説明

運転支援装置、方法およびプログラム

【課題】燃費を変動させた要因が、その要因とは異なる別の要因に起因している場合であっても適切な案内をする技術の提供。
【解決手段】車両の走行に関する複数の状況項目のそれぞれについての状況値と燃費とが対応づけられた走行データを取得し、複数の走行データのなかから今回の走行データと、当該今回の走行データと燃費が相違する過去の走行データとを取得し、今回の走行データに対応する状況値が過去の走行データに対応する状況値から変動した複数の状況項目を要因項目として特定し、今回の走行データに対応する燃費が過去の走行データに対応する燃費から変動した要因を案内するにあたり、複数の要因項目の間の因果関係を提示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃費向上のための案内を行う運転支援装置、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃費向上のための案内を行う従来の技術として、運転者の運転操作や車両の走行状態の情報を収集し、運転操作や走行状態のなかから燃費を変動させた要因を抽出するものが提案されている(特許文献1、参照。)。特許文献1では、抽出した要因を提示した案内を運転者に行うことにより、燃費を変動させた要因に対応する運転操作や走行状態を運転者が改善することを図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−163781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術においては、燃費を変動させた要因が、その要因とは異なる別の要因に起因している場合に適切な案内をすることができないという問題があった。
例えば、他車の割込に起因して不可避的に生じた急なブレーキ操作によって低下した車速を回復するために行った急なアクセル操作が燃費を悪化させた要因である場合に、従来の技術では単に急なブレーキ操作やアクセル操作が燃費を悪化させた要因であると提示される。割込がされた際以外のブレーキ操作やアクセル操作が適切であった場合にも、運転者はブレーキ操作やアクセル操作を改善しようと意識することとなり、かえって燃費を悪化させてしまうという問題があった。さらに、急なブレーキ操作やアクセル操作が他車の割込に起因して不可避であったことを運転者が認識している場合には、単に急なブレーキ操作やアクセル操作が燃費を悪化させた要因であると提示することにより運転者に不快感を与えてしまうという問題があった。
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、燃費を変動させた要因が、その要因とは異なる別の要因に起因している場合であっても適切な案内をする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明においては、状況値が過去の走行データと今回の走行データとの間で変動した要因項目を複数特定する。そして、今回の走行データに対応する燃費が過去の走行データに対応する燃費から変動した要因を案内するにあたり、複数の要因項目の間の因果関係を提示する。因果関係を提示することにより、運転者は、ある要因項目についての状況値の変動が他の要因項目についての状況値の変動に依存して生じたことを認識できる。従って、他の要因項目の状況値の変動に依存して状況値が変動した要因項目がある場合に、当該要因項目の状況値の変動によってのみ、燃費が変動したと誤認することが防止できる。以上のように、燃費を変動させた要因が、その要因とは異なる別の要因に起因している場合であっても適切な案内をすることができる。
【0006】
ここで、走行データ取得手段は、車両の走行に関する今回および過去の走行データを取得すればよく、今回および過去の走行データにかかる車両の走行期間は特に限定されない。例えば、走行を開始してから終了するまでを走行期間としてもよいし、ある走行区間における走行を開始してから終了するまでを走行期間としてもよいし、ある走行状況での走行を開始してから終了するまでを走行期間としてもよい。さらに、車両の運転者が複数存在する場合に、今回および過去の走行データにかかる走行を同一の運転者によるものに限るようにしてもよい。また、ある走行データをそのまま過去の走行データとして取得してもよいし、複数の走行データを平均等したものを過去の走行データとして取得してもよい。
【0007】
要因項目特定手段が要因項目として特定する複数の状況項目は、過去の走行データと今回の走行データとの間で少なくとも状況値が変動した状況項目であればよい。従って、状況値が変動している状況項目のすべてを要因項目として特定してもよいし、状況値が変動した状況項目の一部のみを要因項目として特定してもよい。例えば、状況値の変動が燃費に与える影響度が所定の閾値よりも大きい状況項目のみを要因項目として特定してもよい。さらに、状況値の変動が燃費に与える影響度が相対的に他の状況項目よりも大きい状況項目を要因項目として特定してもよい。
【0008】
案内手段は、因果関係を提示した案内をすればよく、これらの案内内容を表示部に表示させてもよいし、案内を示す音声を音声出力部から出力させてもよい。なお因果関係とは、一対の要因項目についてそれぞれの状況値が変動した場合において、一方の要因項目が他方の要因項目に依存する関係を意味する。具体的には、要因項目そのもの同士に因果関係がある態様と、要因項目についての過去または今回の状況値同士に因果関係がある態様と、要因項目についての状況値の過去から今回への変動同士に因果関係がある態様とが挙げられる。さらに、一方の要因項目そのものと他方の要因項目についての過去または今回の状況値に因果関係がある態様と、一方の要因項目そのものと他方の要因項目についての状況値の過去から今回への変動に因果関係がある態様と、一方の要因項目についての過去または今回の状況値と他方の要因項目についての状況値の過去から今回への変動に因果関係がある態様とが挙げられる。なお、案内手段が案内を行うタイミングは、少なくとも今回の走行データが取得できるタイミングよりも後であればよく、今回の走行データを取得した直後、例えばエンジンを停止させた直後等とすることができる。例えば、今回の走行データを取得する走行期間を加速走行と定速走行と減速走行とをそれぞれ開始してから終了するまでとした場合には、加速走行と定速走行と減速走行とがそれぞれが終了する都度案内を行うこともできる。
【0009】
状況項目は車両の走行に関するものであればよく、種々の項目を採用することができる。例えば、状況項目が、状況値が車両の周囲環境に依存する周囲環境状況項目と、状況値が運転者の運転操作に依存する運転操作状況項目とを含んでもよい。この場合において、案内手段は、周囲環境状況項目に属する要因項目についての状況値の変動と、運転操作状況項目に属する要因項目についての状況値の変動との因果関係を提示するのが望ましい。これにより、要因項目としての周囲環境状況項目と運転操作状況項目についての状況値の変動の因果関係を運転者が認識することができ、運転操作状況項目の状況値の変動が周囲環境状況項目の状況値の変動に依存する不可避的なものであったことを運転者が認識できる。従って、本来改善の必要がない運転操作状況項目の状況値を運転者が改善しようとしてかえって燃費を悪化させたり、不可避的に運転操作状況項目の状況値が変動したことを認識している運転者を不快にさせることを防止できる。
【0010】
過去の走行データの好ましい一例として、走行データのうち今回の走行データと状況値が一致する状況項目が最も多い走行データが挙げられる。このようにすることにより、状況値が一致する状況項目が多いほど、過去の走行データと今回の走行データとの間で状況値が変動した要因項目の候補を少数に絞り込むことができ、精度よく要因項目を特定することができる。また、所定の状況項目については必ず状況値が一致する過去の走行データを取得するようにしてもよい。例えば、状況項目としての道路種別については必ず一致する過去の走行データを取得するようにしてもよい。この場合、今回の走行データが高速道走行に関するものである場合、高速道走行に関する走行データのうち状況値が一致する状況項目が最も多い走行データを過去の走行データとして取得するのが望ましい。高速道走行と一般道走行とでは燃費特性が大きく異なるため、一般道走行に関する走行データは要因項目を特定するための比較対象として相応しくないからである。
【0011】
さらに、要因項目の状況値の変動の因果関係が強いほど、因果関係を断定的に提示する程度を強めるようにしてもよい。例えば、要因項目の状況値の変動の因果関係が弱い場合には因果関係を示唆する程度にとどめる。これにより、状況値の変動が因果関係を有する要因項目の一方の状況値が他方の状況値に依存することが断定できない場合に、双方の要因項目について燃費が変動した要因である可能性があることを認識させることができる。なお、因果関係が強いとは、ある要因項目についての状況値の変動に依存して、他の要因項目についての状況値が変動する可能性が高いことを意味する。
【0012】
さらに、本発明のように燃費向上のための案内を行う手法は、プログラムや方法としても適用可能である。また、以上のような装置、プログラム、方法は、単独の装置として実現される場合もあれば、車両に備えられる各部と共有の部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。例えば、以上のような装置を備えたナビゲーション装置や方法、プログラムを提供することが可能である。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、装置を制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】運転支援装置を含むナビゲーション装置のブロック図である。
【図2】走行支援内容決定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)ナビゲーション装置の構成:
(2)運転支援処理:
(3)他の実施形態:
【0015】
(1)ナビゲーション装置の構成:
図1は、本発明にかかる運転支援装置を含むナビゲーション装置10の構成を示すブロック図である。ナビゲーション装置10は、CPU,RAM,ROM等を備える制御部20、記録媒体30を備えており、記録媒体30やROMに記憶されたプログラムを制御部20で実行することができる。本実施形態においては、このプログラムとして運転支援プログラム21を実行可能である。運転支援プログラム21は記録媒体30に記憶された走行データに基づいて運転者に燃費を向上させるための案内を行うための機能を制御部20に実行させる。
【0016】
なお、地図情報30aは、車両の位置の特定や車両の経路案内に利用される情報であり、車両が走行する道路上に設定されたノードを示すノードデータ,ノード間の道路の形状を特定するための形状補間点データ,ノード同士の連結を示すリンクデータ等を含んでいる。また、ノードデータおよび形状補間点データには、ノードや形状補間点に相当する道路上の位置の高度を示す情報が含まれ、リンクデータには勾配が変化する勾配区間であるか否かを示す情報が含まれている。本実施形態における車両(ナビゲーション装置10が搭載された車両)は、GPS受信部41と車速センサ42とジャイロセンサ43とカメラ44と車両状況センサ45と運転者状況センサ46と燃料センサ47と通信ユニット48とECU(Electronic Control Unit)49とユーザーI/F部50とを備えている。これらの各部と制御部20とが協働することによって運転支援プログラム21による機能や各種のプログラムによる機能を実現する。
【0017】
GPS受信部41は、GPS衛星からの電波を受信し、図示しないインタフェースを介して車両の現在位置を算出するための情報を出力する。制御部20は、この信号を取得して車両の現在位置を取得する。車速センサ42は、車両が備える車輪の回転速度に対応した信号を出力する。制御部20は、図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、[速度]を特定する状況値を取得する。以下、各状況項目の名称は[]の括弧書きにより示すこととする。制御部20は、車両の速度が0となる回数に基づいて[停止回数]を特定する状況値を取得する。制御部20は、車両の速度の微分値に基づいて車両の[加速度]と[減速度]を特定する状況値を取得する。なお、[加速度]は車両が加速している状態において車両に作用する進行方向と同じ向きの加速度を意味し、[減速度]は車両が減速している状態において車両に作用する進行方向と逆向きの加速度を意味する。ジャイロセンサ43は、車両に作用する角速度に対応した信号を出力する。制御部20は図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、車両の走行方向を取得する。車速センサ42およびジャイロセンサ43は、GPS受信部41の出力信号から特定される車両の現在位置を補正するなどのために利用される。また、車両の現在位置は、当該車両の走行軌跡に基づいて適宜補正される。制御部20は、車両の現在位置と地図情報30aに基づいて走行経路についての[勾配]と[道路種別]と[信号機の数]を特定する状況値を取得する。
【0018】
カメラ44は、車両の前方の道路を視野に含むように車両に対して取り付けられており、撮影した画像を示す画像データを出力する。制御部20は、図示しないインタフェースを介してこの画像データを取得して当該画像データに画像処理を行うことにより、[他車の割込回数]や[路面の凹凸度]や[路面の乾燥度]や[車間距離]を特定する状況値を取得する。車両状況センサ45は、車両の各種状況に対応した信号を出力する。図示の便宜上、車両状況センサ45を単一の要素により示しているが、車両状況センサ45は、[エンジンオイルの劣化度]を特定する状況値に対応する信号を生成するオイルセンサと、[タイヤの空気圧]を特定する状況値に対応する信号を生成する空気圧センサと、[ブレーキパッドの摩耗度]を特定する状況値に対応する信号を生成するブレーキパッドセンサと、車両に積載された荷物や乗員等の[積載重量]を特定する状況値に対応する信号を生成する重量センサと、[乗員人数]を特定する状況値に対応する信号を生成する着座センサとを含む。制御部20は、図示しないインタフェースを介して車両状況センサ45からの各信号を取得する。
【0019】
運転者状況センサ46は、運転者の状況に対応した信号を出力する。図示の便宜上、運転者状況センサ46を単一の要素により示しているが、運転者状況センサ46は、運転者の[体温]を特定する状況値に対応する信号を生成する体温計と、運転者の[脈拍数]を特定する状況値に対応する信号を生成する脈拍センサと、運転者の[眠気度]を特定する状況値に対応する信号を生成する眠気センサとを含む。体温計と脈拍センサは、例えば運転者が操作するハンドルに備えられる接触式センサである。眠気センサは、例えばカメラが撮影した運転者の目の開度等に基づいて眠気度を判定する。
【0020】
燃料センサ47は、燃料タンクにおける燃料の残量を検出し、残量に対応する信号を生成する。走行距離は、例えば車両の速度を積分することにより得ることができる。通信ユニット48は、無線通信によって外部から[渋滞距離]と[交通規制]と[天候]と[追い風量]とを特定する状況値に対応する信号を取得する。ECU(Electronic Control Unit)49は、車両の各種動作の制御処理を実行する。制御部20は、図示しないインタフェースを介してECU49にアクセスし、[電気使用量]と[アクセル開度]と[ブレーキ操作]と[ハンドル操作]と[シフト操作]と[エンジン回転数]とをそれぞれ特定する状況値に対応する信号を取得する。図示の便宜上、ECU49を単一の要素により示しているが、各種動作の制御処理を分担する複数のECUが備えられてもよいし、単一のECUが統合的に各種動作の制御処理を実行してもよい。
【0021】
ユーザーI/F部50は、運転者の指示を入力し、また運転者に燃費に関する案内を含む各種の情報を提供するためのインタフェース部であり、図示しないタッチパネルディスプレイやスイッチ、スピーカ等を備えている。制御部20は、ユーザI/F部50に対して制御信号を出力することによって各種の案内を出力させる。
【0022】
制御部20は、運転支援プログラム21を実行することにより、燃費向上のための案内を行う。このために、運転支援プログラム21は、走行データ作成部21aと走行データ取得部21bと要因項目特定部21cと案内部21dとを備えている。さらに、記録媒体30には地図情報30aおよび走行データ30bが記録されている。
【0023】
走行データ作成部21aは、燃費と状況項目それぞれについての状況値とを対応づけた走行データ30bを作成する処理を制御部20に実行させるモジュールである。制御部20は走行データ作成部21aの処理により、エンジンが点火された時刻から停止させられる時刻までの時間を走行期間とし、この走行期間において、各状況項目についての状況値を取得する。そして、エンジンが停止させられると、制御部20は走行データ作成部21aの処理により、状況項目のそれぞれの状況値を統計する。ここでは各状況項目の性質に応じた統計手法が用いられる。
【0024】
例えば、走行期間において車両が走行した走行経路に占める一般道と高速道の距離の比である走行距離比を量子化したものを、[道路種別]についての状況値とする。本実施形態では、地図情報30aに基づいて一般道と高速道の走行距離比を10%区切り(100%/0%,90%/10%,80%/20%・・・)に量子化する。また、車両の[速度]や[加速度]等については、各瞬間の車両の速度や加減速度を特定する状況値を統計することにより、当該状況値を走行期間における平均的な車両の速度や加減度を示す状況値に変換する。走行期間において車両が走行した走行経路に存在する信号機の数を地図情報30aに基づいて
累積した値を[信号機の数]についての状況値に変換する。さらに、走行期間において車両の速度が0以外の値から0に転じたタイミングを累積した値を[停止回数]についての状況値とする。なお、[エンジンオイルの劣化度],[タイヤの空気圧],[ブレーキパッドの摩耗度]は走行期間において大きく変動することはないため、例えばエンジン点火時にのみ状況値を取得しておき、当該状況値をそのまま統計した状況値とすればよい。以上の統計は走行期間中において逐次行われてもよいし、エンジン停止時に一括して行われてもよい。
【0025】
制御部20は走行データ作成部21aの処理により、図示しないインタフェースを介して燃料センサ47から燃料タンクにおける燃料の残量に対応する信号を取得し、走行期間における走行距離と残量の減少量とに基づいて燃費を算出する。そして、制御部20は走行データ作成部21aの処理により、走行期間における燃費と、走行期間について統計を行った各状況項目の状況値と、走行期間を識別する識別値とを対応づけて走行データ30bを作成し、当該走行データ30bを記録媒体30に記録する。本実施形態において、識別値は、エンジンを点火した時刻、すなわち走行期間の開始時刻を特定する。走行データ作成部21aによる制御部20の処理は、走行期間が終了するごとに実行され、走行期間が異なる走行データ30bが記録媒体30に記録されていく。
【0026】
走行データ取得部21bは、記録媒体30に記録された複数の走行データ30bのなかから今回の走行データ30bと、今回の走行データ30bと燃費が異なる過去の走行データ30bとを取得する処理を制御部20に実行させるモジュールである。制御部20は走行データ取得部21bの処理により、記録媒体30に記録された走行データ30bのなかから走行期間の開始時刻が最も新しい走行データ30bを、今回の走行データ30bとして取得する。制御部20は走行データ取得部21bの処理により、今回の走行データ30bに対応する燃費が燃費基準値から閾値以上乖離しているか否かを判定する。今回の走行データ30bに対応する燃費が燃費基準値から閾値以上乖離していなければ今回の走行データ30bについての燃費に関する案内を行わないこととする。反対に、今回の走行データ30bに対応する燃費が燃費基準値から閾値以上乖離していれば今回の走行データ30bについての燃費に関する案内を行なうこととする。
【0027】
今回の走行データ30bについての燃費に関する案内を行うとした場合、制御部20は走行データ取得部21bの処理により、今回の走行データ30bと[道路種別]の状況値(走行距離比)が一致し、かつ、他の状況項目についての状況値が最も類似する走行データ30bを過去の走行データ30bとして取得する。最も類似する走行データ30bとは、今回の走行データ30bと状況値が相違する状況項目の数が最も少ない走行データ30bを意味する。状況値が相違する状況項目の数が少なければ少ないほど類似度は高い。ここでは、今回の走行データ30bに対応する燃費が燃費基準値から閾値以上良ければ、走行データ30bのうち今回の走行データ30bよりも燃費が悪い走行データ30bを抽出し、そのなかから過去の走行データ30bを取得する。反対に、今回の走行データ30bに対応する燃費が燃費基準値から閾値以上悪ければ、走行データ30bのうち今回の走行データ30bよりも燃費が良い走行データ30bを抽出し、そのなかから過去の走行データ30bを取得する。なお、今回の走行データ30bと燃費が同一の走行データ30bは過去の走行データ30bとして取得されない。
【0028】
要因項目特定部21cは、過去の走行データ30bと今回の走行データ30bとの間で状況値が変動した複数の状況項目を、今回の走行データ30bに対応する燃費が過去の走行データ30bに対応する燃費から変動した要因に対応する要因項目として特定する処理を制御部20に実行させるモジュールである。制御部20は要因項目特定部21cの処理により、過去の走行データ30bと今回の走行データ30bとの間で状況値が変動した状況項目を抽出する。制御部20は要因項目特定部21cの処理により、状況値が数量を示す各状況項目について今回の走行データ30bに対応づけられた状況値から過去の走行データ30bに対応づけられた状況値を差し引くことにより、状況値が変動した状況項目ごとに状況値の変動量を算出する。状況値が数量でなく概念を示す各状況項目について今回の走行データ30bに対応づけられた状況値が示す概念と過去の走行データ30bに対応づけられた状況値が示す概念の変動パターンを特定する。例えば、[天候]については、"晴れから雨へ"や"晴れから曇りへ"等の変動パターンが特定される。
【0029】
制御部20は要因項目特定部21cの処理により、状況値が変動した状況項目ごとに、状況値の変動に基づく燃費影響度を取得する。各状況項目の状況値は、その値そのものが示す対象や単位等が異なるが、状況値の変動量を共通の燃費影響度に変換することにより、状況値の変動が燃費に与える影響度を状況項目間で比較することができる。制御部20は要因項目特定部21cの処理により、燃費影響度が所定の閾値以上となる状況値の変動を与える状況項目を要因項目として特定する。すなわち、過去の走行データ30bから状況値が変動したことによって、燃費に一定以上強く影響を与えた状況項目を要因項目として特定する。状況値の変動量については変動量にウエイトを乗算することにより、燃費影響度を算出する。状況値の変動パターンについては、マップを参照することにより、変動パターンに対応する燃費影響度に変換する。
【0030】
案内部21dは、今回の走行データ30bに対応する燃費についての案内をユーザーI/F部50に出力させる処理を制御部20に実行させるモジュールである。まず制御部20は走行データ取得部21bの処理により、複数の要因項目の間に因果関係が存在するか否かを判定する。すなわち、ある要因項目についての状況値の変動と、他の要因項目についての状況値の変動とが因果関係を有しているか否かを判定する。制御部20は走行データ取得部21bの処理により、複数の要因項目の間に存在する因果関係を提示した案内を行う。ここではメッセージを生成し、当該メッセージを表示または音声出力させるようユーザーI/F部50に指示する。
【0031】
(1−2)運転支援処理:
次に、運転支援プログラム21による運転支援処理を実施例に沿って説明する。図2は運転支援プログラム21が実行する走行支援処理を示すフローチャートである。運転支援プログラム21による運転支援処理は、新たな走行データ30bが記録媒体30に記録された際、すなわちエンジンを停止したことにより走行期間が終了した際に実行される。制御部20は走行データ取得部21bの処理により、記録媒体30に記録された走行データ30bのなかから新たに記録した走行データ30bを、今回の走行データ30bとして取得する(ステップS105)。
【0032】
表1は、本実施例において記録媒体30に記録された走行データ30bを示している。
【表1】

【0033】
表1においては一部の状況項目と、それらの状況値が示されている。走行データ30bにおいて状況値はそれぞれの状況項目の性質に応じた単位の数量や概念を意味する。また、状況値が数量ではなく"正常"や"低い"等の概念を示す場合にも、これらの概念に対応づけられた数値が状況値として走行データ30bに格納されている。表1に示すように走行期間の異なる複数の走行データ30bが記録媒体30に記録されている。本実施例では、表1における右端欄の走行データ30bが今回の走行データ30bとして取得される。なお、表の簡略化のため走行期間の開始時刻のうち月および日のみを示している。また、各状況項目は、状況値が走行中の運転操作に依存する運転操作状況項目と、状況値が運転操作以外の車両の状態に依存する車両状況項目と、状況値が運転者の状態に依存する運転者状況項目と、状況値が周囲の環境に依存する周囲環境状況項目とに分類される。概ね、運転操作状況項目と車両状況項目と運転者状況項目は状況値の変動が運転者に依存する状況項目であり、周囲環境状況項目は状況値の変動が運転者に依存しない状況項目であるということができる。
【0034】
今回の走行データ30bが取得できると、制御部20は走行データ取得部21bの処理により、今回の走行データ30bに対応する燃費が燃費基準値から閾値以上乖離しているか否か判定する(S110)。すなわち、今回の走行データ30bに対応する燃費が標準的であるか否かを判定する。今回の走行データ30bに対応する燃費が所定の燃費基準値から閾値以上乖離している場合には今回の走行データ30bに対応する燃費が標準的な範囲になく、今回の走行データ30bに対応する燃費が所定の燃費基準値から閾値以上乖離していない場合には今回の走行データ30bに対応する燃費が標準的である。燃費基準値は、標準的な燃費を示す値であればよく、例えば理想的な燃費とされてもよいし、車両メーカー等が仕様に定めた燃費とされてもよいし、平均的な燃費とされてもよい。本実施形態では、記録媒体30に記録された走行データ30bのうち今回の走行データ30bと[道路種別]の状況値(走行距離比)が同一の走行データ30bに対応づけられた燃費の平均値を燃費基準値とする。記録媒体30に記録された走行データ30bに基づく燃費基準値とすることにより、運転者自らの過去の運転履歴と比較して今回の走行データ30bに対応する燃費が大きく変動したか否かを判断することができる。
【0035】
ステップS110において今回の走行データ30bに対応する状況値が燃費基準値から閾値以上乖離していないと判定された場合、制御部20は運転支援処理を終了させる。すなわち、今回の走行データ30bに対応する燃費が標準的である場合には、後述する案内を行う必要がないとして運転支援処理を終了させる。燃費基準値に対して今回の走行データ30bに対応する燃費が大きく向上または悪化していない場合
には、今回の走行データ30bに対応する燃費についての案内を行う必要性がないからである。また、燃費基準値に対して今回の走行データ30bに対応する燃費との差がわずかな場合には、要因項目を精度よく特定することが困難であり、適切な案内を行うことができない可能性があるからである。
【0036】
ステップS110において今回の走行データ30bに対応する状況値が燃費基準値から閾値以上乖離していると判定された場合、制御部20は走行データ取得部21bの処理により、記録媒体30に記録された走行データ30bのなかから[道路種別]の状況値が、今回の走行データ30bに対応する状況値と同一のものを抽出する(S115)。表1の例では、11月2日,11月6日,11月8日の走行についての走行データ30bが抽出されないこととなる。[道路種別]の状況値(走行距離比)が異なる場合には燃費特性が明らかに異なることとなる。従って、[道路種別]の状況値の一致性に基づく抽出を行うことにより、燃費特性が明らかに異なる走行データ30bを基準として、今回の走行データ30bの燃費が変動した要因を特定することが防止できる。
【0037】
次に、制御部20は走行データ取得部21bの処理により、今回の走行データ30bに対応する燃費が燃費基準値が示す燃費から向上したか否かを判定する(S120)。今回の走行データ30bに対応する燃費が燃費基準値が示す燃費から向上した場合には、制御部20は走行データ取得部21bの処理により、ステップS115にて抽出した走行データ30bのなかから、今回の走行データ30bに対応する燃費よりも悪い燃費が対応づけられた走行データ30bを抽出する(S125)。このようにすることにより、今回の走行データ30bよりも悪い燃費が対応づけられた走行データ30bを基準として、今回の走行データ30bの燃費が向上した要因を特定することができる。
【0038】
今回の走行データ30bに対応する燃費が燃費基準値よりも悪い場合には、制御部20は走行データ取得部21bの処理により、ステップS115にて抽出した走行データ30bのなかから、今回の走行データ30bに対応する燃費よりも良好な燃費が対応づけられた走行データ30bを抽出する(S130)。表1の例において、今回の走行データ30bに対応する燃費が燃費基準値よりも悪いとした場合、11月3日,11月5日,11月7日,11月12日の走行についての走行データ30bが抽出されることとなる。このようにすることにより、今回の走行データ30bよりも良好な燃費が対応づけられた走行データ30bを基準として、今回の走行データ30bの燃費が悪くなった要因を特定することができる。
【0039】
次に、制御部20は走行データ取得部21bの処理により、ステップS115〜S130にて抽出した走行データ30bのなかから、今回の走行データ30bと状況値が相違する状況項目が最も少ない走行データ30b(状況値が一致する状況項目が最も多い走行データ30b)を、過去の走行データ30bとして取得する(S135)。すなわち今回の走行データ30bと各状況項目の状況値が総合的に最も類似する走行データ30bを過去の走行データ30bとして取得する。表1の例においては、11月3日の走行についての走行データ30bが抽出されることとなる。
【0040】
以上の処理により今回の走行データ30bと過去の走行データ30bとが取得できると、制御部20は要因項目特定部21cの処理により、今回の走行データ30bと過去の走行データ30bとの間で状況値が変動した状況項目を抽出する(S140)。表1の例においては、11月3日の走行に関する過去の走行データ30bと今回の走行データ30bとの間で状況値が異なる状況項目として[アクセル開度],[エンジン回転数],[加速度],[停止回数],[渋滞距離]が抽出される。ステップS135において、今回の走行データ30bと各状況項目の状況値が総合的に最も類似する走行データ30bを過去の走行データ30bとして取得しておくことにより、過去の走行データ30bから今回の走行データ30bの間で燃費が変動した要因となる状況項目の数を少なく絞り込むことができる。また、今回の走行データ30bと過去の走行データ30bとが互いに似たような走行に関するものとなるため、両者を比較することにより、精度よく要因項目を特定できる。
【0041】
次に、制御部20は要因項目特定部21cの処理により、ステップS140にて抽出した状況項目について、過去の走行データ30bに対応づけられた状況値から今回の走行データ30bに対応づけられた状況値を減算することにより、状況値の変動量を算出する。ここで、[エンジン回転数]のように具体的な数量を示す状況値については単純に減算することにより、変動量を算出することができる。一方、[タイヤ空気圧]等のように状況値が具体的な数量ではなく"正常""低い""高い"のような概念を示す状況項目については変動パターンを特定する。例えば、[タイヤ空気圧]についての変動パターンが"正常から低いへ"であると特定される。
【0042】
以上のようにして、状況値が変動した状況項目のそれぞれについて変動量と変動パターンが得られると、制御部20は要因項目特定部21cの処理により、状況値の変動による燃費影響度に基づいて要因項目を特定する(S145)。まず、制御部20は、状況値の変動量や変動パターンを燃費影響度に変換する。本実施形態では、状況値の変動量については、状況項目ごとに設定されたウエイトと変動量とを乗算することにより、変動量を燃費影響度に変換する。ウエイトは、各状況項目の状況値が単位量だけ変動したときに変動する燃費の変動量相当値となっている。例えば、加速度の変動の方が減速度の変動よりも燃費への影響が大きいため、加速度のウエイトが減速度のウエイトよりも大きく設定される。変動量にウエイトを乗算することにより、変動量に相当する燃費影響度を得ることができる。一方、変動パターンについては、変動パターンごとに燃費影響度を規定したマップを参照することにより、変動パターンを燃費影響度に変換する。前記ウエイトや前記マップは、各状況項目の状況値を変動させて車両を走行させた燃費試験の結果等に基づいて予め用意し、要因項目特定部21cに組み込んでおけばよい。
【0043】
状況値が変動した状況項目のそれぞれについて燃費影響度が取得できると、制御部20は要因項目特定部21cの処理により、燃費影響度が所定の閾値よりも大きい状況項目を要因項目として特定する。これにより、状況値の変動が燃費に与える影響度が大きい状況項目のみを要因項目とすることができる。表1の例において、[アクセル開度],[停止回数],[渋滞距離],[加速度]が要因項目として特定されたこととする。
【0044】
以上のようにして、要因項目が特定できると、制御部20は案内部21dの処理により、今回の走行データ30bに対応する燃費についての案内をユーザーI/F部50に出力させるよう指示する(S150)。まず、要因項目が複数特定された場合には、制御部20は案内部21dの処理により、複数の要因項目の間に因果関係が存在するか否か判定する。ここでは、各状況項目の間の因果関係の強さを規定するマップを参照する。このマップは、経験や実験により基づいて予め用意されており、要因項目特定部21cに組み込まれている。
【表2】

【0045】
表2のマップにおいては、縦方向に配列する運転操作状況項目と車両状況項目と運転者状況項目の状況値の変動が、横方向に配列する周囲環境状況項目の状況値の変動に依存する強さが状況値ごとに規定されている。すなわち、変動することが運転者に依存する状況値の変動と、変動することが運転者に依存しない状況値の変動との因果関係が規定されている。各状況項目の状況値の変動の因果関係は、状況値の具体的な変動パターンに応じて異なる場合もある。例えば、[天候]のように状況値が概念を示す場合、状況値の変動パターンに応じて車両が受ける影響は大きく異なるものとなる。従って、本実施形態では今回の走行データ30bにおいて[天候]について状況値の変動パターン
に応じて異なる因果関係を規定している。変動パターンとは、過去の走行データ30bについての状況値と今回の走行データ30bについての状況値の組み合わせ(例えば、"晴れから雨へ"。)を意味する。また本実施形態では、状況値が数量を示す状況項目については、状況値の変動パターンは不問としている。すなわち、数量を示す状況値に変動がある要因項目については、具体的な状況値や状況値の変動パターンに拘わらず、要因項目そのものが他の要因項目に対して因果関係を有するか否かを判定している。むろん、状況値が数量を示す状況項目についても、状況値の変動パターン(変動前後の状況値の値の範囲等)ごとに因果関係を規定してもよい。
【0046】
表1の例では、横方向に配列する周囲環境状況項目に該当する要因項目は[渋滞距離]となる。そのため、表2を参照して、[渋滞距離]についての状況値が変動したことに、他の要因項目である[アクセル開度],[停止回数],[加速度]の状況値が変動したことがどれだけ強く依存したかが判定される。この例では、要因項目としての[渋滞距離]についての状況値が変動したことに弱く依存して要因項目の[アクセル開度]の状況値が変動し、要因項目の[渋滞距離]についての状況値が変動したことに強く依存して要因項目の[停止回数]が変動したと判定される。一方、要因項目の[渋滞距離]についての状況値が変動したことに依存することなく、要因項目の[加速度]についての状況値が独立して変動したこと判定される。
【0047】
以上のようにして、要因項目についての状況値の変動の間での因果関係が判定できると、制御部20は要因項目特定部21cの処理により、今回の走行データ30bに対応する燃費についての案内のメッセージを生成する。状況値の変動が他の要因項目の状況値の変動と因果関係を有さないと判定された要因項目に関して以下の例のようにする。すなわち、今回の走行データ30bに対応する燃費が過去の走行データ30bの燃費(燃費基準値)から向上し、ある要因項目[A]についての状況値が値(a)となった場合に、
"[A]が(a)となったとなったため、燃費が向上しました。"
というメッセージを生成する。さらに、状況値の変動の因果関係が存在しないと判定された要因項目が、状況値が運転者に依存する運転操作状況項目と車両状況項目と運転者状況項目である場合には、当該要因項目の状況値を改善すべき旨のメッセージを付加する。逆に、今回の走行データ30bに対応する燃費が過去の走行データ30bの燃費から向上した場合には、当該要因項目の状況値を維持すべき旨のメッセージを付加すればよい。
【0048】
一方、状況値の変動に因果関係が存在すると判定された要因項目に関して以下の例のようにする。すなわち、例えば今回の走行データ30bに対応する燃費が過去の走行データ30bの燃費(燃費基準値)から向上し、ある要因項目[A]についての状況値が値(a)に変動したことに強く依存して、他の要因項目[B]についての状況値が値(b)に変動した旨の因果関係が存在する場合に、
"[A]が(a)となったことにより、[B]が(b)となったため、燃費が向上しました。"
というメッセージを生成する。さらに、因果関係の強さが弱いと判定された場合には、
"[A]が(a)となったことにより、[B]が(b)となったため、燃費が向上したと考えられます。"
というように結論を示す述語の断定度合いの弱いものに変化させたメッセージを生成する。これにより、メッセージにおける"ことにより"が示す因果関係の断定度合いを弱めることができる。因果関係の断定度合いを弱めることにより、要因項目[B]についても燃費が向上した要因に該当する可能性があることを運転者に認識させることができる。
【0049】
表1の例では、状況値の変動に因果関係が存在しない判定された(要因項目)[加速度]については、
"加速度が0.3Gとなったことにより、燃費が悪化しました。"
というメッセージが生成される。また、状況値の変動に因果関係が存在すると判定された要因項目の[アクセル開度],[停止回数],[渋滞距離]については、
"渋滞距離が2kmとなったことにより、停止回数が8回となったため、燃費が悪化しました。"
"渋滞距離が2kmとなったことにより、アクセル開度が30%となったため、燃費が悪化したと考えられます。"
以上のようにして、メッセージが生成できると、制御部20は要因項目特定部21cの処理により、当該メッセージを今回の走行データ30bに対応する燃費についての案内としてユーザーI/F部50に出力させるよう指示する。これにより、メッセージがタッチパネルディスプレイまたはスピーカから出力される。ところで、要因項目が1つのみ特定された場合には、上述した因果関係の判定を行うことなく、当該要因項目の状況値が要因で燃費が変動した旨のメッセージを生成すればよい。
【0050】
以上説明したように、本実施形態では、今回の走行データ30bと過去の走行データ30bの燃費とで燃費が変動した要因間に因果関係がある場合には、当該因果関係が運転者に提示されるため、適切な案内を行うことができる。すなわち、運転者に依存しない周囲環境要因に依存して燃費を直接的に悪化させた要因が不可避的に生じた場合に、燃費を直接的に悪化させた要因のみを提示しないため、運転者を不快にさせることを防止できる。また、運転者に依存しない周囲環境要因に依存して生じた要因であるにも拘わらず、運転者が当該要因を解消しようとすることにより、かえって燃費を悪化させることが防止できる。走行データ30bが記録媒体30に多数蓄積されていくことにより、今回の走行データ30bと過去の走行データ30bの類似度が高まり、要因項目の特定精度を向上させていくことができる。
【0051】
(3)他の実施形態:
第一実施形態においては、メッセージの結論を示す述語の断定度合いを因果関係の強さに応じて変化させることとしたが、今回の走行データ30bと過去の走行データ30bの類似度が高いほどメッセージの末語の断定度合いを強めるようにしてもよい。
また、第一実施形態では、因果関係の提示において要因項目とその状況値の双方を提示したが、因果関係の提示において要因項目のみを提示してもよいし、因果関係の提示において状況値のみを提示してもよい。前者の例として"勾配のためアクセル開度が小さくなったことにより、燃費が向上しました"の"勾配のため"や"天候のため電気使用量が多くなったことにより、燃費が悪化しました"の"天候のため"等が挙げられる。後者の例として、"雨のため電気使用量が増加したため、燃費が悪化しました"の"雨のため"等が挙げられる。また状況値を提示する態様は、状況値そのものを提示するものに限られず、前記の例のように状況値の概略的な傾向"増加した","小さくなった"等によって状況値を提示してもよい。例えば、"天候が悪化したため電気使用量が多くなったことにより、燃費が悪化しました"の"天候が悪化したため"等が挙げられる。
【0052】
第一実施形態では、エンジンが点火された時刻から停止させられる時刻までの時間を走行データ30bに対応する走行期間としたが、走行を開始してから終了するまでを走行期間としてもよいし、ある走行区間における走行を開始してから終了するまでを走行期間としてもよい。走行期間を短期間とすることにより、短期的な燃費についての案内を行うことができる。例えば、加速時のみを走行期間とする走行データ30bを使用することにより、加速時の燃費についてのみの案内をするようにしてもよい。この場合、加速が終了した段階で今回の走行データ30bが取得できるため、加速が終了する都度案内を行うことができる。
【0053】
また、短い走行期間ごとに走行データ30bを作成しておけば、ステップS105の段階で複数の走行データ30bを平均等することにより長い走行期間の走行データ30bを得ることができる。さらに、短い走行期間ごとに走行データ30bを作成しておけば、各状況項目の状況値に変動が生じた時刻が特定できるため、状況値の変動の因果関係の判定において同時性も考慮することができる。また、走行データ30bを通信ユニット48等の通信手段やフラッシュメモリ等の可搬記憶媒体を介して車両外部(同一車種や類似車種の他の車両)から取得してもよい。この場合、他の模範的な運転者の走行にかかる走行データ30bを取得するようにしてもよい。逆に、同一の車両を複数の運転者が運転する場合、運転者に対応づけて走行データ30bを作成しておき、運転者が一致する走行データ30bのみを過去の走行データ30bとして取得するようにしてもよい。
【0054】
第一実施形態では、ステップS115において[道路種別]の状況値が一致する走行データ30bのなかから過去の走行データ30bを取得することとしたが、他の状況項目の状況値が一致する走行データ30bのなかから過去の走行データ30bを取得するようにしてもよい。例えば走行区間ごとに走行データ30bを作成するようにしておき、走行区間が一致する走行データ30bのなかから過去の走行データ30bを取得するようにしてもよい。これにより、例えば通勤経路等における走行について精度よく案内を行うことができる。
【0055】
第一実施形態では、燃費影響度の大きさに基づいて要因項目として特定する状況項目を絞り込んだが、この処理(S145の一部)は必須ではない。すなわち状況値が変動したすべての状況項目を要因項目として特定してもよい。例えば要因項目として特定した状況項目が最初から数個しかない場合には、燃費影響度に基づく絞り込みを省略するようにしてもよい。これにより処理を効率化させることができる。さらに、ステップS145において、過去の走行データ30bと今回の走行データ30bとの間での状況値の変動パターンや状況値の変動量に対応する燃費影響度が相対的に他の状況項目よりも大きい状況項目を要因項目として特定してもよい。例えば、燃費影響度が上位数位以内となる状況項目のみを要因項目として特定してもよい。
【符号の説明】
【0056】
10…ナビゲーション装置、20…制御部、21…運転支援プログラム、21a…走行データ作成部、21b…走行データ取得部、21c…要因項目特定部、21d…案内部、30…記録媒体、30a…地図情報、30b…走行データ、41…GPS受信部、42…車速センサ、43…ジャイロセンサ、44…カメラ、45…車両状況センサ、46…運転者状況センサ、47…燃料センサ、48…通信ユニット、49…ECU、50…ユーザーI/F部。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の燃費と走行に関する複数の状況項目のそれぞれについての状況値とが対応づけられた走行データを取得し、複数の前記走行データのなかから今回の走行データと、当該今回の走行データと前記燃費が相違する過去の走行データとを取得する走行データ取得手段と、
前記今回の走行データに対応する前記状況値が前記過去の走行データに対応する前記状況値から変動した複数の前記状況項目を要因項目として特定する要因項目特定手段と、
前記今回の走行データに対応する前記燃費が前記過去の走行データに対応する前記燃費から変動した要因を案内するにあたり、複数の前記要因項目の間の因果関係を提示する案内手段と、を備える運転支援装置。
【請求項2】
前記状況項目は、前記状況値が前記車両の周囲環境に依存する周囲環境状況項目と、前記状況値が運転者の運転操作に依存する運転操作状況項目とを含み、
前記案内手段は、前記運転操作状況項目に属する前記要因項目についての前記状況値の変動が前記周囲環境状況項目に属する前記要因項目についての前記状況値の変動に依存する前記因果関係を提示する、請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記走行データ取得手段は、前記走行データのうち前記今回の走行データと前記状況値が一致する前記状況項目が最も多い前記走行データを前記過去の走行データとして取得する、請求項1〜2のいずれかに記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記案内手段は、前記因果関係が強いほど、当該因果関係を断定的に提示する程度を強める、請求項1〜3のいずれかに記載の運転支援装置。
【請求項5】
車両の走行に関する複数の状況項目のそれぞれについての状況値と燃費とが対応づけられた走行データを取得し、複数の前記走行データのなかから今回の走行データと、当該今回の走行データと前記燃費が相違する過去の走行データとを取得する走行データ取得工程と、
前記今回の走行データに対応する前記状況値が前記過去の走行データに対応する前記状況値から変動した複数の前記状況項目を、前記今回の走行データの前記燃費が前記過去の走行データの前記燃費から変動した要因に対応する要因項目として特定する要因項目特定工程と、
前記今回の走行データに対応する前記燃費が前記過去の走行データに対応する前記燃費から変動した要因を案内するにあたり、複数の前記要因項目の間の因果関係を提示する案内工程と、を含む運転支援方法。
【請求項6】
車両の走行に関する複数の状況項目のそれぞれについての状況値と燃費とが対応づけられた走行データを取得し、複数の前記走行データのなかから今回の走行データと、当該今回の走行データと前記燃費が相違する過去の走行データとを取得する走行データ取得機能と、
前記今回の走行データに対応する前記状況値が前記過去の走行データに対応する前記状況値から変動した複数の前記状況項目を、前記今回の走行データの前記燃費が前記過去の走行データの前記燃費から変動した要因に対応する要因項目として特定する要因項目特定機能と、
前記今回の走行データに対応する前記燃費が前記過去の走行データに対応する前記燃費から変動した要因を案内するにあたり、複数の前記要因項目の間の因果関係を提示する案内機能と、をコンピューターに実現させる運転支援プログラム。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−127459(P2011−127459A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284821(P2009−284821)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】