説明

運転支援用の情報管理システム、運転支援用の情報管理サーバ及び移動体搭載用の情報処理装置

【課題】運転支援用の情報管理システムにおいて、例えば操舵タイミング等の運転データをより適切に記憶することを可能とする。
【解決手段】情報管理システム(1)は、複数の移動体(30)を夫々運転する複数の運転者に夫々対応した複数の運転データを管理可能な運転支援用の情報管理システムであって、複数の運転データのうち一の運転者に対応した一の運転データにおける統計的な第1偏差、及び、複数の運転データにおける統計的な第2偏差を特定する特定手段(252、352等)と、特定された第1偏差、及び、特定された第2偏差に応じて、一の記憶手段(310)及び一の記憶手段と異なる他の記憶手段(210)のうちいずれか一方の記憶手段に、前記複数の運転データを夫々記憶させる制御手段(250、350等)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば通信網を介した、運転支援用の情報管理システム、運転支援用の情報管理サーバ及び移動体搭載用の情報処理装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の運転支援用の情報管理システムとして、特許文献1等には、車両の運転性傾向を運転者毎に評価するために、メモリーカードに車両の挙動特徴を表すデータを記録するデータレコーダを備える運行管理システムについて開示されている。
【0003】
また、この種の情報管理システムとして、特許文献2等には、車両の運転状況を管理センターに送信し、管理センターから得られた情報からエコドライブに関する情報を生成して、配信するエコドライブ診断システムについて開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−171267号公報
【特許文献2】特開2004−157842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1等によれば、仮に、複数の車両間において、運転データを共有する場合、複数の運転者が夫々運転する複数の車両が夫々出力する車両の挙動特徴を表すデータ群の全てを各車両に設けられたデータベースに記録し蓄積した場合、各車両に設けられたデータベースのデータ量が運転の度に増大し、各車両のデータベースの記憶容量を常に増設する必要が生じてしまい、製造コストが顕著に高くなってしまうという技術的な問題点が生じる。また、データベースのデータ量の増大に伴い、各車両に設けられたデータベースに対して各種の情報処理を施すCPU等の情報処理手段の演算負荷も高くなってしまい、CPU等の情報処理手段の演算能力を向上させるための製品コストも高くなってしまうという技術的な問題点が生じる。
【0006】
本発明は、例えば上述した問題点に鑑みなされたものであり、例えば操舵タイミング等の運転データをより適切に記憶することが可能な運転支援用の情報管理システム、運転支援用の情報管理サーバ及び移動体搭載用の情報処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る運転支援用の情報管理システムは、複数の移動体を夫々運転する複数の運転者に夫々対応した複数の運転データを管理可能な運転支援用の情報管理システムであって、前記複数の運転データのうち一の運転者に対応した一の運転データにおける統計的な第1偏差、及び、前記複数の運転データにおける統計的な第2偏差を特定する特定手段と、前記特定された第1偏差、及び、前記特定された第2偏差に応じて、一の記憶手段及び前記一の記憶手段と異なる他の記憶手段のうちいずれか一方の記憶手段に、前記複数の運転データを夫々記憶させる制御手段とを備える。
【0008】
本発明に係る運転データとは、所定の道路又は所定の走行場面における、運転者の運転操作タイミング、運転操作量、移動体の速度若しくは加減速度に関する定量的及び定性的なデータ群を意味する。典型的には、運転データとは、所定の道路又は所定の走行場面において、運転者によって行われる、例えば発進運転、停止運転、右折運転、又は、左折運転の際の運転操作タイミング、運転操作量に関する定量的及び定性的なデータ、並びに、移動体の速度若しくは加減速度に関する定量的及び定性的なデータを意味する。これらの運転データは、例えば信号機の有無、先行車又は歩行者の有無、交通量、天候、昼夜の区別などの移動体が走行する交通環境や自然環境に関する情報である交通環境情報に夫々対応付けられてよい。
【0009】
また、本発明に係る統計的な第1偏差とは、複数の運転者のうち一の運転者が運転する移動体が出力する一の運転データにおける、例えば標準偏差等の統計的な偏差を意味する。
【0010】
また、本発明に係る統計的な第2偏差とは、複数の運転者が夫々運転する複数の移動体が夫々出力する複数の運転データにおける、例えば標準偏差等の統計的な偏差を意味する。
【0011】
本発明に係る運転支援用の情報管理システムによれば、例えばメモリ、プロセッサ等を備えて構成される特定手段によって、統計的な第1偏差、及び、統計的な第2偏差が特定される。ここに、本発明に係る「特定」とは、典型的には、統計的な偏差を示す何らかの物理量やパラメータの所定範囲を、直接的に「特定」、「選択」等することを意味する。更に、統計的な偏差を示す何らかの物理量やパラメータを、間接的に「検出」、「測定」、「計測」等することを含んでいてもよい。
【0012】
例えばメモリ、プロセッサ等を備えて構成される制御手段によって、特定された第1偏差、及び、特定された第2偏差に応じて、一の記憶手段及び一の記憶手段と異なる他の記憶手段のうちいずれか一方の記憶手段に、複数の運転データが夫々記憶される。
【0013】
これにより、本発明によれば、複数の運転者が夫々運転する複数の移動体が夫々出力する複数の運転データを、特定された第1偏差、及び、特定された第2偏差に応じて分類し、運転データの性質、利用目的、又は種類などに応じて、例えば管理センター及び各車両のうちいずれか一方に設けられた記憶手段に記録し蓄積することが可能である。或いは、複数の運転データを、特定された第1偏差、及び、特定された第2偏差に応じて分類し、運転データの性質、利用目的、又は種類などに応じて、例えば記憶容量の大きいハードディスク等の記憶手段及び例えばSDメモリーなどの可搬性のある記憶手段のうちいずれか一方の記憶手段に記録し蓄積することが可能である。
【0014】
この結果、運転支援用の情報管理システムにおいて、データの利用効率の向上と、データの迅速なアクセスとを実現できるので実践上、好ましい。
【0015】
本発明の運転支援用の情報管理システムの一の態様は、前記一の記憶手段として、前記複数の移動体内に夫々設けられ、前記一の運転データを記憶可能な第1記憶手段と、前記他の記憶手段として、前記複数の移動体外に設けられ、前記複数の移動体と通信可能であると共に、前記複数の運転データを記憶可能な第2記憶手段とを備え、前記制御手段は、前記特定された第1偏差、及び、前記特定された第2偏差に応じて、前記第1記憶手段及び前記第2記憶手段のうちいずれか一方の記憶手段に、前記複数の運転データを夫々記憶させる。
【0016】
この態様によれば、複数の運転者が夫々運転する複数の移動体が夫々出力する複数の運転データを、特定された第1偏差、及び、特定された第2偏差に応じて分類し、運転データの性質、利用目的、又は種類などに応じて、複数の移動体内に夫々設けられた第1記憶手段及び複数の移動体外に設けられた第2記憶手段のうちいずれか一方の記憶手段に記録し蓄積することが可能である。
【0017】
この結果、運転支援用の情報管理システムにおいて、データの利用効率の向上と、データの迅速なアクセスとを実現できるので実践上、好ましい。
【0018】
本発明の運転支援用の情報管理システムの他の態様は、前記制御手段は、前記特定された第1偏差が第1閾値を超えず、且つ、前記特定された第2偏差が第2閾値を超えた場合、前記一の運転データを前記複数の移動体内に夫々設けられた前記一の記憶手段に記憶させる。
【0019】
この態様によれば、特定された第1偏差が第1閾値を超えず、且つ、前記特定された第2偏差が第2閾値を超えた場合、一の運転データは、一の運転者個人にとって最適な運転データを算出する際に必要な運転データであるとして、例えば車両内に設置された一の記憶手段に記憶される。これによって、一の運転者が運転する一の移動体内の運転支援用の情報処理手段が迅速且つ簡便にアクセスすることができる。これにより、各移動体に設けられた一の記憶手段は、一の運転者個人にとって最適な運転データを算出する際に必要な一の運転データを記憶し、一の運転データ以外の他の運転データは記憶しなくてよい。これにより、各移動体に設けられたデータベース等の記憶手段のデータ量を顕著に削減し、各移動体の記憶手段の記憶容量を低減することが可能であるので、製造コストを低減できるので、実践上、大変好ましい。更に、これにより、各移動体に設けられたデータベース等の記憶手段に対して各種の情報処理を施す情報処理手段の演算負荷を低減できるので、CPU等の情報処理手段の演算能力を向上させるための製品コストを低減できるので、実践上、大変好ましい。
【0020】
仮に、一の運転者に対して運転支援を行う際に、複数の運転者が夫々運転する複数の移動体が夫々出力する複数の運転データの全てを各移動体毎に設けられたデータベース等の一の記憶手段に記録し蓄積した場合、各移動体に設けられたデータベースのデータ量が運転の度に増大し、各移動体内の一の記憶手段の記憶容量を常に増設する必要が生じてしまい、製造コストが顕著に高くなってしまうという技術的な問題点が生じる。また、データベースのデータ量の増大に伴い、各移動体に設けられたデータベースに対して各種の情報処理を施すCPU等の情報処理手段の演算負荷も高くなってしまい、CPU等の情報処理手段の演算能力を向上させるための製品コストも高くなってしまうという技術的な問題点が生じる。
【0021】
本発明の運転支援用の情報管理システムの他の態様は、前記制御手段は、(i)前記特定された第1偏差が第1閾値を超え、且つ、前記特定された第2偏差が第2閾値を超えた場合、又は、(ii)前記特定された第1偏差が第1閾値を超えず、且つ、前記特定された第2偏差が第2閾値を超えない場合、前記一の運転データを含む前記複数の運転データを前記複数の移動体外に設けられた前記他の記憶手段に記憶させる。
【0022】
この態様によれば、(i)特定された第1偏差が第1閾値を超え、且つ、特定された第2偏差が第2閾値を超えた場合、一の運転データ及び複数の運転データは、一の運転者個人にとっても複数の運転者にとっても、標準偏差や分散の大きな、ばらつきの大きい標準的な運転データであるとして、例えば管理センター等の移動体外に設置された他の記憶手段に記憶される。
【0023】
或いは、この態様によれば、(ii)特定された第1偏差が第1閾値を超えず、且つ、特定された第2偏差が第2閾値を超えない場合、一の運転データ及び複数の運転データは、一の運転者個人にとっても複数の運転者にとっても、標準偏差や分散の小さな、ばらつきの小さい標準的な運転データであるとして、例えば管理センター等の移動体外に設置された他の記憶手段に記憶される。
【0024】
これにより、各移動体の情報処理手段が、移動体外に設けられた他の記憶手段に簡便且つ迅速にアクセスできる。これにより、移動体外の他の記憶手段に記憶された一の運転データ及び複数の運転データを複数の移動体で共有できるので、データの利用効率の向上と、データの迅速なアクセスとを実現できるので実践上、好ましい。
【0025】
本発明の運転支援用の情報管理システムの他の態様は、前記特定された第1偏差、及び、前記特定された第2偏差に応じて、前記一の運転データが、前記一の運転者の固有の運転技能又は運転癖に関する運転データであるか否かを判定する判定手段を更に備え、前記制御手段は、(i)前記一の運転データが、前記運転技能又は前記運転癖に関する運転データであると判定される場合、前記一の運転データを前記複数の移動体内に夫々設けられた前記一の記憶手段に記憶させ、(ii)前記一の運転データが、前記運転技能又は前記運転癖に関する運転データであると判定されない場合、前記一の運転データを含む前記複数の運転データを前記複数の移動体外に設けられた前記他の記憶手段に記憶させる。
【0026】
この態様によれば、例えばメモリ、プロセッサ等を備えて構成される判定手段によって、一の運転データが、運転技能又は運転癖に関する運転データであると判定される場合、一の運転データは、一の運転者個人にとって最適な運転データを算出する際に必要な運転データであるとして、例えば車両内に設置された一の記憶手段に記憶される。これにより、各移動体に設けられたデータベース等の記憶手段のデータ量を顕著に削減し、各移動体の記憶手段の記憶容量を低減することが可能であるので、製造コストを低減できるので、実践上、大変好ましい。更に、これにより、各移動体に設けられたデータベース等の記憶手段に対して各種の情報処理を施す情報処理手段の演算負荷を低減できるので、CPU等の情報処理手段の演算能力を向上させるための製品コストを低減できるので、実践上、大変好ましい。
【0027】
他方、判定手段によって、一の運転データが、運転技能又は運転癖に関する運転データであると判定されない場合、一の運転データは、運転技能又は運転癖に関する運転データではなく、一の運転者個人にとっても複数の運転者にとっても、標準的な運転データであるとして、例えば管理センター等の移動体外に設置された他の記憶手段に記憶される。
【0028】
これにより、各移動体の情報処理手段が、移動体外に設けられた他の記憶手段に簡便且つ迅速にアクセスできる。これにより、移動体外の他の記憶手段に記憶された一の運転データ及び複数の運転データを複数の移動体で共有できるので、データの利用効率の向上と、データの迅速なアクセスとを実現できるので実践上、好ましい。
【0029】
本発明の運転支援用の情報管理システムの他の態様は、前記特定手段は、所定の道路又は所定の走行場面における前記統計的な第1偏差、及び、前記所定の道路又は前記所定の走行場面における前記統計的な第2偏差を特定する。
【0030】
この態様によれば、統計的な第1偏差、及び統計的な第2偏差を特定する際の、道路又は走行場面を概ね同一にするので、統計的な第1偏差、及び統計的な第2偏差をより高精度に特定することが可能である。
【0031】
上記課題を解決するために、本発明に係る運転支援用の情報管理サーバは、複数の移動体を夫々運転する複数の運転者に夫々対応した複数の運転データを管理可能な運転支援用の情報管理サーバであって、前記複数の運転データを夫々受信する受信手段と、前記受信された複数の運転データのうち一の運転者に対応した一の運転データにおける統計的な第1偏差、及び、前記複数の運転データにおける統計的な第2偏差を特定する特定手段と、前記特定された第1偏差、及び、前記特定された第2偏差に応じて、一の記憶手段及び前記一の記憶手段と異なる他の記憶手段のうちいずれか一方の記憶手段に、前記複数の運転データを夫々記憶させる制御手段とを備える。
【0032】
本発明に係る運転支援用の情報管理サーバによれば、受信手段によって、複数の運転データが夫々受信される。例えばメモリ、プロセッサ等を備えて構成される特定手段によって、統計的な第1偏差、及び、統計的な第2偏差が特定される。例えばメモリ、プロセッサ等を備えて構成される制御手段によって、特定された第1偏差、及び、特定された第2偏差に応じて、一の記憶手段及び一の記憶手段と異なる他の記憶手段のうちいずれか一方の記憶手段に、複数の運転データが夫々記憶される。
【0033】
これにより、本発明によれば、複数の運転者が夫々運転する複数の移動体が夫々出力する複数の運転データを、特定された第1偏差、及び、特定された第2偏差に応じて分類し、運転データの性質、利用目的、又は種類などに応じて、例えば管理センター及び各車両のうちいずれか一方に設けられた記憶手段に記録し蓄積することが可能である。或いは、複数の運転データを、特定された第1偏差、及び、特定された第2偏差に応じて分類し、運転データの性質、利用目的、又は種類などに応じて、例えば記憶容量の大きいハードディスク等の記憶手段及び例えばSDメモリーなどの可搬性のある記憶手段のうちいずれか一方の記憶手段に記録し蓄積することが可能である。
【0034】
この結果、運転支援用の情報管理サーバにおいて、データの利用効率の向上と、データの迅速なアクセスとを実現できるので実践上、好ましい。
【0035】
上記課題を解決するために、本発明に係る移動体搭載用の情報処理装置は、複数の移動体を夫々運転する複数の運転者に夫々対応した複数の運転データを管理可能な移動体搭載用の情報処理装置であって、前記複数の運転データを夫々受信する受信手段と、前記受信された複数の運転データのうち一の運転者に対応した一の運転データにおける統計的な第1偏差、及び、前記複数の運転データにおける統計的な第2偏差を特定する特定手段と、前記特定された第1偏差、及び、前記特定された第2偏差に応じて、一の記憶手段及び前記一の記憶手段と異なる他の記憶手段のうちいずれか一方の記憶手段に、前記複数の運転データを夫々記憶させる制御手段とを備える。
【0036】
本発明に係る移動体搭載用の情報処理装置によれば、受信手段によって、複数の運転データが夫々受信される。例えばメモリ、プロセッサ等を備えて構成される特定手段によって、統計的な第1偏差、及び、統計的な第2偏差が特定される。例えばメモリ、プロセッサ等を備えて構成される制御手段によって、特定された第1偏差、及び、特定された第2偏差に応じて、一の記憶手段及び一の記憶手段と異なる他の記憶手段のうちいずれか一方の記憶手段に、複数の運転データが夫々記憶される。
【0037】
これにより、本発明によれば、複数の運転者が夫々運転する複数の移動体が夫々出力する複数の運転データを、特定された第1偏差、及び、特定された第2偏差に応じて分類し、運転データの性質、利用目的、又は種類などに応じて、例えば管理センター及び各車両のうちいずれか一方に設けられた記憶手段に記録し蓄積することが可能である。或いは、複数の運転データを、特定された第1偏差、及び、特定された第2偏差に応じて分類し、運転データの性質、利用目的、又は種類などに応じて、例えば記憶容量の大きいハードディスク等の記憶手段及び例えばSDメモリーなどの可搬性のある記憶手段のうちいずれか一方の記憶手段に記録し蓄積することが可能である。
【0038】
この結果、移動体搭載用の情報処理装置において運転支援を行う際に、データの利用効率の向上と、データの迅速なアクセスとを実現できるので実践上、好ましい。
【0039】
本実施形態のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本実施形態に係る情報管理システム1の基本構成を概念的に示したブロック図である。
【図2】本実施形態に係る運転データ120を処理する情報処理装置の機能的な基本構成を概念的に示したブロック図である。
【図3】本実施形態に係るナビゲーション装置の機能的な基本構成を概念的に示したブロック図である。
【図4】本実施形態に係る情報管理サーバの機能的な基本構成を概念的に示したブロック図である。
【図5】本実施形態に係る情報管理システムを構成する各車両に搭載された情報処理装置、及び情報管理サーバにおける動作の流れを示したタイミングチャートである。
【図6】本実施形態に係る統計的な偏差を判定する偏差判定処理の流れを示したタイミングチャートである。
【図7】本実施形態に係る統計的分析によって、4種類に分類された運転データの類型を示した表である。
【図8】本実施形態に係る、個人内特性に着目して、言い換えると、一の運転者の運転特性に着目して、運転データを分類する場合、操作タイミング等の一の運転データに対する、統計的な偏差の大小レベルを判定するための基準を示したグラフである。
【図9】本実施形態に係る、個人間特性に着目して、言い換えると、複数の運転者に着目して、運転データを分類する場合、操作タイミング等の一の運転データに対する、統計的な偏差の大小レベルを判定するための基準を示したグラフ(図9(a)及び図9(b))である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。
【0042】
(実施形態)
(情報管理システムの概略構成)
先ず、図1を参照して、本実施形態に係る情報管理システムの基本構成について説明する。ここに、図1は、本実施形態に係る情報管理システム1の基本構成を概念的に示したブロック図である。
【0043】
図1に示されるように、本実施形態に係る情報管理システム1は、通信網100と、情報管理サーバ200と、情報処理装置300及びナビゲーション装置400を含む車両30とを備えて構成されている。情報管理サーバ200と、ナビゲーション装置400を含む車両30とは、例えばインターネット等の通信網100を介して、運転支援情報110及び運転データ120を送受信可能であるように構成されている。
【0044】
情報管理サーバ200は、サーバ装置であり、車両30の位置を管理する。加えて、情報管理サーバ200は、各車両30の情報処理装置300へ運転データ120の送信要求後、運転データ120を受信したり、情報処理装置300及びナビゲーション装置400を備える車両30に向けて、各車両の運転支援に関する運転支援情報110及び運転データ120に関する情報、即ち、後述の運転データの分類に関する情報を送信したりする。ここに、本実施形態に係る「運転データ」とは、運転者の運転操作タイミング、運転操作量、運転操作の方向、移動体の速度若しくは加減速度に関する定量的及び定性的なデータ群を意味する。尚、この運転データ及び情報管理サーバ200の詳細については、後述する。
【0045】
情報処理装置300は、ナビゲーション装置400と共に、車両30に備えられる装置であり、例えば、情報管理サーバ200からの運転データの送信要求に応じて、情報管理サーバ200へ運転データ120を送信する。尚、情報処理装置300の詳細については、後述する。
【0046】
(情報処理装置)
次に、図2を参照して、本実施形態に係る情報処理装置の機能的な基本構成について説明する。ここに、図2は、本実施形態に係る運転データ120を処理する情報処理装置の機能的な基本構成を概念的に示したブロック図である。
【0047】
図2に示されるように、情報処理装置300は、車両30等の移動体に搭載される。情報処理装置300は、図2に示されるように、送受信部301と、測定部302と、運転支援部303と、運転データベース310と、制御部350とを備える。
【0048】
制御部350は、具体的には、CPU等であり、情報処理装置300全体を統括制御する。そして制御部350は、運転行動の解析推定部351と、偏差判定部352とを備える。即ち、制御部350が所定のプログラムを実行することにより、運転行動の解析推定部351と、偏差判定部352とを実現する。尚、本発明に係る「制御手段」の一例が、この制御部350によって構成されている。
【0049】
送受信部301は、例えばGPS信号や地図情報や道路交通情報に関する各種の情報を受信すると共に、例えば情報処理装置300の位置情報や運転データ120等の各種の情報を情報管理サーバ200へ送信する。ここに、本実施形態に係る「運転データ」とは、運転者の運転操作タイミング、運転操作量、運転操作の方向、車両の速度若しくは加減速度に関する定量的及び定性的なデータ群を意味する。特に、送受信部301は、後述される運転支援情報を受信してよい。
【0050】
詳細には、送受信部301は、GPS信号を受信するために、複数のGPS衛星から、測位用データを含む下り回線データを搬送する電波を受信する。測位用データは、緯度及び経度情報等から車両の絶対的な位置を検出するために用いられる。更に詳細には、送受信部301は、例えば、FMチューナやビーコンレシーバ、携帯電話や専用の通信カードなどにより構成されてよく、通信用インタフェースを介して、VICS(Vehicle Information Communication System)センタ等の交通環境情報サーバから配信される渋滞や交通情報などの、所謂、道路交通情報や、その他の情報を、例えば電波等の通信網100を介して受信する。更に詳細には、送受信部301は、地図情報の全部又は地図情報のうち更新された一部に関する情報を受信する。
【0051】
測定部302は、例えば、自立測位装置等であり、加速度センサ、角速度センサ及び距離センサを備える。加速度センサは、例えば圧電素子からなり、車両の加速度を検出し、加速度データを出力する。角速度センサは、例えば振動ジャイロからなり、車両の方向変換時における車両の角速度を検出し、角速度データ及び相対方位データを出力する。距離センサは、車両の車輪の回転に伴って発生されているパルス信号からなる車速パルスを計測する。
【0052】
運転支援部303は、設定された自車両の目標となる走行方向、走行速度の目標値、又は走行加速度の目標値を、実現するように自車両に対して運転支援を実際に行う。ここに、本実施形態に係る運転支援とは、車両の加速、減速、発進、停止又は旋回などの運転者の運転操作を補助的に支援することを意味する。典型的には、本実施形態に係る運転支援とは、車両の走行方向、走行速度、又は走行加速度を安全側に所定量だけ変化させることを意味してよい。
【0053】
運転データベース310は、例えば、HDD(ハードディスクドライブ)などの記憶装置によって構成され、運転データを記憶し、蓄積するデータベースである。更に、この運転データベース310は、例えば地図情報や施設データなどの各種データを記憶可能である。特に、この運転データベース310は、運転データを、交通環境情報に夫々対応付けつつ記憶可能である。ここに、本実施形態に係る交通環境情報とは、例えば地図情報や車載用カメラの画像や受信された道路交通情報などに基づいて特定可能な、信号機の有無、先行車又は歩行者の有無、交通量、天候、昼夜の区別などの車両が走行する交通環境や自然環境に関する情報を意味する。尚、本発明に係る「一の記憶手段」の一例が、この運転データベース310によって構成されている。
【0054】
運転行動の解析推定部351は、運転データベースに蓄積された運転データに応じて、運転者の運転行動を解析し、運転者の数十マイクロ秒後や数マイクロ秒後等の微小時間だけ未来における運転者の運転行動を推定し、自車両の走行支援を行う際の自車両の目標となる走行方向、走行速度の目標値、又は走行加速度の目標値を設定する。
【0055】
偏差判定部352は、運転データの統計的な偏差を判定する偏差判定処理を行う。尚、この偏差判定処理については、後述される。また、本発明に係る「特定手段」の一例が、この偏差判定部352によって構成されている。また、本発明に係る「判定手段」の一例が、この偏差判定部352によって構成されている。
【0056】
尚、本実施形態では、例えば先行車等の他の車両と自車両との車間距離を、例えば車載用カメラやGPS信号等を用いて測定する車間距離測定部を備えて構成されてよい。詳細には、この車間距離測定部は、自車両と先行車両との距離、又は、自車両と周辺の歩行者との距離を、例えば車載用のカメラなどによって測定してよい。尚、この場合の車載用のカメラは、電気的に制御可能な固定装置により固定されており、外部からの信号によってその方向を変更できてよい。また、この車載用のカメラが撮影する画像は、静止画であっても動画であってもよい。
【0057】
尚、本実施形態では、情報処理装置300を有する一の車両を自車両として定義し、この自車両を除く他の車両と区別しつつ説明を進める。また、本実施形態に係る加速度又は走行加速度とは、速度が増加する際の加速度と、速度が減少する際の加速度とを含む趣旨である。
【0058】
(ナビゲーション装置)
次に、図3を参照して、本実施形態に係るナビゲーション装置の機能的な基本構成について説明する。ここに、図3は、本実施形態に係るナビゲーション装置の機能的な基本構成を概念的に示したブロック図である。
【0059】
図3に示されるように、ナビゲーション装置400は、システムコントローラ20、ディスクドライブ31、データ記憶ユニット36、表示ユニット40、音声出力ユニット50、入力装置60、カメラ65、及び通信装置38を備える。
【0060】
システムコントローラ20は、インタフェース21、CPU22、ROM23及びRAM24を含んでおり、ナビゲーション装置400全体の制御を行い、車両の運転者に目的地又は集合地点まで誘導させる誘導情報を知覚させる経路案内を実現可能な各種の制御を行う。
【0061】
インタフェース21は、上述した情報処理装置300とのインタフェース動作を行う。そして、この情報処理装置300から、車速パルス、加速度データ、相対方位データ、角速度データ、GPS測位データ、絶対方位データ等をシステムコントローラ20に入力する。CPU22は、システムコントローラ20全体を制御する。ROM23は、システムコントローラ20を制御する制御プログラム等が格納された図示しない不揮発性メモリ等を有する。RAM24は、入力装置60を介して使用者により予め設定された経路データ等の各種データを読み出し可能に格納したり、CPU22に対してワーキングエリアを提供したりする。
【0062】
システムコントローラ20、CD−ROMドライブ又はDVD−ROMドライブなどのディスクドライブ31、データ記憶ユニット36、表示ユニット40、音声出力ユニット50及び入力装置60は、バスライン30を介して相互に接続されている。
【0063】
ディスクドライブ31は、システムコントローラ20の制御の下、CD又はDVDといったディスク33から、音楽データ、映像データなどのコンテンツデータを読み出し、出力する。なお、ディスクドライブ31は、CD−ROMドライブ又はDVD−ROMドライブのうち、いずれか一方としてもよいし、CD及びDVDコンパチブルのドライブとしてもよい。
【0064】
データ記憶ユニット36は、例えば、HDDなどにより構成され、地図情報や施設データなどのナビゲーション処理に用いられる各種データを記憶する。
【0065】
表示ユニット40は、システムコントローラ20の制御の下、各種表示データをディスプレイなどの表示装置に表示する。具体的には、システムコントローラ20は、データ記憶ユニット36から地図情報を読み出す。表示ユニット40は、システムコントローラ20によってデータ記憶ユニット36から読み出された地図情報を、ディスプレイなどの表示画面上に表示する。表示ユニット40は、バスライン30を介してCPU22から送られる制御データに基づいて表示ユニット40全体の制御を行うグラフィックコントローラ41と、VRAM(Video RAM)等のメモリからなり即時表示可能な画像情報を一時的に記憶するバッファメモリ42と、グラフィックコントローラ41から出力される画像データに基づいて、液晶、CRT(Cathode Ray Tube)等のディスプレイ44を表示制御する表示制御部43と、ディスプレイ44とを備える。ディスプレイ44は、例えば対角5〜10インチ程度の液晶表示装置等からなり、車内のフロントパネル付近に装着される。
【0066】
音声出力ユニット50は、システムコントローラ20の制御の下、ディスクドライブ31又はRAM24等からバスライン30を介して送られる音声デジタルデータのD/A変換を行うD/Aコンバータ51と、D/Aコンバータ51から出力される音声アナログ信号を増幅する増幅器(AMP)52と、増幅された音声アナログ信号を音声に変換して車内に出力するスピーカ53とを備えて構成されている。
【0067】
入力装置60は、各種コマンドやデータを入力するための、キー、スイッチ、ボタン、リモコン、音声入力装置等から構成されている。入力装置60は、車内に搭載された当該車載用電子システムの本体のフロントパネルやディスプレイ44の周囲に配置される。また、ディスプレイ44がタッチパネル方式である場合には、ディスプレイ44の表示画面上に設けられたタッチパネルも入力装置60として機能する。
【0068】
(情報管理サーバ)
次に、図4を参照して、本実施形態に係る情報管理サーバの機能的な基本構成について説明する。ここに、図4は、本実施形態に係る情報管理サーバの機能的な基本構成を概念的に示したブロック図である。
【0069】
図4に示されるように、情報管理サーバ200は、実体的には、サーバ装置である。情報管理サーバ200は、図4に示されるように、送受信部201と、運転支援部203と、運転データベース210と、制御部250とを備える。
【0070】
制御部250は、具体的には、CPU等であり、情報管理サーバ200全体を統括制御する。そして制御部250は、上述した情報処理装置300の制御部350と概ね同様にして、運転行動の解析推定部251と、偏差判定部252とを備える。即ち、制御部250が所定のプログラムを実行することにより、運転行動の解析推定部251と、偏差判定部252とを実現する。尚、本発明に係る「制御手段」の一例が、この制御部250によって構成されている。
【0071】
受信部201は、各車両30の位置情報、各車両30の運転データ120、各車両30における交通環境情報、及び、任意の2つの車両間の車間距離等の各種の情報を、各車両30の情報処理装置300から受信する。
【0072】
運転データベース210は、例えば、HDD(ハードディスクドライブ)などの記憶装置によって構成され、各車両30毎に運転データを記憶し、蓄積するデータベースである。更に、この運転データベース210は、例えば地図情報や施設データなどの各種データを記憶可能である。特に、この運転データベース210は、各車両30における運転データを、交通環境情報に夫々対応付けつつ記憶可能である。尚、本発明に係る「他の記憶手段」の一例が、この運転データベース210によって構成されている。
【0073】
運転行動の解析推定部251は、運転データベースに蓄積された各車両毎の運転データに応じて、各車両の運転者の運転行動を解析し、各車両の運転者の数十マイクロ秒後や数マイクロ秒後等の微小時間だけ未来における運転者の運転行動を推定し、各車両の走行支援を行う際の各車両の目標となる走行方向、走行速度の目標値、又は走行加速度の目標値を設定する。
【0074】
偏差判定部252は、各車両における運転データの統計的な偏差を判定する偏差判定処理を行う。尚、この偏差判定処理については、後述される。また、本発明に係る「特定手段」の一例が、この偏差判定部252によって構成されている。また、本発明に係る「判定手段」の一例が、この偏差判定部252によって構成されている。
【0075】
送信部203は、各車両の走行支援を行う際における、各車両の目標となる走行方向、走行速度の目標値、又は走行加速度の目標値等の運転支援に関する定量的又は定性的な情報である運転支援情報100を、各車両30の情報処理装置300へ送信する。
【0076】
(情報管理システムの動作原理)
次に、図5及び図6を参照して、本実施形態に係る情報管理システムの動作原理について説明する。ここに、図5は、本実施形態に係る情報管理システムを構成する各車両に搭載された情報処理装置、及び情報管理サーバにおける動作の流れを示したタイミングチャートである。
【0077】
(情報処理装置の制御処理)
最初に、図5中の各車両に搭載された情報処理装置の制御処理に示されるように、例えばCPU等の情報処理装置の制御部の制御下で、例えば運転者の運転操作タイミング等の運転データが取得される(ステップS101)。ここに、本実施形態に係る「運転データ」とは、運転者の運転操作タイミング、運転操作量、移動体の速度若しくは加減速度に関する定量的及び定性的なデータ群を意味する。具体的には、この運転データは、例えば信号機の有無、先行車又は歩行者の有無、交通量、天候、昼夜の区別などの移動体が走行する交通環境や自然環境に関する情報である交通環境情報に夫々対応付けられることによって、所定の道路又は所定の走行場面における、運転者の運転操作タイミング、運転操作量、運転操作の方向、車両の速度若しくは加減速度に関する定量的及び定性的なデータを意味してよい。運転者の運転操作としては、例えば発進運転、停止運転、右折運転、又は、左折運転を挙げることができる。
【0078】
次に、例えばCPU等の制御部の制御下で、取得された運転データが、通信網を介して、例えば情報管理センター等に設けられた情報管理サーバに向けて送信される(ステップS102)。
【0079】
次に、例えばCPU等の制御部の制御下で、取得された運転データが、運転データベース(DB:Database)に格納される(ステップS103)。
【0080】
次に、情報処理装置のCPU等の制御部の制御下で、運転データベースに格納された運転データを分類するための運転データの統計的な偏差を判定する偏差判定処理が行われる(ステップS104)。
【0081】
(運転データの偏差判定処理)
ここで、図6を参照して、本実施形態に係る運転データの統計的な偏差を判定する偏差判定処理について説明する。ここに、図6は、本実施形態に係る統計的な偏差を判定する偏差判定処理の流れを示したタイミングチャートである。
【0082】
図6に示されるように、例えばCPU等の情報処理装置の制御部の制御下で、先ず、格納された運転データにおける、個人間特性に着目した統計的な偏差が大レベルであるか否かが判定される(ステップS301)。尚、この個人間特性に着目した統計的な偏差が大レベルであるか否かの詳細な判定方法については、後述の図9を参照して説明される。ここで、運転データにおける、個人間特性に着目した統計的な偏差が大レベルであると判定される場合(ステップS301:Yes)、更に、格納された運転データにおける、個人内特性に着目した統計的な偏差が大レベルであるか否かが判定される(ステップS302)。尚、この個人内特性に着目した統計的な偏差が大レベルであるか否かの詳細な判定方法については、後述の図8を参照して説明される。ここで、運転データにおける、個人内特性に着目した統計的な偏差が大レベルであると判定される場合(ステップS302:Yes)、運転データは、第1の運転データ群として判定される(ステップS303)。尚、この第1の運転データ群の詳細については後述される。
【0083】
他方、ステップS302の判定の結果、運転データにおける、個人内特性に着目した統計的な偏差が大レベルであると判定されない場合、言い換えると、運転データにおける、個人内特性に着目した統計的な偏差が小レベルであると判定される場合(ステップS302:No)、運転データは、第2の運転データ群として判定される(ステップS304)。尚、この第2の運転データ群の詳細については後述される。
【0084】
更に他方、上述のステップS301の判定の結果、運転データにおける、個人間特性に着目した統計的な偏差が大レベルであると判定されない場合、言い換えると、運転データにおける、個人間特性に着目した統計的な偏差が小レベルであると判定される場合(ステップS301:No)、更に、格納された運転データにおける、個人内特性に着目した統計的な偏差が小レベルであるか否かが判定される(ステップS305)。ここで、運転データにおける、個人内特性に着目した統計的な偏差が小レベルであると判定される場合(ステップS305:Yes)、運転データは、第3の運転データ群として判定される(ステップS306)。尚、この第3の運転データ群の詳細については後述される。
【0085】
他方、ステップS305の判定の結果、個人内特性に着目した統計的な偏差が小レベルであると判定されない場合、言い換えると、個人内特性に着目した統計的な偏差が大レベルであると判定される場合、(ステップS305:No)、運転データは、第4の運転データ群として判定される(ステップS307)。尚、この第4の運転データ群の詳細については後述される。
【0086】
(全体動作:続き)
再び、図5に戻って、上述したステップS104における、運転データの統計的な偏差を判定する偏差判定処理の後、例えばCPU等の情報処理装置の制御部の制御下で、運転データの分類に応じて、運転データベースの整理処理が行われる(ステップS105)。具体的には、後述されるように、第1の運転データ群であると判定された運転データは、標準的な運転データであるとして、車両外に設置された情報管理サーバの運転データベースに記憶される。或いは、第2の運転データ群であると判定された運転データは、一の運転者個人にとって最適な運転データを算出する際に必要な運転データであるとして、例えば車両内に設置された運転データベースに記憶される。或いは、第3の運転データ群であると判定された運転データは、標準的な運転データであるとして、例えば情報管理サーバの運転データベース等の車両外に設置された運転データベースに記憶される。或いは、第4の運転データ群であると判定された運転データは、標準的な運転データであるとして、例えば情報管理サーバの運転データベース等の車両外に設置された運転データベースに記憶してよいし、或いは、一の運転者個人にとって最適な運転データを算出する際に必要な運転データであるとして、例えば車両内に設置された運転データベースに記憶してよい。このステップS105の後、上述したステップS102に戻って、例えばCPU等の情報処理装置の制御部の制御下で、第1の運転データ群であると判定された運転データ、及び第3の運転データ群であると判定された運転データが、少なくとも情報管理サーバに送信される。
【0087】
上述したステップS105と同時に又は相前後して、例えばCPU等の情報処理装置の制御部の制御下で、運転データの分類に応じて、運転者の運転行動の解析推定処理が行われる(ステップS106)。
【0088】
次に、例えばCPU等の情報処理装置の制御部の制御下で、運転データの分類に応じて、運転者の運転支援処理が行われる(ステップS107)。具体的には、第1の運転データ群であると判定された運転データが取得される道路や走行場面においては、複数の運転者が夫々運転操作する際に取得される複数の運転データの平均値などから、例えば過半数等の大部分の運転者の標準的な運転操作を示す標準的な運転データを算出し、この算出された標準的な運転データに基づいて、一の運転者に対して運転支援を行ってよい。或いは、第2の運転データ群であると判定された運転データが取得される道路や走行場面においては、この一の運転者が運転操作する際に取得される運転データの平均値などから、一の運転者にとって最適な運転操作を示す、一の運転者個人にとって最適な運転データを算出し、この算出された運転データに基づいて、一の運転者に対して運転支援を行ってよい。或いは、第3の運転データ群であると判定された運転データが取得される道路や走行場面においては、複数の運転者が夫々運転操作する際に取得される複数の運転データの平均値などから、例えば過半数等の大部分の運転者の標準的な運転操作を示す標準的な運転データを算出し、この算出された運転データに基づいて、一の運転者に対して運転支援を行ってよい。或いは、第4の運転データ群であると判定された運転データが、多少なりとも取得される道路や走行場面においては、第1の運転データ群又は第3の運転データ群と概ね同様にして、標準的な運転データに基づいて、一の運転者に対して運転支援を行ってよい。或いは、この第4の運転データ群であると判定された運転データが、多少なりとも取得される道路や走行場面においては、第2の運転データ群と概ね同様にして、一の運転者個人にとって最適な運転データに基づいて、一の運転者に対して運転支援を行ってよい。
【0089】
(情報管理サーバの制御処理)
次に、図5中の情報管理サーバの制御処理に示されるように、例えばCPU等の情報管理サーバの制御部の制御下で、例えば各車両の位置を確認し、各車両を識別する識別処理等の初期設定処理が行われる(ステップS201)。
【0090】
次に、情報管理サーバは、通信網を介して、各車両において取得された運転データを受信する(ステップS202)。
【0091】
次に、情報管理サーバの制御部の制御下で、受信された運転データが、運転データベース(DB:Database)に格納される(ステップS203)。
【0092】
次に、情報管理サーバの制御部の制御下で、運転データベースに格納された運転データを分類するための運転データの統計的な偏差を判定する偏差判定処理が行われる(ステップS204)。尚、この情報管理サーバにおける偏差判定処理は、上述した各車両の情報通信処理において行われた偏差判定処理と概ね同様な処理が行われてよいし、或いは、上述した各車両の情報通信処理において行われた偏差判定処理の結果自体を共有してよい。
【0093】
次に、運転データの統計的な偏差を判定する偏差判定処理の後、例えばCPU等の情報管理サーバの制御部の制御下で、運転データの分類に応じて、情報管理サーバの運転データベースの整理処理が行われる(ステップS205)。
【0094】
ステップS205と同時に又は相前後して、例えばCPU等の情報管理サーバの制御部の制御下で、運転データの分類に応じて、運転者の運転行動の解析推定処理が行われる(ステップS206)。
【0095】
次に、例えばCPU等の情報管理サーバの制御部の制御下で、運転支援情報が、通信網を介して、各車両に送信される(ステップS207)。
【0096】
(統計的分析による運転データの分類手法の一例)
次に、図7乃至図9を参照して、本実施形態に係る統計的分析による運転データの分類手法の一例について、説明する。ここに、図7は、本実施形態に係る統計的分析によって、4種類に分類された運転データの類型を示した表である。図8は、本実施形態に係る、個人内特性に着目して、言い換えると、一の運転者の運転特性に着目して、運転データを分類する場合、操作タイミング等の一の運転データに対する、統計的な偏差の大小レベルを判定するための基準を示したグラフである。
【0097】
図9は、本実施形態に係る、個人間特性に着目して、言い換えると、複数の運転者に着目して、運転データを分類する場合、操作タイミング等の一の運転データに対する、統計的な偏差の大小レベルを判定するための基準を示したグラフ(図9(a)及び図9(b))である。
【0098】
(運転データの分類)
特に、本実施形態では、図7に示されるように、統計的な分析に基づいて、計測され記憶されることによって取得された運転データを、次の4種類に分類する。これらの4種類の運転データとは、(i)個人内特性に着目した統計的な偏差が大レベルであり、且つ、個人間特性に着目した統計的な偏差が大レベルである第1の運転データ群、(ii)個人内特性に着目した統計的な偏差が小レベルであり、且つ、個人間特性に着目した統計的な偏差が大レベルである第2の運転データ群、(iii)個人内特性に着目した統計的な偏差が小レベルであり、且つ、個人間特性に着目した統計的な偏差が小レベルである第3の運転データ群、及び、(iv)個人内特性に着目した統計的な偏差が大レベルであり、且つ、個人間特性に着目した統計的な偏差が小レベルである第4の運転データ群である。
【0099】
(個人内特性の統計的な偏差の判定手法)
ここで、図8を参照して、本実施形態に係る、個人内特性に着目して、言い換えると、例えば「Aさん」等の一の運転者の運転特性に着目して、一の運転者が運転する車両が出力する運転データに対する統計的な偏差の大小レベルを判定する判定手法について説明する。
【0100】
尚、図8の縦軸は、一の運転者が車両のアクセルをオフにするタイミングを示し、図8の横軸は、順に、交差点K1、及び交差点K2を示す。詳細には、図8の縦軸は、一の運転者が車両のアクセルをオフにするタイミングを示す指標として、一の運転者が車両のアクセルをオフにした地点と、交差点との距離を示す。
【0101】
図8に示されるように、「Aさん」が車両のアクセルをオフにするタイミング等の一の運転者の運転特性に対応した一の運転データに対する統計的な偏差の大小レベルは、「Aさん」が運転する車両が出力する運転データに対する統計的な偏差と、基準値との比較によって判定される。ここに、本実施形態に係る基準値とは、例えば、停止、右折若しくは左折等の運転操作の種類、又は、例えば、信号機、先行車若しくは歩行者の有無、交通量、天候、昼夜の区別等の交通環境情報に基づいて、個別具体的に定義されてよい。典型的には、本実施形態に係る基準値は、これらの運転操作の種類、及び、交通環境情報の変化の影響を殆ど又は完全に受けない状態下で、所定の場所を走行する際に得られる運転データの標準偏差を意味してよい。
【0102】
具体的には、図8の左側部、及び、次の式(1a)に示されるように、「Aさん」が車両のアクセルをオフにした地点と、交差点K1との距離を複数回、取得した結果、得られた度数分布の標準偏差σの大きさが、基準値Th0を超えた場合、「Aさん」の運転特性に対応した運転データに対する統計的な偏差は、大レベルであると判定される。
【0103】
(標準偏差σの大きさ) ≧ Th0 …… (1a)
より具体的には、「Aさん」がアクセルをオフにする交差点K1の手前距離は、停止、右折又は左折等の運転操作、交差点K1周辺の交通量、交差点K1周辺の天候等の交通環境情報、又は「Aさん」の感情的な気分などによって大きく変動すると判定される。
【0104】
他方、図8の右側部、及び、次の式(1b)に示されるように、「Aさん」が車両のアクセルをオフにした地点と、交差点K1との距離を複数回、取得した結果、得られた度数分布の標準偏差の大きさが、基準値Th0を超えない場合、「Aさん」の運転特性に対応した運転データに対する統計的な偏差は、小レベルであると判定される。
【0105】
(標準偏差σの大きさ) < Th0 …… (1b)
より具体的には、「Aさん」がアクセルをオフにする交差点K2の手前距離は、右折や左折等の運転操作、交差点K2周辺の交通量、交差点K2周辺の天候等の交通環境情報、又は「Aさん」の感情的な気分などによって大きく変動しないと判定される。
【0106】
尚、上述の標準偏差の代わりに、確率統計学上の所謂、箱ひげ図の箱の長さと基準値とを比較してよいし、或いは、箱ひげ図の中央値と基準値とを比較してよい。
【0107】
(個人間特性の統計的な偏差の判定手法)
次に、図9を参照して、本実施形態に係る、個人間特性に着目して、言い換えると、例えば「Aさん」「Bさん」「Cさん」等の複数の運転者の運転特性に着目して、複数の運転者が夫々運転する複数の車両が夫々出力する複数の運転データに対する統計的な偏差の大小レベルを判定する判定手法について説明する。
【0108】
尚、図9(a)及び図9(b)の縦軸は、複数の運転者が車両のアクセルをオフにするタイミングを示し、図9(a)及び図9(b)の横軸は、順に、「Aさん」、「Bさん」及び「Cさん」を示す。詳細には、図9(a)及び図9(b)の縦軸は、複数の運転者が車両のアクセルを夫々オフにするタイミングを示す指標として、複数の運転者が車両のアクセルを夫々オフにした地点と、交差点との距離を示す。
【0109】
図9(a)に示されるように、「Aさん」、「Bさん」及び「Cさん」が車両のアクセルを夫々オフにするタイミング等の複数の運転者に夫々対応した複数の運転データに対する統計的な偏差の大小レベルは、「Aさん」、「Bさん」及び「Cさん」が夫々運転する複数の車両が出力する複数の運転データに夫々対応した、複数の標準偏差の値が点在又は分布する範囲の広さと、基準幅との比較によって判定される。ここに、本実施形態に係る基準幅とは、例えば、停止、右折若しくは左折等の運転操作の種類、又は、例えば、信号機、先行車若しくは歩行者の有無、交通量、天候、昼夜の区別等の交通環境情報に基づいて、個別具体的に定義されてよい。典型的には、本実施形態に係る基準幅は、これらの運転操作の種類、及び、交通環境情報の変化の影響を殆ど又は完全に受けない状態での、複数の運転者に夫々対応した複数の運転データにおける、複数の標準偏差の値が点在又は分布する範囲の幅を意味してよい。
【0110】
具体的には、図9(a)、及び、次の式(2a)に示されるように、「Aさん」が交差点Kを右折する際に、車両のアクセルをオフにした地点と、交差点Kとの距離を複数回、取得した結果、得られた度数分布の標準偏差σa、概ね同様にして得られた「Bさん」の標準偏差σb、及び、概ね同様にして得られた「Cさん」の標準偏差σcが存在する範囲の幅Xが、基準幅Th1を超えた場合、「Aさん」、「Bさん」及び「Cさん」に夫々対応した複数の運転データに対する統計的な偏差は、大レベルであると判定される。
【0111】
(標準偏差σa、σb、σcが存在する範囲の幅X) ≧ Th1 …… (2a)
より具体的には、「Aさん」、「Bさん」及び「Cさん」がアクセルを夫々オフにする交差点Kの手前距離は、停止、右折又は左折等の運転操作、交差点K周辺の交通量、交差点K周辺の天候等の交通環境情報、又は「Aさん」、「Bさん」及び「Cさん」の感情的な気分などによって大きく変動すると共に、個人間で大きく変動すると判定される。
【0112】
他方、図9(b)、及び、次の式(2b)に示されるように、「Aさん」が交差点Kを右折する際に、車両のアクセルをオフにした地点と、交差点Kとの距離を複数回、取得した結果、得られた度数分布の標準偏差σa、概ね同様にして得られた「Bさん」の標準偏差σb、及び、概ね同様にして得られた「Cさん」の標準偏差σcが存在する範囲の幅Xが、基準幅Th1を超えない場合、「Aさん」、「Bさん」及び「Cさん」に夫々対応した複数の運転データに対する統計的な偏差は、小レベルであると判定される。
【0113】
(標準偏差σa、σb、σcが存在する範囲の幅X) < Th1 …… (2b)
より具体的には、「Aさん」、「Bさん」及び「Cさん」がアクセルを夫々オフにする交差点Kの手前距離は、停止、右折又は左折等の運転操作、交差点K周辺の交通量、交差点K周辺の天候等の交通環境情報、又は「Aさん」、「Bさん」及び「Cさん」の感情的な気分などによって変動する可能性はあるが、個人間での変動は小さいと判定される。
【0114】
尚、詳細には、例えば「Aさん」「Bさん」「Cさん」等の複数の運転者に夫々対応した複数の運転データを、交通環境情報に関する所定の条件の下、所定の地点において、次の手法によって取得してよい。即ち、各車両から情報管理サーバに向けて通信網を介して送信された運転データを、情報管理サーバで集計し統計的に解析し、複数の運転データに対する統計的な偏差の大小レベルを判定してよい。或いは、所定の道路を走行している他の車両、所定の走行場面の下で運転している他の車両、又は、自車両の近傍を走行している他の車両から自車両に向けて通信網を介して送信された運転データ、言い換えると、車車間通信によって送信された運転データを、自車両で集計し統計的に解析し、自車両の運転データを含む複数の運転データに対する統計的な偏差の大小レベルを判定してよい。
【0115】
(個人内特性及び個人間特性の統計的な偏差の判定の結果としての運転データの分類)
(第1の運転データ群)
第1の運転データ群については、一の運転者の運転特性に着目して統計的な偏差が大レベルであると共に、複数の運転者に着目しても統計的な偏差が大レベルであるので、このような第1の運転データ群が取得される道路や走行場面においては、標準的な運転支援を行ったとしても、一の運転者が、標準的な運転支援に対して所望となる運転からかけ離れているとして違和感を感じることが少ないと予想されるので、一の運転者が標準的な運転支援を受容する度合いも大きいと予想される。
【0116】
より典型的には、第1の運転データ群の一例としては、例えば郊外や田舎にある信号機前でアクセルをオフにするタイミングを挙げることができる。何故ならば、例えば郊外や田舎は、道路空間が広いので100m手前でアクセルをオフにして徐行する運転者が存在する可能性もあると共に、50m手前でアクセルをオフにすると同時にブレーキを掛ける運転者が存在する可能性もあるからである。
【0117】
本実施形態では、このような第1の運転データ群が取得される道路や走行場面においては、複数の運転者が夫々運転操作する際に取得される複数の運転データの平均値などから、例えば過半数等の大部分の運転者の標準的な運転操作を示す標準的な運転データを算出し、この算出された標準的な運転データに基づいて、一の運転者に対して運転支援を行ってよい。
【0118】
典型的には、一の運転者が、第1の運転データ群が取得される道路や走行場面を走行する際に、この算出された標準的な運転データにより近似した運転データを、一の運転者の車両が自動的に出力するように運転支援してよい。より典型的には、例えばブレーキを掛けるタイミング等の安全運転に大きな影響を及ぼす可能性の高い運転データについては、第1の運転データ群に対応した複数の運転データの平均値の代わりに、この平均値よりも早いブレーキを掛けるタイミングを標準的な運転データとして算出してよい。
【0119】
このような第1の運転データ群は、標準的な運転データであるとして、例えば情報管理サーバの運転データベース等の車両外に設置された運転データベースに記憶されることによって、各車両がこの情報管理サーバに簡便且つ迅速にアクセスできる。これにより、情報管理サーバの運転データベースに記憶された第1の運転データ群を複数の車両で共有できるので、データの利用効率の向上と、データの迅速なアクセスとを実現できるので実践上、好ましい。
【0120】
具体的には、このような第1の運転データ群は、標準的な運転データであると、例えば情報管理センターに設置された情報管理サーバの運転データベースに登録され、当該情報管理サーバの運転データベースに記録されると共に、各車両のデータベースには記録されない、或いは、一旦記録した後で削除される。このような第1の運転データ群は、標準的な運転データであると情報管理サーバの運転データベースに登録された後は、各車両に設置された記憶手段に格納されるデータベースにおいて、第1の運転データ群に対応される道路、走行場面、運転操作の種類、又は交通環境情報に関するデータは新規に記録されない。
【0121】
(第2の運転データ群)
第2の運転データ群については、一の運転者に着目すると、統計的な偏差が小レベルであり、一の運転者は、このような第2の運転データ群が取得される道路や走行場面においては、所望となる運転操作が行えるように細心の注意を払い運転操作自体に敏感であることが予想される。仮に、このような第2の運転データ群が取得される道路や走行場面において、標準的な運転支援を行った場合、一の運転者が、標準的な運転支援に対して所望となる運転からかけ離れているとして違和感を感じる度合いが大きくなると予想される。従って、このような第2の運転データ群が取得される道路や走行場面においては、一の運転者の運転操作の癖や運転技能に十分着目して、その一の運転者にとって最適な運転支援を行う必要性が高い。
【0122】
より典型的には、第2の運転データ群の一例としては、例えば見晴らしの良い曲がり角でのアクセルをオフにするタイミングを挙げることができる。何故ならば、例えば見晴らしの良い曲がり角においては、例えばスローインファーストアウトのタイミング等の個人間で運転操作のバラツキの大きいため、一個人の運転技能や運転習慣に依存する度合いが高いためである。
【0123】
本実施形態では、このような第2の運転データ群が取得される道路や走行場面においては、この一の運転者が運転操作する際に取得される運転データの平均値などから、一の運転者にとって最適な運転操作を示す、一の運転者個人にとって最適な運転データを算出し、この算出された運転データに基づいて、一の運転者に対して運転支援を行ってよい。
より典型的には、例えばブレーキを掛けるタイミング等の安全運転に大きな影響を及ぼす可能性の高い運転データについては、第2の運転データ群に対応した運転データの代わりに、この運転データよりも早いブレーキのタイミングを一の運転者個人にとって最適な運転データとして算出してよい。
【0124】
このような第2の運転データ群は、一の運転者個人にとって最適な運転データを算出する際に必要な運転データであるとして、例えば車両内に設置された運転データベースに記憶されることによって、一の運転者個人の車両が迅速且つ簡便にアクセスできる。これにより、各車両に設けられたデータベースは、一の運転者個人にとって最適な運転データを算出する際に必要な第2の運転データ群を記憶し、第2の運転データ群以外の第1の運転データ群や第3の運転データ群は記憶しなくてよい。これにより、各車両に設けられたデータベースのデータ量を顕著に削減し、各車両の記憶手段の記憶容量を低減することが可能であるので、製造コストを低減できるので、実践上、大変好ましい。更に、これにより、各車両に設けられたデータベースに対して各種の情報処理を施すCPU等の制御手段の演算負荷を低減できるので、CPU等の制御手段の演算能力を向上させるための製品コストを低減できるので、実践上、大変好ましい。
【0125】
(第3の運転データ群)
第3の運転データ群については、一の運転者の運転特性に着目して統計的な偏差が小レベルであると共に、複数の運転者に着目しても統計的な偏差が小レベルであるので、このような第3の運転データ群が取得される道路や走行場面においては、全ての運転者にとって標準的な運転支援を行ったとしても、運転者が、標準的な運転支援に対して所望となる運転からかけ離れているとして違和感を感じることが少ないと予想されるので、運転者が標準的な運転支援を受容する度合いも大きいと予想される。
【0126】
より典型的には、第3の運転データ群の一例としては、例えば街中の信号機前でのアクセルをオフにするタイミングを挙げることができる。何故ならば、例えば街中では、郊外と比較して、道路の幅が狭く、車両が多いため、大多数の車両が、略同じ地点や略同じタイミングでアクセルをオフにする可能性が高いからである。
【0127】
本実施形態では、このような第3の運転データ群が取得される道路や走行場面においては、複数の運転者が夫々運転操作する際に取得される複数の運転データの平均値などから、例えば過半数等の大部分の運転者の標準的な運転操作を示す標準的な運転データを算出し、この算出された運転データに基づいて、一の運転者に対して運転支援を行ってよい。
【0128】
典型的には、一の運転者が、第3の運転データ群が取得される道路や走行場面を走行する際に、この算出された運転データにより近似した運転データを、一の運転者の車両が自動的に出力するように運転支援してよい。より典型的には、例えばブレーキを掛けるタイミング等の安全運転に大きな影響を及ぼす可能性の高い運転データについては、第3の運転データ群に対応した複数の運転データの平均値の代わりに、この平均値よりも早いブレーキのタイミングを標準的な運転データとして算出してよい。
【0129】
このような第3の運転データ群は、標準的な運転データであるとして、例えば情報管理サーバの運転データベース等の車両外に設置された運転データベースに記憶されることによって、各車両がこの情報管理サーバに簡便且つ迅速にアクセスできる。これにより、情報管理サーバの運転データベースに記憶された第3の運転データ群を複数の車両で共有できるので、データの利用効率の向上と、データの迅速なアクセスとを実現できるので実践上、好ましい。
【0130】
(第4の運転データ群)
第4の運転データ群については、一の運転者の運転特性に着目して統計的な偏差が大レベルであるのに対して、複数の運転者に着目して統計的な偏差が小レベルであるという運転データは、複数の運転者が一の運転者の集合であることと、統計的に類推される現象とを鑑みて、この第4の運転データ群が存在する可能性は顕著に低いと考える。これにより、本実施形態では、この第4の運転データ群が、多少なりとも取得される道路や走行場面においては、第1の運転データ群又は第3の運転データ群と概ね同様にして、複数の運転者が夫々運転操作する際に取得される運転データの平均値などから、過半数等の大部分の運転者の標準的な運転操作を示す標準的な運転データを算出し、この算出された運転データに基づいて、一の運転者に対して運転支援を行ってよい。或いは、この第4の運転データ群が、多少なりとも取得される道路や走行場面においては、第2の運転データ群と概ね同様にして、この一の運転者が運転操作する際に取得される運転データの平均値などから、一の運転者にとって最適な運転操作を示す、一の運転者個人にとって最適な運転データを算出し、この算出された運転データに基づいて、一の運転者に対して運転支援を行ってよい。
【0131】
このような第4の運転データ群は、標準的な運転データであるとして、例えば情報管理サーバの運転データベース等の車両外に設置された運転データベースに記憶してよいし、或いは、一の運転者個人にとって最適な運転データを算出する際に必要な運転データであるとして、例えば車両内に設置された運転データベースに記憶してよい。
【0132】
以上の結果、本実施形態によれば、複数の運転者が夫々運転する複数の車両が夫々出力する複数の運転データを、上述した第1の運転データ群、第2の運転データ群、及び第3の運転データ群などに分類し、運転データの性質、利用目的、又は種類などに応じて、例えば情報管理サーバ及び各車両のうちいずれか一方に設けられたデータベースに記録し蓄積する。これにより、データの利用効率の向上と、データの迅速なアクセスとを実現できるので実践上、好ましい。
【0133】
典型的には、第1の運転データ群や第3の運転データ群は、標準的な運転データであるとして、例えば情報管理サーバの運転データベース等の車両外に設置された運転データベースに記憶されることによって、各車両がこの情報管理サーバに簡便且つ迅速にアクセスできる。これにより、情報管理サーバの運転データベースに記憶された第1の運転データ群や第3の運転データ群を複数の車両で共有できるので、データの利用効率の向上と、データの迅速なアクセスとを実現できるので実践上、好ましい。更に、典型的には、第2の運転データ群は、一の運転者個人にとって最適な運転データを算出する際に必要な運転データであるとして、例えば車両内に設置された運転データベースに記憶されることによって、一の運転者個人の車両が迅速且つ簡便にアクセスできる。これにより、各車両に設けられたデータベースは、一の運転者個人にとって最適な運転データを算出する際に必要な第2の運転データ群を記憶し、第2の運転データ群以外の第1の運転データ群や第3の運転データ群は記憶しなくてよい。これにより、各車両に設けられたデータベースのデータ量を顕著に削減し、各車両の記憶手段の記憶容量を低減することが可能であるので、製造コストを低減できるので、実践上、大変好ましい。更に、これにより、各車両に設けられたデータベースに対して各種の情報処理を施すCPU等の制御手段の演算負荷を低減できるので、CPU等の制御手段の演算能力を向上させるための製品コストを低減できるので、実践上、大変好ましい。
【0134】
仮に、一の運転者に対して運転支援を行う際に、複数の運転者が夫々運転する複数の車両が夫々出力する複数の運転データの全てを各車両毎に設けられたデータベースに記録し蓄積した場合、各車両に設けられたデータベースのデータ量が運転の度に増大し、各車両の記憶手段の記憶容量を常に増設する必要が生じてしまい、製造コストが顕著に高くなってしまうという技術的な問題点が生じる。また、データベースのデータ量の増大に伴い、各車両に設けられたデータベースに対して各種の情報処理を施すCPU等の制御手段の演算負荷も高くなってしまい、CPU等の制御手段の演算能力を向上させるための製品コストも高くなってしまうという技術的な問題点が生じる。
【0135】
上述の実施形態では、運転データの分類に応じて、情報管理サーバ200の運転データベース210、及び、情報処理装置300の運転データベース310のうちいずれか一方のデータベースに記録し蓄積する場合について説明したが、本発明は、これに限られず、運転データの分類に応じて、情報処理装置300内に設けられた一の運転データベース、及び他の運転データベースのうちいずれか一方のデータベースに記録し蓄積してよい。或いは、本発明は、運転データの分類に応じて、情報管理サーバ200内に設けられた一の運転データベース、及び他の運転データベースのうちいずれか一方のデータベースに記録し蓄積してよい。
【0136】
本発明は、上述した実施例に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う運転支援用の情報管理システム、運転支援用の情報管理サーバ及び移動体搭載用の情報処理装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明は、例えば運転管理データベース等を備えた運転支援用の情報管理システム、運転支援用の情報管理サーバ及び移動体搭載用の情報処理装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0138】
1…情報管理システム、30…車両、100…通信網、200…情報管理サーバ、201…受信部、203…送信部、210…運転データベース、250…制御部、251…運転行動の解析推定部、252…偏差判定部、300…情報処理装置、301…送受信部、302…測定部、303…運転支援部、310…運転データベース、350…制御部、351…運転行動の解析推定部、352…偏差判定部、400…ナビゲーション装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の移動体を夫々運転する複数の運転者に夫々対応した複数の運転データを管理可能な運転支援用の情報管理システムであって、
前記複数の運転データのうち一の運転者に対応した一の運転データにおける統計的な第1偏差、及び、前記複数の運転データにおける統計的な第2偏差を特定する特定手段と、
前記特定された第1偏差、及び、前記特定された第2偏差に応じて、一の記憶手段及び前記一の記憶手段と異なる他の記憶手段のうちいずれか一方の記憶手段に、前記複数の運転データを夫々記憶させる制御手段と
を備えることを特徴とする運転支援用の情報管理システム。
【請求項2】
前記一の記憶手段として、前記複数の移動体内に夫々設けられ、前記一の運転データを記憶可能な第1記憶手段と、
前記他の記憶手段として、前記複数の移動体外に設けられ、前記複数の移動体と通信可能であると共に、前記複数の運転データを記憶可能な第2記憶手段とを備え、
前記制御手段は、前記特定された第1偏差、及び、前記特定された第2偏差に応じて、前記第1記憶手段及び前記第2記憶手段のうちいずれか一方の記憶手段に、前記複数の運転データを夫々記憶させることを特徴とする請求項1に記載の運転支援用の情報管理システム。
【請求項3】
前記制御手段は、前記特定された第1偏差が第1閾値を超えず、且つ、前記特定された第2偏差が第2閾値を超えた場合、前記一の運転データを前記複数の移動体内に夫々設けられた前記一の記憶手段に記憶させることを特徴とする請求項1又は2に記載の運転支援用の情報管理システム。
【請求項4】
前記制御手段は、(i)前記特定された第1偏差が第1閾値を超え、且つ、前記特定された第2偏差が第2閾値を超えた場合、又は、(ii)前記特定された第1偏差が第1閾値を超えず、且つ、前記特定された第2偏差が第2閾値を超えない場合、前記一の運転データを含む前記複数の運転データを前記複数の移動体外に設けられた前記他の記憶手段に記憶させることを特徴とする請求項1から3のうちいずれか一項に記載の運転支援用の情報管理システム。
【請求項5】
前記特定された第1偏差、及び、前記特定された第2偏差に応じて、前記一の運転データが、前記一の運転者の固有の運転技能又は運転癖に関する運転データであるか否かを判定する判定手段を更に備え、
前記制御手段は、(i)前記一の運転データが、前記運転技能又は前記運転癖に関する運転データであると判定される場合、前記一の運転データを前記複数の移動体内に夫々設けられた前記一の記憶手段に記憶させ、(ii)前記一の運転データが、前記運転技能又は前記運転癖に関する運転データであると判定されない場合、前記一の運転データを含む前記複数の運転データを前記複数の移動体外に設けられた前記他の記憶手段に記憶させることを特徴とする請求項1から4のうちいずれか一項に記載の運転支援用の情報管理システム。
【請求項6】
前記特定手段は、所定の道路又は所定の走行場面における前記統計的な第1偏差、及び、前記所定の道路又は前記所定の走行場面における前記統計的な第2偏差を特定することを特徴とする請求項1から5のうちいずれか一項に記載の運転支援用の情報管理システム。
【請求項7】
複数の移動体を夫々運転する複数の運転者に夫々対応した複数の運転データを管理可能な運転支援用の情報管理サーバであって、
前記複数の運転データを夫々受信する受信手段と、
前記受信された複数の運転データのうち一の運転者に対応した一の運転データにおける統計的な第1偏差、及び、前記複数の運転データにおける統計的な第2偏差を特定する特定手段と、
前記特定された第1偏差、及び、前記特定された第2偏差に応じて、一の記憶手段及び前記一の記憶手段と異なる他の記憶手段のうちいずれか一方の記憶手段に、前記複数の運転データを夫々記憶させる制御手段と
を備えることを特徴とする運転支援用の情報管理サーバ。
【請求項8】
複数の移動体を夫々運転する複数の運転者に夫々対応した複数の運転データを管理可能な移動体搭載用の情報処理装置であって、
前記複数の運転データを夫々受信する受信手段と、
前記受信された複数の運転データのうち一の運転者に対応した一の運転データにおける統計的な第1偏差、及び、前記複数の運転データにおける統計的な第2偏差を特定する特定手段と、
前記特定された第1偏差、及び、前記特定された第2偏差に応じて、一の記憶手段及び前記一の記憶手段と異なる他の記憶手段のうちいずれか一方の記憶手段に、前記複数の運転データを夫々記憶させる制御手段と
を備えることを特徴とする移動体搭載用の情報処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−96061(P2011−96061A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−250466(P2009−250466)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】