説明

運動検出を伴う心電図検査を実行するシステム及び方法

【課題】心電図検査の実行中に得られる誤警報に関連する問題に対処しかつ心電図検査を介して取得した情報に運動データを補足する。
【解決手段】心電計と通信可能に結合させた複数のセンサ(14)は、患者の身体(26)が発生させた電気インパルスを検出しかつ検出した電気インパルスを示す信号を心電計に送信する。システムは、心電計と通信可能に結合させた運動検出フィーチャ(32)であって患者の身体の動きを検出しかつ検出した動きを示す信号を心電計に提供する運動検出フィーチャを含む。心電計は検出した運動を示す信号に基づいて特定のタイプの患者運動及び/または患者体位を検出し、検出した電気インパルスを示す信号に基づいて出力を提供し、かつ検出した動きを示す信号に基づいて出力を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示している主題は心電図検査に関する。より具体的には本実施形態は、心電図検査の実行中に得られる誤警報に関連する問題に対処しかつ心電図検査を介して取得した情報に運動データを補足するためのシステム及び方法を目的としている。
【背景技術】
【0002】
心電図検査は、心電計と呼ぶデバイスによって実施される診断手技であり、この際に心臓が拍動するときに心臓が発生させる電気インパルスを計測することによって患者の心臓活動が電子的に記録される。電気インパルスは心臓の洞房結節内で始まり心筋の周りにある神経経路網を通って伝播する。このインパルスは、筋肉繊維を刺激することによって心臓筋肉を収縮させ、これにより心収縮期が生じる。心臓の異なる部位では異なったレベルの電気活動が生じることがある。この電気活動は患者の皮膚を介して検出することが可能である。したがって心電計は、患者の皮膚上の心臓を基準とした異なった位置に配置させた電極を含んでおり、これにより各電極が心臓の異なる部分での電気活動を計測することができる。電極は従来では心臓の近くと患者の四肢上の指定の部位に配置されていた。心電図検査の実行による成果物は典型的には、心拍サイクルに関する心電計によるグラフ記録である心電図(ECG)である。ECGは、電極間の電圧並びに電極の様々な配置に基づいた心臓の異なる部位からの筋肉活動の計測を含むことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7476206号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
心電計及び得られたECGは、不整脈すなわち心臓のリズム異常、心臓の様々な部位の欠陥、伝達組織に対する損傷、電解質の不均衡、その他に関する計測及び診断に利用されることが多い。さらに心電計は、病院、クリニック、その他において患者を連続的に監視するために利用されることが多い。患者の監視中にECGがある種の患者状態の出現を示した場合、当該状態についてヘルスケア提供者に通知するために警報を発生させることがある。しかしECG信号内のノイズのために、様々な誤警報を生じることがあり得る。こうした誤警報は妨害となる可能性があり、また患者看護に非効率性を生じさせることがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ある種の実施形態は、以下に要約した原特許請求の発明とその範囲が相応している。これらの実施形態は本特許請求の発明範囲を限定することを意図したものではなく、これらの実施形態はむしろ本発明の可能な形態に関する簡単な要約を提供することだけを意図したものである。実際に本発明は、以下に示した実施形態と同じものあるいはこれらと異なるものとし得る多種多様な形態を包含することができる。
【0006】
一実施形態によるシステムは、心電計と、該心電計と通信可能に結合させた複数のセンサと、を含んでおり、該複数のセンサのそれぞれは、患者の身体が発生させた電気インパルスを検出しかつ該検出した電気インパルスを示す信号を心電計に送信することが可能な電極を備える。一実施形態では本システムはさらに、心電計と通信可能に結合させた運動検出フィーチャを含んでおり、該運動検出フィーチャは患者の身体の動きを検出しかつ検出した動きを示す信号を心電計に提供することが可能であると共に、心電計は検出運動を示す信号に基づいて特定のタイプの患者運動及び/または患者体位を検出することが可能であり、検出した電気インパルスを示す信号に基づいて出力を提供することが可能であり、かつ検出した動きを示す信号に基づいて出力を提供することが可能である。
【0007】
一実施形態による心電計モニタは、患者の身体からの電気インパルスを検出することが可能な電極からの信号及び患者の身体の動きを検出することが可能な運動検出フィーチャからの信号を受け取ることが可能な1つまたは複数の入力と、運動検出フィーチャからの信号に基づいて患者の身体のあるタイプの運動及び/または姿勢を特定することが可能なプロセッサと、電気インパルスのある種のレベルまたはパターンを検出した際に音響式、触感式または視覚式の警報を提供することが可能でありかつ運動検出フィーチャからの信号に基づいて患者の身体の該タイプの運動及び/または姿勢に関する対応する指示を提供することが可能な警報機構と、を備える。
【0008】
一実施形態による方法は、患者の動きの検出が可能な運動検出フィーチャからの計測値を受け取るステップと、心電計において患者からの電気インパルスを検出可能な電極からの計測値を受け取るステップと、を含む。一実施形態では本方法はさらに、運動検出フィーチャ及び電極からの計測値を記録するステップと、該記録した計測値に基づいてあるレベルまたはタイプの患者の動きの有無を特定するステップと、該特定した動きに基づいて電極からの計測値により生成される警報を抑制するステップと、を含む。
【0009】
本発明に関するこれらの特徴、態様及び利点、並びにその他の特徴、態様及び利点については、同じ参照符号が図面全体を通じて同じ部分を表している添付の図面を参照しながら以下の詳細な説明を読むことによってより理解が深まるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】患者に結合させたセンサを含む心電計の一実施形態を表した図である。
【図2】結合用フィーチャ、電極及び加速度計を互いに一体にして備えたセンサの一実施形態の斜視図である。
【図3】電極センサとは別に利用され得る加速度計を含む加速度計センサの一実施形態の斜視図である。
【図4】患者の引っ掻き運動中に本質的に同時に取得したECGグラフの一実施形態及び加速度計グラフの一実施形態を表した図である。
【図5】患者の咳き込み運動中に本質的に同時に取得したECGグラフの一実施形態及び加速度計グラフの一実施形態を表した図である。
【図6】患者が体位を仰臥位から座位にし仰臥位に戻した時間期間中に本質的に同時に取得したECGグラフの一実施形態及び加速度計グラフの一実施形態を表した図である。
【図7】ある種の運動タイプが特定されると共に誤警報を制限するためまたは誤警報の潜在的原因の特定を容易にするための処置がとられているような、本実施形態によるシステムにより実行し得る処理法またはアルゴリズムの一実施形態を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の具体的な1つまたは複数の実施形態について以下に記載することにする。これらの実施形態に関する簡明な説明を提供するように努めるにあたり、本明細書では実際の実現形態のフィーチャの必ずしもすべてを記載しないことがある。あらゆる工学プロジェクトや設計プロジェクトの場合と同様にこうした実際の任意の実現形態を開発するにあたっては、システム関連及び事業関連の制約との適合など実現形態ごとに様々であり得る開発者の具体的な目標を達成するために数多くの実現形態特異的な判断を行わねばならないことを理解されたい。さらにこうした開発努力は複雑かつ時間がかかることがあり得るが、しかしこれはこの開示の恩恵を有する当業者にとっては設計、製作及び製造のルーチン作業であることを理解されたい。
【0012】
本発明の様々な実施形態の構成要素を導入する際に、冠詞「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」及び「前記(said)」は当該構成要素が1つまたは複数存在すること示すように意図している。「を備えた(comprising)」、「を含む(including)」及び「を有する(having)」という表現は、列挙した構成要素以外に追加の構成要素を含み得ること並びにこれらが存在し得ることを示すように意図している。
【0013】
ここで、運動アーチファクトが心電計監視中に誤警報を生じさせることが多いことを理解されたい。例えばここで、ある種の反復性運動アーチファクトが病的な不整脈に類似しこれが誤警報に繋がることが多いことを理解されたい。一般に過度な回数の誤警報があると、医療介助者がそれぞれの警報に対処することは困難となる。実際に、提示される警報が多いほど、介助者は警報への対処により多くの時間を費やさなければならない。このことは非効率や費用の増大となる可能性がある。実際にこうした誤警報は、患者1人あたりの医療介助者の数を低減しようとする病院やクリニックにとって特に不都合となるおそれがある。
【0014】
したがって本実施形態は、運動アーチファクトに基づく誤警報に関するある種の問題に対処するために加速度計やその他の運動検出デバイス(例えば、ジャイロまたは光学式デバイス)によって患者運動を検出及び計測することを目的とする。実際に、加速度計を介して取得した運動計測値は、患者運動に由来する警報の抑制、介助者に対する追加的な情報の提供及び/または運動アーチファクトを除去するための心電計信号の補償を行うために使用されることがある。具体的には例えば、特定した運動アーチファクトは、検出した運動アーチファクトに関連してある時間期間内に作動されるはずのある種の警報を抑制するために利用されることがある。別の例として、運動アーチファクトを特定しこれを心電計信号から自動的に排除することがある。さらに別の例として、検出した運動アーチファクトに関するインジケータを医療介助者に対して提示し、これによりある具体的な誤警報の原因をより迅速に明確化させることがある。さらにここで、加速度計により検出されるある種の運動が患者状態の解析を容易にするための追加の計測値を提供するために利用されることもあることを理解されたい。例えば幾つかの条件下において加速度計は、特定の動きのパターンに基づいて呼吸、心拍数その他に関する診断情報を提供することがある。実際に、1つまたは複数の加速度計信号の変化を用いて臓器運動、心臓や肺の活動を検出することがある。さらに、ある種のタイプの運動の特定に基づいて応答(例えば、警報抑制)を始動するために1つまたは複数の加速度計信号の変化が利用されることがある。以下の例では運動を検出するためのフィーチャとして加速度計を具体的に検討していることに留意すべきである。しかし幾つかの実施形態では、運動を外部検出し得るような自己充足型のジャイロ式及び光学式フィーチャなど様々な運動検出フィーチャが利用されることがある。
【0015】
図1は、本実施形態による心電計10を表している。具体的には心電計10は、モニタ12、センサ14、通信ケーブル16、ケーブル中継部18、ディスプレイ20、プロセッサ22及びメモリ24を含む。図示した実施形態、患者26上の様々な部位にセンサ14を結合させている。患者26とセンサ14の間のこの結合は、センサ14その他の接着部分(例えば、粘着性の基層)によって実現させることがある。センサ14は個別の通信ケーブル16を介してケーブル中継部18に結合させると共に、このケーブル中継部18は通信ケーブル16のうちの単一のケーブルを介してモニタ12と結合させている。別の実施形態では、様々な配列を実施させることがある。例えば各センサ14はモニタ12と直接通信することがある。幾つかの実施形態では各センサ14をワイヤレス式でモニタ12と通信可能に結合させることや、モニタ12とワイヤレス式に通信し得るケーブル中継部18と結合させることがある。さらに幾つかの実施形態では、異なる数または異なる配置のセンサ14が利用されることがある。以下で検討するような一実施形態では、単独型の電極/加速度計センサが利用されることがある。こうしたセンサをモニタ12に対する単独入力と結合させることや、モニタ12が各センサ及び/または各センサタイプごとに別々の入力を含むことがある。
【0016】
本実施形態では、拡大像27でより明瞭に示したように図1に示した各センサ14は、センサ14を患者26に取り付けるための結合用フィーチャ28(例えば、その一方の側に接着剤が付けられた太いテープ片)と、電気活動を計測するための電極30と、運動を検出するための加速度計32と、を含む。電極30と加速度計32のうちの一方または両方を、通信ケーブル16と通信可能に結合しているセンサ14の基部34と一体とさせることがある。幾つかの実施形態では加速度計32をジャイロなどの様々な運動検出デバイスによって置き換えることがあることに留意すべきである。
【0017】
図1による実施形態では、加速度計32をセンサ14と一体としている。例えば図2は、結合用フィーチャ28、電極30及び加速度計32を互いに一体とさせて備えたセンサ14のうちの1つの斜視図を表している。しかし幾つかの実施形態では図3に示すように、加速度計32を電極30から分離させることがある。実際に図3は、結合用フィーチャ42(例えば、接着テープ)と通信ケーブル16のうちの1つと結合させた加速度計32とを含む単独の加速度計センサ40を表している。図3に示した通信ケーブル16は、様々なタイプのセンサからの他の通信ケーブル16と一緒にケーブル中継部18と結合させることや、モニタ12の単独のポートに直接結合させることがある。加速度計センサ40のうちの1つまたは幾つかを、本実施形態に従って従来の心電計センサの近くで患者26に単独で付与し、心電計センサのうちの1つまたは幾つかを基準とした運動を具体的に特定できるようにすることがある。さらに、別の実施形態では様々なタイプの運動を特定するために、その加速度計センサ40を従来の心電計センサ(複数のセンサのこともある)14を基準とした様々な箇所に配置することがある。
【0018】
本実施形態は一般に、ECGの計測及び記録並びに少なくとも1つの加速度計計測値での計測及び記録を同時に行うことを含む処理法を目的としている。患者運動(例えば、四肢運動や臓器運動)を検出するために、加速度計計測値の変化のトレンド及び相関を求めることがある。実際に、加速度計計測値は、身体体位の変化(例えば、臥位から座位への変化)、咳き込み、皮膚引っ掻き、その他などの異なる数多くの患者活動を特定するために利用されることがある。この情報は様々な診断目的で利用されることがある。例えば、ECGを検討している医師がそのECG上のデータに対応するある時間期間にある種の仕方で患者が動いたことを認識できると有用となり得る。上で指摘したように、ここでこのような患者運動は誤警報を始動させるような運動アーチファクトを生じさせる可能性があることを理解されたい。したがって看護提供者は誤警報を起こす可能性がある運動を認識することができる。さらに本実施形態は、ある種のレベルまたはタイプの患者運動が検出されると、そのECG信号を抑制すること、そのECG信号に関連する警報を抑制すること、ある種のタイプの運動を特定し通報を提供すること、かつ/または誤警報の発生を排除及び/または低減するようにそのECG信号を修正すること、を行うように機能することがある。
【0019】
図4は、患者の引っ掻き運動中に取得したECG100及び加速度計グラフ102を含む。ECG100は従来のECGプロット104を含んでおり、また加速度計グラフ102は3種類の軸に沿って加速度が計測される加速度計である3軸加速度計からの計測値を含む。したがって加速度計グラフ102は、プロット106(X軸)、プロット108(Y軸)及びプロット110(Z軸)で表した3つの方向の各方向ごとのデータを含む。ECGプロット100と加速度計プロット102の両者は、同じ患者から同じ時間期間にわたって取得したものである。これらの計測値を取得した時間中に、患者に自分の左腕を用いて、従来の心電図検査の電極配列の右上の電極の近くで皮膚を掻かせた。患者の腕の動き並びにセンサの動きにより生成されるノイズにより活性化された電解質がECGプロット104内に歪みを生じさせたと考えられる。実際に、加速度計グラフ102により示した対応する計測値から明らかなように引っ掻き運動を開始した時点に近い概ね83秒の位置には追加的なノイズ及びECGプロット104の基線の顕著な変化が存在している。引っ掻き動作は概ね95秒マークまで継続する一方、ECGプロット104の基線は90秒マークのあたりで落ち着き始めるように見える。このことは、当初の腕の動きの後に続く指の動き(腕の調節と比較してかなり細かい運き)の間における電解質の安定化に由来すると考えられる。
【0020】
図5は、患者の咳き込み運動中に取得したECG150及び加速度計グラフ152を含む。図4のECG100及び加速度計グラフ102と同様に、ECG150は従来のECGプロット154を含み、また加速度計グラフ152は3軸加速度計からの計測値を含む。加速度計グラフ152は、プロット156(X軸)、プロット158(Y軸)及びプロット160(Z軸)で表した3つの方向の各方向ごとのデータを含む。ECGプロット150と加速度計プロット152の両者は、同じ患者から同じ時間期間にわたって取得したものである。これらの計測値を取得した時間中に、患者に吸気及び咳き込みをさせた。ECG150及び加速度計グラフ152内で咳き込みの発生を明瞭に特定することが可能である。実際に、プロット156において特に明瞭なように、概ね162秒のところで加速度計グラフ152の各プロットに低い周波数の変化が存在する。こうした低い周波数は加速度計ノイズと比較して統計的に非常に有意なものである。さらに概ね162秒のところでECGプロット154に大きな変化が始っている。ECG150及び加速度計グラフ152のこれらの変化は患者の吸気の結果生じたものである。続いて163秒マークのあたりで咳き込みの呼気部分が始まっており、またこれがECGプロット154と加速度計グラフ152の各プロットの両方内の大きな分断で示されている。加速度計グラフ152は咳き込みの後間もなく実質的に安定化する一方、ECGプロット154はある期間にわたって歪んだままである。本実施形態では、こうした時間期間に注目しこれを解釈することがある。例えば、咳き込み運動の終了が検出された後でこうした実験データに基づいてある時間期間にわたって警報を抑制することがある。
【0021】
ECGプロット104及び150の変化(引っ掻き運動や咳き込みにより生じたものなど)はある種の警報条件と相関することがある。例えば、引っ掻き運動中にECGプロット104により生じるパターンは不整脈に極めて類似することがあり、また従来の心電計ではこうした計測値を受け取ると警報を出すことがある。しかし本実施形態は加速度計グラフ102内で検出された運動に基づいてこうした警報を抑制または遅延させるか、警報がすぐに解除される可能性があるとの指示を看護提供者に提供することができる。例えば引っ掻き運動が検出されると、ある時間期間(例えば、最後に運動が検出された後のある秒数)にわたって警報を抑制または遅延させることがある。ある時間期間にわたって運動が消滅していても警報条件がまだ成立していれば、警報を作動させることがある。別の例では、看護提供者が警報の原因を迅速に特定できるように、警報が始動した時間中に起きた運動のタイプをディスプレイによって指示させることがある。例えば看護提供者は、加速度計グラフ102に加えてECGプロット154や当該タイプの運動の自動グラフィックインジケータ156を吟味すると共に、単に咳き込み運動に由来するものであるため警報が解除される可能性があると認識することがある。実際に本実施形態は、警報を消音させない場合であっても、運動アーチファクトが発生させた可能性がある誤警報に関連するデータを看護提供者に提供することによって看護提供者の効率を向上させることができる。運動の指示には、加速度計から取得した運動に関する生データ(プロット156、158及び160)を含むことや、これによりある種のタイプの運動を明示的に特定(グラフィックインジケータ156)することがある。
【0022】
幾つかの実施形態では、ある種のタイプの運動が検出されたときに心電図検査関連の警報をすべて抑制することがある。別の実施形態では、特定された動きに関するある特定の連続によって生成されるパターンと混同する可能性が高いECGプロットのトレンドに対応する警報を実験データに基づいて抑制することがある。例えば本実施形態は、引っ掻き運動と咳き込み運動とを(臨床試験を介して取得した実験データに基づいて)識別し、どのタイプの運動が特定されたのかに応じて異なる警報を抑制することがある。具体的に例えば、ある特定のタイプの運動(例えば、引っ掻き)はある具体的な警報条件(例えば、不整脈)に類似することが知られていることがあり、またこうした警報条件に関連する警報を最後に運動を検出した後ある時間期間にわたって抑制することがある。さらに幾つかの実施形態では、検出された運動をECGプロット104内の特定のタイプの歪みと関連付けする実験データに基づいて相関を実施することがあり、またその運動に由来する歪みをそのECGプロットから除去することがある。ECGプロット104に対する実験データを用いたこうした修正は患者活動中の診断の向上を容易にするために有用となり得る。
【0023】
図6は、患者がその体位を仰臥位から座位にしさらに仰臥位に戻した時間期間中に取得したECG200及び加速度計グラフ202を含む。これは、担当医が履歴トレンドデータを吟味する際に利用し得る情報の一例である。実際に、ある時間期間中の患者の体位はECG200やその他の情報を解析する際に有用となり得る。図4のECG100及び加速度計グラフ102と同様に、ECG200は従来のECGプロット204を含み、また加速度計グラフ202は3軸加速度計からの計測値を含む。加速度計グラフ202は、プロット206(X軸)、プロット208(Y軸)及びプロット210(Z軸)で表した3つの方向の各方向ごとのデータを含む。加速度計グラフ202内の情報の収集中に患者が起こした特定のタイプの運動に基づいて、3軸加速度計の3種類の軸は明瞭に異なる変化を示す。例えばプロット208及び210は、加速度計が患者の胸部上に位置決めされているため、概ね422秒の位置で患者が臥位から起き上がって座位になったときに大きく変化しており、また患者が仰臥位から座位に移ったときには患者が実質的にY及びZ方向に移動している。しかしプロット206は、仰臥位と座位の間の遷移から予期されるように患者はX方向での大きな移動を示していないため、この遷移の動きの間の変化は非常に小さい。さらに、患者が動いている間にECGプロット204にも顕著な変化が存在している。例えば、2つの体位の間の遷移が開始された近くである概ね223秒及び445秒のところにECGプロット204の大きな乱れが存在している。ECGプロット204内のノイズは、加速度計グラフ202の様々なプロットが提供する運動パターンに相関させ、これを利用して警報の低減及び/または看護提供者への追加的な情報の提供を行うことがある。
【0024】
図7は、本実施形態によるシステムにより実行させ得る処理法300を表しており、ここではある種の運動タイプが特定されると共に、誤警報を制限するためあるいは誤警報の潜在的な原因の特定を容易にするための処置が取られる。処理法300はブロック302に示したような少なくとも1つの加速度計からの計測値を受け取ることで開始される。次にブロック304に示したように、加速度計からの計測値が時間の経過に従って記録される。加速度計は一般に、重力加速度を差し引いた加速度を計測する役割をしており、したがって加速度計が静止状態にあると、概ね重力加速度(その負号)を指示するのが一般的である。したがって、加速度計の運動を特定するために加速度計の相対測定値が利用されることがある。ブロック306に示したように処理法300は、運動の特定のためにブロック304で提供された記録済み計測値を解析及び/または比較することを含む。さらにブロック306は、ブロック308に示したように加速度計計測値内である種のタイプの運動を示すある種のパターンを特定するステップを含むことがある。
【0025】
運動が特定された後で本実施形態は、それが単にある具体的なしきい値を超えた運動であるか、あるいはあるパターンが示すある特定のタイプの運動であるかによらず、ブロック310〜316に示したように加速度計からのデータの解析と同時に取得したECGに関連して1つまたは複数の処置を実施することがある。例えば、本実施形態は一般に、ある時間期間にわたるECGの変化に基づいて警報を抑制すること(ブロック310)、特定された運動タイプと臨床データにより関連付けされたECG内のパターンに関する警報のみを抑制すること(ブロック312)、指定のノイズ値を特定された運動タイプと相関させている実験データに基づいてノイズが排除されるようにECGを修正すること(ブロック314)、かつ/または警報が始動されている間またはその始動時刻の近傍で起きた運動に関する指示を提供すること(ブロック316)を行うことがある。ブロック310に関する時間期間は、特定のタイプのノイズあるいは任意のノイズから回復するのに必要な典型的な時間に基づいて設定されることがある。さらにこの時間は、最後に運動が検出された時点から進行させることがある。しかし、一定の動きによって警報がすべて抑制されることがないように、抑制に関して許容する最大時間量を存在させることがある。ブロック312及び314に関しては、異なる様々なタイプの運動及び/または対応するノイズ値が臨床試験から取得されることがあり、また得られた実験データを心電計のメモリにあるデータテーブル内に記憶させておき相当な一致があったときにパターンの比較及び特定を行うことがある。具体的な一例では、監視中にある種の運動パターンが特定され、またこれが臨床試験を通じて特定しておいたパターンや運動タイプを含むメモリ内に記憶させたデータテーブルを介してある特定のタイプのノイズと関連付けされることがある。さらにこの運動タイプは、実験データによってある具体的なノイズパターンと相関させることがあり、また補正済の信号を生成するように当該ノイズパターンを心電計信号から差し引くことがある。方法300の結果には、警報による妨害の低減及び/または看護提供者の時間のより効率的な利用を含むことがある。
【0026】
本実施形態の別の態様は、運動検出フィーチャを使用した補足の診断データの提供を含む。例えば、運動事象の間で追加的な心臓及び/または肺情報(例えば、心拍数、呼吸数及び肺の音)を計測するために1つまたは複数の加速度計(例えば、3軸加速度計)が利用されることがある。実際に、心臓及び肺のある種の活動を示すようなある種の微細な運動が検出されることがある。例えば、患者が静止状態にある間における様々な方向の運動または患者上の様々な箇所上に位置決めされた加速度計により検出された運動は、心臓の特定の弁の動き及び/またはある種の肺運動(例えば、呼吸)を示すことがある。これらの微細な運動は患者解析のために検出されかつ利用されることがある。例えばある種の心臓運動がうっ血性心不全を示すことがあり、またある種の肺運動が肺のうっ血を示すことがある。したがって、加速度計を利用すると運動事象中に取得した関連するECGの利用を向上させ得るのみならず、運動事象の間のECGが提供するデータを補完することもできる。
【0027】
本発明の技術的効果は、運動アーチファクトに由来する誤警報の低減及び/または特定を容易にすること、無視し得るような追加的なパワー要件により診断目的で運動計測値を同時に取得すること、監視及び診断を容易にするように連続の看護設定において通常遭遇するような患者運動を特定すること、ある種の身体体位変更(例えば、仰臥位や側臥位)を検出し特定すること、ある種の患者条件に関連する運動を検出すること、その他を含むことがある。具体的には例えば、警報の抑制あるいはノイズを打ち消すようなデータの修正のために運動アーチファクトが検出され利用されることがある。別の例では、心拍数、心臓弁の開閉、肺の動き、肝臓や肺アブレーションの間に特徴的な患者運動、並びに血流運動を特定するために運動検出が利用されることがある。
【0028】
この記載では、本発明(最適の形態を含む)を開示するため、並びに当業者による任意のデバイスやシステムの製作と使用及び組み込んだ任意の方法の実行を含む本発明の実施を可能にするために例を使用している。本発明の特許性のある範囲は本特許請求の範囲によって規定していると共に、当業者により行われる別の例を含むことができる。こうした別の例は、本特許請求の範囲の文字表記と異ならない構造要素を有する場合や、本特許請求の範囲の文字表記と実質的に差がない等価的な構造要素を有する場合があるが、本特許請求の範囲の域内にあるように意図したものである。
【符号の説明】
【0029】
10 心電計
12 モニタ
14 センサ
16 通信ケーブル
18 ケーブル中継部
20 ディスプレイ
22 プロセッサ
24 メモリ
26 患者
27 拡大像
28 結合用フィーチャ
30 電極
32 加速度計
34 基部
40 加速度計センサ
42 結合用フィーチャ
100 ECG
102 加速度計グラフ
104 ECGプロット
106 X軸プロット
108 Y軸プロット
110 Z軸プロット
150 ECG
152 加速度計グラフ
154 従来のECGプロット
156 X軸プロット
158 Y軸プロット
160 Z軸プロット
200 ECG
202 加速度計グラフ
204 ECGプロット
206 X軸プロット
208 Y軸プロット
210 Z軸プロット
300 処理法
302 計測値を受け取る
304 計測値を記録する
306 計測値を解析する
308 パターンを特定する
310 ECGの変化に基づいて警報を抑制する
312 ECGのパターンに関して警報を抑制する
314 ECGを修正する
316 運動の指示を提供する

【特許請求の範囲】
【請求項1】
心電計(10)と、
前記心電計と通信可能に結合させた複数のセンサ(14)であって、その各々が患者の身体(26)が発生させた電気インパルスを検出しかつ検出した電気インパルスを示す信号を心電計に送信することが可能な電極を備える複数のセンサと、
前記心電計と通信可能に結合させた運動検出フィーチャ(32)であって、患者の身体の動きを検出しかつ検出した動きを示す信号を心電計に提供することが可能な運動検出フィーチャと、を備えるシステムであって、
前記心電計は、検出運動を示す信号に基づいて特定のタイプの患者運動及び/または患者体位を検出することが可能であり、検出した電気インパルスを示す信号に基づいて出力を提供することが可能であり、かつ検出した動きを示す信号に基づいて出力を提供することが可能である、システム。
【請求項2】
前記運動検出フィーチャ(32)は加速度計またはジャイロを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記運動検出フィーチャ(32)は前記複数のセンサ(14)のうちの1つと一体である、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記運動検出フィーチャ(32)は、複数のセンサの前記1つと共有した通信ケーブル(16)を介して心電計(10)と通信可能に結合している、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記心電計(10)は、運動検出フィーチャから取得した計測値のトレンドの実験データとの比較に基づいて患者運動の特定のタイプを検出するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記心電計(10)は、患者からある種の電気信号が検出されたときに警報を作動させること、並びに運動検出フィーチャからの計測値に基づいて運動の検出に基づいたある時間期間にわたって警報を抑制すること、を行うように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記運動検出フィーチャ(32)は前記複数のセンサ(14)から分離された運動検出センサ(40)と一体である、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記運動検出フィーチャ(32)は患者の身体(26)が実質的に無運動であるときに患者身体内部の臓器の動きを検出することが可能であり、かつ前記心電計(10)は検出した臓器の動きに基づいて補完的な診断情報を提供することが可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
複数の運動検出フィーチャ(32)を備える請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
患者の身体(26)からの電気インパルスを検出することが可能な電極からの信号及び患者の身体の動きを検出することが可能な運動検出フィーチャ(32)からの信号を受け取ることが可能な1つまたは複数の入力と、
前記運動検出フィーチャからの信号に基づいて患者の身体のあるタイプの運動及び/または姿勢を特定することが可能なプロセッサ(22)と、
電気インパルスのある種のレベルまたはパターンを検出した際に音響式、触感式または視覚式の警報を提供することが可能でありかつ運動検出フィーチャからの信号に基づいて患者の身体の前記タイプの運動及び/または姿勢に関する対応する指示を提供することが可能な警報機構(20)と、
を備える心電計モニタ(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−212441(P2011−212441A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65110(P2011−65110)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】