説明

運搬用スタッキングカート

【課題】非使用時や空移動の際には複数個を上下に積み重ねた状態で効率よく保管し又は移動できる運搬用スタッキングカートを提供する。
【解決手段】四隅の下部に移動用キャスター4が取り付けられた平面視が四角形のベース枠1と、平面視がベース枠1よりも小さい四角形で四隅に積載物品の四隅底部を受け持つリブ付きの荷受けコーナ枠5を備えた上部枠2と、ベース枠1に対して上部枠2をほぼ水平に床上一定の高さに支持した支持部材3とで構成されている。上部枠2とベース枠1は平面視において共通の中心を持つ相似形状に配置されている。上部枠2の外形寸法はベース枠1の四隅に位置する各移動用キャスター4…が下位カートの上部枠2よりも外側へはみ出てスタッキングされる大きさに形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主に食品工場などにおいて、各種の食材や弁当、お茶類などを詰めたコンテナ容器などを運搬するために使用されるカート、特に非使用時や空移動の際には複数個を上下に積み重ねた(スタッキングした)状態で効率よく保管し又は移動できる運搬用スタッキングカートの技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品工場などにおいて、各種の食材や弁当、お茶類などを詰めたコンテナ容器などを運搬するカートとしては、例えば下記の特許文献1および2に開示されたように、四周に低い周側壁を立ち上げた浅い箱形台枠の四隅下部に移動用キャスターを取り付けた低床型のカートが一般的に使用されている。これらのカートは非使用時や空移動の際には複数個を積み重ねたスタッキング状態で効率よく保管し又は移動できる構成であり、例えば特許文献1の台枠の上面にはキャスターを固定するスタッキング用溝が設けられている。
また、特許文献3には、移動用キャスター付きのざる置き台であって、非使用時や空移動の際には複数個を上下に積み重ねたスタッキング状態で効率よく保管し又は移動できるものが開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平10−71955号公報
【特許文献2】特開2002−2496号公報
【特許文献3】実開昭62−47337号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1、2に開示された低床型のスタッキングカートは、低床型(通例台枠の床上高さが200mm以下と低い。)であるが故に、コンテナを1個或いは2個程度積み重ねたにすぎない運搬時には、当然、使用者はそれなりに腰を大きく屈めた前傾姿勢で運搬作業や荷扱い作業をするほかなく、苦痛を伴う作業を強いられる。
のみならず、上記のスタッキングカートが主に使用される食品工場などは、通例多量の水を使用し、床などにも水が多く撒き散らされて水溜まりが出来ているような湿潤環境が一般的である。そのため人の歩行やカートの走行で不衛生な汚れ水が跳ねやすく、その跳ね水や異物が低床型のスタッキングカートに積まれたコンテナ容器へ付着して汚れ易く、或いはコンテナ容器の中にまで不用意に入り込む危険性があり、食品の衛生管理上に大きな問題点を有している。
【0005】
また、従来の特許文献1、2に開示された低床型のスタッキングカートは、スタッキング機能を有しているとはいえ、スタッキング時には上記のように散水されて水溜まりが出来ているような湿潤環境で不衛生な床を走行して汚れた移動用キャスターを下位のカートにおける台枠の上面に載せ、同キャスターをスタッキング用溝に嵌めて固定する構成であるが故に、スタッキングする度に台枠が汚損されて不衛生状態となる。よってカートを常に綺麗に衛生的に洗浄、清掃しておくために、多くの手間と時間が掛かるという欠点、問題点も大きい。
【0006】
更に、従来の特許文献1、2に開示されたスタッキングカートは、単に移動用キャスターを下位のカートにおける台枠の上面に載せて、同キャスターをスタッキング用溝に嵌めて固定した程度のスタッキングを行っているにすぎない。つまり、複数のカートを順に積み上げている状態にすぎず、スタッキング用溝によるキャスターの固定力にも限りがあって、さほどには安定していない。よって、移動時の床の段差による衝撃や振動、あるいは人や物に当たった際の衝撃力や振動などで簡単に崩れ、落ちる欠点と面倒さがあった。この問題点は、特許文献3に開示された移動用キャスター付きざる置き台のスタッキングについても同様に認められる。
【0007】
本発明の目的は、コンテナ容器などを積載する床上高さが、使用者に腰を大きく屈めた前傾姿勢を強いることにならず、しかも床などに多く散水されて水溜まりが出来ているような湿潤環境下で使用されても、人の歩行やカートの走行で跳ねた汚水や異物がカートに積まれたコンテナ容器へ付着して汚すこと、或いはコンテナ容器の中にまで不用意に入り込む危険性は殆ど無いか、又は限りなく少なく、食品の衛生管理上に有益な高床式として構成した運搬用スタッキングカートを提供することである。
【0008】
本発明の次の目的は、スタッキングした際の安定性が高く、簡単に崩れたり、落ちる心配のないスタッキング構造に改良した運搬用スタッキングカートを提供することである。
本発明の更なる目的は、スタッキングした際に、不衛生な床を走行した移動用キャスターによって他のカートを汚したり不衛生にする心配が無く、洗浄、清掃の手間や時間を省けるスタッキング構造に改良した運搬用スタッキングカートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した従来技術の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係る運搬用スタッキングカートは、
四隅の下部に移動用キャスター4が取り付けられた平面視が四角形のベース枠1と、平面視が前記ベース枠1よりも小さい四角形で四隅に積載物品の四隅底部を受け持つリブ付きの荷受けコーナ枠5を備えた上部枠2と、ベース枠1に対して上部枠2をほぼ水平に床上一定の高さに支持した支持部材3とで構成されており、
上部枠2とベース枠1は平面視において共通の中心を持つ相似形状に配置されており、上部枠2の外形寸法はベース枠1の四隅に位置する各移動用キャスター4…が下位カートの上部枠2よりも外側へはみ出てスタッキングされる大きさに形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した運搬用スタッキングカートにおいて、
ベース枠1は中空構造に構成され、しかも該ベース枠1の内周寸法は、下段のカートにおける上部枠2及びその四隅のリブ付き荷受けコーナ枠5の上に積み重ね可能な大きさに構成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載した発明は、請求項1又は2に記載した運搬用スタッキングカートにおいて、
ベース枠1に対して、上部枠2の床上高さが、支持部材3によって少なくとも400mm以上に高く支持されていることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載した発明は、請求項1〜3のいずれか一に記載した運搬用スタッキングカートにおいて、
ベース枠1と上部枠2及び支持部材3は、樹脂被覆接着鋼管とこれを連結する樹脂製継手により組み立てられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1〜4に記載した発明に係る運搬用スタッキングカートは、コンテナ容器10などを積載する上部枠2の床上高さが例えば400mm以上であり、使用者に腰を大きく屈めた前傾姿勢を強いることにならず、使い易い。しかも床などに多く散水されて水溜まりが出来ているような悪い湿潤環境下で使用されて、人の歩行やカートの走行で汚水や異物が跳ねられても、カートの上部枠2の上に積まれたコンテナ容器10にまでは大部分届かないから殆ど汚れないし、もとよりコンテナ容器10の中にまで不用意に入り込む危険性もないから、食品の衛生管理上にすこぶる有益である。
【0014】
また、本発明に係る運搬用スタッキングカートは、平面視が四角形の上部枠2の上に、同じく平面視が四角形である上位カートのベース枠1がほぼ相似形状に載り、ベース枠1の四隅に位置する移動用キャスター4は下位カートの上部枠2より外側へはみ出すようにスタッキングされる構成であるから、スタッキングした際の安定性が極めて高く、移動中の床の多少の段差や人、物に衝突した程度の衝撃力、振動では簡単に崩れたり、落ちる心配がなく、安定性が高いので使い勝手が良い。
しかも、汚れた水溜まりがあるような不衛生な床を走行した移動用キャスター4は、スタッキング時には、下位カートの上部枠2の外側へはみ出すように積み重なるので、他のカートを汚したり不衛生にする心配が無い。よってカートの洗浄、清掃の手間や時間も大きく省けるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
四隅の下部に移動用キャスター4が取り付けられた平面視が四角形のベース枠1と、平面視が前記ベース枠1よりも小さい四角形で四隅に積載物品の四隅底部を受け持つリブ付きの荷受けコーナ枠5を備えた上部枠2と、ベース枠1に対して上部枠2をほぼ水平に床上一定の高さに支持した支持部材3とで構成する。
上部枠2とベース枠1は平面視において共通の中心を持つ相似形状に配置する。しかも上部枠2の外形寸法はベース枠1の四隅に位置する移動用キャスター4が下位カートの上部枠2の外側へはみ出てスタッキングされる大きさに形成する。
ベース枠1に対して、上部枠2の床上高さは支持部材3によって少なくとも400mm以上に高く支持させる。
【実施例1】
【0016】
以下に、本発明を図1〜3に示した実施例に基づいて説明する。
図1に示した運搬用スタッキングカートは、ベース枠1と上部枠2及び支持部材3がそれぞれ、樹脂被覆接着鋼管(以下、単に管材という。)とこれを連結する樹脂製継手とで組み立てられた構成である。
即ち、四隅の下部に移動用キャスター4が取り付けられた平面視が四角形のベース枠1は、四辺の管材1aが四隅に配置したキャスター取付用コーナー継手1bによって連結され、いわゆる中空構造に組み立てられている。前記キャスター取付用コーナー継手1bの垂直なソケットに移動用キャスター4の旋回軸が縦に取り付けられている。
【0017】
平面視が前記ベース枠1よりも小さい四角形で、四隅にコンテナ容器のような積載物品の四隅底部を受け持つリブ付きの荷受けコーナ枠5を備えた上部枠2は、前記荷受けコーナ枠5と一体に成形されたコーナ継手部5aを利用して四辺の管材2aが連結され、やはり中空構造に組み立てられている。そのためコーナ継手部5aの内隅部にほぼ水平な荷受け部5bが形成されている。図中の5cはコンテナ容器のような積載物品の四隅外周を支持するリブである。
【0018】
上記のベース枠1に対して、上部枠2をほぼ水平姿勢で床上一定の高さに差し上げた形に支持する支持部材3は、図1に示したように、ベース枠1および上部枠2それぞれの管材1a、2aのほぼ中間部位にT形継手3a、3bを取り付け、このT形継手3a、3bにより所要長さの管材3cを連結して構成されている。即ち、管材3cの長さは、ベース枠1に対して上部枠2の床上高さH(図2A参照)が例えば400mm以上となるように設計して組み立てられている。
【0019】
上部枠2とベース枠1は、平面視においてそれぞれ共通の中心を持つ相似形状に形成し配置されている。しかも上部枠1の外形寸法は、図3にスタッキング状態を例示したように、ベース枠1の四隅に位置する各移動用キャスター4…が、下位カートの上部枠2よりも外側へはみ出すようにスタッキングされる大きさに形成されている。そのため図1で明らかなように、ベース枠1に対して上部枠2を一定の高さに差し上げた形に支持する支持部材3は、それぞれ上向きの内方へ同一角度に傾斜した配置とされ、この運搬用スタッキングカートの全体形状は上方にすぼむ四角錐形状に構成されている(図1参照)。
【0020】
従って、本発明の運搬用スタッキングカートは、図3にスタッキング状態を例示したように、いわば四角錐形状の箱体を順次上から被せるように積み重ねてスタッキングされる。その場合に、ベース枠1は中空構造に構成されており、しかも該ベース枠1の内周寸法は、下段のカートにおける上部枠2及びその四隅のリブ付き荷受けコーナ枠5の上に積み重ね可能な大きさに構成されているから、十分に深くスタッキングすることができ、スタッキング嵩の縮小化に有益である。その上、四角錐形状の箱体を積み重ねたに等しいスタッキング状態であるから、安定性に優れる。しかも、スタッキング時には、図3で明らかなように、ベース枠1の四隅に位置する各移動用キャスター4…は、すべて下位カートの上部枠2よりも外側へはみ出すようにスタッキングされるから、汚損された移動用キャスター4が他のカートを汚す不都合は決して発生しない。
【0021】
また、本発明の運搬用スタッキングカートは、上部枠2の床上高さHが、少なくとも400mm以上となるように構成されているので、図2Aに本発明の運搬用スタッキングカートを、図2Bに示す従来の低床型カートの運搬、使用の状態と比較して示したように、本発明の運搬用スタッキングカートの上部枠2の上に積んだコンテナ容器10のような積載物品の最高部位はおよそ450mm程度に高くなるから、使用者の運搬姿勢の前屈み姿勢はさほどにきつくはなく、楽な姿勢の運搬作業、荷扱いができる。逆に、図2Bに示した従来の低床型カートを使用する場合の前屈み姿勢はかなりきつくなって、苦しいことが理解されるであろう。
【0022】
以上に本発明を図示した実施例に基づいて説明したが、勿論、本発明は上記実施例の構成に限定されるものではない。本発明の要旨、及び技術思想を逸脱しない範囲で、当業者が行うであろう設計変更や応用として種々に実施されるものであることを念のため申し添える。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る運搬用スタッキングカートの実施例を示した斜視図である。
【図2】Aは本発明のカート、Bは従来カートの使用状態を比較して示した正面図である。
【図3】本発明に係る運搬用スタッキングカートのスタッキング状態を示した斜視図である。
【符号の説明】
【0024】
1 ベース枠
2 上部枠
3 支持部材
4 移動用キャスター
5 リブ付き荷受けコーナ枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
四隅の下部に移動用キャスターが取り付けられた平面視が四角形のベース枠と、平面視が前記ベース枠よりも小さい四角形で四隅に積載物品の四隅底部を受け持つリブ付きの荷受けコーナ枠を備えた上部枠と、ベース枠に対して上部枠をほぼ水平に床上一定の高さに支持した支持部材とで構成されており、
上部枠とベース枠は平面視において共通の中心を持つ相似形状に配置されており、上部枠の外形寸法はベース枠の四隅に位置する各移動用キャスターが下位カートの上部枠よりも外側へはみ出てスタッキングされる大きさに形成されていることを特徴とする、運搬用スタッキングカート。
【請求項2】
ベース枠は中空構造に構成され、しかも該ベース枠の内周寸法は、下段のカートにおける上部枠及びその四隅のリブ付き荷受けコーナ枠の上に積み重ね可能な大きさに構成されていることを特徴とする、請求項1に記載した運搬用スタッキングカート。
【請求項3】
ベース枠に対して、上部枠の床上高さが、支持部材によって少なくとも400mm以上に高く支持されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載した運搬用スタッキングカート。
【請求項4】
ベース枠と上部枠及び支持部材は、樹脂被覆接着鋼管とこれを連結する樹脂製継手により組み立てられていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載した運搬用スタッキングカート。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate