説明

運転支援装置

【課題】運転支援装置において、自車両と衝突する可能性があるものがあるか否かを正確に把握し、運転者が不要な警報を受けることがないようにすることにある。
【解決手段】制御手段(3)は、衝突可能性判定手段(3C)により衝突する可能性があると判定された対象物を運転者(P)が認識したか否かを判定する認識判定手段(3D)を備え、この認識判定手段(3D)により対象物を運転者(P)が認識したと判定された場合に警報手段(9)から警報を出力しないように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、運転支援装置に係り、特に車車間通信若しくは路車間通信等の通信システムを搭載した車両における運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、運転者に対する報知や車両操作への介入を行う運転支援装置を搭載したものがある。
この運転支援装置には、運転者に警報する警報手段を設け、自車両に接近する対象物と衝突する可能性があるか否かを判定する衝突可能性判定手段を備えてこの衝突可能性判定手段により自車両に接近する対象物と衝突する可能性があると判定された時に警報手段から警報を出力させるように制御する制御手段を設けたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−134971号公報
【0004】
特許文献1に係る運転支援装置は、運転者の視線方向を検出して、視界外に対向車等の自車両と衝突する可能性があるものが存在する場合に該当する情報を、優先的に運転者に報知するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来、上記の特許文献1では、自車両と衝突する可能性がある対象物が運転者の視界内にあるにも関わらず、運転者がそれを見落としている場合に、その効力を特たないという問題があった。
また、運転者は警報を受け取るタイミングの好みに個人差があるため、通信システムに予め設定されたタイミングで警報を出すと、運転者によっては、タイミングが遅すぎると感じる場合があり、改善が望まれていた。
【0006】
そこで、この発明の目的は、自車両と衝突する可能性がある対象物があるか否かを正確に把握し、運転者が不要な警報を受けることがないようにする運転支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、運転者に警報する警報手段を設け、自車両に接近する対象物と衝突する可能性があるか否かを判定する衝突可能性判定手段を備えて、この衝突可能性判定手段により自車両に接近する対象物と衝突する可能性があると判定された時に前記警報手段から警報を出力させるように制御する制御手段を設けた運転支援装置において、前記制御手段は、前記衝突可能性判定手段により衝突する可能性があると判定された対象物を運転者が認識したか否かを判定する認識判定手段を備え、この認識判定手段により対象物を運転者が認識したと判定された場合に前記警報手段から警報を出力しないように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明の運転支援装置は、自車両と衝突する可能性があるか否かを正確に把握し、運転者が不要な警報を受けることをなくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は運転支援装置のシステム構成図である。(実施例)
【図2】図2は運転支援制御のフローチャートである。(実施例)
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明は、自車両と衝突する可能性があるか否かを正確に把握して運転者が不要な警報を受けることがないようにする目的を、運転者が衝突する可能性のある対象物を認識している場合に警報しないようにして実現するものである。
以下、図面に基づいてこの発明の実施例を詳細且つ具体的に説明する。
【実施例】
【0011】
図1、図2は、この発明の実施例を示すものである。
図1において、1は車両に搭載される運転支援装置である。
この運転支援装置1は、運転者特性学習機能付きの車車間通信若しくは路車間通信等からなる通信システム2の制御手段3を備えている。
この制御手段3は、自車両と他車両の他車両通信手段4との間で情報を送受信する車車間通信手段3Aと、自車両と路上機5との間で情報を送受信する路車間通信手段3Bとのいずれか一方又は両方を備えている。
また、この制御手段3には、運転者Pによって操作されるスイッチ(ボタン等も含む)6と、運転者Pが発した音声を認識する音声認識手段7と、運転者Pの顔の向きや視線方向を検出する運転者状態検出手段8と、運転者Pに警報する警報手段9とが連絡している。運転者状態検出手段8は、ドライバモニタ(室内カメラ)等の機器からなる。警報手段9は、スピーカーやブザー等の機器からなる。
運転者Pは、自車両と衝突する可能性がある対象物の把握状態について、スイッチ6や音声認識手段7によって制御手段3に伝える。そして、運転者Pの顔向きや視線方向を検出する運転者状態検出手段8により、運転者Pが自車両と衝突する可能性がある対象物を見ていると判定される時に、スイッチ6や音声認識手段7の操作があった場合に、運転者Pが自車両と衝突する可能性がある対象物を認識したと、制御手段3が判断する。つまり、この制御手段3は、自車両と衝突する可能性がある対象物の情報に基づいて、運転者Pの自車両と衝突する可能性がある対象物の把握状態の情報を、予め設定した自車両と衝突する可能性がある対象物の情報と照合する機能を備える。
【0012】
また、制御手段3は、自車両に接近する対象物と衝突する可能性があるか否かを判定する衝突可能性判定手段3Cを備え、この衝突可能性判定手段3Cにより自車両に接近する対象物と衝突する可能性があると判定された時に警報手段9から警報を出力させるように制御する。
更に、制御手段3は、衝突可能性判定手段3Cにより衝突する可能性があると判定された対象物を運転者Pが認識したか否かを判定する認識判定手段3Dを備え、この認識判定手段3Dにより対象物を運転者Pが認識したと判定された場合に警報手段9から警報を出力しないように制御する。
更に、制御手段3は、認識判定手段3Dにより対象物を運転者Pが認識したと判定されたタイミングを計測するタイミング計測手段3Eを備え、このタイミング計測手段3Eにより計測されたタイミングに基づいて警報手段9から警報を出力するタイミングを変化させる。
【0013】
前記認識判定手段3Dは、衝突可能性判定手段3Cにより衝突する可能性があると判定された対象物が運転者状態検出手段8により検出された運転者の顔の向きや視線方向に位置する時に、スイッチ6の操作状態に基づいて運転者が認識したか否かを判定する。
また、前記認識判定手段3Dは、衝突可能性判定手段3Cにより衝突する可能性があると判定された対象物が運転者状態検出手段8により検出された運転者Pの顔の向きや視線方向に位置する時に、音声認識手段7による音声の認識結果に基づいて運転者が認識したか否かを判定する。
【0014】
前記衝突可能性判定手段3Cは、車車間通信手段3A又は路車間通信手段3Bにより取得した情報に基づいて、自車両に接近する対象物と衝突する可能性があるか否かを判定する。
【0015】
次に、運転支援制御を図2のフローチャートに基づいて説明する。
図2に示すように、制御手段3のプログラムがスタートすると(ステップA01)、自車両に接近して衝突する可能性のある対象物が存在するか否かを判断する(ステップA02)。
このステップA02がYESの場合には、運転者Pの自車両と衝突する可能性がある対象物の認識状態を取得し(ステップA03)、また、運転者Pの自車両と衝突する可能性がある対象物の認識状態のタイミングT2の取得をする(ステップA04)。このタイミングT2は、1回の運転者からの情報によるのではなく、複数の情報を統計処理することで算出することも可能である。
そして、自車両と衝突する可能性があると判断する対象物を、運転者Pが認識しているか否かを判断する(ステップA05)。
このステップA05がNOの場合には、自車両と衝突する可能性がある対象物に対する警報をタイミングT1(学習値)で行う(ステップA06)。このタイミングT1(学習値)の更新を、タイミングT1とタイミングT2との差の大きさによって更新する値の大きさを変えることにより、行うことも可能である。
このタイミングT1は、制御手段3が警報を出力するタイミングであり、初期値=タイミングTminであり、常に最終値を保持するものとする。ここで、タイミングTminは、指針上決まっている警報を出力するタイミングである。また、このタイミングT1は、絶対時間として、時間的に遅い場合に大きな数字であり、時間的に早い場合には小さな数字である。
一方、前記ステップA02がNO、又は前記ステップA05がYESの場合には、自車両と衝突する可能性がある対象物に対する警報を行わない(ステップA07)。
そして、タイミングT2<タイミングTminか否かを判断し(ステップA08)、このステップA08がYESの場合には、タイミングT1=タイミングT2とする(ステップA09)。
前記ステップA06の処理後、前記ステップA08がNOの場合、又は前記ステップA09の処理後は、このプログラムをエンドとする(ステップA10)。
【0016】
以上、この発明の実施例について説明してきたが、上述の構成を請求項毎に当てはめて説明する。
先ず、請求項1に係る発明では、制御手段3は、衝突可能性判定手段3Cにより衝突する可能性があると判定された対象物を運転者Pが認識したか否かを判定する認識判定手段3Dを備え、この認識判定手段3Dにより対象物を運転者が認識したと判定された場合に警報手段9から警報を出力しないように制御する。
これにより、運転者Pの把握している衝突する可能性がある対象物を正確に把握し、視界内にある衝突する可能性がある対象物を運転者Pが見落とさないことを確実に検出することができ、運転者Pが衝突する可能性がある対象物を認識している場合に、警報しないようにして、運転者Pが既に把握している衝突する可能性がある対象物に対する警報を受けるという煩雑さを省くことができる。
請求項2に係る発明では、制御手段3は、衝突可能性判定手段3Cにより衝突する可能性があると判定された対象物を運転者Pが認識したか否かを判定する認識判定手段3Dとこの認識判定手段3Dにより対象物を運転者Pが認識したと判定されたタイミングを計測するタイミング計測手段3Eとを備え、このタイミング計測手段3Eにより計測されたタイミングに基づいて警報手段9から警報を出力するタイミングを変化させる。
これにより、運転者Pは、個人的特性に合ったタイミングで衝突する可能性がある対象物に対する警報を受け取ることができ、よって、運転者Pは、運転に集中することができる。
請求項3に係る発明では、運転者Pによって操作されるスイッチ6を設け、運転者Pの顔の向きや視線方向を検出する運転者状態検出手段8を設け、認識判定手段3Dは、衝突可能性判定手段3Cにより衝突する可能性があると判定された対象物が運転者状態検出手段8により検出された運転者Pの顔の向きや視線方向に位置する時に、スイッチ6の操作状態に基づいて運転者Pが認識したか否かを判定する。
これにより、運転者Pが衝突する可能性がある対象物を認識したか否かを、確実に検出することができる。
請求項4に係る発明では、運転者Pが発した音声を認識する音声認識手段7を設け、運転者Pの顔の向きや視線方向を検出する運転者状態検出手段8を設け、認識判定手段3Dは、衝突可能性判定手段3Cにより衝突する可能性があると判定された対象物が運転者状態検出手段8により検出された運転者の顔の向きや視線方向に位置する時に、音声認識手段7による音声の認識結果に基づいて運転者Pが認識したか否かを判定する。
これにより、運転者Pが衝突する可能性がある対象物を認識したか否かを、確実に検出することができる。
請求項5に係る発明では、制御手段3は、自車両と他車両との間で情報を送受信する車車間通信手段3Aと、自車両と路上機5との間で情報を送受信する路車間通信手段3Bとのいずれか一方又は両方を備え、車車間通信手段3A又は路車間通信手段3Bにより取得した情報に基づいて、衝突可能性判定手段3Cは、自車両に接近する対象物と衝突する可能性があるか否かを判定する。
これにより、車車間通信又は路車間通信により取得した情報に基づいて、自車両に接近する対象物を容易に検出することができる。
【0017】
なお、この発明においては、自車両と衝突する可能性のある対象物を検出するための情報を得るために、車車間通信・路車間通信を利用する以外に、カメラやレーダーを利用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0018】
この発明に係る運転支援装置を、各種車両に適用可能である。
【符号の説明】
【0019】
1 運転支援装置
2 通信システム
3 制御手段
3A 車車間通信手段
3B 路車間通信手段
3C 衝突可能性判定手段
3D 認識判定手段
3E タイミング計測手段
4 他車両通信手段
5 地上機
6 スイッチ
7 音声認識手段
8 運転者状態検出手段
9 警報手段
P 運転者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者に警報する警報手段を設け、自車両に接近する対象物と衝突する可能性があるか否かを判定する衝突可能性判定手段を備えて、この衝突可能性判定手段により自車両に接近する対象物と衝突する可能性があると判定された時に前記警報手段から警報を出力させるように制御する制御手段を設けた運転支援装置において、前記制御手段は、前記衝突可能性判定手段により衝突する可能性があると判定された対象物を運転者が認識したか否かを判定する認識判定手段を備え、この認識判定手段により対象物を運転者が認識したと判定された場合に前記警報手段から警報を出力しないように制御することを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
運転者に警報する警報手段を設け、自車両に接近する対象物と衝突する可能性があるか否かを判定する衝突可能性判定手段を備えて、この衝突可能性判定手段により自車両に接近する対象物と衝突する可能性があると判定された時に前記警報手段から警報を出力させるように制御する制御手段を設けた運転支援装置において、前記制御手段は、前記衝突可能性判定手段により衝突する可能性があると判定された対象物を運転者が認識したか否かを判定する認識判定手段とこの認識判定手段により対象物を運転者が認識したと判定されたタイミングを計測するタイミング計測手段とを備え、このタイミング計測手段により計測されたタイミングに基づいて前記警報手段から警報を出力するタイミングを変化させることを特徴とする運転支援装置。
【請求項3】
運転者によって操作されるスイッチを設け、運転者の顔の向きや視線方向を検出する運転者状態検出手段を設け、前記認識判定手段は、前記衝突可能性判定手段により衝突する可能性があると判定された対象物が前記運転者状態検出手段により検出された運転者の顔の向きや視線方向に位置する時に、前記スイッチの操作状態に基づいて運転者が認識したか否かを判定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
運転者が発した音声を認識する音声認識手段を設け、運転者の顔の向きや視線方向を検出する運転者状態検出手段を設け、前記認識判定手段は、前記衝突可能性判定手段により衝突する可能性があると判定された対象物が前記運転者状態検出手段により検出された運転者の顔の向きや視線方向に位置する時に、前記音声認識手段による音声の認識結果に基づいて運転者が認識したか否かを判定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記制御手段は、自車両と他車両との間で情報を送受信する車車間通信手段と、自車両と路上機との間で情報を送受信する路車間通信手段とのいずれか一方又は両方を備え、前記車車間通信手段又は前記路車間通信手段により取得した情報に基づいて、前記衝突可能性判定手段は、自車両に接近する対象物と衝突する可能性があるか否かを判定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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