説明

遅延回路

【課題】遅延回路の遅延時間を簡易な構成によって延長する。
【解決手段】映像信号の1走査期間あたり第1パルス数を有する第1のクロック信号を出力するクロック信号出力回路310と、第1のクロック信号が入力され、映像信号の帰線消去期間内における所定周期の間に第1のクロック信号を停止し、1走査期間あたり第1パルス数より少ない第2パルス数を有した第2のクロック信号を出力するクロック信号調整回路330と、第2のクロック信号によってサンプリングされた映像信号を、当該サンプリング開始から第2のクロック信号が第1パルス数分入力されるまでの間、遅延させて出力するサンプルホールド回路101と、を有する遅延回路。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像信号処理に用いられる遅延回路に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビ受信システムにはアナログ信号を遅延させる遅延回路が種々用いられている。
遅延回路の一例としては、特許文献1に示す構成を有するものがある。以下、図5を参照して、色櫛形フィルタに含まれる、PAL方式の色差信号を1H遅延させる遅延回路100について説明する。
【0003】
遅延回路100は、サンプルホールド回路101と、クロック信号出力回路102とから構成される。
サンプルホールド回路101は、複数のメモリ単位111−1〜111−m、及びオペアンプ112からなるアナログメモリ回路110と、フリップフロップ(FF1〜FFm)を有するシフトレジスタからなる制御回路120とから構成される。かかる構成のサンプルホールド回路101は、スイッチドキャパシタと呼ばれている。
【0004】
アナログメモリ回路110を構成するメモリ単位111−1〜11−mは、1Hの色差信号に対するサンプリング数m設けられる。これによって、アナログメモリ回路110に1H分の色差信号をサンプリングして保持できる。
【0005】
メモリ単位111−1〜111−mの各々は、キャパシタCと、色差信号の電圧値に応じた電圧をキャパシタに保持させるためのスイッチング素子Tia、Tibと、キャパシタCの両端をオペアンプ112のフィードバック回路に接続するためのスイッチング素子Toa、Tobとを含んで構成される。以下、メモリ単位111−1を採り上げて説明する。
【0006】
メモリ単位111−1は、トランジスタTia、Toa、Tib、Tob及びキャパシタCを含んで構成される。
トランジスタTiaのゲートがハイレベルになると、トランジスタTiaのドレイン−ソース間を介してキャパシタCの一端へ色差信号の電圧値が入力される。また、トランジスタToaのゲートがハイレベルになると、トランジスタToaのドレイン−ソース間を介してオペアンプ112の出力端子と、キャパシタCの一端が接続される。
【0007】
トランジスタTibのゲートがハイレベルになると、トランジスタTibのドレイン−ソース間を介してキャパシタCの他端が接地される。また、トランジスタTobのゲートがハイレベルになると、トランジスタTobのドレイン−ソース間を介してオペアンプ112の反転入力端子と、キャパシタCの他端が接続される。
【0008】
メモリ単位111−2〜111−mについてもメモリ単位111−1と同様の構成を有する。メモリ単位111−1のトランジスタTia及びトランジスタTibのゲートは短絡され、次段のメモリ単位111−2のトランジスタToa及びトランジスタTobのゲートに共通に接続される。同様に、メモリ単位111−(n−1)(n=1、2、…、m)もそれぞれ次段のメモリ単位111−nに接続される。
【0009】
制御回路120は、複数のメモリ単位111−1〜111−mの中から色差信号の電圧値を記憶させるメモリ単位と色差信号の電圧値を出力させるメモリ単位とを順に選択するために設けられる。制御回路120は、メモリ単位111−1〜111−mと等しい数mのFF1〜FFmの直列回路であるシフトレジスタを含んで構成される。
【0010】
FF(n−1)のQ端子はそれぞれ次段のFFnのD端子に接続される。第1段目のFF1のD端子には、1Hの開始を示す水平同期パルスが入力される。FF1〜FFmのクロック端子(C端子)には共通に、クロック信号出力回路102からサンプリング周期に同期したクロック信号のパルスが入力される。
【0011】
また、FF(n−1)のQ端子は、第(n−1)段のメモリ単位111−nのトランジスタTia、Tibのゲート、及び第n段のメモリ単位111−nのトランジスタToa、Tobのゲートに共通に接続される。但し、第1段のメモリ単位111−1のトランジスタToa、TobのゲートにはFFmのQ端子が接続される。
【0012】
以上の構成によって、クロック信号出力回路102から制御回路120へ、クロック信号のパルスが入力されるたびに、シフトレジスタの次段に水平同期パルスがシフトされる。クロック信号のパルスが(n−1)回入力されると、FF(n−1)のQ端子がハイレベルに維持され、メモリ単位111−(n−1)のキャパシタCに色差信号の電圧値が新たにサンプリングされて保持され、メモリ単位111−nのキャパシタCに保持されていた色差信号の電圧値に応じた電圧がオペアンプ112から出力される。
【0013】
但し、m回目のパルスについては、FFmのQ端子がハイレベルに維持され、メモリ単位111−mのキャパシタCに色差信号の電圧値が新たにサンプリングされて保持され、メモリ単位111−1のキャパシタCに保持されていた色差信号の電圧値に応じた電圧がオペアンプ112から出力される。よって、1Hのサンプリング数mに応じて設定された、制御回路120のシフトレジスタの段数及び、メモリ単位111の個数と、サンプリング周波数に一致させたクロック信号の周波数によって、遅延回路100は、入力された色差信号を1H遅延させて出力させる。
【0014】
以上より、遅延回路100に色差信号が入力されてから出力されるまでの遅延時間は、主に、制御回路120のシフトレジスタの段数、及びメモリ単位111の個数と、遅延回路100に供給されるクロック信号の周波数と、によって定められる。
【特許文献1】特開2007−36872号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、上記のような遅延回路を設計・製造して映像信号処理システムに組み込もうとした際に、アナログ信号が遅延回路に入力されるまでの間の配線インピーダンスや、遅延回路から出力される遅延信号を伝送するための伝送経路の配線インピーダンス等を考慮すると、遅延回路自体の遅延時間の微調整を必要とする場合がある。
この場合、例えば、遅延回路に供給されるクロック信号の周波数(サンプリング周波数)の変更をすることが考えられる。しかしながら、かかるクロック信号の周波数の変更は、セットアップタイムやホールドタイム等のクロック制約に基づき限界設計されている等の理由で、全ての面で最適なクロック信号の周波数を試行錯誤で検出する必要がある等、現実的には困難な場合が多い。
また、例えば、制御回路のシフトレジスタの段数及び、メモリ単位の個数を変更することが考えられる。しかしながら、かかる変更によって、遅延回路全体の設計変更が必要となり、特に、遅延回路が複数層の集積回路で構成されている場合には全層変更となる恐れがある。
上記のとおり、遅延回路自体の遅延時間の微調整を試みた場合、大規模な修正を要し、非効率的な試行錯誤の調整が必要となり、遅延回路ひいては当該遅延回路を用いた映像信号処理システムのコストアップを引き起こす恐れがある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題を解決するための主たる本発明は、映像信号の1走査期間あたり第1パルス数を有する第1のクロック信号を出力するクロック信号出力回路と、前記第1のクロック信号が入力され、前記映像信号の帰線消去期間内における所定周期の間に前記第1のクロック信号を停止し、前記1走査期間あたり前記第1パルス数より少ない第2パルス数を有した第2のクロック信号を出力するクロック信号調整回路と、前記第2のクロック信号によってサンプリングされた前記映像信号を、当該サンプリング開始から前記第2のクロック信号が前記第1パルス数分入力されるまでの間、遅延させて出力するサンプルホールド回路と、を有する遅延回路である。
本発明の他の特徴については、添付図面及び本明細書の記載により明らかとなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、遅延回路の遅延時間を簡易な構成によって延長できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0019】
<<遅延回路の構成>>
本実施形態に係る遅延回路300は、テレビ受信システムにおける既存の水平偏向回路18に含まれる構成を流用して構成されている。尚、遅延回路300は、PAL方式の色復調回路の色櫛形フィルタに適用され、色差信号を遅延させる用途に用いられる。
【0020】
以下、図1を参照して、遅延回路300の概略構成について説明する。尚、図1に示す構成のうち、図5に示すものと同一の構成については同一の番号を付し、その説明を省略する。遅延回路300は、クロック信号出力回路310と、タイミングパルス発生回路320と、クロック信号調整回路330と、サンプルホールド回路101と、から構成される。
【0021】
クロック信号出力回路310は、不図示の同期分離回路によってコンポジット映像信号から分離された水平同期信号が入力される。また、クロック信号出力回路310は、水平同期信号に同期する第1のクロック信号CLK1(第1のクロック信号)を出力する。第1のクロック信号CLK1は、水平同期信号の1周期である1水平走査期間(1H)あたりに、第1パルス数を有する。
【0022】
タイミングパルス発生回路320は、第1のクロック信号CLK1が入力され、タイミングパルスと、水平同期パルスを発生する。タイミングパルスは、コンポジット映像信号における後述の帰線消去期間内に発生され、第1のクロック信号CLK1のパルス幅(第1のパルス幅)を自然数倍(1倍、2倍、・・・、n倍)したパルス幅(第2のパルス幅)を有する。また、水平同期パルスは1Hの開始を示し、第1のクロック信号CLK1の1周期より短いパルス幅を有する。
【0023】
クロック信号調整回路330は、第1のクロック信号CLK1及びタイミングパルスが入力され、第2のクロック信号CLK2(第2のクロック信号)を出力する。第2のクロック信号CLK2は、タイミングパルスのパルス幅の間、第1のクロック信号CLK1のパルスの信号レベルが保持された信号である。よって、第2のクロック信号CLK2は、1Hあたりに、第1パルス数より少ない第2パルス数を有する。尚、第2のクロック信号CLK2は、サンプルホールド回路101において、サンプリング周期に同期したクロック信号となる。
【0024】
以下、図2及び図3を参照して、水平偏向回路18の構成と遅延回路300の構成との関係、及び遅延回路300の詳細な構成について説明する。図2及び図3に示す構成のうち、図5に示すものと同一の構成については同一番号を付し、その説明を省略する。
【0025】
遅延回路300は、クロック信号調整回路330と、サンプルホールド回路101と、水平偏向回路18の一部であるクロック信号出力回路310及びタイミングパルス発生回路320とにより構成される。尚、水平偏向回路18は、クロック信号出力回路310及びタイミングパルス発生回路320の他に、水平出力回路180を有する。
【0026】
クロック信号出力回路310は、電圧制御発振器(VCO)311と、ローパスフィルタ(LPF)312と、位相比較器313とから構成される。VCO311はm(mは1Hあたりのサンプリング数)×fH(fHは水平同期信号周波数)の周波数で発振し、位相比較器313及びLPF312の出力電圧によりその周波数及び位相が制御される結果、第1のクロック信号CLK1を出力する。
【0027】
タイミングパルス発生回路320は、分周器321と、カウンタ部322とから構成される。分周器321は、VCO311から出力される第1のクロック信号CLK1をm分周し、周波数fHのリセット信号を出力する。カウンタ部322は、第1のクロック信号CLK1とリセット信号が入力される。そして、カウンタ部322は、第1のクロック信号CLK1のパルス数をカウントし、リセット信号によって当該カウント値をリセットする。
【0028】
また、カウンタ部322はカウントデータをデコードするデコーダを含み、第1のクロック信号CLK1のカウント値が所定の閾値となると、所定パルス幅のパルス信号を発生させる。つまり、カウンタ部322は周波数fHの様々なタイミングで、様々なパルス幅を有するパルス信号を発生する。本実施形態に係る、カウンタ部322は、タイミングパルスと、水平同期パルスと、水平ドライブパルスとを出力する。水平ドライブパルスは、水平同期信号に同期させて電子ビームに水平走査をさせるための信号であり、水平出力回路180へ入力される。
【0029】
リセット信号は、水平同期信号と共に位相比較器313に入力され、位相比較器313によって、リセット信号の位相と水平同期信号の位相とが比較される。これによって、VCO311と、分周器321と、位相比較器313と、LPF312とによってPLL回路が構成されるため、クロック信号出力回路310は、水平同期信号と同期した第1のクロック信号CLK1を出力する。また、タイミングパルス発生回路320は、それぞれ水平同期信号と同期した、タイミングパルスと、水平同期パルスと、水平ドライブパルスとを発生する。
【0030】
水平出力回路180は、水平ドライブパルス信号をD/A変換することで、水平同期信号と同期して電子ビーム(不図示)を水平走査させるための水平偏向波(水平駆動信号)を水平偏向コイル(不図示)に出力する。水平偏向波に応じて駆動される電子ビームは、ディスプレイ(不図示)に映像を表示するための有効走査、及び電子ビームを次の走査線の開始点まで戻す帰線走査を行う。
【0031】
尚、帰線走査期間中のコンポジット映像信号は画像再現には不要である。よって、帰線走査期間中は、確実にコンポジット映像信号をカットオフして、ディスプレイの画面には不要な画像が再現されないように、帰線走査期間の前後を含んだ期間を帰線消去期間としている。帰線消去期間のコンポジット映像信号は、クランプ回路(不図示)によってペデスタルレベルを黒レベル以下に固定されるため、コンポジット映像信号のうち、帰線消去期間を除いた、有効走査期間のみディスプレイの画面に画像表示される。帰線消去期間中には水平同期信号が含まれ、帰線消去期間は、水平同期信号から前の部分であるフロントポーチと、水平同期信号から後ろの部分であるバックポーチとから構成される。
【0032】
クロック信号調整回路330は、NANDゲートから構成され、第1のクロック信号CLK1と、タイミングパルスとの否定論理積を第2のクロック信号CLK2とし、サンプルホールド回路101へ出力する。
【0033】
<<遅延回路の動作>>
以下、図4のタイミングチャートを基に、本実施形態に係る遅延回路の動作例について説明する。
テレビ受信システムの映像検波回路(不図示)より出力されたコンポジット映像信号から、同期分離回路によって分離された水平同期信号は、クロック信号出力回路310に入力される。クロック信号出力回路310から、水平同期信号に同期した、例えば、4MHzの周波数を有する第1のクロック信号CLK1が出力される。
【0034】
ところで、PAL方式のコンポジット映像信号の水平走査周波数(水平同期信号周波数fH)は15.625kHzである。よって、分周器321によって、第1のクロック信号CLK1が256分周され、周波数fHの水平同期信号と同一周波数のリセット信号が出力される。
【0035】
また、カウンタ部322において、第1のクロック信号CLK1のパルス数のカウント値がリセット信号によってリセットされる。つまり、カウンタ部322は、水平同期信号ごとに第1のクロック信号CLK1のパルス数のカウントを開始する。よって、カウンタ部322は1Hごとに第1のクロック信号CLK1の256パルス数(第1パルス数)をカウントする。そして、カウンタ部322のカウント値が、1H中の水平帰線消去期間にカウントされる所定のカウント値(所定の閾値)となると、カウンタ部322によって、第1のクロック信号CLK1のパルス幅(第1のパルス幅)より大きく、第1のクロック信号CLK1の1周期よりも小さいパルス幅(第2のパルス幅)のタイミングパルスが出力される。
【0036】
尚、所定のカウント値とは、例えば、PAL方式のコンポジット映像信号の場合1Hの周期のうち略1/6程度が水平帰線消去期間として規定されている。よって、256カウント/Hのうち、カウント開始から、水平同期信号のパルス幅の期間及びバックポーチ期間、又は256カウント終了直前のフロントポーチ期間に出力される、第1のクロック信号CLK1の略42パルス程度のうち、何れかのパルスのカウント値である。
【0037】
タイミングパルス及び第1のクロック信号CLK1から、クロック信号調整回路330によって、第2のクロック信号CLK2が出力される。尚、タイミングパルスのパルス幅(第2パルス幅)の期間が、本願請求項に係る帰線消去期間内における所定周期に該当する。
【0038】
ここでは、タイミングパルスのパルス幅(第2のパルス幅)を第1のクロック信号CLK1のパルス幅(第1のパルス幅)より大きく、第1のクロック信号CLK1の1周期よりも小さいパルス幅、としたので、第2のクロック信号CLK2の1Hあたりのパルス数は、第1のクロック信号CLK1の1Hあたりのパルス数よりも1パルス少ない255パルス数(第2パルス数)となる。
【0039】
尚、タイミングパルスは、帰線消去期間中に出力される。よって、第2のクロック信号CLK2において、ディスプレイの有効走査期間には、第1のクロック信号CLK1のパルスの信号レベルは保持されていない。
【0040】
サンプルホールド回路101によって、色差信号は、第2のクロック信号CLK2の周波数に応じてサンプリングされる。尚、ここで、色差信号は4MHzのサンプリング周波数でサンプリングされ、水平走査周波数が15.625kHzである。よって、1Hあたりのサンプリング数m=256個の、制御回路120のシフトレジスタFF1〜FF256及びアナログメモリ回路110のメモリ単位111−1〜111−256が設けられる。
【0041】
遅延回路300は、具体的には、初期状態では、制御回路120を構成するシフトレジスタの各FF1〜FF256はリセットされており、各メモリ単位111−1〜111−256のキャパシタCの両端はフローティング状態にあるものとする。制御回路120の第1段のFF1のD端子に、水平同期パルスが入力される。さらに、第2のクロック信号CLK2のパルスがFF1〜FF256のC端子に入力されることによって、FF1がセットされ、FF1のQ端子がハイレベルに保持される。これによって、メモリ単位111−1のトランジスタTia、Tibが導通状態となり、メモリ単位111−1のキャパシタCの端子電圧が入力される色差信号の電圧に等しくなる。従って、入力される色差信号の電圧に応じた電荷がメモリ単位111−1のキャパシタCに蓄積される。すなわち、メモリ単位111−1に色差信号の電圧値がサンプリングされて保持される。
【0042】
また、メモリ単位111−2のトランジスタToa、Tobが導通状態となり、オペアンプ112の出力端子と反転入力端子とがメモリ単位111−2のキャパシタCを介して接続される。これによって、オペアンプ112の出力端子と反転入力端子との間にメモリ単位111のキャパシタCの端子電圧が印加され、オペアンプ112の出力端子からその端子電圧と等しい電圧が出力される。
【0043】
次に、FF1〜FF256のC端子に、第2のクロック信号CLK2のパルスが入力されると、FF1がリセットされてFF1のQ端子はローレベルとなり、FF2がセットされてFF2のQ端子がハイレベルに保持される。これによって、メモリ単位111−2のトランジスタTia、Tibが導通状態となり、入力される色差信号の電圧値に応じた電荷がメモリ単位111−2のキャパシタCに蓄積される。すなわち、メモリ単位111−2に色差信号の電圧値がサンプリングされて保持される。
【0044】
また、メモリ単位111−3のトランジスタToa、Tobが導通状態となり、オペアンプ112の出力端子と反転入力端子とがメモリ単位111−3のキャパシタCを介して接続される。これによって、オペアンプ112の出力端子と反転入力端子との間にメモリ単位111のキャパシタCの端子電圧が印加され、オペアンプ112の非反転入力端子は接地されているので、オペアンプ112の出力端子からその端子電圧と等しい電圧が出力される。
【0045】
以下同様にFF1〜FF256のC端子に第2のクロック信号CLK2のパルスが入力されるたびにFF1〜FF256のQ端子のハイレベルが次段にシフトされる。FF1〜FF256に入力された第2のクロック信号CLK2のパルスが256パルス(第1パルス数)となると、FF256のQ端子がハイレベルに維持される。メモリ単位111−256のキャパシタCに色差信号の電圧値が新たにサンプリングされて保持され、メモリ単位111−1のキャパシタCに保持されていた色差信号の電圧値に応じた電圧がオペアンプ112から出力される。
【0046】
ここで、第2のクロック信号CLK2はクロック信号調整回路330によって、1Hあたりのパルス数が255パルス(第2パルス数)とされ、1Hの色差信号に対するサンプリング数256に対して1パルス少ないこととなる。また、第2のクロック信号CLK2のパルスが256パルス(第1パルス数)ほど、サンプルホールド回路101に入力されるまで、メモリ単位111−1のキャパシタCに保持されていた色差信号の電圧値に応じた電圧はオペアンプ112から出力されない。よって、サンプルホールド回路101に色差信号が入力されてから出力されるまでの遅延時間は、1Hよりも第2のクロック信号CLK2の1パルス幅の期間、延長されることとなる。
【0047】
以上より、本実施形態に係る遅延回路300によれば、サンプルホールド回路101の構成単位を変更することなく、また、サンプリングのためのクロック信号を別途用意することなく、第1のクロック信号CLK1の1Hあたりのパルス数を減らした第2のクロック信号CLK2を生成して、第2のクロック信号CLK2によってサンプリングを行うことができる。よって、大規模な修正を要さずに、サンプルホールド回路101自体の遅延時間を、サンプリングクロック信号のパルス幅単位で延長することができる。
【0048】
さらに、本実施形態に係る遅延回路300によれば、テレビ受信システムにおける既存の水平偏向回路18の構成を流用することができる。また、クロック信号調整回路330としてNANDゲートを1つ用いるのみで、容易にサンプルホールド回路101の遅延時間を第1のクロック信号CLK1のパルス幅単位で延長することができる。
【0049】
また、本実施形態に係る遅延回路300のタイミングパルス発生回路320は、タイミングパルスをコンポジット映像信号の帰線消去期間に出力する。帰線消去期間のコンポジット映像信号は、ディスプレイに画像として再現されない。よって、タイミングパルスのパルス幅の期間、クロックのパルスのレベルが保持された第2のクロック信号CLK2をサンプルホールド回路101におけるサンプリングのためのクロック信号としても、画像表示にノイズ等の影響が生じることがない。
【0050】
以上、本実施の形態について説明したが、前述した実施例は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るととともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【0051】
例えば、本実施形態では、遅延回路300のサンプルホールド回路101を、キャパシタとトランジスタから構成される、所謂スイッチドキャパシタからなる構成としたが、これに限られるものではなく、転送パルスによって入力信号に応じた電荷を転送するものであれば、CCD(Charge Coupled Devices)遅延素子などからなる構成としても同様の効果が得られる。
【0052】
また、本実施形態では、1つのタイミングパルスのパルス幅を第1のクロック信号CLK1のパルス幅より大きく、第1のクロック信号CLK1の1周期よりも小さいパルス幅としたが、これに限られるものではない。入力パルスのレベル保持期間がサンプルホールド回路101の耐えうる期間であれば、タイミングパルスのパルス幅はこれよりも大きい場合であってもよい。また、タイミングパルス発生回路320によって複数のタイミングパルスが出力されるようにしてもよい。これによって、サンプルホールド回路101の遅延時間を、さらに第1のクロック信号CLK1のパルス幅単位で調整することができる。
【0053】
また、本実施形態における遅延回路300のクロック信号調整回路330は、NAND素子から構成されることとしたが、これに限られるものではなく、AND素子、OR素子、NOR素子などのゲート素子から構成されても良い。
【0054】
また、本実施形態における遅延回路300では、水平偏向回路18の構成を流用したが、これに限られるものではない。カウンタ及びデコーダからなるタイミングパルス発生回路、ゲート素子からなるクロック信号調整回路を用意し、サンプルホールド回路101に供給されるサンプリングクロックのパルス数を調整することによって、容易に遅延回路の遅延時間を調整することができる。尚、遅延回路がICから構成されている場合、メタル層の調整のみで遅延回路の遅延時間を調整することが可能となる。
【0055】
また、遅延回路300は、PAL方式における同期検波前の色信号を遅延させる用途や、SECAM方式の色復調回路の色櫛形フィルタに適用され、色信号を1H遅延させて、間欠した色信号を連続した色信号に変換する用途に用いられてもよい。若しくは、遅延回路300を直列接続することで、2H遅延が必要なPAL方式のY/C分離回路の櫛形フィルタとして用いられてもよい。また、NTSC方式のコンポジット映像信号を遅延させる、Y/C分離回路の櫛形フィルタとして用いられてもよい。この他にも、櫛形フィルタに限らず、アナログ信号の遅延回路として種々採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本実施形態に係る遅延回路の概略構成を示す図である。
【図2】本実施形態に係る水平偏向回路の構成と遅延回路の構成との関係を示すブロック図である。
【図3】本実施形態に係る遅延回路の構成を示す図である。
【図4】本実施形態に係る遅延回路の動作を説明するタイミングチャートである。
【図5】遅延回路の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
18 水平偏向回路
300 遅延回路
310 クロック信号出力回路
311 VCO
312 LPF
313 位相比較器
320 タイミングパルス発生回路
321 分周器
322 カウンタ部
330 クロック信号調整回路
101 サンプルホールド回路
110 アナログメモリ回路
120 制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像信号の1走査期間あたり第1パルス数を有する第1のクロック信号を出力するクロック信号出力回路と、
前記第1のクロック信号が入力され、前記映像信号の帰線消去期間内における所定周期の間に前記第1のクロック信号を停止し、前記1走査期間あたり前記第1パルス数より少ない第2パルス数を有した第2のクロック信号を出力するクロック信号調整回路と、
前記第2のクロック信号によってサンプリングされた前記映像信号を、当該サンプリング開始から前記第2のクロック信号が前記第1パルス数分入力されるまでの間、遅延させて出力するサンプルホールド回路と、
を有することを特徴とする遅延回路。
【請求項2】
前記第1のクロック信号の前記所定周期の長さに応じたパルス幅を有したタイミングパルスを、前記帰線消去期間内に出力するタイミングパルス発生回路を備え、
前記クロック信号調整回路は、
前記タイミングパルスが入力され、前記第1のクロック信号を前記タイミングパルスの前記パルス幅の間パルス停止することで、前記第2のクロック信号を出力することを特徴とする請求項1に記載の遅延回路。
【請求項3】
前記第1クロック信号は、前記映像信号にあって前記1走査期間の開始を示す同期パルスと同期し、
前記タイミングパルスは、前記第1のクロック信号に同期し、且つ前記第1のクロック信号の1周期中の第1のパルス幅を自然数倍した第2のパルス幅を有し、
前記クロック信号調整回路は、
前記第1のクロック信号を前記タイミングパルスの前記第2のパルス幅の期間停止することで、前記第2のクロック信号を出力すること、
を特徴とする請求項2に記載の遅延回路。
【請求項4】
前記タイミングパルス発生回路及び前記クロック信号出力回路は、前記同期パルスに具備された水平同期信号と同期して水平走査を行うための水平駆動信号を出力する水平偏向回路を用いて構成され、
前記水平偏向回路は、
前記第1のクロック信号を分周して1水平走査期間を1周期とするリセット信号を出力する分周器と、
水平帰線消去期間内に出力される前記第1のクロック信号のパルス数をカウントしていき前記水平駆動信号を出力するとともに、カウント値が所定の閾値となるとき前記タイミングパルスを発生し、前記リセット信号によって当該カウント値がリセットされるカウンタと、
前記リセット信号と前記水平同期信号との間の位相差をなくするように、前記第1のクロック信号を発振出力する発振回路と、
を備えることを請求項3に記載の遅延回路。
【請求項5】
前記クロック信号調整回路は、前記第1のクロック信号と前記タイミングパルスとの否定論理積を前記第2のクロック信号として出力するNANDゲートから成ること、
を特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の遅延回路。
【請求項6】
前記サンプルホールド回路は、
キャパシタと、当該キャパシタにサンプリング値を保持させる第1のスイッチング素子と、当該キャパシタに保持されたサンプリング値を出力する第2のスイッチング素子と、を具備した複数のメモリ単位と、
前記複数のメモリ単位の中から、サンプリング値を保持させるメモリ単位と、サンプリング値を出力させるメモリ単位と、を予め定められた順に選択する制御回路と、
を備えること、を特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の遅延回路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−21800(P2010−21800A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−180602(P2008−180602)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(506227884)三洋半導体株式会社 (1,155)
【Fターム(参考)】