説明

遅延回路及びそれを用いた映像信号処理回路

【課題】スイッチド・キャパシタを利用した遅延回路の遅延処理を適切に行わせる。
【解決手段】スイッチング素子と容量素子とを有したスイッチド・キャパシタ部を複数有し、入力信号が複数のスイッチド・キャパシタ部全てに対して共通に入力され且つ容量素子を充電させるように接続され、複数のスイッチド・キャパシタ部各々から容量素子を放電させて出力信号が出力されるように接続されるスイッチド・キャパシタ群と、スイッチング素子各々のオン・オフを制御することで容量素子各々を入力信号に基づいて順次充電させていくととともに、当該順次充電の際に前回充電しておいた容量素子を放電させることで複数のスイッチド・キャパシタ部各々から出力信号を順次出力させ、スイッチング素子各々のオン・オフを切り替える際には全てのスイッチング素子をオフさせる制御を行うスイッチング制御部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遅延回路及びそれを用いた映像信号処理回路に関する。
【背景技術】
【0002】
世界で採用されるアナログカラーテレビ方式としては、日本や北中米で主に採用されるNTSC(National Television Standards Committee)方式、西欧州諸国で主に採用されるPAL(Phase Alternation by Line)方式、東欧州諸国で主に採用されるSECAM(SEquential Couleur A Memoire)方式、に大別される。NTSC方式は、水平方向の走査線数が525本で毎秒30フレームのインターレース走査であり、水平走査周波数は15.75kHz、垂直走査周波数は60Hzである。PAL方式は、水平方向の走査線数が625本で、走査線毎に位相を反転させた、毎秒25フレームのインターレース走査である。SECAM方式は、水平方向の走査線数が625本で、毎秒25フレームのインターレース走査である。このように、NTSC、PAL、SECAMのいずれの方式であっても、基本的には、インターレース走査を行っており、図10に示すように、1フレームを奇数フィールドと偶数フィールドの二回に分けて走査することで、1枚の画面を伝送する。詳述すると、インターレース走査では、奇数フィールドの全走査線を1本の走査線おきに画面の上から下まで走査する。そして、奇数フィールドの最後の走査線の走査を半分で中止して、奇数フィールドの全走査線の間を埋めるように、偶数フィールドの全走査線を上から下まで走査する。
【0003】
また、NTSC、PAL、SECAM方式では、テレビカメラで撮像したR(赤)、G(緑)、B(青)の映像信号をそのままの形で送らず、その映像信号を、画面の明るさを表現する輝度信号Yと画面の色の濃淡度合いを表現するクロマ信号Cとに変換し、さらに、輝度信号Yとクロマ信号Cとを合成したコンポジット信号SCを送るという方式を採用している。図11は、クロマ信号C、輝度信号Y、コンポジット信号SCの波形図の一例を示す図である。図11(a)に示すクロマ信号Cは、R信号及びB信号から輝度信号Yを差し引いた2つの色差信号R−Y、B−Yを互いに直交するI・Q信号(NTSC方式の場合)又はU・V信号(PAL方式の場合)へ変換するとともに、それらを合成して振幅変調した信号である。また、クロマ信号Cは、カラーバースト信号BSと搬送色信号CAとが含まれる。尚、カラーバースト信号BSは、搬送色信号CAの位相と振幅の基準とする信号であり、搬送色信号CAとは、位相が色相を示すとともに振幅が彩度を示す信号である。図11(b)に示す輝度信号Yは、水平同期信号HSYNCと輝度信号YAとが含まれる。尚、水平同期信号HSYNCとは、水平方向の1本の走査線の開始を示す信号であり、隣接する二つの水平同期信号HSYNCの間の期間は、「1H期間(1水平走査期間:約64μsec)」、と呼ばれている。また、輝度信号YAとは、輝度の内容を示す信号である。図11(c)に示すコンポジット信号SCは、図11(a)に示したクロマ信号Cと、図11(b)に示した輝度信号Yと、を合成したものである。詳述すると、コンポジット信号SCは、クロマ信号Cのカラーバースト信号BSを、輝度信号Yのバックポーチへと重畳させるとともに、クロマ信号Cの搬送色信号CAを輝度信号YAに重畳させた波形となる。
【0004】
ところで、海外用のPAL・SECAM方式では、受信側の映像信号処理回路において、アンテナで受信した映像信号より復調された色差信号R−Y、B−Yを1H期間遅延させるとともに、その1H期間遅延させた後の信号を最新の色差信号R−Y、B−Yと合成することによって、伝送経路での歪みを除去するとともに、ライン補正によって全走査線の色差情報を揃えることが定められている。このように1H期間遅延させるための回路(以下、1H遅延回路と称する。)としては、これまで、CCD(Charged Coupled Device)遅延素子を用いたタイプが主流であった(例えば、以下に示す特許文献1を参照)。
【0005】
しかしながら、1H遅延回路用のCCD遅延素子以外の映像信号処理回路は、これまで、アナログ信号を取り扱い易いバイポーラ・プロセスで専ら設計・製造されていたが、バイポーラとCMOSの両方を使える次世代のBiCMOSプロセスに変更すれば、CCD遅延素子を含めて当該映像信号処理回路を1チップ化して、安価に設計・製造することが可能となる。また、1H遅延回路としては、CCD遅延素子よりも安価であり且つこれまでアナログフィルタとして専ら利用されていた「スイッチド・キャパシタ回路」を代用することも提案されている。
【0006】
図12は、スイッチド・キャパシタ回路を用いた遅延回路の従来の構成例を示す図である。尚、図12に示す遅延回路は、説明を簡略化するため、スイッチド・キャパシタ部を2組設けた構成としているが、必要な遅延時間に応じてスイッチド・キャパシタ部の数が変化することになる。
【0007】
NMOSトランジスタM1、M2は、双方のソース電極が共通接続されており、そのソース電極には容量素子C1が接続され、一組のスイッチド・キャパシタ部10aを構成する。同様に、NMOSトランジスタM3、M4は、双方のソース電極が共通接続されており、そのソース電極には容量素子C2が接続され、一組のスイッチド・キャパシタ部10bを構成する。尚、NMOSトランジスタM1、M3のドレイン電極には遅延対象の入力電圧VINが印加され、NMOSトランジスタM2、M4のドレイン電極はボルテージフォロワ12の非反転入力端子へと接続される。また、NMOSトランジスタM1〜M4のオン・オフのスイッチ動作を制御するためのスイッチング制御回路11が設けられる。尚、スイッチング制御回路11は、NMOSトランジスタM1のゲート電極にスイッチ信号SW1を供給し、NMOSトランジスタM2、M3のゲート電極にスイッチ信号SW2を供給し、NMOSトランジスタM4のゲート電極にスイッチ信号SW3を供給する。かかる構成により、ボルテージフォロワ12において、入力電圧VINをNMOSトランジスタM1〜M4のスイッチング周期分遅延させた出力電圧VOUTが出力される。
【0008】
図13は、図12に示した遅延回路の動作例を示すタイミングチャートである。尚、時刻T0〜T5で区切られた各期間において、入力電圧VINのレベルがD0〜D4へと変動したものとする(図13(a)参照)。また、時刻T0〜T5で区切られた各期間は、NMOSトランジスタM1〜M4のスイッチング周期に対応づけられる。
【0009】
まず、時刻T0において、NMOSトランジスタM1〜M4のゲート電極へと供給されるスイッチ信号SW1〜SW3は、「L、H、L」となり、時刻T1まで当該状態を継続する(図13(b)〜(d)参照)。すなわち、時刻T0において、NMOSトランジスタM1、M4はオフ、NMOSトランジスタM2、M3はオンとなり、時刻T1まで当該状態を継続する(図13(e)〜(g)参照)。よって、時刻T0〜T1の期間において、NMOSトランジスタM3と容量素子C2の充電経路が形成されるので、かかる期間の入力電圧VINのレベルD0に応じた電荷が、NMOSトランジスタM3を介して容量素子C2へと充電されることで、入力電圧VINのレベルD0の情報が保持される(図13(i)参照)。一方、NMOSトランジスタM2と容量素子C1の放電経路が形成されることになるが、容量素子C1にはまだ電荷が保持されておらず(図13(h)参照)、出力電圧VOUTは不定のままである(図13(j)参照)。
【0010】
つぎに、時刻T1において、NMOSトランジスタM1〜M4のゲート電極へと供給されるスイッチ信号SW1〜SW3は、「H、L、H」となり、時刻T2まで当該状態を継続する(図13(b)〜(d)参照)。すなわち、時刻T1において、NMOSトランジスタM1、M4はオン、NMOSトランジスタM2、M3はオフとなり、時刻T2まで当該状態を継続する(図13(e)〜(g)参照)。よって、時刻T1〜T2の期間において、NMOSトランジスタM1と容量素子C1の経路が形成されるので、かかる期間の入力電圧VINのレベルD1に応じた電荷が、NMOSトランジスタM1を介して容量素子C1へと充電されることで、入力電圧VINのレベルD1の情報が保持される(図13(h)参照)。一方、NMOSトランジスタM4と容量素子C2の放電経路が形成されるので、容量素子C2において保持されていた電荷が放電されることによって当該電荷に応じたレベルD0の入力電圧VINが読み出されて(図13(i)参照)、ボルテージフォロワ12の非反転入力端子へと印加される。よって、ボルテージフォロワ12において、レベルD0の入力電圧VINをNMOSトランジスタM1〜M4のスイッチング周期分遅延させた出力電圧VOUTが、出力される(図13(j)参照)。そして、以後、時刻T2〜T3、時刻T3〜T4、時刻T4〜T5の各期間において、以上のような動作が繰り返し行われる。
【特許文献1】特開平9−191472号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、スイッチド・キャパシタ回路は、従来、アナログフィルタとして専ら用いられていた。アナログフィルタ用途の場合、そのフィルタ特性の一つであるカットオフ周波数は、図12に示したような遅延回路に用いられるスイッチド・キャパシタ回路の動作クロック(スイッチング信号)の周波数と比較して、極めて低い周波数が採用される。例えば、スイッチド・キャパシタ回路が、映像信号処理の分野において、色差信号R−Y、B−Yを1H期間遅延させる用途である場合には数MHzオーダーであるのに対して、アナログフィルタ用途の場合には、主として数百から数kHzオーダーである。そこで、スイッチド・キャパシタ回路を遅延回路として用いた場合、つぎのような問題が起こり得る。
【0012】
すなわち、図12に示した遅延回路を前提として説明すると、スイッチド・キャパシタ部10a、10bにおけるNMOSトランジスタM1〜M4の入出力電圧特性上、入力電圧に応答した出力電圧の立ち上がり・立ち下がりにスルーレートが生じる。また、NMOSトランジスタM1〜M4には、それぞれの出力電圧の論理レベルがH又はLの分岐点となる入力電圧の閾値が定められている。そして、スルーレートや入力電圧の閾値は、NMOSトランジスタM1〜M4個々に製造バラツキがあって、さらに、周囲温度や負荷によっても変化する。
【0013】
よって、NMOSトランジスタM1〜M4のオン・オフを同時に行うべく、スイッチング制御回路11からNMOSトランジスタM1〜M4の各ゲート電極に向けてスイッチング信号SW1〜SW3が供給されたとしても(図14(a)〜(c)参照)、NMOSトランジスタM1〜M4の個々の入出力の立ち上がり・立ち下がり期間が、遅延回路用途の動作クロックの一周期と比較すると無視できない程度の長さとなり、またバラツキもあるので、NMOSトランジスタM1〜M4が全てオンとなる状態が起こり得る(図14(d)〜(f)の斜線部)。
【0014】
例えば、図13に示した時刻T1において、NMOSトランジスタM1、M4がオフからオンへ、NMOSトランジスタM2、M3がオンからオフへと本来即切り替わるべきところであるが、図14に示したように、NMOSトランジスタM1〜M4の全てがオンとなる期間が生じた場合とする。この場合、時刻T1において、本来は、NMOSトランジスタM3はオフすることで容量素子C2への充電経路が遮断されて、前の時刻T0〜T1の期間において容量素子C2に保持された電荷が保護されるべきところ、NMOSトランジスタM3と容量素子C2の充電経路が形成されてしまう。このため、入力電圧VINのレベルD1に応じた電荷が、NMOSトランジスタM1を介して容量素子C1だけではなく、NMOSトランジスタM3を介して容量素子C2へも充電されることになる。また、容量素子C1、NMOSトランジスタM2、M4、容量素子C2といった異常な閉ループが形成されることにもなる。
【0015】
このように、スイッチド・キャパシタ回路を遅延回路として用いた場合には、スイッチド・キャパシタ回路のスイッチング素子が全てオンする場合が起こり得るので、1H遅延回路として正常な動作が行われないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題を解決するための主たる発明は、入力信号を遅延させた出力信号を得る遅延回路において、スイッチング素子と当該スイッチング素子のオン・オフによって充放電される容量素子とを有したスイッチド・キャパシタ部を複数有し、前記入力信号が前記複数のスイッチド・キャパシタ部全てに対して共通に入力され且つ前記容量素子を充電させるように接続されるとともに、前記複数のスイッチド・キャパシタ部各々から前記容量素子を放電させて前記出力信号が出力されるように接続されるスイッチド・キャパシタ群と、前記複数のスイッチド・キャパシタ部が有する前記スイッチング素子各々のオン・オフを制御することで、前記複数のスイッチド・キャパシタ部が有する前記容量素子各々を前記入力信号に基づいて順次充電させていくととともに、当該順次充電の際に前回充電しておいた前記容量素子を放電させることで前記複数のスイッチド・キャパシタ部各々から前記出力信号を順次出力させていき、更に、前記複数のスイッチド・キャパシタ部が有する前記スイッチング素子各々のオン・オフを切り替える際に、前記複数のスイッチド・キャパシタ部が有する前記スイッチング素子全てをオフさせる制御を行うスイッチング制御部と、を有することとする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、遅延処理を適切に行うことが可能な、スイッチド・キャパシタを利用した遅延回路及びそれを用いた映像信号処理回路を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
<テレビ受信システムの構成>
図1は、本発明に係るテレビ受信システムの構成図である。
チューナ120は、アンテナ110で受信したテレビジョン放送の映像信号の中から、受信対象とするチャンネルの信号を抽出した後にそれを増幅出力するフロントエンド処理回路である。尚、テレビジョン放送の映像信号は、PAL方式又はSECAM方式に準拠したものであり、テレビカメラによって撮像された色の三原色(R、G、B)情報を有する。
【0019】
中間周波フィルタ130は、チューナ120から出力される信号から中間周波信号IFのみを抽出するフィルタである。
映像中間周波処理回路140は、中間周波フィルタ130において抽出された中間周波信号IFを検波してコンポジット信号SCを抽出する回路である。
クランプ回路150は、映像中間周波処理回路140より抽出されたコンポジット信号SCのペデスタルレベルを所定レベルに固定化するための回路である。
YC分離回路160は、クランプ回路150から供給されるコンポジット信号SCを、輝度信号Yとクロマ信号Cとに同期分離する回路である。
輝度信号処理回路170は、YC分離回路160から供給される輝度信号Yのコントラスト調整やブランキング調整を行う回路である。
色信号処理回路180は、YC分離回路160から供給されるクロマ信号Cのチャネル毎のゲイン調整や、カラーキラー等の処理を行う回路である。
色復調回路190は、主に、色信号処理回路180での各種処理が施されたクロマ信号C’に基づいて色差信号R−Y、B−Yを復調する回路である。
【0020】
マトリクス回路200は、色復調回路190で復調された色差信号R−Y、B−Yと、輝度信号処理回路10での各種処理が施された輝度信号Y’を合成して、3つのR信号、G信号、B信号から成る映像信号を復元する回路である。
RGBドライバ210は、マトリクス回路200から供給された3つのR信号、G信号、B信号に基づいて、ディスプレイ220に所望のカラー映像を再現するための駆動信号ROUT、GOUT、BOUTを生成する駆動回路である。
【0021】
<映像信号処理回路の構成>
図2は、本発明の『遅延回路』の一実施形態に係る1H遅延回路400を有したアナログカラーテレビ用の映像信号処理回路300の構成図である。尚、映像信号処理回路300は、PAL方式の映像信号を主に処理対象とするものであるが、SECAMデコーダ500を外付けすることでSECAM方式の映像信号についても処理可能である。尚、映像信号処理回路300は、SECAMデコーダ500も併せて集積化する実施形態としてもよい。また、映像信号処理回路300は、バイポーラとCMOSの両方を使えるBiCMOSプロセスによって設計・製造される集積回路とする。
【0022】
映像信号処理回路300は、図1に示したクランプ回路150、YC分離回路160、輝度信号処理回路170、色信号処理回路180、色復調回路190、マトリクス回路200、RGBドライバ210、を1チップに集積化した場合とするが、チューナ120、中間周波フィルタ130、映像中間周波処理回路140を含めて1チップ化してもよい。
【0023】
クランプ回路150、YC分離回路160、マトリクス回路200、RGBドライバ210は、前述と同様であるため、説明を省略する。
【0024】
輝度信号処理回路170は、遅延ライン171、シャープネス調整部172、ブラック・ストレッチ処理部173、コントラスト調整部174を有する。遅延ライン171は、クロマ信号Cの復調処理との時間差を調整すべく、輝度信号Yを遅延させる回路である。シャープネス調整部172は、輝度信号Yに基づく画像の輪郭補正処理を行い、ブラック・ストレッチ処理部173は、輝度信号Yに基づく画像の暗部の解像度を上げて黒つぶれを防止する処理を行い、コントラスト調整部174は、輝度信号Yに基づく画像の明暗の差を調整する処理を行う。すなわち、シャープネス調整部172、ブラック・ストレッチ処理部173、コントラスト調整部174は、いわゆるエフェクタとして機能する。
【0025】
色信号処理回路180は、ゲイン調整部181、カラーキラー回路182を有する。ゲイン調整部181は、クロマ信号Cに含まれるカラーバースト信号SCを基準として、クロマ信号Cをチャンネルに応じた適切なレベルに調整するための処理を行い、カラーキラー回路182は、白黒放送時に色復調回路190が働くとノイズが現れるので、カラーバースト信号SCを検出して搬送色信号CAを色復調回路190に送らないようにするための処理を行う。
【0026】
色復調回路190は、同期検波回路191、色合い調整PLL回路197、1H遅延回路400、加算器198、カラークランプ回路199、を有する。
【0027】
同期検波回路191は、PAL方式の場合のクロマ信号Cを処理対象とするものであって、副搬送波信号発振器194において発振生成された副搬送波信号fscと、色信号処理回路180から供給されたクロマ信号C’とを乗算することで同期検波を行い、色差信号B−Y、R−Yを同時に出力する。詳述すると、副搬送波信号fscを位相シフタ195によって90°位相シフトした後、乗算器192においてクロマ信号C’と掛け合わせることによって、色差信号B−Yが検波復調される。また、乗算器193において、副搬送波信号fscとクロマ信号C’と掛け合わせることで色差信号R−Yが検波復調される。なお、乗算器192、193でそれぞれ検波復調された色差信号B−Y、R−Yには高調波成分が含まれている。このため、通常、LPF196によってその高調波成分が取り除かれる。ここで、同期検波回路191において検波復調された色差信号B−Y、R−Yと、それに対応する輝度信号Yの波形図の一例を図3に示しておく。
【0028】
色合い調整用PLL回路197は、PLL回路の一部を構成する発振回路(不図示)にて生成された発振クロック信号の位相を、クロマ信号Cに含まれるカラーバースト信号SCの位相と一致させるPLL制御を行うことによって、クロマ信号C’の色合いの調整を行うPLL回路である。
【0029】
SECAMデコーダ500は、SECAM方式の場合のクロマ信号Cを処理対象とする外付け回路であって、YC分離回路160後のクロマ信号Cが供給され、そのクロマ信号Cから検波復調された色差信号B−Y、R−Yを出力する。そして、この検波復調された色差信号B−Y、R−Yは映像信号処理回路300へと供給される。尚、SECAMデコーダ500は、PAL方式の場合の同期検波回路191と異なり、SECAM方式に従って、色差信号B−Y、R−Yを1H期間毎に交互に出力する。すなわち、SECAMデコーダ500は、色差信号B−Yを出力する時には色差信号R−Yを出力せず、また、色差信号R−Yを出力する時には色差信号B−Yを出力しない。
【0030】
クランプ回路600は、SECAMデコーダ500から供給された色差信号B−Y、R−Yを所定レベルに固定する回路である。
スイッチ回路601は、同期検波回路191から同時に供給されるPAL方式の場合の色差信号B−Y、R−Y、又は、クランプ回路600から交互に供給されるSECAM方式の場合の色差信号B−Y、R−Yのいずれか一方を、受信した映像信号のアナログカラーテレビ方式に従って選択する回路である。
【0031】
1H遅延回路400は、スイッチ回路601から供給された色差信号B−Y、R−Yを、1H期間(1水平走査期間:約64μsec)遅延させる遅延回路である。尚、1H期間は、図11に示したとおり、隣接する二つの水平同期信号HSYNCの間の期間である。
【0032】
加算器198は、スイッチ回路601から供給された色差信号B−Y、R−Yと、1H遅延回路400によって1H期間遅延させた色差信号B−Y、R−Yを加算する回路である。この加算によって、伝送経路でのクロマ信号Cの歪みを除去するとともに、ライン補正によって全走査線の色差情報を揃えられる。なお、加算器198の加算結果は、カラークランプ回路199において所定レベルに固定された後、マトリクス回路200へと供給される。この結果、マトリクス回路200は、輝度信号処理回路170から供給された輝度信号Y’と、カラークランプ回路199から供給された色差信号B−Y、R−Yに基づいて、テレビカメラによって撮像された色の三原色(R、G、B)情報を再生する。
【0033】
<1H遅延回路の構成>
図4は、1H遅延回路400の回路構成の一例を示した図である。
1H遅延回路400は、スイッチド・キャパシタ群412と、シフトレジスタ420と、オン期間制御部430と、を有する。尚、1H遅延回路400は、色差信号B−Y、R−Yそれぞれに設けられる。
【0034】
スイッチド・キャパシタ群412は、スイッチング素子と当該スイッチング素子のオン・オフによって充放電される容量素子とを有した1組のスイッチド・キャパシタ部を1H期間に応じて複数有する。また、この1組のスイッチド・キャパシタ部では、入力信号IN(色差信号B−Y、R−Y)が、複数のスイッチド・キャパシタ部全てに対して共通に入力され且つ容量素子を充電させるように接続されるとともに、複数のスイッチド・キャパシタ部各々から容量素子を放電させて、入力信号INを1H期間遅延させた出力信号OUT(色差信号B−Y、R−Y)が出力されるように接続される。
【0035】
尚、図4に示すスイッチド・キャパシタ群412は、スイッチング素子としてはNMOSトランジスタ(N1〜N8)を採用するとともに、スイッチド・キャパシタ部としてはバッファ型スイッチド・キャパシタ部(410a〜410d)を採用したものである。尚、バッファ型スイッチド・キャパシタ部(410a〜410d)は、1H期間に応じた数分設けられる。例えば、1H期間を“64μsec”、1組のバッファ型スイッチド・キャパシタ部(410a〜410d)の各々の遅延時間を“0.25μsec”とした場合、バッファ型スイッチド・キャパシタ部(410a〜410d)の段数は“257段”分必要となる。
【0036】
例えば、バッファ型スイッチド・キャパシタ部410aは、二つのNMOSトランジスタN1(本発明に係る『一方のスイッチング素子』、NMOSトランジスタN2(本発明に係る『他方のスイッチング素子』)と、一つの容量素子C1と、を有する。NMOSトランジスタN1、N2の双方のソース電極(本発明に係る『一方の電極』)が共通接続されるとともに、その共通接続部には容量素子C1が接続される。NMOSトランジスタN1のドレイン電極(本発明に係る『一方のスイッチング素子の他方の電極』)へ入力信号INを供給し、NMOSトランジスタN1をオンさせる場合にはNMOSトランジスタN2をオフさせて、容量素子C1では入力信号INに応じて適切に充電がなされる。一方、NMOSトランジスタN2をオンさせる場合にはNMOSトランジスタN1をオフさせて、容量素子C1では適切に放電がなされて、NMOSトランジスタN2のドレイン電極(本発明に係る『他方のスイッチング素子の他方の電極』)から出力信号OUTを得る。
【0037】
尚、バッファ型スイッチド・キャパシタ部410aの後段のバッファ型スイッチド・キャパシタ部410b〜410dについても同様の構成・動作である。すなわち、バッファ型スイッチド・キャパシタ部410a〜410dでは、各々の充電用トランジスタに該当するNMOSトランジスタN1、N3、N5、N7の各ドレイン電極を共通に接続させて、バッファ型スイッチド・キャパシタ部410a〜410d各々に入力信号INを順次入力させるようにする。また、バッファ型スイッチド・キャパシタ部410a〜410dでは、各々の放電用トランジスタに該当するNMOSトランジスタN2、N4、N6、N8の各ドレイン電極とボルテージフォロワ411の非反転入力端子を共通に接続させて、バッファ型スイッチド・キャパシタ部410a〜410d各々から、入力信号INを1H期間遅延させた出力信号OUTが順次得られるようにする。
【0038】
シフトレジスタ420、オン期間制御部430は、本発明の『スイッチング制御部』の一実施形態である。すなわち、シフトレジスタ420、オン期間制御部430は、バッファ型スイッチド・キャパシタ部410a〜410dが有するNMOSトランジスタN1〜N8各々のオン・オフを制御することで、バッファ型スイッチド・キャパシタ部410a〜410dが有する容量素子C1〜C4の各々を、入力信号INに基づいて順次充電させていく。また、容量素子C1〜C4の順次充電の際には、一スイッチング周期前に充電しておいた容量素子C1〜C4のいずれか一つを放電させることで、バッファ型スイッチド・キャパシタ部410a〜410d各々から出力信号OUTを順次出力させていく。更に、バッファ型スイッチド・キャパシタ部410a〜410dが有するNMOSトランジスタN1〜N8各々のオン・オフを切り替える際には、バッファ型スイッチド・キャパシタ部410a〜410dが有するNMOSトランジスタN1〜N8全てを一旦オフさせる制御を行う。
【0039】
このように、全てのNMOSトランジスタN1〜N8をオフさせることによって、NMOSトランジスタN1〜N8のスルーレートや閾値等のトランジスタ特性の相違によって、NMOSトランジスタN1〜N8のうち少なくとも二つ以上が同時にオンする不具合を確実に回避できる。また、この結果、バッファ型スイッチド・キャパシタ部410a〜410dが有する容量素子C1〜C4のうち少なくとも二つが同時に充電されるという不具合が確実に回避できる。さらに、例えば、NMOSトランジスタN2、N4が同時にオンして、容量素子C1、NMOSトランジスタN2、N4、容量素子C4といった異常な閉ループが形成されるといった不具合も確実に回避できる。
【0040】
尚、前述した全てのNMOSトランジスタN1〜N8をオフさせる仕組みとしては、NMOSトランジスタN1〜N8各々を適宜オン・オフさせる基準周期となるスイッチング周期を用いることで、入力信号INの遅延時間(1H期間)を設定するとともに、入力信号INを遅延させる際には全てのNMOSトランジスタN1〜N8のうち少なくともいずれかをオンさせるオン期間を、NMOSトランジスタN1〜N8のスイッチング周期よりも短く設定する。
【0041】
この結果、オン対象となるNMOSトランジスタN1〜N8の少なくともいずれかのスイッチング周期の期間中では、オン対象となるNMOSトランジスタN1〜N8においてオフ期間が必ず発生する。また、このスイッチング周期の期間中では、オフ対象となる残りのNMOSトランジスタN1〜N8の少なくともいずれかは当然ながらオフ期間である。それゆえに、オン対象・オフ対象に関わらず、NMOSトランジスタN1〜N8の全てが必ずオフとなるオフ期間が発生する。尚、このような制御は、つぎに詳述するシフトレジスタ420、オン期間制御部430によって実現され、オン対象となるNMOSトランジスタN1〜N8のうち少なくともいずれかに対して行われるので、負荷が少なく且つ効率良く行えるという利点を有する。
【0042】
シフトレジスタ420は、NMOSトランジスタN1〜N8のスイッチング周期が設定されたシフトクロック信号SCKが入力される毎にトリガ信号T(シリアル入力信号)の1ショットパルスを順次シフトしていくことで、NMOSトランジスタN1〜N8を順次オン・オフさせるパラレル・スイッチング信号S0〜S4を生成する。尚、シフトレジスタ420は、図4に示すように、D型フリップフロップ素子であるDFF0〜DFF4を多段接続することで実現される。
【0043】
オン期間制御部430は、シフトクロック信号SCKと同期させた制御クロック信号CCKに基づいて、パラレル・スイッチング信号S0〜S4のいずれかの要素が全てのNMOSトランジスタN1〜N8のうち少なくともいずれかをオンさせる論理レベル(Lレベル)となった場合に、そのいずれかの要素の論理レベル(Lレベル)の期間をNMOSトランジスタN1〜N8のスイッチング周期よりも短く制限した上で、全てのNMOSトランジスタN1〜N8の各ゲート電極へと供給させるための制御を行う。このため、オン期間制御部430は、PMOSトランジスタとNMOSトランジスタを直列接続したインバータ素子INV0〜INV4を有する。尚、インバータ素子INV0〜INV4の各ゲート電極には、それぞれに対応したパラレル・スイッチング信号S0〜S4が供給される。また、インバータ素子INV0〜INV4からは、パラレル・スイッチング信号S0〜S4を論理反転させたパラレル・スイッチング信号SW0〜SW4が出力されて、全てのNMOSトランジスタN1〜N8の各ゲート電極へと供給される。さらに、インバータ素子INV0〜INV4の各電源側には、制御クロック信号CCKが供給される。
【0044】
尚、インバータ素子INV0〜INV4を設けたのは、つぎの理由に基づくものである。すなわち、本実施形態ではトリガ信号Tの1ショットパルスがLレベルとして設定され、パラレル・スイッチング信号S0〜S4は、このトリガ信号TのLレベルが順次シフトしたものである。また、NMOSトランジスタN1〜N8は、ゲート電極にHレベルが供給されたときにオンする特性である。ここで、パラレル・スイッチング信号S0〜S4において順次シフトされるLレベルによって、NMOSトランジスタN1〜N8の少なくともいずれかをオンさせるためには、パラレル・スイッチング信号S0〜S4のLレベルを論理反転してHレベルへと変換する必要があり、このため、インバータ素子INV0〜INV4が必要となる。
【0045】
また、インバータ素子INV0〜INV4の各電源側に制御クロック信号CCKを供給したのは、つぎの理由に基づくものである。すなわち、制御クロック信号CCKがLレベルとなる期間では、インバータ素子INV0〜INV4には電源が供給されないために、パラレル・スイッチング信号SW0〜SW4はハイインピーダンスとなる。すなわち、この場合、全てのNMOSトランジスタN1〜N8がオンする一方、制御クロック信号CCKがHレベルとなる期間では、インバータ素子INV0〜INV4には電源が供給されるので、パラレル・スイッチング信号S0〜S4に応じたパラレル・スイッチング信号SW0〜SW4が出力される。ここで、制御クロック信号CCKはシフトクロック信号SCKと同期させており、制御クロック信号CCKのHレベル期間を、シフトクロック信号SCKの1周期、すなわちNMOSトランジスタN1〜N8のスイッチング周期よりも短く制限しておけば、スイッチング周期の期間中において、全てのNMOSトランジスタN1〜N8をオフさせるオフ期間が発生するからである。
【0046】
図5は、スイッチング素子としてPMOSトランジスタP1〜P8を採用した場合の1H遅延回路400の構成図である。図4に示した1H遅延回路400と同様に、スイッチド・キャパシタ群415と、シフトレジスタ421と、オン期間制御部431と、を有する。図4に示した1H遅延回路400と相違する点は、前述したように、バッファ型スイッチド・キャパシタ部413a〜413dが有するスイッチング素子がPMOSトランジスタに置き換わった点と、それに伴ってオン期間制御部431のインバータ素子INV0〜INV4の接地側に制御クロック信号CCKが供給された点と、オン期間制御部431に供給させる制御クロック信号CCKと、シフトレジスタ421に入力させるトリガ信号Tとをそれぞれ論理反転させた点である。図5に示す1H遅延回路400のかかる構成においても、図4に示した1H遅延回路400と同様の効果が得られる。
【0047】
<1H遅延回路の動作>
図6、図7に示すタイミングチャートに基づいて、図4に示した1H遅延回路400の動作例を説明する。尚、図5に示した1H遅延回路400の動作については、トリガ信号T、制御クロック信号CCK、パラレル・スイッチング信号S0〜S4、パラレル・スイッチング信号SW0〜SW4の論理が反転するが、動作内容自体は同様であるため、説明を省略する。
【0048】
まず、シフトレジスタ420では、時刻TS〜T0の期間、トリガ信号TのLレベルの1ショットパルスが、初段のDFF0へと入力される(図6(a)参照)。そして、シフトレジスタ420は、時刻T0〜T1、時刻T1〜T2、・・・、時刻T4〜T5の各期間毎にシフトクロック信号SCKが入力され、トリガ信号TのLレベルを後段のDFF1〜4へと順にシフトしていき、このシフト結果であるパラレル・スイッチング信号S0〜S4が、DFF0〜4の各出力から抽出される(図6(b)〜(f)参照)。尚、時刻T0〜T1、時刻T1〜T2、・・・、時刻T4〜T5の各期間は、シフトクロック信号SCKの1周期であって、NMOSトランジスタN1〜N8のスイッチング周期を定めるものである。また、NMOSトランジスタN1〜N8のスイッチング周期は、入力信号INの遅延時間である1H期間に設定されてある。ゆえに、尚、時刻T0〜T1、時刻T1〜T2、・・・、時刻T4〜T5の各期間は、1H期間に対応する。
【0049】
つぎに、オン期間制御部430では、シフトクロック信号SCKと同期させた制御クロック信号CCKが、各インバータ素子INV0〜INV4の電源側へと供給される。尚、制御クロック信号CCKはシフトクロック信号SCKよりも高周波(図6に示す例では2倍の周波数)であって、制御クロック信号CCKのHレベル期間(時刻E0〜E1、時刻E2〜E3、・・・)は、パラレル・スイッチング信号S0〜S4のLレベル期間(時刻T0〜T1、時刻T1〜T2、・・・)よりも短く設定される(図6(b)〜(g)参照)。この結果、パラレル・スイッチング信号S0〜S4のLレベル期間よりも短く制限されたHレベル期間を有するパラレル・スイッチング信号SW0〜SW4がインバータ素子INV0〜INV4より出力される(図6(h)〜(i)参照)。
【0050】
つぎに、スイッチド・キャパシタ群412では、バッファ型スイッチド・キャパシタ部410a〜410dに対して入力信号IN(色差信号R−Y、B−Y)が入力された場合とする。尚、入力信号INのレベルは、時刻T0〜T1の期間ではD0、時刻T1〜T2ではD1、・・・、時刻T4〜T5ではD5、へと変化した場合とする(図7(a)参照)。
【0051】
まず、時刻T0〜T1の期間において、オン期間制御部430から供給されたパラレル・スイッチング信号SW0〜SW4のうち、パラレル・スイッチング信号SW0のみがHレベル期間(時刻E0〜E1)を有しており、その他のパラレル・スイッチング信号SW1〜SW4はLレベルのままである(図6(h)〜(i)参照)。よって、時刻T0〜時刻T1の期間のうち、時刻E0〜E1の期間では、バッファ型スイッチド・キャパシタ部410aのNMOSトランジスタN1がオンとなり、残りのNMOSトランジスタN2〜N8は全てオフである(図7(b)〜(f)参照)。このため、時刻E0〜E1の期間では、バッファ型スイッチド・キャパシタ部410aにおいて、NMOSトランジスタN1と容量素子C1の充電経路が形成されることになるため、入力信号INのレベルD0に応じた電荷が容量素子C1へと充電され、入力信号INのレベルD0の情報が容量素子C1へと保持される(図7(g)参照)。一方、時刻E0〜E1の期間を除いた時刻T0〜T1の期間、特に、容量素子C1への充電後の時刻E1〜T1の期間では、全てのNMOSトランジスタN1〜N8がオフ期間となり、全ての容量素子C1〜C4への充放電動作が確実に制限される。
【0052】
つぎに、時刻T1〜T2の期間において、オン期間制御部430から供給されたパラレル・スイッチング信号SW0〜SW4のうち、パラレル・スイッチング信号SW1のみがHレベル期間(時刻E2〜E3)を有しており、その他のパラレル・スイッチング信号SW0、SW2〜SW4はLレベルのままである(図6(h)〜(i)参照)。よって、時刻T1〜時刻T2の期間のうち、時刻E2〜E3の期間では、バッファ型スイッチド・キャパシタ部410aのNMOSトランジスタN2とバッファ型スイッチド・キャパシタ部410bのNMOSトランジスタN3がオンとなり、残りのNMOSトランジスタN1、N4〜N8は全てオフである(図7(b)〜(f)参照)。このため、時刻E2〜E3の期間では、バッファ型スイッチド・キャパシタ部410aにおいて、NMOSトランジスタN2と容量素子C1の放電経路が形成されて容量素子C1に保持しておいた電荷が放電されることで、入力信号INのレベルD0が容量素子C1から読み出されて、ボルテージフォロワ411の非反転入力端子へと入力される。この結果、ボルテージフォロワ411からレベルD0の入力信号INが出力される(図7(k)参照)。また、時刻E2〜E3の期間では、バッファ型スイッチド・キャパシタ部410bにおいて、NMOSトランジスタN3と容量素子C2の充電経路が形成されて入力信号INのレベルD1に応じた電荷が容量素子C2へと充電されることで、入力信号INのレベルD1の情報が容量素子C2へと保持される(図7(h)参照)。一方、時刻E2〜E3の期間を除いた時刻T1〜T2の期間、特に、容量素子C1の放電前且つ容量素子C2への充電前までの時刻T1〜E2の期間では、全てのNMOSトランジスタN1〜N8がオフ期間となり、全ての容量素子C1〜C4への充放電動作が確実に制限される。
【0053】
以後、時刻T2〜T3、時刻T3〜T4、時刻T4〜T5の各期間においても、同様の動作が行われる。このように、NMOSトランジスタN1〜N8のオン・オフが切り替わるタイミング(時刻T1〜T5)において、全てのNMOSトランジスタN1〜N8がオフするオフ期間(時刻E1〜E2、時刻E3〜E4、時刻E5〜E6、時刻E7〜E8、時刻E9〜E10)が必ず発生することになる。このため、NMOSトランジスタN1〜N8のスルーレートや閾値の相違によって、全てのNMOSトランジスタN1〜N8のうち少なくとも2つが同時にオンする現象を確実に回避することができ、誤動作が生じ得ない適切な遅延処理が行われることになる。
【0054】
<その他の実施形態>
以上、本実施の形態について説明したが、前述した実施例は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【0055】
例えば、前述した実施形態では、スイッチド・キャパシタ群412において、バッファ型スイッチド・キャパシタ部410a〜410dを採用したが、図8に示すような、いわゆる電荷転送型スイッチド・キャパシタ部を採用してもよい。電荷転送型スイッチド・キャパシタ部は、負帰還経路に容量素子CZが設けられたオペアンプ805の反転入力端子側に、スイッチング素子801、803を両端子に設けた容量素子CXと、スイッチング素子802、804を両端子に設けた容量素子CYと、を設けたものである。また、この電荷転送型スイッチド・キャパシタ部の動作としては、例えば、スイッチング素子801、804のペアとスイッチング素子802、803のペアが、相補的にオン・オフを繰り返すことで、容量素子CX、CYは、入力信号INに応じた充電動作とオペアンプ805の反転入力端子への放電動作を交互に行う。
【0056】
このような電荷転送型スイッチド・キャパシタ部を多段接続して、さらに、シフトレジスタ420とオン期間制御部430と同様な回路を設けることで、1H遅延回路を実現した場合とする。この場合、入力信号INを遅延させるべく、スイッチング素子801〜804各々のオン・オフが切り替えられる際には、スイッチング素子801〜804全てをオフさせる制御が行われる。ゆえに、電荷転送型スイッチド・キャパシタ部の場合であっても、全てのスイッチング素子801〜804のうち少なくとも2つが同時にオンする不具合を確実に回避でき、誤動作が生じ得ない適切な遅延処理を行えるようになる。
【0057】
また、例えば、スイッチド・キャパシタ群412において、図9に示すような、いわゆるダイレクトチャージ型スイッチド・キャパシタ部を採用してもよい。ダイレクトチャージ型スイッチド・キャパシタ部は、オペアンプ905の負帰還経路上に、スイッチング素子901、903を両端子に設けた容量素子CVと、スイッチング素子902、904を両端子に設けた容量素子CWと、を設けたものである。また、このダイレクトチャージ型スイッチド・キャパシタ部の動作としては、例えば、スイッチング素子901、904のペアとスイッチング素子902、903のペアが、相補的にオン・オフを繰り返すことで、容量素子CV、CWは、入力信号INに応じた充電動作とオペアンプ905の反転入力端子への放電動作を交互に行う。
【0058】
このようなダイレクトチャージ型スイッチド・キャパシタ部を多段接続して、さらに、シフトレジスタ420とオン期間制御部430と同様な回路を設けることで、1H遅延回路を実現した場合とする。この場合、入力信号INを遅延させるべく、スイッチング素子901〜904各々のオン・オフが切り替えられる際には、スイッチング素子901〜904の全てをオフさせる制御が行われる。ゆえに、ダイレクトチャージ型スイッチド・キャパシタ部の場合であっても、全てのスイッチング素子901〜904のうち少なくとも2つが同時にオンする不具合を確実に回避でき、誤動作が生じ得ない適切な遅延処理が行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施形態に係るテレビ受信システムの構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る映像信号処理回路の構成を示す図である。
【図3】本発明に係る色差信号B−Y、R−Yの波形図とそれに対応する輝度信号Yの波形図の一例を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る1H遅延回路の構成を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る1H遅延回路の構成を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る1H遅延回路の主要信号の動作タイミングを示す図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る1H遅延回路の主要信号の動作タイミングを示す図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る電荷転送型スイッチド・キャパシタ部の構成を示す図である。
【図9】本発明の一実施形態に係るダイレクトチャージ型スイッチド・キャパシタ部の構成を示す図である。
【図10】インターレース走査を説明するための図である。
【図11】クロマ信号C、輝度信号Y、コンポジット信号SCの波形図の一例を示す図である。
【図12】スイッチド・キャパシタ回路を用いた遅延回路の構成を説明するための図である。
【図13】スイッチド・キャパシタ回路を用いた遅延回路の主要信号の従来の動作タイミングを示す図である。
【図14】スイッチド・キャパシタ回路を用いた遅延回路において全てのスイッチング素子がオンする期間が起こり得る現象を説明するための図である。
【符号の説明】
【0060】
10a、10b スイッチド・キャパシタ部 12 ボルテージフォロワ
110 アンテナ 120 チューナ
130 中間周波フィルタ 140 映像中間周波処理回路
150、600 クランプ回路 160 YC分離回路
170 輝度信号処理回路 171 遅延ライン
172 シャープネス調整部 173 ブラック・ストレッチ処理部
174 コントラスト調整部 180 色信号処理回路
181 ゲイン調整部 182 カラーキラー回路
190 色復調回路 191 同期検波回路
192、193 乗算器 194 副搬送波信号発振器
195 位相シフタ 196 LPF
198 加算器 199 カラークランプ回路
200 マトリクス回路 210 RGBドライバ
220 ディスプレイ 300 映像信号処理回路
400 1H遅延回路 412 スイッチド・キャパシタ群
410a〜410d バッファ型スイッチド・キャパシタ部
411、414 ボルテージフォロワ
420、421 シフトレジスタ
430、431 オン期間制御部
801〜804 スイッチング素子
901〜904 スイッチング素子
805、905 オペアンプ
500 SECAMデコーダ
600 クランプ回路
601 スイッチ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号を遅延させた出力信号を得る遅延回路において、
スイッチング素子と当該スイッチング素子のオン・オフによって充放電される容量素子とを有したスイッチド・キャパシタ部を複数有し、前記入力信号が前記複数のスイッチド・キャパシタ部全てに対して共通に入力され且つ前記容量素子を充電させるように接続されるとともに、前記複数のスイッチド・キャパシタ部各々から前記容量素子を放電させて前記出力信号が出力されるように接続されるスイッチド・キャパシタ群と、
前記複数のスイッチド・キャパシタ部が有する前記スイッチング素子各々のオン・オフを制御することで、前記複数のスイッチド・キャパシタ部が有する前記容量素子各々を前記入力信号に基づいて順次充電させていくととともに、当該順次充電の際に前回充電しておいた前記容量素子を放電させることで前記複数のスイッチド・キャパシタ部各々から前記出力信号を順次出力させていき、更に、前記複数のスイッチド・キャパシタ部が有する前記スイッチング素子各々のオン・オフを切り替える際に、前記複数のスイッチド・キャパシタ部が有する前記スイッチング素子全てをオフさせる制御を行うスイッチング制御部と、
を有することを特徴とする遅延回路。
【請求項2】
前記スイッチング制御部は、
前記スイッチング素子のスイッチング周期によって前記入力信号の遅延時間を設定するとともに、前記入力信号を遅延させる際に前記複数のスイッチド・キャパシタ部が有する前記スイッチング素子のうち少なくともいずれかをオンさせるオン期間を、前記スイッチング周期よりも短く設定すること、
を特徴とする請求項1に記載の遅延回路。
【請求項3】
前記スイッチング制御部は、
前記スイッチング周期が設定されたシフトクロック信号が入力される毎にシリアル入力信号を順次シフトしていき、前記複数のスイッチド・キャパシタ部が有する前記スイッチング素子を順次オン・オフさせるパラレル・スイッチング信号を出力するシフトレジスタと、
前記シフトクロック信号と同期させた制御信号に基づいて、前記パラレル・スイッチング信号のいずれかの要素が前記複数のスイッチド・キャパシタ部が有する前記スイッチング素子のうち少なくともいずれかをオンさせる論理レベルとなった場合に、前記論理レベルの期間を前記スイッチング周期よりも短く制限した前記パラレル・スイッチング信号を、前記複数のスイッチド・キャパシタ部が有する前記スイッチング素子へと出力させるオン期間制御部と、
を有することを特徴とする請求項2に記載の遅延回路。
【請求項4】
前記スイッチド・キャパシタ部は、
一方及び他方の二つの前記スイッチング素子の双方の一方の電極が共通接続されるとともにその共通接続部には一つの前記容量素子が接続され、
前記一方のスイッチング素子の他方の電極へと前記入力信号が供給され、
前記一方のスイッチング素子をオンさせる場合には前記他方のスイッチング素子をオフさせて、前記一つの容量素子が前記入力信号に基づいて充電されるとともに、
前記他方のスイッチング素子をオンさせる場合には前記一方のスイッチング素子をオフさせて、前記一つの容量素子が放電されて、前記他方のスイッチング素子の他方の電極から前記出力信号が得られるものであること、
を特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の遅延回路。
【請求項5】
撮像された色の三原色情報を有したテレビジョン放送の映像信号に基づいて輝度信号とクロマ信号を復調し、さらに、前記輝度信号の輝度信号処理と並行して前記クロマ信号の色復調処理の過程で当該クロマ信号を二つの色差信号に復調し、前記輝度信号と前記二つの色差信号に基づいて前記複合映像信号が有する前記三原色情報を再生する映像信号処理回路において、
スイッチング素子と当該スイッチング素子のオン・オフによって充放電される容量素子とを有したスイッチド・キャパシタ部を複数有し、前記復調後の色差信号が前記複数のスイッチド・キャパシタ部全てに対して共通に入力され且つ前記容量素子を充電させるように接続されるとともに、前記複数のスイッチド・キャパシタ部各々から前記容量素子を放電させて前記色差信号を1H期間遅延させた信号が出力されるように接続されるスイッチド・キャパシタ群と、
前記複数のスイッチド・キャパシタ部が有する前記スイッチング素子各々のオン・オフを制御することで、前記複数のスイッチド・キャパシタ部が有する前記容量素子各々を前記色差信号に基づいて順次充電させていくととともに、当該順次充電の際に前回充電しておいた前記容量素子を放電させることで前記複数のスイッチド・キャパシタ部各々から前記色差信号を1H期間遅延させた信号を順次出力させていき、更に、前記複数のスイッチド・キャパシタ部が有する前記スイッチング素子各々のオン・オフを切り替える際に、前記複数のスイッチド・キャパシタ部が有する前記スイッチング素子全てをオフさせる制御を行うスイッチング制御部と、
前記1H期間遅延させる前と後の前記色差信号を加算する加算器と、
前記加算器の加算結果と前記輝度信号処理後の輝度信号とに基づいて前記三原色の情報を再生するマトリクス回路と、
を有することを特徴とする映像信号処理回路。
【請求項6】
前記スイッチング制御部は、
前記スイッチング素子のスイッチング周期によって前記色差信号の遅延時間を設定するとともに、前記色差信号を遅延させる際に前記複数のスイッチド・キャパシタ部が有する前記スイッチング素子のうち少なくともいずれかをオンさせるオン期間を、前記スイッチング周期よりも短く設定すること、
を特徴とする請求項5に記載の映像信号処理回路。
【請求項7】
前記スイッチング制御部は、
前記スイッチング周期が設定されたシフトクロック信号が入力される毎にシリアル入力信号を順次シフトしていき、前記複数のスイッチド・キャパシタ部が有する前記スイッチング素子を順次オン・オフさせるパラレル・スイッチング信号を出力するシフトレジスタと、
前記シフトクロック信号と同期させた制御信号に基づいて、前記パラレル・スイッチング信号のいずれかの要素が前記複数のスイッチド・キャパシタ部が有する前記スイッチング素子のうち少なくともいずれかをオンさせる論理レベルとなった場合に、前記論理レベルの期間を前記スイッチング周期よりも短く制限した前記パラレル・スイッチング信号を、前記複数のスイッチド・キャパシタ部が有する前記スイッチング素子へと出力させるオン期間制御部と、
を有することを特徴とする請求項6に記載の映像信号処理回路。
【請求項8】
前記スイッチド・キャパシタ部は、
一方及び他方の二つの前記スイッチング素子の双方の一方の電極が共通接続されるとともにその共通接続部には一つの前記容量素子が接続され、
前記一方のスイッチング素子の他方の電極へと前記色差信号が供給され、
前記一方のスイッチング素子をオンさせる場合には前記他方のスイッチング素子をオフさせて、前記一つの容量素子が前記色差信号に基づいて充電されるとともに、
前記他方のスイッチング素子をオンさせる場合には前記一方のスイッチング素子をオフさせて、前記一つの容量素子が放電されて、前記他方のスイッチング素子の他方の電極から前記色差信号を1H期間遅延させた信号が得られるものであること、
を特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の映像信号処理回路。
【請求項9】
前記映像信号は、PAL(Phase Alternation by Line)方式又はSECAM(SEquential Couleur A Memoire)方式に準拠した信号であること、を特徴とする請求項5乃至8のいずれかに記載の映像信号処理回路。
【請求項10】
前記映像信号処理回路は、BiCMOSプロセスによって形成された回路であること、を特徴とする請求項5乃至9のいずれかに記載の映像信号処理回路。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−97020(P2007−97020A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−286082(P2005−286082)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】