説明

運搬車

【課題】大きな半径に沿って走行方向を変更する走行が可能であると共に、直進方向(Y方向)及び、直進方向(Y方向)に対して直交する方向(X方向)に走行方向を変更する走行を行うことが可能で、走行可能な面積が狭いところでの使用に適した運搬車。
【解決手段】矩形状の台車の四隅部下部にそれぞれ車輪が配備されて走行する運搬車であって、前記台車の一つの対角線上に位置する一つの前輪を前輪駆動車輪、一つの後輪を後輪駆動車輪とすることによって、台車への前進、後退、等の走行用の駆動力を与えることとし、前輪駆動車輪、後輪駆動車輪が配置されている対角線とは異なる対角線上に位置する一つの前輪を前輪自在車輪、一つの後輪を後輪自在車輪とし、前記前輪駆動車輪、後輪駆動車輪の垂直方向に延びる縦回転軸の回りの回転運動を同期して行うようにした運搬車。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フォークリフトなどに代表される、矩形状の台車の四隅部下部にそれぞれ車輪が配備されて走行する運搬車に関し、特に、大きな半径に沿って走行方向を変更する走行が可能であると共に、直進方向(Y方向)及び、直進方向(Y方向)に対して直交する方向(X方向)に走行方向を変更する走行を行うことができ、走行可能な面積が狭いところでの使用に適した運搬車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からフォークリフトなどに代表される、矩形状の台車の四隅部下部にそれぞれ車輪が配備されて走行する運搬車は、前輪又は後輪の2輪操舵によって走行方向の変更を行っているものであり、走行方向を変更する際の走行の軌跡は大きな半径に沿ったものになっている。
【0003】
これに対して、直進方向(Y方向)及び、直進方向(Y方向)に対して直交する方向(X方向)に走行方向を変更する走行を行うことができる運搬車も種々提案されている。例えば、特許文献1、2。
【特許文献1】特開平10−119764号公報
【特許文献2】特開2002−36809号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
走行方向を変更する際の走行の軌跡が大きな半径に沿ったものになる従来の運搬車は、クリーンルームのように走行可能な面積が狭いところで使用することが難しいという問題があった。
【0005】
一方、直進方向(Y方向)及び、直進方向(Y方向)に対して直交する方向(X方向)に走行方向を変更する走行を行うことができる運搬車として従来提案されているものは、大きな半径に沿って走行方向を変更する走行が可能であると共に、直進方向(Y方向)及び、直進方向(Y方向)に対して直交する方向(X方向)に走行方向を変更する走行を行うことが可能で、走行可能な面積が狭いところでの使用に適した運搬車としては改良の余地があった。
【0006】
そこで、この発明は、大きな半径に沿って走行方向を変更する走行が可能であると共に、直進方向(Y方向)及び、直進方向(Y方向)に対して直交する方向(X方向)に走行方向を変更する走行を行うことが可能で、走行可能な面積が狭いところでの使用に適した運搬車を提案することを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本願は、次に説明する運搬車を提案するものである。
【0008】
矩形状の台車の四隅部下部にそれぞれ車輪が配備されて走行する運搬車であって、
前記台車の一方の対角線上に位置する一方の前輪は、水平方向に延びる第一の前輪横回転軸の周りに自在に回転すると共に、当該第一の前輪横回転軸に直交し垂直方向に延びる第一の前輪縦回転軸の周りに自在に回転する前輪自在車輪として構成され、
前記台車の一方の対角線上に位置する一方の後輪は、水平方向に延びる第一の後輪横回転軸の周りに自在に回転すると共に、当該第一の後輪横回転軸に直交し垂直方向に延びる第一の後輪縦回転軸の周りに自在に回転する後輪自在車輪として構成され、
前記台車の他方の対角線上に位置する他方の前輪は、水平方向に延びる第二の前輪横回転軸の回転につれて回転する前輪駆動輪と、当該前輪駆動輪に平行して配備され、前記第二の前輪横回転軸の周りを自在に回転する前輪自在輪とからなる前輪駆動車輪として構成され、
前記台車の他方の対角線上に位置する他方の後輪は、水平方向に延びる第二の後輪横回転軸の回転につれて回転する後輪駆動輪と、当該後輪駆動輪に平行して配備され、前記第二の後輪横回転軸の周りを自在に回転する後輪自在輪とからなる後輪駆動車輪として構成され、
前記前輪駆動車輪は、前記前輪駆動輪と前輪自在輪との間を、前記第二の前輪横回転軸が延びる方向に直交して垂直方向に延びる第二の前輪縦回転軸の周りに回動可能に前記台車の下部に配備され、
前記後輪駆動車輪は、前記後輪駆動輪と後輪自在輪との間を、前記第二の後輪横回転軸が延びる方向に直交して垂直方向に延びる第二の後輪縦回転軸の周りに回動可能に前記台車の下部に配備され、
前記台車において、前記一方の後輪が配備されている位置に前記前輪駆動輪を駆動する第一の駆動モータ、前記他方の後輪が配備されている位置に前記後輪駆動輪を駆動する第二の駆動モータが、それぞれ、配備され、
前記前輪駆動車輪及び後輪駆動車輪の、前記第二の前輪縦回転軸及び前記第二の後輪縦回転軸の回りの回転運動が同期して行われる
ことを特徴とする運搬車。
【0009】
すなわち、この発明が提案する運搬車は、
矩形状の台車の四隅部下部にそれぞれ車輪が配備されて走行する運搬車であって、
前記台車の一つの対角線上に位置する一つの前輪を台車に対して走行方向の駆動力を与える前輪駆動車輪、一つの後輪を同様に台車に対して走行方向の駆動力を与える後輪駆動車輪とし、
前記前輪駆動車輪、後輪駆動車輪はいずれも垂直方向に延びる縦回転軸の回りに回転可能に台車の下部に取り付けられていて、この前輪駆動車輪、後輪駆動車輪の垂直方向に延びる縦回転軸の回りの回転運動が同期して行われ、
前記の前輪駆動車輪及び後輪駆動車輪が配置されている対角線とは異なる対角線上に位置する一つの前輪及び一つの後輪が、いずれも、水平方向に延びる横回転軸の周りに自在に回転すると共に、垂直方向に延びる縦回転軸の周りに自在に回転する前輪自在車輪及び、後輪自在車輪
となっているものである。
【0010】
また、運搬車の構造を考慮して、前述した後輪駆動車輪を駆動する駆動モータを、台車に当該後輪駆動車輪が配備されている位置に配備される第二の駆動モータM2とし、前輪駆動車輪を駆動する駆動モータを、前記後輪駆動車輪とは異なる側の後輪(後輪自在車輪)が台車に配備されている位置に配備される第一の駆動モータM1としたものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、大きな半径に沿って走行方向を変更する走行が可能であると共に、直進方向(Y方向)及び、直進方向(Y方向)に対して直交する方向(X方向)に走行方向を変更する走行を行うことが可能で、走行可能な面積が狭いところでの使用に適した運搬車を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。
【0013】
本発明の運搬車は、図3に仮想線で示す矩形状の台車1の四隅部下部にそれぞれ車輪が配備されて走行するものである。
【0014】
台車1の四隅部下部にそれぞれ配備されている車輪は次のようになっている。
【0015】
台車1の一つの対角線上に位置する一方の後輪(図3中、台車1の右下隅部に配備される後輪)は、図7に示すように、水平方向に延びる第一の後輪横回転軸34の回りに、矢印32、33で示すように、自在に回転できるようになっていると共に、第一の後輪横回転軸34に直交して、図7中、上下方向(垂直方向)に延びる第一の後輪縦回転軸35の回りに、矢印30、31で示すように、自在に回転できるようになっている。
【0016】
こうして、台車1の一つの対角線上に位置する一方の後輪(図3中、台車1の右下隅部に配備される後輪)は、後輪自在車輪2aとして構成されている。
【0017】
台車1の一つの対角線上に位置する一方の前輪(図3中、台車1の左上隅部に配備される前輪)も、図7を用いて説明した後輪自在車輪2aと同様の構造からなる前輪自在車輪2として構成されている。なお、前輪自在車輪2の場合、図7を用いて説明した後輪自在車輪2aにおける第一の後輪横回転軸34が第一の前輪横回転軸となり、第一の後輪縦回転軸35が第一の前輪縦回転軸になる。
【0018】
後輪自在車輪2a、前輪自在車輪2とも、床面との摩擦を考慮し、外周にはウレタン部材製の環状部材25が固定的に取り付けられている構造にすることができる。
【0019】
台車1が、前方(図3中、上側に向かう方向)、あるいは後方(図3中、下側に向かう方向)などの方向へ走行する際には、後輪自在車輪2a、前輪自在車輪2が、第一の後輪横回転軸34(あるいは、第一の前輪横回転軸)を中心として矢印32、あるいは矢印33方向に回転し、また台車1の走行方向の変更に応じて、後輪自在車輪2a、前輪自在車輪2が、第一の後輪縦回転軸35(あるいは、第一の前輪縦回転軸)を中心として矢印30、あるいは矢印31方向に回転する。
【0020】
一方、図3図示のように、台車1の他方の対角線上に位置する他方の前輪(図3中、台車1の右上隅部に配備される前輪)は、水平方向に延びる第二の前輪横回転軸15a(図5)の回転につれて回転する前輪駆動輪4と、前輪駆動輪4に平行して配備され、第二の前輪横回転軸15aの周りを自在に回転する前輪自在輪3とからなる前輪駆動車輪5として構成されている。
【0021】
前輪駆動車輪5は、前輪駆動輪4と前輪自在輪3との間を、第二の前輪横回転軸15aが延びる方向に直交して垂直方向に延びる第二の前輪縦回転軸11の周りに、矢印9、10(図3、図5)で示すように、回動可能に台車1の下部に配備されている。
【0022】
また、台車1の他方の対角線上に位置する他方の後輪(図3中、台車1の左下隅部に配備される後輪)は、図6に示すように、水平方向に延びる第二の後輪横回転軸15の回転につれて回転する後輪駆動輪7と、後輪駆動輪7に平行して配備され、第二の後輪横回転軸15の周りを自在に回転する後輪自在輪6とからなる後輪駆動車輪8として構成されている。
【0023】
後輪駆動車輪8は、後輪駆動輪7と後輪自在輪6との間を、第二の後輪横回転軸15が延びる方向に直交して垂直方向に延びる第二の後輪縦回転軸14の周りに、矢印12、13で示すように、回動可能に台車1の下部に配備されている(図3、図6)。
【0024】
更に、台車1において、一方の後輪(後輪自在車輪2a)が配備されている位置(図3中、台車1の右下隅部の位置)に、他方の前輪(前輪駆動車輪5)の前輪駆動輪4を駆動する第一の駆動モータM1が配備されている。
【0025】
また、台車1において、前記他方の前輪(前輪駆動車輪5)と対角線上の位置に当たる、他方の後輪(後輪駆動車輪8)が配備されている位置(図3中、台車1の左下隅部の位置)に、当該他方の後輪にあたる後輪駆動車輪8の後輪駆動輪7を駆動する第二の駆動モータM2が配備されている。
【0026】
また、前輪駆動車輪5及び後輪駆動車輪8の、前述した第二の前輪縦回転軸11及び第二の後輪縦回転軸14の回りの矢印9、10、矢印12、13で示す方向の回転運動は同期して行われるようになっている。
【0027】
後輪駆動輪7は、図6に例示するように、第二の後輪横回転軸15にキー16を介して固定的に取り付けられており、後輪自在輪6はベアリング17を介して第二の後輪横回転軸15に回動自在に取り付けられている。
【0028】
第二の駆動モータM2によって駆動スプロケット20が第二の後輪縦回転軸14を中心として矢印12、あるいは矢印13方向に回転すると、小傘歯車19、大傘歯車18を介して第二の後輪横回転軸15が矢印23方向、あるいはその反対方向に回転し、後輪駆動輪7が矢印23方向、あるいはその反対方向に回転する。この際、後輪自在輪6は第二の後輪横回転軸15に回動自在に取り付けられていることにより、後輪駆動輪7が矢印23方向に回転すると、これと逆の矢印24方向に回転する。
【0029】
このようにして、後輪駆動輪7が矢印23方向、あるいはその反対方向に回転することにより、台車1の前方(図3中、上側に向かう方向)、あるいは後方(図3中、下側に向かう方向)などの方向への走行力が後輪駆動車輪8に与えられる。
【0030】
こうして、台車1に後輪駆動車輪8が配備されている位置に備えられている第二の駆動モータM2に駆動されて、後輪駆動輪7が図6に矢印23で示した方向、あるいはその反対方向に回転し、台車1の前方(図3中、上側に向かう方向)、あるいは後方(図3中、下側に向かう方向)などの方向への走行力が後輪駆動車輪8に与えられる。
【0031】
なお、後輪自在輪6、後輪駆動輪7とも床面との摩擦を考慮し、外周にはウレタン部材製の環状部材25が固定的に取り付けられている。
【0032】
また、ステアリングスプロケット21が第二の後輪縦回転軸14を中心として矢印12、13で示すように回転すると、第二の後輪横回転軸15は、駆動スプロケット20に連結されている小傘歯車19を中心に矢印12、13で示す方向に回転し(図6)、これによって、後輪駆動車輪8は、後輪駆動輪7と後輪自在輪6との間を垂直方向(縦方向)に延びる第二の後輪縦回転軸14を中心として矢印12、13で示すように回動する(図3)。
【0033】
この際、後輪自在輪6はベアリング17を介して第二の後輪横回転軸15に回動自在に取り付けられているので自由に回転し、後輪駆動車輪8が第二の後輪縦回転軸14を中心として矢印12、13で示すように回動する動作の抵抗にならない。
【0034】
図6では後輪駆動車輪8の構造を概略的に説明し、前輪駆動車輪5については図示していないが、前輪駆動車輪5も、図6に図示し、上述した後輪駆動車輪8と同様の構造になっている。
【0035】
なお、後輪駆動車輪8のステアリングスプロケット21と、前輪駆動輪4のステアリングスプロケット21aとには、図2、図4図示のように、無端のチェーン22が掛け渡されている。
【0036】
そこで、前述したように、台車1に後輪駆動車輪8、第二の駆動モータM2が配備されている位置に備えられているステアリングスプロケット21が、後輪縦回転軸14を中心として矢印12、13で示すように回転し、第二の後輪横回転軸15が、駆動スプロケット20に連結されている小傘歯車19を中心に矢印12、13で示す方向に回転し、後輪駆動車輪8が第二の後輪縦回転軸14を中心として矢印12、13で示すように回動すると(図3)、これに同期して、前輪駆動車輪5が、前輪駆動輪4と前輪自在輪3との間を垂直方向(縦方向)に延びる第二の前輪縦回転軸11を中心として矢印9、10で示すように回動する(図3)。
【0037】
前輪駆動車輪5における前輪駆動輪4に固定的に取り付けられている水平方向の第二の前輪横回転軸15aは、後輪駆動車輪8と同様に、駆動スプロケット20aが、垂直方向(縦方向)に延びる第二の前輪縦回転軸11を中心として矢印9、あるいは矢印10方向に回転することにより図6に矢印23で示した方向、あるいは、これと逆の方向に回転し、これによって、前輪駆動輪4が図6に矢印23で示した方向、あるいは、これと逆の方向に回転する。
【0038】
このようにして、前輪駆動輪4が図6に矢印23で示した方向、あるいはその反対方向に回転することにより、台車1の前方(図3中、上側に向かう方向)、あるいは後方(図3中、下側に向かう方向)などの方向への走行力が前輪駆動車輪5に与えられる。
【0039】
前記の前輪駆動車輪5の前輪駆動輪4を駆動させるための、駆動スプロケット20aの矢印9、あるいは矢印10方向への回転は、台車1において、一方の後輪(後輪自在車輪2a)が配備されている位置(図3中、台車1の右下隅部の位置)に配備されている第一の駆動モータM1によって行われる。
【0040】
すなわち、一方の後輪(後輪自在車輪2a)が配備されている位置(図3中、台車1の右下隅部の位置)に配備されている駆動スプロケット20bが、第一の駆動モータM1によって、矢印27方向に回動すると、駆動スプロケット20b、駆動スプロケット20aに掛け渡されている無端のチェーン26が矢印29方向に移動し、駆動スプロケット20aが矢印9方向に回転する(図5)。
【0041】
また、一方の後輪(後輪自在車輪2a)が配備されている位置(図3中、台車1の右下隅部の位置)に配備されている駆動スプロケット20bが、第一の駆動モータM1によって、矢印28方向に回動すると、駆動スプロケット20b、駆動スプロケット20aに掛け渡されている無端のチェーン26が矢印30方向に移動し、駆動スプロケット20aが矢印10方向に回転する(図5)。
【0042】
こうして、一方の後輪(後輪自在車輪2a)が配備されている位置(図3中、台車1の右下隅部の位置)に配備されている第一の駆動モータM1に駆動されて、前輪駆動輪4が図6に矢印23で示した方向、あるいはその反対方向に回転し、台車1の前方(図3中、上側に向かう方向)、あるいは後方(図3中、下側に向かう方向)などの方向への走行力が前輪駆動車輪5に与えられる。
【0043】
以上に説明したように、矩形状の台車1の四隅部下部にそれぞれ車輪が配備されて走行する本発明の運搬車においては、一方の対角線上に位置する一方の前輪である前輪自在車輪2と、一方の後輪である後輪自在車輪2aが、台車1の下部に走行方向を自在に変更可能なように回動自在に配備され、他方の対角線上に位置する他方の前輪、他方の後輪は、それぞれ、垂直方向に延びる縦回転軸の周りに回転可能に台車1の下側に配備されている前輪駆動車輪5、後輪駆動車輪8として構成され、この台車1の他方の対角線上に位置する前輪駆動車輪5、後輪駆動車輪8に駆動されて、図1(a)図示のようなX−Y方向、図1(b)図示のような大きな半径に沿った走行を行う。
【0044】
そして、台車1の他方の対角線上に配置されている前輪駆動車輪5、後輪駆動車輪8に駆動力を与える駆動源は、後輪駆動車輪8に駆動力を与える第二の駆動モータM2が、台車1において、他方の前輪(前輪駆動車輪5)と対角線上の位置に当たる、他方の後輪(後輪駆動車輪8)が配備されている位置(図3中、台車1の左下隅部の位置)に配備され、前輪駆動車輪5に駆動力を与える第一の駆動モータM1が、台車1において、一方の後輪(後輪自在車輪2a)が配備されている位置(図3中、台車1の右下隅部の位置)に配備されている。
【0045】
次に、以上に説明した本発明の運搬車の走行動作について説明する。
【0046】
運搬車に直進方向の前進(図5中、矢印52方向)、直進方向の後退(図5中、矢印53方向)、大きな半径に沿った前進あるいは後退(図5中、矢印63、64方向、あるいはこれらの反対方向)を行なわせる場合、前輪駆動車輪5、後輪駆動車輪8における前輪駆動輪4と前輪自在輪3、後輪駆動輪7と後輪自在輪6とは、図5図示のように直進方向の前進、後退方向を向いている状態で行うことができる。
【0047】
図5図示の状態で、不図示の制御手段によって第一の駆動モータM1、第二の駆動モータM2を同一の出力にて駆動し、前輪駆動輪4、後輪駆動輪7を同一の回転速度で回転させることにより、運搬車を直進方向の前進(図5中、矢印52方向)、あるいは直進方向の後退(図5中、矢印53方向)させることができる。
【0048】
ここで、不図示の制御手段によって第一の駆動モータM1の出力と、第二の駆動モータM2の出力とを異ならせると、図5に矢印63、64で示すように、運搬車を大きな半径に沿って前進、あるいは後退させることができる。
【0049】
この際、制御手段(例えば、制御レバー50)を操作し、制御レバー50を矢印51a方向、51b方向(図2)に傾けることにより、無端のチェーン22を矢印61あるいは矢印62方向に移動させ、前輪駆動車輪5が配備されている位置におけるステアリングスプロケット21a、後輪駆動車輪8が配備されている位置におけるステアリングスプロケット21を図3中、矢印9、12方向、矢印10、13方向に回転させることによって、大きな半径に沿った運搬車の前進、あるいは後退をよりスムーズに行わせることができる。
【0050】
次に、図1(a)に示すように、運搬車をY方向(矢印52、53方向)、X方向(矢印59、60方向)に移動させるには、制御手段(例えば、制御レバー50)を操作し、制御レバー50を矢印51a方向、51b方向(図2)に傾けることにより、無端のチェーン22を矢印61あるいは矢印62方向に移動させ、前輪駆動車輪5が配備されている位置におけるステアリングスプロケット21a、後輪駆動車輪8が配備されている位置におけるステアリングスプロケット21を図3中、矢印9、12方向、矢印10、13方向に回転させる。この場合、第一の駆動モータM1、第二の駆動モータM2は停止しておき、ステアリングスプロケット21a、ステアリングスプロケット21の矢印9、12方向、矢印10、13方向への回転によって、前輪駆動車輪5、後輪駆動車輪8の方向を変更してから第一の駆動モータM1、第二の駆動モータM2を駆動させて、前輪駆動車輪5、後輪駆動車輪8を前進、あるいは後退させることによって、Y方向(矢印52、53方向)、X方向(矢印59、60方向)への前進、後退を行うようにすることもできるし、第一の駆動モータM1、第二の駆動モータM2を作動させておいて、前輪駆動車輪5、後輪駆動車輪8を前進、あるいは後退させつつ、Y方向(矢印52、53方向)、X方向(矢印59、60方向)への前進、後退を行うようにすることもできる。
【0051】
なお、このような進行方向の変更の際に、前述したように、後輪自在輪6は第二の後輪横回転軸15に回動自在に取り付けられ、前輪自在輪3は第二の前輪横回転軸15aに回動自在に取り付けられているので、いずれも自由に回転し、前輪駆動車輪5、後輪駆動車輪8が垂直方向に延びる縦回転軸を中心として矢印9、10、矢印12、13で示すように回動する動作の抵抗にならない。
【0052】
前輪自在輪3、後輪自在輪6が前輪駆動車輪5、後輪駆動車輪8が垂直方向に延びる縦回転軸を中心として矢印9、10、矢印12、13で示すように回動する動作の抵抗にならないようにすることをより確実にし、また、運搬車のX−Y方向への進行方向変更、曲線的な走行をスムーズに行なわせる上では、図2、図4、図5図示のように、前輪駆動車輪5、後輪駆動車輪8において、前輪駆動輪4、後輪駆動輪7が台車1の内側、前輪自在輪3、後輪自在輪6が台車1の外側に位置するように配置することが望ましい。
【0053】
図3は運搬車をその場において方向転換するときの操作方法を説明するものである。
【0054】
制御手段(例えば、制御レバー50)を操作し、前輪駆動車輪5、後輪駆動車輪8を図3図示のように直進方向から傾け、第一の駆動モータM1、第二の駆動モータM2をそれぞれ逆方向に駆動することによって、前輪駆動車輪5の前輪駆動輪4、後輪駆動車輪8の後輪駆動輪7を、図3図示のようにそれぞれ逆方向に回転させる。これによって、運搬車は、台車1の中心を旋回中心として矢印54で示すように旋回し、その場で方向転換することができる。
【0055】
以上、添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載から把握される技術的範囲において種々の形態に変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】(a)本発明の運搬車がX−Y方向に走行する際の軌跡の一例を説明する図、(b)本発明の運搬車が大きな半径に沿って走行する際の軌跡の一例を説明する図。
【図2】本発明の運搬車において前輪駆動車輪、後輪駆動車輪の向きを同期して変更させる動作の一例を説明する図。
【図3】本発明の運搬車が床面上に置かれている位置で方向転換する状態を説明する図。
【図4】本発明の運搬車において前輪駆動車輪、後輪駆動車輪の向きを同期して変更させる動作の他の一例を説明する図。
【図5】本発明の運搬車において前輪駆動車輪を駆動する状況を説明する図。
【図6】本発明の運搬車における後輪駆動車輪(前輪駆動車輪)が駆動されるメカニズムを説明する図。
【図7】本発明の運搬車における前輪自在車輪(後輪自在車輪)の一例を説明する図。
【符号の説明】
【0057】
1 台車
2 前輪自在車輪
2a 後輪自在車輪
3 前輪自在輪
4 前輪駆動輪
5 前輪駆動車輪
6 後輪自在輪
7 後輪駆動輪
8 後輪駆動車輪
11 第二の前輪縦回転軸
14 第二の後輪縦回転軸
15 第二の後輪横回転軸
15a 第二の前輪横回転軸
18 大傘歯車
19 小傘歯車
20、20a、20b 駆動スプロケット
21、21a ステアリングスプロケット
22 無端のチェーン
25 ウレタン部材製の環状部材
26 無端のチェーン
34 第一の後輪横回転軸
35 第一の後輪縦回転軸
M1 第一の駆動モータ
M2 第二の駆動モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状の台車の四隅部下部にそれぞれ車輪が配備されて走行する運搬車であって、
前記台車の一方の対角線上に位置する一方の前輪は、水平方向に延びる第一の前輪横回転軸の周りに自在に回転すると共に、当該第一の前輪横回転軸に直交し垂直方向に延びる第一の前輪縦回転軸の周りに自在に回転する前輪自在車輪として構成され、
前記台車の一方の対角線上に位置する一方の後輪は、水平方向に延びる第一の後輪横回転軸の周りに自在に回転すると共に、当該第一の後輪横回転軸に直交し垂直方向に延びる第一の後輪縦回転軸の周りに自在に回転する後輪自在車輪として構成され、
前記台車の他方の対角線上に位置する他方の前輪は、水平方向に延びる第二の前輪横回転軸の回転につれて回転する前輪駆動輪と、当該前輪駆動輪に平行して配備され、前記第二の前輪横回転軸の周りを自在に回転する前輪自在輪とからなる前輪駆動車輪として構成され、
前記台車の他方の対角線上に位置する他方の後輪は、水平方向に延びる第二の後輪横回転軸の回転につれて回転する後輪駆動輪と、当該後輪駆動輪に平行して配備され、前記第二の後輪横回転軸の周りを自在に回転する後輪自在輪とからなる後輪駆動車輪として構成され、
前記前輪駆動車輪は、前記前輪駆動輪と前輪自在輪との間を、前記第二の前輪横回転軸が延びる方向に直交して垂直方向に延びる第二の前輪縦回転軸の周りに回動可能に前記台車の下部に配備され、
前記後輪駆動車輪は、前記後輪駆動輪と後輪自在輪との間を、前記第二の後輪横回転軸が延びる方向に直交して垂直方向に延びる第二の後輪縦回転軸の周りに回動可能に前記台車の下部に配備され、
前記台車において、前記一方の後輪が配備されている位置に前記前輪駆動輪を駆動する第一の駆動モータ、前記他方の後輪が配備されている位置に前記後輪駆動輪を駆動する第二の駆動モータが、それぞれ、配備され、
前記前輪駆動車輪及び後輪駆動車輪の、前記第二の前輪縦回転軸及び前記第二の後輪縦回転軸の回りの回転運動が同期して行われる
ことを特徴とする運搬車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−184537(P2009−184537A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−27117(P2008−27117)
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(391061473)株式会社ハイメックス (9)
【Fターム(参考)】