説明

遊離細胞によるガラクトオリゴ糖の製造方法

本発明は交差流動式中空繊維微細濾過装置を備えた反応器において、微生物の全細胞を使用して純粋なガラクトオリゴ糖を高収率で製造する改良された方法に関する。この方法は細胞バイオマスを反復使用し、および最終生成物からの単糖類および二糖類を除去するためのダウンストリーム法の実行を省略することから経済的である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は高純度のガラクトオリゴ糖/オリゴ糖の製造方法に関する。本発明はさらに特に、微細濾過膜装置を備えたバイオリアクターに使用される微生物全細胞を用いることによるガラクトオリゴ糖(GOS)の製造方法に関する。本方法の新規性は生物変換の反復サイクルにおける細胞バイオマスの再使用および単糖類および二糖類の分離を伴なわない高純度(>90%)ガラクトオリゴ糖の製造を包含する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
ガラクトオリゴ糖はプレバイオティック(prebiotic)化合物として工業界で広範な用途が見出されている。ガラクトオリゴ糖の製造には、多くの方法が開発されている。数種の方法は種々の微生物源、例えばアスペルギルス オリザエ(Aspergillus oryzae)、ブレラ シングラリス(Bullera singularis)、カンジダ(Candida)、クルベロマイセス種(Kluveromyces sp.)、バチルス サーキュランス(Bacillus circulans)、ラクトバチルス ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)、ストレプトコッカス テルモフィラス(Streptococcus thermophilus)およびビフィドバクテリウム種(Bifidobacterium sp.)から得られるβ−ガラクトシダーゼ酵素の使用を包含する(Akiyama等、2001、Ribu等、2001、Tzorite等、2005、Jorgensen等、2001、Shin等、1998、US5032509、EP0027295A2)。
【0003】
遊離の全細胞または酵素を使用する代わりに不動化されたマトリックスにおいてβ−ガラクトシダーゼ酵素または全細胞を使用する方法がまた、報告されている(Akiyama等、2001、Ribu等、2001、Tzorite等、2005、Jorgensen等、2001、Shin等、1998、US5032509、EP0027295A2)。β−ガラクトシダーゼ酵素とサッカロマイセス セレビシアエ(Saccaromyces cerevisiae)細胞との組合せをアルギン酸カルシウムビーズに共不動化し、ホエーからエタノールが製造された(Axelsson等、1991、lewandoska等、2003、およびHdeo等、1984)。この目的は乳糖をグルコースとガラクトースとに分解させ、さらにエタノールを製造することができることにあった。
【0004】
遊離の酵素に比較し、不動化された全細胞または酵素を包含する方法は或る種の利点、(1)触媒能力が安定化される、(2)不動化されたマトリックスを再循環することができ、価格を減少することができる、および(3)単純な方法で生成物を単離することができるという利点を有する。しかしながら、不動化された酵素の使用は価格的利益および技術的実行可能因子に依存する。数種の方法では、酵素の抽出および精製に費用がかかり、また数種の方法では、抽出後に酵素の変性が生じる。このような条件下に、不動化または共不動化された全細胞を使用すると、不動化された酵素の場合に比較し、追加の利点がえられる(Zhang等、1992、Kiss等、1999)。
【0005】
全細胞不動化の最も慣用の方法は、アルギン酸塩類、カラゲナン、ポリアクリルアミド、アガロース、ゼラチン、ゲランガムなどのハイドロコロイドに細胞を捕捉する方法である(US5175093、US5288632、US5093253、US4572897、US5070019、US5759578、US5939294およびUS5034324、Birnbhaum等、1981)。JP2005042037、JP5815234およびJP561132890は、別種のハイドロコロイドに対する成功する代用物質としてポリビニルアルコールをポリエチレングリコールおよびホウ酸と共に使用することを開示している。
【0006】
Chang等(1998)は少量のキサンタンガムを含有する塩化カルシウム溶液中で微生物細胞を混合し、次いでアルギン酸ナトリウム中に滴下した。カルシウムとアルギン酸塩との間のイオン結合によって形成されたカプセル膜は当該膜の膨潤を防止し、カプセル内に高濃度の微生物をもたらした。
【0007】
US5034324は、ポリビニルアルコールが微生物に対して高度の親和性を有し、全ての反応器において使用するのに充分な機械的強度および耐久性、ならびに水および化学物質に対する高度の抵抗性を付与することを開示している。Jianlong等(2004)は重合剤としてアクリルアミドを架橋剤としてのホウ酸と共に使用し、水性溶液中におけるポリビニルアルコールゲルの膨潤を克服した。
【0008】
しかしながら、不動化された細胞の使用は、下記欠点を有する:
a.マトリックスおよび交差結合剤は食品級状態での使用にかかわる認可に完全に適合しなければならない、
b.細胞を含む不動化されたビーズの機械的安定性は貧弱である、
c.基質および生成物の拡散には無理があり、そのため生体変換効率は遊離細胞に比較して低い、
d.低変換効率の故に、未反応基質および夾雑物からの生成物分離は困難を伴う作業である。
【0009】
US716451は、加水分解後に得られる糖溶液をエタノールと混合し、次いで活性炭カラムに通し、単糖類成分および二糖類成分を分離する方法を開示している。ガラクトオリゴ糖成分は純粋エタノールを用いて溶離されている。このダウンストリーム法は実質的に純粋なガラクトオリゴ糖溶液をもたらす。しかしながら、この方法はガラクトオリゴ糖の収率に損失が生じるために効果的ではない。また、エタノールの使用によって経済的でもない。
【0010】
活性炭カラム処理の限界を克服するために、EP002722095A2およびUS5032509は、強カチオン交換樹脂上に糖溶液を負荷し、次いでガラクトオリゴ糖を60〜80℃において水で溶離する方法を開示している。この方法はガラクトオリゴ糖の収率を改善することができる。しかしながら、高価な強カチオン性交換樹脂を使用するため、コスト的に有効でない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、高純度および高収率をもってガラクトオリゴ糖の製造をもたらす価格的に効果的な方法が探求され続けている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の要旨)
本発明の主目的は、微細濾過膜装置を備えたバイオリアクターにおいて酵母菌の全細胞を使用し、高純度および高収率でガラクトオリゴ糖(GOS)を製造する方法を提供することにある。
【0013】
本発明のもう一つの目的は、GOSの製造に酵母菌の混合全細胞を使用することにある。
【0014】
本発明のさらにもう一つの目的は、あらゆる高価な樹脂を使用することなくGOSを得ることにある。
【0015】
さらに、本発明は濃縮装置とともに炭素研磨(carbon polishing)を使用し、無色のGOSシロップを提供する。
【0016】
さらにまた、本発明はシロップ乾燥機/晶析装置を使用し、無定形の粉末/結晶GOSを提供する。
【0017】
すなわち、本発明は下記工程を含む遊離細胞による高純度ガラクトオリゴ糖の製造方法を提供する:
a.最適培地および条件下に糖をオリゴ糖に加水分解する酵素を産生する微生物を増殖させ、ビー.シングラリス(B.singularis)およびサッカロマイセス種(Saccharomyces sp.)の細胞バイオマスを得る、
b.乳糖を加水分解し、生成されたグルコースを混合微生物培養物により利用する、
c.微細濾過膜装置/遠心分離を用い、微生物培養物からガラクトオリゴ糖を分離する、
d.コットンおよび活性炭/カーボンフィルターを備えた深床フィルターを用い、10〜30ml/分の流速で上記ガラクトオリゴ糖を濾過する、
e.減圧蒸発器において40〜60℃の温度範囲でガラクトオリゴ糖を濃縮し、70〜80%溶解固形物を有するシロップを得る、
f.このシロップを乾燥させ、高純度のガラクトオリゴ糖を無定形粉末として得る、
g.この無定形粉末を結晶化させ、結晶ガラクトオリゴ糖を得る。
【0018】
本発明の態様の一つにおいて、酵母菌の不動化された全細胞は一連の反応器から構成されている順次式反応器で使用し、これらの反応器において、反応器の一つからの加水分解生成物を一連の次の反応器の供給源として使用する。
【0019】
もう一つの態様において、酵母菌細胞は共不動化し、単一の反応器で使用する。
【0020】
本発明においては、夾雑している糖の分離用のダウンストリーム法を行う必要がない。
【0021】
この全細胞の共不動化方法は、オリゴ糖、有機酸などの別種の生成物および微生物以外のものが包含される別の生物工学的な方法にも、適用することができる。
【0022】
(図面の簡単な説明)
本発明が開示する方法は下記図面から明白になるであろう:
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】ガラクトオリゴ糖製造における遊離細胞の再使用。
【図2】ビー.シングラリス(B.singularis)の遊離細胞およびビー.シングラリス(B.singularis)およびサッカロマイセス種(Saccharomyces sp.)の混合細胞によるGOSの製造。
【図3】不動化されたマトリックスの再使用によるGOS製造。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(発明の詳細な説明)
遊離細胞による高純度のガラクトオリゴ糖の新規で、改良された製造方法は、最適増殖培地を用いる振とう器フラスコおよび/または醗酵器中における細胞バイオマスの生成、遠心分離/微細濾過膜装置を用いる醗酵培地からの細胞の分離、GOS製造用のバイオリアクター内における混合培養物の使用および生成されるグルコースの利用、糖カラムを用いるHPLSによるGOSの純度の推定、遠心分離/微細濾過膜装置を用いる微生物細胞からのGOSの分離、フィルター手段および活性炭を備えた深層カーボンフィルター/深床フィルターを用いるGOSの濾過、シロップ(70〜80%溶解固形物)形態を得るためのGOSの濃縮、無定形/結晶粉末形態を得るためのGOSの乾燥/結晶化を含んでいる。
【0025】
第一の態様において、ビー.シングラリス(B.singularis)およびサッカロマイセス種(Saccharomyces sp.)の細胞バイオマスの生成は、最適増殖培地を用い、振とう器フラスコおよび/または醗酵器中で行った。
【0026】
第二の態様において、混合微生物培養物はビー.シングラリス(B.singularis)およびサッカロマイセス種(Saccharomyces sp.)の混合微生物培養物(乾燥重量に基づき1:1)であった。
【0027】
第三の態様において、混合微生物細胞バイオマスは、微細濾過装置を備えた反応槽に移し、加水分解を乳糖15〜45%、好ましくは30%を用い、約3〜10のpHおよび約10〜60℃において約12〜18時間かけて約50〜200rpmの範囲の攪拌速度でGOSの純度が90%以上に達するように行った。加水分解されたバイオマスは微細濾過により循環させ、ダウンストリーム法用の透過物(反応したバイオマスの50%)を採取した。乳糖溶液(30%)の新鮮なバッチを二回目の加水分解サイクル用に反応器に装入した。加水分解サイクルは所望の変換効率が補償されるまで、すなわち追加の10%細胞バイオマスを添加しても効率が10〜20%低下するまで、上記追加のバイオマスを添加することによって反復した。
【0028】
ガラクトオリゴ糖の濾過は、コットンおよび活性炭/カーボンフィルターを備えた深床フィルターを用い、10〜30ml/分、好ましくは20ml/分の流速で行う。
【0029】
第四の態様において、透過物質を炭素研磨機に通し、次いで0.2ミクロン微細フィルターに通し、着色物質および懸濁炭素粒子を除去した。
【0030】
第五の態様において、炭素研磨され、加水分解された溶液を真空下に40〜60℃において濃縮器に通し、70〜80%溶解固形物含有量を有するシロップを得た。
【0031】
本発明の第六の態様において、炭素研磨され、加水分解された溶液を約110〜140℃の温度範囲においてノズルを通して加圧下に噴霧乾燥機に通し、乾燥粉末を得た。
【0032】
本発明を下記例においてさらに説明する。しかしながら、本発明の範囲はこれらの例に制限されるべきではなく、当業者は成分の割合および組合せについて容易に変更することができる。
【0033】
(例1)
乳糖加水分解性ビー.シングラリス(B.singularis)培養物の単離:
ビー.シングラリス(B.singularis)、TCL−IC/NUT−1は下記組成の酵母−麦芽−ペプトン(Yeast−Malt−Peptone)(YMP)培地上において連続希釈法により乳製品の廃液(dairy effluent)から単離した:酵母エキス0.3%、麦芽エキス0.3%、ペプトン0.5%、デキストロース1%および乳糖1%、ならびに寒天2.0%、pH6.5。
【0034】
操作用原料培養物:
培養物をYMP斜面に線状に塗布し、次いで27℃で48時間かけて培養した。これらの斜面培養物を操作用原料培養物として使用した。
【0035】
接種材料の調製:
250mlフラスコ中のYMP培地50mlに上記斜面培養物を完全ループ形態で接種し、次いで振とう器において27℃で48時間かけ180rpmで培養した。
【0036】
振とうフラスコ実験:
500mlフラスコ中のYMP培地150mlに、5%接種材料を接種し、次いで振とう器において27℃および180rpmで48時間かけて培養した。試料を振とうフラスコから無菌条件下に採取し、次いで例2に示されているとおりにGOSの生成について分析を行った。
【0037】
醗酵実験:
YMP培地3lを5l醗酵器に装入し、次いで殺菌した。この醗酵器に振とうフラスコからの5%接種材料を接種した。醗酵は27℃、pH4.5、600rpm攪拌で、40〜60%溶解酸素を維持するために空気1vvmを用いて行った。醗酵器からの試料を、24時間、48時間および67時間の時点で採取し、例2に示されているとおりに最高GOS生成を測定した。
【0038】
(例2)
ガラクトオリゴ糖生成についての分析:
振とうフラスコまたは醗酵器からの細胞懸濁液25mlを遠心分離し、細胞ペレットを得た。この細胞ペレットを40%乳糖溶液15ml中に懸濁し、振とう器上に50℃および280rpm攪拌において保持した。試料0.5mlを採取し、遠心分離し、細胞バイオマスを分離した。この上清をミリQ(milli Q)水により50倍に希釈した。希釈された試料5μlをHPLC装置に注入した。
【0039】
HPLC分析:
糖(グルコース、ガラクトース、乳糖およびガラクトオリゴ糖)の濃度をHPLCにより測定した。HPLC(ウオータース(Waters)717)装置は、屈折率検出器(ウオータースW2467)および炭水化物カラムフェノメネックス(Phenomenex)(PNM00h−0316、REZEX300mmLX7.5mm、孔サイズ8μ−)IDカラムから構成されていた。カラム温度は80℃に維持した。流動溶媒として、水を0.5ml/分の流速で使用した。ガラクトオリゴ糖およびその他の糖はピーク面積に基づき総糖の重量パーセントとして測定した。
【0040】
(実験例3)
ビー.シングラリス(B.singularis)の遊離細胞によるガラクトオリゴ糖の製造:
振とうフラスコまたは醗酵器からの細胞懸濁液25mlを遠心分離し、細胞ペレットを得た。この細胞ペレットを30%ラクトース溶液15mlに懸濁し、振とう器上に50℃および180rpm攪拌において保持した。
【0041】
【表1】

【0042】
表1の結果はガラクトオリゴ糖の生成がYang等により報告されているより高いことを示しているが、他方でShin等、199により報告されている程度と同一であることを示している。
【0043】
(実験例4)
ビー.シングラリス(B.singularis)の完全細胞によるガラクトオリゴ糖の生成に対する乳糖濃度の効果:
硬化ビーズ100gを加水分解用の20%および40%水性乳糖溶液中に懸濁した。加水分解は180rpmおよび30℃において振とうフラスコで行った。相違する時間間隔で試料0.5mlを採取し、HPLCによりガラクトオリゴ糖について処理した。
【0044】
【表2】

【0045】
乳糖濃度を20〜40%に増加させてもGOS生成における有意の相違はなかった(表2)。
【0046】
(実験例5)
GOS生成の反応速度:
【表3】

【0047】
表3の結果は、乳糖濃度が低いほどガラクトオリゴ糖の生成は高くなることを示している。高乳糖濃度における低ガラクトオリゴ糖生成は、乳糖の加水分解中に生成されるグルコースおよび/または基質抑制によるものであることがある。
【0048】
(実験例6)
サッカロマイセス種(Saccharomyces sp.)の単離:
この菌株は、麦芽エキス0.3%、酵母エキス0.3%、グルコース1.0%、ペプトン0.5%および寒天2.0%、pH6.4から構成されているMYGP培地上において夾雑デキストロースシロップから単離した。菌株をグルコースおよび乳糖の利用性について特徴確認した。グルコースのみが存在し、乳糖が存在しない場合に増殖する菌株TCL−IC/NUT−2を選択した(lac、glc)。この菌種からの振とうフラスコおよび醗酵器内における細胞バイオマス製造は増殖培地を除いてビー.シングラリス(B.singularis)と同様であった。
【0049】
(実験例7)
サッカロマイセス種(Saccharomyces sp.)による乳糖およびグルコースの加水分解:
振とうフラスコおよび醗酵器からの細胞懸濁液25mlを遠心分離し、細胞ペレットを得た。この細胞ペレットを乳糖20%およびグルコース2%溶液15ml中に懸濁し、振とう器上で50℃および180rpm攪拌下に維持した。試料を一定の時間間隔で採取し、例2に記載のとおりにHPLCにより残留乳糖およびグルコース濃度について分析した。
【0050】
【表4】

【0051】
表4の結果は、サッカロマイセス種(Saccharomyces sp.)が、乳糖に比較し、グルコースを好んで利用することを示している。すなわち、この培養物の特性は、lac、glcとされた。
【0052】
(実験例8)
ビー.シングラリス(B.singularis)およびサッカロマイセス種(Saccharomyces sp.)の混合遊離細胞の効果:
振とうフラスコまたは醗酵器からのビー.シングラリス(B.singularis)の細胞懸濁液25mlおよびサッカロマイセス種(Saccharomyces sp.)の懸濁液25mlを混合し、次いで遠心分離し、細胞ペレットを得た。この細胞ペレットを30%乳糖溶液15ml中に懸濁し、振とう器上で30℃および180rpm攪拌下に維持した。試料0.5mlを相違する時間間隔で採取し、HPLCによりガラクトオリゴ糖について分析した。
【0053】
【表5】

【0054】
表5の結果は、GOSの純度がビー.シングラリス(B.singularis)による35%ガラクトオリゴ糖(表3)に比較し、7時間で70.26%まで増加したことを示している。
【0055】
(実験例9)
微細濾過装置を備えた反応器における混合細胞によるガラクトオリゴ糖の製造:
ビー.シングラリス(B.singularis)およびサッカロマイセス種(Saccharomyces sp.)の全細胞を等濃度(乾燥重量に基づき1:1)で反応器内において30重量/重量%乳糖溶液と混合した。反応温度は30℃に維持した。24時間後、試料を採取し、GOS濃度について分析した(表6)。
【0056】
【表6】

【0057】
(例10)
GOS製造の反復サイクル:
ビー.シングラリス(B.singularis)およびサッカロマイセス種(Saccharomyces sp.)の全細胞を、孔サイズ0.5ミクロン、腔径(ID)340mmおよび面積0.6メーターのポリエチレンスルホネートから形成された膜を有する交差流動式微細濾過装置に連結した反応器内で例9と同様に混合した。GOSの純度か90%以上に到達した時点で、この溶液の50%パーセントを交差流動式微細濾過装置に通すことによって透過により分離し、次いで新鮮な乳糖溶液30%を添加し、反応器内の容量を引続くサイクルの出発時容量にした。このサイクルをGOSの純度が10%低下するまで反復した。
【0058】
図1からの結果は、90%以上の純度のGOSが当該反応器において39回の反復サイクルで生成されること、すなわち細胞バイオマスがGOS製造に再使用されたことを示している。
【0059】
(実験例11)
GOSの濃度:
実験例10で得られた溶液を集め、活性炭パッドに通して濾過し、着色物質を除去した。この炭素研磨され、加水分解された溶液を40〜60℃において真空下に濃縮器に通し、70〜80%溶解固形物含有量を有するシロップを得た。
【0060】
(実験例12)
GOSの噴霧乾燥:
希ガラクトオリゴ糖(dilute galactooligosaccharides)を、GOS粉末の製造に使用される4kg/時間の能力を有する噴霧乾燥機(ボバン(Bovan)製)によって噴霧した。25Brixを有する希GOS 5リットルを、ノズルを通し40m/分の速度で散布した。流動速度以外に維持したその他の処理パラメーターは、加圧下に125〜130℃の範囲の温度である。得られた生成物は白色粉末を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊離細胞による高純度ガラクトオリゴ糖の製造方法であって、以下を含む製造方法:
a)ビー.シングラリス(B.singularis)およびサッカロマイセス種(Saccharomyces sp.)の細胞バイオマスを得るために、最適培地および条件下に糖をオリゴ糖に加水分解する酵素を産生する微生物を増殖させること
b)乳糖を加水分解し、生成されたグルコースを混合微生物培養物により利用すること
c)微細濾過膜装置または遠心分離を使用し、微生物培養物からガラクトオリゴ糖を分離すること
d)前記ガラクトオリゴ糖をコットンおよび活性炭またはカーボンフィルターを備えた深床フィルターを使用し、10〜30ml/分の流速で濾過すること
e)真空蒸発器において40〜60℃の温度範囲でガラクトオリゴ糖を濃縮し、70〜80%溶解固形物を含有するシロップを得ること
f)前記シロップを乾燥させ、高純度のガラクトオリゴ糖を無定形粉末として得ること
g)前記無定形粉末を結晶化させ、結晶ガラクトオリゴ糖を得ること。
【請求項2】
ビー.シングラリス(B.singularis)およびサッカロマイセス種(Saccharomyces sp.)を、ホエー廃液および夾雑糖溶液からそれぞれ単離する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
サッカロマイセス種(Saccharomyces sp.)がlacgluまたはgalである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
上記細胞バイオマスが任意に、アスペルギルス オリザエ(Aspergillus Oryzae)、カンジダ(Candida)、クルベロマイセス種(Kluveromyces sp.)、バチルス サークランス(Bacillus Circulans)、ラクトバチルス ブルガリクス(Lactobacillus Bulgaricus)、ストレプトコッカス テルモフィラス(Streptococcus Thermophilus)およびビフィドバクテリウム種(Bifidobacterium sp.)から選択されるβ−ガラクトシダーゼ酵素産生性微生物培養物から製造される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
上記細胞バイオマスの増殖を振とう器フラスコおよび醗酵器により行う、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
乳糖をオリゴ糖に加水分解する上記酵素がβ−ガラクトシダーゼ、グルコースイソメラーゼ、カタラーゼ、ラクテートデヒドロゲナーゼおよびその組合せである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
微生物細胞の比が乾燥重量に基づき1:1〜1:2である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
加水分解反応をバイオリアクターにおいて、約3〜約10のpHを有する約15〜約45%乳糖溶液を使用し、約10〜60℃において約50〜200rpmの範囲の攪拌速度で約12〜48時間かけて行う、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
加水分解サイクルを上記追加のバイオマスの添加により反復し、所望の変換効率を補償する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
上記ガラクトオリゴ糖の濾過をコットンおよび活性炭/カーボンフィルターを備えた深床フィルターを20ml/分の流速で使用して行う、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
透過液を炭素研磨器に通し、次いで0.2ミクロン微細濾過膜装置に通し、着色物質および懸濁炭素粒子を除去する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
炭素研磨され、加水分解された溶液を減圧下に40〜60℃において濃縮器に通し、70〜80%溶解固形物を含有するシロップを得る、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
上記膜装置が、PES、PTFE、再生セルロースまたはセラミック中空繊維、TFFカセット膜から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
希ガラクトオリゴ糖の噴霧を、加圧下において、ノズルを通して100〜135℃の温度範囲において行う、請求項1に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2011−517553(P2011−517553A)
【公表日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−550319(P2010−550319)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際出願番号】PCT/IB2009/051027
【国際公開番号】WO2009/113030
【国際公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(510242211)タタ ケミカルズ リミテッド (2)
【Fターム(参考)】