説明

遅延型過敏症誘導剤を含有する局所貼付剤及び該貼付剤の使用法

【課題】短時間でホストにDTHの有効量を効率的に配送できる局所DTH誘導剤組成物の開発。
【解決手段】1−ジクロロ−2,4−ジニトロベンゼン(DNCB)などの遅延型過敏症誘導剤を含有する局所貼付剤及び該製剤を用いる方法の提供。局所貼付剤は、支持体上に存する粘着ゲル組成物からなり、その粘着ゲル組成物は遅延型過敏症誘導剤、水可溶性高分子ゲル、水及び水保持剤を含む。局所貼付剤の使用方法は、局所貼付剤が対象の皮膚表面に適用され、その局所貼付剤を対象に投与されるべき遅延型過敏症誘導剤の有効量にとって十分な時間適用部位に維持される。その維持時間は60分を超えない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
米国特許法119条(e)に従い、本願は2001年3月12日に、米国仮特許出願番号60/275213の出願日の優先権を請求する。その開示はここで引例によって合体される。
本発明の分野は遅延型過敏症誘導剤である。
【背景技術】
【0002】
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)患者の数が最近、世界的に急激に増加しており、約3千3百万(WHO;1998年末)と云われている。この様な背景に対して、HIV用のワクチンの開発が急がれている。しかし感染後のウイルスの形態、HIVの形態の変異のために、正確なワクチンはまだ見出されていない。更に、多くのHIV用の医薬品が開発されているが、HIVを完全に治癒するものがない。更に、最近のAIDS薬品(プロテアーゼ阻害剤、非核酸逆転写阻害剤、核酸逆転写阻害剤など)が複雑な技術を採用している。これらの薬剤の長期投与により、貧血、末梢性神経炎、膵炎、吐気、頭痛などのしつこい副作用を患者に引起させる。また、長期投与による薬剤耐性の可能性を除外できない。なお最近の治療法のもう1つの欠点は、HIV用の最近の治療用投薬が、極めて高額で、しばしば、1人当たり年間15,000から20,000ドルになり、必然的に患者のアクセスを制限している点で、費用がかかることである。
【0003】
最近のHIV治療法の有効な代替物を代表している薬剤の1つのタイプは、遅延型過敏症(DTH)誘導剤であり、そのタイプの薬剤が、生体内の免疫系細胞の活性を増加させることによってHIV患者の免疫応答を引き出す免疫調節剤として研究されてきた。遅延型過敏症誘導剤はそれらがヒトの皮膚と接触したときに、タイプ4過敏症を誘導する物質であり、それらには、トリニトロベンゼンスルフォン酸、ピクリルクロライド(PC)、2,4−ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)及び1−クロロ−2,4−ジニトロベンゼン(DNCB)を含む。その内、DNCBはHIVの治療に、そして免疫研究に広く使用されており、本発明は、以下により詳細に述べる通り、多くの具体例でのDTH誘導剤として、DNCBに焦点を当てた。
【0004】
DNCBは、第二次世界大戦以前にドイツで発見された。USで1950年代に行なわれた研究の結果DNCBが発癌性がないことが示された。後の1970年代に、種々のタイプの動物を用いて安全性研究が行なわれた。DNCBは一般的には、ヒトでの強い遅延アレルギー誘導皮膚刺激剤であると知られ、他のことの中で、皮膚病の免疫学的試験に使用されている。
HIV患者においてDNCB治療の研究が、1980年代の半ばからゆっくりと始められ、その研究が1990年の前半に行なわれた。それから、DNCBがHIV治療に有効であると主張された。しかし、この主張が証明されなかった。1990年代の後半に、PCR分析技術の開発によって、HIV患者においてDNCBの効果が確認され始めた。さらに、DNCBはまた、以前に癌の治療の可能性も研究された。その試験はDNCBを局部的に投与し、遅延型アレルギー反応を起させ、それにより、免疫誘導能を利用することで、行なわれた。しかし、これらの知見は実用に付されなかった。更に、DNCBは、他のことの中で、いぼの治療に使用されてきた。
【0005】
近年に採用されたHIV患者にDNCBを使用する方法は、アセトン溶媒にDNCBを溶解し、生じる物質をガーゼ様布にしみこませ、これを皮膚に適用する。ついでこの局所製剤が、乾燥され、蔽われ、数時間(典型的には少なくとも8時間)放置される。この長い適用時間は、HIV患者が少なくとも8時間というかなり長い時間、制約をうけ、それが健常人と同じ生活様式を送るのに該患者にとって妨げとなることを、意味する。
したがって、短時間でホストにDTHの有効量を効率的に配送できる局所DTH誘導剤組成物の開発にかなりの関心がある。
【0006】
(関連文献)
関係のある文献には、
Stricker 等。樹状細胞とジニトロクロロベンゼン(DNCB):AIDSへの新治療の試み。Immunol Letters 1991; 29: 191-196;
Stricker 等。ヒト免疫不全ウイルス感染における局所ジニトロクロロベンゼン(DNCB)のパイロット試験。Immunol Letters 1993; 36: 1-6;
Stricker 等。HIV疾患おける局所ジニトロクロロベンゼン。J Am Acad Dermatol 1993; 28: 796-797;
Sticker 等。HIV感染患者のジニトロクロロベンゼン(DNCB)治療の免疫学的評価。J Am Acad Dermatol 1994; 31: 462-466;
【0007】
Sticker RB, Goldberg B, Mills LB, Epstein WL。HIV感染患者の局所ジニトロクロロベンゼン(DNCB)治療による遅延型過敏性皮膚試験の改善結果。J Am Acad Dermatol 1995; 33: 608-611;
Sticker & Goldberg。局所ジニトロクロロベンゼンの安全性。Lancet 1995; 346: 1293;
Sticker 等。HIV感染患者のジニトロクロロベンゼン(DNCB)治療による遅延型過敏性皮膚試験の改善結果。J Am Acad Dermatol 1996; 35: 491-493;
Sticker 等。HIV疾患における局所ジニトロクロロベンゼン治療に伴うウイルス負荷の減少。Res Virol 1997; 148: 343-348;
Traub 等。HIV疾患におけるジニトロクロロベンゼン(DNCB)の局所免疫適応性(modulation):ブラジルからのコントロールトライアル。Dermatology 1997; 195: 369-373;
Sticker 等。局所免疫適応性(TIM):全身性疾患の免疫療法への新規試み。Immunol Letters 1997; 59: 145-150;
Oracion 等。HIV感染患者のDNCB療法が有益な免疫学的成果、減少したウイルス負荷及び生活環境基準の改善された手段に導く。J Invest Dermatol 1998; 110: 476。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年に採用されたHIV患者にDNCBを使用する方法は、アセトン溶媒にDNCBを溶解し、生じる物質をガーゼ様布にしみこませ、これを皮膚に適用する。ついでこの局所製剤が、乾燥され、蔽われ、数時間(典型的には少なくとも8時間)放置される。この長い適用時間は、HIV患者が少なくとも8時間というかなり長い時間、制約をうけ、それが健常人と同じ生活様式を送るのに該患者にとって妨げとなることを、意味する。
したがって、短時間でホストにDTHの有効量を効率的に配送できる局所DTH誘導剤組成物の開発にかなりの関心がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の要約
1−ジクロロ−2,4−ジニトロベンゼン(DNCB)などの遅延型過敏症誘導剤を含有する局所貼付剤及び該製剤を用いる方法が提供される。本局所貼付剤は支持体上に存する粘着ゲル組成物からなり、該ゲル組成物が遅延型過敏症誘導剤、水可溶性高分子ゲル、水及び水保持剤を含む。本局所貼付剤は、その使用に際して、対象の皮膚表面に適用し、患者に投与されるべき遅延型過敏症誘導剤の有効量にとって十分な時間適用部位で維持され、その維持時間は典型的には約60分を越えない。本発明は、遅延型過敏症誘導剤の投与が所望されている種々の適用の使用の提供であり、AIDSなどのHIVを伴った疾患の治療に特に適している。
【0010】
(特定形態の記述)
1−ジクロロ−2,4−ジニトロベンゼン(DNCB)などの遅延型過敏症誘導剤を含有する局所貼付剤及び該製剤を用いる方法が提供される。本局所貼付剤は支持体上に存する粘着ゲル組成物からなり、該粘着ゲル組成物が遅延型過敏症誘導剤、水可溶性高分子ゲル、水及び水保持剤を含む。本局所貼付剤はその使用に際して、対象の皮膚表面に適用し、対象に投与されるべき遅延型過敏症誘導剤の有効量にとって十分な時間適用部位で維持され、その維持時間は典型的には約60分を越えない。本発明は、遅延型過敏症誘導剤の投与が所望されている種々の適用の使用の提供であり、AIDSなどのHIVを伴った疾患の治療における使用に、特に適している。本発明の更なる記述において、本局所貼付剤が、まず詳細に記述され、ついで本局所貼付剤が使用の提供である代表的適用のレビュウを行なう。
【0011】
本発明を更に記述する前に、本発明が、特定の具体例の種々の変形が可能であり、請求項の範囲になお含まれるので、本発明は以下に記述の本発明の特定の具体例に限定されないと理解されるべきである。使用された用語は特定の具体例を記述する目的のためであり、制限する意図でないことも理解されるべきである。その代わり、本発明の範囲は本請求項で確立されるであろう。
本明細書及び請求項においては、単数の言及は、他に明示の指示のない限り、複数を含むものとする。他に定義されない限り、ここで使用される全ての技術的、科学的用語は、本発明が属する当業者にとって共通して理解されている意味と同じ意味を有する。
【0012】
局所貼付剤
上に要約した様に、本発明は、遅延型過敏症誘導剤の局所貼付剤に関する。本発明の局所貼付剤はゲル粘着基剤に存する遅延型過敏症誘導剤の有効量を有することで特徴付けられる。図1は本発明に従う局所貼付剤の代表例を示す。図1から解る通り、この代表的局所貼付剤10は、支持体14上に存するゲル粘着基剤12を含む。各これらの組成物について更に詳しく述べる。
【0013】
遅延型過敏症誘導剤の保持層として役目するゲル粘着基剤は、例えば溶解、分散されて存する遅延型過敏症誘導剤と粘着ゲル基剤からなる。体内の免疫系細胞の活性を増加させることによって、HIV患者のような対象の免疫学的応答を誘導する免疫調節剤は、「遅延型過敏症(DTH)誘導剤」で意味付けられる。遅延型過敏症誘導剤はそれらがヒトの皮膚と接触するときに4型過敏症を引起こす物質であり、それらには、特に限定されることなく、トリニトロベンゼンスルホン酸、ピクリルクロライド(PC)、2,4−ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)、1−クロロ−2,4−ニトロベンゼン(DNCB)を含む。多くの場合において、遅延型過敏症誘導剤はDNCBである。
【0014】
粘着性ゲル基剤に存するDTH誘導剤の量は、以下により詳細に記述するように、対象の皮膚表面に適用したときに、該薬剤の有効量を患者に投与するに十分な量である。多くの場合、粘着性ゲル基剤に存するDTH誘導剤の量は、0.01〜10.0%(w/w)、時には0.05〜10%(w/w)、通常0.1〜5.0%(w/w)、更に通常には0.2〜3.0%(w/w)の範囲である。
上述の通り、DTH誘導剤を含む粘着性ゲル基剤は水可溶性高分子、水及び水保持剤からなる。いくらかでは、粘着性ゲル基剤は有機補助溶剤などの補助溶剤を更に含んでいてもよい。これらの組成物について、別々により詳細に述べる。
【0015】
当該水可溶性高分子量物質には水可溶性を含み、該高分子は、限定的でなく、ゼラチン、デンプン、カンテン、マンナン、アルギン酸、ポリアクリル酸、ポリアクリレート、デキストリン、メチルセルロース、ナトリウムメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、セルロースガム、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム、アカシア、トラガンタガム、カラヤガム、デンプンアクリレート共重合体、他のデンプンナトリウムアクリレートグラフト共重合体を含む。これらの金属塩、並びにこれらを有機又は無機の架橋剤の手段で架橋した物質も対象となる。これらの水可溶性高分子は粘着性ゲル組成物に使用された他の出発物質の性質と特性を育てるために使用され得る。そして実際には、単独又は2以上の混合で使用され得る。粘着性ゲル基剤に存する水可溶性高分子量の物質の量は、一般的には約0.5から20、通常は約2から20%(w/w)の範囲である。
【0016】
水成分としては、好都合な水でよいが、本発明の多くの例の中で、好ましくは、蒸留水とイオン交換水である。ゲル粘着剤中の水の量は、そのゲル粘着剤に所望の物性を与え、そして皮膚の角質やケラチン層の膨潤性を改善し、それによりDTH誘導剤の浸透性を改善するに十分な量であり、ゲル組成物中の水の量は一般的には約10〜80%、通常は約30〜60%(w/w)の範囲である。
当該粘着性ゲル剤組成物の水保持剤は、粘着性ゲル基剤の水分量が少なくとも、実質的に恒量に、そうでなければ、製剤の貯蔵と使用中に変化のない状態を維持されるように、粘着性ゲル基剤中の水の蒸発を少なくとも減少させる能力を有する如何なる剤でもよい。当該粘着性ゲル基剤の組成物には1つ以上の水保持剤が使用され、その水保持剤の量は、一般的には約1〜70%、より好ましくは10〜60重量%である。好適な水保持剤の具体例は、限定的でなく、グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、エチレングリコールなどの1種以上の多価糖類、又は多価アルコール類である。
【0017】
更に、当該ゲル基剤組成物は一般的には有機補助溶剤である補助溶剤を含んでいてもよい。DNCB補助溶剤の具体例は、限定的でなく、n-メチル−2−ピロリドン、クロタミトン、エチルアルコール、メチルアルコール、ポリエチレングリコール(例えば、PEG600、それ以下のもの(例えば500、400、300、200、100など))、それらの混合物、アセトンであり、n−メチル−2−ピロリドン、ポリエチレングリコール及びクロタミトンは特に好ましい。補助溶剤は単一でも2以上の組合せでもよい。
【0018】
更に、上記の組成物に加うるに、通常の局所水可溶性貼付剤に使用されている種々の添加物もまた、必要に応じて適当に混合される。それらにはカオリン、ベントナイト、二酸化チタンなどの無機物質;パラベンのような保存剤;アニオン、カチオン、非イオン性界面活性剤;塩化アルミニウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテートなどの金属アルミニウム架橋剤;ホウホウバ油、ヒマシ油等のオイル;EDTAなどのキレート剤;リンゴ酸、酒石酸、ジイソプロパノールアミンなどのpH調節剤;エタノールなどのアルコール類;ヒアルロン酸、アロエ抽出物、尿素などの水分保持剤;他の香料;着色剤が含まれる。
【0019】
ゲル基剤組成物のpHは典型的には、生理学的に受け入れられる範囲であり、典型的には約4.0〜7.0の範囲、より典型的には4.0から6.0の範囲である。
上述の通り、1つ以上の活性成分を含む粘着性ゲル組成物は典型的には支持体上又は裏紙上に存する。支持体は一般的には人体の動きにフィットしうる柔軟な材料から作成され、例えば、種々の不織布、織布、スパンデックス、フランネル、これらの物質とポリエチレンフィルム、ポリエチレングリコールテレフタレートフィルム、ポリ塩化ビニル、エチレンビニルアセテート共重合体フィルム、ポリウレタンフィルムなどとのラミネートフィルムから作成される。
粘着性ゲル組成物と支持層に加うるに、当該局所貼付剤は、環境からゲル層を保護するために設けた裏紙の反対のゲル層の表面に剥離フィルム16をまた、含んでいてもよい。この剥離層は如何なる好都合な材料でよく、代表的剥離フィルムはPETやPPなどのポリエステルを含む。
【0020】
多くの例で、貼付剤は密封をした容器に存する。一般的には、密封容器は湿気、酸素及び他の剤の通過を阻止し得る材料から作成された層を含む容器材料から製造される。即ち該容器は湿気/酸素遮断物質の中に含まれる。如何なる適当な遮断材料でよいが、好ましくは、アルミニウムなどの金属層であり、多くの場合、遮断層はアルミニウム層である。この遮断層は遮断機能を備えるに十分な厚さを有し、その場合の典型的厚さは約5〜15μm、通常は約6〜10μmの範囲である。多くの具体例で、容器は、例えば、ポリマー層、紙の層などの1種以上の更なる層との組合せの遮断層のラミネートである。本発明の貼付剤に使用され得る代表的アルミニウム含有容器は大日本印刷(株)(京都)で販売されている。
【0021】
局所貼付剤は好都合なプロトコールを用いて製造されてよい。当該貼付剤の製造用プロトコールの1つは、上記の成分を均一に混合しゲル粘着ペーストを作成し、ついで支持体上のペーストをコートし、ついで生じた製品を特定の大きさに切断して、所望の局所貼付剤を得る。得られた局所貼付剤をヒートシールし、上記のようなアルミニウム層を含む包装材を用いて、代表的にはいくつかのシートを1つの容器にいれ、密封局所貼付剤を得る。製造用プロトコールの更に詳細な記述は米国特許第5,827,529を参照。その開示はここにレファレンスで合体される。
代表的製造プロトコールにおいて、本発明に使用される基剤は好都合なプロトコールを用いて上記の成分をミキサーを用いて均一に混合し、ペーストを作成し、それを裏紙あるいは支持材上にスプレッダーで拡布する。上記の通り、支持材は、例えば、紙、PET 又はPP、又は他のポリエステル繊維からなる織布又は非織布でよい。保護のために、その表面はPET 又はPPなどのポリエステルの剥離フィルムで蔽われる。これらの行程は図2で示される。
【0022】
ついで生じた製品を特定の大きさに切断して、所望の局所貼付剤混合物を得る。貼付剤の形は色々あり、代表的には四角、三角、楕円形、円形などである。貼付剤の大きさもまた、色々で、多くの場合、約1〜200cm2、1〜100cm2、通常約20〜50cm2(例えば25cm2)である。最終局所貼付剤の基剤の重量は、300〜1500g/m2、好ましくは600〜1000g/m2であるべきである。この水可溶性局所貼付剤は、アルミニウム層を含む容器材にヒートシールで包装され、図3で示すように、最終製品を得る。
【0023】
上記の製造プロトコールは単なる代表例であると理解されるべきである。上述の様に、本発明の局所貼付剤を製造し得る如何なる好都合なプロトコールも使用し得る。
【0024】
貼付剤の使用方法
本発明製剤はDNCBなどのDTH誘導剤のホストへの局所的配送における使用を提供する。「局所的配送」は皮膚を通しての吸収配送を意味する。DTH誘導剤をホストに局所投与するために本発明の貼付剤を使用に際して、局所貼付剤を皮膚表面に適用し、ホストに配送されるべきDTH誘導剤の所望量にとって十分な時間適用部位に維持する。多くの場合、薬剤の所望量を配送するに必要な時間は短く、一般的には約60分を越えず、通常は30分を越えず、多くの場合、約15分を越えない。しかし、該貼付剤が適用部位に維持されている時間は、多くの場合に、少なくとも約1分間、通常約少なくとも約3分間、更に通常は、少なくとも約5分間である。
【0025】
該貼付剤は、都合のよい局所部位に適用されてよい。該局所部位は、限定されないが、腕、脛、胴などである。適用し、局所貼付剤で蔽われる表面部位は投与薬剤の所望量を提供するに十分でなければならず、そして多くの場合、約1〜200cm2、1〜100cm2、通常約20〜50cm2(例えば25cm2)である。本発明の方法を実施するには、局所貼付剤は与えられた期間、例えば治療されている期間をかけて、単回、複数回適用され、与えられた期間に複数回適用の場合の投与スケジュールは日毎、週毎、2週毎、月毎などである。
【発明の効果】
【0026】
有用性
上述の貼付剤及び方法は、DTH誘導剤のホストへの適用が所望される適用における使用を提供する。一般的にはホストは「哺乳動物」又は「哺乳類」であり、これらの用語は、犬、猫などの食肉目、ネズミ、モルモット、ラットなどのけっ歯類、ヒト、チンパンジー、サルなどの霊長類を含む哺乳類の範囲である生物を記述するために広く使用される。多くの場合ホストはヒトである。
【0027】
多くの場合、本発明の方法は疾患の治療への使用を提供する。治療とは、少なくともホストを苦しめる病的状態を伴う症候群の改善を意味し、その場合の改善は広い意味で使用され、ウイルス負荷やそれに伴う副作用などの、治療される病的状態に伴う、例えば症候群などのパラメーターの程度の少なくとも減少を意味する。従って、治療はまた、病的状態又は、少なくともそれに伴う症候群が、発症の阻害などの完全阻止され、終結などの停止され、従ってホストが最早病的状態、又は少なくとも病的状態を特徴付ける症候群にない状態を含む。従って、治療は病的状態の治療と処理(management)の両方を含む。
【0028】
多くの場合、本発明の方法で治療される病状は慢性病がその1つである。対象の慢性病には、限定的でなく、慢性疲労症候群、全身性紅斑性エリトマトーデス、ライ病、リーシュマニア症、サイトメガロウイルス、カンジダ、クリプトコッカス、ニュウーモサイティスカリニなどのウイルス、細菌などの細胞内病原物の存在に伴う病気を含む。
【0029】
特別の関心は免疫無防備状態の疾患(immuno compromising disease)の、そして特にAIDSなどのHIV関連病の、例えば処理などの治療法における使用である。HIV関連疾患の状況における治療は、1つ以上の症候群、例えば日和見菌感染症の減少を介した生活環境基準の改善を意味する。HIV症状に関連する数量化し得るパラメーターに関して、本発明は,CD4細胞とCD8細胞の少なくともどちらかの細胞の数の変動の間に、ウイルス負荷の減少及び/又はナチユラルキラー細胞の増加における使用を提供する。数値化し得るパラメーターのこの様な変化は15分を越えない適用時間で達成し得る。
【0030】
キット
本発明のキットは少なくとも上述のような1以上のDTH誘導剤含有局所貼付剤を含むキットであるキットをまた、提供する。キット中の当該局所貼付剤は上述の容器に入っていてもよい。キットの局所貼付剤は典型的には、使用時まで貼付剤の混合物を保存するよう、別々のポーチか、その類似物に入れられる。当該キットはまた、一般的にDTH誘導剤含有貼付剤のホストへの配送のための使用法、その場合の指示は典型的には、貼付剤の適用部位、適用スケジュールなどの指示を含む。ある場合には、当該キットは特定の疾患をDTH誘導剤で治療するための貼付剤の使用の指示を含む。その指示は一般的には適切な記録媒体に記録されている。例えば、指示が紙やプラスチック等の基盤上に印刷されてよい。この様に、指示は容器挿入物としてキットの中、キットやその構成物のラベル中(即ち容器とあるいは副容器と一緒に)などに存在してもよい。他の例として、指示がCD−ROMやデスケットなどの適当なコンピューター判読可能な保存媒体に存する電子貯蔵データとして存する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の局所貼付剤の断面図を示す。
【図2】本発明の局所貼付剤の製造法の概要図である。
【図3】本発明の局所貼付剤の製造法の概要図である。
【実施例】
【0032】
以下の実施例あるいは比較例は例示であって、制限する目的でない。
実施例及び比較例を以下に挙げるが、製造法はこれで制限されない。
【0033】
I.局所貼付剤の製造
実施例:DNCBが2%配合された水可溶性高分子局所貼付剤。
2%のDNCBをn−メチル−2−ピロリドンに溶かし、その後均一に混合し、ペーストを調製し、これを850g/m2の重量になるようにPET不織布に広げる。生成物をPPフィルムでラミネートし、5cm平方に切断する。最後に各DNCB貼付剤をアルミホイル含有包装材にヒートシールし、最終製品を得る。図2と3を参照。
【0034】
プラセボ:実際例のDNCBの代りに水を使用する水可溶性高分子局所貼付剤。
成分を均一に混合し、ペーストを調製し、これを850g/m2の重量になるようにPET不織布に広げる。生成物をPPフィルムでラミネートし、5cm平方に切断する。最後に各プラセボ貼付剤をアルミホイル含有包装材にヒートシールし、最終製品を得る。図2と3を参照。表1に実施例の組成物とプラセボの組成物の内容を要約する。
【0035】
【表1】

【0036】
II.安定性試験
実施例中のDNCBの安定性試験。
実験は温度25℃、湿度60%で行なった。結果を100%で取った初期値と比較して表2に示した。
【表2】

【0037】
III.脱色試験
実施例中のDNCB水可溶性局所製剤の安定性のための脱色度を測定した。実験は温度25℃、湿度60%で行なった。結果を初期値に対する脱色度で示し、表3に示した。
かなりの差:3+
見分けられる差:2+
僅かの差:+
変化なし:−
【表3】

【0038】
IV.活性検定
HIVに対する有効性を調査するために実施例のDNCB水可溶性局所製剤をHIV患者のボランティアに適用した。比較のためにプラセボ水可溶性局所製剤を使用した。
貼付剤を5人のボランティアの片腕に8時間(1人)、4時間(1人)、15分(3人)適用し、1週間後に採血し、患者の血液を分析した。ウイルス負荷(VL)の測定は超感度HIV−1 RNA PCR分析で行なった。
結果を下記表4に示した。
【0039】
【表4】

【0040】
V.検討
表2、3によると、水可溶性貼付剤中のDNCBは安定であり、脱色度は使用可能範囲内にあり、実際上十分である。
表4によると、患者1では、DNCB水可溶性局所製剤を長時間(8時間)適用すると、かなりの皮膚刺激が生じた。CD4とCD8値が増加したが、NKが減少し、VLが増加した。患者2では、皮膚刺激の程度が患者1の場合より少なかった。NK値がいくらか増加し、VLにおいては重大な変化が見られなかった。患者3−5では、適用時間が短く(15分)、皮膚刺激がなかった。しかし、CD4とCD8値が変化し、NK値は明らかに増加し、VLが劇的に減少し、HIV血液濃度の抑制を明瞭に示した。DCNBの免疫学的活性がNK細胞における増加に貢献しているから、それが減少したVLにもまた、貢献している。この情報から、DNCB水可溶性局所製剤を長時間適用することは意味のないことである。短時間(約15分間)皮膚に単純に適用することがHIVに極端に有効であり、明らかに実際的である。
【0041】
更に、同時にプラセボを適用した場合についても研究を行なった。皮膚刺激がなく、HIVに全く効果がなかった。このことはDNCBの明白な効果を再確認した。更に貼付剤の使用に際して、短期間皮膚に単純に適用すれば、患者の生活様式を変えることなくAIDS治療を行なえ、従って該患者が健常人と全く同じ生活様式を送ることができる。更に他のHIV治療薬との付随的使用もまた、可能である。研究はDNCBの副作用についてもある期間行ない、発癌性などの生活を脅かす副作用の報告が今日までなかった。更に、本発明のDNCB水可溶性局所製剤を週1回だけ適用し、その治療は年1人当たり約300ドルの費用で可能であり、他HIV治療より安くでき、そしてまた、発展途上国でそれを使用することが可能である。
【0042】
本発明はDTH誘導剤の配送に多くの利点を提供することが上記の結果及び検討から明らかである。当該局所製剤は対象にDTH誘導剤を投与するための能率的で、有効な配送媒体(vihicles)であり、薬剤を投与するために短時間の適用のみを必要とする。更に、当該局所貼付剤は25℃保存で安定である。当該貼付剤はAIDSを含む多くの疾患の低価格療法を示す。従って、本発明は当該技術に対し重大な貢献を示す。
【0043】
本明細書に引用した全ての刊行物と特許は、あたかも各刊行物又は特許が特定的に、個々に、引例に合体されると指示しているように、引例に合体される。如何なる刊行物の引用も、出願前の開示に関するが、本発明が先発明により、該刊行物に先行する権利がないことを認めたものと解釈されるべきでない。
上記の発明は、理解を明白にするために例示と実施例でいくらか詳細に記載されているが、いくらかの変化や修正が、請求項の精神と範囲から逸脱せずになしうることが本発明の教示に照らし、当業者にとって容易に明らかである。
【符号の説明】
【0044】
10:局所貼付剤
12:ゲル粘着基剤
14:支持体
16:剥離フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遅延型過敏症誘導剤の局所貼付剤であって、該局所貼付剤が遅延型過敏症誘導剤を含む架橋された粘着性ゲル組成物と支持体を含む局所貼付剤。
【請求項2】
該遅延型過敏症誘導剤が1−クロロ−2,4−ジニトロベンゼン(DNCB)である請求項1に記載の局所貼付剤。
【請求項3】
該DNCBが該粘着性ゲル組成物中に0.01〜10.0%(w/w)の範囲の量で存在する請求項2に記載の局所貼付剤。
【請求項4】
該粘着性ゲル組成物が
水可溶性高分子ゲル;
水;及び
水保持剤
を含む請求項1に記載の局所貼付剤。
【請求項5】
該水が10〜80%(w/w)の範囲の量で存在する請求項4に記載の局所貼付剤。
【請求項6】
該粘着性ゲル組成物が4.0〜7.0の範囲のpHを有する請求項1に記載の局所貼付剤。
【請求項7】
該粘着性ゲル組成物が更に有機溶媒を含む請求項1に記載の局所貼付剤。
【請求項8】
該有機溶媒がn−メチル−2−ピロリドン、ポリエチレングリコール、クロタミトン及びそれらの混合物からなる群から選択される請求項7に記載の局所貼付剤。
【請求項9】
(a)4.0〜7.0の範囲のpHを有する架橋された粘着性ゲル組成物であって、
(i)0.01〜10.0%(w/w)の範囲の量のDNCB;
(ii)水可溶性高分子ゲル;
(iii)10〜80%(w/w)の範囲の量の水;
(iv)水保持剤;及び
(v)架橋剤を含む該粘着性ゲル組成物と
(b)支持体
を含む局所貼付剤。
【請求項10】
該DNCBが0.1〜5.0%(w/w)の範囲の量で存在する請求項9に記載の局所貼付剤。
【請求項11】
該DNCBが0.2〜3.0%(w/w)の範囲の量で存在する請求項10に記載の局所貼付剤。
【請求項12】
該水が20〜70%(w/w)の範囲の量で存在する請求項9に記載の局所貼付剤。
【請求項13】
該水が30〜60%(w/w)の範囲の量で存在する請求項12に記載の局所貼付剤。
【請求項14】
該pH範囲が4.0〜6.0である請求項9に記載の局所貼付剤。
【請求項15】
該粘着性ゲル組成物が更に有機溶媒を含む請求項14に記載の局所貼付剤。
【請求項16】
該有機溶媒がn−メチル−2−ピロリドン、ポリエチレングリコール、クロタミトン及びそれらの混合物からなる群から選択される請求項15に記載の局所貼付剤。
【請求項17】
(a)4.0〜6.0の範囲のpHを有する架橋された粘着性ゲル組成物であって、
(i)0.2〜3.0%(w/w)の範囲の量のDNCB;
(ii)水可溶性高分子ゲル;
(iii)30〜60%(w/w)の範囲の量の水;
(iv)水保持剤;
(v)架橋剤及び
(vi)n−メチル−2−ピロリドン、ポリエチレングリコール、クロタミトン及びそれらの混合物からなる群から選択される有機溶媒;を含む該粘着性ゲル組成物と
(b)支持体
を含む局所貼付剤。
【請求項18】
遅延型過敏症誘導剤を必要としている対象への経皮配送に使用のためのキットであって、該キットが、
(a)(i) 遅延型過敏症誘導剤の有効量を含む架橋された粘着性ゲル組成物と(ii)支持体;を含む局所貼付剤;及び
(b)該貼付剤の使用指示書を含むキット。
【請求項19】
該キットが複数の該局所貼付剤を含むキットである請求項18に記載のキット。
【請求項20】
該複数の該局所貼付剤が別々の容器に存在する請求項19に記載のキット。
【請求項21】
該別々の容器が密閉されたポーチ(小袋)である請求項20に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−13474(P2010−13474A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−209575(P2009−209575)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【分割の表示】特願2002−571040(P2002−571040)の分割
【原出願日】平成14年2月22日(2002.2.22)
【出願人】(502346286)テイコク ファーマ ユーエスエー インコーポレーテッド (26)
【Fターム(参考)】