即ち対応するカップリングを備える4つ、6つ又は8つの不均等ウェイト)が1つの主軸上で直列に接続される場合は、左右の不均等ウェイトの角度が主軸の重心に関して対称であるため、傾斜トルクのない装置の動作が常に保証される。
【0021】
本発明による装置の不均等ウェイトは、軸方向の遊び低減及び歯面遊びの低減のための手段を備えるのが好ましい。これらの手段は、例えば、バネ要素であってよい。
【0022】
本発明の更なる実施形態によれば、2つの平行な主軸の調整ユニットが機能的に連結される。例えば、油圧式の調整ユニットにおいて、調整ユニットの調整スリーブが、互いに逆方向にピボット移動可能であるように、例えば、直に噛み合う平歯車を介して互いに同期させられ、かつ接続されるので、各ケースの軸ごとに設けられる複動シリンダに代えて単動シリンダを用いることが可能となる。
【0023】
装置は、歯車及びころ軸受けを潤滑させるためのオイルポンプを備えるのが好ましい。ハウジング内のオイルレベルは、スプリンクラー管を用いることで実効計測値だけ減じることが可能である。これにより、オイルバス内での不均等ウェイトの「はね上げ」による性能損失が低減される。
【0024】
更に、本発明による装置は、ハウジング外に設けられるピボット駆動機を用いてピボット移動可能に実装するのが有利である。これにより、本発明による装置の実効角を、必要に応じて適合させることが可能となる。
【0025】
更に加えて、本発明による装置は、不均等ウェイトの現在位置を検出する手段、特に調整すべき不均等ウェイトの相対位相差を検出するためのセンサを備えることもできる。これにより、一定の遠心力を維持しながら周波数調整を実現することも可能となる。
【0026】
本発明の大きな利点は、高度なコンパクト性にある。これにより、本発明による装置は、既存の大量生産機械においてさえも問題を伴うことなく、僅かな労力のみで取り付けることが可能となる。
【0027】
本発明は、図面を参照して以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】調整スリーブの一部を破断した、始動位置にある本発明による装置の部分透視図である。
【図2】角度について調整した後の図1と同様の部分透視図である。
【図3】180°だけ調整した後の図1と同様の部分透視図である。
【図4】本発明による装置の縦断面を示す。
【図5】不均等ウェイトを180°だけ調整した後の図4と同様の縦断面を示す。
【図6】本発明による装置の全体透視図である。
【図7】本発明の更なる他の実施形態の透視図である。
【図8】−45°だけ調整した後の図8と同様の透視図である。
【図9】+45°だけ調整した後の図8と同様の透視図である。
【図10】本発明の更なる他の実施形態の透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、不均等ウェイト12,13を備える、第1の主軸10の第1の不均等ウェイトの対11を示している。2つのクラウンホイール43,44と、ピニオン41,42として実現された伝達媒体46とを備えるカップリング40が、不均等ウェイト12,13の間に配置されている。ピニオン41,42は、主軸10の回転軸に関して対称的に180°だけオフセットして配置されており、伝達媒体キャリア45上で回転可能である。更に、アキシャル軸受け48が認められ、これらはピニオン41,42が生じた遠心力を吸収するのに用いられる。
【0030】
調整ユニット30は、軸方向ロックを用いて、例えば、ネジ36によって第1の不均等ウェイト12に対して回転固定して接続された調整スリーブ31を備える。調整スリーブ31の内壁には2つのらせん溝32が形成されており、これらは180°だけオフセットして配置されている。主軸10の長円形穴39内を案内された調整ピン33が、らせん溝32に係合している。調整ピストン34の軸方向運動は、本例示の実施形態において単動式の油圧シリンダを用いて実現されており、調整スリーブ31、ひいては不均等ウェイト12の回転運動を生じさせる。このような調整ユニットは、例えば、独国特許出願公開第2409417号から知られるところである。図1に示される不均等ウェイト12,13の角度において、不均等ウェイト13は、不均等ウェイト12に対して正確に180°だけピボット移動させた位置にある。図示の位置での主軸10の回転では、不均等ウェイト相互の遠心力成分が打ち消し合う結果、いかなる起振力も生じない。
【0031】
不均等ウェイト12,13の本発明による調整について、図1〜3を参照してより詳しく説明する。この目的のため、調整動作のみについて初めに説明するが、この場合に、理解をより容易にするために主軸10が動かないものとする。調整ピストン34に圧力がかかると、この調整ピストン34に接続された調整ピン33がx正軸上を軸方向に、即ち矢印100によって示す方向に移動する。これにより、調整スリーブ31が、これに接続された不均等ウェイト12とともに矢印101,102の方向に、即ち回転をタペット35からx正軸方向に見たときに、x軸を中心とした反時計まわりにピボット移動する。
【0032】
不均等ウェイト12に固定接続されたクラウンホイール43は、不均等ウェイト12と同様に矢印102の方向に回転する。ピニオン41,42は、これらが伝達媒体キャリア45上で回転可能に設けられるとともに、かさ歯車を介してクラウンホイール43と噛み合わされており、更にこの伝達媒体キャリア45が横方向孔49において主軸10に対して回転固定して接続されているため、回転する。ピニオン41,42の回転は、図示の矢印103,104の方向に、即ち回転をピニオン42のアキシャル軸受け48からz正軸方向に見たときに、時計まわりに生じる。ピニオン41,42の回転により、クラウンホイール44の、ひいては不均等ウェイト13のピボット移動が生じる。ここで、カップリング40がかさ歯車を用いて、即ちクラウンホイール43,44及びピニオン41,42を用いて実現されているため、不均等ウェイト13の回転方向(矢印105の方向)は、不均等ウェイト12の回転方向とは逆向きである。
【0033】
カップリング40を用いることで、不均等ウェイト12,13の角度の非常にコンパクトで簡単な調整が達成されることが示されている。例えば、主軸10に対する不均等ウェイト12の、その始動位置に対する90°のピボット移動により、不均等ウェイト13の、逆向きの回転方向ではあるが90°のピボット移動が生じ、これにより、不均等ウェイト12,13は、互いに近づくか又は離れる方向で、互いに対して相対的に180°だけピボット移動することになる。調整スリーブ31のらせん溝32は、調整スリーブ31が図1に示される位置(起振力を最小又は0とする設定)から、図3に示される位置(起振力を最大とする設定)にまで、正確に90°だけ回転可能に設計されている。これにより、不均等ウェイトは、互いに対して逆方向に夫々90°、計180°だけピボット移動することができる。最小及び最大起振力の設定の間で、任意の連続設定が可能である。
【0034】
不均等ウェイト12,13のピボット移動は、通常主軸10の回転中に実行される。不均等ウェイト12,13の位相差が固定設定されている場合は、ころ軸受け14,15を用いて回転可能に取り付けられている不均等ウェイト12及び13は、伝達媒体46によって(この場合は、歯車によって)ピニオン41,42とともに駆動される。ピニオンは、静止状態にある。歯車を介する接続は、このように静的接続とみなされるものである。設定された不均等ウェイト12,13は、主軸と同方向に回転する。本発明による装置の大きな利点は、この場合において明らかである。
【0035】
クラウンホイール43,44及びピニオン41,42を用いたカップリング40の実現により、主軸10の回転中に生じる不均等ウェイト12,13の質量慣性(mass inertias)がピニオン41,42によって相互に支えられるので、不均等ウェイト12,13の望ましくないピボット移動が生じることはない。伝達媒体46を有するカップリング40は、一種のセルフロックを促進する。更に、伝達媒体キャリア45の対称軸に関する歯車部の対称的な噛合いにより、伝達媒体キャリア45は微小な支持力及び支持トルクのみを吸収するだけでよいことになるので、本発明によるカップリング40の耐用年数及びロバスト性に関して大きな利点が達成される。更に加えて、歯車は、例えば、鍛造又は鋳造の歯車用部品として容易、かつ低コストに実現することができる。
【0036】
起振力の振動振幅の、不均等ウェイト12,13の逆方向のピボット移動を用いた動作中の調整は、「不均等ウェイト12,13の、不均等軸10の速度での回転」及び「不均等ウェイト12,13の、所望の角度の逆方向のピボット移動」という部分運動の重ね合わせとみるべきものである。
【0037】
図3は、不均等ウェイト12,13が主軸10に対して等しい角度にあるために起振力が最大となる位置にある、本発明による装置1を示している。
【0038】
図4は、本発明による装置1の縦断面を示している。本例示の実施形態では、不均等ウェイト12,13及び22,23を有する不均等ウェイトの2つの対11,21が、軸受け14,15,24,25によって主軸10上で回転可能に配置されている。不均等ウェイトの各対11,21は、カップリング40又は50を夫々備えている。更に、不均等ウェイトの対11,21の隣接する不均等ウェイト13,22は、噛合接続要素19を用いて同位相に接続されている。このようにして、不均等ウェイトの対11,21の直列接続が可能となり、不均等軸10上に設けられた全ての不均等ウェイト12,13,22,23の同時調整を可能とするのに単一の調整ユニット30のみを1つの不均等ウェイト12に接続することが必要とされている。全ての不均等ウェイト12,13,22,23は、等しい寸法及び重さであるのが好都合である。カップリング40及び50も同一である。
【0039】
図4に示される不均等ウェイト12,13,22,23の角度(最小又は0の起振力)から図5に示される不均等ウェイト12,13,22,23の角度(最大起振力)に到達させるため、図1〜3に関連して既に述べたように、調整ユニット30の調整スリーブ31を90°だけピボット移動させる。カップリング40により、不均等ウェイト12,13に夫々90°ずつの逆方向のピボット移動が生じ、不均等ウェイト12,13の相対的なピボット移動は、合計すると180°になる。不均等ウェイト13とともに、これと同位相であり、かつこれに噛合接続された不均等ウェイトの第2の対21の不均等ウェイト22が同一の角度だけピボット移動する。カップリング50により、不均等ウェイト23に不均等ウェイト22,13とは逆方向のピボット移動が生じる。従って、全体として、不均等ウェイトの対11,21の直列接続により、内側の不均等ウェイト13,22は、同位相に保たれるとともに、逆方向の調整に際して外側の不均等ウェイト12,23と同様に回転し、外側の不均等ウェイト12,23もまた、カップリング40,50及び接続要素19を用いて同位相に保たれるといって差し支えない。
【0040】
1つの主軸10上で直列に接続された不均等ウェイトの偶数個の対11,21の構成に関する大きな利点は、不均等軸10のその中心に関する略対称なレイアウトにより、不均等軸10のころ軸受け28,29が望ましくない傾斜トルクによる歪みを受けないことである。
【0041】
図6は、本発明の一実施形態全体の透視図である。駆動軸91を有する油圧駆動部90は、平歯車(図示せず。)によって2つの主軸10及び60のうち一方を直に駆動する。同期及び逆方向の回転が平歯車の対82,83を介して生じ、これにより、不均等軸10,60が、作動中に逆方向ではあるが等しい速度で回転する。主軸10,60は、同一の構成要素を備える。双方の主軸10,60の動作態様も一致している。平歯車80は、主軸10の第1の不均等ウェイト12、ひいては調整ユニット30の調整スリーブ31に対してネジ/ナット等の接続要素を介して固定接続されている。平歯車81もまた、主軸60の不均等ウェイト62に対して、及び調整ユニット70の調整スリーブに対して接続されている。主軸10の不均等ウェイト12,13,22,33の調整動作は、平歯車の対を介して主軸60の不均等ウェイト62,63,65,66の調整動作と同期させ、かつ逆方向に回転させることも可能である。従って、調整ユニット30,70の油圧作動装置37は、複動式の油圧シリンダに代えて単動式の油圧シリンダのみが用いられるように組み合わせることもできる。例えば、調整ユニット30の調整ピン33が正のx方向(図4)に「押し込まれる」場合は、平歯車80,81を用いた逆向きの同期により、これに対応して調整ユニット70の調整ピン(図示せず。)が負のx方向に「押し出される」。
【0042】
本発明による装置を用いることで、起振力の振動振幅は、連続的に、かつ軸の回転中における不均等ウェイトのピボット移動により、最小の力である0kNから最大の力(例えば、174kN)にまで簡単、かつ迅速に調整することができる。不均等ウェイト12,13,22,23及び62,63,65,66は、主軸10,60が定格速度に達するまでの動作中に、図1,4又は6に示される角度のままで保たれるのが特に有利であることが判明している。これらの角度では、方向性振動が発生しない。定格速度に達した後、不均等ウェイトは、起振力の振動振幅が所望の絶対値に達するまでピボット移動させることが可能である。このようにして、「滑らかな」始動が可能となる。ディーゼル機関等、本発明による装置1の駆動モータを定格速度で一定に動作させることができ、かつ起振力の調整のみがモータ作動に影響を及ぼすに過ぎないため、駆動モータを効率的に、かつ最適なエネルギー消費で動作させることができる。従って、始動動作が全体として改善される。
【0043】
同様にして、本発明による装置1を備える機械の停止又は反転では、起振力が発生しないようにまず不均等ウェイトを定格速度で「ゼロ位置」にまでピボット移動させ、これに次いで機械を停止させるか、又は反転させる。本発明による装置の定格速度での連続動作により、望ましくない共振範囲が回避される。従って、ころ本体の「転がり(tumbling)」を生じることがない。本発明による装置を締固め用機械に用いる場合は、例えば、望ましくない交差した溝の形成が回避されることで、締固めの質が全体として改善される。その土地の状態に応じて起振力を迅速、かつ快適に調整可能であることもまた、この改善に寄与する。コンパクトであるため、本発明による装置1は、既存の大量生産機械にさえも問題なく組み込むことが可能である。締固めの性能を当該地盤に適合させることにより、周囲及び運転者の双方にとって騒音の低減が達成される。更に、機械構造の振動による歪みが著しく低減される。
【0044】
図7〜9は、本発明の更なる他の好ましい実施形態を示している。図4〜6に示される実施形態と比べて、不均等ウェイトの対11及び21の2つの隣接する不均等ウェイト13,22が同位相に接続も、相互に固定もされているのではなく、カップリング40,50に本質的に相当する追加のカップリング150を用いて、互いにピボット移動可能に配置されている。更に、第2の主軸60は、第2の主軸60上で回転固定して配置された不均等ウェイト160を備えている。全ての隣り合う不均等ウェイト12,13,22,23の、カップリング40,150,50を用いた接続を通じて、本発明による装置1を備える機械が運転及び転向可能となる。このような機械は、例えば、締固めのためのバイブレーションプレート(タンパ)であってよい。
【0045】
図7は、図示の矢印170の方向に「直進させる」ための不均等ウェイト12,13,22,23の設定を示している。不均等ウェイト12,23は、y−z平面内のz正軸に対して+45°の角度であるとする。不均等ウェイト13,22は、z正軸に対して−45°の角度を有している。主軸10,60が図示の角度で同時に逆回転する場合は、起振力の鉛直成分に加えて水平成分も発生し、これによって装置が図示の運転方向、即ちy正軸に沿って直進する。水平成分の絶対値は、一定の範囲内で調整可能であり、移動速度を最適に適合させることが可能である。このように、装置をバイブレーションプレートに用いる場合に、バイブレーションプレートを前進又は後退させるための個別運転は不要である。
【0046】
図8は、図示の矢印180の方向に「左折させる」ための不均等ウェイト12,13,22,23の設定を示している。この目的のため、第1の不均等ウェイト12を、不均等ウェイト12に固定接続された公知の調整ユニット30により、図7に示される角度からz正軸に対して−45°だけ回転させ、不均等ウェイト12の不釣合い力をz軸と平行に、z正軸方向に向ける。カップリング40により、不均等ウェイト13に不均等ウェイト12とは逆方向のピボット移動が生じることで、不均等ウェイト12,13が同位相となる。カップリング150,50により、隣り合う不均等ウェイト13,22及び22,23に夫々逆方向のピボット移動が生じ、これにより、不均等ウェイトが図8に示される角度となる。不均等ウェイト22,23を有する「左の」不均等ウェイトの対21の力ベクトルは、逆向きであることによって相殺される。これに対して、不均等ウェイト12,13を有する「右の」不均等ウェイトの対11の力ベクトルは、同方向に向くことで合算される。作動に際して、結果の起振力が形成されることにより、鉛直なz軸方向の方向性振動に加えて水平成分も発生し、これが左、即ちx正軸方向の転向を可能とする。
【0047】
図9は、図示の矢印190の方向に「右折させる」ための不均等ウェイト12,13,22,23の設定を示している。この目的のため、第1の不均等ウェイト12を、不均等ウェイト12に固定接続された公知の調整ユニット30により、図7に示される角度からz正軸に対して+45°だけ回転させ、不均等ウェイト12の不釣合い力をy軸と平行に、y正軸方向に向ける。カップリング40により、不均等ウェイト13に−45°の逆方向のピボット移動が生じる。カップリング150により、不均等ウェイト22が+45°だけ、即ち不均等ウェイト12と同方向に回転する。カップリング50により、不均等ウェイト23に−45°のピボット移動が生じる。図8に示される設定と比べて、不均等ウェイト22,23を有する「左の」不均等ウェイトの対21の力ベクトルが同方向を向き、不均等ウェイト12,13を有する「右の」不均等ウェイトの対11の力ベクトルは逆向きである。このようにして、右、即ちx負軸方向の転向が作動中において可能となる。
【0048】
図7〜9に示される本発明による例を用いて、運転及び転向可能な締固め用機械、特にバイブレーションプレートを簡単、かつコンパクトな方法で実現することが可能となり、移動速度及び起振力の振幅を必要に応じて最適に適合させることができる。
【0049】
図10は、本発明による装置の、特にコンパクト、かつ簡単な構成の他の実施形態を示している。第1の主軸10は、回転可能に取り付けられた不均等ウェイト12,13及びこれらの間に配置されたカップリング40を備える唯一の不均等ウェイトの対11と、第1の不均等ウェイト12に接続された調整ユニット30とを含んで構成される。第2の主軸60は、第1の主軸10と噛合接続されており、第2の不均等軸は、この軸上で回転固定して配置された不均等ウェイト160を備えている。不均等ウェイト12,13の角度調整は、この点について開示された本発明による方法で実行される。不均等ウェイトのこのような構成により、作動中、即ち主軸10,60の逆方向の同期回転中に、制御可能な「転がり」を、不均等ウェイトが同位相にないときに傾斜トルクを生じる結果として設定することが可能となる。バイブレーションプレート等の機械は、このようにして右又は左への転向を実行することができる。転向を達成した後、通常の動作に容易、かつ快適に復帰させることが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転主軸(10)を用いた、可変回転起振力を生じさせるための装置、特に円形起振器であって、前記主軸(10)は、不均等ウェイト(12,13)と、前記不均等ウェイト(12,13)の間のカップリング(40)とを備え、前記起振力の振動振幅が、調整ユニット(30)を用いて、前記不均等ウェイト(12,13)の互いに近づくか又は離れる方向の、最小値及び最大値の間での相対回転によって動作中に連続調整可能である装置において、
前記不均等ウェイト(12,13)は、前記主軸(10)に、前記主軸(10)上で回転可能に取り付けられ、
前記カップリング(40)は、前記主軸(10)に対して回転固定して接続された伝達媒体(46)を含んで構成され、
前記伝達媒体(46)は、前記不均等ウェイト(12,13)の駆動体として動作し、前記不均等ウェイト(12,13)の逆方向のピボット移動によって前記起振力の振動振幅の調整を生じさせるように構成された、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
方向性振動を生じさせるための、第1の主軸(10)及び第2の主軸(60)を備える装置であって、前記第1及び第2の主軸(10,60)は、平行に配置されて、逆方向に同期回転し、前記各主軸(10)は、不均等ウェイト(12,13)と、前記不均等ウェイトの間のカップリング(40)とを備え、起振力の振動振幅が、調整ユニット(30)を用いた前記不均等ウェイト(12,13)の互いに近づくか又は離れる方向の相対回転によって、最小値及び最大値の間で動作中に連続調整可能である装置において、
前記不均等ウェイト(12,13)は、前記主軸(10)に、前記主軸(10)上で回転可能に取り付けられ、
前記カップリング(40)は、前記主軸(10)に対して回転固定して接続された伝達媒体(46)を含んで構成され、
前記伝達媒体(46)は、前記不均等ウェイト(12,13)の駆動体として動作し、前記不均等ウェイト(12,13)の逆方向のピボット移動によって前記起振力の振動振幅の調整を生じさせるように構成された、
ことを特徴とする装置。
【請求項3】
前記カップリング(40)は、かさ歯車を有する装置、特に少なくとも1つのピニオン(41)及び2つの冠歯車(43,44)を含んで構成され、各不均等ウェイト(12,13)は、1つの冠歯車(43,44)を備え、前記伝達媒体は、前記少なくとも1つのピニオン(41)であって、前記2つの冠歯車(43,44)と噛み合うことを特徴とする請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記カップリング(40)は、それぞれが所定の角度、好ましくは等しい角度だけオフセットして配置された複数の伝達媒体(46)を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の装置。
【請求項5】
前記伝達媒体(46)は、伝達媒体キャリア(45)上で回転可能に配置され、前記主軸の回転軸と垂直に交差する回転軸を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の装置。
【請求項6】
前記主軸(10)は、前記伝達媒体キャリア(45)を受ける少なくとも1つの横方向孔(49)を有することを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記伝達媒体キャリア(45)に、前記伝達媒体(41)が生じた遠心力を吸収する手段、特にアキシャル軸受けが設けられたことを特徴とする請求項5又は6に記載の装置。
【請求項8】
前記伝達媒体(46)は、前記伝達媒体キャリア(45)上に浮動状態で取り付けられたことを特徴とする請求項5〜7のいずれか1つに記載の装置。
【請求項9】
前記不均等ウェイトのうち一方(12)は、前記調整ユニット(30)に接続されたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の装置。
【請求項10】
前記主軸(10)は、等しい大きさの不均等ウェイト(12,13,22,23)を有する不均等ウェイトの複数の対(11,21)を備え、これらの各対(11,21)は、それぞれの前記不均等ウェイトの間に配置されたカップリング(40,50)を備えることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の装置。
【請求項11】
前記不均等ウェイトの対(11,21)は、これらの対(11,21)の隣接する不均等ウェイト(13,22)が互いに同位相に接続されて、直列に接続、好ましくは直列に噛合接続されたことを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記不均等ウェイト(12,13,22,23)は、軸方向の遊びを低減する手段(17)、特にバネ要素を備えることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1つに記載の装置。
【請求項13】
主軸(10)は、直列に接続された前記不均等ウェイトの偶数個の対(11,21)を備える請求項10又は11に記載の装置。
【請求項14】
前記不均等ウェイトの対(11,21)は、更なるカップリング(150)を介して互いに接続された請求項1〜13のいずれか1つに記載の装置。
【請求項15】
前記第2の主軸(60)は、これに対して回転固定して接続された不均等ウェイト(160)を備える請求項1〜14のいずれか1つに記載の装置。
【請求項16】
締固めのための振動プレートについての請求項15に記載の振動発生装置(1)の使用であって、
前記振動プレートは、前進及び転向が可能であることを特徴とする使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−99656(P2010−99656A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−232172(P2009−232172)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(504359662)ボマク ゲーエムベーハー (9)
【Fターム(参考)】