説明

運転者状態評価装置

【課題】車両の室内外から顔面皮膚温度分布に影響を与える環境要因を考慮することで、運転者の負荷状態の評価を正確に実施するとともに、各運転者のフラクタル次元の変化特性を考慮することでより正確な運転者の負荷状態の評価を行うことができる。
【解決手段】フラクタル次元算出回路5は、顔面温度分布測定回路1が測定した温度分布画像をフラクタル解析することによってフラクタル次元を算出する。運転負荷判定回路6は、フラクタル次元算出回路5によって算出されたフラクタル次元の次元数に基づいて運転者の運転負荷を判定する。さらに、運転負荷判定回路6は、交通量検出装置2の検出する交通量または道路線形複雑度装置3の検出する道路線形の複雑度が変化した場合に、その算出されたフラクタル次元の次元数の変化した量によって、運転負荷の判定の方法が変更されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転中に、運転者の運転負荷を定量的または定性的に評価するようにした運転者状態評価装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、人間の心拍、脈波、呼吸、血液、唾液など、いわゆる生体信号に含まれている情報を解析することによって、車両などを運転中の運転者に与えられている運転負荷を定量的に算出し、運転者の状態を評価する運転者状態装置の開発がなされている。近年、特に自動車への搭載を目的として、運転者にセンサ類を装着しない非接触タイプの運転者状態評価装置の開発がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の疲労特性評価装置および疲労計測装置は、運転者の顔面の表面温度を赤外線熱画像装置を用いて計測し、その計測温度の変化の特徴と運転者に与えられた運転負荷の関係を示すことで、顔面の表面温度から運転者の負荷を推定するようにしている。
一方、顔面の表面温度の分布は個人差があるが、基本的にその分布パターンが存在することがわかっており、その分布パターンを数値的に特徴付けるために、顔面皮膚温度分布をフラクタル解析することによってフラクタル次元を算出し、この算出されたフラクタル次元と運転者に与えられた運転負荷の量との関連を示すことによって、顔面の表面温度のフラクタル解析から運転者の負荷を推定する技術が公知となっている。このような技術により、顔面の皮膚温度を直接的に観測した上で運転負荷を推定する技術と比較して、運転者が運転負荷にさらされている状態をより正確に検出することが可能となった。
【特許文献1】特開平9−28679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、顔面皮膚温度分布をフラクタル解析することによる運転者の負荷状態を評価するにあたっては、車両の置かれている環境の悪影響を排除した上で、評価がなされるべきである。
また、顔面皮膚温度分布に基づく運転負荷の評価にあたっては、車両内に進入する日差しの影響や、車両に備えられている空調装置からの影響を排除する必要がある。
【0005】
さらに、顔面皮膚温度分布をフラクタル解析することによる運転者の負荷状態を評価するにあたっては、各運転者によって、運転負荷の大小に応じたフラクタル次元の変化特性が異なる性質があり、正しい評価を行うためには、各運転者におけるフラクタル次元の変化特性を考慮した評価手法が必要となる。
そこで、本発明の目的は、上記の点に鑑みて創作されたものであり、顔面皮膚温度分布をフラクタル解析することにより運転者の負荷状態を評価するにあたり、車両の室内外から顔面皮膚温度分布に影響を与える環境要因を考慮することで、運転者の負荷状態の評価を正確に実施するとともに、各運転者のフラクタル次元の変化特性を考慮することでより正確な運転者の負荷状態の評価を行うことができる運転者状態評価装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決し本発明の目的を達成するために、本発明は、以下のような構成からなる。
すなわち、本発明は、車両を運転する運転者の顔面における皮膚温度の2次元上の分布を温度分布画像として測定する顔面皮膚温度分布測定手段と、前記車両が走行する際にその車両の周囲の交通量を検出する交通量検出手段と、前記車両が走行する際にその車両の前方の道路線形の複雑度を検出する道路線形複雑度検出手段と、前記顔面温度分布測定手段が測定した温度分布画像をフラクタル解析することによってフラクタル次元を算出するフラクタル次元算出手段と、前記フラクタル次元算出手段によって算出されたフラクタル次元の次元数に基づいて運転者の運転負荷を判定する運転負荷判定手段とを備え、前記運転負荷判定手段は、前記交通量検出手段の検出した交通量および前記道路線形複雑度検出手段で検出した道路線形の複雑度のうちの少なくとも1つが変化した場合に、前記フラクタル次元算出手段で算出されたフラクタル次元の次元数の変化した量によって、前記運転負荷の判定の方法が変更されるようになっている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、運転者の顔面における皮膚温度分布が持つパターンによって運転者の負荷状態が評価可能となり、その評価の際に、運転者が運転中の車両の周辺の交通量や前方の道路線形の複雑度に対する運転者の運転負荷を、フラクタル次元の変化から評価することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態の構成を示すブロック図である。
この第1実施形態に係る運転者状態評価装置は、図1に示すように、顔面皮膚温度分布測定装置1と、交通量検出装置2と、道路線形複雑度検出装置3と、領域分割回路4と、フラクタル次元算出回路5と、運転負荷判定回路6と、処理切替え回路7と、判定領域決定回路8と、分割領域特性記憶装置9と、負荷判定方法変更回路10と、重み値付与回路11と、照度検出装置12と、風検出装置13と、を備えている。
ここで、顔面皮膚温度分布測定装置1、交通量検出装置2、道路線形複雑度検出装置3、および領域分割回路4は、顔面皮膚温度分布測定手段、交通量検出手段、道路線形複雑度検出手段、および領域分割手段にそれぞれ対応する。
【0009】
また、フラクタル次元算出回路5、運転負荷判定回路6、処理切替え回路7、および判定領域決定回路8は、フラクタル次元算出手段、運転負荷判定手段、処理切替え手段、および判定領域決定手段にそれぞれ対応する。
さらに、分割領域特性記憶装置9、負荷判定方法変更回路10、重み値付与回路11、照度検出装置12、および風検出装置13は、分割領域特性記憶手段、負荷判定方法変更手段、重み値付与手段、照度検出手段、および風検出手段にそれぞれ対応する。
【0010】
次に、図1に示す第1実施形態の構成要素の機能の概要について説明する。
顔面皮膚温度分布測定装置1は、車両を運転する運転者の顔面における皮膚温度の2次元上の分布を温度分布画像として測定するものである。交通量検出装置2は、車両が走行する際にその車両の周囲の交通量を検出するものである。
道路線形複雑度検出装置3は、車両が走行する際にその車両の前方の道路線形の複雑度を検出するものである。領域分割回路4は、顔面皮膚温度分布測定装置1が測定した顔面皮膚温度の画像を、所定面積の分割領域に分割するものである。
【0011】
フラクタル次元算出回路5は、その分割された顔面皮膚温度の各画像に対してフラクタル解析を行って、各分割領域ごとのフラクタル次元の次元数をそれぞれ算出するものである。運転負荷判定回路6は、その算出されたフラクタル次元の次元数に基づいて運転者の運転負荷を定量的または定性的に判定するものであり、その判定処理は後述のようにして行なわれる。
処理切替え回路7は、交通量検出装置2の検出した交通量と道路線形複雑度検出装置3の検出した道路線形の複雑度を参照して、後述のように所定の条件で処理内容を切り替えるものである。判定領域決定回路8は、後述のように、処理切り替え回路7が交通量検出装置2の検出した交通量および道路線形複雑度検出装置3の検出した道路線形の複雑度のいずれもが変化しないことを検出した場合に、運転負荷判定回路6が運転負荷の判定の対象とする判定領域を決定するものである。
【0012】
分割領域特性記憶装置9は、判定領域決定回路8が決定した判定領域を記憶するものである。負荷判定方法変更回路10は、運転負荷判定回路6が判定領域の判定に際して外乱のないことを判定したことを条件に、交通量検出装置2の検出した交通量と道路線形複雑度検出装置3の検出した道路線形の複雑度を参照して、重み値付与回路11が付与すべき重みを算出するものである。重み値付与回路11は、その算出された重みを付与するものである。
照度検出装置12は、運転者の顔面に直接的に照射される光の照度を検出するものである。風検出装置13は、車両の室内の風向きおよび風量を検出するものである。
【0013】
次に、第1実施形態の各部の詳細な動作について、図2に示すフローチャートを参照して説明する。この説明は、運転者が車両を運転中、すなわち車両が走行中の場合の各部の動作例である。
ステップS100では、顔面皮膚温度分布測定装置1が、運転者の顔の正面の体温分布を画像として測定する。この顔面皮膚温度分布測定装置1としては、いわゆる赤外線熱画像装置が使用され、これを図3に示すように運手者の正面に非接触的に配置する。これにより、赤外線熱画像装置は、運転者の顔面から出ている赤外線を検出し、相対的な温度分布に変換することが可能な撮像を行う。
【0014】
ステップS101では、交通量検出装置2が、車両の周囲の交通量を検出する。この交通量検出装置2は、カメラの撮影した画像を用いて車両を認識することで周辺車両の有無を検出したり、レーザレーダ、超音波センサなどを用いることにより実現できる。
ステップS102では、道路線形複雑度検出装置3が、車両の前方の道路線形の複雑度を検出する。この道路線形複雑度検出装置3は、カメラで車両の前方を撮影して画像を取得し、この取得した画像から道路を抽出して、その道路線形が複雑であるほど複雑度を高く与えたり、または、いわゆるナビゲーション装置から車両の前方の地図情報を取り込み、その地図情報から道路情報の複雑度を検出することにより行う。
【0015】
ステップS103では、領域分割回路4が、ステップS100で測定した顔面皮膚温度の分布画像を、所定の大きさの領域に分割する処理を行う。通常、顔面皮膚温度の温度分布画像では、2次元に配置された画素を単位として縦N画素、横M画素で構成され、その画素ごとの温度によってグレースケールによる濃淡や色で表現されている。
そこで、この例では、その2次元の温度分布画像を縦横ともにp等分するものとする(図4参照)。この処理によって、温度分布画像は合計p2 個の領域に分割され、この各分割領域は、縦がN/p画素、横がM/p画素で構成されるものとなる。つまり、各分割領域は縦をY、横をXとした場合、座標(Xi,Yj)で表すことができる。ただし、i=0,1,・・・p,j=0,1,・・・pである。
【0016】
ステップS104では、フラクタル次元算出回路5が、ステップS103において求めたp2 個の分割領域のそれぞれに対してフラクタル解析を実施し、フラクタル次元を算出する。2次元画像のフラクタル解析には、公知の手法を用いることができる。各分割領域に対してフラクタル解析を実施した場合には、各分割領域におけるフラクタル次元は2〜3の値を示す。すなわち、分割領域の座標(Xi,Yj)におけるフラクタル次元Fijは2〜3の値を示す。
ステップS105では、処理切替え回路7が、ステップS101で検出した交通量とステップS102で検出した道路線形の複雑度を所定時間Tの間保持し、その所定時間Tにおいて、その交通量および複雑度のうち少なくとも1つの変化が、所定の範囲内の変化(変動)であるか否かを判定する。
【0017】
この判定処理は、交通量および複雑度を、例えば5段階でそれぞれ事前に定義しておき、所定時間Tの間、その段階が変化しなければ「所定の範囲内」と判定し、その段階が変化すれば「所定の範囲外」と判定する。この判定の結果、「所定の範囲内」であればステップS106に進み、「所定の範囲外」であればステップS110に進む。
ステップS106では、判定領域決定回路8が、ステップS101で検出した交通量とステップS102で検出した道路線形の複雑度のうちの少なくとも1つが、少ないかまたは低いかを判定する。
【0018】
この個々の処理は、交通量および道路線形の複雑度を、例えば5段階でそれぞれ事前に定義しておき、交通量が多ければ、または複雑度が高ければそれぞれ5を付与し、交通量が少なければ、または複雑度が低ければそれぞれ1を付与する。そして、その付与された値が1〜3の場合には交通量または複雑度が低いと決定(判定)し、その付与された値が4または5の場合には交通量または複雑度が高いと決定する。この判定の結果、交通量または複雑度が低い場合にはステップS107に進み、それが高い場合にはステップS108に進む。
【0019】
ステップS107では、判定領域決定回路8が、ステップS104で算出された各分割領域におけるフラクタル次元のうち、ステップS106で交通量または複雑度が低いと判定された際でもフラクタル次元が低い値を示している分割領域を検索し、該当する分割領域が存在する場合には、その検索した分割領域の位置を、交通量または複雑度が低いと判定された場合でもフラクタル次元が変化する敏感分割領域として、分割領域特性記憶装置9に記憶する。
【0020】
ステップS108では、判定領域決定回路8が、ステップS104で算出された各分割領域におけるフラクタル次元のうち、ステップS106で交通量または複雑度が高いと判定された際に、フラクタル次元が低い値を示す分割領域を検索し、該当する分割領域が存在する場合には、その検索した分割領域の位置を、交通量または複雑度が高いと判定された場合でもフラクタル次元が変化する鈍感分割領域として、分割領域特性記憶装置9に記憶する。
【0021】
ステップS109では、判定領域決定回路8が、分割領域特性記憶装置9に記憶された敏感分割領域および鈍感分割領域の各位置を、判定領域として決定して保持する。すなわち、このように決定された判定領域は、ステップS101で検出された交通量またはステップS102で検出された道路線形の複雑度に応じてフラクタル次元が変化した領域であり、このステップの処理は、交通量や道路線形の複雑度の変化に対してフラクタル次元が変化する分割領域を抽出したことを意味する。
【0022】
ステップS110では、運転負荷判定回路6が、照度検出装置12や風検出装置13からの検出情報を用いて、運転者の運転負荷の判定に影響を及ぼす外乱の要因が車両の内外に存在するか否かを判定する。
具体的には、照度検出装置12は、少なくともステップS109で決定される判定領域における照度を検出可能なものを使用し、その判定領域に車外から直接光が照射されている場合に相当する照度が検出された場合には、運転負荷判定回路6はその判定処理を中止する。
【0023】
また、風検出装置13は、少なくともステップS109で決定される判定領域に対して、車外からの風や空調装置からの風が、直接的な方向であり、かつ、判定領域における顔面の温度に影響を及ぼす風量で当たっている状態を検出し、判定領域に前記に相当する風が当たっている場合には、運転負荷判定回路6はその判定処理を中止する。
一方、運転負荷判定回路6が、運転者の運転負荷の判定処理を中止しない場合には、ステップS111に進む。ステップS111では、負荷判定方法変更回路10が、ステップS101で検出した交通量とステップS102で検出した道路線形の複雑度のうちの少なくとも1つが、少ないかまたは低いかを判定する。
【0024】
この個々の処理は、交通量および複雑度を、例えば5段階でそれぞれ事前に定義しておき、交通量が多ければ、または複雑度が高ければそれぞれ5を付与し、交通量が少なければ、または複雑度が低ければそれぞれ1を付与する。そして、その付与された値1〜3の場合には交通量または複雑度が低いと決定(判定)し、その付与された値が4または5の場合には交通量または複雑度が高いと決定する。この判定の結果、交通量または複雑度が低い場合にはステップS112に進み、それが高い場合にはステップS113に進む。
【0025】
ステップS112では、重み付与回路11が、ステップS109において決定された判定領域内の重み付けを行う。通常、交通量または道路線形の複雑度が低い場合には、その影響が顔面皮膚温度画像をフラクタル解析した結果として求められるフラクタル次元の変化は微小である。このため、ステップS109において決定された判定領域に含まれる分割領域の多くが運転者の運転負荷の変化をフラクタル次元の変化として反映できなくなっている。
そこで、この微小な変化を確実に捉えるために、この例では、ステップS107で抽出して分割領域特性記憶装置9に記憶されている敏感分割領域におけるフラクタル次数の変化が運転者の運転負荷が変化したことの判定に確実に影響するように、敏感分割領域に強い重み値を与えるようにする(図5参照)。
【0026】
ステップS113では、重み付与回路11が、ステップS109において決定された判定領域内の重み付けを行う。通常、交通量または道路線形の複雑度が高い場合には、その影響が顔面皮膚温度画像をフラクタル解析した結果として求められるフラクタル次数の変化は大きい。このため、ステップS109において決定された判定領域に含まれる分割領域の多くが飽和状態になっており、運転者の運転負荷の変化をフラクタル次元の変化として反映できなくなっている。
そこで、交通量または道路線形の複雑度が高い場合における運転者の運転負荷の変化を確実に捉えるために、この例では、ステップS108で抽出して分割領域特性記憶装置9に記憶されている鈍感分割領域におけるフラクタル次元の変化が運転者の運転負荷が変化したことの判定に確実に影響するように、鈍感分割領域に強い重み値を与えるようにする(図6参照)。
【0027】
ステップS114では、運転負荷判定回路6が、運転者の運転負荷の判定を行う。この判定は、ステップS109で決定された判定領域の内部に含まれる分割領域におけるフラクタル次元を、運転者の運転負荷量の判定対象とする。
例えば、運転負荷の総量を判定する場合には、判定領域内に含まれる各分割領域のフラクタル次元の総和を求め、この求めた総和が小さいほど運転負荷が大きいと判定するようにすると良い。このようにすると、運転負荷以外の要因に対してフラクタル次元が変化するような領域の影響ができるだけ排除された運転者の状態の評価ができる。
【0028】
また、例えば、運転負荷の変化を検出する場合には、ステップS112およびステップS113で付与した各分割領域に対する重み値を各フラクタル次元に対して掛け合わせ、さらに各分割領域における重みが掛けられたフラクタル次元の総和を求め、この求めた総和の値の変化が顕著であるほど、運転者の運転負荷の変化が大きいと判定するようにしても良い。
【0029】
以上説明したように、この第1実施形態によれば、領域分割回路4を設けることにより、顔面皮膚温度分布測定装置1が測定した顔面皮膚温度分布を分割し、さらに、フラクタル次元算出回路5を設けることによって、領域分割回路4によって分割された領域に対してフラクタル次元の算出を行うようにしたので、個々の分割された領域の特徴、すなわち、強い運転負荷や弱い運転負荷を評価可能な領域、または外部環境からの要因の影響を検出可能な領域などに基づいて、運転者の状態評価が可能となった。
【0030】
また、この第1実施形態では、交通量検査装置2や道路線形複雑度検出装置3を備えるようにしたので、これらにより運転者の負荷に影響を与える要因を検出できる。
また、この第1実施形態では、処理切り替え回路7、判定領域決定回路8などを設けるようにしたので、その検出される運転負荷の要因と、各分割領域におけるフラクタル次元の変化との関係を考慮した処理ができ、これによって運転者が変わったり、運転者自身の特性が変化したりしても、引き続き、運転者の状態の評価は可能である。
【0031】
また、この第1実施形態では、判定領域決定回路8や分割領域特性記憶装置9を備え、判定領域決定回路8が敏感分割領域と鈍感分割領域とを決定し、その決定した両分割領域を分割領域特性記憶装置9に記憶するようにしたので、運転負荷の大小にかかわらずより正確な運転者の状態を評価できる。
また、この第1実施形態では、判定領域内の重み付けを行う重み値付与回路11を設けるようにしたので、運転負荷判定回路6は運転負荷の判定の際に、その重み付けを加味した判定ができるので、運転負荷の大小に関わらず、より正確な運転者の状態の評価ができる。
【0032】
さらに、この第1実施形態では、照度検出装置12や風検出装置13を設けるようにしたので、これらによって外部環境からの要因を検出でき、検出される要因が判定領域決定回路8によって、運転者の状態を判定する領域に影響を与えている可能性がある場合には、運転者の状態評価の処理を中止するようにしたので、より正確な運転者の状態の評価が可能である。
【0033】
(第2実施形態)
図7は、本発明の第2実施形態の構成を示すブロック図である。
この第2実施形態に係る運転者状態評価装置は、図7に示すように、顔面皮膚温度分布測定装置1と、交通量検出装置2と、道路線形複雑度検出装置3と、領域分割回路21と、フラクタル次元算出回路5と、運転負荷判定回路22と、スイッチ23と、処理切替え回路24と、判定領域決定回路25と、非判定領域決定回路26と、を備えている。
ここで、顔面皮膚温度分布測定装置1、交通量検出装置2、道路線形複雑度検出装置3、および領域分割回路21は、顔面皮膚温度分布測定手段、交通量検出手段、道路線形複雑度検出手段、および領域分割手段にそれぞれ対応する。
【0034】
また、フラクタル次元算出回路5、運転負荷判定回路22、スイッチ23、処理切替え回路24、判定領域決定回路25、および非判定領域決定回路26は、フラクタル次元算出手段、運転負荷判定手段、指示手段、処理切替え手段、判定領域決定手段、および非判定領域決定手段にそれぞれ対応する。
なお、図7に示す第2実施形態では、図1に示す第1実施形態と同一の構成要素を含むので、同一の構成要素について同一符号を付してその説明はできるだけ省略する。
【0035】
次に、図7に示す第2実施形態の構成要素の機能の概要について説明する。
領域分割回路21は、顔面皮膚温度分布測定装置1が測定した顔面皮膚温度の画像を、交通量検出装置2の検出した交通量および道路線形複雑度検出装置3の検出した道路線形の複雑度に基づき、後述のように所定面積の領域に分割するものである。
運転負荷判定回路22は、フラクタル次元算出回路5で算出されたフラクタル次元の次元数に基づいて運転者の運転負荷を定量的または定性的に判定するものであり、後述のように判定される。
スイッチ23は、処理切り替え回路24に対して運転者が処理の切り替えを入力指示するものである。処理切替え回路24は、スイッチ23から切り替え指示に従って、運転負荷を判定する一連の処理と、判定処理領域を決定する一連の処理とを切り替え、それらの処理の切り替えを各部に指示するようになっている。
【0036】
判定領域決定回路25は、処理切り替え回路24からの指示に従い、交通量検出装置2が検出した交通量および道路線形複雑度検出装置3が検出した道路線形の複雑度のうちの少なくとも1つに所定の変化がある場合に、所定の分割領域を判定領域と決定するものである。
非判定領域決定回路26は、処理切り替え回路24からの指示に従い、交通量検出装置2が検出した交通量および道路線形複雑度検出装置3の検出した道路線形の複雑度のうちの少なくとも1つに所定の変化がある場合に、所定の分割領域を非判定領域と決定するものである。
【0037】
次に、第2実施形態の各部の詳細な動作について、図8に示すフローチャートを参照して説明する。
ステップS200では、顔面皮膚温度分布測定装置1が、運転者の顔の正面の体温分布を画像として測定する。ステップS201では、交通量検出装置2が、走行中の車両の周囲の車両の交通量を検出する。ステップS202では、道路線形複雑度検出装置3が、走行中の車両の前方の道路線形の複雑度を検出する。
ステップS203では、領域分割回路21が、ステップS200で測定した顔面皮膚温度の分布画像を、次のステップS204で所定の領域に分割する際の面積を決定する。この処理は、ステップS201で検出した交通量と、ステップS202で検出した道路線形の複雑度に基づいて行う。
【0038】
すなわち、領域分割回路21は、その検出した交通量が少ないほど、また、その検出した道路線形の複雑度が低いほど分割する際の面積は小さいものとなるようにする。具体的には、交通量および道路線形の複雑度を、例えば5段階に事前に定義しておき、交通量が多ければ、または複雑度が高ければ5をそれぞれ付与し、交通量が少なく、または複雑度が低ければ1を付与する。そして、交通量または複雑度の段階が5であれば、濃度分布画像を縦横ともq等分に分割し、4であればq×2等分し、3であればq×4等分し、2であればq×8等分し、1であればq×16等分することを決定する(図9参照)。
【0039】
ステップS204では、領域分割回路21が、ステップS200で測定して得た顔面皮膚温度の分布画像を、ステップS203で決定した面積に分割する処理を行う。通常、顔面皮膚温度の温度分布画像では、2次元に配置された画素を単位として縦N画素、横M画素で構成され、その画素ごとの温度によってグレースケールによる濃淡や色で表現されている。そこで、この例では、その2次元の温度分布画像を縦横ともにステップS203で決定した大きさに等分するものとする。
【0040】
ステップS205では、フラクタル次元算出回路5が、ステップS204において求め分割領域のそれぞれに対してフラクタル解析を実施し、フラクタル次元をそれぞれ算出する。
ステップS206では、処理切り替え回路24が、スイッチ23から切り替えの入力(指示)が有るか否かを判定する。運転者は、スイッチ23を用いて、運転負荷を判定する処理と、運転負荷を判定(検出)するための顔面皮膚温度の温度分布画像における判定処理領域を決定する処理とのいずれかを指示して選択することができる。
【0041】
処理切替え回路24は、スイッチ23からの入力指示に従って、運転負荷を判定する一連の処理と、判定処理領域を決定する一連の処理とを切り替える。すなわち、スイッチ23からの入力がある場合には判定処理領域を決定するためのステップS207の処理に移行し、その入力がない場合には運転負荷を判定するためのステップS210の処理に移行する。
【0042】
ステップS207では、判定領域決定回路25が、ステップS201で検出する交通量に変化があるか否か、またはステップS202で検出する道路線形の複雑度に変化があるか否かを判定する。この判定は、例えば、交通量および道路線形の複雑度をその度合いに応じて5段階で事前に定義しておき、交通量が多ければ、または道路線形の複雑度が高ければ5を付与し、交通量が少なく、または道路線形の複雑度が低ければ1を付与する。そして、交通量または道路線形の複雑度が他の段階に変化したときに、「変化した」と判定する。この判定の結果、変化があった場合にはステップS208に進み、変化がなかった場合にはその処理を終了する。
【0043】
ステップS208では、判定領域決定回路25は、フラクタル次元に基づく運転者の運転負荷を判定するための対象とする分割領域を決定する。すなわち、判定領域決定回路25は、ステップS207で交通量、または道路線形の複雑度が他段階に変化したときに、領域分割回路21で分割されている個々の分割領域において、フラクタル次元算出回路5で算出したフラクタル次元が変化した領域を判定領域として決定し、この決定した判定領域を保持する。
【0044】
ステップS209では、非判定領域決定回路26が、フラクタル次元に基づく運転者の運転負荷を判定するための対象としない分割領域を決定する。すなわち、非判定領域決定回路26は、ステップS207で交通量、または道路線形の複雑度が他段階に変化したにもかかわらず、領域分割回路21で分割されている個々の分割領域において、フラクタル次元算出回路5で算出したフラクタル次元が変化しなかった領域を非判定領域として決定し、この決定した非判定領域を保持する。
【0045】
ステップS210では、運転負荷判定回路22が、ステップS209で非判定領域決定回路26が非判定領域と判定した分割領域において、フラクタル次元算出回路5が算出するフラクタル次元に変化があるか否かを判定する。
ここで、非判定領域でフラクタル次元が変化している場合には、運転者の運転負荷以外の要因、すなわち、外界からの日差しや空調装置など、顔面皮膚温度に影響を与える要因が運転者に影響を与えている可能性があるため、運転者の運転負荷を判定せずに処理を終了する。一方、非判定領域でフラクタル次元が変化していない場合には、ステップS211に進む。
【0046】
ステップS211では、運転負荷判定回路22が、フラクタル次元算出回路5で算出される分割領域の各フラクタル次元を用いて、運転者の運転負荷を判定する。このときには、運転負荷判定回路22は、ステップS208で抽出された判定領域の内部に含まれる分割領域におけるフラクタル次元を、運転負荷量の判定対象とする。例えば、運転負荷の総量を判定する場合には、判定領域内に含まれる各分割領域のフラクタル次元の総和を求め、この求めた総和が小さいほど運転負荷が高いと判定する。
【0047】
以上説明したように、この第2実施形態によれば、領域分割回路21において、交通量検出装置2や道路線形複雑度検出装置3が検出した運転者の運転負荷に影響を与える要因について、その影響が小さいと予想される場合には、分割する面積を小さくし、その影響が大きいと予想される場合には、分割領域の面積を大きくするようにした。このため、第1実施形態の効果に加えて、運転負荷の要因が運転者に与える影響をより正確に評価することが可能である。
【0048】
また、第2実施形態では、非判定領域決定回路26を設けるようにしたので、運転負荷以外の要因がフラクタル解析による運転者の状況評価に影響を与えている状態の検出が可能となり、運転者の状態が正確に評価できない状態を検出して評価を中止することが可能である。
さらに、第2実施形態では、スイッチ23と処理切替え回路24とを設けるようにしたので、運転者の意思によって判定領域を決定する処理と運転負荷を判定する処理とを切り替えできる。
【0049】
(第3実施形態)
図10は、本発明の第3実施形態の構成を示すブロック図である。
この第3実施形態に係る運転者状態評価装置は、図10に示すように、顔面皮膚温度分布測定装置1と、交通環境量検出装置31と、領域分割回路32と、鼻部抽出回路33と、フラクタル次元算出回路5と、運転負荷判定回路34と、処理切替え回路35と、判定領域決定回路36と、を備えている。
ここで、顔面皮膚温度分布測定装置1、交通環境量検出装置31、領域分割回路32、および鼻部抽出回路33は、顔面皮膚温度分布測定手段、交通環境量検出手段、領域分割手段、および鼻部抽出手段にそれぞれ対応する。
【0050】
また、フラクタル次元算出回路5、運転負荷判定回路34、処理切替え回路35、および判定領域決定回路36は、フラクタル次元算出手段、運転負荷判定手段、処理切替え手段、および判定領域決定回路手段にそれぞれ対応する。
なお、この第3実施形態では、図1に示す第1実施形態と同一の構成要素を含むので、同一の構成要素について同一符号を付してその説明はできるだけ省略する。
【0051】
次に、図10に示す第3実施形態における構成要素の機能の概要について説明する。
交通環境検出装置31は、車両の走行中に交通環境の複雑度を検出するものである。領域分割回路32は、交通環境検出装置31が検出する交通環境の複雑度を参照して、顔面皮膚温度分布測定装置1が測定した顔面皮膚温度の画像を、所定面積の領域に分割するものである。
【0052】
鼻部抽出回路33は、顔面皮膚温度分布測定装置1が測定した皮膚温度の分布画像の分割領域の中から、運転者の鼻部を含む領域を抽出するものである。運転負荷判定回路34は、フラクタル次元算出回路5で算出されたフラクタル次元の次元数に基づいて運転者の運転負荷を定量的または定性的に判定するものであり、後述のように判定される。
処理切替え回路35は、交通環境検出装置31が検出する交通環境の複雑度の変化に応じて、判定領域を決定する一連の処理と、運転負荷を判定する一連の処理とに切り替えるものである。判定領域決定回路36は、処理切り替え回路35から判定領域を決定する一連の処理の指示があった場合に、運転負荷判定回路34が運転負荷を判定する際の判定領域として鼻部に相当する領域を特定するものである。
【0053】
次に、第3実施形態の各部の詳細な動作について、図11に示すフローチャートを参照して説明する。
ステップS300では、顔面皮膚温度分布測定装置1が、運転者の顔の正面の体温分布を画像として測定する。
ステップS301では、交通環境検出装置31が、交通環境の複雑度を検出する。この例における交通環境検出装置31は、例えば、公知のカオス解析を用いた交通環境の複雑度検出装置からなる。
【0054】
この複雑度検出装置は、車両の前方を撮影するカメラと、このカメラによって取得された前方画像に対してカオス解析を行ってリアプノフ指数を算出するカオス解析回路と、を備えている。リアプノフ指数は、画像に含まれている情報が複雑であるほど大きな値を示す傾向がある。従って、車両前方の交通環境の複雑度は、リアプノフ指数で定量的に数値化できる。
【0055】
ステップS302では、領域分割回路32が、ステップS300で測定した顔面皮膚温度の分布画像を、所定の大きさの領域に分割する処理を行う。
ステップS303では、鼻部抽出回路33が、その分布画像の分割領域の中から運転者の鼻部を含む領域を抽出する。一般に、顔面皮膚温度の分布画像の中で、特に鼻部のおいて運転負荷の影響が反映しやすいといえる。そこで、この例では、顔面皮膚温度分布領域装置1と同じ位置にカメラを配置しておき、そのカメラで運転者の顔面を撮影し、所定の画像認識処理を行うことによって、鼻部を特定する。その特定された鼻部の位置は、画面上のおける座標として用いるために鼻部抽出回路33に保持される。
【0056】
ステップS304では、フラクタル次元算出回路5が、ステップS302において求めた分割領域のそれぞれに対してフラクタル解析を実施し、各分割領域ごとにフラクタル次元を算出する。
ステップS305では、処理切替え回路35が、ステップS301で交通環境検出装置31が検出する交通環境の複雑度の変化が所定の範囲内にあるか否かを判定し、この判定結果に応じて、判定領域を決定する一連の処理と、運転負荷を判定する一連の処理とに切り替える。
【0057】
この判定は、交通環境の複雑度を所定時間Tにわたって保持し、その所定時間Tにおいて、交通環境の複雑度の変化が所定の範囲内にあるか否かを判定する。例えば、その複雑度を5段階で事前に定義しておき、所定時間Tの間に、その段階が変化しなければ「範囲内」と判定し、その段階が変化すれば「範囲外」と判定するようにした。
この判定の結果、「範囲内」であった場合には、判定領域決定回路36が判定領域を決定する一連の処理を行うステップS306に進み、「範囲外」であった場合には、運転負荷判定回路34が運転負荷を判定する処理を行うステップS308に進む。
【0058】
ステップS306では、判定領域決定回路36が、交通環境検出装置31が検出する交通環境の複雑度が高いかまたは低いかを判定する。この判定は、例えば、交通環境の複雑度をその度合いに応じて5段階で事前に定義しておき、交通環境の複雑度が高ければ5を付与し、交通環境の複雑度が低ければ1を付与する。そして、その段階が1の場合には交通環境の複雑度が低いと判定し、その段階が2〜5の場合には交通環境の複雑度が高いを決定する。この判定の結果、交通環境の複雑度が高いと判定された場合にはステップS307に進み、交通環境の複雑度が低いと判定された場合には処理を終了する。
【0059】
ステップS307では、さらに判定領域決定回路36が、ステップS306で判定した交通環境の複雑度が高かった場合に、フラクタル次元の値が小さくなっている分割領域のうち、特にステップS303で抽出された運転者の鼻部に相当する分割領域を、鼻部判定領域として特定する。
ステップS308では、運転負荷判定回路34が、フラクタル次元算出回路5で算出される分割領域の各フラクタル次元に基づき、運転者の運転負荷を判定する。このときには、運転負荷判定回路34は、ステップS307で抽出された鼻部判定領域に含まれる分割領域におけるフラクタル次元を、運転負荷量の判定対象とする。例えば、運転負荷の総量を判定する場合には、その鼻部判定領域内に含まれる各分割領域のフラクタル次元の総和を求め、この求めた総和が小さいほど運転負荷が高いと判定する。
以上説明したように、この第3実施形態によれば、鼻部抽出回路33を設け、運転者の顔面温度分布に対する運転負荷の影響を最も受け易いとされる鼻部を特定するようにしたので、第1および第2実施形態の効果に加えて、さらに正確な運転者の状態評価が可能となる。
【0060】
(その他の実施形態)
なお、上記の第1〜第3の実施形態では、図1、図7、および図10に示すように、その構成要素を装置や回路で表現して説明した。しかし、本発明の他の実施形態として、それらの回路などをコンピュータを用いて実現し、図2、図8、および図11に示すような演算処理を行うようにしても良い。
この場合には、例えば、図1において、領域分割回路、フラクタル次元算出回路、運転負荷判定回路、処理切り替え回路、判定領域決定回路、負荷判定方法変更回路、重み値付与回路などは、コンピュータ(CPU)やメモリなどに置き換えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第1実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態の動作を説明するフローチャートである。
【図3】顔面皮膚温度分布測定装置の配置を説明する説明図である。
【図4】第1実施形態における分割領域の決定方法を説明する説明図である。
【図5】第1実施形態における重み値付与の決定方法を説明する説明図である。
【図6】第1実施形態における重み値付与の決定方法を説明する説明図である。
【図7】本発明の第2実施形態の構成を示すブロック図である。
【図8】第2実施形態の動作を説明するフローチャートである。
【図9】第2実施形態における分割領域の決定方法を説明する説明図である。
【図10】本発明の第3実施形態の構成を示すブロック図である。
【図11】第3実施形態の動作を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0062】
1 顔面皮膚温度分布測定装置
2 交通量検出装置
3 道路線形複雑度検出装置
4、21、32 領域分割回路
5 フラクタル次元算出回路
6、22、34 運転負荷判定回路
7、24、35 処理切替え回路
8、25、36 判定領域決定回路
9 分割領域特性記憶装置
10 負荷判定方法変更回路
11 重み値付与回路
12 照度検出装置
13 風検出装置
23 スイッチ
26 非判定領域決定回路
31 交通環境検出装置
33 鼻部抽出回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を運転する運転者の顔面における皮膚温度の2次元上の分布を温度分布画像として測定する顔面皮膚温度分布測定手段と、
前記車両が走行する際にその車両の周囲の交通量を検出する交通量検出手段と、
前記車両が走行する際にその車両の前方の道路線形の複雑度を検出する道路線形複雑度検出手段と、
前記顔面温度分布測定手段が測定した温度分布画像をフラクタル解析することによってフラクタル次元を算出するフラクタル次元算出手段と、
前記フラクタル次元算出手段によって算出されたフラクタル次元の次元数に基づいて運転者の運転負荷を判定する運転負荷判定手段とを備え、
前記運転負荷判定手段は、前記交通量検出手段の検出した交通量および前記道路線形複雑度検出手段で検出した道路線形の複雑度のうちの少なくとも1つが変化した場合に、前記フラクタル次元算出手段で算出されたフラクタル次元の次元数の変化した量によって、前記運転負荷の判定の方法が変更されるようになっていることを特徴とする運転者状態評価装置。
【請求項2】
前記顔面皮膚温度分布測定手段が測定した温度分布画像を所定面積の領域に分割する領域分割手段をさらに備え、
前記フラクタル次元算出手段は、前記領域分割手段によって分割された領域ごとにフラクタル次元を算出し、
前記運転負荷判定手段は、前記領域分割手段によって分割された各領域におけるフラクタル次元の相互関係に基づいて運転者の運転負荷の程度を判定することを特徴とする請求項1に記載の運転者状態評価装置。
【請求項3】
前記交通量検出手段の検出した交通量および前記道路線形複雑度検出手段で検出した道路線形の複雑度のうちの少なくとも1つが変化した場合において、前記領域分割手段によって分割された各領域における前記フラクタル次元算出手段が算出したフラクタル次元が変化した量によって、前記運転負荷判定手段における運転負荷の判定を変更する負荷判定変更手段を、さらに備えたことを特徴とする請求項2に記載の運転者状態評価装置。
【請求項4】
所定の時間間隔において、前記交通量検出手段が検出した交通量および前記道路線形複雑度検出手段が検出した道路線形の複雑度が変化しない場合に、前記領域分割手段によって分割された領域について前記フラクタル次元算出手段が算出したフラクタル次元が変化する領域を、前記運転負荷判定手段で運転負荷の判定の対象として決定する判定領域決定手段を、さらに備えることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の運転者状態評価装置。
【請求項5】
分割領域特性記憶手段をさらに備え、
前記判定領域決定手段は、前記判定領域の決定を行う際に、
前記交通量検出手段が検出した交通量および前記道路線形複雑度検出手段が検出した道路線形の複雑度において、そのうちの少なくとも1の変化が所定値よりも小さい場合に、前記フラクタル次元算出手段が算出したフラクタル次元の値が変化する分割領域を敏感分割領域として決定し、
前記検出した交通量および前記検出した道路線形の複雑度のうちの少なくとも1の変化が所定値よりも大きな場合に、前記フラクタル次元算出手段が算出したフラクタル次元の値が変化する分割領域を鈍感分割領域として決定し、
前記分割領域特性記憶手段には、前記決定した敏感分割領域と前記鈍感分割領域とを区別して記憶するようにしたことを特徴とする請求項4に記載の運転者状態評価装置。
【請求項6】
前記交通量検出手段が検出した交通量および前記道路線形複雑度検出手段が検出した道路線形の複雑度のうちの少なくとも1つが変化した場合に、前記領域分割手段によって分割された領域について前記フラクタル次元算出手段が算出したフラクタル次元が変化する領域を、前記運転負荷判定手段で運転負荷の判定の対象として決定する判定領域決定手段と、
前記交通量検出手段が検出した交通量および前記道路線形複雑度検出手段が検出した道路線形の複雑度のうちの少なくとも1つが変化した場合に、前記領域分割手段によって分割された領域について前記フラクタル次元算出手段が算出したフラクタル次元が変化しない領域を、前記運転負荷判定手段で運転負荷の判定の対象外として決定する非判定領域決定手段とを、
さらに備えることを特徴とする請求項2に記載の運転者状態評価装置。
【請求項7】
前記運転負荷判定手段は、運転負荷の判定の際には、前記判定領域決定手段で決定された判定領域に含まれる前記分割領域手段で分割された各分割領域を対象とし、この対象となる各分割領域ごとに前記フラクタル次元算出手段で算出されたフラクタル次元の総和を求め、この求めた総和が小さいほど、運転者の運転負荷が大きいと判定することを特徴とする請求項4乃至請求項6のうちの何れかに記載の運転者状態評価装置。
【請求項8】
前記判定領域決定手段が判定領域を決定する処理と、
前記判定領域決定手段で決定された判定領域に対し、前記フラクタル次元算出手段がフラクタル次元を算出することで前記運転負荷判定手段が運転負荷を判定する処理とを、 所定の条件を満たすときに前記両処理を選択的に切り替える処理切替え手段を、さらに備えていることを特徴とする請求項4乃至請求項7のうちの何れかに記載の運転者状態評価装置。
【請求項9】
前記処理切り替え手段は、
予め設定した時間内に、前記交通量検出手段が検出した交通量および前記道路線形複雑度検出手段が検出した道路線形の複雑度のうちの少なくとも1つが所定範囲内にある場合には、前記判定領域決定手段が判定領域を決定する処理を行うようにさせ、
その検出した交通量およびその検出した複雑度の変化のうちの少なくとも1つが所定範囲内にない場合には、前記運転負荷判定手段で運転負荷を判定する処理を行うようにさせるようになっていることを特徴とする請求項8に記載の運転者状態評価装置。
【請求項10】
前記処理切替え手段の切り替え動作を運転者が指示する指示手段をさらに備え、
前記切り替え手段は、前記指示手段からの指示に従って切り替え動作を行うようになっていることを特徴とする請求項8に記載の運転者状態評価装置。
【請求項11】
前記領域分割手段が分割した各分割領域に対して、その重要度に応じて重み値を付与する重み付与手段をさらに備え、
前記重み付与手段は、
前記交通量検出手段が検出する交通量および前記道路線形複雑度検出手段が検出する道路線形の複雑度のうちの少なくとも1つが少なくまたは小さい場合においては、前記分割領域特性記憶手段において敏感分割領域として記憶された分割領域に対して大きな重みを付与し、
前記交通量検出手段が検出する交通量および前記道路線形複雑度検出手段が検出する道路線形の複雑度のうちの少なくとも1つが多くまたは大きな場合においては、前記分割領域特性記憶手段において鈍感分割領域として記憶された分割領域に対して大きな重みを付与し、
さらに、前記運転負荷判定手段における運転負荷の判定は、前記重み付与手段によって前記各分割領域に付与された重み値を加味して判定を行うことを特徴とする請求項6乃至請求項10のうちの何れかに記載の運転者状態評価装置。
【請求項12】
前記領域分割手段が分割する分割領域の面積は、
前記交通量検出手段が検出する交通量および前記道路線形複雑度検出手段が検出する道路線形の複雑度のうちの少なくとも1つが少なくまたは小さい場合には大きくなるように分割し、
前記検出する交通量および前記検出する道路線形の複雑度のうちの少なくとも1つが多くまたは大きな場合には小さくなるように分割したことを特徴とする請求項2乃至請求項11のうちの何れかに記載の運転者状態評価装置。
【請求項13】
前記領域分割手段が分割する分割領域のうち、運転者の鼻部が含まれる領域を抽出する鼻部抽出手段を、さらに備え、
前記判定領域決定手段が決定する判定領域は、前記鼻部抽出手段が抽出した運転者の鼻部であり、
かつ、前記運転負荷判定手段による運転者の運転負荷の判定は、前記判定領域のフラクタル次元が低下するほど、運転者の運転負荷が大きいと判定することを特徴とする請求項2乃至請求項12のうちの何れかに記載の運転者状態評価装置。
【請求項14】
前記運転負荷判定手段は、前記非判定領域決定手段が非判定として決定した分割領域において、前記フラクタル次元算出手段が算出したフラクタル次元の値に所定値以上の変化が生じた場合には、運転負荷を判定する処理を行わないことを特徴とする請求項5乃至請求項13のうちの何れかに記載の運転者状態評価装置。
【請求項15】
運転者の顔面に直接的に照射される光の照度を検出する照度検出手段をさらに備え、
前記照度検出手段の検出した照度が、前記判定領域決定手段で決定された判定領域の判定に誤差を与える閾値以上の場合には、少なくとも前記運転負荷判定手段は運転負荷を判定する処理を行わないようになっていることを特徴とする請求項4乃至請求項14のうちの何れかに記載の運転者状態評価装置。
【請求項16】
車両の室内の風向きおよび風量を検出する風検出手段を、さらに備え、
前記風検出手段の検出した風向きおよび風量が、前記判定領域決定手段で決定された判定領域の判定に誤差を与える場合には、少なくとも前記運転負荷判定手段は運転負荷を判定する処理を行わないようになっていることを特徴とする請求項4乃至請求項15のうちの何れかに記載の運転者状態評価装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−25871(P2007−25871A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−204254(P2005−204254)
【出願日】平成17年7月13日(2005.7.13)
【出願人】(392021311)株式会社CCI (6)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】