運搬車両の後方視界表示システム
【課題】 カメラ画像から排土作業時に停止すべき位置を正確に把握できるようにする。
【解決手段】 運搬車両の車体後端または後輪タイヤ後端を路面に投影した位置あるいは該投影した位置から後方へ所定距離離れた路面上の位置に、ベッセルの積荷を排土する排土作業時に基準となる排土作業時距離目安線あるいは排土作業時距離目安点を設定し、該排土作業時距離目安線あるいは排土作業時距離目安点を、表示部に表示される画像に、重ね合わせて表示する。
【解決手段】 運搬車両の車体後端または後輪タイヤ後端を路面に投影した位置あるいは該投影した位置から後方へ所定距離離れた路面上の位置に、ベッセルの積荷を排土する排土作業時に基準となる排土作業時距離目安線あるいは排土作業時距離目安点を設定し、該排土作業時距離目安線あるいは排土作業時距離目安点を、表示部に表示される画像に、重ね合わせて表示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベッセルを備えた運搬車両の車体後方に取付けられたカメラによって車体後方の視界を撮影し、撮影した画像を運転室などに設けられた表示部に表示する運搬車両の後方視界表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ダンプトラックなどの運搬車両は、積荷を積載したベッセルを備えており、排土作業時には、後進してベッセルを上昇させて積荷を排土場に排土する。
【0003】
運搬車両は、車体後方の死角が大きく、運転室から車体後方の視界を直接目視にて確認しにくい。このため、運搬車両には、従来より、車体後方に取付けられたカメラによって車体後方の視界を撮影し、撮影した画像を運転室に設けられたモニタの表示部に表示して後方確認するという後方視界表示システムが採用され、種々特許出願されている。
【0004】
下記特許文献1には、ダンプトラックのストップランプ、ターンシグナル、テールランプなどの複数のランプ類で構成されたリヤコンビネーションランプの上部にカメラを取付けるという発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−255018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ダンプトラックなどの運搬車両は、一般自動車などに比較して車幅が格段に大きく、
後方視界撮影用のカメラの画像のみでは、車体後方の車幅を把握しづらい。
【0007】
さらにダンプトラックなどの運搬車両は、カメラの取り付けスペース、取り付け取り位置、取り付け角度などに制限があることから、カメラの取付部よりも車体後端が後方に張り出している。このためカメラ画像中のどの位置まで車両を後退させて停止すれば、排土位置に達するのか、あるいは衝突、転落等を回避できるのかどうかを正確に把握しにくい。
しかも、ダンプトラックなどの運搬車両は、ベッセルが着座しているときに比べてベッセルが上昇しているときは、車体後端位置が後方に張り出す。このため、オペレータは、ベッセルが上昇した状態を予測しながら後方確認しなければならず、後退時の停止位置の把握が一層困難となる。
本発明は、こうした実状に鑑みてなされたものであり、カメラ画像から排土作業時に停止すべき位置を正確に把握できるようにすることを解決課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明は、
ベッセルを備えた運搬車両の車体後方に取付けられたカメラによって車体後方の視界を撮影し、撮影した画像を表示部に表示する運搬車両の後方視界表示システムにおいて、
ベッセルが上昇しているときにベッセルの後端が最も車体の後方となる車体後端を路面に投影した位置、または
後輪タイヤ後端を路面に投影した位置、または
後輪タイヤ後端を路面に投影した位置とベッセルが着座しているときにおける車体後端を路面に投影した位置との間の路面上の位置に、ベッセルの積荷を排土する排土作業時に基準となる排土作業時距離目安線あるいは排土作業時距離目安点を設定し、該排土作業時距離目安線あるいは排土作業時距離目安点を、表示部に表示される画像に、重ね合わせて表示する表示制御手段
を備えたことを特徴とする。
【0009】
第2発明は、第1発明において、
排土作業時距離目安線あるいは排土作業時距離目安点は、ベッセル着座時における車体後端を路面に投影した位置に設定されることを特徴とする。
【0010】
第3発明は、第1発明において、
排土作業時距離目安線あるいは排土作業時距離目安点は、ベッセル上昇時における車体後端を路面に投影した位置に設定されることを特徴とする。
【0011】
第4発明は、第1発明において、
排土作業時距離目安線あるいは排土作業時距離目安点は、後輪タイヤの後端を路面に投影した位置あるいは該投影した位置から後方へ所定距離離れた路面上の位置に設定されることを特徴とする。
【0012】
第5発明は、第1発明において、
排土作業時距離目安線あるいは排土作業時距離目安点は、路面上の複数の位置に設定され、複数の排土作業時距離目安線あるいは複数の排土作業時距離目安点が互いに識別可能に表示されることを特徴とする。
【0013】
第6発明は、
排土作業時距離目安線あるいは排土作業時距離目安点は、路面上の複数の位置に設定され、複数の排土作業時距離目安線あるいは複数の排土作業時距離目安点が選択可能となっており、選択された排土作業時距離目安線あるいは排土作業時距離目安点が画像中に表示されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、つぎのような効果が得られる。
【0015】
a)本発明では、ベッセルが上昇しているときにベッセルの後端が最も車体の後方となる車体後端を路面に投影した位置、または後輪タイヤ後端を路面に投影した位置、または後輪タイヤ後端を路面に投影した位置とベッセルが着座しているときにおける車体後端を路面に投影した位置との間の路面上の位置に、排土作業時距離目安線あるいは排土作業時距離目安点が設定されて、カメラの撮影画像に重ね合わせて表示される。このためカメラ画像中には、車体後方の背景とともに少なくとも後輪タイヤ後端を路面に投影した位置が排土作業時距離目安線あるいは排土作業時距離目安点として表示されることになり、それを目安に車両を後退させれば、路面上のどの位置まで車両を後退させて停止すれば所望する排土位置に達するのか、あるいは衝突、転落等を回避できるのかどうかを正確に把握することができるようになる。
【0016】
b)特に、第3発明では、排土作業時距離目安線あるいは排土作業時距離目安点が、ベッセル上昇時における車体後端を路面に投影した位置に設定されるため、オペレータは、ベッセルが上昇したときの停止位置をカメラ画像から正確に把握することができるようになる。
ここで、「ベッセル上昇時における車体後端を路面に投影した位置」とは、ベッセルが上昇しているときに、ベッセルの後端が最も車体の後方となる位置の意味で使用する。ベッセルの後端が最も車体の後方位置となるのは、必ずしもベッセルが最も上昇したときとは限らない。ベッセル端部の形状によっては、ベッセルの端部が描く上昇軌跡の途中の点を路面に投影した位置、つまりベッセルが上昇途上にあるときのベッセル端部を路面に投影した位置が、最も車体後方に位置することがある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1(a)、(b)は、車両がダンプトラックである場合のカメラの車体への取り付け位置を示す図である。
【図2】図2は、後方視界表示システムを含むシステム構成図である。
【図3】図3は、リヤビューモニタの内部ブロック図である。
【図4】図4(a)、(b)、(c)、(d)、(e)はそれぞれ、メインモニタ表示部に表示される画面を示す図で、リヤビューモニタ設定画面を示す図であり、図4(f)、(g)、(h)、(i)はそれぞれ、図4(a)および(b)、(c)、(d)、(e)に対応してリヤビューモニタ表示部に表示される画面を示す図である。
【図5】図5(a)、(b)は、1本の距離目安線を設定する処理を説明する図で、車両がダンプトラックである場合のポイントの設定前のリヤビューモニタ表示部の画像と、ポイント設定後のリヤビューモニタ表示部の画像とを比較して示す図である。
【図6】図6(a)、(b)、(c)はそれぞれ、車体前後方向位置が互いに異なる各距離目安線を設定した後の画像を示した図である。
【図7】図7(a)、(b)は、2本の距離目安線を一画面内に設定する処理を説明する図で、車両がダンプトラックである場合のポイントの設定前のリヤビューモニタ表示部の画像と、ポイント設定後のリヤビューモニタ表示部の画像とを比較して示す図である。
【図8】図8は、3本の距離目安線を一画面内に設定した後の画像を示した図である。
【図9】図9は、車両がダンプトラックである場合において、排土作業時距離目安線を設定する処理を説明する図で、ダンプトラックのベッセルが着座した状態の図である。
【図10】図10は、車両がダンプトラックである場合において、排土作業時距離目安線を設定する処理を説明する図で、ダンプトラックのベッセルが上昇した状態の図である。
【図11】図11は、図1(a)に対応するダンプトラックの側面図で、ベッセルが上昇した状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明に係る運搬車両の後方視界表示システムの実施の形態について説明する。以下では、運搬車両として、ダンプトラック(以下、車両という)を想定して説明する。ダンプトラックには、リジットダンプとアーティキュレートダンプがある。アーティキュレートダンプは、リヤフレームに対してフロントフレームが屈折可能に連結された構成のダンプである。本実施形態では、アーティキュレートダンプを想定して説明する。なお、明細書において、車体の「左」側とは、運転席から正面をみたときの左側のことをいい、車体の「右」側とは、運転席から正面をみたときの右側のことをいうものとする。
【0019】
なお、以下では、カメラの画像が車両の運転室のモニタに表示される場合を想定して説明するが、運転室のモニタ以外に、無人ダンプトラックシステムの基地局のモニタに表示させる実施も当然可能である。
図1は、車両100がダンプトラックである場合の後方視界撮影用カメラ10(以下、カメラという)の車体への取り付け位置を示す図である。図1(a)は、車両100の側面を示す図で、図1(b)は、車両100の車体後部をみた図である。ダンプトラック100は、フロントフレーム102Fおよびリヤフレーム102Rの上部にそれぞれ、運転室120および積荷が積載され得るベッセル(ボディ)110が設けられた運搬車両である。図1では、ベッセル110が着座している状態を示している。
【0020】
カメラ10は、リヤアクスル101の上方であって、リヤフレーム102Rに装着されたリヤコンビネーションランプ103の上部、好ましくは上部の中央位置に取り付けられている。なお、リヤコンビネーションランプ103は、ストップランプ、ターンシグナル、テールランプなどの複数のランプ類で構成されてなるものである。
カメラ10は、後輪タイヤ104の後端位置S1よりも前方に位置するように配置されている。カメラ10は、車体後部で跳ね上げられた土砂等が付着しない位置に取り付けることが望ましい。
図1(a)において、斜線部は、カメラ10の視界(撮影範囲)を示す。カメラ10は、車体後方の視界を撮影する。カメラ10の視界には、後輪タイヤ104が入る。
【0021】
図2は、後方視界表示システムのシステム構成図を示している。
車両100の運転室120の内部にあって、運転席前方の図示しないフロントコンソールには、表示部21にカメラ10の画像を表示するリヤビューモニタ20が配置されている。リヤビューモニタ20の表示部21は、たとえば液晶ディスプレイで構成されている。リヤビューモニタ20の表示部21の下方には、輝度調整スイッチ22が配置されている。輝度調整スイッチ22は、表示部21の画面の輝度(明るさ)を調整するスイッチであるとともに、後述する設定操作スイッチを兼ねている。輝度調整スイッチ22は、たとえばシーソースイッチで構成される。
【0022】
リヤビューモニタ20の左側には、表示部31に各種情報を表示するメインモニタ30が配置されている。メインモニタ30の表示部31は、たとえば液晶ディスプレイで構成されている。メインモニタ30の表示部31の右横には、速度計107、エンジン回転計108が配置されている。
【0023】
車両100がダンプトラックである場合、シフトレバー109が運転席からみて正面右側に配置されている。このため操作性を考慮して、シフトレバー109とは反対側である図示しないフロントコンソールの左側にあって、その下方には、スイッチパネル40が配置されている(図2)。
【0024】
スイッチパネル40には、リヤビューモニタ20の表示部21の表示内容の設定操作などを行う操作スイッチ41が配列されている。
リヤビューモニタ20と、メインモニタ30と、スイッチパネル40は、シリアル通信を行う通信線50によって、互いに通信自在に接続されている。リヤビューモニタ20には、たとえばNTSC信号規格のビデオ信号線55を介してカメラ10が接続されている。
【0025】
カメラ10で撮影された車体後方の視界の画像を示す映像信号は、ビデオ信号線55を介して、リヤビューモニタ20に送出され、リヤビューモニタ表示部21に表示される。
【0026】
リヤビューモニタ20と、メインモニタ30と、スイッチパネル40は、通信線50を介してモニタコントローラ60に互いに通信自在に接続されている。モニタコントローラ60は、さらに、通信線50を介して、T/M(トランスミッション)コントローラ51と、RH(リターダ、ホイスト)コントローラ52と、エンジンコントローラ53に互いに通信自在に接続されている。
T/Mコントローラ51は、図示しないトランスミッションを制御するコントローラであり、シフトレバー109のシフト位置を検出するセンサ109aがセンサ信号線56を介して接続されている。シフトレバー109のセンサ109aからは、シフトレバー109のシフト位置を示す信号が、センサ信号線56を介してT/Mコントローラ51に送出される。
【0027】
T/Mコントローラ51は、シフトレバー109のシフト位置に応じた変速が行われるようにトランスミッションを制御する。また、T/Mコントローラ51は、トランスミッションで現在選択されている速度段、つまり実速度段を示す信号を、通信線50を介してモニタコントローラ60に送出する。
【0028】
シフトレバー109のセンサ109aは、センサ信号線57を介してリヤビューモニタ20に接続されている。シフトレバー109のセンサ109aからは、シフトレバー109のシフト位置を示す信号が、センサ信号線57を介してリヤビューモニタ20に送出される。
【0029】
車両100がダンプトラックである場合、運転室120には、ホイストレバー111が設けられている。また、車両100がダンプトラックである場合、ベッセル110の上昇下降位置を検出するポジションセンサ112が設けられている。
【0030】
RHコントローラ52は、図示しないリターダ(ブレーキ)の調節およびベッセル110の上昇下降を制御するコントローラであり、ホイストレバー111の操作位置を検出するセンサ111aがセンサ信号線58を介して接続されているとともに、ポジションセンサ112がセンサ信号線59を介して接続されている。ホイストレバー111のセンサ111aからは、ホイストレバー操作位置を示すホイストレバー操作信号が、センサ信号線58を介してRHコントローラ52に送出されるとともに、ポジションセンサ112からは、ベッセル位置を示す信号が、センサ信号線59を介してRHコントローラ52に送出される。RHコントローラ52は、ホイストレバー操作信号に応じてベッセル110の上昇下降を制御する。また、RHコントローラ52は、ホイストレバー操作信号を、通信線50を介してモニタコントローラ60に送出する。
【0031】
エンジンコントローラ53は、図示しないエンジンを制御するコントローラである。
【0032】
モニタコントローラ60は、映像信号線54を介してメインモニタ30に接続されている。
【0033】
スイッチパネル40の操作スイッチ41を操作することで、Dレンジ発進速度段等の設定、リヤビューモニタ20の表示内容の設定などを行うことができる。なお、Dレンジ発進速度段とは、シフトレバー109がD(ドライブ)レンジに位置された場合に、発進時に選択される速度段のことである。Dレンジ発進速度段は、路面の滑り易さ等を考慮して設定される。
【0034】
メインモニタ30の表示部31は、スイッチパネル40の操作スイッチ41の操作に応じてリヤビューモニタ設定画面、通常画面に切り換わる。リヤビューモニタ設定画面では、リヤビューモニタ表示部21の表示内容の設定を行うための各種メニューが表示される。通常画面では、走行時、作業時に必要な車両情報、つまりエンジン冷却水温、作動油温、燃料残量、サービスメータ(エンジン累積稼動時間)、各種コーション等が表示される。エンジン冷却水温、作動油温、燃料残量、サービスメータ(エンジン累積稼動時間)、各種コーション等はセンサで検出されて、センサ信号としてエンジンコントローラ53等に入力される。これらセンサ信号はエンジンコントローラ53等を経由してモニタコントローラ60に送出される。
スイッチパネル40の操作スイッチ41によって、通常画面に切り替える操作が行われると、スイッチパネル操作スイッチ41の操作内容を示す信号は、通信線50を経由してモニタコントローラ60に送出される。これを受けてモニタコントローラ60は、上述の車両情報と組み合わせて通常画面を構築し、構築した通常画面を表示させるための映像信号を、映像信号線54を経由してメインモニタ30に送出する。この映像信号にしたがいメインモニタ表示部31では、通常画面が表示される。
【0035】
車両が停止している状態でスイッチパネル40の操作スイッチ41によって、リヤビューモニタ設定画面のメニューを選択する操作が行われると、スイッチパネル操作スイッチ41の操作内容を示す信号は、通信線50を経由してモニタコントローラ60に送出される。これを受けてモニタコントローラ60は、操作内容に応じた設定を示す信号を、通信線50を経由してリヤビューモニタ20に送出する。リヤビューモニタ20は、カメラ10から送出されるカメラ映像を、設定内容に応じて加工し、表示信号を生成する。また、設定内容に応じた撮影が行われるように制御信号を生成する。これによりリヤビューモニタ表示部21には、表示信号に応じた画像が表示される。またカメラ10は、制御信号にしたがい撮影を行う。
【0036】
スイッチパネル40の操作スイッチ41を操作することで、たとえばつぎのようなリヤビューモニタ表示部21の表示内容の設定操作を行うことができる。
【0037】
a)正像・鏡像の切替設定操作
これはカメラ10で撮影されリヤビューモニタ表示部21に表示される画像が、正像(目視と同様の像)または鏡像(鏡に映し出されたのと同様の像)にするかを切り替える設定操作のことである。なお、本実施例では、リヤビューモニタ表示部21に表示される画像は、全て正像であるものとする。
b)車幅目安線、距離目安線の位置の設定操作
車幅目安線とは、リヤビューモニタ表示部21に表示される画像中に重ねて表示される車幅の目安となる線であって、後述するように車両100の車体の左右位置を示す線のことをいう。また距離目安線とは、リヤビューモニタ表示部21に表示される画像に重ねて表示される後方距離の目安となる線である。車両100がダンプトラックである場合には、距離目安線は、ベッセル110の積荷を排土する排土作業時に基準となる後方位置を示す排土作業時距離目安線となる。この設定操作によって、画像中における車幅目安線、距離目安線の位置を任意に変えることができる。車幅目安線、距離目安線の位置の設定操作を行う際には、リヤビューモニタ表示部21にカメラ10の撮影画像が表示されるとともに、現在の設定操作に対応する車幅目安線、距離目安線がカメラ10の撮影画像に重畳されて表示される。また車幅目安線、距離目安線の位置の設定操作を行う際には、輝度調整スイッチ22は、画像中における車幅目安線、距離目安線の設定位置を微調整する設定操作スイッチとして機能する。
【0038】
c)車幅目安線、距離目安線の表示のオン/オフ設定操作
これは、リヤビューモニタ表示部21に表示される画像中に、車幅目安線、距離目安線を重ねて表示するかどうか、つまり目安線の表示をオンするかオフするかを設定する操作のことである。以下では、車幅目安線、距離目安線の表示がオンに設定されているものとして説明する。
図3は、リヤビューモニタ20の内部ブロック図である。図3に示すCPU23は、本発明の表示制御手段を構成する。
【0039】
モニタコントローラ60から送出された信号は、通信インターフェース24を介してCPU23に入力される。
【0040】
輝度調整スイッチ22の操作内容を示す信号は、オン/オフの入力回路25を介してCPU23に入力される。またシフトレバー109のシフト位置を示す信号は、オン/オフの入力回路25を介してCPU23に入力される。
【0041】
カメラ10で撮影された車体後方の視界の画像を示す映像信号は、カメラ映像入力回路26を介してCPU23に入力される。
【0042】
モニタコントローラ60からリヤビューモニタ設定画面の設定操作を示す信号がCPU23に入力されると、設定操作内容のデータは、不揮発性メモリ27に記憶される。
【0043】
不揮発性メモリ27に記憶された設定操作内容が、カメラ10の正像、鏡像の切替えの設定である場合には、その設定内容を示す信号を、CPU23は、カメラ正像/鏡像切替出力回路28に出力する。カメラ正像/鏡像切替出力回路28は、設定内容に応じて、カメラ10を正像で撮影させるための制御信号、あるいはカメラ10を鏡像で撮影させるための制御信号を生成して、カメラ10に出力する。これによりカメラ10は、正像あるいは鏡像で撮影する。
【0044】
不揮発性メモリ27に記憶された設定操作内容が、車幅目安線、距離目安線の位置の設定である場合には、CPU23は、その設定内容と、カメラ10の映像とに基づいて、画像中の設定された位置に車幅目安線、距離目安線が位置するように表示信号を生成する。表示信号は、ディスプレイコントローラ29に出力される。ディズプレイコントローラ29は、表示信号にしたがいリヤビューモニタ表示部21の表示を制御する。これによりリヤビューモニタ表示部21に表示される画像中の設定された位置に、車幅目安線、距離目安線が重ねて表示される。
【0045】
つぎに、図4に示す画面遷移図を併せ参照して、実施例の車幅目安線および距離目安線の位置の設定操作の手順について説明する。
【0046】
図4において、図中左に示す図4(a)、(b)、(c)、(d)、(e)はそれぞれ、メインモニタ表示部31に表示される画面を示す図で、リヤビューモニタ設定画面の遷移図である。図4(f)、(g)、(h)、(i)はそれぞれ、図4(a)および(b)、(c)、(d)、(e)に対応してリヤビューモニタ表示部21に表示される画面の遷移図である。図中の黒矢印(→)にしたがって画面が遷移する。また、図中の白抜き矢印(⇒)は、リヤビューモニタ設定画面のメニューで現在選択されているボックスを示す。
【0047】
初期状態では、リヤビューモニタ表示部21には、カメラ10の撮影画像が表示されている。この状態でリヤビューモニタ設定画面のメニューから「目安線位置調整」のボックスがスイッチパネル操作スイッチ41によって選択されると(図4(a))、リヤビューモニタ設定画面はつぎのポイント選択メニュー画面(図4(b))に遷移する。これに伴いリヤビューモニタ表示部21には、車幅目安線11(11L、11R)、距離目安線12の初期位置がカメラ10の撮影画像に重畳されて表示される(図4(f))。
ここで、リヤビューモニタ表示部21の画像中には、位置設定が行われるポイント1、ポイント2、ポイント3、ポイント4の場所を示す表示がなされる。すなわち、画像中の位置設定が行われる各ポイント1、2、3、4に対応する場所にオペレータの操作の目印となる「1」、「2」、「3」、「4」が表示される。車幅目安線11は、車体左位置を示す左車幅目安線11Lと、車体右位置を示す右車幅目安線11Rとからなる。距離目安線12は、ポイント1で右車幅目安線11Rと交差するとともに、ポイント2で左車幅目安線11Lと交差する。リヤビューモニタ表示部21の画像の図中左右方向を「X方向」、図中上下方向を「Y方向」とする。
【0048】
右車幅目安線11Rの車体前方側端点の位置がポイント3となり、左車幅目安線11Lの車体前方側端点の位置がポイント4となる。
【0049】
つぎに、リヤビューモニタ設定画面のポイント選択メニューから「ポイント1」のボックスがスイッチパネル操作スイッチ41によって選択されると(図4(b))、リヤビューモニタ表示部21の画像中のポイント1に、ポイント1をX方向に移動させるための補助となる補助ライン13が表示される(図4(g))。補助ライン13および後述する補助ライン14は、左右車幅目安線11L、11R、距離目安線12と識別できるように、これら目安線と異なる色の十字ラインで構成されている。十字としたのは、左右車幅目安線11L、11Rと距離目安線12との交点をわかりやすくするためである。また、移動方向が理解できるように、移動方向に応じて十字のラインを構成する各ラインの長さが変化する。X方向に交点を調整する場合には、十字ラインのうちX方向のラインの長さがY方向のラインの長さよりも長くなる補助ライン13が用いられ(図4(g))、Y方向に交点を調整する場合には、十字ラインのうちY方向のラインの長さがX方向のラインの長さよりも長くなる補助ライン14が用いられる(図4(h))。
また、輝度調整スイッチ22は、画像中におけるポイント1の設定位置(右車幅目安線11R、距離目安線12の設定位置)を微調整する設定操作スイッチに切り替わる(図4(g))。また、リヤビューモニタ設定画面は、つぎのX方向位置調整画面に遷移する(図4(c))。
【0050】
以後、輝度調整スイッチ22(シーソースイッチ)を操作すると、操作方向に応じた左右方向に、操作回数に応じた操作量分だけ、ポイント1が補助ライン13とともに、リヤビューモニタ表示部21の画像中でX方向に移動する(図4(g);破線矢印参照)。
【0051】
ポイント1のX方向位置を決定すると、スイッチパネル操作スイッチ41でポイント1のX方向位置を確定する操作が行われる。この操作に応じて、リヤビューモニタ設定画面は、つぎのY方向位置調整画面に遷移するとともに(図4(d))、リヤビューモニタ表示部21の画像中のポイント1に、ポイント1をY方向に移動させるための補助となる補助ライン14が表示される。なお、輝度調整スイッチ22は、継続して設定操作スイッチとして機能する。
【0052】
以後、輝度調整スイッチ22(シーソースイッチ)を操作すると、操作方向に応じた上下方向に、操作回数に応じた移動量分だけ、ポイント1が補助ライン14とともに、リヤビューモニタ表示部21の画像中でY方向に移動する(図4(h);破線矢印参照)。
【0053】
ポイント1のY方向位置を決定すると、スイッチパネル操作スイッチ41でポイント1のY方向位置を確定する操作が行われる。この操作に応じて、リヤビューモニタ設定画面は、つぎのポイント選択メニュー画面(図4(e))に遷移するとともに、ポイント1の設定が完了したものとして、リヤビューモニタ表示部21の画像中から、補助ライン14が消去される。また、設定後のポイント1のX,Y座標位置が所定のメモリに記憶される。また、輝度調整スイッチ22は、本来の輝度調整の機能に切り替わる。
【0054】
以後、同様にしてポイント2、ポイント3、ポイント4についても、リヤビューモニタ設定画面のポイント選択メニューから「ポイント2」、「ポイント3」、「ポイント4」を選択して、上述したのと同様の処理を行うことにより、それら各ポイントの位置を設定することができる。
【0055】
図5(a)、(b)は、ポイント1、ポイント2の設定前のリヤビューモニタ表示部21の画像(図5(a))と、ポイント1、ポイント2の設定後のリヤビューモニタ表示部21の画像(図5(b))とを比較して示す。設定前後で、ポイント1、ポイント2の位置、つまりポイント1とポイント2を結ぶ距離目安線12の車体前後方向位置が変化しているのがわかる。
【0056】
なお、ポイント3、ポイント4についても同様に位置設定が行われる。ポイント3、ポイント4の設定前では、ポイント3、ポイント4が画像の最下端に位置しており、左右車幅目安線11L、11Rがそれぞれ左右後輪タイヤ104L、104R上に重なって表示されている。このため左右後輪タイヤ104L、104Rから得られる車幅と、これら左右後輪タイヤ104L、104Rに重なった車幅目安線11L、11Rから得られる車幅との違いによって、オペレータに違和感を与えることになる(図5(a))。
これに対して、ポイント3、ポイント4の設定後では、ポイント3(右車幅目安線11Rの車体前方側端点)、ポイント4(左車幅目安線11Lの車体前方側端点)がそれぞれ右後輪タイヤ104R、左後輪タイヤ104Lの後端境界に位置する。すなわち左右車幅目安線11L、11Rがそれぞれ左右後輪タイヤ104L、104R上に重ならないように各ポイント3、4の設定位置が調整される。このためオペレータは、上述した違和感を受けることなく、画像中の車幅目安線11L、11Rから正確に車幅の情報を得ることができる(図5(b))。
以上、1本の距離目安線12を設定する場合について説明したが、車体前後方向位置が異なる複数の距離目安線12a、12b、12c…を設定することもできる。なお、この例では、各距離目安線を符号「12」に添字「a」、「b」、「c」…を付加して互いに区別する。
【0057】
この場合、リヤビューモニタ設定画面のメニューから「目安線a位置調整」、「目安線b位置調整」、「目安線c位置調整」を選択し、各「目安線a位置調整」、「目安線b位置調整」、「目安線c位置調整」の選択メニュー毎に、距離目安線12a、12b、12c…を図4で説明したのと同様の手順で設定する機能が付加される。
【0058】
さらに、これら設定された複数の距離目安線12a、12b、12c…の中から、メインモニタ表示部31が通常画面に切り替えられたとき(通常走行、通常作業時)に、リヤビューモニタ表示部21に表示すべき距離目安線(たとえば距離目安線12a)を選択する機能がリヤビューモニタ設定画面のメニューに付加される。
【0059】
図6(a)、(b)、(c)はそれぞれ、リヤビューモニタ設定画面のメニューにしたがい設定された距離目安線12a、12b、12cを示す。距離目安線12aが車体から最も離れた後方位置にあり(図6(a))、距離目安線12cが車体に最も近く(図6(c))、距離目安線12bが、距離目安線12aと距離目安線12cの間に位置する(図6(b))。
【0060】
たとえば距離目安線12a(図6(a))が選択されたものとすると、メインモニタ表示部31が通常画面に切り替えられたときには、リヤビューモニタ表示部21には、選択された距離目安線12aがカメラ10の撮影画像に重ねて表示されることになる。なお、図6(a)、(b)、(c)においても図5(b)と同様にポイント3、ポイント4の設定位置がそれぞれ右後輪タイヤ104R、左後輪タイヤ104Lの後端境界に位置するように調整される。よって、オペレータは、違和感を受けることなく、画像中の車幅目安線11L、11Rから正確に車幅の情報を得ることができる。
以上、一画面に1本の距離目安線12のみを表示するように設定する場合について説明したが、一画面に車体前後方向位置が異なる複数の距離目安線12、12´、12´´…を併せて表示するように設定することもできる。なお、この例では、各距離目安線を符号「12」に「´」(ダッシュ)を付加して互いに区別する。
【0061】
この場合、リヤビューモニタ設定画面のポイント選択メニューのポイント選択数を増やすことで対応することができる。図4の例では、4点のポイント1、2、3、4を順次選択し、選択した各ポイント1、2、3、4の位置を調整することで、1本の距離目安線12を設定するようにしているが、図7(a)に示すように、更に2点のポイント5、6を付加して、6本のポイント1、2、3、4、5、6を順次選択し、選択した各ポイント1、2とポイント5、6の位置を調整することで、2本の距離目安線12、12´を設定することができる。
【0062】
ポイント5は、ポイント1とポイント3の間、つまり右車幅目安線11R上に付加されるポイントである。ポイント6は、ポイント2とポイント4の間、つまり左車幅目安線11L上に付加されるポイントである。ポイント5とポイント6を結ぶ線分が、付加された距離目安線12´となる。
【0063】
図7(a)、(b)は、ポイント1、ポイント2、ポイント5、ポイント6の設定前のリヤビューモニタ表示部21の画像(図7(a))と、ポイント1、ポイント2、ポイント5、ポイント6の設定後のリヤビューモニタ表示部21の画像(図7(b))とを比較して示す。設定前後で、ポイント1、ポイント2の位置、つまりポイント1とポイント2を結ぶ距離目安線12の車体前後方向位置と、ポイント5、ポイント6の位置、つまりポイント5とポイント6を結ぶ距離目安線12´の車体前後方向位置とが変化しているのがわかる。
【0064】
同様にしてポイント7、ポイント8を付加し、図8に示すように、3本の距離目安線12、12´、12´´を同一画面に表示するようにしてもよい。
【0065】
なお、図7(b)、図8においても図5(b)と同様にポイント3、ポイント4の設定位置がそれぞれ右後輪タイヤ104R、左後輪タイヤ104Lの後端境界に位置するように調整される。よって、オペレータは、違和感を受けることなく、画像中の車幅目安線11L、11Rから正確に車幅の情報を得ることができる。
つぎに、1本の距離目安線12を設定する手順について説明する。
【0066】
距離目安線12を設定するに際しては、図9あるいは図10に示すように、設定しようとするポイント1、ポイント2に相当する路面の各地点、設定しようとするポイント1、ポイント2の中間点に相当する路面の地点に、パイロン200を設置する。図9は、ベッセル110が着座している状態を示し、図10は、ベッセル110が上昇している状態を示す。
【0067】
また、図11は、図1(a)に対応する図であり、ベッセル110が上昇しているときの車両100の側面図である。
【0068】
パイロン200を設置する路面位置は、つぎの1)〜6)のとおりであり、距離目安線12は、排土作業時に基準となる排土作業時距離目安線として設定される。
【0069】
1)排土作業時距離目安線12を、ベッセル110が着座しているときにおける車体後端を路面に投影した位置(車体後端直下の位置)S2に設定する(図1(a)、図9、図10、図11のS2参照)。位置S2は、ベッセル110着座時にこれ以上後退したら後方の障害物と衝突するおそれがあることを示す位置のことである。
【0070】
2)排土作業時距離目安線12を、ベッセル110が着座しているときにおける車体後端を路面に投影した位置(車体後端直下の位置)S2から所定距離後方へ離間した路面上の位置S21に設定する(図1(a)、図10、図11のS21参照)。ここで、所定距離とは、ベッセル110着座時に後方の障害物との衝突を回避するために余裕を見込んだ距離である。
【0071】
3)排土作業時距離目安線12を、ベッセル110が上昇しているときにおける車体後端を路面に投影した位置(車体後端直下の位置)S3に設定する(図10、図11のS3参照)。位置S3は、ベッセル110上昇時にこれ以上後退したら後方の障害物と衝突するおそれがあることを示す位置のことである。実施例では、位置S3は、ベッセル110が最も上昇したときの位置に設定する。位置S3は、ベッセル110が上昇しているときに、ベッセル110の後端が最も車体の後方となる位置の意味で使用する。実施例では、ベッセル110が最も上昇したときにおける車体後端を路面に投影した位置が最も車体後方に位置するものとして説明するが、ベッセル110の後端が最も車体の後方位置となるのは、必ずしもベッセル110が最も上昇したときとは限らない。ベッセル110の端部の形状によっては、ベッセル110の端部が描く上昇軌跡の途中の点を路面に投影した位置、つまりベッセル110が上昇途上にあるときのベッセル110の端部を路面に投影した位置が、最も車体後方に位置することがある。よって、車種によっては、 位置S3は、最上昇時以外の回動位置に設定されることがある。
4)排土作業時距離目安線12を、ベッセル110が上昇しているときにおける車体後端を路面に投影した位置(車体後端直下の位置)S3から所定距離後方へ離間した路面上の位置S31に設定する(図11のS31参照)。ここで、所定距離とは、ベッセル110上昇時に後方の障害物との衝突を回避するために余裕を見込んだ距離である。
【0072】
5)排土作業時距離目安線12を、後輪タイヤ104の後端を路面に投影した位置(後輪後端直下の位置)S1に設定する(図1(a)、図9、図11のS1参照)。位置S1は、これ以上後退したら、崖地や窪地などに干渉し転落、スタック等のおそれがあることを示す位置のことである。
【0073】
6)排土作業時距離目安線12を、後輪タイヤ104の後端を路面に投影した位置(後輪後端直下の位置)S1から所定距離後方へ離間した路面上の位置S11に設定する(図1(a)、図9、図11のS11参照)。ここで、所定距離とは、これ以上後退したら、転落、スタック等を回避するために余裕を見込んだ距離である。位置S11は、後輪タイヤ104の後端を路面に投影した位置S1とベッセル110が着座しているときにおける車体後端を路面に投影した位置S2との間の路面上の位置に設定される。
【0074】
5)と6)を併せて「後輪タイヤ後端付近」の位置(位置S1から位置S11までの後輪タイヤ後端付近位置)という。
つぎに、オペレータあるいはサービスマンなどの操作者は、図4と同様の手順にて、リヤビューモニタ表示部21の画像に映ったパイロン200を目印に、補助ライン13、14を画面上で動かし、距離目安線12の位置を調整し、上記1)〜6)のいずれかの排土作業時距離目安線12に設定する。すなわち、図5(b)に示す距離目安線12が、上記1)〜6)に示すいずれかの位置S2、S21、S3、S31、S1、S11に定められる。
【0075】
以上のような排土作業時距離目安線12の設定作業が終了すると、スイッチパネル40の操作スイッチ41を操作して、メインモニタ表示部31を通常画面に切り替える。これによりオペレータは、メインモニタ表示部31から走行、作業に必要な車両情報を得て、走行、作業を行うことができる。一方、リヤビューモニタ表示部21には、走行、作業中に、排土作業時距離目安線12が、カメラ10が撮影した画像に重ね合わせて表示される。これによりオペレータは、カメラ画像中の排土作業時距離目安線12を目安に後退すれば、路面上のどの位置まで車両100を後退させて停止すれば所望する排土位置に達するのか、あるいは衝突、転落等を回避できるのかどうかを正確に把握することができるようになる。特に、排土作業時距離目安線12を、ベッセル110上昇時(たとえばベッセル110最上昇時)における車体後端を路面に投影した位置S3あるいは位置S3より所定距離後方の位置S31に設定した場合には、オペレータは、ベッセル110が上昇したとき(たとえばベッセル110最上昇時)の停止位置をカメラ画像から正確に把握することができるようになる。
【0076】
なお、ベッセル110の最上昇時に合わせて位置S3を設定しカメラ画像から位置S3を目安に車体後方を確認することにより、ベッセル110の動作範囲全域において干渉を回避することができるようになる。
カメラ10の撮影画像を走行、作業中に常時リヤビューモニタ表示部21に表示させてもよく、必要と判断された場合のみに表示させてもよい。たとえばつぎのa)、b)の態様が考えられる。
【0077】
a)シフトレバー109のシフト位置がR(リバース)レンジに位置されたときに、カメラ10の撮影画像をリヤビューモニタ表示部21に表示させる。
【0078】
b)排土作業を行っていることを判断し、排土作業を行っていることが判断された場合に、カメラ10の撮影画像をリヤビューモニタ表示部21に表示させる。
【0079】
「排土作業を行っていること」は、たとえばつぎの(a)または(b)または(c)の条件が成立していることをもって判断することができる。
【0080】
(a)シフトレバー位置がRである場合(車両100が後退している排土作業開始時)
(b)シフトレバー位置がN(ニュートラル)にある場合であってホイストレバー111が「上げ」、「下げ」位置にある場合(車両100が停止しベッセル110を上昇下降させている排土時)
(c)シフトレバー位置がF(前進)のDレンジにある場合であってホイストレバー111が「上げ」、「下げ」位置にありかつ実速度段がDレンジ発進速度段以下である場合(車両100が排土を終え排土点から発進する排土作業終了時)
以上のように本実施例では、画像中におけるポイント1、2の位置を手動で調整することによって、距離目安線12の位置を調整し、排土作業時距離目安線12として設定するようにしている。このため車両100の機種、号機毎に、車体後端位置、後輪タイヤ後端位置が異なる場合であっても、容易に、各機種、各号機に適した位置に、正確に排土作業機距離目安線12を設定するよう調整することができる。
【0081】
また、上記1)〜6)の中の2以上の排土作業時距離目安線12a、12b、12c…を設定しておき、それら設定された各排土作業時距離目安線12a、12b、12c…の内いずれか1つの排土作業時距離目安線を選択し、選択された排土作業時距離目安線を、メインモニタ表示部31が通常画面に切り替えられたときに、リヤビューモニタ表示部21に表示させてもよい。
【0082】
たとえば図6(a)に示す距離目安線12aを、位置S21(図9参照)の排土作業時距離目安線12aとして設定し、図6(b)に示す排土作業時目安線12bを、位置S2(図9参照)の排土作業時距離目安線12bとして設定し、図6(c)に示す距離目安線12cを、位置S1から位置S11までの後輪タイヤ後端付近位置(図9参照)の排土作業時距離目安線12cとして設定し、たとえば排土作業時目安線12aを選択して、メインモニタ表示部31が通常画面に切り替えられたときに、リヤビューモニタ表示部21に、選択された排土作業時距離目安線12a(ベッセル110着座時の車体後端より所定距離後方の位置S21)をカメラ10の撮影画像に重ねて表示させることができる。
【0083】
また、上記1)〜6)の中の2以上の距離目安線12、12´…を一画面に表示させてもよい。
【0084】
たとえば図7(b)に示す距離目安線12を、位置S21(図9参照)の排土作業時距離目安線12として設定するとともに、距離目安線12´を、位置S2(図9参照)の排土作業時距離目安線12´として設定し、メインモニタ表示部31が通常画面に切り替えられたときに、リヤビューモニタ表示部21に、排土作業時距離目安線12(ベッセル110着座時の車体後端位置から所定距離後方の位置S21)と、排土作業時距離目安線12´(ベッセル110着座時の車体後端位置S2)を同時にカメラ10の撮影画像に重ねて表示させることができる。
【0085】
また、たとえば図7(b)に示す距離目安線12を、位置S3(図10参照)の排土作業時距離目安線12として設定するとともに、距離目安線12´を、位置S2(図10参照)の排土作業時距離目安線12´として設定し、メインモニタ表示部31が通常画面に切り替えられたときに、リヤビューモニタ表示部21に、排土作業時距離目安線12(ベッセル110上昇時の車体後端位置S3)と、排土作業時距離目安線12´(ベッセル110着座時の車体後端位置S2)を同時にカメラ10の撮影画像に重ねて表示させることができる。
【0086】
また、図8に示すように、3本の距離目安線12、12´、12´´の位置を調整して、上記1)〜6)の中の3本の排土作業時距離目安線12、12´、12´´を一画面に表示させてもよい。
【0087】
2本以上の排土作業機距離目安線12、12´…を一画面に表示させる場合には、両者を互いに識別できるように表示させることが望ましい。識別可能な表示の態様としては以下の態様が挙げられる。
【0088】
・各排土作業機距離目安線12、12´…を異なる色または異なる明度で表示する。
【0089】
・各排土作業機距離目安線12、12´…の線幅を異なる太さにして表示する。
【0090】
・各排土作業機距離目安線12、12´…の線種(実線、破線など)あるいは形状を異ならせて表示する。
【0091】
・各排土作業機距離目安線12、12´…の点灯状態(点滅、不点滅など)を異ならせて表示する。
【0092】
また、各排土作業機距離目安線12、12´…間の距離がカメラ画像からわかるように、距離の目盛りを併せて画像中に表示させてもよい。たとえば、図9において、ベッセル110上昇時における車体後端を路面に投影した位置S2から後方位置S21までの所定距離を計測し、計測データを入力して、図7(b)に示すリヤビューモニタ表示部21の画面上の各排土作業機距離目安線12と排土作業時距離目安線12´の間に、距離の目盛りを表示させるようにする。
【0093】
以上各実施例では、各排土作業機距離目安線12あるいは12a、12b、12c、12´、12´´が、ポイント1、2あるいはポイント5、6あるいはポイント7、8間を結ぶ線分であるとして説明したが、排土作業時に目安となるものであればよく、必ずしも線分ではなく点状のものであってもよい。
【符号の説明】
【0094】
1、2、3、4、5、6、7、8 ポイント、10 カメラ、12、12a、12b、12c、12´、12´´ 排土作業時距離目安線(距離目安線)、12P1、12P2、12P5、12P6 排土作業時距離目安点、20リヤビューモニタ、21 表示部、23 CPU、100 車両、104 後輪タイヤ
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベッセルを備えた運搬車両の車体後方に取付けられたカメラによって車体後方の視界を撮影し、撮影した画像を運転室などに設けられた表示部に表示する運搬車両の後方視界表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ダンプトラックなどの運搬車両は、積荷を積載したベッセルを備えており、排土作業時には、後進してベッセルを上昇させて積荷を排土場に排土する。
【0003】
運搬車両は、車体後方の死角が大きく、運転室から車体後方の視界を直接目視にて確認しにくい。このため、運搬車両には、従来より、車体後方に取付けられたカメラによって車体後方の視界を撮影し、撮影した画像を運転室に設けられたモニタの表示部に表示して後方確認するという後方視界表示システムが採用され、種々特許出願されている。
【0004】
下記特許文献1には、ダンプトラックのストップランプ、ターンシグナル、テールランプなどの複数のランプ類で構成されたリヤコンビネーションランプの上部にカメラを取付けるという発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−255018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ダンプトラックなどの運搬車両は、一般自動車などに比較して車幅が格段に大きく、
後方視界撮影用のカメラの画像のみでは、車体後方の車幅を把握しづらい。
【0007】
さらにダンプトラックなどの運搬車両は、カメラの取り付けスペース、取り付け取り位置、取り付け角度などに制限があることから、カメラの取付部よりも車体後端が後方に張り出している。このためカメラ画像中のどの位置まで車両を後退させて停止すれば、排土位置に達するのか、あるいは衝突、転落等を回避できるのかどうかを正確に把握しにくい。
しかも、ダンプトラックなどの運搬車両は、ベッセルが着座しているときに比べてベッセルが上昇しているときは、車体後端位置が後方に張り出す。このため、オペレータは、ベッセルが上昇した状態を予測しながら後方確認しなければならず、後退時の停止位置の把握が一層困難となる。
本発明は、こうした実状に鑑みてなされたものであり、カメラ画像から排土作業時に停止すべき位置を正確に把握できるようにすることを解決課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明は、
ベッセルを備えた運搬車両の車体後方に取付けられたカメラによって車体後方の視界を撮影し、撮影した画像を表示部に表示する運搬車両の後方視界表示システムにおいて、
ベッセルが上昇しているときにベッセルの後端が最も車体の後方となる車体後端を路面に投影した位置、または
後輪タイヤ後端を路面に投影した位置、または
後輪タイヤ後端を路面に投影した位置とベッセルが着座しているときにおける車体後端を路面に投影した位置との間の路面上の位置に、ベッセルの積荷を排土する排土作業時に基準となる排土作業時距離目安線あるいは排土作業時距離目安点を設定し、該排土作業時距離目安線あるいは排土作業時距離目安点を、表示部に表示される画像に、重ね合わせて表示する表示制御手段
を備えたことを特徴とする。
【0009】
第2発明は、第1発明において、
排土作業時距離目安線あるいは排土作業時距離目安点は、ベッセル着座時における車体後端を路面に投影した位置に設定されることを特徴とする。
【0010】
第3発明は、第1発明において、
排土作業時距離目安線あるいは排土作業時距離目安点は、ベッセル上昇時における車体後端を路面に投影した位置に設定されることを特徴とする。
【0011】
第4発明は、第1発明において、
排土作業時距離目安線あるいは排土作業時距離目安点は、後輪タイヤの後端を路面に投影した位置あるいは該投影した位置から後方へ所定距離離れた路面上の位置に設定されることを特徴とする。
【0012】
第5発明は、第1発明において、
排土作業時距離目安線あるいは排土作業時距離目安点は、路面上の複数の位置に設定され、複数の排土作業時距離目安線あるいは複数の排土作業時距離目安点が互いに識別可能に表示されることを特徴とする。
【0013】
第6発明は、
排土作業時距離目安線あるいは排土作業時距離目安点は、路面上の複数の位置に設定され、複数の排土作業時距離目安線あるいは複数の排土作業時距離目安点が選択可能となっており、選択された排土作業時距離目安線あるいは排土作業時距離目安点が画像中に表示されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、つぎのような効果が得られる。
【0015】
a)本発明では、ベッセルが上昇しているときにベッセルの後端が最も車体の後方となる車体後端を路面に投影した位置、または後輪タイヤ後端を路面に投影した位置、または後輪タイヤ後端を路面に投影した位置とベッセルが着座しているときにおける車体後端を路面に投影した位置との間の路面上の位置に、排土作業時距離目安線あるいは排土作業時距離目安点が設定されて、カメラの撮影画像に重ね合わせて表示される。このためカメラ画像中には、車体後方の背景とともに少なくとも後輪タイヤ後端を路面に投影した位置が排土作業時距離目安線あるいは排土作業時距離目安点として表示されることになり、それを目安に車両を後退させれば、路面上のどの位置まで車両を後退させて停止すれば所望する排土位置に達するのか、あるいは衝突、転落等を回避できるのかどうかを正確に把握することができるようになる。
【0016】
b)特に、第3発明では、排土作業時距離目安線あるいは排土作業時距離目安点が、ベッセル上昇時における車体後端を路面に投影した位置に設定されるため、オペレータは、ベッセルが上昇したときの停止位置をカメラ画像から正確に把握することができるようになる。
ここで、「ベッセル上昇時における車体後端を路面に投影した位置」とは、ベッセルが上昇しているときに、ベッセルの後端が最も車体の後方となる位置の意味で使用する。ベッセルの後端が最も車体の後方位置となるのは、必ずしもベッセルが最も上昇したときとは限らない。ベッセル端部の形状によっては、ベッセルの端部が描く上昇軌跡の途中の点を路面に投影した位置、つまりベッセルが上昇途上にあるときのベッセル端部を路面に投影した位置が、最も車体後方に位置することがある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1(a)、(b)は、車両がダンプトラックである場合のカメラの車体への取り付け位置を示す図である。
【図2】図2は、後方視界表示システムを含むシステム構成図である。
【図3】図3は、リヤビューモニタの内部ブロック図である。
【図4】図4(a)、(b)、(c)、(d)、(e)はそれぞれ、メインモニタ表示部に表示される画面を示す図で、リヤビューモニタ設定画面を示す図であり、図4(f)、(g)、(h)、(i)はそれぞれ、図4(a)および(b)、(c)、(d)、(e)に対応してリヤビューモニタ表示部に表示される画面を示す図である。
【図5】図5(a)、(b)は、1本の距離目安線を設定する処理を説明する図で、車両がダンプトラックである場合のポイントの設定前のリヤビューモニタ表示部の画像と、ポイント設定後のリヤビューモニタ表示部の画像とを比較して示す図である。
【図6】図6(a)、(b)、(c)はそれぞれ、車体前後方向位置が互いに異なる各距離目安線を設定した後の画像を示した図である。
【図7】図7(a)、(b)は、2本の距離目安線を一画面内に設定する処理を説明する図で、車両がダンプトラックである場合のポイントの設定前のリヤビューモニタ表示部の画像と、ポイント設定後のリヤビューモニタ表示部の画像とを比較して示す図である。
【図8】図8は、3本の距離目安線を一画面内に設定した後の画像を示した図である。
【図9】図9は、車両がダンプトラックである場合において、排土作業時距離目安線を設定する処理を説明する図で、ダンプトラックのベッセルが着座した状態の図である。
【図10】図10は、車両がダンプトラックである場合において、排土作業時距離目安線を設定する処理を説明する図で、ダンプトラックのベッセルが上昇した状態の図である。
【図11】図11は、図1(a)に対応するダンプトラックの側面図で、ベッセルが上昇した状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明に係る運搬車両の後方視界表示システムの実施の形態について説明する。以下では、運搬車両として、ダンプトラック(以下、車両という)を想定して説明する。ダンプトラックには、リジットダンプとアーティキュレートダンプがある。アーティキュレートダンプは、リヤフレームに対してフロントフレームが屈折可能に連結された構成のダンプである。本実施形態では、アーティキュレートダンプを想定して説明する。なお、明細書において、車体の「左」側とは、運転席から正面をみたときの左側のことをいい、車体の「右」側とは、運転席から正面をみたときの右側のことをいうものとする。
【0019】
なお、以下では、カメラの画像が車両の運転室のモニタに表示される場合を想定して説明するが、運転室のモニタ以外に、無人ダンプトラックシステムの基地局のモニタに表示させる実施も当然可能である。
図1は、車両100がダンプトラックである場合の後方視界撮影用カメラ10(以下、カメラという)の車体への取り付け位置を示す図である。図1(a)は、車両100の側面を示す図で、図1(b)は、車両100の車体後部をみた図である。ダンプトラック100は、フロントフレーム102Fおよびリヤフレーム102Rの上部にそれぞれ、運転室120および積荷が積載され得るベッセル(ボディ)110が設けられた運搬車両である。図1では、ベッセル110が着座している状態を示している。
【0020】
カメラ10は、リヤアクスル101の上方であって、リヤフレーム102Rに装着されたリヤコンビネーションランプ103の上部、好ましくは上部の中央位置に取り付けられている。なお、リヤコンビネーションランプ103は、ストップランプ、ターンシグナル、テールランプなどの複数のランプ類で構成されてなるものである。
カメラ10は、後輪タイヤ104の後端位置S1よりも前方に位置するように配置されている。カメラ10は、車体後部で跳ね上げられた土砂等が付着しない位置に取り付けることが望ましい。
図1(a)において、斜線部は、カメラ10の視界(撮影範囲)を示す。カメラ10は、車体後方の視界を撮影する。カメラ10の視界には、後輪タイヤ104が入る。
【0021】
図2は、後方視界表示システムのシステム構成図を示している。
車両100の運転室120の内部にあって、運転席前方の図示しないフロントコンソールには、表示部21にカメラ10の画像を表示するリヤビューモニタ20が配置されている。リヤビューモニタ20の表示部21は、たとえば液晶ディスプレイで構成されている。リヤビューモニタ20の表示部21の下方には、輝度調整スイッチ22が配置されている。輝度調整スイッチ22は、表示部21の画面の輝度(明るさ)を調整するスイッチであるとともに、後述する設定操作スイッチを兼ねている。輝度調整スイッチ22は、たとえばシーソースイッチで構成される。
【0022】
リヤビューモニタ20の左側には、表示部31に各種情報を表示するメインモニタ30が配置されている。メインモニタ30の表示部31は、たとえば液晶ディスプレイで構成されている。メインモニタ30の表示部31の右横には、速度計107、エンジン回転計108が配置されている。
【0023】
車両100がダンプトラックである場合、シフトレバー109が運転席からみて正面右側に配置されている。このため操作性を考慮して、シフトレバー109とは反対側である図示しないフロントコンソールの左側にあって、その下方には、スイッチパネル40が配置されている(図2)。
【0024】
スイッチパネル40には、リヤビューモニタ20の表示部21の表示内容の設定操作などを行う操作スイッチ41が配列されている。
リヤビューモニタ20と、メインモニタ30と、スイッチパネル40は、シリアル通信を行う通信線50によって、互いに通信自在に接続されている。リヤビューモニタ20には、たとえばNTSC信号規格のビデオ信号線55を介してカメラ10が接続されている。
【0025】
カメラ10で撮影された車体後方の視界の画像を示す映像信号は、ビデオ信号線55を介して、リヤビューモニタ20に送出され、リヤビューモニタ表示部21に表示される。
【0026】
リヤビューモニタ20と、メインモニタ30と、スイッチパネル40は、通信線50を介してモニタコントローラ60に互いに通信自在に接続されている。モニタコントローラ60は、さらに、通信線50を介して、T/M(トランスミッション)コントローラ51と、RH(リターダ、ホイスト)コントローラ52と、エンジンコントローラ53に互いに通信自在に接続されている。
T/Mコントローラ51は、図示しないトランスミッションを制御するコントローラであり、シフトレバー109のシフト位置を検出するセンサ109aがセンサ信号線56を介して接続されている。シフトレバー109のセンサ109aからは、シフトレバー109のシフト位置を示す信号が、センサ信号線56を介してT/Mコントローラ51に送出される。
【0027】
T/Mコントローラ51は、シフトレバー109のシフト位置に応じた変速が行われるようにトランスミッションを制御する。また、T/Mコントローラ51は、トランスミッションで現在選択されている速度段、つまり実速度段を示す信号を、通信線50を介してモニタコントローラ60に送出する。
【0028】
シフトレバー109のセンサ109aは、センサ信号線57を介してリヤビューモニタ20に接続されている。シフトレバー109のセンサ109aからは、シフトレバー109のシフト位置を示す信号が、センサ信号線57を介してリヤビューモニタ20に送出される。
【0029】
車両100がダンプトラックである場合、運転室120には、ホイストレバー111が設けられている。また、車両100がダンプトラックである場合、ベッセル110の上昇下降位置を検出するポジションセンサ112が設けられている。
【0030】
RHコントローラ52は、図示しないリターダ(ブレーキ)の調節およびベッセル110の上昇下降を制御するコントローラであり、ホイストレバー111の操作位置を検出するセンサ111aがセンサ信号線58を介して接続されているとともに、ポジションセンサ112がセンサ信号線59を介して接続されている。ホイストレバー111のセンサ111aからは、ホイストレバー操作位置を示すホイストレバー操作信号が、センサ信号線58を介してRHコントローラ52に送出されるとともに、ポジションセンサ112からは、ベッセル位置を示す信号が、センサ信号線59を介してRHコントローラ52に送出される。RHコントローラ52は、ホイストレバー操作信号に応じてベッセル110の上昇下降を制御する。また、RHコントローラ52は、ホイストレバー操作信号を、通信線50を介してモニタコントローラ60に送出する。
【0031】
エンジンコントローラ53は、図示しないエンジンを制御するコントローラである。
【0032】
モニタコントローラ60は、映像信号線54を介してメインモニタ30に接続されている。
【0033】
スイッチパネル40の操作スイッチ41を操作することで、Dレンジ発進速度段等の設定、リヤビューモニタ20の表示内容の設定などを行うことができる。なお、Dレンジ発進速度段とは、シフトレバー109がD(ドライブ)レンジに位置された場合に、発進時に選択される速度段のことである。Dレンジ発進速度段は、路面の滑り易さ等を考慮して設定される。
【0034】
メインモニタ30の表示部31は、スイッチパネル40の操作スイッチ41の操作に応じてリヤビューモニタ設定画面、通常画面に切り換わる。リヤビューモニタ設定画面では、リヤビューモニタ表示部21の表示内容の設定を行うための各種メニューが表示される。通常画面では、走行時、作業時に必要な車両情報、つまりエンジン冷却水温、作動油温、燃料残量、サービスメータ(エンジン累積稼動時間)、各種コーション等が表示される。エンジン冷却水温、作動油温、燃料残量、サービスメータ(エンジン累積稼動時間)、各種コーション等はセンサで検出されて、センサ信号としてエンジンコントローラ53等に入力される。これらセンサ信号はエンジンコントローラ53等を経由してモニタコントローラ60に送出される。
スイッチパネル40の操作スイッチ41によって、通常画面に切り替える操作が行われると、スイッチパネル操作スイッチ41の操作内容を示す信号は、通信線50を経由してモニタコントローラ60に送出される。これを受けてモニタコントローラ60は、上述の車両情報と組み合わせて通常画面を構築し、構築した通常画面を表示させるための映像信号を、映像信号線54を経由してメインモニタ30に送出する。この映像信号にしたがいメインモニタ表示部31では、通常画面が表示される。
【0035】
車両が停止している状態でスイッチパネル40の操作スイッチ41によって、リヤビューモニタ設定画面のメニューを選択する操作が行われると、スイッチパネル操作スイッチ41の操作内容を示す信号は、通信線50を経由してモニタコントローラ60に送出される。これを受けてモニタコントローラ60は、操作内容に応じた設定を示す信号を、通信線50を経由してリヤビューモニタ20に送出する。リヤビューモニタ20は、カメラ10から送出されるカメラ映像を、設定内容に応じて加工し、表示信号を生成する。また、設定内容に応じた撮影が行われるように制御信号を生成する。これによりリヤビューモニタ表示部21には、表示信号に応じた画像が表示される。またカメラ10は、制御信号にしたがい撮影を行う。
【0036】
スイッチパネル40の操作スイッチ41を操作することで、たとえばつぎのようなリヤビューモニタ表示部21の表示内容の設定操作を行うことができる。
【0037】
a)正像・鏡像の切替設定操作
これはカメラ10で撮影されリヤビューモニタ表示部21に表示される画像が、正像(目視と同様の像)または鏡像(鏡に映し出されたのと同様の像)にするかを切り替える設定操作のことである。なお、本実施例では、リヤビューモニタ表示部21に表示される画像は、全て正像であるものとする。
b)車幅目安線、距離目安線の位置の設定操作
車幅目安線とは、リヤビューモニタ表示部21に表示される画像中に重ねて表示される車幅の目安となる線であって、後述するように車両100の車体の左右位置を示す線のことをいう。また距離目安線とは、リヤビューモニタ表示部21に表示される画像に重ねて表示される後方距離の目安となる線である。車両100がダンプトラックである場合には、距離目安線は、ベッセル110の積荷を排土する排土作業時に基準となる後方位置を示す排土作業時距離目安線となる。この設定操作によって、画像中における車幅目安線、距離目安線の位置を任意に変えることができる。車幅目安線、距離目安線の位置の設定操作を行う際には、リヤビューモニタ表示部21にカメラ10の撮影画像が表示されるとともに、現在の設定操作に対応する車幅目安線、距離目安線がカメラ10の撮影画像に重畳されて表示される。また車幅目安線、距離目安線の位置の設定操作を行う際には、輝度調整スイッチ22は、画像中における車幅目安線、距離目安線の設定位置を微調整する設定操作スイッチとして機能する。
【0038】
c)車幅目安線、距離目安線の表示のオン/オフ設定操作
これは、リヤビューモニタ表示部21に表示される画像中に、車幅目安線、距離目安線を重ねて表示するかどうか、つまり目安線の表示をオンするかオフするかを設定する操作のことである。以下では、車幅目安線、距離目安線の表示がオンに設定されているものとして説明する。
図3は、リヤビューモニタ20の内部ブロック図である。図3に示すCPU23は、本発明の表示制御手段を構成する。
【0039】
モニタコントローラ60から送出された信号は、通信インターフェース24を介してCPU23に入力される。
【0040】
輝度調整スイッチ22の操作内容を示す信号は、オン/オフの入力回路25を介してCPU23に入力される。またシフトレバー109のシフト位置を示す信号は、オン/オフの入力回路25を介してCPU23に入力される。
【0041】
カメラ10で撮影された車体後方の視界の画像を示す映像信号は、カメラ映像入力回路26を介してCPU23に入力される。
【0042】
モニタコントローラ60からリヤビューモニタ設定画面の設定操作を示す信号がCPU23に入力されると、設定操作内容のデータは、不揮発性メモリ27に記憶される。
【0043】
不揮発性メモリ27に記憶された設定操作内容が、カメラ10の正像、鏡像の切替えの設定である場合には、その設定内容を示す信号を、CPU23は、カメラ正像/鏡像切替出力回路28に出力する。カメラ正像/鏡像切替出力回路28は、設定内容に応じて、カメラ10を正像で撮影させるための制御信号、あるいはカメラ10を鏡像で撮影させるための制御信号を生成して、カメラ10に出力する。これによりカメラ10は、正像あるいは鏡像で撮影する。
【0044】
不揮発性メモリ27に記憶された設定操作内容が、車幅目安線、距離目安線の位置の設定である場合には、CPU23は、その設定内容と、カメラ10の映像とに基づいて、画像中の設定された位置に車幅目安線、距離目安線が位置するように表示信号を生成する。表示信号は、ディスプレイコントローラ29に出力される。ディズプレイコントローラ29は、表示信号にしたがいリヤビューモニタ表示部21の表示を制御する。これによりリヤビューモニタ表示部21に表示される画像中の設定された位置に、車幅目安線、距離目安線が重ねて表示される。
【0045】
つぎに、図4に示す画面遷移図を併せ参照して、実施例の車幅目安線および距離目安線の位置の設定操作の手順について説明する。
【0046】
図4において、図中左に示す図4(a)、(b)、(c)、(d)、(e)はそれぞれ、メインモニタ表示部31に表示される画面を示す図で、リヤビューモニタ設定画面の遷移図である。図4(f)、(g)、(h)、(i)はそれぞれ、図4(a)および(b)、(c)、(d)、(e)に対応してリヤビューモニタ表示部21に表示される画面の遷移図である。図中の黒矢印(→)にしたがって画面が遷移する。また、図中の白抜き矢印(⇒)は、リヤビューモニタ設定画面のメニューで現在選択されているボックスを示す。
【0047】
初期状態では、リヤビューモニタ表示部21には、カメラ10の撮影画像が表示されている。この状態でリヤビューモニタ設定画面のメニューから「目安線位置調整」のボックスがスイッチパネル操作スイッチ41によって選択されると(図4(a))、リヤビューモニタ設定画面はつぎのポイント選択メニュー画面(図4(b))に遷移する。これに伴いリヤビューモニタ表示部21には、車幅目安線11(11L、11R)、距離目安線12の初期位置がカメラ10の撮影画像に重畳されて表示される(図4(f))。
ここで、リヤビューモニタ表示部21の画像中には、位置設定が行われるポイント1、ポイント2、ポイント3、ポイント4の場所を示す表示がなされる。すなわち、画像中の位置設定が行われる各ポイント1、2、3、4に対応する場所にオペレータの操作の目印となる「1」、「2」、「3」、「4」が表示される。車幅目安線11は、車体左位置を示す左車幅目安線11Lと、車体右位置を示す右車幅目安線11Rとからなる。距離目安線12は、ポイント1で右車幅目安線11Rと交差するとともに、ポイント2で左車幅目安線11Lと交差する。リヤビューモニタ表示部21の画像の図中左右方向を「X方向」、図中上下方向を「Y方向」とする。
【0048】
右車幅目安線11Rの車体前方側端点の位置がポイント3となり、左車幅目安線11Lの車体前方側端点の位置がポイント4となる。
【0049】
つぎに、リヤビューモニタ設定画面のポイント選択メニューから「ポイント1」のボックスがスイッチパネル操作スイッチ41によって選択されると(図4(b))、リヤビューモニタ表示部21の画像中のポイント1に、ポイント1をX方向に移動させるための補助となる補助ライン13が表示される(図4(g))。補助ライン13および後述する補助ライン14は、左右車幅目安線11L、11R、距離目安線12と識別できるように、これら目安線と異なる色の十字ラインで構成されている。十字としたのは、左右車幅目安線11L、11Rと距離目安線12との交点をわかりやすくするためである。また、移動方向が理解できるように、移動方向に応じて十字のラインを構成する各ラインの長さが変化する。X方向に交点を調整する場合には、十字ラインのうちX方向のラインの長さがY方向のラインの長さよりも長くなる補助ライン13が用いられ(図4(g))、Y方向に交点を調整する場合には、十字ラインのうちY方向のラインの長さがX方向のラインの長さよりも長くなる補助ライン14が用いられる(図4(h))。
また、輝度調整スイッチ22は、画像中におけるポイント1の設定位置(右車幅目安線11R、距離目安線12の設定位置)を微調整する設定操作スイッチに切り替わる(図4(g))。また、リヤビューモニタ設定画面は、つぎのX方向位置調整画面に遷移する(図4(c))。
【0050】
以後、輝度調整スイッチ22(シーソースイッチ)を操作すると、操作方向に応じた左右方向に、操作回数に応じた操作量分だけ、ポイント1が補助ライン13とともに、リヤビューモニタ表示部21の画像中でX方向に移動する(図4(g);破線矢印参照)。
【0051】
ポイント1のX方向位置を決定すると、スイッチパネル操作スイッチ41でポイント1のX方向位置を確定する操作が行われる。この操作に応じて、リヤビューモニタ設定画面は、つぎのY方向位置調整画面に遷移するとともに(図4(d))、リヤビューモニタ表示部21の画像中のポイント1に、ポイント1をY方向に移動させるための補助となる補助ライン14が表示される。なお、輝度調整スイッチ22は、継続して設定操作スイッチとして機能する。
【0052】
以後、輝度調整スイッチ22(シーソースイッチ)を操作すると、操作方向に応じた上下方向に、操作回数に応じた移動量分だけ、ポイント1が補助ライン14とともに、リヤビューモニタ表示部21の画像中でY方向に移動する(図4(h);破線矢印参照)。
【0053】
ポイント1のY方向位置を決定すると、スイッチパネル操作スイッチ41でポイント1のY方向位置を確定する操作が行われる。この操作に応じて、リヤビューモニタ設定画面は、つぎのポイント選択メニュー画面(図4(e))に遷移するとともに、ポイント1の設定が完了したものとして、リヤビューモニタ表示部21の画像中から、補助ライン14が消去される。また、設定後のポイント1のX,Y座標位置が所定のメモリに記憶される。また、輝度調整スイッチ22は、本来の輝度調整の機能に切り替わる。
【0054】
以後、同様にしてポイント2、ポイント3、ポイント4についても、リヤビューモニタ設定画面のポイント選択メニューから「ポイント2」、「ポイント3」、「ポイント4」を選択して、上述したのと同様の処理を行うことにより、それら各ポイントの位置を設定することができる。
【0055】
図5(a)、(b)は、ポイント1、ポイント2の設定前のリヤビューモニタ表示部21の画像(図5(a))と、ポイント1、ポイント2の設定後のリヤビューモニタ表示部21の画像(図5(b))とを比較して示す。設定前後で、ポイント1、ポイント2の位置、つまりポイント1とポイント2を結ぶ距離目安線12の車体前後方向位置が変化しているのがわかる。
【0056】
なお、ポイント3、ポイント4についても同様に位置設定が行われる。ポイント3、ポイント4の設定前では、ポイント3、ポイント4が画像の最下端に位置しており、左右車幅目安線11L、11Rがそれぞれ左右後輪タイヤ104L、104R上に重なって表示されている。このため左右後輪タイヤ104L、104Rから得られる車幅と、これら左右後輪タイヤ104L、104Rに重なった車幅目安線11L、11Rから得られる車幅との違いによって、オペレータに違和感を与えることになる(図5(a))。
これに対して、ポイント3、ポイント4の設定後では、ポイント3(右車幅目安線11Rの車体前方側端点)、ポイント4(左車幅目安線11Lの車体前方側端点)がそれぞれ右後輪タイヤ104R、左後輪タイヤ104Lの後端境界に位置する。すなわち左右車幅目安線11L、11Rがそれぞれ左右後輪タイヤ104L、104R上に重ならないように各ポイント3、4の設定位置が調整される。このためオペレータは、上述した違和感を受けることなく、画像中の車幅目安線11L、11Rから正確に車幅の情報を得ることができる(図5(b))。
以上、1本の距離目安線12を設定する場合について説明したが、車体前後方向位置が異なる複数の距離目安線12a、12b、12c…を設定することもできる。なお、この例では、各距離目安線を符号「12」に添字「a」、「b」、「c」…を付加して互いに区別する。
【0057】
この場合、リヤビューモニタ設定画面のメニューから「目安線a位置調整」、「目安線b位置調整」、「目安線c位置調整」を選択し、各「目安線a位置調整」、「目安線b位置調整」、「目安線c位置調整」の選択メニュー毎に、距離目安線12a、12b、12c…を図4で説明したのと同様の手順で設定する機能が付加される。
【0058】
さらに、これら設定された複数の距離目安線12a、12b、12c…の中から、メインモニタ表示部31が通常画面に切り替えられたとき(通常走行、通常作業時)に、リヤビューモニタ表示部21に表示すべき距離目安線(たとえば距離目安線12a)を選択する機能がリヤビューモニタ設定画面のメニューに付加される。
【0059】
図6(a)、(b)、(c)はそれぞれ、リヤビューモニタ設定画面のメニューにしたがい設定された距離目安線12a、12b、12cを示す。距離目安線12aが車体から最も離れた後方位置にあり(図6(a))、距離目安線12cが車体に最も近く(図6(c))、距離目安線12bが、距離目安線12aと距離目安線12cの間に位置する(図6(b))。
【0060】
たとえば距離目安線12a(図6(a))が選択されたものとすると、メインモニタ表示部31が通常画面に切り替えられたときには、リヤビューモニタ表示部21には、選択された距離目安線12aがカメラ10の撮影画像に重ねて表示されることになる。なお、図6(a)、(b)、(c)においても図5(b)と同様にポイント3、ポイント4の設定位置がそれぞれ右後輪タイヤ104R、左後輪タイヤ104Lの後端境界に位置するように調整される。よって、オペレータは、違和感を受けることなく、画像中の車幅目安線11L、11Rから正確に車幅の情報を得ることができる。
以上、一画面に1本の距離目安線12のみを表示するように設定する場合について説明したが、一画面に車体前後方向位置が異なる複数の距離目安線12、12´、12´´…を併せて表示するように設定することもできる。なお、この例では、各距離目安線を符号「12」に「´」(ダッシュ)を付加して互いに区別する。
【0061】
この場合、リヤビューモニタ設定画面のポイント選択メニューのポイント選択数を増やすことで対応することができる。図4の例では、4点のポイント1、2、3、4を順次選択し、選択した各ポイント1、2、3、4の位置を調整することで、1本の距離目安線12を設定するようにしているが、図7(a)に示すように、更に2点のポイント5、6を付加して、6本のポイント1、2、3、4、5、6を順次選択し、選択した各ポイント1、2とポイント5、6の位置を調整することで、2本の距離目安線12、12´を設定することができる。
【0062】
ポイント5は、ポイント1とポイント3の間、つまり右車幅目安線11R上に付加されるポイントである。ポイント6は、ポイント2とポイント4の間、つまり左車幅目安線11L上に付加されるポイントである。ポイント5とポイント6を結ぶ線分が、付加された距離目安線12´となる。
【0063】
図7(a)、(b)は、ポイント1、ポイント2、ポイント5、ポイント6の設定前のリヤビューモニタ表示部21の画像(図7(a))と、ポイント1、ポイント2、ポイント5、ポイント6の設定後のリヤビューモニタ表示部21の画像(図7(b))とを比較して示す。設定前後で、ポイント1、ポイント2の位置、つまりポイント1とポイント2を結ぶ距離目安線12の車体前後方向位置と、ポイント5、ポイント6の位置、つまりポイント5とポイント6を結ぶ距離目安線12´の車体前後方向位置とが変化しているのがわかる。
【0064】
同様にしてポイント7、ポイント8を付加し、図8に示すように、3本の距離目安線12、12´、12´´を同一画面に表示するようにしてもよい。
【0065】
なお、図7(b)、図8においても図5(b)と同様にポイント3、ポイント4の設定位置がそれぞれ右後輪タイヤ104R、左後輪タイヤ104Lの後端境界に位置するように調整される。よって、オペレータは、違和感を受けることなく、画像中の車幅目安線11L、11Rから正確に車幅の情報を得ることができる。
つぎに、1本の距離目安線12を設定する手順について説明する。
【0066】
距離目安線12を設定するに際しては、図9あるいは図10に示すように、設定しようとするポイント1、ポイント2に相当する路面の各地点、設定しようとするポイント1、ポイント2の中間点に相当する路面の地点に、パイロン200を設置する。図9は、ベッセル110が着座している状態を示し、図10は、ベッセル110が上昇している状態を示す。
【0067】
また、図11は、図1(a)に対応する図であり、ベッセル110が上昇しているときの車両100の側面図である。
【0068】
パイロン200を設置する路面位置は、つぎの1)〜6)のとおりであり、距離目安線12は、排土作業時に基準となる排土作業時距離目安線として設定される。
【0069】
1)排土作業時距離目安線12を、ベッセル110が着座しているときにおける車体後端を路面に投影した位置(車体後端直下の位置)S2に設定する(図1(a)、図9、図10、図11のS2参照)。位置S2は、ベッセル110着座時にこれ以上後退したら後方の障害物と衝突するおそれがあることを示す位置のことである。
【0070】
2)排土作業時距離目安線12を、ベッセル110が着座しているときにおける車体後端を路面に投影した位置(車体後端直下の位置)S2から所定距離後方へ離間した路面上の位置S21に設定する(図1(a)、図10、図11のS21参照)。ここで、所定距離とは、ベッセル110着座時に後方の障害物との衝突を回避するために余裕を見込んだ距離である。
【0071】
3)排土作業時距離目安線12を、ベッセル110が上昇しているときにおける車体後端を路面に投影した位置(車体後端直下の位置)S3に設定する(図10、図11のS3参照)。位置S3は、ベッセル110上昇時にこれ以上後退したら後方の障害物と衝突するおそれがあることを示す位置のことである。実施例では、位置S3は、ベッセル110が最も上昇したときの位置に設定する。位置S3は、ベッセル110が上昇しているときに、ベッセル110の後端が最も車体の後方となる位置の意味で使用する。実施例では、ベッセル110が最も上昇したときにおける車体後端を路面に投影した位置が最も車体後方に位置するものとして説明するが、ベッセル110の後端が最も車体の後方位置となるのは、必ずしもベッセル110が最も上昇したときとは限らない。ベッセル110の端部の形状によっては、ベッセル110の端部が描く上昇軌跡の途中の点を路面に投影した位置、つまりベッセル110が上昇途上にあるときのベッセル110の端部を路面に投影した位置が、最も車体後方に位置することがある。よって、車種によっては、 位置S3は、最上昇時以外の回動位置に設定されることがある。
4)排土作業時距離目安線12を、ベッセル110が上昇しているときにおける車体後端を路面に投影した位置(車体後端直下の位置)S3から所定距離後方へ離間した路面上の位置S31に設定する(図11のS31参照)。ここで、所定距離とは、ベッセル110上昇時に後方の障害物との衝突を回避するために余裕を見込んだ距離である。
【0072】
5)排土作業時距離目安線12を、後輪タイヤ104の後端を路面に投影した位置(後輪後端直下の位置)S1に設定する(図1(a)、図9、図11のS1参照)。位置S1は、これ以上後退したら、崖地や窪地などに干渉し転落、スタック等のおそれがあることを示す位置のことである。
【0073】
6)排土作業時距離目安線12を、後輪タイヤ104の後端を路面に投影した位置(後輪後端直下の位置)S1から所定距離後方へ離間した路面上の位置S11に設定する(図1(a)、図9、図11のS11参照)。ここで、所定距離とは、これ以上後退したら、転落、スタック等を回避するために余裕を見込んだ距離である。位置S11は、後輪タイヤ104の後端を路面に投影した位置S1とベッセル110が着座しているときにおける車体後端を路面に投影した位置S2との間の路面上の位置に設定される。
【0074】
5)と6)を併せて「後輪タイヤ後端付近」の位置(位置S1から位置S11までの後輪タイヤ後端付近位置)という。
つぎに、オペレータあるいはサービスマンなどの操作者は、図4と同様の手順にて、リヤビューモニタ表示部21の画像に映ったパイロン200を目印に、補助ライン13、14を画面上で動かし、距離目安線12の位置を調整し、上記1)〜6)のいずれかの排土作業時距離目安線12に設定する。すなわち、図5(b)に示す距離目安線12が、上記1)〜6)に示すいずれかの位置S2、S21、S3、S31、S1、S11に定められる。
【0075】
以上のような排土作業時距離目安線12の設定作業が終了すると、スイッチパネル40の操作スイッチ41を操作して、メインモニタ表示部31を通常画面に切り替える。これによりオペレータは、メインモニタ表示部31から走行、作業に必要な車両情報を得て、走行、作業を行うことができる。一方、リヤビューモニタ表示部21には、走行、作業中に、排土作業時距離目安線12が、カメラ10が撮影した画像に重ね合わせて表示される。これによりオペレータは、カメラ画像中の排土作業時距離目安線12を目安に後退すれば、路面上のどの位置まで車両100を後退させて停止すれば所望する排土位置に達するのか、あるいは衝突、転落等を回避できるのかどうかを正確に把握することができるようになる。特に、排土作業時距離目安線12を、ベッセル110上昇時(たとえばベッセル110最上昇時)における車体後端を路面に投影した位置S3あるいは位置S3より所定距離後方の位置S31に設定した場合には、オペレータは、ベッセル110が上昇したとき(たとえばベッセル110最上昇時)の停止位置をカメラ画像から正確に把握することができるようになる。
【0076】
なお、ベッセル110の最上昇時に合わせて位置S3を設定しカメラ画像から位置S3を目安に車体後方を確認することにより、ベッセル110の動作範囲全域において干渉を回避することができるようになる。
カメラ10の撮影画像を走行、作業中に常時リヤビューモニタ表示部21に表示させてもよく、必要と判断された場合のみに表示させてもよい。たとえばつぎのa)、b)の態様が考えられる。
【0077】
a)シフトレバー109のシフト位置がR(リバース)レンジに位置されたときに、カメラ10の撮影画像をリヤビューモニタ表示部21に表示させる。
【0078】
b)排土作業を行っていることを判断し、排土作業を行っていることが判断された場合に、カメラ10の撮影画像をリヤビューモニタ表示部21に表示させる。
【0079】
「排土作業を行っていること」は、たとえばつぎの(a)または(b)または(c)の条件が成立していることをもって判断することができる。
【0080】
(a)シフトレバー位置がRである場合(車両100が後退している排土作業開始時)
(b)シフトレバー位置がN(ニュートラル)にある場合であってホイストレバー111が「上げ」、「下げ」位置にある場合(車両100が停止しベッセル110を上昇下降させている排土時)
(c)シフトレバー位置がF(前進)のDレンジにある場合であってホイストレバー111が「上げ」、「下げ」位置にありかつ実速度段がDレンジ発進速度段以下である場合(車両100が排土を終え排土点から発進する排土作業終了時)
以上のように本実施例では、画像中におけるポイント1、2の位置を手動で調整することによって、距離目安線12の位置を調整し、排土作業時距離目安線12として設定するようにしている。このため車両100の機種、号機毎に、車体後端位置、後輪タイヤ後端位置が異なる場合であっても、容易に、各機種、各号機に適した位置に、正確に排土作業機距離目安線12を設定するよう調整することができる。
【0081】
また、上記1)〜6)の中の2以上の排土作業時距離目安線12a、12b、12c…を設定しておき、それら設定された各排土作業時距離目安線12a、12b、12c…の内いずれか1つの排土作業時距離目安線を選択し、選択された排土作業時距離目安線を、メインモニタ表示部31が通常画面に切り替えられたときに、リヤビューモニタ表示部21に表示させてもよい。
【0082】
たとえば図6(a)に示す距離目安線12aを、位置S21(図9参照)の排土作業時距離目安線12aとして設定し、図6(b)に示す排土作業時目安線12bを、位置S2(図9参照)の排土作業時距離目安線12bとして設定し、図6(c)に示す距離目安線12cを、位置S1から位置S11までの後輪タイヤ後端付近位置(図9参照)の排土作業時距離目安線12cとして設定し、たとえば排土作業時目安線12aを選択して、メインモニタ表示部31が通常画面に切り替えられたときに、リヤビューモニタ表示部21に、選択された排土作業時距離目安線12a(ベッセル110着座時の車体後端より所定距離後方の位置S21)をカメラ10の撮影画像に重ねて表示させることができる。
【0083】
また、上記1)〜6)の中の2以上の距離目安線12、12´…を一画面に表示させてもよい。
【0084】
たとえば図7(b)に示す距離目安線12を、位置S21(図9参照)の排土作業時距離目安線12として設定するとともに、距離目安線12´を、位置S2(図9参照)の排土作業時距離目安線12´として設定し、メインモニタ表示部31が通常画面に切り替えられたときに、リヤビューモニタ表示部21に、排土作業時距離目安線12(ベッセル110着座時の車体後端位置から所定距離後方の位置S21)と、排土作業時距離目安線12´(ベッセル110着座時の車体後端位置S2)を同時にカメラ10の撮影画像に重ねて表示させることができる。
【0085】
また、たとえば図7(b)に示す距離目安線12を、位置S3(図10参照)の排土作業時距離目安線12として設定するとともに、距離目安線12´を、位置S2(図10参照)の排土作業時距離目安線12´として設定し、メインモニタ表示部31が通常画面に切り替えられたときに、リヤビューモニタ表示部21に、排土作業時距離目安線12(ベッセル110上昇時の車体後端位置S3)と、排土作業時距離目安線12´(ベッセル110着座時の車体後端位置S2)を同時にカメラ10の撮影画像に重ねて表示させることができる。
【0086】
また、図8に示すように、3本の距離目安線12、12´、12´´の位置を調整して、上記1)〜6)の中の3本の排土作業時距離目安線12、12´、12´´を一画面に表示させてもよい。
【0087】
2本以上の排土作業機距離目安線12、12´…を一画面に表示させる場合には、両者を互いに識別できるように表示させることが望ましい。識別可能な表示の態様としては以下の態様が挙げられる。
【0088】
・各排土作業機距離目安線12、12´…を異なる色または異なる明度で表示する。
【0089】
・各排土作業機距離目安線12、12´…の線幅を異なる太さにして表示する。
【0090】
・各排土作業機距離目安線12、12´…の線種(実線、破線など)あるいは形状を異ならせて表示する。
【0091】
・各排土作業機距離目安線12、12´…の点灯状態(点滅、不点滅など)を異ならせて表示する。
【0092】
また、各排土作業機距離目安線12、12´…間の距離がカメラ画像からわかるように、距離の目盛りを併せて画像中に表示させてもよい。たとえば、図9において、ベッセル110上昇時における車体後端を路面に投影した位置S2から後方位置S21までの所定距離を計測し、計測データを入力して、図7(b)に示すリヤビューモニタ表示部21の画面上の各排土作業機距離目安線12と排土作業時距離目安線12´の間に、距離の目盛りを表示させるようにする。
【0093】
以上各実施例では、各排土作業機距離目安線12あるいは12a、12b、12c、12´、12´´が、ポイント1、2あるいはポイント5、6あるいはポイント7、8間を結ぶ線分であるとして説明したが、排土作業時に目安となるものであればよく、必ずしも線分ではなく点状のものであってもよい。
【符号の説明】
【0094】
1、2、3、4、5、6、7、8 ポイント、10 カメラ、12、12a、12b、12c、12´、12´´ 排土作業時距離目安線(距離目安線)、12P1、12P2、12P5、12P6 排土作業時距離目安点、20リヤビューモニタ、21 表示部、23 CPU、100 車両、104 後輪タイヤ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベッセルを備えた運搬車両の車体後方に取付けられたカメラによって車体後方の視界を撮影し、撮影した画像を表示部に表示する運搬車両の後方視界表示システムにおいて、
ベッセルが上昇しているときにベッセルの後端が最も車体の後方となる車体後端を路面に投影した位置、または
後輪タイヤ後端を路面に投影した位置、または
後輪タイヤ後端を路面に投影した位置とベッセルが着座しているときにおける車体後端を路面に投影した位置との間の路面上の位置に、ベッセルの積荷を排土する排土作業時に基準となる排土作業時距離目安線あるいは排土作業時距離目安点を設定し、該排土作業時距離目安線あるいは排土作業時距離目安点を、表示部に表示される画像に、重ね合わせて表示する表示制御手段
を備えたことを特徴とする運搬車両の後方視界表示システム。
【請求項2】
排土作業時距離目安線あるいは排土作業時距離目安点は、ベッセル着座時における車体後端を路面に投影した位置に設定されることを特徴とする請求項1記載の運搬車両の後方視界表示システム。
【請求項3】
排土作業時距離目安線あるいは排土作業時距離目安点は、ベッセル上昇時における車体後端を路面に投影した位置に設定されることを特徴とする請求項1記載の運搬車両の後方視界表示システム。
【請求項4】
排土作業時距離目安線あるいは排土作業時距離目安点は、後輪タイヤの後端を路面に投影した位置あるいは該投影した位置から後方へ所定距離離れた路面上の位置に設定されることを特徴とする請求項1記載の運搬車両の後方視界表示システム。
【請求項5】
排土作業時距離目安線あるいは排土作業時距離目安点は、路面上の複数の位置に設定され、複数の排土作業時距離目安線あるいは複数の排土作業時距離目安点が互いに識別可能に表示されることを特徴とする請求項1記載の運搬車両の後方視界表示システム。
【請求項6】
排土作業時距離目安線あるいは排土作業時距離目安点は、路面上の複数の位置に設定され、複数の排土作業時距離目安線あるいは複数の排土作業時距離目安点が選択可能となっており、選択された排土作業時距離目安線あるいは排土作業時距離目安点が画像中に表示されることを特徴とする請求項1記載の運搬車両の後方視界表示システム。
【請求項1】
ベッセルを備えた運搬車両の車体後方に取付けられたカメラによって車体後方の視界を撮影し、撮影した画像を表示部に表示する運搬車両の後方視界表示システムにおいて、
ベッセルが上昇しているときにベッセルの後端が最も車体の後方となる車体後端を路面に投影した位置、または
後輪タイヤ後端を路面に投影した位置、または
後輪タイヤ後端を路面に投影した位置とベッセルが着座しているときにおける車体後端を路面に投影した位置との間の路面上の位置に、ベッセルの積荷を排土する排土作業時に基準となる排土作業時距離目安線あるいは排土作業時距離目安点を設定し、該排土作業時距離目安線あるいは排土作業時距離目安点を、表示部に表示される画像に、重ね合わせて表示する表示制御手段
を備えたことを特徴とする運搬車両の後方視界表示システム。
【請求項2】
排土作業時距離目安線あるいは排土作業時距離目安点は、ベッセル着座時における車体後端を路面に投影した位置に設定されることを特徴とする請求項1記載の運搬車両の後方視界表示システム。
【請求項3】
排土作業時距離目安線あるいは排土作業時距離目安点は、ベッセル上昇時における車体後端を路面に投影した位置に設定されることを特徴とする請求項1記載の運搬車両の後方視界表示システム。
【請求項4】
排土作業時距離目安線あるいは排土作業時距離目安点は、後輪タイヤの後端を路面に投影した位置あるいは該投影した位置から後方へ所定距離離れた路面上の位置に設定されることを特徴とする請求項1記載の運搬車両の後方視界表示システム。
【請求項5】
排土作業時距離目安線あるいは排土作業時距離目安点は、路面上の複数の位置に設定され、複数の排土作業時距離目安線あるいは複数の排土作業時距離目安点が互いに識別可能に表示されることを特徴とする請求項1記載の運搬車両の後方視界表示システム。
【請求項6】
排土作業時距離目安線あるいは排土作業時距離目安点は、路面上の複数の位置に設定され、複数の排土作業時距離目安線あるいは複数の排土作業時距離目安点が選択可能となっており、選択された排土作業時距離目安線あるいは排土作業時距離目安点が画像中に表示されることを特徴とする請求項1記載の運搬車両の後方視界表示システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−195051(P2011−195051A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−64807(P2010−64807)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】
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