連鎖アラームシステム
【課題】製品の製造工程に問題が生じたときにその原因別に経営者に警告を与える。
【解決手段】第一実際値取得部は仕掛品残高、部品発注残高及び部品在庫残高の実績値を取得する。他方、第一計画情報保持部は生産計画に係るデータを保持し、第一適正残高算出部は、そのデータをもとに仕掛品残高、部品発注残高及び部品在庫残高の計画値を算出する。第一警報発信部は、これらの数値の実績値を計画値と比較して乖離を発見したときには、条件に従い、部品納入に遅延がある旨の警報である部品キャパオーバー警報や、部品在庫残高が計画を上回った旨の警報である組立ライン停止警報や、仕掛品残高が計画を上回った旨のその他ライン障害警報を発信する。
【解決手段】第一実際値取得部は仕掛品残高、部品発注残高及び部品在庫残高の実績値を取得する。他方、第一計画情報保持部は生産計画に係るデータを保持し、第一適正残高算出部は、そのデータをもとに仕掛品残高、部品発注残高及び部品在庫残高の計画値を算出する。第一警報発信部は、これらの数値の実績値を計画値と比較して乖離を発見したときには、条件に従い、部品納入に遅延がある旨の警報である部品キャパオーバー警報や、部品在庫残高が計画を上回った旨の警報である組立ライン停止警報や、仕掛品残高が計画を上回った旨のその他ライン障害警報を発信する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品の製造過程において原材料及び部品の納入及びそれらの在庫、又は組立ラインに異常が生じた場合に、経営者に適時な警報を発することにより経営者が製品の納期遅延等の問題を早期に解決することができるようにするための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
製造業において生産管理は事業の成否を分ける重要な経営課題となっている。生産管理が問題となる局面は多岐にわたるが、市場調査、商品企画、販売予測、売上計画等に基づいて行われる生産計画と、生産計画に基づいて行われる資材調達及び製造工程の管理はそのなかでも中心的な課題となっている。この課題を解決しようとするものとして特許文献1がある。
【0003】
特許文献1には、データベースに生産計画を保持し、生産部門ごとにこれを実績データと比較して、それらの乖離を発見した場合には生産遅れアラームを自動表示する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−12307
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の生産進捗アラーム表示システムは、生産部門ごとに生産遅れを検知しアラームを発するものであることから、生産遅れが生じたときにその問題の生じた生産部門を直ちに特定することが可能となる。しかし、その生産遅れがどのような原因で発生したものであるのかをそのアラームから知ることができない。
【0006】
また、生産管理において最も中心的かつ困難な課題は、生産計画の実行よりもむしろ策定であるといってよい。特許文献1の生産進捗アラーム表示システムは生産計画が既に策定されていることを前提とするものであり、その策定に対しなんら寄与するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第一発明は、生産量及びその生産量のもとでの適正な在庫の発注残高及び在庫残高の算出式を保持し、その算出式により算出された生産量、部品発注残高及び部品在庫残高の計画値とそれらの実績値を比較して、それらに乖離が生じた場合に問題発生の原因に応じた三種類のアラームを発する連鎖アラームシステムに関する。
【0008】
第二発明は、生産量、部品発注残高及び部品在庫残高の実績値及びアラームの履歴が保持され、アラームの発せられない期間における実績値を統計的に処理して、その結果をもとに生産計画の精度を向上させることを特徴とする第一発明の連鎖アラームシステムに関する。
【0009】
第三発明は、所定期間の受注高が同期間の売上高及び引当済在庫高の和を超過していない場合には、異常は生じないものと擬制してアラームの発信を行わないことを特徴とする第一発明又は第二発明の連鎖アラームシステムに関する。
【0010】
第四発明は、所定の受注量のもとでの適正な生産量、発注残高及び在庫残高の算出式を保持し、その算出式により算出された生産量、部品発注残高及び部品在庫残高の計画値とそれらの実績値を比較して、それらに乖離が生じた場合に問題発生の原因に応じた三種類のアラームを発する連鎖アラームシステムに関する。
【0011】
第五発明は、生産量、部品発注残高及び部品在庫残高の実績値及びアラームの履歴が保持され、アラームの発せられない期間における実績値を統計的に処理して、その結果をもとに生産計画の精度を向上させることを特徴とする第四発明の連鎖アラームシステムに関する。
【0012】
第六発明は、生産量及びその生産量のもとでの適正な在庫の発注残高及び在庫残高の算出式を保持し、その算出式により算出された生産量、部品発注残高及び部品在庫残高の計画値とそれらの実績値を比較して、それらに乖離が生じた場合にその乖離の数値を出力する連鎖アラームシステムに関する。
【0013】
第七発明は、適正水準と実績値の乖離の数値が一定水準を超えた場合に警報を発する第六発明の連鎖アラームシステムに関する。
【発明の効果】
【0014】
これらの発明により、問題が発生した生産部門を特定することができるだけではなく、問題の原因に応じたアラームを発することで経営者に問題の解決の糸口を与え、また、過去の正常期間におけるデータの蓄積により、生産計画の策定にも寄与することのできる連鎖アラームシステムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ある工場においてある製品が製造に着手されてから完成に至るまでの流れを単純化して表わした図。
【図2】実施例1の連鎖アラームシステムの機能構成図。
【図3】実施例1の連鎖アラームシステムにおける処理の流れを表すフロー図。
【図4】実施例1の連鎖アラームシステムのハードウェア構成の一例を表す図。
【図5】実施例2の連鎖アラームシステムの機能構成図。
【図6】実施例2の連鎖アラームシステムの処理の流れの一例を表すフロー図。
【図7】実施例3の連鎖アラームシステムの処理の流れの一例を表すフロー図。
【図8】実施例4の連鎖アラームシステムの処理の流れの一例を表すフロー図。
【図9】実施例6の連鎖アラームシステムにおいて部品の納入に問題が生じた場合の数値表示の一例を時系列的に表した図。
【図10】実施例6の連鎖アラームシステムにおいて組立ラインに問題が生じた場合の数値表示の一例を時系列的に表した図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施例1は請求項1に記載の第一発明に関する。
【0017】
実施例2は請求項2に記載の第二発明に関する。実施例3は請求項3に記載の第三発明に関する。実施例4は請求項4に記載の第四発明に関する。実施例5は請求項5に記載の第五発明に関する。実施例6は請求項6に記載の第六発明に関する。実施例7は請求項7に記載の第七発明に関する。
【0018】
各実施例に移る前に、それらの説明で共通に使用される設例及びキーワードの説明をまず行う。
【0019】
図1は、ある工場においてある製品が製造に着手されてから完成に至るまでの流れを単純化して表わした図である。この工場ではこの製品を毎日100個生産する計画を立てている。この製品は完成するまでに10日の日数を要する。そのため、組立ラインには常時1,000個の仕掛品が存在することとなる。このように製造に着手してから完成に至る前までの製品の量を「仕掛品残高」と呼ぶこととする。なお、製品が少しずつ出来上がっていくことを表現するために実線で囲われた部分が日を追って上に伸びているが、これは仕掛品残高の計算とは直接関係がない。製造開始後1日目の仕掛品も10日目の完成間際の仕掛品も100個であることに変わりはない。
【0020】
この例では残高の単位として製品の個数を用いている。納品を正しく行うためには決められた個数を完成させることが重要であるからであり、また金額を単位としたときには完成品と部品の数量の関係が分かりにくくなるから通常は個数を単位として用いる。しかし、金額を単位とするほうが簡明である場合にはそのようにしても差し支えない。
【0021】
この製品を完成させるためには多数の部品を必要とするが、ここでは説明の簡単化のため部品Aのみが図に示されている。製品1個を生産するのに部品Aを1個必要とし、部品Aは5日目の製造工程で製品に組み込まれる。この工場は部品Aをa社から毎日100個購入しており、発注から納品までの日数は3日である。したがって、a社が納期を順守する限り常時300個の「部品発注残高」が存在することとなる。このように部品発注残高とは既に発注された部品のうち納入が未完なものの残高をいう。ここで、品質基準を満たさない部品の納入は納入が完了したとはみなさない。
【0022】
また部品発注残高とは全ての部品の発注の残高を合計した合計値とする。部品発注残高を部品ごとにではなく、一の製品について使用される部品全体について監視するのは、本件アラームシステムが製造現場において個々の工程を監視することを目的とするものではなく、経営者に対しいち早く異常の発生を知らせることを目的とするものであり、合計値を扱えば十分目的を達することができるからである。
【0023】
この工場は部品Aの納期遅延に備えて1日分、すなわち100個の部品Aを在庫として常時保有することとしている。これを「部品在庫残高」と呼ぶ。但し、部品発注残高と同様に、部品ごとの部品在庫残高を監視することはせず、全ての部品の在庫の残高を合計した合計値を部品在庫残高として一の数値を監視することとする。部品発注残高の場合と同じ理由による。
【0024】
「生産計画」とは、以上のように、ある製品について、毎日どの程度の数量を生産するか、そのための部品をいつ、何個注文するか、部品の在庫をどれほど保有するか、といった事項についての計画をいう。そして以下の説明においては、このような計画に従って予定されている数値については、例えば、計画仕掛品残高のように言葉の一部に「計画」の文字を付したり、あるいは、適正部品在庫残高のように言葉の一部に「適正」の文字を付したりすることにより目標とする数値であることが明確になるようにした。これに対し、実際に観測された数値については、例えば、実際部品在庫残高のように言葉の一部に「実際」の文字を付したり、あるいは、受注実績のように「実績」の文字を付したりすることにより、現実の結果としての数値であることが明確になるようにした。
【実施例1】
【0025】
<実施例1の概念>
【0026】
実施例1の連鎖アラームシステムは、見込み生産を行う製造業を想定したシステムである。製造業においては在庫をもたないことが利益率を上げるために重要とされ、受注生産が理想とされる。しかし、顧客の要求する納期と生産に要する期間の関係などの事情により見込み生産を行わざるを得ないことがある。そのような場合には、受注高の増減を直接に生産高に反映させることはできず、市場動向をみながら将来の受注を予測して在庫の水準も考慮しながら定期的に生産量の見直しを行う。
【0027】
実施例1の連鎖アラームシステムは、そのような生産量の見直しと同時に正常な生産体制のもとで適正とされる部品の発注残高及び在庫残高の算出方法を決定しておき、その方法により算出された数値と実績値に乖離が生じた場合にアラームを発する連鎖アラームシステムである。
【0028】
実施例1の連鎖アラームシステムは、第一に、実際の部品発注残高が適正数値を超過した場合には部品納入に遅延がある旨の警報である「部品キャパオーバー警報」を発する。すなわち、ある部品の納入に遅延が生じたときには、納入が未完の部品の数量が増加するため部品発注残高が増加する。従って、部品発注残高が計画よりも増加したときには、その原因が部品の納期遅延によると推定してその旨の警報を発するのである。
【0029】
実施例1の連鎖アラームシステムは、第二に、実際の部品発注残高が適正数値を超過していない場合であって、実際の部品在庫残高が適正数値を超過した場合には、部品在庫残高が計画を上回った旨の警報である「組立ライン停止警報」を発する。部品の納入に問題がないという状況のもとで部品の在庫が増えるのは、部品が予定通り使用されていないことを意味する。すなわち、この場合には組立ラインに異常が発生した等の理由により部品の使用がストップしていることを意味している。
【0030】
実施例1の連鎖アラームシステムは、第三に、実際の部品発注残高が適正数値を超過せず、かつ、実際の部品在庫残高が適正数値を超過しない場合であって、しかも、実際の仕掛品残高が予定を上回った場合には、仕掛品残高が計画を上回った旨の警報である「その他ライン障害警報」を発する。これは、部品の納入及び使用状態に異常がない場合であって、製品の完成に遅れが生じている事態を意味している。具体的には、組立ラインは動いており、それに従って部品も予定通り使用されているが、製造工程の異常等の理由により歩留まりが悪化するなどして完成品が計画通り仕上がっていない状態を意味している。
<実施例1の構成>
【0031】
図2は、実施例1の連鎖アラームシステムの機能構成図である。実施例1の連鎖アラームシステム0201は、第一実際値取得部0202と、第一計画情報保持部0203と、第一適正残高算出部0204と、第一警報発信部0205とを有する。
【0032】
「第一実際値取得部」は、仕掛品の実際の残高である実際仕掛品残高と、部品発注の実際の残高である実際部品発注残高と、部品在庫の実際の残高である実際部品在庫残高とを取得する。すなわち、第一実際値取得部は、外部の製造管理システム、経理会計システム等に通信回線等を介して接続されてこれらのシステムから、あるいは、キーボード入力により、実際の数値である実際仕掛品残高、実際部品発注残高及び実際部品在庫残高を取得する。仕掛品残高、部品発注残高及び部品在庫残高については既に説明した。実際仕掛品残高、実際部品発注残高及び実際部品在庫残高は、これらの実績値である。
【0033】
「第一計画情報保持部」は、計画仕掛品残高、第一適正部品発注残高算出式及び第一適正部品在庫残高算出式を保持する。
【0034】
仕掛品残高については既に説明したが、「計画仕掛品残高」とは、計画された仕掛品残高であり、策定された生産計画により予定され、あるいは目標とされる生産量のことである。計画仕掛品残高は、例えば、計画を策定した経営者がキーボード入力した数値を磁気記憶媒体に記録するなどして保持される。
【0035】
「第一適正部品発注残高算出式」とは、前記生産計画のもとにおいて適正な部品の発注残高となる第一適正部品発注残高を計画仕掛品残高を引数の一として算出するための関数式である。部品発注残高については図1を用いて既に説明した通り、既に発注された部品のうち納入が未完なものの残高をいうが、第一適正部品発注残高は通常の生産体制のもとにおいて所定の計画仕掛品残高を維持するために適当とされる部品発注残高であり、生産体制に異常がなければ実現されるべき部品発注残高である。第一適正部品発注残高算出式は、計画仕掛品残高を引数の一として使用して第一適正部品発注残高を算出するための関数式である。
【0036】
第一適正部品発注残高算出式は、図1の設例でいえば、計画仕掛品残高に30%を乗じるだけの一次式となる。あるいは、もっと複雑な二次以上の高次の式であってもよい。
【0037】
第一適正部品発注残高算出式は、引数として他の要素、最終製品の製造開始日等の時間的要素等を使用してもよい。図1の設例でいえば、計画仕掛品残高に変更がない間は適正部品発注残高は計画仕掛品残高に30パーセントを乗じるだけでよいが、計画仕掛品残高を増額させた場合には、部品の発注と使用は時間差を伴って増加するため日時を算出の要素に加えなければならない。例えば一日当たりの生産を100個から120個に増加させた場合、その変更の日から起算して3日後から部品の発注を120個に増加させるため、3日後、4日後及び5日後の部品発注残高は、それぞれ、320個、340個及び360個となる。このほか、他の製造条件により部品の必要量が異なる場合などには他の条件を算出の際の引数として用いることとなる。
【0038】
第一適正部品発注残高算出式は、経営者などにより人為的に策定されたものを、連鎖アラームシステムが取得して保持することを想定している。第一適正部品発注残高算出式の決定は、生産工程の具体的な計画に基づいて行ってもよいし、過去において正常な生産体制が維持されていたときの実績値をもとに行ってもよい。
【0039】
「第一適正部品在庫残高算出式」とは、前記生産計画のもとにおいて適正な部品の在庫残高となる第一適正部品在庫残高を計画仕掛品残高を引数の一として算出するための関数式である。第一適正部品在庫残高は通常の生産体制のもとにおいて所定の計画仕掛品残高を維持するために適当とされる部品在庫残高であり、生産体制に異常がなければ実現されるべき部品在庫残高である。第一適正部品在庫残高算出式は、計画仕掛品残高を引数の一として使用して第一適正部品在庫残高を算出するための関数式である。
【0040】
「第一適正残高算出部」は、計画仕掛品残高、第一適正部品発注残高算出式及び第一適正部品在庫残高算出式を用いて、第一適正部品発注残高及び第一適正部品在庫残高を算出する。第一適正残高算出部は、第一計画情報保持部に内部通信経路を介して接続され、そこから計画仕掛品残高、第一適正部品発注残高算出式及び第一適正部品在庫残高算出式を取得する。そして、これらを使用して第一適正部品発注残高及び第一適正部品在庫残高を算出する。
【0041】
「第一警報発信部」は、以下の条件に従い、部品キャパオーバー警報、組立ライン停止警報及びその他ライン障害警報を発する。
【0042】
第一警報発信部は、実際部品発注残高が第一適正部品発注残高を超過する場合には、部品納入に遅延がある旨の警報である部品キャパオーバー警報を発する。すなわち、図1の設例では第一適正部品発注残高は300個であり正常な生産体制のもとでは実際部品発注残高もこれに一致すべきとされるが、例えば、部品Aの納入業者aが部品の納入を全部について一日遅延すると実際部品発注残高が400個となり、部品キャパオーバー警報が発せられることとなる。
【0043】
第一警報発信部は、実際部品発注残高が第一適正部品発注残高を超過せず、かつ、実際部品在庫残高が第一適正部品在庫残高を超過する場合には、部品在庫残高が計画を上回った旨の警報である組立ライン停止警報を発する。すなわち、図1の設例では第一適正部品在庫残高は100個であり正常な生産体制のもとでは実際部品在庫残高もこれに一致すべきとされるが、例えば、部品の納入に問題がなくとも、組立ラインに問題が発生してその結果部品Aの使用がその日に全くされないと実際部品在庫残高は200個となり、組立ライン停止警報が発せられることとなる。
【0044】
第一警報発信部は、実際部品発注残高が第一適正部品発注残高を超過せず、かつ、実際部品在庫残高が第一適正部品在庫残高を超過せず、かつ、実際仕掛品残高が計画仕掛品残高を超過する場合には、仕掛品残高が計画を上回った旨のその他ライン障害警報を発する。部品の納入に支障がなく、また、組立ラインも一応は動いていて部品の使用がされている場合でも、例えば、製品の仕上げ工程に問題があり、製品が完成していないような場合には、その他ライン障害警報が発せられる。
【0045】
図3は、実施例1の連鎖アラームシステムにおける処理の流れを表すフロー図である。まず、第一実際値取得部が、実際仕掛品残高と、実際部品発注残高と、実際部品在庫残高とを取得する(ステップ0301)。これと並行して、第一計画情報保持部が、計画仕掛品残高と、第一適正部品発注残高算出式と、第一適正部品在庫残高算出式とを保持し(ステップ0302)、第一適正残高算出部が、これらを第一計画情報保持部から取得して、第一適正部品発注残高と、第一適正部品在庫残高とを算出する(ステップ0303)。第一警報発信部は、第一実際値取得部からは実際仕掛品残高、実際部品発注残高及び実際部品在庫残高を、第一適正残高算出部からは計画仕掛品残高、第一適正部品発注残高及び第一適正部品在庫残高を取得して、以下の処理を行う。まず、実際部品発注残高と第一適正部品発注残高を比較して(ステップ0304)、前者が後者を超過する場合には部品キャパオーバー警報を発する(ステップ0305)。そうでない場合には次に、実際部品在庫残高と第一適正部品在庫残高を比較して(ステップ0306)、前者が後者を超過する場合には組立ライン停止警報を発する(ステップ0307)。そうでない場合にはさらに、実際仕掛品残高と計画仕掛品残高を比較して(ステップ0308)、前者が後者を超過する場合にはその他ライン障害警報を発し(ステップ0309)、そうでない場合には何ら警報を発しない(ステップ0310)。
【0046】
図4は、実施例1の連鎖アラームシステムのハードウェア構成の一例を表す図である。連鎖アラームシステムは、各種演算処理及び検索処理を行う「CPU」0401と、プログラムやデータを一時的に記憶して保持する「メモリ」0402と、プログラムやデータを保持するためのハードディスクドライブ装置、ROMなどの「外部記憶装置」0403と、「通信回線」を介して通信を行うための「通信インタフェイス」0404とを備えている。そしてそれらがデータ通信経路である「システムバス」0405によって相互に接続され、情報の送受信や処理を行う。
【0047】
外部記憶装置に保持されたプログラムは必要に応じてメモリに読みだされ、CPUは当該プログラムをメモリに参照することで各種演算処理を実行する。また、このメモリにはそれぞれ複数のアドレスが割り当てられており、CPUの演算処理においては、そのアドレスを特定し格納されているデータにアクセスすることで、データを用いた演算処理を行うことが可能になっている。
【0048】
このようなハードウェア構成は他の実施例における連鎖アラームシステムにおいても同様である。
<実施例1の効果>
【0049】
実施例1の連鎖アラームシステムは、見込み生産において、生産計画と実績値との間に乖離が生じた場合に、単に生産部門(製品)別にアラームを出すだけでなく、問題の種類に応じた警報を行うことにより、経営者が問題の所在を知ることを容易とする連鎖アラームシステムである。
【実施例2】
【0050】
<実施例2の概念>
実施例1の連鎖アラームシステムは、経営者により策定された生産計画が計画通り実行されているかを監視するものであった。これに対し、実施例2の連鎖アラームシステムは、生産計画のうち、第一適正部品発注残高算出式及び第一適正部品在庫残高算出式を過去のデータの履歴に基づいてさらに適正なものに自動的に更新していくことを特徴とする。実施例1の連鎖アラームシステムにおいては、第一計画情報保持部に保持された第一適正部品発注残高算出式や第一適正部品在庫残高算出式は経営者が人為的にそのときどきに選択したものであった。しかし、適正部品発注残高や適正部品在庫残高は製造の過程においてさまざまな試行錯誤を経ながら変更されていくことが多い。そして、その試行錯誤の過程においてアラームの発せられなかった期間の実績値は正常な生産体制のもとにおける適正な数値であると推定され、他方、アラームの発せられた期間の実績値は問題の原因となる可能性を含んだ不適正な数値であると推定することができる。
【0051】
そこで、実施例2の連鎖アラームシステムでは、実際仕掛品残高、実際部品発注残高及び実際部品在庫残高の履歴を記憶しておき、また、同時にアラームが発せられたかどうかの履歴も記憶しておく。そして、アラームが発せられなかった期間におけるこれらの数値は正常な生産体制が維持されている期間のものであるとみなしてその数値により第一適正部品発注残高算出式及び第一適正部品在庫残高算出式を生成し、これらの新しい算出式を用いて生産工程を更に監視する。このようにして適正とされた水準を目標として適正な生産体制を実現し、さらにそのようにして実現された適正な実績値を用いてさらに目標とする適正水準を決定するというプロセスの繰り返しにより、使用を重ねれば重ねるほど適正な生産計画が実現されていくこととなる。
<実施例2の構成>
【0052】
図5は、実施例2の連鎖アラームシステムの機能構成図である。実施例2の連鎖アラームシステム0501は、第一実際値取得部0502と、第一計画情報保持部0503と、第一適正残高算出部0504と、第一警報発信部0505とを有する。これらの構成は実施例1の連鎖アラームシステムと同様である。実施例2の連鎖アラームシステムはさらに、第一実際値履歴保持部0506と、第一警報履歴保持部0507と、第一計画更新部0508とを備えることを特徴とする。
【0053】
「第一実際値履歴保持部」は、第一実際値取得部から実際仕掛品残高、実際部品発注残高及び実際部品在庫残高を取得して、それらの情報をそれらの情報が取得された日時とともに時系列的に保持する。
【0054】
「第一警報履歴保持部」は、第一警報発信部から部品キャパオーバー警報、組立ライン停止警報及びその他ライン障害警報を取得して、それらの情報をそれらが発信された日時とともに時系列的に保持する。
【0055】
「第一計画更新部」は、まず、第一実際値履歴保持部からは実際仕掛品残高、実際部品発注残高及び実際部品在庫残高の時系列データを、また、第一警報履歴保持部からは部品キャパオーバー警報、組立ライン停止警報及びその他ライン障害警報の時系列データを取得する。次に、部品キャパオーバー警報、組立ライン停止警報及びその他ライン障害警報のいずれも発することがなかった期間に係る実際仕掛品残高、実際部品発注残高及び実際部品在庫残高を統計処理し、新しい第一適正部品発注残高算出式及び新しい第一適正部品在庫残高算出式を生成する。そして最後に、これらにより前記第一計画情報保持部に保持された古い第一適正部品発注残高算出式及び古い第一適正部品在庫残高算出式を更新する。
【0056】
「統計処理」とは、例えば、第一適正部品発注残高算出式が実際部品発注残高(Y)を独立変数、実際仕掛品残高(X)を従属変数としたY=aX+bという形の一次式で表わされるとして、実績値をもとに回帰分析を行い、係数a及びbを求める手法などを意味する。そして、その回帰分析には、アラームが発せられなかった期間に係る実際仕掛品残高及び実際部品発注残高のみを使用する。それらのなかからどの程度の過去にまで遡ってデータを使用するかはいかようにでも選択できる。
【0057】
図6は、実施例2の連鎖アラームシステムの処理の流れの一例を表すフロー図である。ステップ0301から0310までは図3を用いて説明した実施例1の場合と同様である。ここではそのあとの処理を説明する。まず、第一実際値履歴保持部が実際仕掛品残高、実際部品発注残高及び実際部品在庫残高の過去データを時系列的に保持する(ステップ0601)。これと並行して、第一警報履歴保持部が部品キャパオーバー警報、組立ライン停止警報及びその他ライン障害警報を、それらを発した日時とともに記録する(ステップ0602)。そして第一計画更新部が、部品キャパオーバー警報、組立ライン停止警報及びその他ライン障害警報のいずれも発することがなかった期間に係る実際仕掛品残高、実際部品発注残高及び実際部品在庫残高を統計処理することにより、新しい第一適正部品発注残高算出式及び新しい第一適正部品在庫残高算出式を生成し、これらにより前記第一計画情報保持部に保持された古い第一適正部品発注残高算出式及び古い第一適正部品在庫残高算出式を更新する(ステップ0603)。
<実施例2の効果>
【0058】
実施例2の連鎖アラームシステムにより、過去の正常期間におけるデータの統計処理の結果を用いて生産計画をより信頼性の高いものとすることができる。
【実施例3】
【0059】
<実施例3の概念>
実施例3の連鎖アラームシステムは、現在までの一定期間における実際の受注高が同期間の実際の売上高及び引当済在庫高を超過しない場合には、受注した分は順調に納品され、あるいは、在庫から引き当てられており、増産による問題は発生するおそれがないと擬制してアラームを停止することを特徴とするものである。
【0060】
実際問題としては、このような場合であっても、部品の納期が遅延したり組立ラインに問題が生じたりする可能性は残されている。しかし、受注高が売上高と引当済在庫高の範囲内に収まっているような状況においては、部品の納期に遅延があったとしても大事に至ることは少ない。実施例3の連鎖アラームシステムは受注高が部品納入業者や組立ラインの潜在能力を大きく上回るような事態を予測して経営者に警報することを主目的とすることから、真に問題が深刻化するような状況においてのみ警報を作動させることにより効率的な生産監視体制を実現しようとするものである。
<実施例3の構成>
【0061】
実施例3の連鎖アラームシステムの機能構成は図2又は図5により表すことができる。但し、第一実際値取得部及び第一警報発信部の具体的構成が実施例1又は2の場合と若干異なる。
【0062】
「第一実際値取得部」は、現在までの一定期間における実際の受注高である実際受注高と、同期間における実際の売上高である実際売上高と、同期間における実際の引当済在庫高である実際引当済在庫高とをさらに取得する。
【0063】
「現在までの一定期間」とは、例えば、一か月前から現在までといったような期間を指す。「実際受注高」、「実際売上高」及び「実際引当済在庫高」はこの期間の実際の数値であり、数量としても金額としてもよいが、比較のため一を金額とする場合には他も金額としなければならないのはいうまでもない。また、「現在までの一定期間における実際受注高」という場合には、その期間の実際受注高の合計でもよいし、現在に近い数値に重みを置いた加重平均値などとしてもよい。
【0064】
「実際引当済在庫高」とは、在庫のうち特定の取引先への納品が既に決まっているものの残高をいう。
【0065】
「第一警報発信部」は、実際受注高が実際売上高と実際引当済在庫高の合計を超過しない場合には、部品キャパオーバー警報、組立ライン停止警報及びその他ライン障害警報のいずれの警報も発しないように構成されている。
【0066】
図7は、実施例3の連鎖アラームシステムの処理の流れの一例を表すフロー図である。まず、第一実際値取得部が、実際仕掛品残高と、実際部品発注残高と、実際部品在庫残高と、実際受注高と、実際売上高と、実際引当済在庫高とを取得する(ステップ0601)。これと並行して行われるステップ0302及び0303は図3を用いて実施例1で説明したフローと同様である。次に、第一警報発信部は、実際売上高及び実際引当済在庫高の和と実際受注高との比較を行い、後者が前者を超過しない場合には警報を発信しないが、後者が前者を超過する場合にはステップ0304から0310までの処理を行う。ステップ0304から0310までの処理は図3を用いて実施例1で説明したフローと同様である。
<実施例3の効果>
【0067】
実施例3の連鎖アラームシステムによれば、受注増加により生産に問題が生じる蓋然性が高い状況下においてのみアラームを発することにより効率的な生産監視を実現することのできるシステムが提供される。
【実施例4】
【0068】
<実施例4の概念>
【0069】
実施例1の連鎖アラームシステムは、計画した仕掛品残高を基準として適正な部品発注残高及び部品在庫残高を算出するものであった。これに対し、実施例4のそれは受注実績をベースとして適正な仕掛品残高、部品発注残高及び部品在庫残高を算出する。
【0070】
実施例1の連鎖アラームシステムは、見込み生産を行う生産者に適している。見込み生産を行う場合には、市場動向、受注状況等を見ながら定期的に生産計画の見直しを行うが、見直しの間は一定量を継続して生産する。従って、生産計画により生産量は確定しているからこの数値をベースとして適正な部品発注残高及び部品在庫残高を算出すればよい。
【0071】
これに対して実施例4の連鎖アラームシステムは受注生産を行う生産者に適している。受注生産を行う場合には受注に応じて生産量が変動する。従って、適正な仕掛品残高、部品発注残高及び部品在庫残高を受注高に応じて算出するのがよい。
<実施例4の構成>
【0072】
実施例4の連鎖アラームシステムの機能構成は図2で「第一」とあるのを「第二」と読替えて表すことができる。すなわち、実施例4の連鎖アラームシステムは、第二実際値取得部と、第二計画情報保持部と、第二適正残高算出部と、第二警報発信部とを有する。
【0073】
「第二実際値取得部」は、受注実績、実際仕掛品残高、実際部品発注残高及び実際部品在庫残高を取得する。「受注実績」は所定期間における実際の受注をいう。「所定期間」は実際仕掛品残高、実際部品発注残高及び実際部品在庫残高を算出する基礎としてふさわしい期間が使用される。例えば、生産開始から完了まで5日を要する製品の場合には過去5日とするのがよい。
【0074】
「第二計画情報保持部」は、適正仕掛品残高算出式、第二適正部品発注残高算出式及び
第二適正部品在庫残高算出式を保持する。本発明の基本となる考えは、一定の受注に基づいて受注生産がおこなわれ、正常な生産体制が維持されている状況では、受注と、仕掛品残高、部品発注残高及び部品在庫残高との間に一定の関係が維持されるはずであるということである。そして、この一定の関係を記述するものが前記三つの算出式である。
【0075】
これらの算出式が実施例1における算出式と異なるのは、計画仕掛品残高を引数とするのではなく、受注実績を引数とする点である。但し、受注生産のもとでは、受注した額に応じて自動的に仕掛品残高も決定されるのであるから、その意味するところは実際大差がない。
【0076】
「適正仕掛品残高算出式」は、生産計画のもとにおいて受注実績に応じて仕掛中であるべき仕掛品の適正仕掛品残高を受注実績を引数の一として算出するための関数式である。例えば、生産開始から完成まで5日を要し、受注の翌日から生産を開始する場合を例として、過去5日間における受注実績が、一日前100個、二日前120個、三日前90個、四日前110個、五日前80個であったとすると、適正仕掛品残高はこれらの合計500個となり、適正仕掛品残高算出式はそのような計算を行う式となる。
【0077】
「第二適正部品発注残高算出式」は、生産計画のもとにおいて受注実績に応じて適正な部品の発注残高となる第二適正部品発注残高を受注実績を引数の一として算出するための関数式である。例えば、前記設例で必要な部品は部品bのみであり、部品bは対象製品製造開始後二日目に発注され三日目に納入されるとした場合、前段落の受注実績の例を使用すると、第一適正部品発注残高は三日前の受注に対応する90個と二日前の受注に対応する120個の和となるべきであり、第二適正部品発注残高算出式はそのような演算を行う式となる。
【0078】
「第二適正部品在庫残高算出式」は、生産計画のもとにおいて受注実績に応じて適正な部品の在庫残高となる第二適正部品在庫残高を受注実績を引数の一として算出するための関数式である。第二適正部品在庫残高は受注実績に応じて変動させる方法も固定とする方法もありうる。受注実績に応じて変動させる場合には、部品の在庫から引き当てたり在庫を積み増したりする際に前記第一適正部品受注残高との調整が必要となり式はより複雑になる点に注意を要する。
【0079】
「第二適正残高算出部」は、受注実績、適正仕掛品残高算出式、第二適正部品発注残高算出式及び第二適正部品在庫残高算出式を用いて、適正仕掛品残高、第二適正部品発注残高及び第二適正部品在庫残高を算出する。
【0080】
実施例4の連鎖アラームシステムにおける他の構成は、実施例1のそれと同様である。
【0081】
図8は、実施例4の連鎖アラームシステムの処理の流れの一例を表すフロー図である。まず、第二実際値取得部が、受注実績、実際仕掛品残高、実際部品発注残高及び実際部品在庫残高を取得する(ステップ0801)。また、第二計画情報保持部が、適正仕掛品残高算出式、第二適正部品発注残高算出式及び第二適正部品在庫残高算出式を保持する(ステップ0802)。さらに、第二適正残高算出部が、第二計画情報保持部からは適正仕掛品残高算出式、第二適正部品発注残高算出式及び第二適正部品在庫残高算出式を、第二実際値取得部からは受注実績を取得して、適正仕掛品残高、第二適正部品発注残高及び第二適正部品在庫残高を算出する(ステップ0803)。この後の処理は図3を使って説明した実施例1におけるステップ0304から0310と同様である。
<実施例4の効果>
【0082】
実施例4の連鎖アラームシステムは、受注生産において、生産計画と実績値との間に乖離が生じた場合に、単に生産部門(製品)別にアラームを出すだけでなく、問題の種類に応じた警報を行うことにより、経営者が問題の所在を知ることを容易とする連鎖アラームシステムである。
【実施例5】
【0083】
<実施例5の概念>
実施例5の連鎖アラームシステムは、実施例2におけるそれと同様に、生産計画を過去のデータの履歴に基づいてさらに適正なものに自動的に更新していくことを特徴とするものである。
<実施例5の構成>
【0084】
実施例5の連鎖アラームシステムの機能構成は図5で「第一」とあるのを「第二」と読替えて表すことができる。すなわち、実施例5の連鎖アラームシステムは、第二実際値取得部と、第二計画情報保持部と、第二適正残高算出部と、第二警報発信部と、第二実際値履歴保持部と、第二警報履歴保持部と、第二計画更新部とを有する。第二実際値取得部、第二計画情報保持部、第二適正残高算出部及び第二警報発信部は、実施例4のそれらと同様である。
【0085】
「第二実際値履歴保持部」は、第二実際値取得部から受注実績、実際仕掛品残高、実際部品発注残高及び実際部品在庫残高を取得して、その情報をそれらの情報が取得された日時とともに時系列的に保持する。
【0086】
「第二警報履歴保持部」は、第二警報発信部から部品キャパオーバー警報、組立ライン停止警報及びその他ライン障害警報を取得して、それらの情報をそれらが発信された日時とともに時系列的に保持する。
【0087】
「第二計画更新部」は、まず、第二実際値履歴保持部からは受注実績、実際仕掛品残高、実際部品発注残高及び実際部品在庫残高の時系列データを、また、第二警報履歴保持部からは部品キャパオーバー警報、組立ライン停止警報及びその他ライン障害警報の時系列データを取得する。次に、部品キャパオーバー警報、組立ライン停止警報及びその他ライン障害警報のいずれも発することがなかった期間に係る受注実績、実際仕掛品残高、実際部品発注残高及び実際部品在庫残高を統計処理して、新しい適正仕掛品残高算出式、新しい第二適正部品発注残高算出式及び新しい第二適正部品在庫残高算出式を生成する。そして最後に、これらにより第二計画情報保持部に保持された古い適正仕掛品残高算出式、古い第二適正部品発注残高算出式及び古い第二適正部品在庫残高算出式を更新する。
【0088】
「統計処理」とは、実施例2の場合とほぼ同様であるが、回帰分析を用いた計算例では実際仕掛品残高、実際部品発注残高及び実際部品在庫残高が独立変数、受注実績が従属変数となる。
【0089】
実施例5の連鎖アラームシステムの処理の流れは、実施例2のそれと実施例4のそれの該当箇所を組み合わせて説明できるため、ここでの詳しい説明は省略する。
<実施例5の効果>
【0090】
実施例5の連鎖アラームシステムにより、受注生産のもとで、過去の正常期間におけるデータの統計処理の結果を用いて生産計画をより信頼性の高いものとすることができる。
【実施例6】
【0091】
<実施例6の概念>
【0092】
実施例1から5までは、所定の条件に従って三種類の警報を発信するというものであった。実施例6の連鎖アラームシステムは、これらの警報を発する代わりに、仕掛品残高、部品発注残高及び部品在庫残高のそれぞれについての計画と実績の乖離をそのまま数値で表示することを特徴とする連鎖アラームシステムである。
【0093】
図9は、実施例6の連鎖アラームシステムにおいて部品の納入に問題が生じた場合の数値表示の一例を時系列的に表した図である。図中の「部品発注残高差」、「部品在庫残高差」及び「仕掛品残高差」はそれぞれ部品発注残高、部品在庫残高及び仕掛品残高における計画値と実際値の差であり、実際値が計画値を上回る場合は基準線の上へ、実際値が計画値を下回る場合は基準線の下へそれぞれに関する棒グラフが伸びるような表示としている。
【0094】
図9(A)は、一部の部品の納入に遅延が生じたことにより、実際の部品発注残高が計画した部品発注残高を超過し、部品発注残高差が正の数値となったこと、そして、生産は遅延が生じた部品についての在庫を取り崩しながら中止することなく行われているため実際の部品在庫残高が計画を下回り、部品在庫残高差が負の数値となったことを示している。この状態は当該部品の在庫が尽きるまで継続し、部品発注残高差及び部品在庫残高差のグラフは伸び続ける。このグラフが伸びている間も、生産は支障なく継続される。しかし、当該部品の在庫が尽きると当該部品が使用される工程及びその前工程の生産ラインがストップする。このとき、問題のある部品以外の部品の発注を中止しないと図9(B)のように部品在庫残高差のグラフは逆に縮み始める。問題のない部品の在庫がラインの停止に伴って積み上がることで計画を上回ることになるからである。問題のある部品が使用される工程以降の工程は製品が完成するまで継続して行われる。したがって、問題のある部品の在庫が尽きてもしばらくは仕掛品残高に異常は見られない。しかし、問題のある部品が使用される工程以降の組立ラインにあった製品がすべて完成されるとその後は図9(C)のように仕掛品残高差が正の数値となり、製品の納入に遅延が生じうる状態となったことを示している。
【0095】
図10は、実施例6の連鎖アラームシステムにおいて組立ラインに問題が生じた場合の数値表示の一例を時系列的に表した図である。図10(A)は、部品の納入は予定通り行われているが、組立ラインに問題が発生したために一部部品の使用がされなくなり、その結果それらの部品の在庫が積み上がり部品在庫残高が計画を超過したことを示している。このとき、組立ラインの各工程のうち問題が発生した箇所の後工程ではラインが流れており、直ちには仕掛品残高に異常が生じていないことも示されている。図10(B)は、組立ラインの問題は解消されておらず引き続き部品の在庫は増加しているが、組立ラインの問題発生を受けて一部部品の発注が停止されたために実際の部品発注残高が計画を下回ったことを表している。図10(C)は、問題の発生した箇所の後工程のラインに載っていた製品がすべて完成され、その後仕掛品残高差が正の数値となって納品に遅延が生じうる状態となったことを示している。
【0096】
実際には、問題の発生状況やそれに対する対処の仕方によってはこれらのグラフは異なった動きをする場合もあるが、三つのグラフの組合せとそれらの時系列的な変化を監視することにより問題の把握が一層容易となる。
<実施例6の構成>
【0097】
実施例6の連鎖アラームシステムの機能構成は図2で「第一」とあるのを「第三」と読替えて表すことができる。但し、第三警報発信部の具体的構成が実施例1の場合と異なる。他の構成は実施例1の場合と同様であり、第一とあるのを第三と読替えて理解することができる。
【0098】
「第三警報発信部」は、仕掛品残高差、部品発注残高差及び部品在庫残高差を表示する。「仕掛品残高差」とは、実際仕掛品残高と計画仕掛品残高の差であり、「部品発注残高差」とは、実際部品発注残高と第三適正部品発注残高の差であり、「部品在庫残高差」とは、実際部品在庫残高と第三適正部品在庫残高の差である。
【0099】
実施例6の連鎖アラームシステムにおける処理の流れは、図3を用いて説明した実施例1の場合とステップ0301から0303までは同様であるが、これに、第三警報発信部が、仕掛品残高差、部品発注残高差及び部品在庫残高差を計算するステップと、その計算結果を表示するステップとが加わる。これらのフローを表す図は省略する。
<実施例6の効果>
【0100】
実施例6の連鎖アラームシステムは、生産計画と実績値との間に乖離が生じた場合に、単に生産部門(製品)別にアラームを出すだけでなく、仕掛品残高、部品発注残高及び部品在庫残高に係る計画と実績の乖離を示すことにより、経営者が問題の所在を詳しく知ることを容易とする連鎖アラームシステムである。
【実施例7】
【0101】
<実施例7の概念>
【0102】
実施例6の連鎖アラームシステムは、仕掛品残高差等をそのまま経営者に示すものであるため問題が発生していないかあるいは問題が軽微であるときにも常にそれらの表示が行われる。そのため、経営者は問題の発生していない場合にも常にそれらの数値に目をやり問題発生の有無を数値やグラフから読み取らなければならない。実施例7の連鎖アラームシステムは、これらの数値の絶対値が予め保持した閾値を超えたかどうかを知らせることにより、経営者による監視の負担を軽減することを可能とするものである。
<実施例7の構成>
【0103】
実施例6と共通する部分については説明を省略する。実施例7の連鎖アラームシステムは、「第三計画情報保持部」が警報発信のための閾値をさらに保持する。「閾値」は、経営者が個別に判断して事前に登録しておく数値である。「第三警報発信」部は、仕掛品残高差、部品発注残高差及び部品在庫残高差の絶対値の和が前記閾値を超えた場合にはその旨の警報を発信する。
【実施例8】
【0104】
以上に紹介した実施例のほかに、実施例4又は5の連鎖アラームシステムに実施例3の特徴を追加した実施形態が考えられる。すなわち、実際受注高、実際売上高及び実際引当済在庫高をさらに取得して実際売上高及び実際引当済在庫高の和を実際受注高が超過しないときには、第二警報発信部における警報の発信を停止する構成とする。これにより、問題の発生する蓋然性が少ないときの警報を停止して効率的な生産監視を実現する。
【符号の説明】
【0105】
0201 第一計画情報保持部
0202 第一実際値取得部
0203 第一適正残高算出部
0204 第一警報発信部
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品の製造過程において原材料及び部品の納入及びそれらの在庫、又は組立ラインに異常が生じた場合に、経営者に適時な警報を発することにより経営者が製品の納期遅延等の問題を早期に解決することができるようにするための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
製造業において生産管理は事業の成否を分ける重要な経営課題となっている。生産管理が問題となる局面は多岐にわたるが、市場調査、商品企画、販売予測、売上計画等に基づいて行われる生産計画と、生産計画に基づいて行われる資材調達及び製造工程の管理はそのなかでも中心的な課題となっている。この課題を解決しようとするものとして特許文献1がある。
【0003】
特許文献1には、データベースに生産計画を保持し、生産部門ごとにこれを実績データと比較して、それらの乖離を発見した場合には生産遅れアラームを自動表示する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−12307
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の生産進捗アラーム表示システムは、生産部門ごとに生産遅れを検知しアラームを発するものであることから、生産遅れが生じたときにその問題の生じた生産部門を直ちに特定することが可能となる。しかし、その生産遅れがどのような原因で発生したものであるのかをそのアラームから知ることができない。
【0006】
また、生産管理において最も中心的かつ困難な課題は、生産計画の実行よりもむしろ策定であるといってよい。特許文献1の生産進捗アラーム表示システムは生産計画が既に策定されていることを前提とするものであり、その策定に対しなんら寄与するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第一発明は、生産量及びその生産量のもとでの適正な在庫の発注残高及び在庫残高の算出式を保持し、その算出式により算出された生産量、部品発注残高及び部品在庫残高の計画値とそれらの実績値を比較して、それらに乖離が生じた場合に問題発生の原因に応じた三種類のアラームを発する連鎖アラームシステムに関する。
【0008】
第二発明は、生産量、部品発注残高及び部品在庫残高の実績値及びアラームの履歴が保持され、アラームの発せられない期間における実績値を統計的に処理して、その結果をもとに生産計画の精度を向上させることを特徴とする第一発明の連鎖アラームシステムに関する。
【0009】
第三発明は、所定期間の受注高が同期間の売上高及び引当済在庫高の和を超過していない場合には、異常は生じないものと擬制してアラームの発信を行わないことを特徴とする第一発明又は第二発明の連鎖アラームシステムに関する。
【0010】
第四発明は、所定の受注量のもとでの適正な生産量、発注残高及び在庫残高の算出式を保持し、その算出式により算出された生産量、部品発注残高及び部品在庫残高の計画値とそれらの実績値を比較して、それらに乖離が生じた場合に問題発生の原因に応じた三種類のアラームを発する連鎖アラームシステムに関する。
【0011】
第五発明は、生産量、部品発注残高及び部品在庫残高の実績値及びアラームの履歴が保持され、アラームの発せられない期間における実績値を統計的に処理して、その結果をもとに生産計画の精度を向上させることを特徴とする第四発明の連鎖アラームシステムに関する。
【0012】
第六発明は、生産量及びその生産量のもとでの適正な在庫の発注残高及び在庫残高の算出式を保持し、その算出式により算出された生産量、部品発注残高及び部品在庫残高の計画値とそれらの実績値を比較して、それらに乖離が生じた場合にその乖離の数値を出力する連鎖アラームシステムに関する。
【0013】
第七発明は、適正水準と実績値の乖離の数値が一定水準を超えた場合に警報を発する第六発明の連鎖アラームシステムに関する。
【発明の効果】
【0014】
これらの発明により、問題が発生した生産部門を特定することができるだけではなく、問題の原因に応じたアラームを発することで経営者に問題の解決の糸口を与え、また、過去の正常期間におけるデータの蓄積により、生産計画の策定にも寄与することのできる連鎖アラームシステムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ある工場においてある製品が製造に着手されてから完成に至るまでの流れを単純化して表わした図。
【図2】実施例1の連鎖アラームシステムの機能構成図。
【図3】実施例1の連鎖アラームシステムにおける処理の流れを表すフロー図。
【図4】実施例1の連鎖アラームシステムのハードウェア構成の一例を表す図。
【図5】実施例2の連鎖アラームシステムの機能構成図。
【図6】実施例2の連鎖アラームシステムの処理の流れの一例を表すフロー図。
【図7】実施例3の連鎖アラームシステムの処理の流れの一例を表すフロー図。
【図8】実施例4の連鎖アラームシステムの処理の流れの一例を表すフロー図。
【図9】実施例6の連鎖アラームシステムにおいて部品の納入に問題が生じた場合の数値表示の一例を時系列的に表した図。
【図10】実施例6の連鎖アラームシステムにおいて組立ラインに問題が生じた場合の数値表示の一例を時系列的に表した図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施例1は請求項1に記載の第一発明に関する。
【0017】
実施例2は請求項2に記載の第二発明に関する。実施例3は請求項3に記載の第三発明に関する。実施例4は請求項4に記載の第四発明に関する。実施例5は請求項5に記載の第五発明に関する。実施例6は請求項6に記載の第六発明に関する。実施例7は請求項7に記載の第七発明に関する。
【0018】
各実施例に移る前に、それらの説明で共通に使用される設例及びキーワードの説明をまず行う。
【0019】
図1は、ある工場においてある製品が製造に着手されてから完成に至るまでの流れを単純化して表わした図である。この工場ではこの製品を毎日100個生産する計画を立てている。この製品は完成するまでに10日の日数を要する。そのため、組立ラインには常時1,000個の仕掛品が存在することとなる。このように製造に着手してから完成に至る前までの製品の量を「仕掛品残高」と呼ぶこととする。なお、製品が少しずつ出来上がっていくことを表現するために実線で囲われた部分が日を追って上に伸びているが、これは仕掛品残高の計算とは直接関係がない。製造開始後1日目の仕掛品も10日目の完成間際の仕掛品も100個であることに変わりはない。
【0020】
この例では残高の単位として製品の個数を用いている。納品を正しく行うためには決められた個数を完成させることが重要であるからであり、また金額を単位としたときには完成品と部品の数量の関係が分かりにくくなるから通常は個数を単位として用いる。しかし、金額を単位とするほうが簡明である場合にはそのようにしても差し支えない。
【0021】
この製品を完成させるためには多数の部品を必要とするが、ここでは説明の簡単化のため部品Aのみが図に示されている。製品1個を生産するのに部品Aを1個必要とし、部品Aは5日目の製造工程で製品に組み込まれる。この工場は部品Aをa社から毎日100個購入しており、発注から納品までの日数は3日である。したがって、a社が納期を順守する限り常時300個の「部品発注残高」が存在することとなる。このように部品発注残高とは既に発注された部品のうち納入が未完なものの残高をいう。ここで、品質基準を満たさない部品の納入は納入が完了したとはみなさない。
【0022】
また部品発注残高とは全ての部品の発注の残高を合計した合計値とする。部品発注残高を部品ごとにではなく、一の製品について使用される部品全体について監視するのは、本件アラームシステムが製造現場において個々の工程を監視することを目的とするものではなく、経営者に対しいち早く異常の発生を知らせることを目的とするものであり、合計値を扱えば十分目的を達することができるからである。
【0023】
この工場は部品Aの納期遅延に備えて1日分、すなわち100個の部品Aを在庫として常時保有することとしている。これを「部品在庫残高」と呼ぶ。但し、部品発注残高と同様に、部品ごとの部品在庫残高を監視することはせず、全ての部品の在庫の残高を合計した合計値を部品在庫残高として一の数値を監視することとする。部品発注残高の場合と同じ理由による。
【0024】
「生産計画」とは、以上のように、ある製品について、毎日どの程度の数量を生産するか、そのための部品をいつ、何個注文するか、部品の在庫をどれほど保有するか、といった事項についての計画をいう。そして以下の説明においては、このような計画に従って予定されている数値については、例えば、計画仕掛品残高のように言葉の一部に「計画」の文字を付したり、あるいは、適正部品在庫残高のように言葉の一部に「適正」の文字を付したりすることにより目標とする数値であることが明確になるようにした。これに対し、実際に観測された数値については、例えば、実際部品在庫残高のように言葉の一部に「実際」の文字を付したり、あるいは、受注実績のように「実績」の文字を付したりすることにより、現実の結果としての数値であることが明確になるようにした。
【実施例1】
【0025】
<実施例1の概念>
【0026】
実施例1の連鎖アラームシステムは、見込み生産を行う製造業を想定したシステムである。製造業においては在庫をもたないことが利益率を上げるために重要とされ、受注生産が理想とされる。しかし、顧客の要求する納期と生産に要する期間の関係などの事情により見込み生産を行わざるを得ないことがある。そのような場合には、受注高の増減を直接に生産高に反映させることはできず、市場動向をみながら将来の受注を予測して在庫の水準も考慮しながら定期的に生産量の見直しを行う。
【0027】
実施例1の連鎖アラームシステムは、そのような生産量の見直しと同時に正常な生産体制のもとで適正とされる部品の発注残高及び在庫残高の算出方法を決定しておき、その方法により算出された数値と実績値に乖離が生じた場合にアラームを発する連鎖アラームシステムである。
【0028】
実施例1の連鎖アラームシステムは、第一に、実際の部品発注残高が適正数値を超過した場合には部品納入に遅延がある旨の警報である「部品キャパオーバー警報」を発する。すなわち、ある部品の納入に遅延が生じたときには、納入が未完の部品の数量が増加するため部品発注残高が増加する。従って、部品発注残高が計画よりも増加したときには、その原因が部品の納期遅延によると推定してその旨の警報を発するのである。
【0029】
実施例1の連鎖アラームシステムは、第二に、実際の部品発注残高が適正数値を超過していない場合であって、実際の部品在庫残高が適正数値を超過した場合には、部品在庫残高が計画を上回った旨の警報である「組立ライン停止警報」を発する。部品の納入に問題がないという状況のもとで部品の在庫が増えるのは、部品が予定通り使用されていないことを意味する。すなわち、この場合には組立ラインに異常が発生した等の理由により部品の使用がストップしていることを意味している。
【0030】
実施例1の連鎖アラームシステムは、第三に、実際の部品発注残高が適正数値を超過せず、かつ、実際の部品在庫残高が適正数値を超過しない場合であって、しかも、実際の仕掛品残高が予定を上回った場合には、仕掛品残高が計画を上回った旨の警報である「その他ライン障害警報」を発する。これは、部品の納入及び使用状態に異常がない場合であって、製品の完成に遅れが生じている事態を意味している。具体的には、組立ラインは動いており、それに従って部品も予定通り使用されているが、製造工程の異常等の理由により歩留まりが悪化するなどして完成品が計画通り仕上がっていない状態を意味している。
<実施例1の構成>
【0031】
図2は、実施例1の連鎖アラームシステムの機能構成図である。実施例1の連鎖アラームシステム0201は、第一実際値取得部0202と、第一計画情報保持部0203と、第一適正残高算出部0204と、第一警報発信部0205とを有する。
【0032】
「第一実際値取得部」は、仕掛品の実際の残高である実際仕掛品残高と、部品発注の実際の残高である実際部品発注残高と、部品在庫の実際の残高である実際部品在庫残高とを取得する。すなわち、第一実際値取得部は、外部の製造管理システム、経理会計システム等に通信回線等を介して接続されてこれらのシステムから、あるいは、キーボード入力により、実際の数値である実際仕掛品残高、実際部品発注残高及び実際部品在庫残高を取得する。仕掛品残高、部品発注残高及び部品在庫残高については既に説明した。実際仕掛品残高、実際部品発注残高及び実際部品在庫残高は、これらの実績値である。
【0033】
「第一計画情報保持部」は、計画仕掛品残高、第一適正部品発注残高算出式及び第一適正部品在庫残高算出式を保持する。
【0034】
仕掛品残高については既に説明したが、「計画仕掛品残高」とは、計画された仕掛品残高であり、策定された生産計画により予定され、あるいは目標とされる生産量のことである。計画仕掛品残高は、例えば、計画を策定した経営者がキーボード入力した数値を磁気記憶媒体に記録するなどして保持される。
【0035】
「第一適正部品発注残高算出式」とは、前記生産計画のもとにおいて適正な部品の発注残高となる第一適正部品発注残高を計画仕掛品残高を引数の一として算出するための関数式である。部品発注残高については図1を用いて既に説明した通り、既に発注された部品のうち納入が未完なものの残高をいうが、第一適正部品発注残高は通常の生産体制のもとにおいて所定の計画仕掛品残高を維持するために適当とされる部品発注残高であり、生産体制に異常がなければ実現されるべき部品発注残高である。第一適正部品発注残高算出式は、計画仕掛品残高を引数の一として使用して第一適正部品発注残高を算出するための関数式である。
【0036】
第一適正部品発注残高算出式は、図1の設例でいえば、計画仕掛品残高に30%を乗じるだけの一次式となる。あるいは、もっと複雑な二次以上の高次の式であってもよい。
【0037】
第一適正部品発注残高算出式は、引数として他の要素、最終製品の製造開始日等の時間的要素等を使用してもよい。図1の設例でいえば、計画仕掛品残高に変更がない間は適正部品発注残高は計画仕掛品残高に30パーセントを乗じるだけでよいが、計画仕掛品残高を増額させた場合には、部品の発注と使用は時間差を伴って増加するため日時を算出の要素に加えなければならない。例えば一日当たりの生産を100個から120個に増加させた場合、その変更の日から起算して3日後から部品の発注を120個に増加させるため、3日後、4日後及び5日後の部品発注残高は、それぞれ、320個、340個及び360個となる。このほか、他の製造条件により部品の必要量が異なる場合などには他の条件を算出の際の引数として用いることとなる。
【0038】
第一適正部品発注残高算出式は、経営者などにより人為的に策定されたものを、連鎖アラームシステムが取得して保持することを想定している。第一適正部品発注残高算出式の決定は、生産工程の具体的な計画に基づいて行ってもよいし、過去において正常な生産体制が維持されていたときの実績値をもとに行ってもよい。
【0039】
「第一適正部品在庫残高算出式」とは、前記生産計画のもとにおいて適正な部品の在庫残高となる第一適正部品在庫残高を計画仕掛品残高を引数の一として算出するための関数式である。第一適正部品在庫残高は通常の生産体制のもとにおいて所定の計画仕掛品残高を維持するために適当とされる部品在庫残高であり、生産体制に異常がなければ実現されるべき部品在庫残高である。第一適正部品在庫残高算出式は、計画仕掛品残高を引数の一として使用して第一適正部品在庫残高を算出するための関数式である。
【0040】
「第一適正残高算出部」は、計画仕掛品残高、第一適正部品発注残高算出式及び第一適正部品在庫残高算出式を用いて、第一適正部品発注残高及び第一適正部品在庫残高を算出する。第一適正残高算出部は、第一計画情報保持部に内部通信経路を介して接続され、そこから計画仕掛品残高、第一適正部品発注残高算出式及び第一適正部品在庫残高算出式を取得する。そして、これらを使用して第一適正部品発注残高及び第一適正部品在庫残高を算出する。
【0041】
「第一警報発信部」は、以下の条件に従い、部品キャパオーバー警報、組立ライン停止警報及びその他ライン障害警報を発する。
【0042】
第一警報発信部は、実際部品発注残高が第一適正部品発注残高を超過する場合には、部品納入に遅延がある旨の警報である部品キャパオーバー警報を発する。すなわち、図1の設例では第一適正部品発注残高は300個であり正常な生産体制のもとでは実際部品発注残高もこれに一致すべきとされるが、例えば、部品Aの納入業者aが部品の納入を全部について一日遅延すると実際部品発注残高が400個となり、部品キャパオーバー警報が発せられることとなる。
【0043】
第一警報発信部は、実際部品発注残高が第一適正部品発注残高を超過せず、かつ、実際部品在庫残高が第一適正部品在庫残高を超過する場合には、部品在庫残高が計画を上回った旨の警報である組立ライン停止警報を発する。すなわち、図1の設例では第一適正部品在庫残高は100個であり正常な生産体制のもとでは実際部品在庫残高もこれに一致すべきとされるが、例えば、部品の納入に問題がなくとも、組立ラインに問題が発生してその結果部品Aの使用がその日に全くされないと実際部品在庫残高は200個となり、組立ライン停止警報が発せられることとなる。
【0044】
第一警報発信部は、実際部品発注残高が第一適正部品発注残高を超過せず、かつ、実際部品在庫残高が第一適正部品在庫残高を超過せず、かつ、実際仕掛品残高が計画仕掛品残高を超過する場合には、仕掛品残高が計画を上回った旨のその他ライン障害警報を発する。部品の納入に支障がなく、また、組立ラインも一応は動いていて部品の使用がされている場合でも、例えば、製品の仕上げ工程に問題があり、製品が完成していないような場合には、その他ライン障害警報が発せられる。
【0045】
図3は、実施例1の連鎖アラームシステムにおける処理の流れを表すフロー図である。まず、第一実際値取得部が、実際仕掛品残高と、実際部品発注残高と、実際部品在庫残高とを取得する(ステップ0301)。これと並行して、第一計画情報保持部が、計画仕掛品残高と、第一適正部品発注残高算出式と、第一適正部品在庫残高算出式とを保持し(ステップ0302)、第一適正残高算出部が、これらを第一計画情報保持部から取得して、第一適正部品発注残高と、第一適正部品在庫残高とを算出する(ステップ0303)。第一警報発信部は、第一実際値取得部からは実際仕掛品残高、実際部品発注残高及び実際部品在庫残高を、第一適正残高算出部からは計画仕掛品残高、第一適正部品発注残高及び第一適正部品在庫残高を取得して、以下の処理を行う。まず、実際部品発注残高と第一適正部品発注残高を比較して(ステップ0304)、前者が後者を超過する場合には部品キャパオーバー警報を発する(ステップ0305)。そうでない場合には次に、実際部品在庫残高と第一適正部品在庫残高を比較して(ステップ0306)、前者が後者を超過する場合には組立ライン停止警報を発する(ステップ0307)。そうでない場合にはさらに、実際仕掛品残高と計画仕掛品残高を比較して(ステップ0308)、前者が後者を超過する場合にはその他ライン障害警報を発し(ステップ0309)、そうでない場合には何ら警報を発しない(ステップ0310)。
【0046】
図4は、実施例1の連鎖アラームシステムのハードウェア構成の一例を表す図である。連鎖アラームシステムは、各種演算処理及び検索処理を行う「CPU」0401と、プログラムやデータを一時的に記憶して保持する「メモリ」0402と、プログラムやデータを保持するためのハードディスクドライブ装置、ROMなどの「外部記憶装置」0403と、「通信回線」を介して通信を行うための「通信インタフェイス」0404とを備えている。そしてそれらがデータ通信経路である「システムバス」0405によって相互に接続され、情報の送受信や処理を行う。
【0047】
外部記憶装置に保持されたプログラムは必要に応じてメモリに読みだされ、CPUは当該プログラムをメモリに参照することで各種演算処理を実行する。また、このメモリにはそれぞれ複数のアドレスが割り当てられており、CPUの演算処理においては、そのアドレスを特定し格納されているデータにアクセスすることで、データを用いた演算処理を行うことが可能になっている。
【0048】
このようなハードウェア構成は他の実施例における連鎖アラームシステムにおいても同様である。
<実施例1の効果>
【0049】
実施例1の連鎖アラームシステムは、見込み生産において、生産計画と実績値との間に乖離が生じた場合に、単に生産部門(製品)別にアラームを出すだけでなく、問題の種類に応じた警報を行うことにより、経営者が問題の所在を知ることを容易とする連鎖アラームシステムである。
【実施例2】
【0050】
<実施例2の概念>
実施例1の連鎖アラームシステムは、経営者により策定された生産計画が計画通り実行されているかを監視するものであった。これに対し、実施例2の連鎖アラームシステムは、生産計画のうち、第一適正部品発注残高算出式及び第一適正部品在庫残高算出式を過去のデータの履歴に基づいてさらに適正なものに自動的に更新していくことを特徴とする。実施例1の連鎖アラームシステムにおいては、第一計画情報保持部に保持された第一適正部品発注残高算出式や第一適正部品在庫残高算出式は経営者が人為的にそのときどきに選択したものであった。しかし、適正部品発注残高や適正部品在庫残高は製造の過程においてさまざまな試行錯誤を経ながら変更されていくことが多い。そして、その試行錯誤の過程においてアラームの発せられなかった期間の実績値は正常な生産体制のもとにおける適正な数値であると推定され、他方、アラームの発せられた期間の実績値は問題の原因となる可能性を含んだ不適正な数値であると推定することができる。
【0051】
そこで、実施例2の連鎖アラームシステムでは、実際仕掛品残高、実際部品発注残高及び実際部品在庫残高の履歴を記憶しておき、また、同時にアラームが発せられたかどうかの履歴も記憶しておく。そして、アラームが発せられなかった期間におけるこれらの数値は正常な生産体制が維持されている期間のものであるとみなしてその数値により第一適正部品発注残高算出式及び第一適正部品在庫残高算出式を生成し、これらの新しい算出式を用いて生産工程を更に監視する。このようにして適正とされた水準を目標として適正な生産体制を実現し、さらにそのようにして実現された適正な実績値を用いてさらに目標とする適正水準を決定するというプロセスの繰り返しにより、使用を重ねれば重ねるほど適正な生産計画が実現されていくこととなる。
<実施例2の構成>
【0052】
図5は、実施例2の連鎖アラームシステムの機能構成図である。実施例2の連鎖アラームシステム0501は、第一実際値取得部0502と、第一計画情報保持部0503と、第一適正残高算出部0504と、第一警報発信部0505とを有する。これらの構成は実施例1の連鎖アラームシステムと同様である。実施例2の連鎖アラームシステムはさらに、第一実際値履歴保持部0506と、第一警報履歴保持部0507と、第一計画更新部0508とを備えることを特徴とする。
【0053】
「第一実際値履歴保持部」は、第一実際値取得部から実際仕掛品残高、実際部品発注残高及び実際部品在庫残高を取得して、それらの情報をそれらの情報が取得された日時とともに時系列的に保持する。
【0054】
「第一警報履歴保持部」は、第一警報発信部から部品キャパオーバー警報、組立ライン停止警報及びその他ライン障害警報を取得して、それらの情報をそれらが発信された日時とともに時系列的に保持する。
【0055】
「第一計画更新部」は、まず、第一実際値履歴保持部からは実際仕掛品残高、実際部品発注残高及び実際部品在庫残高の時系列データを、また、第一警報履歴保持部からは部品キャパオーバー警報、組立ライン停止警報及びその他ライン障害警報の時系列データを取得する。次に、部品キャパオーバー警報、組立ライン停止警報及びその他ライン障害警報のいずれも発することがなかった期間に係る実際仕掛品残高、実際部品発注残高及び実際部品在庫残高を統計処理し、新しい第一適正部品発注残高算出式及び新しい第一適正部品在庫残高算出式を生成する。そして最後に、これらにより前記第一計画情報保持部に保持された古い第一適正部品発注残高算出式及び古い第一適正部品在庫残高算出式を更新する。
【0056】
「統計処理」とは、例えば、第一適正部品発注残高算出式が実際部品発注残高(Y)を独立変数、実際仕掛品残高(X)を従属変数としたY=aX+bという形の一次式で表わされるとして、実績値をもとに回帰分析を行い、係数a及びbを求める手法などを意味する。そして、その回帰分析には、アラームが発せられなかった期間に係る実際仕掛品残高及び実際部品発注残高のみを使用する。それらのなかからどの程度の過去にまで遡ってデータを使用するかはいかようにでも選択できる。
【0057】
図6は、実施例2の連鎖アラームシステムの処理の流れの一例を表すフロー図である。ステップ0301から0310までは図3を用いて説明した実施例1の場合と同様である。ここではそのあとの処理を説明する。まず、第一実際値履歴保持部が実際仕掛品残高、実際部品発注残高及び実際部品在庫残高の過去データを時系列的に保持する(ステップ0601)。これと並行して、第一警報履歴保持部が部品キャパオーバー警報、組立ライン停止警報及びその他ライン障害警報を、それらを発した日時とともに記録する(ステップ0602)。そして第一計画更新部が、部品キャパオーバー警報、組立ライン停止警報及びその他ライン障害警報のいずれも発することがなかった期間に係る実際仕掛品残高、実際部品発注残高及び実際部品在庫残高を統計処理することにより、新しい第一適正部品発注残高算出式及び新しい第一適正部品在庫残高算出式を生成し、これらにより前記第一計画情報保持部に保持された古い第一適正部品発注残高算出式及び古い第一適正部品在庫残高算出式を更新する(ステップ0603)。
<実施例2の効果>
【0058】
実施例2の連鎖アラームシステムにより、過去の正常期間におけるデータの統計処理の結果を用いて生産計画をより信頼性の高いものとすることができる。
【実施例3】
【0059】
<実施例3の概念>
実施例3の連鎖アラームシステムは、現在までの一定期間における実際の受注高が同期間の実際の売上高及び引当済在庫高を超過しない場合には、受注した分は順調に納品され、あるいは、在庫から引き当てられており、増産による問題は発生するおそれがないと擬制してアラームを停止することを特徴とするものである。
【0060】
実際問題としては、このような場合であっても、部品の納期が遅延したり組立ラインに問題が生じたりする可能性は残されている。しかし、受注高が売上高と引当済在庫高の範囲内に収まっているような状況においては、部品の納期に遅延があったとしても大事に至ることは少ない。実施例3の連鎖アラームシステムは受注高が部品納入業者や組立ラインの潜在能力を大きく上回るような事態を予測して経営者に警報することを主目的とすることから、真に問題が深刻化するような状況においてのみ警報を作動させることにより効率的な生産監視体制を実現しようとするものである。
<実施例3の構成>
【0061】
実施例3の連鎖アラームシステムの機能構成は図2又は図5により表すことができる。但し、第一実際値取得部及び第一警報発信部の具体的構成が実施例1又は2の場合と若干異なる。
【0062】
「第一実際値取得部」は、現在までの一定期間における実際の受注高である実際受注高と、同期間における実際の売上高である実際売上高と、同期間における実際の引当済在庫高である実際引当済在庫高とをさらに取得する。
【0063】
「現在までの一定期間」とは、例えば、一か月前から現在までといったような期間を指す。「実際受注高」、「実際売上高」及び「実際引当済在庫高」はこの期間の実際の数値であり、数量としても金額としてもよいが、比較のため一を金額とする場合には他も金額としなければならないのはいうまでもない。また、「現在までの一定期間における実際受注高」という場合には、その期間の実際受注高の合計でもよいし、現在に近い数値に重みを置いた加重平均値などとしてもよい。
【0064】
「実際引当済在庫高」とは、在庫のうち特定の取引先への納品が既に決まっているものの残高をいう。
【0065】
「第一警報発信部」は、実際受注高が実際売上高と実際引当済在庫高の合計を超過しない場合には、部品キャパオーバー警報、組立ライン停止警報及びその他ライン障害警報のいずれの警報も発しないように構成されている。
【0066】
図7は、実施例3の連鎖アラームシステムの処理の流れの一例を表すフロー図である。まず、第一実際値取得部が、実際仕掛品残高と、実際部品発注残高と、実際部品在庫残高と、実際受注高と、実際売上高と、実際引当済在庫高とを取得する(ステップ0601)。これと並行して行われるステップ0302及び0303は図3を用いて実施例1で説明したフローと同様である。次に、第一警報発信部は、実際売上高及び実際引当済在庫高の和と実際受注高との比較を行い、後者が前者を超過しない場合には警報を発信しないが、後者が前者を超過する場合にはステップ0304から0310までの処理を行う。ステップ0304から0310までの処理は図3を用いて実施例1で説明したフローと同様である。
<実施例3の効果>
【0067】
実施例3の連鎖アラームシステムによれば、受注増加により生産に問題が生じる蓋然性が高い状況下においてのみアラームを発することにより効率的な生産監視を実現することのできるシステムが提供される。
【実施例4】
【0068】
<実施例4の概念>
【0069】
実施例1の連鎖アラームシステムは、計画した仕掛品残高を基準として適正な部品発注残高及び部品在庫残高を算出するものであった。これに対し、実施例4のそれは受注実績をベースとして適正な仕掛品残高、部品発注残高及び部品在庫残高を算出する。
【0070】
実施例1の連鎖アラームシステムは、見込み生産を行う生産者に適している。見込み生産を行う場合には、市場動向、受注状況等を見ながら定期的に生産計画の見直しを行うが、見直しの間は一定量を継続して生産する。従って、生産計画により生産量は確定しているからこの数値をベースとして適正な部品発注残高及び部品在庫残高を算出すればよい。
【0071】
これに対して実施例4の連鎖アラームシステムは受注生産を行う生産者に適している。受注生産を行う場合には受注に応じて生産量が変動する。従って、適正な仕掛品残高、部品発注残高及び部品在庫残高を受注高に応じて算出するのがよい。
<実施例4の構成>
【0072】
実施例4の連鎖アラームシステムの機能構成は図2で「第一」とあるのを「第二」と読替えて表すことができる。すなわち、実施例4の連鎖アラームシステムは、第二実際値取得部と、第二計画情報保持部と、第二適正残高算出部と、第二警報発信部とを有する。
【0073】
「第二実際値取得部」は、受注実績、実際仕掛品残高、実際部品発注残高及び実際部品在庫残高を取得する。「受注実績」は所定期間における実際の受注をいう。「所定期間」は実際仕掛品残高、実際部品発注残高及び実際部品在庫残高を算出する基礎としてふさわしい期間が使用される。例えば、生産開始から完了まで5日を要する製品の場合には過去5日とするのがよい。
【0074】
「第二計画情報保持部」は、適正仕掛品残高算出式、第二適正部品発注残高算出式及び
第二適正部品在庫残高算出式を保持する。本発明の基本となる考えは、一定の受注に基づいて受注生産がおこなわれ、正常な生産体制が維持されている状況では、受注と、仕掛品残高、部品発注残高及び部品在庫残高との間に一定の関係が維持されるはずであるということである。そして、この一定の関係を記述するものが前記三つの算出式である。
【0075】
これらの算出式が実施例1における算出式と異なるのは、計画仕掛品残高を引数とするのではなく、受注実績を引数とする点である。但し、受注生産のもとでは、受注した額に応じて自動的に仕掛品残高も決定されるのであるから、その意味するところは実際大差がない。
【0076】
「適正仕掛品残高算出式」は、生産計画のもとにおいて受注実績に応じて仕掛中であるべき仕掛品の適正仕掛品残高を受注実績を引数の一として算出するための関数式である。例えば、生産開始から完成まで5日を要し、受注の翌日から生産を開始する場合を例として、過去5日間における受注実績が、一日前100個、二日前120個、三日前90個、四日前110個、五日前80個であったとすると、適正仕掛品残高はこれらの合計500個となり、適正仕掛品残高算出式はそのような計算を行う式となる。
【0077】
「第二適正部品発注残高算出式」は、生産計画のもとにおいて受注実績に応じて適正な部品の発注残高となる第二適正部品発注残高を受注実績を引数の一として算出するための関数式である。例えば、前記設例で必要な部品は部品bのみであり、部品bは対象製品製造開始後二日目に発注され三日目に納入されるとした場合、前段落の受注実績の例を使用すると、第一適正部品発注残高は三日前の受注に対応する90個と二日前の受注に対応する120個の和となるべきであり、第二適正部品発注残高算出式はそのような演算を行う式となる。
【0078】
「第二適正部品在庫残高算出式」は、生産計画のもとにおいて受注実績に応じて適正な部品の在庫残高となる第二適正部品在庫残高を受注実績を引数の一として算出するための関数式である。第二適正部品在庫残高は受注実績に応じて変動させる方法も固定とする方法もありうる。受注実績に応じて変動させる場合には、部品の在庫から引き当てたり在庫を積み増したりする際に前記第一適正部品受注残高との調整が必要となり式はより複雑になる点に注意を要する。
【0079】
「第二適正残高算出部」は、受注実績、適正仕掛品残高算出式、第二適正部品発注残高算出式及び第二適正部品在庫残高算出式を用いて、適正仕掛品残高、第二適正部品発注残高及び第二適正部品在庫残高を算出する。
【0080】
実施例4の連鎖アラームシステムにおける他の構成は、実施例1のそれと同様である。
【0081】
図8は、実施例4の連鎖アラームシステムの処理の流れの一例を表すフロー図である。まず、第二実際値取得部が、受注実績、実際仕掛品残高、実際部品発注残高及び実際部品在庫残高を取得する(ステップ0801)。また、第二計画情報保持部が、適正仕掛品残高算出式、第二適正部品発注残高算出式及び第二適正部品在庫残高算出式を保持する(ステップ0802)。さらに、第二適正残高算出部が、第二計画情報保持部からは適正仕掛品残高算出式、第二適正部品発注残高算出式及び第二適正部品在庫残高算出式を、第二実際値取得部からは受注実績を取得して、適正仕掛品残高、第二適正部品発注残高及び第二適正部品在庫残高を算出する(ステップ0803)。この後の処理は図3を使って説明した実施例1におけるステップ0304から0310と同様である。
<実施例4の効果>
【0082】
実施例4の連鎖アラームシステムは、受注生産において、生産計画と実績値との間に乖離が生じた場合に、単に生産部門(製品)別にアラームを出すだけでなく、問題の種類に応じた警報を行うことにより、経営者が問題の所在を知ることを容易とする連鎖アラームシステムである。
【実施例5】
【0083】
<実施例5の概念>
実施例5の連鎖アラームシステムは、実施例2におけるそれと同様に、生産計画を過去のデータの履歴に基づいてさらに適正なものに自動的に更新していくことを特徴とするものである。
<実施例5の構成>
【0084】
実施例5の連鎖アラームシステムの機能構成は図5で「第一」とあるのを「第二」と読替えて表すことができる。すなわち、実施例5の連鎖アラームシステムは、第二実際値取得部と、第二計画情報保持部と、第二適正残高算出部と、第二警報発信部と、第二実際値履歴保持部と、第二警報履歴保持部と、第二計画更新部とを有する。第二実際値取得部、第二計画情報保持部、第二適正残高算出部及び第二警報発信部は、実施例4のそれらと同様である。
【0085】
「第二実際値履歴保持部」は、第二実際値取得部から受注実績、実際仕掛品残高、実際部品発注残高及び実際部品在庫残高を取得して、その情報をそれらの情報が取得された日時とともに時系列的に保持する。
【0086】
「第二警報履歴保持部」は、第二警報発信部から部品キャパオーバー警報、組立ライン停止警報及びその他ライン障害警報を取得して、それらの情報をそれらが発信された日時とともに時系列的に保持する。
【0087】
「第二計画更新部」は、まず、第二実際値履歴保持部からは受注実績、実際仕掛品残高、実際部品発注残高及び実際部品在庫残高の時系列データを、また、第二警報履歴保持部からは部品キャパオーバー警報、組立ライン停止警報及びその他ライン障害警報の時系列データを取得する。次に、部品キャパオーバー警報、組立ライン停止警報及びその他ライン障害警報のいずれも発することがなかった期間に係る受注実績、実際仕掛品残高、実際部品発注残高及び実際部品在庫残高を統計処理して、新しい適正仕掛品残高算出式、新しい第二適正部品発注残高算出式及び新しい第二適正部品在庫残高算出式を生成する。そして最後に、これらにより第二計画情報保持部に保持された古い適正仕掛品残高算出式、古い第二適正部品発注残高算出式及び古い第二適正部品在庫残高算出式を更新する。
【0088】
「統計処理」とは、実施例2の場合とほぼ同様であるが、回帰分析を用いた計算例では実際仕掛品残高、実際部品発注残高及び実際部品在庫残高が独立変数、受注実績が従属変数となる。
【0089】
実施例5の連鎖アラームシステムの処理の流れは、実施例2のそれと実施例4のそれの該当箇所を組み合わせて説明できるため、ここでの詳しい説明は省略する。
<実施例5の効果>
【0090】
実施例5の連鎖アラームシステムにより、受注生産のもとで、過去の正常期間におけるデータの統計処理の結果を用いて生産計画をより信頼性の高いものとすることができる。
【実施例6】
【0091】
<実施例6の概念>
【0092】
実施例1から5までは、所定の条件に従って三種類の警報を発信するというものであった。実施例6の連鎖アラームシステムは、これらの警報を発する代わりに、仕掛品残高、部品発注残高及び部品在庫残高のそれぞれについての計画と実績の乖離をそのまま数値で表示することを特徴とする連鎖アラームシステムである。
【0093】
図9は、実施例6の連鎖アラームシステムにおいて部品の納入に問題が生じた場合の数値表示の一例を時系列的に表した図である。図中の「部品発注残高差」、「部品在庫残高差」及び「仕掛品残高差」はそれぞれ部品発注残高、部品在庫残高及び仕掛品残高における計画値と実際値の差であり、実際値が計画値を上回る場合は基準線の上へ、実際値が計画値を下回る場合は基準線の下へそれぞれに関する棒グラフが伸びるような表示としている。
【0094】
図9(A)は、一部の部品の納入に遅延が生じたことにより、実際の部品発注残高が計画した部品発注残高を超過し、部品発注残高差が正の数値となったこと、そして、生産は遅延が生じた部品についての在庫を取り崩しながら中止することなく行われているため実際の部品在庫残高が計画を下回り、部品在庫残高差が負の数値となったことを示している。この状態は当該部品の在庫が尽きるまで継続し、部品発注残高差及び部品在庫残高差のグラフは伸び続ける。このグラフが伸びている間も、生産は支障なく継続される。しかし、当該部品の在庫が尽きると当該部品が使用される工程及びその前工程の生産ラインがストップする。このとき、問題のある部品以外の部品の発注を中止しないと図9(B)のように部品在庫残高差のグラフは逆に縮み始める。問題のない部品の在庫がラインの停止に伴って積み上がることで計画を上回ることになるからである。問題のある部品が使用される工程以降の工程は製品が完成するまで継続して行われる。したがって、問題のある部品の在庫が尽きてもしばらくは仕掛品残高に異常は見られない。しかし、問題のある部品が使用される工程以降の組立ラインにあった製品がすべて完成されるとその後は図9(C)のように仕掛品残高差が正の数値となり、製品の納入に遅延が生じうる状態となったことを示している。
【0095】
図10は、実施例6の連鎖アラームシステムにおいて組立ラインに問題が生じた場合の数値表示の一例を時系列的に表した図である。図10(A)は、部品の納入は予定通り行われているが、組立ラインに問題が発生したために一部部品の使用がされなくなり、その結果それらの部品の在庫が積み上がり部品在庫残高が計画を超過したことを示している。このとき、組立ラインの各工程のうち問題が発生した箇所の後工程ではラインが流れており、直ちには仕掛品残高に異常が生じていないことも示されている。図10(B)は、組立ラインの問題は解消されておらず引き続き部品の在庫は増加しているが、組立ラインの問題発生を受けて一部部品の発注が停止されたために実際の部品発注残高が計画を下回ったことを表している。図10(C)は、問題の発生した箇所の後工程のラインに載っていた製品がすべて完成され、その後仕掛品残高差が正の数値となって納品に遅延が生じうる状態となったことを示している。
【0096】
実際には、問題の発生状況やそれに対する対処の仕方によってはこれらのグラフは異なった動きをする場合もあるが、三つのグラフの組合せとそれらの時系列的な変化を監視することにより問題の把握が一層容易となる。
<実施例6の構成>
【0097】
実施例6の連鎖アラームシステムの機能構成は図2で「第一」とあるのを「第三」と読替えて表すことができる。但し、第三警報発信部の具体的構成が実施例1の場合と異なる。他の構成は実施例1の場合と同様であり、第一とあるのを第三と読替えて理解することができる。
【0098】
「第三警報発信部」は、仕掛品残高差、部品発注残高差及び部品在庫残高差を表示する。「仕掛品残高差」とは、実際仕掛品残高と計画仕掛品残高の差であり、「部品発注残高差」とは、実際部品発注残高と第三適正部品発注残高の差であり、「部品在庫残高差」とは、実際部品在庫残高と第三適正部品在庫残高の差である。
【0099】
実施例6の連鎖アラームシステムにおける処理の流れは、図3を用いて説明した実施例1の場合とステップ0301から0303までは同様であるが、これに、第三警報発信部が、仕掛品残高差、部品発注残高差及び部品在庫残高差を計算するステップと、その計算結果を表示するステップとが加わる。これらのフローを表す図は省略する。
<実施例6の効果>
【0100】
実施例6の連鎖アラームシステムは、生産計画と実績値との間に乖離が生じた場合に、単に生産部門(製品)別にアラームを出すだけでなく、仕掛品残高、部品発注残高及び部品在庫残高に係る計画と実績の乖離を示すことにより、経営者が問題の所在を詳しく知ることを容易とする連鎖アラームシステムである。
【実施例7】
【0101】
<実施例7の概念>
【0102】
実施例6の連鎖アラームシステムは、仕掛品残高差等をそのまま経営者に示すものであるため問題が発生していないかあるいは問題が軽微であるときにも常にそれらの表示が行われる。そのため、経営者は問題の発生していない場合にも常にそれらの数値に目をやり問題発生の有無を数値やグラフから読み取らなければならない。実施例7の連鎖アラームシステムは、これらの数値の絶対値が予め保持した閾値を超えたかどうかを知らせることにより、経営者による監視の負担を軽減することを可能とするものである。
<実施例7の構成>
【0103】
実施例6と共通する部分については説明を省略する。実施例7の連鎖アラームシステムは、「第三計画情報保持部」が警報発信のための閾値をさらに保持する。「閾値」は、経営者が個別に判断して事前に登録しておく数値である。「第三警報発信」部は、仕掛品残高差、部品発注残高差及び部品在庫残高差の絶対値の和が前記閾値を超えた場合にはその旨の警報を発信する。
【実施例8】
【0104】
以上に紹介した実施例のほかに、実施例4又は5の連鎖アラームシステムに実施例3の特徴を追加した実施形態が考えられる。すなわち、実際受注高、実際売上高及び実際引当済在庫高をさらに取得して実際売上高及び実際引当済在庫高の和を実際受注高が超過しないときには、第二警報発信部における警報の発信を停止する構成とする。これにより、問題の発生する蓋然性が少ないときの警報を停止して効率的な生産監視を実現する。
【符号の説明】
【0105】
0201 第一計画情報保持部
0202 第一実際値取得部
0203 第一適正残高算出部
0204 第一警報発信部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生産計画に従って行われる製品の製造において異常を知らせるための連鎖アラームシステムであって、
仕掛品の実際の残高である実際仕掛品残高と、部品発注の実際の残高である実際部品発注残高と、部品在庫の実際の残高である実際部品在庫残高とを取得する第一実際値取得部と、
前記生産計画によれば仕掛中であるべき製品の残高である計画仕掛品残高と、
前記生産計画のもとにおいて適正な部品の発注残高となる第一適正部品発注残高を計画仕掛品残高を引数の一として算出するための関数式である第一適正部品発注残高算出式と、
前記生産計画のもとにおいて適正な部品の在庫残高となる第一適正部品在庫残高を計画仕掛品残高を引数の一として算出するための関数式である第一適正部品在庫残高算出式と、
を保持する第一計画情報保持部と、
前記計画仕掛品残高、前記第一適正部品発注残高算出式及び前記第一適正部品在庫残高算出式を用いて、第一適正部品発注残高及び第一適正部品在庫残高を算出する第一適正残高算出部と、
前記実際部品発注残高が前記第一適正部品発注残高を超過する場合には、部品納入に遅延がある旨の警報である部品キャパオーバー警報を発し、
前記実際部品発注残高が前記第一適正部品発注残高を超過せず、かつ、前記実際部品在庫残高が前記第一適正部品在庫残高を超過する場合には、部品在庫残高が計画を上回った旨の警報である組立ライン停止警報を発し、
前記実際部品発注残高が前記第一適正部品発注残高を超過せず、かつ、前記実際部品在庫残高が前記第一適正部品在庫残高を超過せず、かつ、前記実際仕掛品残高が前記計画仕掛品残高を超過する場合には、仕掛品残高が計画を上回った旨のその他ライン障害警報を発する、
第一警報発信部と
を有する連鎖アラームシステム。
【請求項2】
前記部品キャパオーバー警報、前記組立ライン停止警報及び前記その他ライン障害警報を、それらを発した日時とともに保持する第一警報履歴保持部と、
前記実際仕掛品残高、前記実際部品発注残高及び前記実際部品在庫残高の過去データを時系列的に保持する第一実際値履歴保持部と、
前記部品キャパオーバー警報、前記組立ライン停止警報及び前記その他ライン障害警報のいずれも発することがなかった期間に係る前記実際仕掛品残高、前記実際部品発注残高及び前記実際部品在庫残高を統計処理することにより、新しい第一適正部品発注残高算出式及び新しい第一適正部品在庫残高算出式を生成し、これらにより前記第一計画情報保持部に保持された古い第一適正部品発注残高算出式及び古い第一適正部品在庫残高算出式を更新する第一計画更新部と、
をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の連鎖アラームシステム。
【請求項3】
前記第一実際値取得部は、現在までの一定期間における実際の受注高である実際受注高と、同期間における実際の売上高である実際売上高と、同期間における実際の引当済在庫高である実際引当済在庫高とをさらに取得し、
前記第一警報発信部は、実際受注高が実際売上高と実際引当済在庫高の合計を超過しない場合には、部品キャパオーバー警報、組立ライン停止警報及びその他ライン障害警報のいずれの警報も発しないように構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の連鎖アラームシステム。
【請求項4】
生産計画に従って行われる製品の製造において異常を知らせるための連鎖アラームシステムであって、
所定期間における実際の受注である受注実績と、仕掛品の実際の残高である実際仕掛品残高と、部品発注の実際の残高である実際部品発注残高と、部品在庫の実際の残高である実際部品在庫残高とを取得する第二実際値取得部と、
前記生産計画のもとにおいて前記受注実績に応じて仕掛中であるべき仕掛品の適正仕掛品残高を、前記受注実績を引数の一として算出するための関数式である適正仕掛品残高算出式と、
前記生産計画のもとにおいて前記受注実績に応じて適正な部品の発注残高となる第二適正部品発注残高を、前記受注実績を引数の一として算出するための関数式である第二適正部品発注残高算出式と、
前記生産計画のもとにおいて前記受注実績に応じて適正な部品の在庫残高となる第二適正部品在庫残高を、前記受注実績を引数の一として算出するための関数式である第二適正部品在庫残高算出式と、
を保持する第二計画情報保持部と、
前記受注実績、前記適正仕掛品残高算出式、前記第二適正部品発注残高算出式及び前記第二適正部品在庫残高算出式を用いて、適正仕掛品残高、第二適正部品発注残高及び第二適正部品在庫残高を算出する第二適正残高算出部と、
前記実際部品発注残高が前記第二適正部品発注残高を超過する場合には、部品納入に遅延がある旨の警報である部品キャパオーバー警報を発し、
前記実際部品発注残高が前記第二適正部品発注残高を超過せず、かつ、前記実際部品在庫残高が前記第二適正部品在庫残高を超過する場合には、部品在庫残高が計画を上回った旨の警報である組立ライン停止警報を発し、
前記実際部品発注残高が前記第二適正部品発注残高を超過せず、かつ、前記実際部品在庫残高が前記第二適正部品在庫残高を超過せず、かつ、前記実際仕掛品残高が前記適正仕掛品残高を超過する場合には、仕掛品残高が計画を上回った旨のその他ライン障害警報を発する、
第二警報発信部と
を有する連鎖アラームシステム。
【請求項5】
前記部品キャパオーバー警報、前記組立ライン停止警報及び前記その他ライン障害警報を、それらを発した日時とともに記録する第二警報履歴保持部と、
前記受注実績、前記実際仕掛品残高、前記実際部品発注残高及び前記実際部品在庫残高の過去データを時系列的に保持する第二実際値履歴保持部と、
前記部品キャパオーバー警報、前記組立ライン停止警報及び前記その他ライン障害警報のいずれも発することがなかった期間に係る前記受注実績、前記実際仕掛品残高、前記実際部品発注残高及び前記実際部品在庫残高を統計処理することにより、新しい適正仕掛品残高算出式、新しい第二適正部品発注残高算出式及び新しい第二適正部品在庫残高算出式を生成し、これらにより前記第二計画情報保持部に保持された古い適正仕掛品残高算出式、古い第二適正部品発注残高算出式及び古い第二適正部品在庫残高算出式を更新する第二計画更新部と、
をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の連鎖アラームシステム。
【請求項6】
生産計画に従って行われる製品の製造において異常を知らせるための連鎖アラームシステムであって、
仕掛品の実際の残高である実際仕掛品残高と、部品発注の実際の残高である実際部品発注残高と、部品在庫の実際の残高である実際部品在庫残高とを取得する第三実際値取得部と、
前記生産計画によれば仕掛中であるべき製品の残高である計画仕掛品残高と、
前記生産計画のもとにおいて適正な部品の発注残高となる第三適正部品発注残高を、計画仕掛品残高を引数の一として算出するための関数式である第三適正部品発注残高算出式と、
前記生産計画のもとにおいて適正な部品の在庫残高となる第三適正部品在庫残高を、計画仕掛品残高を引数の一として算出するための関数式である第三適正部品在庫残高算出式と、
を保持する第三計画情報保持部と、
前記第三計画情報保持部から、前記計画仕掛品残高、前記第三適正部品発注残高算出式及び前記第三適正部品在庫残高算出式を取得して、第三適正部品発注残高及び第三適正部品在庫残高を算出する第三適正残高算出部と、
前記実際仕掛品残高と前記計画仕掛品残高の差である仕掛品残高差と、
前記実際部品発注残高と前記第三適正部品発注残高の差である部品発注残高差と、
前記実際部品在庫残高と前記第三適正部品在庫残高の差である部品在庫残高差と、
を表示する第三警報発信部と
を有する連鎖アラームシステム。
【請求項7】
前記第三計画情報保持部は警報発信のための閾値をさらに保持し、
前記第三警報発信部は、前記仕掛品残高差、前記部品発注残高差及び前記部品在庫残高差の絶対値の和が前記閾値を超えた場合にはその旨の警報を発信する
ことを特徴とする請求項6に記載の連鎖アラームシステム。
【請求項1】
生産計画に従って行われる製品の製造において異常を知らせるための連鎖アラームシステムであって、
仕掛品の実際の残高である実際仕掛品残高と、部品発注の実際の残高である実際部品発注残高と、部品在庫の実際の残高である実際部品在庫残高とを取得する第一実際値取得部と、
前記生産計画によれば仕掛中であるべき製品の残高である計画仕掛品残高と、
前記生産計画のもとにおいて適正な部品の発注残高となる第一適正部品発注残高を計画仕掛品残高を引数の一として算出するための関数式である第一適正部品発注残高算出式と、
前記生産計画のもとにおいて適正な部品の在庫残高となる第一適正部品在庫残高を計画仕掛品残高を引数の一として算出するための関数式である第一適正部品在庫残高算出式と、
を保持する第一計画情報保持部と、
前記計画仕掛品残高、前記第一適正部品発注残高算出式及び前記第一適正部品在庫残高算出式を用いて、第一適正部品発注残高及び第一適正部品在庫残高を算出する第一適正残高算出部と、
前記実際部品発注残高が前記第一適正部品発注残高を超過する場合には、部品納入に遅延がある旨の警報である部品キャパオーバー警報を発し、
前記実際部品発注残高が前記第一適正部品発注残高を超過せず、かつ、前記実際部品在庫残高が前記第一適正部品在庫残高を超過する場合には、部品在庫残高が計画を上回った旨の警報である組立ライン停止警報を発し、
前記実際部品発注残高が前記第一適正部品発注残高を超過せず、かつ、前記実際部品在庫残高が前記第一適正部品在庫残高を超過せず、かつ、前記実際仕掛品残高が前記計画仕掛品残高を超過する場合には、仕掛品残高が計画を上回った旨のその他ライン障害警報を発する、
第一警報発信部と
を有する連鎖アラームシステム。
【請求項2】
前記部品キャパオーバー警報、前記組立ライン停止警報及び前記その他ライン障害警報を、それらを発した日時とともに保持する第一警報履歴保持部と、
前記実際仕掛品残高、前記実際部品発注残高及び前記実際部品在庫残高の過去データを時系列的に保持する第一実際値履歴保持部と、
前記部品キャパオーバー警報、前記組立ライン停止警報及び前記その他ライン障害警報のいずれも発することがなかった期間に係る前記実際仕掛品残高、前記実際部品発注残高及び前記実際部品在庫残高を統計処理することにより、新しい第一適正部品発注残高算出式及び新しい第一適正部品在庫残高算出式を生成し、これらにより前記第一計画情報保持部に保持された古い第一適正部品発注残高算出式及び古い第一適正部品在庫残高算出式を更新する第一計画更新部と、
をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の連鎖アラームシステム。
【請求項3】
前記第一実際値取得部は、現在までの一定期間における実際の受注高である実際受注高と、同期間における実際の売上高である実際売上高と、同期間における実際の引当済在庫高である実際引当済在庫高とをさらに取得し、
前記第一警報発信部は、実際受注高が実際売上高と実際引当済在庫高の合計を超過しない場合には、部品キャパオーバー警報、組立ライン停止警報及びその他ライン障害警報のいずれの警報も発しないように構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の連鎖アラームシステム。
【請求項4】
生産計画に従って行われる製品の製造において異常を知らせるための連鎖アラームシステムであって、
所定期間における実際の受注である受注実績と、仕掛品の実際の残高である実際仕掛品残高と、部品発注の実際の残高である実際部品発注残高と、部品在庫の実際の残高である実際部品在庫残高とを取得する第二実際値取得部と、
前記生産計画のもとにおいて前記受注実績に応じて仕掛中であるべき仕掛品の適正仕掛品残高を、前記受注実績を引数の一として算出するための関数式である適正仕掛品残高算出式と、
前記生産計画のもとにおいて前記受注実績に応じて適正な部品の発注残高となる第二適正部品発注残高を、前記受注実績を引数の一として算出するための関数式である第二適正部品発注残高算出式と、
前記生産計画のもとにおいて前記受注実績に応じて適正な部品の在庫残高となる第二適正部品在庫残高を、前記受注実績を引数の一として算出するための関数式である第二適正部品在庫残高算出式と、
を保持する第二計画情報保持部と、
前記受注実績、前記適正仕掛品残高算出式、前記第二適正部品発注残高算出式及び前記第二適正部品在庫残高算出式を用いて、適正仕掛品残高、第二適正部品発注残高及び第二適正部品在庫残高を算出する第二適正残高算出部と、
前記実際部品発注残高が前記第二適正部品発注残高を超過する場合には、部品納入に遅延がある旨の警報である部品キャパオーバー警報を発し、
前記実際部品発注残高が前記第二適正部品発注残高を超過せず、かつ、前記実際部品在庫残高が前記第二適正部品在庫残高を超過する場合には、部品在庫残高が計画を上回った旨の警報である組立ライン停止警報を発し、
前記実際部品発注残高が前記第二適正部品発注残高を超過せず、かつ、前記実際部品在庫残高が前記第二適正部品在庫残高を超過せず、かつ、前記実際仕掛品残高が前記適正仕掛品残高を超過する場合には、仕掛品残高が計画を上回った旨のその他ライン障害警報を発する、
第二警報発信部と
を有する連鎖アラームシステム。
【請求項5】
前記部品キャパオーバー警報、前記組立ライン停止警報及び前記その他ライン障害警報を、それらを発した日時とともに記録する第二警報履歴保持部と、
前記受注実績、前記実際仕掛品残高、前記実際部品発注残高及び前記実際部品在庫残高の過去データを時系列的に保持する第二実際値履歴保持部と、
前記部品キャパオーバー警報、前記組立ライン停止警報及び前記その他ライン障害警報のいずれも発することがなかった期間に係る前記受注実績、前記実際仕掛品残高、前記実際部品発注残高及び前記実際部品在庫残高を統計処理することにより、新しい適正仕掛品残高算出式、新しい第二適正部品発注残高算出式及び新しい第二適正部品在庫残高算出式を生成し、これらにより前記第二計画情報保持部に保持された古い適正仕掛品残高算出式、古い第二適正部品発注残高算出式及び古い第二適正部品在庫残高算出式を更新する第二計画更新部と、
をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の連鎖アラームシステム。
【請求項6】
生産計画に従って行われる製品の製造において異常を知らせるための連鎖アラームシステムであって、
仕掛品の実際の残高である実際仕掛品残高と、部品発注の実際の残高である実際部品発注残高と、部品在庫の実際の残高である実際部品在庫残高とを取得する第三実際値取得部と、
前記生産計画によれば仕掛中であるべき製品の残高である計画仕掛品残高と、
前記生産計画のもとにおいて適正な部品の発注残高となる第三適正部品発注残高を、計画仕掛品残高を引数の一として算出するための関数式である第三適正部品発注残高算出式と、
前記生産計画のもとにおいて適正な部品の在庫残高となる第三適正部品在庫残高を、計画仕掛品残高を引数の一として算出するための関数式である第三適正部品在庫残高算出式と、
を保持する第三計画情報保持部と、
前記第三計画情報保持部から、前記計画仕掛品残高、前記第三適正部品発注残高算出式及び前記第三適正部品在庫残高算出式を取得して、第三適正部品発注残高及び第三適正部品在庫残高を算出する第三適正残高算出部と、
前記実際仕掛品残高と前記計画仕掛品残高の差である仕掛品残高差と、
前記実際部品発注残高と前記第三適正部品発注残高の差である部品発注残高差と、
前記実際部品在庫残高と前記第三適正部品在庫残高の差である部品在庫残高差と、
を表示する第三警報発信部と
を有する連鎖アラームシステム。
【請求項7】
前記第三計画情報保持部は警報発信のための閾値をさらに保持し、
前記第三警報発信部は、前記仕掛品残高差、前記部品発注残高差及び前記部品在庫残高差の絶対値の和が前記閾値を超えた場合にはその旨の警報を発信する
ことを特徴とする請求項6に記載の連鎖アラームシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−94098(P2012−94098A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256582(P2010−256582)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(510260101)株式会社 日本SI研究所 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(510260101)株式会社 日本SI研究所 (1)
【Fターム(参考)】
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