説明

運搬ペプチド、活性物質を有するその構築物および用途

本発明は、生物学的バリヤーを形成する生体膜または組織の表面上への又はそれらの内部への又はそれらを越える、カーゴ(cargo)またはカーゴ分子としての薬物、生物活性物質または他の化合物の運搬または輸送の増強のための運搬タンパク質、タンパク質-カーゴ複合体、方法および手段に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的バリヤーを形成する生体膜または組織の表面への又は内部への又はそれらを越える、カーゴ(cargo)またはカーゴ分子としての薬物、生物活性物質または他の化合物の運搬または輸送の増強のための組成物、方法および手段に関する。生物学的バリヤーには、例えば細胞膜、ミトコンドリア膜ならびに真皮および上皮膜、例えば皮膚、胃腸上皮および気管支上皮または肺上皮ならびに内皮膜、例えば血液脳関門が含まれる。
【背景技術】
【0002】
生物活性物質、例えば薬物、治療剤、核酸、アミノ酸、小分子、ウイルスなどが生物学的バリヤーまたは特定の細胞型を越えておよび/またはそれらの表面上または内部に運搬されうることは、種々の用途に、特に動物または人体の治療に、特に腫瘍学、遺伝子治療の分野において、ならびに胃腸疾患または皮膚疾患の予防および/または治療に関して有用である。
【0003】
ほとんどの小分子薬は、例えば、細胞膜を介して受動拡散しうることにより、それらの標的に到達する。しかし、受動拡散に対する依存は、薬物の領域を、極性細胞外環境および非極性細胞膜の両方において可溶性である場合に限定してしまう。したがって、受動拡散に依存することなく細胞膜を介してすべてのタイプの生物活性物質を運搬するための手段および方法の提供も必要とされている。
【0004】
タンパク質形質導入(Protein transduction)は、最近見出された方法であり、この場合、小さなタンパク質、特に短い特異的配列(タンパク質形質導入ドメイン(Protein Transduction Domains)(PTD)とも称される)を有するポリペプチドを用いて、タンパク質だけでなく、そのような「運搬」ペプチドに共有結合した多種多様な分子も運搬される。いくつかの天然に存在するタンパク質、例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV)由来のTATタンパク質、ショウジョウバエ由来のアンテナペディアタンパク質および単純ヘルペスウイルス由来のVP22タンパク質は細胞に容易に進入することが見出されており、したがって運搬タンパク質として機能しうる。より大きな分子内に両親媒性構造を有する特異的な短い配列がこれらのタンパク質の形質導入能のほとんどをもたらす。
【0005】
運搬タンパク質として機能する人工タンパク質を設計するアプローチも存在する。例えば、ペプチド配列は細胞質膜内に、および皮膚の角質層を越えて進入することが示されている(Nature Medicine (2000) 6: 1253)。細胞の細胞膜は、皮膚の角質層により構成される生物学的バリヤーとは異なるが、そのような運搬ペプチドは両方のバリヤーを通過しうる。
【0006】
WO 02/069930 A1は、皮膚、胃腸管、肺上皮および血液脳関門を含む組織を越える及び該組織内への薬物運搬を増強するための組成物および方法に関するものであり、該バリヤーを越えて輸送すべき生物活性化合物に共有結合した、50個より少ない小単位および少なくとも5個のグアニジノ-またはアミジノ-部分、例えばアルギニン(R)を含む運搬増強性輸送体タンパク質の提供を記載している。
【0007】
WO 01/15511 A2は、細胞の細胞質および核内へのカーゴの取り込みおよび輸送を促進する、いわゆる「内在化(インターナライジング:internalising)」ペプチドに関する。これらのペプチドは、HIG-82細胞、ヒト初代T細胞、ヒト上皮細胞系の細胞またはヒト子宮頸部粘膜組織でのM13ファージライブラリースクリーニングにより得られた。運搬増強性内在化ペプチドとして機能しうる多種多様なペプチド(75種のペプチド)が見出された。
【0008】
WO 01/62297 A1は、例えば約6〜50残基の長さのポリアルギニン分子を含む運搬増強性高分子を提供することにより皮膚、胃腸管、肺上皮および血液脳関門のような生物学的バリヤーを越える薬物および他の物質の運搬を増強するための組成物および方法に関する。
【0009】
例えば、皮膚は、全身を防御するための、物質に対する天然バリヤーであるため、物質の経皮輸送は困難である。長年の研究にもかかわらず、より深い皮膚層内に浸透しうる薬物はほんの少数しか知られていない。DMSOのようなこれらの物質のほとんどは溶媒としても機能し、健康を損なう可能性を伴う。したがって、皮膚ケア、皮膚の保護および皮膚病の治療のための治療剤および美容剤の適用には、効率的な経皮輸送メカニズムが非常に望ましい。皮膚ケアの好例は皮膚の局所的な抗老化(アンチエイジング)処理である。現在のところ、顔面の皺の生成を有効に予防し若い皮膚状態をもたらしうるクリーム剤、特に皮膚クリーム(スキンクリーム)剤は入手不可能である。皮膚の老化は真皮だけでなく、より深い層にも関連していることが、よく知られている。有効な抗老化製品は皮膚層において広い活性スペクトルを有していなければならない。皮膚の引き締まり及び弾性をもたらすマトリックスタンパク質の組成における変化を遅らせ又は更には阻止するためには、美容剤は最も深い皮膚層内にも輸送されなければならない。現在の皮膚クリーム剤に関しては、抗老化剤がより深い層内にも輸送されることは示されていない。したがって、活性な抗老化剤をより深い層内に運びうる輸送メカニズムが非常に望ましい。
【0010】
多数の物質、例えばビタミン、レチノイン酸、ヒアルロン酸およびコラーゲンは、マトリックスタンパク質の組成における変化を抑制して、抗老化活性を有しうる。タンパク質は高い特異的生物活性を有するため、タンパク質の適用が非常に望ましい。抗老化活性を有するタンパク質の好例は、フリーラジカル捕捉物質であるスーパーオキシドジスムターゼ(Super-Oxid-Dismutase)(SOD)である。フリーラジカルは炎症を増強し、あらゆる種類の組織において皮膚の老化過程のような多種多様な過程および疾患を招く。ヒトの皮膚においては、炎症はマトリックスタンパク質の組成に悪影響を及ぼし、引き締まりおよび弾性の喪失を招き、最終的には皺の生成を招く。SODはフリーラジカルを特異的に捕捉し、細胞死を抑制することが示されており、したがってSODが皮膚のすべての層に輸送されれば、それは抗老化活性を示すであろう。
【0011】
有効な皮膚ケア、皮膚の保護ならびに皮膚疾患および表皮疾患全般の治療のためには、より深い皮膚層内への活性物質、特にSODのような生物活性タンパク質の輸送のための有効な方法が必要である。これらの物質はそれらの物理的および化学的特性において非常に多様である。理想的には、すべての物質に対して1つの一般的方法が適用されうる。
【0012】
前記のとおり、経皮輸送は、カーゴ分子にコンジュゲート化(共役)された運搬ペプチドの適用により増強されうる。しかし、これらの個々のペプチドは、一般に、異なる種類のカーゴの経皮輸送を増強し得ず、輸送すべきカーゴの生物活性の抑制が避けられない。輸送されるカーゴの生物活性の回復のために除去される必要がなく、様々な種類のカーゴ分子を輸送しうるPTDが存在すれば好都合であろう。
【0013】
公知運搬タンパク質においては、該タンパク質に結合したカーゴ分子の位相幾何学的表面の有意な部分が関与することが多い。したがって、生物活性のためには、タンパク質-カーゴ複合体のカーゴ部分が、生物学的バリヤーを越え又は標的細胞内に進入した後、結合運搬タンパク質から切断され、遊離薬が、生物学的バリヤーを通過した後で放出される必要がある。
【発明の開示】
【0014】
したがって、本発明の根底にある技術的課題は、基本的には、運搬ペプチドにコンジュゲート化されたカーゴの生物活性の相当な減少または抑制を伴わない、生物学的バリヤーの表面上への又は生物学的バリヤー内への又は生物学的バリヤーを越えるカーゴとしての、多種多様な使用可能な生物活性物質の運搬の増強をもたらす方法および手段を提供することである。最も好ましくは、カーゴの生物活性は、基本的には、運搬ペプチドの非存在下のカーゴの生物活性と比べて変化しない。
【0015】
本発明の根底にある技術的課題は、一般式I:
(I)(K)n A1 B1 C1 (K)m A2 B2 C2 (K)l A3 B3 C3 (K)o
[式中、
Kはリシン(K)であり、
n、m、l、oは0〜5の整数であり、
B1、B2、B3はアルギニン(R)、グルタミン(Q)またはヒスチジン(H)であり、
A1、A2、A3、C1、C2、C3はアルギニン(R)、ヒスチジン(H)であるか又は存在せず、
アミノ酸残基の総数は10以下である]
を共有するペプチドのファミリーに属し運搬ペプチドとして機能するポリペプチドの提供により解決される。
【0016】
本発明の1つの実施形態は、式Iの少なくとも1つのアミノ酸配列を含むペプチドである。好ましい実施形態においては、該ペプチドは式Iのアミノ酸配列よりなる。
【0017】
もう1つの好ましい実施形態においては、該ペプチドは、
KKRKKQKKRK (配列番号1)、RRKKKQKKK (配列番号2)、
KKQKKRRK (配列番号3)、KKQKKRRKK (配列番号4)、
KKKQKRKK (配列番号5)、RQKKQKKKR (配列番号6)、
RKQKKKRKKK (配列番号7)、KRKQKQKKK (配列番号8)、
KKRKQKKQK (配列番号9)、KKKRKKQK (配列番号10)、
RKKKKQKKK (配列番号11)、KKRKKQKK (配列番号12)、
QKKRRKKKQK (配列番号13)、KKRKQKKRK (配列番号14)、
KKRKQKKQKR (配列番号15)、KRKQKQKKKK (配列番号16)、
KKRKRKQKK (配列番号17)、KQKRKKKQK (配列番号18)、
KQKKRQKKKR (配列番号19)、KKKRKQKQKK (配列番号20)、
RKKKQKKQKK (配列番号21)、KKKRQKKQK (配列番号: 22)、
KKRKKKKKRK (配列番号23)、RRKKKKKK (配列番号24)、
KKKKRRK (配列番号25)、KKKKRRKK (配列番号26)、
KKKKRKK (配列番号27)、KKRKKKKK (配列番号28)、
KKRKKHKKRK (配列番号29)、RRKKKHKKK (配列番号30)、
KKHKKRRK (配列番号31)、KKHKKRRKK (配列番号32)、
KKKHKRKK (配列番号33)、RHKKHKKKR (配列番号34)、
RKHKKKRKKK (配列番号35)、HHKRKKKRK (配列番号36)、
KKRHHKRK (配列番号37)、KKHRKKH (配列番号38) および
KKKQKRK (配列番号39)
よりなる群から選ばれるアミノ酸配列を含む(特にそれらよりなる)。
【0018】
もう1つの好ましい実施形態においては、該ペプチドは専ら、ヒスチジン(H)、リシン(K)、グルタミン(Q)およびアルギニン(R)よりなるアミノ酸の群から選ばれるアミノ酸よりなる。
【0019】
本発明のペプチド、特に運搬ペプチドは、カーゴ分子を輸送もしくは運搬し、またはカーゴ分子の輸送もしくは運搬を促進もしくは増強し、最も有利には、カーゴ分子の生物活性を損なったり妨げたりしない。最も有利には、ペプチド-カーゴコンジュゲートまたは複合体を形成する運搬ペプチドに結合した分子の生物活性は、運搬ペプチドの非存在下の単離カーゴの活性と実質的に同じである。最も有利には、ペプチド-カーゴ・コンジュゲートまたは複合体が標的組織または細胞内に内在化され或いはその標的に向かって生物学的バリヤーを越え又はそれに到達するとすぐに運搬ペプチドを切り離すためにカーゴが活性となる必要はない。
【0020】
本発明は、前記ペプチドを、好ましくは単離および/または精製された形態で提供する。
【0021】
WO 91/09958またはWO 02/069930からの公知運搬ペプチドとは対照的に、本発明において具体的に例示されているペプチドはカーゴ分子の生物活性に影響を及ぼさない。
【0022】
さらに、ペプチド-カーゴコンジュゲートまたは複合体の形態のカーゴの運搬は、運搬ペプチドの非存在下のカーゴの運搬と比べて促進または増強される。例えば、本発明のペプチドは、より深い皮膚層内へのタンパク質(例えば、治療的に活性な酵素)の輸送を増強する。
【0023】
理論に束縛されるものではないが、本発明のペプチドは、塩基性電荷を有する少なくとも1つのアミノ酸の存在によりトランスロケーション活性の増強を示し、主として、規則的で安定なシートを運搬ペプチド内のアミノ酸が形成していることによりトランスロケーション活性の増強を示し、該ペプチドがカーゴ分子と全く又はほとんど相互作用しないことによりカーゴ分子の生物活性の減少をカーゴ分子にもたらさない。主として、立体障害および非常に強力な塩基性電荷のような本発明のペプチドにより形成されるシートとカーゴ分子との間の相互作用が軽減される。
【0024】
理論により束縛されるものではないが、該ペプチドの好ましい実施形態において存在するグルタミン(Q)は極性相互作用により該シートを安定化し、リシン(K)は、安定なシートに、アルギニン(R)よりも大きく寄与し、該ペプチドの好ましい実施形態において存在するヒスチジン(H)は低pHの存在時の塩基性電荷に寄与する。
【0025】
運搬ペプチドは、当技術分野で公知の任意の方法により構築されうる。好ましくは、運搬ペプチド重合体は、合成により、好ましくは、商業的に入手可能なペプチド合成装置を使用して製造される。固相ペプチド合成においては、通常のアミノ酸の代わりにN-メチルおよびヒドロキシ-アミノ酸が使用されうる。好ましい実施形態においては、ビオチン化ペプチドが製造される。もう1つの好ましい実施形態においては、特にin vivoでのユビキチン化を防ぐために、遊離アミノ末端基を保護基、例えばアセチルまたはベンジル基で覆う。
【0026】
本発明はまた、本発明の少なくとも1つのペプチドと少なくとも1つのカーゴ分子とを含む複合体(以下、ペプチド-カーゴ複合体と称する)を具体的に例示する。具体的に例示される運搬ペプチドはカーゴ分子の表面被覆に好適である。本発明のペプチドの少なくとも1つの存在下では、少なくとも1つのカーゴ分子の取り込みは、該ペプチドを伴わないカーゴ分子の取り込みと比べて著しく増強される。該運搬技術は、皮膚および他の生物学的バリヤー内への並びに皮膚および他の生物学的バリヤーを越える広範な治療剤の浸透を増強する広範な可能性を有する。
【0027】
最も有利には、可溶化剤、例えばCREMOPHOR(登録商標)EL(BASF; 主としてポリオキシエチル化ひまし油)、ポリソルベート80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート; TWEEN 80とも称される)、PEGおよびエタノールの一般的な量は、具体的に例示されている運搬ペプチドでは要求されない。したがって、これらの可溶化剤に典型的に伴う副作用、例えばアナフィラキシー、呼吸困難、高血圧などが著しく軽減されうる。
【0028】
したがって、該技術的課題は更に、該運搬ペプチドと少なくとも1つのカーゴ分子とを含むペプチド-カード複合体の提供により解決される。該ペプチド-カーゴ複合体の好ましい実施形態においては、該運搬ペプチドは少なくとも1つのカーゴ分子の外表面に選択的に連結される。
【0029】
本発明の運搬ペプチドはカーゴまたは少なくとも1つのカーゴ分子と複合体化されうる。本明細書中で用いる「カーゴ」または「カーゴ分子」なる語は、生物学的バリヤーもしくは標的細胞上に又はそれらを越えて又はそれらの内部へ輸送されるのが有用でありうる任意の小分子、巨大分子または巨大分子複合体を意味する。
【0030】
好ましくは、カーゴには、小有機分子、巨大分子、ポリヌクレオチド、DNA、オリゴヌクレオチドデコイ、RNA、アンチセンスRNAおよび他のアンチセンス構築物、ポリペプチド、タンパク質、ウイルス、修飾ウイルス、ウイルスおよび非ウイルスベクター、金属ならびにプラスミドが含まれるが、これらに限定されるものではない。したがって、本発明の好ましい実施形態においては、カーゴは、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、タンパク質、小有機分子、金属、ウイルス、修飾ウイルス、ウイルスベクターおよびプラスミドよりなる群から選ばれる少なくとも1つ化合物を含む。好ましくは、カーゴは、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、単純ヘルペスウイルス(simplex virus)およびレトロウイルスよりなる群から選ばれるウイルスである。
【0031】
本発明の運搬ペプチドは、好ましくは、例えば化学架橋、アビジン架橋、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ架橋、少なくとも1つのジスルフィド結合を含む連結、ペプチド-カーゴ融合タンパク質など(これらに限定されるものではない)のような任意の公知方法によりカーゴに連結される。
【0032】
好ましくは、適当な複合体形成基に結合させるための取っ手(handle)として、カーゴ上に存在する種々の官能基、例えばヒドロキシル、アミノ、ハロゲンなどが用いられる。例えば、ヒドロキシル基は、酸性ホスファート基を含むように修飾される。
【0033】
もう1つの好ましい変形においては、該連結はジスルフィド結合を含む。もう1つの変形においては、該連結はストレプトアビジン-ビオチン複合体を含む。好ましくは、運搬ペプチドはビオチン化されており、カーゴ分子はアビジンで標識されている。
【0034】
好ましい実施形態においては、本発明の運搬ペプチドは、切断可能なリンカーによりカーゴに連結される。
【0035】
いくつかの実施形態においては、カーゴは、官能基、例えばカルボン酸基、ホスファートまたはリン酸エステル、スルホン酸基などを含むように修飾される。好ましくは、カーゴは、適当な基をリンカーを介してカーゴに結合させることにより該基を含むように修飾される。好ましくは、リンカーは、生物活性物質を遊離しうる切断可能なリンカーである。最も好ましくは、カーゴは、当技術分野で公知の多数の方法を用いて直接的に(例えば、カルボジイミドで)または少なくとも1つの連結部分を介して修飾される。特に、カルバマート、エステル、チオエステル、ジスルフィドおよびヒドラゾン連結が形成される。細胞膜を越える物質の輸送後に細胞質ゾル内で連結を容易に分解させたい場合には、エステルおよびジスルフィド連結が好ましい。
【0036】
本発明は、カーゴとの相互作用を最低限でしか又は全くもたらさない改良された運搬タンパク質に関するものであるが、いくつかの稀な場合には、カーゴ分子の位相幾何学的表面の有意な部分が、しばしば、タンパク質-カーゴ共役に関与する。したがって、生物学的バリヤーを越えた後または標的細胞に進入した後で生物活性を発現するためには、タンパク質-カーゴ複合体のカーゴ部分が結合運搬タンパク質とカーゴのリンカー部分(それが存在する場合)とから切断される必要があるかもしれない。そのような場合には、タンパク質-カーゴ複合体またはコンジュゲート(共役体)は、好ましくは、生物学的バリヤーまたは細胞膜を通過した後に遊離薬を遊離するための切断可能なリンカーを含む。
【0037】
本発明の好ましい実施形態においては、カーゴは、実質的に任意の生物活性物質または診断用分子である。いくつかの好ましい実施形態においては、生物活性物質をその未修飾形態で使用し、他の好ましい形態においては、該物質を、ペプチド-カーゴ複合体を増強するために荷電(典型的には酸性)残基を含むように修飾する。本明細書中で用いる「生物活性物質」なる語は、未修飾形態の物質、ならびに修飾された物質、例えばプロドラッグ、および親物質に比べて減弱もしくは増強された活性レベルおよび/または減弱もしくは増強された結合速度論を有する物質を包含する。
【0038】
小有機分子(小分子とも称される)は治療に有用であり、好ましくは、薬物を包含し、あるいは細胞(例えば、癌性細胞)の死が望ましい場合にアポトーシスまたは細胞溶解を誘導しうる分子または細胞の適切な機能を保証するように作用する他の生物学的または治療的に活性な物質を包含する。本発明の内容は、水性液体(例えば、血清および水性塩類液)への低い溶解度を有する小有機分子を運搬するのに最も有利である。したがって、本発明においては、低い溶解度により治療効力が限定される化合物を、より多い投与量で投与することが可能であり、非組合せ形態と比べて組合せ形態では、より高い細胞取り込みレベルにより、モルベースで、より有効でありうる。
【0039】
本方法の好ましい組成物を構成するそのような小有機分子の典型例はタキサンである。該複合体は、対応する非複合体化形態と比べて増強された経上皮組織輸送速度を有し、癌細胞の増殖を抑制するのに特に有用である。タキサンおよびタキソイドは、細胞機能に有害となる程度にまで微小管の重合を促進し(および脱重合を抑制し)細胞増殖を抑制し最終的には細胞死を招くことにより、それらの抗癌効果を現すと考えられている。本明細書中で用いる「タキサン」なる語は、パクリタキセル(F、R' = アセチル、R''= ベンジル;商標「TAXOL」としても公知である)、および天然に存在する類似体、合成類似体または生物工学的に操作された類似体を意味する。好ましくは、運搬ペプチドは、酸部分(例えば、ホスファート)を含むように修飾された修飾タキサンまたはタキソイドと組合される。
【0040】
もう1つの例としては、高荷電物質、例えばレボドーパ(L-3,4-ジヒドロキシ-フェニルアラニン; L-DOPA)がカーゴとして本発明の運搬タンパク質と組合される。ペプトイドおよびペプチド模擬物質もカーゴに含まれる。
【0041】
好ましい実施形態においては、カーゴとしての巨大分子が上皮または内皮組織の層の1以上を越えて運搬され、それらとしてはタンパク質、特に酵素が例示される。カーゴとしての治療用タンパク質には、置換酵素が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0042】
例を挙げると、カーゴとしての治療用酵素には、リソソームグルコセレブロシダーゼ欠損症(ゴーシェ病)の治療に使用するアルグルセラーゼ、ムコ多糖症I型の治療に使用するα-L-イズロニダーゼ、サンフィリッポB症候群の治療に使用するα-N-アセチルグルコサミダーゼ、膵臓不全の治療に使用するリパーゼ、重篤な複合免疫不全症候群の治療に使用するアデノシンデアミナーゼ、およびトリオースリン酸イソメラーゼ欠損症に伴う神経筋機能不全の治療に使用するトリオースリン酸イソメラーゼが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
もう1つの好ましい実施形態においては、運搬ペプチドは、診断用途を有する多種多様なカーゴと組合される。好ましくは、カーゴは診断用イメージングまたは造影剤であり、これは本発明においては生物学的バリヤーの1以上の層上、生物学的バリヤーの1以上の層内または生物学的バリヤーの1以上の層を越えて最も有利に運搬される。好ましい実施形態においては、運搬ペプチドを放射能、例えば“mTcグルコヘプトナート、または磁気共鳴画像(MRI)法で使用する物質、例えばガドリニウム ドープ化キレート剤、例えばGd-DTPAで標識する。カーゴとして使用する診断剤の他の例としては、細胞内で発現された場合に容易に検出可能なタンパク質、例えばβ-ガラクトシダーゼ、グリーン蛍光タンパク質、ルシフェラーゼなど(これらに限定されるものではない)をコードするマーカー遺伝子が含まれる。特に、カーゴは、金属、ハロゲン、放射性核種、蛍石、酵素、酵素基質、酵素補因子、酵素インヒビター、リガンド(特にハプテン)などから選ばれる。
【0044】
本発明はまた、種々のクラスの治療剤のための組成物および方法を提供する。好ましい実施形態においては、カーゴは、本発明の運搬タンパク質と組合されて組織浸透性および効力が著しく改善されうる物質であり、例えば、抗細菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗増殖剤、免疫抑制剤、ビタミン、鎮痛剤、ホルモンなどのような化合物が挙げられる。
【0045】
したがって、好ましい実施形態においては、カーゴは、治療用タンパク質、自殺タンパク質、腫瘍抑制タンパク質、転写因子、キナーゼインヒビター、キナーゼ、調節タンパク質、アポトーシスタンパク質、抗アポトーシスタンパク質、ウイルス抗原、細胞抗原、分化因子、不死化因子、毒素、酵素、核酸、アンチセンス構築物、診断用イメージングまたは造影剤、色素、抗細菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗増殖剤、静細胞剤、免疫抑制剤、ビタミン、鎮痛剤、ホルモン、抗炎症剤および抗老化剤よりなる群から選ばれる。
【0046】
好ましい実施形態においては、カーゴは、本組成物および方法において使用する抗細菌剤である。そのようなカーゴには、βラクタム抗生物質およびキノロン抗生物質が含まれる。好ましくは、カーゴは、ナフシリン(nafcillin)、オキサシリン(oxacillin)、ペニシリン(penicillin)、アモキサシリン(amoxacillin)、アンピシリン(ampicillin)、セファロスポリン(cephalosporine)、セフォタキシム(cefotaxime)、セフトリアキソン(ceftriaxone)、リファンピン(rifampin)、ミノサイクリン(minocycline)、シプロフロキサシン(ciprofloxacin)、ノルフロキサシン(norfloxacin)、エリスロマイシン(erythromycin)、テトラサイクリン(tetracycline)、ゲンタマイシン(gentamicin)、マクロライド、キノロン、β-ラクトン、P-ラクタマーゼインヒビター、サリシルアミドおよびバンコマイシン(vancomycin)よりなる群から選ばれる抗細菌剤である。より詳しくは、カーゴは、ナフシリン(nafcillin)、オキサシリン(oxacilli)、ペニシリン(penicillin)、アモキサシリン(amoxacillin)、アンピシリン(ampicillin)、セフォタキシム(cefotaxime)、セフトリアキソン(ceftriaxone)、リファンピン(rifampin)、ミノサイクリン(minocycline)、シプロフロキサシン(ciprofloxacin)、ノルフロキサシン(norfloxacin)、エリスロマイシン(erythromycin)、バンコマイシン(vancomycin)およびそれらの類似体から選ばれる。
【0047】
もう1つの好ましい実施形態においては、カーゴは、本組成物および方法において使用する抗微生物剤である。好ましくは、カーゴは、スルファニルアミド(sulfanilamide)、スルファメトキサゾール(sulfamethoxazole)、スルファセタミド(sulfacetamide)、スルフィソキサゾール(sulfisoxazole)、スルファジアジン(sulfadiazine)、ペニシリン(penicillin)、例えばペニシリンGおよびV、メチシリン(methicillin)、オキサシリン(oxacillin)、ナフィシリン(naficillin)、アンピシリン(ampicillin)、アモキサシリン(amoxacillin)、カルベニシリン(carbenicillin)、チカルシリン(ticarcillin)、メズロシリン(mezlocillin)およびピペラシリン(piperacillin)、セファロスポリン(cephalosporin)、例えばセファロチン(cephalothin)、セファキソリン(cefaxolin)、セファレキシン(cephalexin)、セファドロキシル(cefadroxil)、セファマンドール(cefamandole)、セフォキシチン(cefoxitin)、セファクロル(cefaclor)、セフロキシン(cefuroxine)、ロラカルベフ(loracarbef)、セフォニシド(cefonicid)、セフォテタン(cefotetan)、セフォラニド(ceforanide)、セフォタキシム(cefotaxime)、セフポドキシム(cefpodoxime)、プロキセチル(proxetil)、セフチゾキシム(ceftizoxime)、セフォペラゾン(cefoperazone)、セフタジジム(ceftazidime)およびセフェピム(cefepime)、アミノ配糖体、例えばゲンタマイシン(gentamycin)、トブラマイシン(tobramycin)、アミカシン(amikacin)、ネチルミシン(netilmicin)、ネオマイシン(neomycin)、カナマイシン(kanamycin)、ストレプトマイシン(streptomycin)など、テトラサイクリン(tetracycline)、例えばクロルテトラサイクリン(chlortetracycline)、オキシテトラサイクリン(oxytetracycline)、デメクロサイクリン(demeclocycline)、メタサイクリン(methacycline)、ドキシサイクリン(doxycycline)およびミノサイクリン(minocycline)ならびにマクロライド、例えばエリスロマイシン(erythromycin)、クラリスロマイシン(clarithromycin)およびアジスロマイシン(azithromycin)から選ばれる。
【0048】
もう1つの好ましい実施形態においては、カーゴは、本組成物および方法において使用する抗真菌剤である。好ましくは、カーゴは、アンホテリシン(amphotericin)、イトラコナゾール(itraconazole)、ケトコナゾール(ketoconazole)、ミコナゾール(miconazole)、ナイスタチン(nystatin)、クロトリマゾール(clotrimazole)、フルコナゾール(fluconazole)、シクロピロックス(ciclopirox)、エコナゾール(econazole)、ナフチフィン(naftifine)、テルビナフィン(terbinafine)およびグリセオフルビン(griseofulvin)から選ばれる。
【0049】
もう1つの好ましい実施形態においては、カーゴは、本組成物および方法において使用する抗ウイルス剤である。好ましくは、カーゴは、アシクロビル(aciclovir)、ファンシクロビル(famciclovir)、ガンシクロビル(ganciclovir)、フォスカルネット(foscarnet)、イドクスウリジン(idoxuridine)、ソリブジン(sorivudine)、トリフルリジン(trifluridine)(トリフルオロピリジン)、バラシクロビル(valacyclovir)、シドフォビル(cidofovir)、ジダノシン(didanosine)、スタブジン(stavudine)、ザルシタビン(zalcitabine)、ジドブジン(zidovudine)、リバビリン(ribavirin)およびリマンタチン(rimantatine)から選ばれる。
【0050】
もう1つの好ましい実施形態においては、カーゴは、本組成物および方法において使用する抗増殖または免疫抑制剤である。好ましくは、カーゴは、メトトレキセート(methotrexate)、アザチオプリン(azathioprine)、フルオロウラシル(fluorouracil)、ヒドロキシウレア(hydroxyurea)、6-チオグアニン、シクロホスファミド(cyclophosphamide)、メクロロエタミン塩酸(mechloroethamine hydrochloride)、カルムスチン(carmustine)、シクロスポリン(cyclosporine)、タキソール(taxol)、タクロリムス(tacrolimus)、ビンブラスチン(vinblastine)、ダプソン(dapsone)、ネドクロミル(nedocromil)、クロモリン(cromolyn)(クロモグリク酸)およびスルファサラジン(sulfasalazine)から選ばれる。
【0051】
もう1つの実施形態においては、カーゴはヒスタミン受容体アゴニストまたはアンタゴニストである。好ましくは、カーゴは、2-メチルヒスタミン、2-ピリジルエチルアミン、2-イタゾリルエチルアミン、(R)-a-メチルヒスタミン、インプロミジン(impromidine)、ジマプリット(dimaprit)、4(5)-メチルヒスタミン、ジフェンヒドラミン(diphenhydramine)、ピリラミン(pyrilamine)、プロメタジン(promethazine)、クロルフェニラミン(chlorpheniramine)、クロルシクリジン(chlorcyclizine)、テルフェナジン(terfenadine)などから選ばれる。
【0052】
もう1つの好ましい実施形態においては、カーゴは、喘息の治療に有用な物質である。好ましくは、カーゴは、コルチコステロイド、例えばベクロメタゾン(beclomethasone)、ブデソニド(budesonide)およびプレドニゾン(prednisone)ならびにクロモリン(cromolyn)、ネドクロミル(nedocromil)、アルブテロール(albuterol)、メシル酸ビトルテロール(bitolterol mesylate)、ピルブテロール(pirbuterol)、サルメテロール(salmeterol)、テルブチリン(terbutyline)およびテオフィリン(theophylline)から選ばれる。
【0053】
もう1つの好ましい実施形態においては、カーゴはビタミンである。
もう1つの好ましい実施形態においては、カーゴは鎮痛剤、例えばリドカイン(lidocaine)、ブピバカイン(bupivacaine)、ノボカイン(novocaine)、プロカイン(procaine)、テトラカイン(tetracaine)、ベンゾカイン(benzocaine)、コカイン(cocaine)、メピバカイン(mepivacaine)、エチドカイン(etidocaine)、プロパラカイン(proparacaine)、ロピバカイン(ropivacaine)、プリロカイン(prilocaine)などである。
【0054】
もう1つの好ましい実施形態においては、カーゴは、本組成物および方法において使用する抗増殖剤である。好ましくは、カーゴは、ペントスタチン(pentostatin)、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、メトトレキセート(methotrexate)、ブレオマイシン(bleomycin)、エトポシド(etoposide)、テニポシド(teniposide)、ダクチノマイシン(dactinomycin)、ダウノルビシン(daunorubicin)、ドキソルビシン(doxorubicin)、ミトキサントロン(mitoxantrone)、ヒドロキシウレア(hydroxyurea)、5-フルオロウラシル(5-fluorouracil)、シタラビン(cytarabine)、フルダラビン(fludarabine)、マイトマイシン(mitomycin)、シスプラチン(cisplatin)、プロカルバジン(procarbazine)、ダカルバジン(dacarbazine)、パクリタキセル(paclitaxel)、コルヒシン(colchicine)、ビンカアルカロイドなどから選ばれる。
【0055】
もう1つの実施形態においては、カーゴは、組織ホルモン、特にプロスタグランジン、セロトニン、ヒスタミン、ブラジキニン、カリクレインおよび胃腸ホルモン、放出ホルモン、下垂体ホルモン、インスリン、バソプレッシン(ADH)、グルカゴン、エンケファリン、カルシトニンおよびコルチコステロイドよりなる群から選ばれるホルモンである。
【0056】
もう1つの実施形態においては、運搬ペプチドは、タンパク質、RNA、リボソームまたはアンチセンスRNAをコードする、カーゴとしての核酸と組合される。該核酸によりコードされるタンパク質、RNAまたはリボソームは細胞内で過少発現(under-represented)、無効または非存在状態でありうる。該核酸によりコードされるアンチセンスRNAは、分子の望ましくない機能の排除を可能にしうる。
【0057】
好ましい実施形態においては、本発明のペプチドは、ペプチド、特にペプチド核酸(PNA)(これは、DNAと二重らせんおよび三重らせんを形成しうるDNA模擬体である)との融合体として合成される。そのようなペプチド-DNA融合体は、安定なDNAまたはRNA/PNA二重鎖を形成することが可能であり、これは本発明のペプチドを介して細胞に進入することが可能であり、それによりDNAまたはRNAを標的細胞に運搬しうる。
【0058】
したがって、カーゴには、一本鎖または二本鎖標的に対するアンチセンス配列のような、相補的標的に対するハイブリダイゼーションのために設計された選択された配列を有する、あるいは該配列によりコードされる核酸転写産物またはタンパク質を発現させるために設計された選択された配列を有する、DNAおよびRNAならびにそれらの類似体から形成されるオリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドを含む核酸も含まれる。類似体には、荷電および好ましくは非荷電バックボーン類似体、例えばホスホナート、メチルホスホナート、ホスホルアミダート、好ましくはN-3'またはN-5', チオホスファート、非荷電のモルホリノに基づく重合体、およびタンパク質核酸(PNA)が含まれる。そのような分子は、例えば酵素置換療法、遺伝子治療およびアンチセンス療法を含む種々の治療法に使用されうる。
【0059】
例えば、タンパク質核酸(PNA)は、バックボーンがデオキシリボースバックボーンと構造的に同形(homomorphous)である、DNAの類似体である。該バックボーンは、核酸塩基が結合したN-(2-アミノエチル)グリシン単位よりなる。全4種の天然核酸塩基を含有するPNAは、ワトソン-クリック塩基対規則に従い相補的オリゴヌクレオチドにハイブリダイズし、塩基対認識の点で真のDNA模擬体である(Egholmら (1993) Nature 365:566-568)。PNAのバックボーンはリン酸エステルではなくペプチド結合により形成されており、このことはそれをアンチセンス用途に好適なものとする。該バックボーンは非荷電であるため、形成されるPNA/DNAまたはPNA/RNA二重鎖は、通常より高い熱安定性を示す。PNAは、ヌクレアーゼまたはプロテアーゼにより認識されないという更なる利点を有する。また、PNAは、標準的なt-Boc化学を用いて自動ペプチド合成装置で合成されうる。ついでPNAは本発明の輸送重合体に容易に連結される。
【0060】
もう1つの好ましい実施形態においては、運搬ペプチドは、好ましくは転写因子に対する特異的結合部位を含有し転写因子の機能をin vitroおよびin vivoで遮断しうるデコイオリゴヌクレオチドと組合される。
【0061】
カーゴがポリペプチドである場合には、該ポリペプチドは好ましくは、特に生物学的バリヤーを越えて又は標的細胞に運搬される場合に、望ましい機能を該細胞にもたらす或いは特定の表現型変化を誘導するペプチドまたはタンパク質である。もう1つの好ましい実施形態においては、該タンパク質またはペプチドは、細胞内で免疫応答を惹起しうる抗原である。
【0062】
本発明の運搬ペプチドはin vivoにおける細胞内へのカーゴの運搬にも有用であり、in vivoにおけるカーゴのin situまたは局在化運搬を促進する。本発明の運搬ペプチドはカーゴの核移行をも促進する。特に、該運搬ペプチドはペプチド連結カーゴの同時進入、および核へのカーゴの移行を可能にする。
【0063】
本発明の運搬ペプチドは、最も有利には、多種多様な細胞型、例えばウイルス感染に無反応性である細胞、例えば気管支または肺上皮の初代ヒト気道上皮細胞、および他のタイプの初代および樹立細胞系、例えば滑液細胞(ヒトまたは動物)、初代ヒト島細胞、筋芽細胞、腎上皮細胞、繊維芽細胞、腫瘍細胞、異なる原基(germal)層および粘膜(例えば、頸部粘膜)の細胞内への取り込みおよび運搬を促進する。
【0064】
本発明のペプチドはin vivoにおける滑液裏打ち細胞内へのカーゴの取り込みを促進するため、該ペプチドは関節炎の軽減に特に有用である。患者において慢性関節リウマチを軽減するための1つのアプローチは、滑液細胞死を誘発することである。本発明のペプチドは、例えばアポトーシス因子、例えばB-53、カスパーゼまたは抗微生物ペプチドに連結されている場合には、好ましくは滑液細胞内でアポトーシスを誘発しうる。
【0065】
本発明のペプチドは、アポトーシス因子、またはアポトーシス因子をコードするDNAを例えば関節炎の関節のような組織へ運搬しその部位でアポトーシスを誘発するのにも有用である。本発明のペプチドは、アポトーシス因子を腫瘍細胞(特に、当技術分野で公知の種々の治療法においてアポトーシスに抵抗性であることが既に見出されている腫瘍細胞)へ運搬しその部位でアポトーシスを誘発するのにも有用である。
【0066】
プロテイナーゼ、特にセリンプロテイナーゼおよび中性メタロプロテイナーゼは関節軟骨の分解に関与している。関節の間葉細胞および例えば慢性関節リウマチにおける炎症応答中に関節に定着する白血球は、関節軟骨を分解する種々のプロテイナーゼを合成する。したがって、関節炎関節の炎症部位における白血球を減少させることは関節炎における抗侵食療法に対する1つのアプローチである。本発明の運搬ペプチドは、例えば炎症を起こしている関節炎関節の洗浄液内の白血球などの、関節炎関節内の細胞に、アポトーシス因子を運搬するのに有用であり、例えばIL-1炎症関節の洗浄液内の白血球の著しい減少を引き起こす。白血球の減少は、関節炎関節における腫張、滑液増殖および軟骨分解を軽減するのにも有用である。
【0067】
本発明のもう1つの態様においては、該運搬ペプチドは、増殖因子、サイトカインである、カーゴとしての治療用タンパク質と組合される。好ましい実施形態においては、カーゴは、炎症および変性関節および脊椎疾患、関節炎、特に変形性関節症、腰痛、骨修復、骨折治癒、筋肉および靱帯損傷の治療よりなる群から選ばれる状態に使用される治療剤である。特に、カーゴは、IL-1Ra、STNF-R(p55)、STNF-R(p75)、SIL-1R I型、SIL-1R II型、BMP-2、BMP-6、BMP-7、LMP-1、LMP-3、IGF-1、TGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、IL-4、IL-10、CTLA4、CD30、TIMP-1、IFN-β、Sox-9およびPDGFから選ばれる。好ましい実施形態においては、増殖因子およびサイトカインは、本発明のペプチドのみにより、また、任意の他の通常の投与手段と組合せて、標的組織または細胞に投与される。
【0068】
本発明のペプチドは、改良された免疫原の開発にも有用である。例えば、本発明のペプチドは、有利には、免疫原として有用でありうるタンパク質、ポリペプチド、DNA、RNA、ベクターおよびウイルスの、動物および人体における標的細胞への運搬を促進する。本発明のペプチド-カーゴ複合体は、動物または人体の標的細胞に投与されると免疫応答を惹起しうる。1つの好ましい実施形態においては、そのような免疫原はワクチン、好ましくは、HIVに対するワクチンである。好ましい実施形態においては、免疫原として作用するペプチド-カーゴ複合体のカーゴ部分は、抗原、例えばHIVエンベロープタンパク質、gag、pol、env、tat、nef、vpr、vpvおよびrevである。
【0069】
もう1つの好ましい実施形態においては、本発明は、有害な生物学的過程、例えば微生物感染を妨げるために、免疫特異的抗体または抗体フラグメントを細胞質ゾルへ運搬するために使用される。最近の実験は、細胞内抗体が植物および哺乳類細胞における有効な抗ウイルス物質でありうることを示している。抗体の重鎖および軽鎖が単一ポリペプチドとして合成される典型的に使用される一本鎖可変領域フラグメント(scFv)とは対照的に、本発明の運搬ペプチドはそのようなscFvフラグメントと複合体化される。最も有利には、細胞取り込みの度合が増加して、免疫特異的フラグメントが、重要な微生物成分、例えばHIV Rev、HIV逆転写酵素およびインテグラーゼタンパク質に結合しそれらを失活させることが可能となる。
【0070】
カーゴとしてのペプチドには、エフェクターポリペプチド、受容体断片なども含まれる。カーゴは、好ましくは、細胞内シグナルを媒介するタンパク質により使用されるリン酸化部位を有するペプチドから選ばれる。カーゴとしてのそのようなタンパク質には、プロテインキナーゼC、RAF-1、p21Ras、NF-KB、C-JUN、および例えばIL-4受容体のような膜受容体の細胞質尾部、CD28、CTLA-4、V7ならびにMHCクラスIおよびクラスII抗原が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0071】
好ましくは、動物または人体において免疫応答を惹起するための方法は、標的細胞のex vivo形質導入、およびそれに続く、患者内への該形質導入細胞の投与、例えば筋肉内または皮内注射により達成される。
【0072】
1つの好ましい実施形態においては、該タンパク質抗原は、腫瘍細胞に対する免疫応答を惹起または促進するための腫瘍抗原である。単離または可溶性タンパク質の、APCの細胞質ゾル内への輸送、およびそれに続くCTLの活性化は例外的なものである。なぜなら、少数の例外はあるが、単離または可溶性タンパク質の注射はAPCの活性化もCTLの誘導も引き起こさないからである。したがって、本発明の輸送増強組成物と複合体化された抗原は、細胞性免疫応答をin vitroまたはin vivoで刺激するように働きうる。
【0073】
本発明のもう1つの態様においては、カーゴとしてのタンパク質抗原は抗原提示細胞(APC)の細胞質ゾル区画へ運搬され、その部位でそれらはペプチドに分解される。ついで該ペプチドは小胞体へ輸送され、その部位でそれらは新生HLAクラスI分子と会合し、細胞表面上に提示される。そのような「活性化」APCは、クラスI拘束抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の誘導物質として働きうる。引き続き該CTLは、特定の抗原を提示する細胞を認識し該細胞を破壊する。この過程を行いうるAPCには、あるマクロファージ、B細胞および樹状細胞が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0074】
好ましい実施形態においては、動物または人体において免疫応答を惹起するための方法は、本発明のペプチド-カーゴ複合体をin vitro、in vivoまたはex vivoで標的細胞に投与することを含み、ここで、該カーゴは抗原である。好ましくは、本発明のペプチド-カーゴ複合体は、上皮細胞、腫瘍細胞、肝細胞、内皮細胞、ニューロン、筋細胞、T細胞、樹状細胞、β細胞、初代細胞、分化細胞、幹細胞、抗原提示細胞、粘膜などを含む多種多様な細胞型へ、当業者に公知の方法により、in vivo、in vitroおよびex vivoで投与される。
【0075】
本発明のペプチド-カーゴ複合体は、幹細胞、例えば造血細胞、筋肉、脳などへ投与される場合には、該幹細胞の分化を誘導しうる。該ペプチド-カーゴ複合体は、幹細胞の分化を刺激しうる因子、例えば転写因子MyoDを含む。骨髄から単離された幹細胞は、軟骨および骨髄を含む多種多様な組織に分化することが示されており、治療に有用でありうる(Pittengerら Science (1999) 284:143)。
【0076】
もう1つの好ましい実施形態においては、該ペプチド-カーゴ複合体は、幹細胞集団を増殖させるために使用される。本発明の内在化ペプチドはタンパク質をCD34+造血前駆幹細胞へ運搬する。不死化タンパク質、例えばSV40 T抗原、HPV E6、HPV E7およびテロメラーゼの運搬は、幹細胞集団の一過性増殖を促進しうる。
【0077】
本発明のペプチドを使用する不死化タンパク質の運搬(例えば、後に細胞内で分解される不死化タンパク質の運搬)は一過性かつ可逆性であるため、そのような運搬は、幹細胞状態が維持されうる(すなわち、達成されうる細胞倍加の数が増加する一方で該細胞は一過的に不死化されうる)という利点をもたらす。不死化因子の安定な運搬は、該不死化因子をコードするカーゴ、例えばウイルスベクター、プラスミドまたはDNAの運搬によっても達成されうる。好ましい実施形態においては、このアプローチは、移植用途のために培養内で多種多様な幹細胞を増殖させるために用いられる。
【0078】
もう1つの好ましい実施形態においては、本発明のペプチドは、大抵は限られた数の細胞倍加数を培養内で有する分化細胞、例えばニューロン、軟骨細胞などを増殖させるために使用される。分化細胞の増殖は、不死化因子、好ましくはSV40 T抗原、HPV E6、HPV E7またはテロメラーゼを運搬することにより誘導されうる。
【0079】
多数の抗原提示細胞(例えば、樹状細胞)によりin vivoおよびin vitroの両方で効率的に取り込まれ免疫応答を刺激しうる抗原に連結された本発明のペプチドを含む構築物を提供することも、本発明の目的である。該ペプチドは、ウイルス抗原、例えばアデノ随伴ウイルス(AAV)Repタンパク質、SIV抗原またはHIV抗原、例えばgag、pol、env、HPV-E6、HPV-E7、EBV-LMP1、EBV-LMP2、EBNA1、EBNA3A、EBNA3Cなど、オボアルブミン、分化抗原、例えばMART-1/Melan A、gplOO、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2など、腫瘍特異多系列抗原、例えばMAGE-1、MAGE-3、BAGE、GAGE-1、GAGE-2、pl5など、個体の腫瘍により特有に発現される抗原、例えばp53、CDK4、pl6、p21などのような突然変異遺伝子産物に連結または複合体化されうる。
【0080】
本発明の好ましい実施形態においては、腫瘍に対する免疫応答は、タンパク質-カーゴ複合体の形態でカーゴ、例えばアポトーシス因子に連結された本発明のペプチドを例えばサイトカインおよび/または他の活性化分子と一緒に共投与することにより増強されうる。好ましい実施形態においては、該サイトカインおよび他の活性化分子は本発明のペプチドを介して細胞に投与されうるが、任意の他の通常の投与手段によっても投与されうる。
【0081】
本発明のペプチドの追加的な可能な用途は、特にそれが本発明のペプチド-カーゴ複合体の形態でカーゴに連結されている場合には、接近可能な頭部および頚部の腫瘍、パピローマ(papyloma)および他の固形腫瘍の治療を包含し、ここで、該カーゴはアポトーシス因子を含む。好ましい実施形態においては、本発明のペプチド-カーゴ複合体は、放射線療法、標準的化学療法と組合されたアジュバント療法として作用するように、または切除限界を拡大させるために外科的減量手術に使用される。
【0082】
本発明は更に、培養内での例えばHSVのような欠損ウイルスの増殖の促進に関する。欠損ウイルスの作製は遺伝子治療用途に有用である。欠損ウイルスは、そのような欠損ウイルスによりコードされていない必要な複製タンパク質、例えばICPO、ICP4、ICP22およびICP27の補助が無ければ複製されない。本発明の1つの実施形態においては、欠損ウイルスを細胞に感染させ、該欠損ウイルスの複製に必要なタンパク質に連結された本発明のペプチドを含む1以上の複合体を投与することにより、該複製欠損ウイルスを該細胞内で増殖させる。
【0083】
本発明のもう1つの態様のもう1つの好ましい実施形態においては、キレート剤、例えばテキサフィリンまたはジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)および運搬タンパク質を使用して、カーゴとしての金属を、好ましくは、上皮および内皮組織の1以上の層内に又は該層を越えて輸送する。これらの組合せは、イメージングまたは治療のために金属イオンを運搬するのに有用である。典型的なカーゴには、例えばEu、Lu、Pr、Gd、99mTc、67Ga、111In、90Y、67Cuおよび57Coのような金属イオンが含まれる。好ましい実施形態においては、該金属は運搬タンパク質自体に取り込まれ、またはカーゴとして該タンパク質と組合される。
【0084】
本発明のもう1つの態様の更にもう1つの好ましい実施形態においては、カーゴとしてのホウ素試薬、例えばホウ素中性子捕獲療法において使用されるものが含まれる。好ましい実施形態においては、該ホウ素種は運搬タンパク質自体に取り込まれ、またはカーゴとして該タンパク質と組合される。
【0085】
もう1つの好ましい実施形態においては、カーゴは、レチノイン酸、ヒアルロン酸、コラーゲンおよび遊離ラジカル捕捉剤、特にSODよりなる群から選ばれる抗老化剤である。
【0086】
もう1つの好ましい実施形態においては、カーゴは、潰瘍に使用される治療剤、好ましくは、H2ヒスタミンインヒビター、プロトン-カリウムATPアーゼのインヒビターおよびヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)に対する抗生物質よりなる群から選ばれる治療剤である。
【0087】
もう1つの好ましい実施形態においては、カーゴは、気管支状態、好ましくは、嚢胞性線維症、喘息、アレルギー性鼻炎および慢性閉塞性肺疾患から選ばれる気管支状態を治療するために使用される治療剤である。
【0088】
もう1つの好ましい実施形態においては、カーゴは、虚血、パーキンソン病、統合失調症、癌、後天性免疫不全症候群(エイズ)、中枢神経系の感染症、てんかん、多発性硬化症、神経変性疾患、外傷(トラウマ)、うつ病、アルツハイマー病、片頭痛、疼痛および痙攣障害を治療するために使用される治療剤である。
【0089】
もう1つの好ましい実施形態においては、カーゴは、グルコセレブロシダーゼ欠損症(ゴーシェ病)、ムコ多糖症I型、サンフィリッポ症候群B型、膵臓不全、重篤な複合免疫不全症候群、およびトリオースリン酸イソメラーゼ欠損症に伴う神経筋機能不全を治療するために使用される治療剤である。
【0090】
技術的課題は更に、該ペプチドに連結されたカーゴ分子の細胞内在化(internalisation)のための該ペプチドの使用により、および動物または人体における該ペプチドに連結されたカーゴ分子の細胞内在化のためのキットの製造のための該ペプチドの使用により解決される。
【0091】
技術的課題は更に、標的細胞の核移行のための該ペプチドの使用により、および動物または人体における標的細胞の核移行のためのキットの製造のための該ペプチドの使用により解決される。
【0092】
技術的課題は更に、標的細胞のミトコンドリア内への移行のための該ペプチドの使用により、および動物または人体における標的細胞のミトコンドリア内への移行のためのキットの製造のための該ペプチドの使用により解決される。
【0093】
技術的課題は更に、クローン病、潰瘍性大腸炎、胃腸潰瘍、消化潰瘍疾患、異常増殖疾患、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)による感染、嚢胞性線維症、喘息、アレルギー性鼻炎、慢性閉塞性肺疾患、虚血、パーキンソン病、統合失調症、癌、後天性免疫不全症候群(エイズ)、中枢神経系の感染症、てんかん、多発性硬化症、神経変性疾患、外傷(トラウマ)、うつ病、アルツハイマー病、片頭痛、疼痛および痙攣障害の治療のための該ペプチドの使用により、ならびに動物または人体における該疾患の治療のための組成物、特に医薬組成物または医薬の使用により解決される。
【0094】
技術的課題は更に、
・生物活性物質または治療剤の有効量を含むカーゴ-ペプチド複合体、および
・製薬上許容される担体
を含む医薬組成物の提供により解決される。
【0095】
技術的課題は更に、生物学的バリヤーの表面への又は生物学的バリヤー内への又は生物学的バリヤーを越えるカーゴの運搬方法であって、
a)カーゴおよび本発明の少なくとも1つの運搬ペプチドを準備し、
b)ペプチド-カーゴ複合体を形成させ、
c)該バリヤーを該ペプチド-カーゴ複合体と接触させ、
d)該バリヤーの表面または該バリヤー内または該バリヤーを越えて該カーゴを運搬する工程を含む方法の提供により解決される。
【0096】
好ましい実施形態においては、該バリヤーは無傷上皮または内皮組織層である。好ましくは、該バリヤーは皮膚である。好ましくは、カーゴは、角質層、顆粒層、淡明層および胚芽層の1以上の内部へおよび/またはそれらの層の1以上を越えて運搬される。好ましい実施形態においては、皮膚とペプチド-カーゴ複合体との接触は、該ペプチド-カーゴ複合体を含む組成物を皮膚へ局所的に投与することにより達成され、特に、該カーゴは、毛包(follicular)表皮または毛包間(interfollicular)表皮を含む細胞により取り込まれる。好ましくは、該組成物はクリーム剤、軟膏剤、ロウ膏、ローション剤または経皮パッチである。
【0097】
もう1つの実施形態においては、該バリヤーは胃腸管である。もう1つの好ましい実施形態においては、該バリヤーは肺上皮である。もう1つの好ましい実施形態においては、該バリヤーは内皮血液脳関門である。
【0098】
技術的課題は更に、該ペプチド-カーゴ複合体を滑液細胞に投与することを含む滑液細胞死の誘導方法の提供により、および動物または人体における滑液細胞死を誘導するための組成物の製造のための該ペプチド-カーゴ複合体の使用により解決される。
【0099】
本発明のもう1つの実施形態は、該ペプチド-カーゴ複合体(特にアポトーシスタンパク質を含むもの)を腫瘍細胞に投与することを含む、腫瘍細胞におけるアポトーシスの誘導方法、および動物または人体における腫瘍細胞においてアポトーシスを誘導するための組成物の製造のための該ペプチド-カーゴ複合体(特にアポトーシスタンパク質を含むもの)の使用に関する。
【0100】
本発明のもう1つの実施形態は、該ペプチド-カーゴ複合体を白血球に投与することを含む、関節炎関節における白血球を減少させるための方法、および動物または人体における関節炎関節における白血球を減少させるための組成物の製造のための該ペプチド-カーゴ複合体の使用に関する。
【0101】
本発明のもう1つの実施形態は、ペプチド-カーゴ複合体(特に抗老化剤を含むもの)を皮膚に投与することを含む、皮膚老化の影響を軽減するための方法、および動物または人体における皮膚老化の影響を軽減するための組成物の製造のための該ペプチド-カーゴ複合体(特に抗老化剤を含むもの)の使用に関する。好ましくは、該組成物はクリーム剤、軟膏剤、ロウ膏またはローション剤を構成し又は含む。
【0102】
本発明のもう1つの実施形態は、動物または人体において免疫応答を惹起するための方法であって、該ペプチド-カーゴ複合体を含む免疫原を該体の標的細胞に投与することを含む方法、および動物または人体において免疫応答を惹起するための免疫原の製造のための該ペプチド-カーゴ複合体の使用に関する。
【0103】
本発明の更にもう1つの態様は融合タンパク質に関する。例えば、GST融合タンパク質は、そのような融合タンパク質の発現および精製が容易であるため、種々のタンパク質を調べるための研究に広く使用されている。本発明の1つの実施形態においては、本発明のペプチドは、1以上のGST融合タンパク質を細胞へ運搬するために使用される。本発明のペプチドは、好ましくはグルタチオンに連結されている場合には、標的細胞におけるGST融合タンパク質の運搬を促進する。そのような好ましいグルタチオン-ペプチド構築物は任意のGST融合タンパク質に結合し、細胞内へのGST融合タンパク質の内在化を促進する。
【0104】
本発明のもう1つの実施形態は、機能しうる形で発現制御配列に連結された、リーダー配列、本発明の内在化(internalising)ペプチドおよび所定のタンパク質を含む融合タンパク質をコードする核酸を含む発現カセットである。そのような融合タンパク質は、該リーダー配列または本発明の内在化ペプチドを介して翻訳後細胞間輸送を行いうる。該リーダー配列は、好ましくは、分泌遺伝子産物、例えばインターロイキン1受容体アンタゴニスト(IL-1ra)、副甲状腺ホルモン(PTH)またはカテリン(cathelin)(Huttnerら, Ped. Res. (1999) 45:785)に由来する。好ましくは、該リーダー配列は、移行中に切断または除去される。好ましくは、本発明のペプチドは、該リーダー配列の除去後であっても本発明の発現カセットによりコードされる該融合タンパク質が周囲の細胞内に内在化されることを保証し、それにより、細胞間輸送の効率を向上させる。所定のタンパク質を含むカーゴは、アポトーシスタンパク質、自殺タンパク質、治療用タンパク質などを含みうる。
【0105】
また、単純ヘルペスウイルスのVP22タンパク質は細胞から遊離され、周辺細胞により取り込まれることが示されている。したがって、本発明のもう1つの好ましい実施形態は、VP22のリーダー配列、本発明のペプチドおよびカーゴ、例えばアポトーシスタンパク質、自殺タンパク質、治療用タンパク質などを含む融合構築物に関する。
【0106】
具体的に例示されている発現カセットは、リーダー配列、所定のタンパク質および該運搬ペプチドを含む融合タンパク質をコードするDNAトランスジーンを含む。好ましい実施形態においては、該発現カセットは更に、機能しうる形で該DNAに連結された発現制御配列を含む。好ましい実施形態においては、好ましくは、本発明の発現カセットは、好ましくはin vivoまたはin vitroで細胞に投与されそこでの発現を媒介する導入ベクター内に含有される。リーダー配列、内在化ペプチドおよび所定のタンパク質を含む融合タンパク質をコードするDNA配列を含む発現カセットは、所定のタンパク質の運搬を周囲の細胞へ導くのに有用である。好ましい実施形態においては、所定のタンパク質は、アポトーシスタンパク質、抗アポトーシスタンパク質、細胞周期調節タンパク質、転写因子、自殺遺伝子産物、ウイルスもしくは腫瘍抗原、または細胞増殖因子、例えばウイルス腫瘍性タンパク質、テロメラーゼなどである。
【0107】
本発明のもう1つの実施形態は、発現カセットを含む導入ベクターに関する。好ましいキメラウイルスベクター、特にアデノウイルスベクターは、1以上のトランスジーンをコードするDNA配列を含有することに加えて、好ましくは、発現制御配列、例えばプロモーターまたはエンハンサー、ポリアデニル化要素、および発現をモジュレーションまたは増強するために使用される任意の他の調節要素を含有する。好ましくは、該トランスジーンの発現を可能にするために、すべては、機能しうる形で連結されている。該トランスジーンの発現を促進する任意の発現制御配列または調節要素の使用が本発明の範囲内である。そのような配列または要素は、好ましくは、組織特異的発現をもたらしうるか、または好ましくは外因性の物質または刺激による誘導に対して感受性である。例えば、適当なプロモーターには、例えばホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーターまたはサイトメガロウイルス(CMV)からのプロモーターが含まれる。
【0108】
1つの実施形態においては、リーダー配列、本発明のペプチドおよびカーゴ(好ましくは、所定のタンパク質)を含む融合タンパク質をコードするDNA配列を含む発現カセットを含有するベクターを細胞に投与し、ここで、該発現カセットは、好ましくは、転写および翻訳され、ついで、生じた融合タンパク質は、好ましくは、該リーダー配列により分泌される。それが発現された細胞から分泌した後、本発明の運搬ペプチド、治療用タンパク質または所定の他のタンパク質および場合によっては該リーダー配列を含む融合タンパク質は、好ましくは、本発明の運搬ペプチドを介してin vivoまたはin vitroで周囲の細胞内に内在化される。
【0109】
具体的に例示されている発現カセットは、細胞内のペプチド-カーゴ複合体の持続的運搬に有用である。リーダー配列に連結されたポリペプチドの分泌を導きうるそのような任意のリーダー配列(例えば、IL-1ra、PTHおよび関連配列が含まれるが、これらに限定されるものではない)が本発明に含まれる。
【0110】
本発明はまた、本発明の運搬ペプチドを同定するための方法に関する。細胞内に内在化されうるペプチドは、アフィニティー富化(enrichment)法と組合されたランダムペプチドライブラリーにより同定されうる。好ましくは、細胞内に内在化されうる、そしてまた、細胞内へのカーゴの内在化を促進しうる運搬ペプチドの同定のためには、ファージディスプレイペプチドライブラリーキットが使用される。好ましくは、ランダムペプチドライブラリーは、当技術分野で公知の技術により、特に融合タンパク質またはペプチド-タンパク質複合体としてのタンパク質の一部として、プラスミド上に提示される。運搬ペプチドの同定方法は、優れた内在化能力を有するペプチドの単離を促進し、対象に投与された場合に免疫応答を惹起する確率の減少ならびにin vivoおよび/またはin vitroでの半減期の延長に関して選択されうる多数のペプチドを提供する。該方法は、好ましくは、標的細胞をペプチドディスプレイライブラリーと共にインキュベートし、該ペプチドディスプレイライブラリーにより提示された内在化されたペプチドを細胞質および細胞の核から単離し、該ペプチドを同定することを含む。
【0111】
配列表は以下を含む。
配列番号1〜配列番号39:特に運搬ペプチドとして機能する、本発明の人工オリゴペプチドのアミノ酸配列;配列番号40および配列番号41:対照ペプチド。
【0112】
前記においては及び以下の実施例においては本発明の好ましい実施形態のみが具体的に記載されているが、該実施形態および実施例は、本発明の態様をより明らかに例示するために記載されており、本発明の範囲を限定するものではないと理解されるであろう。本発明の更なる修飾および変更が本発明の範囲内で可能である。
【0113】
図面は以下を示す。
図1は、具体的に例示されているペプチドファミリーの類似性解析を示す。新たに設計したペプチド配列(設計原理に関しては実施例1を参照されたい)を、DNASTAR Megalign(登録商標)(モード:一般的なBlosum表での遅/高精度)を使用して解析した。該ファミリー内では、該配列は構造的に非常に発散している。
【0114】
図2は、具体的に例示されているペプチドファミリーおよび公知ペプチドPTDファミリーの類似性解析を示す。公開されているPTD(WO 91/09958, WO 02/069930)および新たに設計したペプチド配列(実施例1を参照されたい)を、DNASTAR Megalign(登録商標)(モード:一般的なBlosum表での遅/高精度)を使用して解析した。公知ペプチドと比較して、該新規ペプチドファミリーは、異なる群を形成しており、それらのうちの幾つかのメンバーは公知ペプチドに対して僅かな類似性を有する。
【0115】
図3は、クリーム基剤中のhuSOD-ペプチド-OA 05-コンジュゲートの美容効果の評価の棒グラフを示す。示されているのは、異なる処理群の関数としての、改善された皮膚ケアパラメーターの割合(%)である。huSODおよびOA 05の濃度が増加するにつれて、改善も向上する。
【0116】
図4は、種々のPTD-ビオチン-アビジン-FITC-コンジュゲートがBCA細胞に形質導入することを示す。
【0117】
図5は、種々のPTD-ビオチン-アビジン-FITC-コンジュゲートがCHO細胞に形質導入することを示す。
【0118】
図6は、種々のPTD-ビオチン-アビジン-FITC-コンジュゲートがDU145細胞に形質導入することを示す。
【0119】
図7は、種々のPTD-ビオチン-アビジン-FITC-コンジュゲートがHIG-82細胞に形質導入することを示す。
【0120】
図8は、種々のPTD-ビオチン-アビジン-FITC-コンジュゲートがIEC-6細胞に形質導入することを示す。
【実施例1】
【0121】
繊維芽細胞内へのビオチン化ペプチドのin vitro移行
ビオチン化ペプチドは商業的供給業者(Jerini AG, Berlin)により合成された。ビオチンの量は5mgであり、純度は95%より高かった(HPLC, 220 nm, C18およびC4, 直線勾配, 分析: HPLC & MS (対イオン: 塩化物イオン))。
【0122】
以下のペプチドが合成された。
I.公知ペプチド
群1(WO 02/069930から採用した比較実施例)
CE 49 AKKRRQRRR
CE 50 RAKRRQRRR
CE 51 RKARRQRRR
CE 52 RKKARQRRR
群2(WO 01/15511から採用した比較実施例)
PI 01 KRIIQRILSRNS
PI 02 KRIHPRLTRSIR
PI 03 PPRLRKRRQLNM
PI 04 PIRRRKKLRRLK
PI 05 RRQRRTSKLMKR
【0123】
II.本発明のペプチド
一般式I
(I)(K)n A1 B1 C1 (K)m A2 B2 C2 (K)l A3 B3 C3 (K)o
[式中、
Kはリシン(K)であり、
n、m、l、oは0〜5の整数であり、
B1、B2、B3はアルギニン(R)、グルタミン(Q)またはヒスチジン(H)であり、
A1、A2、A3、C1、C2、C3はアルギニン(R)、ヒスチジン(H)であるか又は存在せず、アミノ酸残基の総数は10以下である]
のペプチドが合成された:
KKRKKQKKRK (配列番号1)、RRKKKQKKK (配列番号2)、
KKQKKRRK (配列番号3)、KKQKKRRKK (配列番号4)、
KKKQKRKK (配列番号5)、RQKKQKKKR (配列番号6)、
RKQKKKRKKK (配列番号7)、KRKQKQKKK (配列番号8)、
KKRKQKKQK (配列番号9)、KKKRKKQK (配列番号10)、
RKKKKQKKK (配列番号11)、KKRKKQKK (配列番号12)、
QKKRRKKKQK (配列番号13)、KKRKQKKRK (配列番号14)、
KKRKQKKQKR (配列番号15)、KRKQKQKKKK (配列番号16)、
KKRKRKQKK (配列番号17)、KQKRKKKQK (配列番号18)、
KQKKRQKKKR (配列番号19)、KKKRKQKQKK (配列番号20)、
RKKKQKKQKK (配列番号21)、KKKRQKKQK (配列番号22)、
KKRKKKKKRK (配列番号23)、RRKKKKKK (配列番号24)、
KKKKRRK (配列番号25)、KKKKRRKK (配列番号26)、
KKKKRKK (配列番号27)、KKRKKKKK (配列番号28)、
KKRKKHKKRK (配列番号29)、RRKKKHKKK (配列番号30)、
KKHKKRRK (配列番号31)、KKHKKRRKK (配列番号32)、
KKKHKRKK (配列番号33)、RHKKHKKKR (配列番号34)、
RKHKKKRKKK (配列番号35)、HHKRKKKRK (配列番号36)、
KKRHHKRK (配列番号37)、KKHRKKH (配列番号38)および
KKKQKRK (配列番号39)。
【0124】
したがって、本発明の合成されたペプチドは以下の3つの亜群に分類されうる:(a)配列番号1〜配列番号22および配列番号39:リシン(K)、アルギニン(R)およびグルタミン(Q)よりなるペプチド;(b)配列番号23〜配列番号28:リシン(K)およびアルギニン(R)よりなるペプチド;ならびに(c)配列番号29〜配列番号38:リシン(K)、アルギニン(R)およびヒスチジン(H)よりなるペプチド。
【0125】
本発明のペプチドの亜群(a)の設計のためには、公知タンパク質に対するリシン(K)残基の相対数を増加させ、1個または最大で2個のアルギニン(R)残基の取り込みにより塩基性電荷を得た。
【0126】
本発明のペプチドの亜群(b)の設計のためには、1個または最大で2個のヒスチジン(H)の残基を取り込ませた。得られたペプチドは、低pHで高い塩基性電荷を有する。以下の実施例では、本発明の前記ペプチドからペプチドを選択し、亜群(a)に相当する群3、および本発明のペプチドの亜群(b)に相当する群4に分類した。
【0127】
群3(本発明のもの)
OA 01 KKRKKQKKRK (配列番号1)
OA 02 RRKKKQKKK (配列番号2)
OA 03 KKQKKRRK (配列番号3)
OA 04 KKQKKRRKK (配列番号4)
OA 05 KKKQKRKK (配列番号5)
OA 39 KKKQKRK (配列番号39)
群4(本発明のもの)
OA 34 RHKKHKKKR (配列番号34)
OA 35 RKHKKKRKKK (配列番号35)
OA 36 HHKRKKKRK (配列番号36)
OA 37 KKRHHKRK (配列番号37)
OA 38 KKHRKKH (配列番号38)
【0128】
リン酸緩衝食塩水(PBS)に溶解された、アミノ末端に共有結合したビオチンを含有する、種々の濃度(0.1mmol/l〜1mol/lの最終濃度)の各ペプチドを、フラスコスライド(Nunc)内のコンフルエント付着NIH/3T3繊維芽細胞培養に適用した。該細胞培養を該ペプチドと共に30分間インキュベートした。細胞をホルムアルデヒド(1×PBS中の2% ホルムアルデヒド、0.2% グルタルアルデヒド)で固定し、0.5mmol/l EDTA中の0.05% トリプシンで細胞溶解した。該スライドを、蛍光標識ストレプトアビジンと共にインキュベートすることにより染色し、蛍光顕微鏡検査により分析した。
【0129】
結果
該細胞は各被検ペプチドを取り込んだ。ペプチド濃度の増加は蛍光標識(標識細胞の割合(%)により測定される)の増加を招く。種々のペプチドの取り込み(標識細胞の割合(%)により測定される)における有意差は全く認められなかった。これは、該ペプチドがin vitroで該コンジュゲート化ビオチンをマウス繊維芽細胞内へ運搬しうることを示している。
【実施例2】
【0130】
繊維芽細胞内へのビオチン化ペプチドのin vitro移行はpHに左右される
TRIS緩衝食塩水(pH 6.0、7.0または8.0のいずれか)に溶解された、アミノ末端に共有結合したビオチンを含有する群3および群4(実施例1を参照されたい)からの種々の濃度の(0.1mmol/l〜1mol/lの最終濃度)の各ペプチドを、フラスコスライド(Nunc)内のコンフルエント付着NIH/3T3繊維芽細胞培養に適用した。該細胞培養を該ペプチドと共に30分間インキュベートした。細胞をホルムアルデヒド(1×PBS中の2% ホルムアルデヒド、0.2% グルタルアルデヒド)で固定し、0.5mmol/l EDTA中の0.05% トリプシンで細胞溶解した。該スライドを、蛍光標識ストレプトアビジンと共にインキュベートすることにより染色し、蛍光顕微鏡検査により分析した。
【0131】
結果
pH 6.0においては、該細胞は各被検ペプチドを取り込んだ。pH 7.0および8.0においては、群4ペプチドの取り込み(標識細胞の割合(%)により測定される)は、群3ペプチドの取り込みと比べて減少した。これは、マウス繊維芽細胞内へのペプチドによるコンジュゲート化ビオチンのin vitro運搬がpHに左右されること、および低pHでの移行にはヒスチジンのみが関与することを示している。
【実施例3】
【0132】
ペプチド-酵素複合体の比活性
ジスルフィド架橋を用いて、実施例1の全ペプチドをLacZの種々のエピトープおよびGFPのエピトープに結合させた。結合および精製の後、ペプチド-酵素複合体の比生物活性を測定した。β-Galアッセイまたは染色キット(Invitorogen)を用いて、LacZ活性を測定した。全タンパク質含量に基づいて(Bradford, Biorad)、または細胞数に基づいて、比活性を測定した。検出エピトープ(GFP-抗血清, Invitorogen)を全GFP量と関連づけることにより、立体障害を推定した。
【0133】
結果
該エピトープのマスキングは該ペプチド群間で有意には異ならなかった。群1または群2のペプチドに結合した酵素の比活性は有意に減少した。しかし、群3または群4のペプチドに結合した酵素の比活性は有意には減少しなかった。これは、タンパク質に結合したペプチドの、これらのタンパク質の生物学的比活性に対する効果が、該結合ペプチドの配列に左右されることを示している。
【実施例4】
【0134】
ペプチドの比活性− huSOD複合体
ジスルフィド架橋を用いて、実施例1の全ペプチドをhuSOD(Jena Biosciences)の種々のエピトープに結合させた。結合および精製の後、スーパーオキシドジムスターゼアッセイキット(Calbiochem)を用い、かつ全タンパク質含量(Bradford, Biorad)に基づいてペプチド-酵素複合体の比生物活性を測定した。検出エピトープ(抗-SOD, abcam)を全SOD量と関連づけることにより、立体障害を推定した。
【0135】
結果
該エピトープのマスキングは該ペプチド群間で有意には異ならなかった。群1または群2のペプチドに結合したhuSODの比活性は有意に減少した。しかし、群3または群4のペプチドに結合した酵素の比活性は有意には減少しなかった。これは、タンパク質に結合したペプチドの、これらのタンパク質の生物学的比活性に対する効果が、該結合ペプチドの配列に左右されることを示している。
【実施例5】
【0136】
ヌードマウスの皮膚内へのペプチドの浸透
リン酸緩衝食塩水(PBS)に溶解された、アミノ末端に共有結合したビオチンを含有する種々の濃度の(0.1mmol/l〜1mol/l)のペプチドCE 49、PI 05、OA 01、OA 05およびOA 34を、麻酔したヌードマウスの背部に適用した。サンプルを30分間浸透させた。ついで該動物を犠死させ、皮膚の関連切片を切り出し、マウント媒体内に包埋し、凍結した。凍結切片(5ミクロン)を蛍光標識ストレプトアビジンで染色した。スライドを蛍光顕微鏡検査により分析した。
【0137】
結果
該コンジュゲート化ビオチンは、すべてのペプチドにより、表皮内に、および表皮を越えて、および真皮内に輸送された。移行における有意差は全く認めることができなかった。これは、該ペプチドがコンジュゲート化ビオチンを皮膚へ運搬しうることを示している。
【実施例6】
【0138】
ヌードマウスの皮膚内へのhuSODの浸透
この実施例は、ペプチドがコンジュゲート化huSODを皮膚内へ運搬しうること、およびhuSODの活性が該ペプチドの配列に左右されることを示す。染色細胞数により測定した、群1または群2のペプチドに結合したhuSODの比活性は、群3または群4のペプチドに結合したhuSODの活性と比べて有意に異なっていた。
【0139】
リン酸緩衝食塩水(PBS)に溶解された、アミノ末端に共有結合したhuSODを含有する1mmol/l〜1mol/lの種々の濃度のペプチドCE 49、PI 05、OA 01、OA 05およびOA 34を、麻酔したヌードマウスの背部に適用した。サンプルを30分間浸透させた。ついで該動物を犠死させ、皮膚の関連切片を切り出し、マウント媒体内に包埋し、凍結した。固定切片(5ミクロン)を蛍光標識抗huSOD抗体(abcam)で染色するか、またはin situ SODアッセイ(Calbiochem)を行った。スライドを顕微鏡検査により分析した。
【0140】
結果
該コンジュゲート化huSODは、すべてのペプチドにより、表皮内に、および表皮を越えて、および真皮内に輸送された。群1および群2のタンパク質にコンジュゲート化されたhuSODでは、抗hu-SOD抗体での染色後、移行における有意差は全く認めることができなかった。これとは対照的に、群3および群4のタンパク質にコンジュゲート化されたhuSODは、抗huSOD抗体での染色の有意な増強が観察されたため、表皮内に、および表皮を越えて、および真皮内に、かなり高い速度で輸送された。
【実施例7】
【0141】
ペプチドモチーフの類似性解析
公開されているPTD(WO 91/09958またはWO 02/069930を参照されたい)、および新たに設計した配列(実施例1を参照されたい)を有する運搬ペプチドを、DNASTAR Megalign(登録商標)(モード:一般的なBlosum表での遅/高精度)を使用して解析した。
【0142】
結果
該解析(図1および図2)は、具体的に例示されているペプチドがPTDの新規構造ファミリーに相当することを示している。
【実施例8】
【0143】
皮膚老化に対する皮膚ケアのためのクリーム剤での臨床研究
以下の成分を含有するクリーム基剤を使用した。
【0144】
物質: 量 [g]
酢酸トコフェロール 10.0
キンセンカ属のエッセンス 10.0
レシチン 5.0
DMS (乳化剤) 2.0
グリセリン 10.0
シア脂 30.0
Cordesクリーム基剤 10.0
蒸留水 100.0に調節
【0145】
huSOD-ペプチドOA 05コンジュゲートを実施例4に記載のとおりに製造した。
【0146】
臨床研究で使用するために、皮膚クリーム(スキンクリーム)剤の以下の組成物を製造した。
【0147】
群I (対照): SODを含有しないクリーム基剤
(n= 20)
群II (対照): 皮膚クリーム剤1g当たり2μg SODを含有するクリーム基剤 (n= 20)
群III
(本発明): 皮膚クリーム剤1g当たり2μg SOD
+ ペプチドOA 05を含有するクリーム基剤 (n= 22)
群IV
(本発明): 皮膚クリーム剤1g当たり
クリーム基剤 + 20μg SOD
+ ペプチド OA 05 (n= 15)
群V
(本発明): 皮膚クリーム剤1g当たり
クリーム基剤 + 50μg SOD
+ ペプチドOA 05 (n= 10)
【0148】
美容評価特性は、「完全に同意」、「同意」から「同意せず」までの範囲の評価スコアおよびもう1つの範疇「意見無し」で、前向き自己評価標準化評価用紙で評価された。該特性は以下の基準に従い評価された:「皮膚の引き締まり」、「浅い皺の減少」、「より深い皺の減少」、「皮膚再生」および「皮膚が若く見える」。該皮膚クリーム剤の使用開始の少なくとも4週間後に、該質問表への記入が行われた。
【0149】
皮膚クリーム剤の適用は、1日2回、6週間にわたって、すべての群(I〜V)において行われ、他の皮膚用製品を使用することなく午前中および夜に顔面および頚部に該クリーム剤が塗布された。いずれの群においても、適用は中断されなかった。観察期間(最初の適用から数える)は最短で4週間、最長で10週間であった。
【0150】
さらに、1(優秀)から6(非常に劣る)までの範囲のスコアでの種々の適用皮膚クリーム剤の総合評価を行った。
【0151】
結果
全87名の参加者が、副作用、美容特性、皺の減少などに関する標準化スコアに向けられた質問に回答した。
【0152】
表1は、処理様式と関連づけた場合の種々の美容評価特性を列挙する。
【表1】

【0153】
表2は、ヒトにおける種々の適用皮膚クリーム剤の1(優秀)から6(非常に劣る)までの総合評価スコアの結果を列挙する。スコア5および6は、いずれの群においても割当てられなかった。実験群(huSOD + OA 05)と対照との間で評価に大きな差があることに注目されたい。
【表2】

【0154】
副作用は観察されなかった。1つの場合(群IV)には、アレルギーが疑われたが、同じ製品を続けた後、さらなるアレルギー反応は観察されなかった。3ヶ月にわたる追跡は再発を示さなかった。
【0155】
ペプチド-コンジュゲートの添加を伴わないSODと基剤皮膚クリームとの比較は、SOD自体がヒトの皮膚における種々の老化パラメーターに有益な効果をもたらすことを示している。一方、ペプチドOA 05のコンジュゲート化はSODの有益な効果を有意に増強する。SODとOA 05とのペプチド-カーゴ分子複合体においては、カーゴ分子SODの比生物活性は、結合している運搬ペプチドOA 05によっては阻害されない。
【0156】
この実施例は、huSOD、治療用物質およびOA 05(群3のペプチド)の適用がヒトにおいて抗老化および皮膚ケア剤として有効であることを示している。
【実施例9】
【0157】
種々のPTDの形質導入効率の比較
タンパク質形質導入ドメイン(protein transduction domain)(PTD)として公知の一群の陽イオン性ペプチドの形質導入効率を試験するために、6種のペプチドを合成しビオチン化した。No.1〜4は試験ペプチドであり、8Kは陽性対照であり、Con-Pは、陰性対照として働くランダムペプチドであった。該ペプチド配列を以下に列挙する。
【0158】
No.1 KKRKKQKK (配列番号12)
No.2 KKKKRRK (配列番号25)
No.3 KKKQKRK (配列番号39)
No.4 KKKKRRKK (配列番号26)
8K KKKKKKKK (配列番号40)
Con-P ARPLEHGSDKAT (配列番号41)
【0159】
該ビオチン化ペプチドをTBSに200μmol/lとなるよう溶解し、該ペプチドをFITC標識アビジン(Sigma)に25℃で2時間コンジュゲート化した。該コンジュゲートの系列希釈を、5つの異なる細胞源、すなわち、ウシ初代軟骨細胞(BCA)、チャイニーズハムスター卵巣細胞系(CHO)、前立腺癌細胞系(DU 145)、マウス腸細胞系(IEC-6)およびウサギ滑液細胞系(HIG-82)に加え、37℃で3時間インキュベートした。該順化細胞をTBSで十分に洗浄し、解析のためにイメージを得た。
【0160】
図4〜8が明らかに示しているとおり、本発明の4種のペプチドは被検細胞型のすべてにおいて有意な形質導入効率を示している。
【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1】図1は、具体的に例示されているペプチドファミリーの類似性解析を示す。新たに設計したペプチド配列(設計原理に関しては実施例1を参照されたい)を、DNASTAR Megalign(登録商標)(モード:一般的なBlosum表での遅/高精度)を使用して解析した。該ファミリー内では、該配列は構造的に非常に発散している。
【図2】図2は、具体的に例示されているペプチドファミリーおよび公知ペプチドPTDファミリーの類似性解析を示す。公開されているPTD(WO 91/09958, WO 02/069930)および新たに設計したペプチド配列(実施例1を参照されたい)を、DNASTAR Megalign(登録商標)(モード:一般的なBlosum表での遅/高精度)を使用して解析した。公知ペプチドと比較して、該新規ペプチドファミリーは、異なる群を形成しており、それらのうちの幾つかのメンバーは公知ペプチドに対して僅かな類似性を有する。
【図3】図3は、クリーム基剤中のhuSOD-ペプチド-OA 05-コンジュゲートの美容効果の評価の棒グラフを示す。示されているのは、異なる処理群の関数としての、改善された皮膚ケアパラメーターの割合(%)である。huSODおよびOA 05の濃度が増加するにつれて、改善も向上する。
【図4】図4は、種々のPTD-ビオチン-アビジン-FITC-コンジュゲートがBCA細胞に形質導入することを示す。
【図5】図5は、種々のPTD-ビオチン-アビジン-FITC-コンジュゲートがCHO細胞に形質導入することを示す。
【図6】図6は、種々のPTD-ビオチン-アビジン-FITC-コンジュゲートがDU145細胞に形質導入することを示す。
【図7】図7は、種々のPTD-ビオチン-アビジン-FITC-コンジュゲートがHIG-82細胞に形質導入することを示す。
【図8】図8は、種々のPTD-ビオチン-アビジン-FITC-コンジュゲートがIEC-6細胞に形質導入することを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
(I)(K)n A1 B1 C1 (K)m A2 B2 C2 (K)l A3 B3 C3 (K)o
[式中、
Kはリシン(K)であり、
B1、B2、B3はアルギニン(R)、グルタミン(Q)またはヒスチジン(H)であり、
A1、A2、A3、C1、C2、C3はアルギニン(R)、ヒスチジン(H)であるか又は存在せず、
n、m、l、oは0〜5の整数であり、
アミノ酸残基の総数は10以下である]
のアミノ酸配列を含んでなる運搬ペプチド。
【請求項2】
KKRKKQKKRK (配列番号1)、RRKKKQKKK (配列番号2)、
KKQKKRRK (配列番号3)、KKQKKRRKK (配列番号4)、
KKKQKRKK (配列番号5)、RQKKQKKKR (配列番号6)、
RKQKKKRKKK (配列番号7)、KRKQKQKKK (配列番号8)、
KKRKQKKQK (配列番号9)、KKKRKKQK (配列番号10)、
RKKKKQKKK (配列番号11)、KKRKKQKK (配列番号12)、
QKKRRKKKQK (配列番号13)、KKRKQKKRK (配列番号14)、
KKRKQKKQKR (配列番号15)、KRKQKQKKKK (配列番号16)、
KKRKRKQKK (配列番号17)、KQKRKKKQK (配列番号18)、
KQKKRQKKKR (配列番号19)、KKKRKQKQKK (配列番号20)、
RKKKQKKQKK (配列番号21)、KKKRQKKQK (配列番号22)、
KKRKKKKKRK (配列番号23)、RRKKKKKK (配列番号24)、
KKKKRRK (配列番号25)、KKKKRRKK (配列番号26)、
KKKKRKK (配列番号27)、KKRKKKKK (配列番号28)、
KKRKKHKKRK (配列番号29)、RRKKKHKKK (配列番号30)、
KKHKKRRK (配列番号31)、KKHKKRRKK (配列番号32)、
KKKHKRKK (配列番号33)、RHKKHKKKR (配列番号34)、
RKHKKKRKKK (配列番号35)、HHKRKKKRK (配列番号36)、
KKRHHKRK (配列番号37)、KKHRKKH (配列番号38)および
KKKQKRK (配列番号39)
よりなる群から選ばれるアミノ酸配列を含む、請求項1記載のペプチド。
【請求項3】
ヒスチジン(H)、リシン(K)、グルタミン(Q)およびアルギニン(R)から選ばれるアミノ酸よりなる、請求項1記載のペプチド。
【請求項4】
リーダー配列、所定のタンパク質および請求項1記載の運搬ペプチドを含む融合タンパク質をコードするDNAトランスジーンを含んでなる発現カセット。
【請求項5】
機能しうる形で該DNAに連結された発現制御配列を更に含む、請求項4記載の発現カセット。
【請求項6】
請求項4記載の発現カセットを含んでなる導入ベクター。
【請求項7】
請求項1記載の運搬ペプチドと少なくとも1つのカーゴ(cargo)分子とを含んでなるペプチド-カーゴ複合体。
【請求項8】
運搬ペプチドが少なくとも1つのカーゴ分子の外表面に選択的に連結されている、請求項7記載のペプチド-カーゴ複合体。
【請求項9】
連結が、切断可能なリンカーにより形成されている、請求項8記載のペプチド-カーゴ複合体。
【請求項10】
連結がジスルフィド結合を含む、請求項8記載のペプチド-カーゴ複合体。
【請求項11】
連結がストレプトアビジン-ビオチン複合体を含む、請求項8記載のペプチド-カーゴ複合体。
【請求項12】
運搬ペプチドがビオチン化されており、該カーゴ分子がアビジンで標識されている、請求項7記載のペプチド-カーゴ複合体。
【請求項13】
カーゴが、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、タンパク質、小有機分子、金属、ウイルス、修飾ウイルス、ウイルスベクターおよびプラスミドよりなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を含む、請求項7記載のペプチド-カーゴ複合体。
【請求項14】
カーゴが、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、単純ヘルペスウイルス(simplex virus)およびレトロウイルスよりなる群から選ばれる、請求項7記載のペプチド-カーゴ複合体。
【請求項15】
カーゴが、治療用タンパク質、自殺タンパク質、腫瘍抑制タンパク質、転写因子、キナーゼインヒビター、キナーゼ、調節タンパク質、アポトーシスタンパク質、抗アポトーシスタンパク質、ウイルス抗原、細胞抗原、分化因子、不死化因子、毒素、酵素、核酸、アンチセンス構築物、診断用イメージングまたは造影剤、色素、抗細菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗増殖剤、静細胞剤、免疫抑制剤、ビタミン、鎮痛剤、ホルモン、抗炎症剤および抗老化剤よりなる群から選ばれる、請求項7記載のペプチド-カーゴ複合体。
【請求項16】
カーゴが、アシクロビル(aciclovir)、ファンシクロビル(famciclovir)、ガンシクロビル(ganciclovir)、フォスカルネット(foscarnet)、イドクスウリジン(idoxuridine)、ソリブジン(sorivudine)、トリフルリジン(trifluridine)(トリフルオロピリジン)、バラシクロビル(valacyclovir)、シドフォビル(cidofovir)、ジダノシン(didanosine)、スタブジン(stavudine)、ザルシタビン(zalcitabine)、ジドブジン(zidovudine)、リバビリン(ribavirin)およびリマンタチン(rimantatine)よりなる群から選ばれる抗ウイルス剤である、請求項7記載のペプチド-カーゴ複合体。
【請求項17】
カーゴが、ナフシリン(nafcillin)、オキサシリン(oxacillin)、ペニシリン(penicillin)、アモキサシリン(amoxacillin)、アンピシリン(ampicillin)、セファロスポリン(cephalosporine)、セフォタキシム(cefotaxime)、セフトリアキソン(ceftriaxone)、リファンピン(rifampin)、ミノサイクリン(minocycline)、シプロフロキサシン(ciprofloxacin)、ノルフロキサシン(norfloxacin)、エリスロマイシン(erythromycin)、テトラサイクリン(tetracycline)、ゲンタマイシン(gentamicin)、マクロライド、キノロン、β-ラクトン、P-ラクタマーゼインヒビター、サリシルアミドおよびバンコマイシン(vancomycin)よりなる群から選ばれる抗細菌剤である、請求項7記載のペプチド-カーゴ複合体。
【請求項18】
カーゴが、アンホテリシン(amphotericin)、イトラコナゾール(itraconazole)、ケトコナゾール(ketoconazole)、ミコナゾール(miconazole)、ナイスタチン(nystatin)、クロトリマゾール(clotrimazole)、フルコナゾール(fluconazole)、シクロピロックス(ciclopirox)、エコナゾール(econazole)、ナフチフィン(naftifine)、テルビナフィン(terbinafine)およびグリセオフルビン(griseofulvin)よりなる群から選ばれる抗真菌剤である、請求項7記載のペプチド-カーゴ複合体。
【請求項19】
カーゴが、ペントスタチン(pentostatin)、ペンタミジン(pentamidine)、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、メトトレキセート(methotrexate)、ブレオマイシン(bleomycin)、エトポシド(etoposide)、テニポシド(teniposide)、ダクチノマイシン(dactinomycin)、ダウノルビシン(daunorubicin)、ドキソルビシン(doxorubicin)、ミトキサントロン(mitoxantrone)、ヒドロキシウレア(hydroxyurea)、5-フルオロウラシル(5-fluorouracil)、シタラビン(cytarabine)、フルダラビン(fludarabine)、マイトマイシン(mitomycin)、シスプラチン(cisplatin)、プロカルバジン(procarbazine)、ダカルバジン(dacarbazine)、パクリタキセル(paclitaxel)、コルヒシン(colchicine)およびビンカアルカロイドよりなる群から選ばれる抗腫瘍剤である、請求項7記載のペプチド-カーゴ複合体。
【請求項20】
カーゴが、メトトレキセート(methotrexate)、アザチオプリン(azathioprine)、フルオロウラシル(fluorouracil)、ヒドロキシウレア(hydroxyurea)、6-チオグアニン、シクロホスファミド(cyclophosphamide)、メクロロエタミン塩酸(mechloroethamine hydrochloride)、カルムスチン(carmustine)、シクロスポリン(cyclosporine)、タキソール(taxol)、タクロリムス(tacrolimus)、ビンブラスチン(vinblastine)、ダプソン(dapsone)、ネドクロミル(nedocromil)、クロモリン(cromolyn)(クロモグリク酸)およびスルファサラジン(sulfasalazine)よりなる群から選ばれる免疫抑制剤である、請求項7記載のペプチド-カーゴ複合体。
【請求項21】
カーゴが、リドカイン(lidocaine)、ブピバカイン(bupivacaine)、ノボカイン(novocaine)、プロカイン(procaine)、テトラカイン(tetracaine)、ベンゾカイン(benzocaine)、コカイン(cocaine)、メピバカイン(mepivacaine)、エチドカイン(etidocaine)、プロパラカイン(proparacaine)、ロピバカイン(ropivacaine)およびプリロカイン(prilocaine)よりなる群から選ばれる鎮痛剤である、請求項7記載のペプチド-カーゴ複合体。
【請求項22】
カーゴが、組織ホルモン、特にプロスタグランジン、セロトニン、ヒスタミン、ブラジキニン、カリクレインおよび胃腸ホルモン、放出ホルモン、下垂体ホルモン、インスリン、バソプレッシン(ADH)、グルカゴン、エンケファリン、カルシトニンおよびコルチコステロイドよりなる群から選ばれるホルモンである、請求項7記載のペプチド-カーゴ複合体。
【請求項23】
カーゴが、2-メチルヒスタミン、2-ピリジルエチルアミン、2-チアゾリルエチルアミン、(R)-a-メチルヒスタミン、インプロミジン(impromidine)、ジマプリット(dimaprit)、4(5)-メチルヒスタミン、ジフェンヒドラミン(diphenhydramine)、ピリラミン(pyrilamine)、プロメタジン(promethazine)、クロルフェニラミン(chlorpheniramine)、クロルシクリジン(chlorcyclizine)およびテルフェナジン(terfenadine)から選ばれるヒスタミン受容体アゴニストまたはアンタゴニストである、請求項7記載のペプチド-カーゴ複合体。
【請求項24】
カーゴが、IL-1Ra、STNF-R(p55)、STNF-R(p75)、SIL-1R I型、SIL-1R II型、BMP-2、BMP-6、BMP-7、LMP-1、LMP-3、IGF-1、TGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、IL-4、IL-10、CTLA4、CD30、TIMP-1、IFN-β、Sox-9およびPDGFよりなる群から選ばれるサイトカインまたは増殖因子である、請求項7記載のペプチド-カーゴ複合体。
【請求項25】
カーゴが、レチノイン酸、ヒアルロン酸、コラーゲンおよび遊離ラジカル捕捉剤、特にSODよりなる群から選ばれる抗老化剤である、請求項7記載のペプチド-カーゴ複合体。
【請求項26】
カーゴが、クローン病、潰瘍性大腸炎、胃腸潰瘍、消化潰瘍疾患および異常増殖疾患よりなる群から選ばれる状態に対する治療剤である、請求項7記載のペプチド-カーゴ複合体。
【請求項27】
カーゴが潰瘍に対する治療剤であり、H2ヒスタミンインヒビター、プロトン-カリウムATPアーゼのインヒビターおよびヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)に対する抗生物質よりなる群から選ばれる、請求項7記載のペプチド-カーゴ複合体。
【請求項28】
カーゴが、嚢胞性線維症、喘息、アレルギー性鼻炎および慢性閉塞性肺疾患から選ばれる気管支状態を治療するための治療剤である、請求項7記載のペプチド-カーゴ複合体。
【請求項29】
カーゴが、虚血、パーキンソン病、統合失調症、癌、後天性免疫不全症候群(エイズ)、中枢神経系の感染症、てんかん、多発性硬化症、神経変性疾患、トラウマ、うつ病、アルツハイマー病、片頭痛、疼痛および痙攣障害を治療するための治療剤である、請求項7記載のペプチド-カーゴ複合体。
【請求項30】
カーゴが、炎症および変性関節および脊椎疾患、関節炎、特に変形性関節症、腰痛、骨修復、骨折治癒、筋肉および靱帯損傷の治療よりなる群から選ばれる状態に対する治療剤である、請求項7記載のペプチド-カーゴ複合体。
【請求項31】
請求項1記載のペプチドの、それに連結されたカーゴ分子の細胞内在化(internalisation)のための使用。
【請求項32】
動物または人体における、請求項1記載のペプチドの、それに連結されたカーゴ分子の細胞内在化のためのキットの製造のための使用。
【請求項33】
標的細胞の核移行のための、請求項1記載のペプチドの使用。
【請求項34】
動物または人体における標的細胞の核移行のためのキットの製造のための、請求項1記載のペプチドの使用。
【請求項35】
標的細胞のミトコンドリア内への移行のための、請求項1記載のペプチドの使用。
【請求項36】
動物または人体における標的細胞のミトコンドリア内への移行のためのキットの製造のための、請求項1記載のペプチドの使用。
【請求項37】
クローン病、潰瘍性大腸炎、胃腸潰瘍、消化潰瘍疾患、異常増殖疾患、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)による感染、嚢胞性線維症、喘息、アレルギー性鼻炎、慢性閉塞性肺疾患、虚血、パーキンソン病、統合失調症、癌、後天性免疫不全症候群(エイズ)、中枢神経系の感染症、てんかん、多発性硬化症、神経変性疾患、トラウマ、うつ病、アルツハイマー病、片頭痛、疼痛および痙攣障害の治療のための、請求項1記載のペプチドの使用。
【請求項38】
動物および人体におけるクローン病、潰瘍性大腸炎、胃腸潰瘍、消化潰瘍疾患、異常増殖疾患、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)による感染、嚢胞性線維症、喘息、アレルギー性鼻炎、慢性閉塞性肺疾患、虚血、パーキンソン病、統合失調症、癌、後天性免疫不全症候群(エイズ)、中枢神経系の感染症、てんかん、多発性硬化症、神経変性疾患、トラウマ、うつ病、アルツハイマー病、片頭痛、疼痛および痙攣障害の治療のための組成物の製造のための、請求項1記載のペプチドの使用。
【請求項39】
グルコセレブロシダーゼ欠損症(ゴーシェ病)、ムコ多糖症I型、サンフィリッポ症候群B型、膵臓不全、重篤な複合免疫不全症候群、およびトリオースリン酸イソメラーゼ欠損症に伴う神経筋機能不全の治療のための、請求項1記載のペプチドの使用。
【請求項40】
動物または人体におけるグルコセレブロシダーゼ欠損症(ゴーシェ病)、ムコ多糖症I型、サンフィリッポ症候群B型、膵臓不全、重篤な複合免疫不全症候群、およびトリオースリン酸イソメラーゼ欠損症に伴う神経筋機能不全の治療のための組成物の製造のための、請求項1記載のペプチドの使用。
【請求項41】
炎症および変性関節および脊椎疾患、関節炎、特に変形性関節症、腰痛、骨修復、骨折治癒、筋肉および靱帯損傷の治療のための、請求項1記載のペプチドの使用。
【請求項42】
動物および人体における炎症および変性関節および脊椎疾患、関節炎、特に変形性関節症、腰痛、骨修復、骨折治癒、筋肉および靱帯損傷の治療のための組成物の製造のための、請求項1記載のペプチドの使用。
【請求項43】
生物活性物質または治療剤の有効量を含む請求項7記載のカーゴ-ペプチド複合体と製薬上許容される担体とを含んでなる医薬組成物。
【請求項44】
生物学的バリヤーの表面への又は生物学的バリヤー内への又は生物学的バリヤーを越えるカーゴの運搬方法であって、
a)カーゴおよび請求項1記載の少なくとも1つの運搬ペプチドを準備し、
b)ペプチド-カーゴ複合体を形成させ、
c)該バリヤーを該ペプチド-カーゴ複合体と接触させ、
d)該バリヤーの表面へ又は該バリヤー内へ又は該バリヤーを越えて該カーゴを運搬することを含んでなる方法。
【請求項45】
該バリヤーが無傷上皮または内皮組織層である、請求項44記載の方法。
【請求項46】
該バリヤーが皮膚である、請求項44記載の方法。
【請求項47】
カーゴが、角質層、顆粒層、淡明層および胚芽層の1以上の内部へおよび/またはそれらの層の1以上を越えて運搬される、請求項46記載の方法。
【請求項48】
皮膚と該ペプチド-カーゴ複合体との接触が、該ペプチド-カーゴ複合体を含む組成物を皮膚へ局所的に投与することにより達成され、特に、該カーゴが、毛包(follicular)表皮または毛包間(interfollicular)表皮を含む細胞により取り込まれる、請求項46記載の方法。
【請求項49】
該組成物がクリーム剤、軟膏剤、ロウ膏、ローション剤または経皮パッチである、請求項48記載の方法。
【請求項50】
該バリヤーが胃腸管である、請求項44記載の方法。
【請求項51】
該バリヤーが肺上皮である、請求項44記載の方法。
【請求項52】
該バリヤーが内皮血液脳関門である、請求項44記載の方法。
【請求項53】
請求項7記載のペプチド-カーゴ複合体を滑液細胞に投与することを含んでなる、滑液細胞死の誘導方法。
【請求項54】
動物または人体における滑液細胞死を誘導するための組成物の製造のための、請求項7記載のペプチド-カーゴ複合体の使用。
【請求項55】
請求項7記載のペプチド-カーゴ複合体、特に、アポトーシスタンパク質を含む請求項7記載のペプチド-カーゴ複合体を腫瘍細胞に投与することを含んでなる、腫瘍細胞におけるアポトーシスの誘導方法。
【請求項56】
動物または人体における腫瘍細胞においてアポトーシスを誘導するための組成物の製造のための請求項7記載のペプチド-カーゴ複合体、特に、アポトーシスタンパク質を含む請求項7記載のペプチド-カーゴ複合体の使用。
【請求項57】
請求項7記載のペプチド-カーゴ複合体を白血球に投与することを含んでなる、関節炎関節における白血球を減少させるための方法。
【請求項58】
動物または人体における関節炎関節における白血球を減少させるための組成物の製造のための、請求項7記載のペプチド-カーゴ複合体の使用。
【請求項59】
請求項7記載のペプチド-カーゴ複合体、特に、抗老化剤を含む請求項7記載のペプチド-カーゴ複合体を皮膚に投与することを含んでなる、皮膚老化の影響を軽減するための方法。
【請求項60】
動物または人体における皮膚老化の影響を軽減するための組成物の製造のための、請求項7記載のペプチド-カーゴ複合体、特に、抗老化剤を含む請求項7記載のペプチド-カーゴ複合体の使用。
【請求項61】
該組成物がクリーム剤、軟膏剤、ロウ膏またはローション剤を構成する、請求項60記載の使用。
【請求項62】
動物または人体において免疫応答を惹起するための方法であって、請求項7記載のペプチド-カーゴ複合体を含む免疫原を該体の標的細胞に投与することを含んでなる方法。
【請求項63】
動物または人体において免疫応答を惹起するための免疫原の製造のための、請求項7記載のペプチド-カーゴ複合体の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−535908(P2007−535908A)
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−540352(P2006−540352)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【国際出願番号】PCT/EP2004/013203
【国際公開番号】WO2005/054279
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(500069334)オルソゲン アーゲー (3)
【Fターム(参考)】