説明

遅延制御装置

【課題】オーディオ信号を遅延させて出力するオーディオ機器において、オーディオ信号のディレイ時間を変更した場合におけるノイズの発生を軽減することのできる技術を提供する。
【解決手段】制御部11は、記憶部に記憶されたディレイ時間データの示すディレイ時間を遅延処理部2031に指示する。遅延処理部2031は、制御部11から指示されたディレイ時間だけオーディオ信号を遅延させて出力する。制御部11は、操作部から出力される信号を検出すると、操作部から出力された信号に応じたディレイ時間を、遅延処理部2032に指示する。遅延処理部2032は、制御部11に指示されたディレイ時間だけオーディオ信号を遅延させて出力する。オーディオ信号処理部20は、制御部11の制御の下、遅延処理部2031から出力されるオーディオ信号と遅延処理部2032から出力されるオーディオ信号とをクロスフェードさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーディオ信号を出力する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラズマディスプレイやマイクロミラープロジェクタなどの大型ディスプレイ装置が実用化されている。このような大型ディスプレイは、入力されたビデオ信号に対して種々の処理を行う必要があるため、ビデオ信号が入力されてから映像がディスプレイに表示されるまでに時間的な遅れが生じる場合がある。一方、オーディオ信号の処理に伴う時間遅れはそれほど大きくなく、そのため、映像と音声をそのまま再生すると、映像の遅れが大きいために映像と音声がずれてしまうという問題があった。そこで、オーディオ信号を遅延させることによって映像と音声を同期再生する技術が種々提案されている(例えば、特許文献1乃至3参照)。
【特許文献1】特開2005−341256号公報
【特許文献2】特開2007−221421号公報
【特許文献3】特開2007−274409号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
また、映像と音声を同期再生するために、オーディオ信号のディレイ時間を利用者が手動で調整する機能を備えたオーディオ機器が提案されている。このようなオーディオ機器において、利用者が、実際にディスプレイに表示される映像と実際にスピーカから放音される音声とを聴取しつつオーディオ信号のディレイ時間を調整するものもある。しかしながら、オーディオ信号を再生している最中にディレイ時間を変更すると、図7に示すように、ディレイ時間が変更された時刻t11において、再生されるオーディオ波形に時間的な連続性のない不連続点が生じる。そのため、オーディオ信号を再生している最中にディレイ時間を変更するとこの不連続点がブチブチといったノイズとして聴こえ、利用者が耳障りに感じる場合がある。特にマルチチャンネル環境の場合、同じタイミングで全てのスピーカからパルス状の音(ノイズ)がでるため、利用者が感じる不快感は特に顕著なものとなる。
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、オーディオ信号を遅延させて出力するオーディオ機器において、オーディオ信号のディレイ時間を変更した場合におけるノイズの発生を軽減することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明は、オーディオ信号が入力される入力端子と、前記入力端子に入力されたオーディオ信号を、予め指示されたディレイ時間だけ遅延させて出力する第1の遅延手段と、利用者によって操作される操作手段から出力される信号であって、前記ディレイ時間を変更する旨を示す信号を検出する信号検出手段と、前記入力端子に入力されたオーディオ信号を、前記信号検出手段によって検出された信号に応じたディレイ時間だけ遅延させて出力する第2の遅延手段と、前記信号検出手段によって検出された信号に応じたディレイ時間を前記第2の遅延手段に指示するディレイ時間変更手段と、前記信号検出手段によって前記信号が検出されたときに、前記第1の遅延手段から出力されるオーディオ信号と前記第2の遅延手段から出力されるオーディオ信号とをクロスフェードにより切り替えて出力する出力切換手段とを具備することを特徴とする遅延制御装置を提供する。
本発明の好ましい態様において、前記出力切替手段は、前記信号検出手段によって予め定められた時間内に予め定められた数以上の信号が検出された場合には、該予め定められた時間内において最後に検出した信号以外の信号を無視してもよい。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、オーディオ信号のディレイ時間を変更した場合におけるノイズの発生を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
<A:構成>
本発明は、AVレシーバやホームシアター向け商品などの各種AV装置に適用することができるが、ここでは、DSP(Digital Signal Processor)等でデジタル処理を施した後にアンプで増幅を行う、いわゆるAVアンプに適用した実施の形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態であるAVアンプ1の全体構成を示すブロック図である。図において、制御部11は、CPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を備え、ROM又は記憶部12に記憶されているコンピュータプログラムを読み出して実行することによりAVアンプ1の各部を制御する。記憶部12は、制御部11によって実行されるコンピュータプログラムやその実行時に使用されるデータを記憶するための記憶手段であり、例えばEEPROM(Electronically Erasable and Programmable ROM)である。この記憶部12には、オーディオ信号のディレイ時間を示すディレイ時間データが記憶されている。表示部13は、LEDパネルや液晶パネルなどの表示パネルを備え、制御部11による制御の下に各種の画像を表示する。操作部14は、テンキー等の各種キーを備え、AVアンプ1の利用者による操作に応じた信号を制御部11に出力する。利用者は、操作部14を用いて、オーディオ信号のディレイ時間を調節することができる。なお、この実施形態では、表示部13と操作部14とがAVアンプ1に含まれている場合について説明するが、表示部13や操作部14がAVアンプ1に外付けされる形式であってもよい。
【0007】
このAVアンプ1は、オーディオ信号が入力される複数のオーディオ入力端子15を備える。複数のオーディオ入力端子15は、オーディオセレクタ17によってそのいずれか一つが選択される。オーディオセレクタ17は、制御部11によって連動して切り替えられる。オーディオ入力端子15には、DVDプレーヤなどの映像再生装置(図示略)が接続される。オーディオセレクタ17で選択されたオーディオ信号は、オーディオ信号処理部20に入力される。なお、上述の映像再生装置には、PDP(プラズマディスプレイ)やDLP(マイクロミラー)ディスプレイ等の映像表示装置が接続され、映像再生装置から出力されるビデオ信号はこの映像表示装置に供給され、映像として表示される。
【0008】
図2は、オーディオ信号処理部20の構成を示すブロック図である。図において、DIR(デジタル・インタフェース・レシーバ)201は、オーディオ信号の入力を制御するとともに、入力されたオーディオ信号の種別(PCM(Pulse Code Modulation)、DTS(Digital Theater System)、ドルビーなど)を検出する。検出されたオーディオ信号の種別は、制御部11に伝達される。デコーダ202は、入力されたオーディオ信号をPCM信号に変換する。遅延制御部203は、制御部11の制御の下、オーディオ信号の遅延処理やクロスフェード処理等を行う。制御部11は、操作部14から出力される信号に応じて、オーディオ信号のディレイ時間の変更を行うとともに、オーディオ信号のクロスフェード処理を制御する。
【0009】
遅延処理部2031,2032はそれぞれ、入力されたオーディオ信号を制御部11によって指示されたディレイ時間だけ遅延させて出力する。遅延処理部2031,2032はそれぞれバッファメモリを有し、入力されたオーディオ信号を一旦バッファメモリにバッファしてから出力する。バッファメモリにどれだけのオーディオ信号をバッファするかにより、オーディオ信号のディレイ時間が決定される。このAVアンプ1では、このバッファ量を制御することで、実際に表示される映像と実際に出力される音声の同期をとるようにしている。バッファ量は制御部11が決定して、遅延処理部2031,2032に指示する。
【0010】
ゲイン調節部2033,2034はそれぞれ、制御部11の制御の下、遅延処理部2031,2032から出力されるオーディオ信号のゲインを調節する。特に、ゲイン調節部2033,2034はそれぞれ、制御部11の制御の下、遅延処理部2031,2032から出力されるオーディオ信号に対してフェードアウト処理を施すフェードアウト手段として機能する。また、ゲイン調節部2033,2034はそれぞれ、制御部11の制御の下、遅延処理部2031,2032から出力されるオーディオ信号に対してフェードイン処理を施すフェードイン手段として機能する。ゲイン調節部2033,2034はそれぞれ、制御部11からフェードアウト処理やフェードイン処理を指示された場合に、指示されたフェードアウト処理やフェードイン処理を行う一方、制御部11からの指示がない場合には、遅延処理部2031,2032から出力されるオーディオ信号をそのまま出力する(又は遅延処理部2031,2032から出力されるオーディオ信号を出力しない)。ゲイン調節部2033,2034から出力されるオーディオ信号は、加算器2035で加算され、ポストプロセッサ204に供給される。ポストプロセッサ204は、オーディオ信号に対して残響等の効果を付与する。
【0011】
図2では遅延制御部203をデコーダ202の後段に設ける構成としているが、遅延制御部203をポストプロセッサ204の後段に設ける構成としてもよい。また、オーディオ信号を遅延させるために用いるバッファメモリは、遅延処理部2031,2032の内部メモリとしてそれぞれ構成するようにしてもよく、また、遅延処理部2031,2032で共通のバッファメモリを用いるようにしてもよい。
【0012】
ポストプロセッサ204によって効果を付与されたオーディオ信号は、次段のD/Aコンバータ21に出力される。D/Aコンバータ21によってアナログ信号に変換されたオーディオ信号は、アンプ22によって増幅され、スピーカ端子23を介してスピーカ(図示略)に出力される。アンプ22は電子ボリウムを内蔵しており、制御部11から出力されるボリウム制御信号に基づいてオーディオ信号の音量を制御する。
【0013】
<B:動作>
次に、本実施形態の動作の一例について説明する。利用者は、DVDプレーヤ等の映像再生装置の操作部を用いて、映像及び音声を再生する旨の操作を行う。映像再生装置は、操作された内容に応じて、ビデオ信号を映像表示装置に出力するとともに、オーディオ信号をAVアンプ1に出力する。AVアンプ1にオーディオ信号が入力されると、入力されたオーディオ信号はオーディオセレクタ17を介してオーディオ信号処理部20に供給される。
【0014】
制御部11は、記憶部12に記憶されたディレイ時間データの示すディレイ時間をオーディオ信号処理部20の遅延処理部2031に指示する。オーディオ信号処理部20のデコーダ202は入力されたオーディオ信号に対してデコード処理を施して遅延処理部2031,2032に出力する。遅延処理部2031は、制御部11から指示されたディレイ時間だけオーディオ信号を遅延させる。なお、ディレイ時間データがオーディオ信号を遅延させない旨を示す場合には、遅延処理部2031はオーディオ信号を遅延させずにそのまま出力する。また、この動作例では、遅延処理部2032は入力されるオーディオ信号に対してディレイ処理を施さずにそのまま出力する。ゲイン調節部2033は、遅延処理部2031から出力されるオーディオ信号をそのままポストプロセッサ204に出力する。一方、ゲイン調節部2034は遅延処理部2032から出力されるオーディオ信号の出力レベルがゼロになるようにゲインを調整する。すなわち、遅延制御部203からは、遅延処理部2031によって遅延処理を施されたオーディオ信号が、ゲイン調整されずにそのまま出力され、遅延処理部2032を通過するオーディオ信号は遅延制御部203からは出力されない。
【0015】
ポストプロセッサ204はオーディオ信号に対して残響効果付与処理等を実行し、D/Aコンバータ21に出力する。D/Aコンバータ21はデジタル形式のオーディオ信号をアナログ信号に変換する。アナログ信号に変換されたオーディオ信号はアンプ22によって増幅され、スピーカ端子23を介して外部接続されたスピーカに出力される。利用者は、映像表示装置に表示される映像とスピーカから放音される音とを視聴することで、映像再生装置によって再生される映像及び音声を楽しむことができる。
【0016】
このとき、ビデオ信号の処理時間に起因して映像と音声との再生タイミングにずれが生じる場合がある。この場合に、利用者は、AVアンプ1の操作部14を用いて、オーディオ信号のディレイ時間を設定(変更)する操作を行うことができる。利用者が操作部14を用いてオーディオ信号のディレイ時間を設定する操作を行うと、AVアンプ1は、操作された内容に応じてオーディオ信号のディレイ時間を設定(変更)する。
【0017】
図3は、AVアンプ1のディレイ時間設定処理の流れを示すフローチャートである。AVアンプ1の利用者によってディレイ時間を設定する旨の操作が行われると、操作部14は、操作された内容に応じた信号を出力する。制御部11は、操作部14から出力される、ディレイ時間を設定(変更)する旨を示す信号(以下「ディレイ時間設定命令」という)を検出するまで待機し(ステップS1;NO)、ディレイ時間設定命令が検出されたときに(ステップS1;YES)、設定変更前のオーディオ信号と設定変更後のオーディオ信号とをクロスフェードさせるように遅延制御部203を制御する。より具体的には、まず、制御部11は、検出されたディレイ時間設定命令に応じたディレイ時間を遅延処理部2032に指示する。遅延処理部2032は、制御部11からの指示に応じて、入力されるオーディオ信号を指示されたディレイ時間だけ遅延させて出力する。これにより、遅延処理部2031からは設定変更前のディレイ時間だけ遅延されたオーディオ信号が出力される一方、遅延処理部2032からは設定変更後のディレイ時間だけ遅延されたオーディオ信号が出力される。
【0018】
次いで、制御部11は、遅延処理部2031から出力されるオーディオ信号と遅延処理部2032から出力されるオーディオ信号とをクロスフェードさせる。より具体的には、まず、制御部11は、遅延処理部2031から出力されるオーディオ信号が所定時間でフェードアウトするようにゲイン調節部2033を制御する。ゲイン調節部2033は、制御部11の制御に応じて、出力されるオーディオ信号がフェードアウトするようにゲインを調整する(ステップS2)。また、制御部11は、遅延処理部2032から出力されるオーディオ信号が、所定時間でフェードインするようにゲイン調節部2034を制御する。ゲイン調節部2034は制御部11の制御に応じて、遅延処理部2032から出力されるオーディオ信号がフェードインするように出力ゲインを調整する(ステップS3)。
【0019】
図4は、ゲイン調節部2033,2034のそれぞれから出力されるオーディオ信号のゲインの一例を示す図である。図4において、横軸は時刻を示し、縦軸はゲインを示す。図4の(a)は、ゲイン調節部2033から出力されるオーディオ信号のゲインの変化、すなわち設定変更前のオーディオ信号のゲインの変化を示す。同図(b)は、ゲイン調節部2034から出力されるオーディオ信号のゲインの変化、すなわち設定変更後のオーディオ信号のゲインの変化を示す。同図(c)は、ゲイン調節部2033,2034のそれぞれから出力されるオーディオ信号のゲインの変化を示す。図4に示す例においては、時刻t1においてディレイ時間設定命令が検出された場合に、ゲイン調節部2033は、時刻t1から時刻t2にかけて遅延処理部2031から出力されるオーディオ信号がフェードアウトするようにゲインを変更する。図4(a)に示す例では、ゲイン調節部2033は、時刻t1から時刻t2までの間で、オーディオ信号の出力レベルが変更前の値(以下「標準値」という)からゼロになるように出力レベルを下げる。また、図4(b)に示す例においては、ゲイン調節部2034は、時刻t1から時刻t2の間にかけて出力ゲインを制御してフェードイン処理を行う。図4に示す例においては、ゲイン調節部2034は、時刻t1から時刻t2までの間で、遅延処理部2032から出力されるオーディオ信号の出力レベルがゼロから標準値になるように出力レベルを上げる。図4において時刻t1から時刻t2のクロスフェードの時間に関しては、長すぎると残響がかかったようになり音質が不自然になり、逆に短すぎると信号の不連続を新たに生じさせてしまう。実験的に試した結果、50ms〜100msが最適値となっている。
【0020】
以上の処理により、ディレイ時間の設定変更前のオーディオ信号と設定変更後のオーディオ信号とがクロスフェードにより切り替えられる。ここで、利用者によって再度ディレイ時間の変更操作が行われると、AVアンプ1は、上述と同様の処理を行って、設定変更前のオーディオ信号と設定変更後のオーディオ信号とをクロスフェードにより切り替える。具体的には、制御部11が、遅延処理部2031に新に設定されたディレイ時間を指示し、遅延処理部2031は指示されたディレイ時間だけオーディオ信号を遅延させて出力する。そして、制御部11は、遅延処理部2031から出力されるオーディオ信号(すなわち2回目の設定変更後のオーディオ信号)と遅延処理部2032から出力されるオーディオ信号(すなわち1回目の設定変更後のオーディオ信号)とをクロスフェードで切り替えるように遅延制御部203を制御する。このようにして、AVアンプ1は、ディレイ時間の変更が指示される毎に、遅延処理部2031から出力されるオーディオ信号と遅延処理部2032から出力されるオーディオ信号とをクロスフェードさせて切り替えて出力する。
【0021】
このように、AVアンプ1は、ディレイ時間の切替操作が行われた場合に、ディレイ時間を即座に切り替えるのではなく、設定変更前のオーディオ信号と設定変更後のオーディオ信号とをクロスフェードによって切り替える。これにより、ディレイ時間の切替に起因して発生するノイズを軽減することができ、利用者に与える不快感を軽減することができる。
【0022】
ところで、利用者がディレイ時間を連続して切り替える場合には、ディレイ時間を切り替えた数だけ、ブチブチといったノイズが発生し、利用者が感じる不快感はより顕著なものとなることがあった。これに対し本実施形態では、利用者がディレイ時間を連続して切り替えた場合であっても、利用者に与える不快感をより軽減することができる。
【0023】
また、本実施形態では、ディレイ時間を切り替える際に完全ミュートをしないから、利用者は、スピーカから放音される音を聴取しつつディレイ時間を調整することができる。また、ディレイ時間を切り替える際に切替前のオーディオ信号と切替後のオーディオ信号とをクロスフェードさせるから、ディレイ時間の切替前後で発生する音をより自然につなげることができ、これにより、ディレイ時間の調整作業において利用者が違和感を覚えるのを防ぐことができる。
【0024】
<C:変形例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。以下にその一例を示す。
(1)上述の実施形態において、利用者がディレイ時間の切り替えを連続して行った場合には、最後の操作に対応する処理のみを行うようにしてもよい。すなわち、制御部11が、予め定められた時間内に予め定められた数以上のディレイ時間設定命令を検出した場合に、該予め定められた時間内において最後に検出した命令についてディレイ切替処理(クロスフェード処理)を行い、それ以外の命令を無視する(破棄する)ようにしてもよい。このようにすることで、オーディオ信号を再生しつつディレイ時間を切り替える場合であっても、放音される音声をより自然につなげることができる。
【0025】
(2)上述の実施形態では、デコーダ202は入力されたオーディオ信号をPCM信号にデコードしたが、デコーダ202が行うデコード処理はこれに限らず、AVアンプ1の設計等に応じて適宜変更可能であり、入力されるオーディオ信号に応じた形式でオーディオ信号にデコード処理を施すようにすればよい。
【0026】
(3)上述の実施形態では、上述の実施形態では、AVアンプ1は、図4に示すように、設定変更前のオーディオ信号のフェードアウト処理と設定変更後のオーディオ信号のフェードイン処理とを同時に行うようにしたが、フェードアウト処理の開始タイミングとフェードイン処理の開始タイミングとをそろえる必要はなく、例えば、フェードアウト処理を開始してから所定時間経過後にフェードイン処理を開始するようにしてもよく、また、例えば、フェードイン処理を開始してから所定時間経過後にフェードアウト処理を開始するようにしてもよい。
【0027】
(4)上述の実施形態では、AVアンプ1は、図4に示すように、オーディオ信号の出力レベルが直線的に変化するようにフェードアウト処理やフェードイン処理を行ったが、フェードアウト処理やフェードイン処理の態様はこれに限らず、例えば、図5(a),(b)に例示するように、出力レベルを曲線的に変化させるようにフェードアウト処理やフェードイン処理を行うようにしてもよい。要は、オーディオ信号の出力レベルを所定のアルゴリズムに従って低下(又は増加)させるものであればどのような態様であってもよい。
【0028】
また、図4に示す例では、フェードアウト処理に要する時間とフェードイン処理に要する時間とが等しい場合について説明したが、これに限らず、フェードアウト処理に要する時間とフェードイン処理に要する時間とを異ならせるようにしてもよい。具体的には、例えば、図6に例示するように、フェードアウト処理に要する時間がフェードイン処理に要する時間よりも長くなるように、AVアンプ1がフェードアウト処理及びフェードイン処理を行うようにしてもよい。また、逆に、フェードアウト処理に要する時間がフェードイン処理に要する時間よりも短くなるように、AVアンプ1がフェードアウト処理及びフェードイン処理を行うようにしてもよい。
【0029】
また、ディレイ時間の変更量に応じてフェードアウト処理(又はフェードイン処理)にかける時間を変更するようにしてもよい。具体的には、例えば、制御部11が、操作部14から出力される信号に応じてディレイ時間の変更量を算出し、算出した変更量が大きいほど、フェードアウト処理にかける時間を長くするようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】AVアンプの全体構成の一例を示すブロック図である。
【図2】オーディオ信号処理部の構成の一例を示すブロック図である。
【図3】AVアンプの処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】AVアンプの処理の内容を説明するための図である。
【図5】AVアンプの処理の内容を説明するための図である。
【図6】AVアンプの処理の内容を説明するための図である。
【図7】ディレイ時間を変更した際のオーディオ信号の波形の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
1…AVアンプ、11…制御部、12…記憶部、13…表示部、14…操作部、15…オーディオ入力端子、17…オーディオセレクタ、20…オーディオ信号処理部、21…D/Aコンバータ、22…アンプ、23…スピーカ端子、201…DIR、202…デコーダ、203…遅延制御部、204…ポストプロセッサ、2031,2032…遅延処理部、2033,2034…ゲイン調節部、2035…加算器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーディオ信号が入力される入力端子と、
前記入力端子に入力されたオーディオ信号を、予め指示されたディレイ時間だけ遅延させて出力する第1の遅延手段と、
利用者によって操作される操作手段から出力される信号であって、前記ディレイ時間を変更する旨を示す信号を検出する信号検出手段と、
前記入力端子に入力されたオーディオ信号を、前記信号検出手段によって検出された信号に応じたディレイ時間だけ遅延させて出力する第2の遅延手段と、
前記信号検出手段によって検出された信号に応じたディレイ時間を前記第2の遅延手段に指示するディレイ時間変更手段と、
前記信号検出手段によって前記信号が検出されたときに、前記第1の遅延手段から出力されるオーディオ信号と前記第2の遅延手段から出力されるオーディオ信号とをクロスフェードにより切り替えて出力する出力切換手段と
を具備することを特徴とする遅延制御装置。
【請求項2】
前記出力切替手段は、前記信号検出手段によって予め定められた時間内に予め定められた数以上の信号が検出された場合には、該予め定められた時間内において最後に検出した信号以外の信号を無視する
ことを特徴とする請求項1に記載の遅延制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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