説明

過熱蒸気を利用した熱処理木質材料製造装置及び熱処理木質材料製造方法

【課題】品質が一定の熱処理木質材料を得ることができる熱処理木質材料製造装置及び熱処理木質材料製造方法を提供する。
【解決手段】木質材料に対して熱処理を行う熱処理木質材料製造装置であって、所定量の木質材料を供給する定量供給装置11と、第一収容口31aと第一排出口31bとを有し、定量供給装置11から供給される木質材料を第一収容口31aより収容し、第一スクリュー32によって攪拌しながら第一排出口31bへと搬送する第一処理室31と、蒸気を作る蒸気発生装置41と、蒸気発生装置41から供給される蒸気を加熱して、第一処理室31内に供給する過熱蒸気とする蒸気加熱装置42と、第一処理室31を加熱する第一補助加熱装置44と、蒸気加熱装置42を制御して過熱蒸気を所定温度に設定するとともに、第一補助加熱装置44を制御して第一処理室31を所定温度に設定する制御装置21と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質材料を過熱蒸気で熱処理することにより、木質材料の耐久性、耐蟻性、寸法安定性を向上させる熱処理木質材料製造に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
従来、腐朽耐久性、防蟻性や寸法安定性の効果を木材に付加する為の熱処理装置は公知となっている。特許文献1に示すバッチ式の過熱蒸気処理装置では、板状の木材を加熱室内へと収容して、加熱室内へ蒸気を導入するとともに、導入された蒸気の一部を加熱して過熱蒸気として過熱室内を還流させ、加熱室内の蒸気を過熱状態に一定時間保持するものである。そうすることで、木材中の水分を蒸発させ、木材を乾燥させる。
【0003】
しかしながら、上記のようなバッチ式の過熱蒸気処理装置を用いてチップ状の木質材料を乾燥する場合、かご等に木質材料を詰め、それを処理室(加熱室)内に載置し、過熱蒸気処理を行うと過熱蒸気により木質材料に付与する熱のムラが生じるため、木質材料の加熱温度にばらつきが発生してしまう。すなわち、かごの中心部付近の木質材料が十分に加熱されなかったり、かごの表面に近い木質材料が過剰な加熱により自己発熱したりし、均一な加熱ができず、安定した性能が木質材料に付与されなかったり、処理時間が非常に長くかかったりしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−263409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明の課題は、品質が一定の熱処理木質材料を得ることができる熱処理木質材料製造装置及び熱処理木質材料製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、木質材料に対して熱処理を行う熱処理木質材料製造装置であって、所定量の木質材料を供給する定量供給装置と、第一収容口と第一排出口とを有し、前記定量供給装置から供給される前記木質材料を前記第一収容口より収容し、第一スクリューによって攪拌しながら前記第一排出口へと搬送する第一処理室と、蒸気を作る蒸気発生装置と、該蒸気発生装置から供給される蒸気を加熱して、前記第一処理室内に供給する過熱蒸気とする蒸気加熱装置と、前記第一処理室を加熱する第一補助加熱装置と、前記蒸気加熱装置を制御して前記過熱蒸気を所定温度に設定するとともに、前記補助加熱装置を制御して前記第一処理室を所定温度に設定する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記第一処理室内に前記過熱蒸気を供給することによって前記第一処理室内を低酸素雰囲気とし、前記第一スクリューを所定の回転速度で回転させることで、前記第一処理室内の前記木質材料を攪拌しながら前記第一収容口から前記第一排出口へと搬送するとともに、前記補助加熱装置により前記第一処理室を所定温度に加熱しながら前記所定温度の過熱蒸気にて前記木質材料に熱処理を行うものである。
【0008】
請求項2においては、第二収容口と第二排出口を有し、前記第一処理室の前記第一排出口から排出される前記木質材料を前記第二収容口より収容し、第二スクリューによって攪拌しながら前記第二排出口へと搬送する第二処理室と、前記第二処理室を加熱する第二補助加熱装置と、をさらに備え、前記制御装置は、前記第一処理室内と前記第二処理室内とに前記過熱蒸気を供給することによって前記第一処理室内と前記第二処理室内とを低酸素雰囲気とし、前記第二スクリューを所定の回転速度で回転させることで、前記第一排出口から前記第二処理室内に供給された前記木質材料を攪拌しながら第二収容口から前記第二排出口へと搬送するとともに、前記第二補助加熱装置により前記第二処理室を所定温度に加熱しながら前記所定温度の過熱蒸気にて前記木質材料に熱処理を行うものである。
【0009】
請求項3においては、前記木質材料は、予め繊維飽和点以下に乾燥した木質材料である。
【0010】
請求項4においては、前記木質材料は、乾燥処理が成されていない木質材料である。
【0011】
請求項5においては、前記熱処理は、低温炭化処理である。
【0012】
請求項6においては、前記請求項1に記載の熱処理木質材料製造装置を用いて、木質材料に対して熱処理を行う熱処理木質材料製造方法であって、前記定量供給装置により前記第一処理室に所定量の木質材料を供給する工程と、前記第一処理室内に前記過熱蒸気を供給することによって前記第一処理室内を低酸素雰囲気とする過熱蒸気供給工程と、前記第一処理室内において、前記第一スクリューを所定の回転速度で回転させることで、前記第一処理室内の前記木質材料を攪拌しながら前記第一収容口から前記第一排出口へと搬送するとともに、前記第一補助加熱装置により前記第一処理室を前記所定温度に加熱しながら前記所定温度の過熱蒸気にて前記木質材料に熱処理を行う第一熱処理工程と、を有する熱処理木質材料製造方法である。
【0013】
請求項7においては、前記請求項2に記載の熱処理木質材料製造装置を用いて、木質材料に対して熱処理を行う連続式の熱処理木質材料製造方法であって、前記定量供給装置により前記第一処理室に所定量の木質材料を供給する工程と、前記第一処理室内と前記第二処理室内とに前記過熱蒸気を供給することによって前記第一処理室内と前記第二処理室内とを低酸素雰囲気とする過熱蒸気供給工程と、前記第一処理室内において、前記第一スクリューを所定の回転速度で回転させることで、前記第一処理室内の前記木質材料を攪拌しながら前記第一収容口から前記第一排出口へと搬送するとともに、前記第一補助加熱装置により前記第一処理室を前記所定温度に加熱しながら前記所定温度の過熱蒸気にて前記木質材料に熱処理を行う第一熱処理工程と、該第一熱処理工程により熱処理された前記木質材料を前記第二処理室に供給し、当該第二処理室内において、前記第二スクリューを所定の回転速度で回転させることで、前記第二処理室内の前記木質材料を攪拌しながら前記第二収容口から前記第二排出口へと搬送するとともに、前記第二補助加熱装置により前記第二処理室を前記所定温度に加熱しながら前記所定温度の過熱蒸気にて前記木質材料に熱処理を行う第二熱処理工程と、を有する請求項7に記載の熱処理木質材料製造方法である。
【0014】
請求項8においては、前記木質材料は、予め繊維飽和点以下に乾燥した木質材料である。
【0015】
請求項9においては、前記木質材料は、乾燥処理が成されていない木質材料である。
【0016】
請求項10においては、前記第一熱処理工程は、低温炭化処理を行う工程である。
【0017】
請求項11においては、前記第一熱処理工程は、前記木質材料を繊維飽和点以下にする乾燥処理を有する工程である。
【0018】
請求項12においては、前記第二熱処理工程は、低温炭化処理を行う工程である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0020】
本発明によれば、処理室を加熱することで処理室内の温度ムラを防止しながら、処理室内のスクリューによって木質材料を攪拌しながら搬送して、処理室内に供給される過熱蒸気の熱を木質材料に対して均一に伝えることができるため、品質が一定の熱処理木質材料を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第一実施形態に係る熱処理木質材料製造装置の全体の構成を示す模式図。
【図2】本発明の第二実施形態に係る熱処理木質材料製造装置の全体の構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
まず、本発明の第一実施形態に係る連続式の熱処理木質材料製造装置1の全体構成について図1を用いて説明する。
【0023】
尚、第一実施形態、及び、後述する第二実施形態における連続式の熱処理木質材料製造装置1・100は、木質材料に対して所定の熱処理工程を行い、熱処理された木質材料を製造する装置である。
【0024】
ここで、本発明の連続式の熱処理木質材料製造装置1・100で熱処理される木質材料であるが、建築資材用に伐採された生木だけではなく、建築廃材や林地残材などの廃材、未利用資源を原料としたチップ材も含まれる。また、熱処理された木質材料は、屋上敷設資材や舗装材等の土木資材、木材プラスチック複合材の原料、および、燃料としての利用が可能である。
【0025】
第一実施形態において、チップ状の木質材料は、予め繊維飽和点以下(通常、含水率30%以下)に乾燥された状態で、定量供給装置11により第一処理室31内へ送られてくる。
【0026】
定量供給装置11は、定量タンク12と繰出装置13からなり、定量タンク12内には、繊維飽和点以下の木質材料が収容される。繰出装置13はロータリーバルブ14を図示しないモーターによって駆動して内容物である木質材料を排出できるように構成されている。モーターは制御装置21と接続されて所定のタイミングで駆動するようにインバータ制御されている。つまり、制御装置21によるインバータ制御によって目的に応じた量の木質材料が定量タンク12から第一処理室31へと送られてくる。
【0027】
前記定量供給装置11の吐出側は、第一処理室31の上流側の第一収容口31aに連結されており、定量供給装置11の下部に固設された繰出装置13によって、適宜のタイミングと投入量で木質材料を第一処理室31へ供給するようになっている。
【0028】
第一処理室31は、円筒状のケース体(本実施形体において内径200mm、長さ2000mm)であり、その内部に第一スクリュー32が設けられている。該第一スクリュー32は駆動軸33を有し、該駆動軸33は、第一処理室31の上流端部および下流端部に回動可能に支持される。駆動軸33の一端には、動力伝達手段34を介してモーター35が連結されている。モーター35は制御装置21と接続され、制御装置21によって所定のタイミングで駆動されるように制御されている。この第一スクリュー32の回動は、繰出装置13によって第一処理室31内に送られてきた木質材料を第一処理室31内の上流(第一収容口31a側)から下流(第一排出口31b側)へと攪拌しながら搬送して、後述する所定温度の過熱蒸気の熱を木質材料に対して均一に伝えることが可能となるように構成されている。このとき、モーター35がインバータ制御されていることで、第一スクリュー32の回転速度が制御されており、第一処理室31内での木質材料の滞留時間が制御可能になっている。
【0029】
第一処理室31の内部には、蒸気ボイラで構成された蒸気発生装置41によって作られた蒸気が送りこまれてくる。該蒸気は蒸気加熱ヒーターにより構成された蒸気加熱装置42によって加熱されて、所定温度の過熱蒸気となって第一処理室31内へと送られる。蒸気加熱装置42の出口付近には、温度センサー43が配置されており、前記蒸気加熱装置42とともに制御装置21と接続されている。制御装置21は、前記温度センサー43により検出される蒸気加熱装置42出口付近の過熱蒸気の温度検出値をもとに、蒸気加熱装置42の出口付近において過熱蒸気が所定温度となるように蒸気加熱装置42を制御することが可能である。つまり、制御装置21は、蒸気加熱装置42を制御して、第一処理室31内に供給する過熱蒸気を所定温度に設定することが可能である。
【0030】
尚、蒸気加熱装置42は、電気式のヒーターとしているが限定するものではなく、バーナーに、LPGガスや天然ガス、灯油、軽油、重油等の燃料が供給されて燃焼されるようにして、蒸気発生装置41からの蒸気を加熱してもよい。つまり、制御装置21は、バーナーに供給される燃料を調整することで過熱蒸気の温度が任意の温度となるように構成してもよい。
【0031】
第一処理室31には、その外壁を包み込むように電気ヒーターで構成された第一補助加熱装置44が巻かれ、第一処理室31の内部には、第一処理室31内の温度を検出する温度センサー(図示省略)が複数箇所に設けられている。第一補助加熱装置44および温度センサーは、それぞれ制御装置21と接続されている。制御装置21は、前記複数の温度センサーにより検出される第一処理室31内の各温度検出値をもとに、蒸気加熱装置42と連動して、第一補助加熱装置44を作動させることで第一処理室31内を加熱し、第一処理室31内の過熱蒸気の温度ムラをなくすようになっている。すなわち、制御装置21は、蒸気加熱装置42を制御して、第一処理室31内に供給する過熱蒸気を所定温度に設定するとともに、前記第一補助加熱装置44を制御して前記第一処理室31を所定温度に設定することで、第一処理室31内の過熱蒸気の温度ムラをなくすことができる。
なお、第一補助加熱装置44としては、第一処理室31の外壁において、複数の電気ヒーターを第一処理室31の長さ方向に沿って並べるように複数箇所に巻回し、当該複数の電気ヒーターをそれぞれ独立して加熱するように制御する構成としてもよい。このように第一補助加熱装置44を構成した場合、複数の電気ヒーターによりそれぞれ独立して第一処理室31の加熱温度を制御することで、第一処理室31内をより均一に加熱することができるため、第一処理室31内の過熱温度の温度ムラをなくすことができる。
【0032】
第一処理室31の上出口には、蒸気排出管51が接続されており、該蒸気排出管51の下流には、制御装置21と接続されているダンパー52が配置されている。つまり、制御装置21による制御によって、ダンパー52は駆動され、第一処理室31内で利用し終わった過熱蒸気(余剰の過熱蒸気)が所定の量だけ熱処理木質材料製造装置1の外部へ排出できるようになっている。
【0033】
第一処理室31の下部には、木質材料に過熱蒸気が熱を伝えることでドレン化した結露を第一処理室31の外部へと排出するためのドレン配管53が設置されている。
【0034】
第一処理室31の下部の第一排出口31bには、接続管61を介して出口タンク62が接続されており、熱処理された木質材料が所定の量だけ貯められる構造となっている。出口タンク62には、図示しない蒸気噴出口が設置され、さらに冷却用の蒸気が供給可能となっており、出口タンク62内で木質材料は有酸素下で発火しない温度域まで冷却される。また、出口タンク62は第一処理室31と運転中(木質材料が熱処理中)は連結されているが、運転終了後には取り外し可能な構造になっている。
【0035】
次に、第一実施形態に係る熱処理木質材料製造装置1に適用する熱処理木質材料製造方法について説明する。熱処理木質材料製造方法は、過熱蒸気供給工程と、木質材料供給工程と、第一熱処理工程と、冷却工程と、を主とし、それら工程を連続的に行う。以下において、各工程について説明する。
【0036】
過熱蒸気供給工程では、第一処理室31内に過熱蒸気を供給することによって第一処理室31内を低酸素雰囲気とする。つまり、予め設定した第一処理室31内における過熱蒸気の温度となるように、制御装置21が、蒸気加熱装置42を作動させ、蒸気発生装置41から供給される蒸気を加熱し、第一処理室31内へと過熱蒸気を供給する。そして、制御装置21によって、木質材料の熱処理が終了するまでこの状態が保持するように制御される。
【0037】
次に、木質材料供給工程が開始される。
【0038】
木質材料供給工程では、定量タンク12内に木質材料をセットし、そして、制御装置21の制御によって、ロータリーバルブ14が駆動し、定量タンク12内の木質材料を所定量だけ第一処理室31内へ供給するものである。本実施形態における木質材料としては、予め繊維飽和点以下に乾燥したものを対象とするが限定するものではない。
【0039】
木質材料供給工程が、終了した木質材料は、第一熱処理工程へと進む。
【0040】
第一実施形態の第一熱処理工程は、木質材料に対して腐朽耐久性、防蟻性や寸法安定性の効果を付加する為の熱処理を行う工程である。
【0041】
すなわち、第一熱処理工程では、予め設定した第一処理室31内における過熱蒸気の温度となるように、制御装置21が、蒸気加熱装置42を作動させ、蒸気発生装置41から供給される蒸気を加熱し、第一処理室31内へと過熱蒸気を供給する。この蒸気加熱装置42の作動と連動して、制御装置21は、第一補助加熱装置44も作動させる。つまり、設定された過熱蒸気の温度となるように、制御装置21は、温度センサー43及び第一処理室31内の温度センサーの検出値をもとに、第一処理室31内の過熱蒸気の温度ムラを防止するように制御する。そして、過熱蒸気の設定温度を保つとともに、第一補助加熱装置44により第一処理室31内を所定温度に加熱しながら、第一処理室31内の過熱蒸気の温度ムラも防止するように、制御装置21が自動制御を行う。
【0042】
さらに、制御装置21は、予め設定した熱処理時間(滞留時間)となるように、モーター35を作動させることで、第一スクリュー32を所定の回転速度となるように回転させる。これにより、木質材料は、第一収容口31aから第一排出口31bへと搬送される。
【0043】
しがたって、第一処理室31内の木質材料は、過熱蒸気に晒され、さらに第一スクリュー32によって攪拌されながら下流へと搬送される過程で徐々に熱処理される。第一処理室31内の木質材料は、攪拌されることで過熱蒸気に効率よく晒されるため、均一に熱処理することができる。
【0044】
また、第一処理室31内の結露は、ドレン配管53を介して装置外部に排出される。第一処理室31内の余剰の過熱蒸気は、制御装置121によって、ダンパー52を作動させることで、装置外部に所定の量だけ排出される。
【0045】
なお、上記第一熱処理工程においては、材種、初期含水率、寸法に応じて適宜の乾燥条件を決定すればよい。
【0046】
第一熱処理工程が終了した木質材料は、接続管61を介して、出口タンク62へと供給され、冷却工程に進む。
【0047】
冷却工程は、熱処理工程の終了後の木質材料が有酸素下で発火しない温度域まで下げるための工程である。
【0048】
すなわち、第一熱処理工程では、熱処理直後の木質材料が、制御装置121によって出口タンク62内に所定量だけ貯められるように制御される。出口タンク62には、図示しない蒸気噴出口が設置され、さらに冷却用の蒸気が供給可能となっている。木質材料温度センサーにより木質材料温度が所定温度を下回ったことが検知されると、排出装置が作動し、出口タンク62内の木質材料(木材)が取り出され、冷却工程は終了とする。
【0049】
以上が第一実施形態に係る熱処理木質材料製造装置の構成及び熱処理木質材料製造方法である。
なお、第一実施形態においては、木質材料の投入から冷却を一連の工程の中で行う例を挙げたが、特に限定するものではなく、生木などの乾燥処理が成されていない木質材料を用いて、乾燥工程と熱処理工程を第一熱処理工程で行うようにして熱処理木質材料製造方法を構成することも可能である。
【0050】
次に、本発明の第二実施形態に係る連続式の熱処理木質材料製造装置100の全体構成について図2を用いて説明する。
【0051】
第二実施形態に係る熱処理木質材料製造装置100は、第一実施形態に係る熱処理木質材料製造装置1の第一処理室31と出口タンク62との間に第二処理室131が介在するように構成されている。尚、説明を容易とするため、第一実施形態と同様の部分については、同じ符号を付し、説明は省略する。また、制御装置21に接続されたものは第二実施形態において制御装置121に接続されるものとする。
【0052】
第二処理室131は、円筒状のケース体(本実施形体において内径200mm、長さ2000mm)であり、第一処理室31の下方に所定間隔をおいて平行に設けられている。第二処理室131の上流側の第二収容口131aは、第一処理室31の下流側にある第一排出口31bと連結管36を介して連結されている。第二処理室131には、第二スクリュー132が設けられ、第一処理室31内の第一スクリュー32による木質材料の進行方向とは逆の進行方向となるように配置される。該第二スクリュー132は駆動軸133を有し、該駆動軸133は、第二処理室131の上流端部および下流端部に回動可能に支持される。駆動軸133の一端には、動力伝達手段134を介してモーター135が連結されている。モーター135は制御装置121と接続され、制御装置121によって所定のタイミングで駆動されるように制御されている。この第二スクリュー132の回動は、第一処理室31から連結管36を介して第二処理室131内に送られてきた木質材料を第二処理室131内の上流(第二収容口131a側)から下流(第二排出口131b側)へと攪拌しながら搬送する。このとき、モーター135がインバータ制御されていることで、第二スクリュー132の回転速度が制御されており、第二処理室131内における木質材料の滞留時間が制御可能になっている。
【0053】
第一処理室31と第二処理室131の内部には、蒸気発生装置41によって作られた蒸気が送りこまれてくる。該蒸気は蒸気加熱装置142によって加熱されて、それぞれの所定温度の過熱蒸気となって二つの供給管142a・142bを介して第一処理室31と第二処理室131内へと送られる。供給管142a・142bには、それぞれに温度センサー43・143が配置されており、蒸気加熱装置142とともに制御装置121と接続されている。制御装置21は、温度センサー43・143により検出される過熱蒸気の温度検出値をもとに、蒸気加熱装置142の出口付近における過熱蒸気が所定温度となるように蒸気加熱装置142を制御することが可能である。つまり、制御装置121は、蒸気加熱装置142を制御して、第一処理室31に供給する過熱蒸気の温度と、第二処理室131に供給する過熱蒸気の温度を別途に設定することができる。
【0054】
第二処理室131の外壁には電気ヒーターによって構成された第二補助加熱装置144が巻かれ、第二処理室131の内部には、第二処理室131内の温度を検出する温度センサー(図示省略)が複数箇所に設けられている。第二補助加熱装置144および温度センサーは、制御装置121と接続されている。制御装置21は、前記複数の温度センサーにより検出される第二処理室131内の各温度検出値をもとに、蒸気加熱装置142と連動して、第二補助加熱装置144を作動させることで第二処理室131内を加熱し、第二処理室131内の過熱蒸気の温度ムラをなくすようになっている。すなわち、制御装置121は、蒸気加熱装置142を制御して、第二処理室131内に供給する過熱蒸気を所定温度に設定するとともに、前記第二補助加熱装置144を制御して前記第二処理室131を所定温度に設定することで、第二処理室131内の過熱蒸気の温度ムラをなくすことができる。
なお、第二補助加熱装置144としては、第二処理室131の外壁において、複数の電気ヒーターを第二処理室131の長さ方向に沿って並べるように複数箇所に巻回し、当該複数の電気ヒーターをそれぞれ独立して加熱するように制御する構成としてもよい。このように第二補助加熱装置144を構成した場合、複数の電気ヒーターによりそれぞれ独立して第二処理室131の加熱温度を制御することで、第二処理室131内をより均一に加熱することができるため、第二処理室131内の過熱温度の温度ムラをなくすことができる。
【0055】
第二処理室131内の余剰の過熱蒸気は、連結管36を介して第一処理室31内に移動し、制御装置21による制御によって、ダンパー52が駆動され、第一処理室31内の余剰の過熱蒸気とともに所定の量だけ熱処理木質材料製造装置1の外部へ排出するようになっている。
【0056】
第二処理室131の下部には、結露を第二処理室131の外部へと排出するためのドレン配管153が設置されている。
【0057】
第二処理室131の下部の第二排出口131bには、接続管61を介して出口タンク62が接続されており、所定量の熱処理された木質材料が貯められる構造となっている。
【0058】
尚、第一実施形態および第二実施形態の熱処理木質材料製造装置1・100には、木質材料を冷却するため出口タンク62を設置しているが限定するものではなく、第一処理室31と同様に室内を攪拌可能なスクリューを付けた冷却室を設けてもよい。該冷却室は、その内部に生蒸気を充満させたり、冷水のミストを噴射したりして、冷却室内の木質材料を冷却するように構成してもよい。
【0059】
次に、第二実施形態に係る熱処理木質材料製造装置100に適用する熱処理木質材料製造方法について説明する。熱処理木質材料製造方法は、過熱蒸気供給工程と、木質材料供給工程と、第一熱処理工程(乾燥工程)と、第二熱処理工程と、冷却工程と、を主とし、それら工程を連続的に行う。以下において、各工程について説明する。
【0060】
過熱蒸気供給工程では、第一処理室31内と第二処理室131内に過熱蒸気を供給することによって第一処理室31内と第二処理室131内を低酸素雰囲気とする。つまり、予め設定した、第一処理室31内と第二処理室131内における過熱蒸気の温度となるように、制御装置121が、蒸気加熱装置142を作動させ、蒸気発生装置41から供給される蒸気を加熱し、第一処理室31内と第二処理室131内へと過熱蒸気をそれぞれ供給する。そして、制御装置121によって、木質材料の熱処理が終了するまでこの状態が保持するように制御される。
【0061】
次に、木質材料供給工程が開始される。
【0062】
木質材料供給工程では、定量タンク12内に木質材料をセットし、そして、制御装置121の制御によって、ロータリーバルブ14が駆動し、定量タンク12内の木質材料を所定量だけ第一処理室31内へ供給するものである。
なお、上記木質材料供給工程においては、木質材料の材種、初期含水率、寸法に応じて適宜の乾燥条件を決定すればよい。例えば、スギチップを木質材料とした場合、好ましい乾燥条件としては、1時間当たりの木質材料の供給量は約7kg〜9.5kgである。
【0063】
木質材料供給工程が、終了した木質材料は、第一熱処理工程である乾燥工程へと進む。
【0064】
乾燥工程は、前記第一処理室31内に供給される過熱蒸気にて低酸素雰囲気(無酸素雰囲気)とし、定量供給装置11によって所定量だけ供給された木質材料を第一スクリュー32によって攪拌しながら移動させることで、第一処理室31内の木質材料を所定の含水率(本実施形態では、15%以下)まで乾燥させる工程である。
【0065】
すなわち、乾燥工程では、予め設定した第一処理室31内における過熱蒸気の温度となるように、制御装置121が、蒸気加熱装置142を作動させ、蒸気発生装置41から供給される蒸気を加熱し、第一処理室31内へと過熱蒸気を供給する。この蒸気加熱装置142の作動と連動して、制御装置121は、第一補助加熱装置44も作動させる。つまり、設定された過熱蒸気の温度となるように、制御装置121は、温度センサー43及び第一処理室31内の温度センサーの検出値をもとに、第一処理室31内の過熱蒸気の温度ムラを防止するように制御する。そして、過熱蒸気の設定温度を保つとともに、第一補助加熱装置44により第一処理室31内を所定温度に加熱しながら、第一処理室31内の過熱蒸気の温度ムラも防止するように、制御装置121が自動制御を行う。
【0066】
さらに、制御装置121は、予め設定した乾燥時間(滞留時間)となるように、モーター35を作動させることで、第一スクリュー32を所定の回転速度となるように回転させる。これにより、木質材料は、第一収容口31aから第一排出口31bへと搬送される。
【0067】
しがたって、第一処理室31内の木質材料は、過熱蒸気に晒され、さらに第一スクリュー32によって攪拌されながら下流へと搬送される過程で徐々に熱処理(本実施形態においては、乾燥処理)される。第一処理室31内の木質材料は、攪拌されることで過熱蒸気に効率よく晒されるため、均一に熱処理(本実施形態においては、乾燥処理)することができる。
【0068】
また、第一処理室31内の結露は、ドレン配管53を介して装置外部に排出される。第一処理室31内の余剰の過熱蒸気は、制御装置121によって、ダンパー52を作動させることで、装置外部に所定の量だけ排出される。
【0069】
なお、上記乾燥工程においては、材種、初期含水率、寸法に応じて適宜の乾燥条件を決定すればよい。好ましい乾燥条件としては、例えば、スギチップを木質材料とした場合、第一処理室31内に供給される過熱蒸気の設定温度が360℃、乾燥時間が45分〜1時間、第一補助加熱装置44の設定温度が310℃として、第一処理室31内の過熱蒸気の温度を約220℃とするものである。
【0070】
乾燥工程が終了した木質材料は、連結管36を介して、第二処理室131へと供給され、第二熱処理工程に進む。
【0071】
第二熱処理工程は、前記乾燥工程終了後の木質材料に対して腐朽耐久性、防蟻性や寸法安定性の効果を付加する為の熱処理を行う工程である。また、第二処理室内の過熱蒸気の温度を所定範囲に設定することよって、低温炭化処理を行う工程でもある。
【0072】
すなわち、第二熱処理工程では、予め設定した第二処理室131内における過熱蒸気の温度となるように、制御装置121が、蒸気加熱装置142を作動させ、蒸気発生装置41から供給される蒸気を加熱し、第二処理室131内へと過熱蒸気を供給する。この蒸気加熱装置142の作動と連動して、制御装置121は、第二補助加熱装置144も作動させる。つまり、設定された過熱蒸気の温度となるように、制御装置121は、温度センサー143及び第二処理室131内の温度センサーの検出値をもとに、第二処理室131内の過熱蒸気の温度ムラを防止するように制御する。つまり、過熱蒸気の設定温度を保つとともに、第二補助加熱装置144により第二処理室131内を所定温度に加熱しながら、第二処理室131内の過熱蒸気の温度ムラも防止するように、制御装置121が自動制御を行う。
【0073】
さらに、制御装置121は、予め設定した熱処理時間(滞留時間)となるように、モーター135を作動させることで、第二スクリュー132を所定の回転速度となるように回転させる。これにより、木質材料は、第二収容口131aから第二排出口131bへと搬送される。
【0074】
しがたって、第二処理室131内の木質材料は、過熱蒸気に晒され、さらに第二スクリュー132によって攪拌されながら下流へと搬送される過程で徐々に熱処理される。第二処理室131内の木質材料は、第一処理室31と同様に、攪拌されることで過熱蒸気に効率よく晒されるため、均一な熱処理を行うことができる。
【0075】
また、第二処理室131内の結露は、ドレン配管153を介して装置外部に排出される。第二処理室131内の余剰の過熱蒸気は、第一処理室31の余剰の過熱蒸気とともに、制御装置121によって、ダンパー52を作動させることで、装置外部に所定の量だけ排出される。
【0076】
なお、上記第二熱処理工程においては、第一熱処理工程である乾燥工程と同様、材種、初期含水率、寸法に応じて適宜の乾燥条件を決定すればよい。好ましい乾燥条件としては、例えば、スギチップを木質材料とした場合、第二処理室131内に供給される過熱蒸気の温度が360℃、乾燥時間が45分〜1時間、第二補助加熱装置144の設定温度が300℃として、第二処理室131内の過熱蒸気の温度を約240℃とするものである。
【0077】
第二熱処理工程が終了した木質材料は、接続管61を介して、出口タンク62へと供給され、冷却工程に進む。
【0078】
冷却工程は、熱処理工程の終了後の木質材料が有酸素下で発火しない温度域まで下げるための工程である。
【0079】
すなわち、冷却工程では、熱処理直後の木質材料が、制御装置121によって出口タンク62内に所定量だけ貯められるように制御される。出口タンク62には、図示しない蒸気噴出口が設置され、さらに冷却用の蒸気が供給可能となっている。木質材料温度センサーにより木質材料温度が所定温度を下回ったことが検知されると、排出装置が作動し、出口タンク62内の木質材料(木材)が取り出され、冷却工程は終了とする。
【0080】
以上が第二実施形態に係る熱処理木質材料製造装置の構成及び熱処理木質材料製造方法である。
なお、第二実施形態においては、木質材料の投入から冷却を一連の工程の中で行う例を挙げたが、特に限定するものではなく、第一実施形態のように、予め乾燥が行われた乾燥木質材料(例えば、含水率15%以下)を用いて、前述した熱処理木質材料製造方法における第一熱処理工程で行った乾燥工程を省き、第一熱処理工程と第二熱処理工程とを二段階の熱処理工程として行うようにして熱処理木質材料製造方法を構成することも可能である。
【0081】
次に、第二実施形態の熱処理木質材料製造装置100を用いて実際に熱処理木質材料を試験的に製造した実施例について説明する。
【0082】
(木質材料の寸法及び装置への1回あたりの供給量)
熱処理木質材料製造装置100に、以下の条件の供試材(木質材料)を供給し、供試材の熱処理を行う。
供試材の寸法としては、長さ約20〜35mm、幅約20〜35mm、厚さ約5mmの気乾状態にあるスギチップを用いた。熱処理木質材料製造装置100への供試材(木材)の供給量(1回分)は、28kg(全乾ベースで約25kg)である。
【0083】
連続式の熱処理木質材料製造装置100の設定条件は次のとおりであった。
第一処理室31及び第二処理室131内に導入する過熱蒸気の温度は365℃、上段の第一処理室31の第一補助加熱装置44の温度は310℃、下段の第二処理室131の第二補助加熱装置144の温度は300℃に設定した。このとき、上段の第一処理室31の内部温度は約220℃、下段の第二処理室131の内部温度は240℃であった。
【0084】
供試材のロット間でのばらつきを調べるために、同じ試験を3回行った。そのうち1回は、チップの中に含水率と重量が既知のスギ辺材試験体(気乾状態で、接線方向と放射方向がそれぞれ20mm、繊維方向さが10mm)を30体入れておき、処理後にスギチップの中から取り出して、全乾状態での重量と寸法を測定した。そのうち6体については30℃で相対湿度が95%の雰囲気下において平衡状態に達したときに再び重量と寸法を測定し、含水率および、全乾からその状態に至るまでの膨潤率を求めた。残りの24体についてはJIS K1571に基づいて、室内腐朽試験を実施した。耐候操作の後、オオウズラタケならびに、カワラタケを供試菌とする抗菌操作に供し、重量減少率を求めた。ただし、重量減少率を求める際には、60℃恒量に代えて、105℃での全乾重量を用いた。
【0085】
条件Aにおいて、ロータリーバルブ14の駆動による定量供給装置11からの木質材料の投入量は、1時間当たりの投入量を約7kgとした。上下段の第一処理室31及び第二処理室131内に滞在する時間(以降、処理時間という)の合計は1時間として熱処理を行った。
条件Bにおいて、ロータリーバルブ14の駆動による定量供給装置11からの木質材料の投入量は、1時間当たりの投入量は約9.5kgとした。処理時間の合計は45分として熱処理を行った。
【0086】
その結果、処理に伴う重量減少率は、投入したチップ全体で見た場合、
条件Aでは、平均29.9%(29.5〜30.4%)、
条件Bでは、平均18.0%(17.4〜18.7%)であり、
ロットごとでのばらつきは極めて少なかった。
【0087】
また、そのうち1回の処理では上述したとおり、チップの中にスギ辺材試験体30体をランダムに混ぜたが、この試験体の重量減少率は、
条件Aでは、28.2〜31.4%(平均29.5%)、
条件Bでは、16.8〜18.7%(平均17.7%)であり、
ロット間だけではなく、ロット内でもほぼ均一な処理ができていることを確認した。
【0088】
30℃・95%での含水率は、無処理のスギ辺材試験体が22.5%であったのに対して、条件Aでは11.5%、条件Bでは9.6%で吸湿性の顕著な低下が観察された。
【0089】
また、同条件での膨潤率は、無処理のスギ辺材試験体が9.7%であったのに対して、条件Aでは4.47%、条件Bでは4.51%となり、処理によって寸法変化が半分以下になった。
【0090】
JIS K1571に基づく室内腐朽試験では、無処理のスギ辺材試験体の重量減少率がオオウズラタケで62.9%、カワラタケで40.7%であったが、条件Aでは前者で1.2%、後者で0.1%、条件Bでは前者で2.7%、後者で0.2%となり、木材保存剤を含浸したときと同程度の高い耐朽性が、熱処理により付与されたことが確認できた。
【0091】
次に、上記の熱処理によって得られたスギチップを粉砕後に全乾状態として、JIS M 8814に準拠した熱量測定を行った。
【0092】
その結果、無処理のスギチップでは18.8MJ/kgであったが、条件Aのスギチップでは22.5MJ/kg、条件Bのスギチップでは21.3MJ/kgとなり、それぞれ約20%、13%の単位重量当たりの熱量が増加した。つまり、本装置で低温炭化処理を行うことができることを確認した。
【0093】
なお、条件Aのとき、熱処理木質材料製造装置100に投入した(電気)エネルギーは、処理後のスギチップの総発熱量のおよそ20%であり、エネルギー的にもバランスが取れることも分かった。併せて若干の成分分析を実施したが、熱処理に伴い減少するのはヘミセルロースのみであり、セルロースは変化がなく、クラーソン法で定量されるリグニン量はむしろ微増した。このような成分変化が、吸湿性の低下、耐朽性の発現や発熱量の増加に関連していることは確実と思われた。
【0094】
次に、比較例として従来の木質材料の熱処理装置を用いて実際に熱処理木質材料を試験的に製造した比較例について説明する。
【0095】
バッチ式の過熱蒸気処理装置(内寸法約40cm(幅)×40cm(高さ)×45cm(奥行き)を用い、以下に示すような方法によって実施例で説明した供試材であるスギチップを処理した。なお、同装置は、上記の連続式の熱処理木質材料製造装置100と同様に、ボイラで発生させた蒸気を電気ヒーターで加熱して、過熱蒸気として処理室内に導入する仕組みで、壁体内に電気ヒーターを備え、設備の性能(処理室内温度調節の能力)としては、連続式過熱蒸気処理装置と同等である。
【0096】
内寸法約35cm(幅)×30cm(高さ)×35cm(奥行き)のステンレス製のかごに気乾状態にあるスギチップ(長さ20〜35mm、幅約20〜35mm、厚さ約5mm)を詰めたところ、約4.5kg(全乾ベースで約4kg)であった。なお、そのチップの中に重量が既知のスギ辺材試験体(気乾状態で、接線方向と放射方向がそれぞれ20mm、繊維方向さが10mm)を72体入れておき、処理後にスギチップの中から取り出して、全乾状態での重量を測定して、加熱処理に伴う重量減少率を求めた。さらに、それらの試験体は、JIS K1571に基づく室内腐朽試験に供した。耐候操作の後、オオウズラタケならびに、カワラタケを供試菌とする抗菌操作に供し、重量減少率を求めた。ただし、重量減少率を求める際には、60℃恒量に代えて、105℃での全乾重量を用いた。
【0097】
スギチップの処理を行う前に、装置の空運転を行い、室内温度が240℃となる条件を求めた結果、過熱蒸気の温度を420℃、壁内の電気ヒーター温度を245℃に設定すれば良いことが分かったので、スギチップが詰まったかごを処理室内に入れ、扉を閉めた後、同条件で加熱処理を行った。
【0098】
その結果、処理室内の温度は、加熱開始から2時間以内に240℃に達し、かごの表面に近いスギチップもそれより遅れること約1時間で同温度に到達したが、かごの中心付近のチップが240℃に達したのは加熱開始から8時間以上経過してからであり、そのとき、かごの表面に近いスギチップは過剰な加熱により自己発熱して、機械で制御できず、310℃に達した。かごの中心付近に入れたスギチップの温度が240℃に達した後、2時間処理を行い、放冷をした後かごを取り出し、全乾状態でのチップ全体の重量と、スギ辺材試験体個別の全乾重量を測定した。
【0099】
処理に伴う重量減少率は、チップ全体の重量から求めたとき20.3%であったが、個別のスギ辺材試験体から求めた重量減少率は9.0〜30.4%(平均19.9%)であり、かなりのばらつきが見られた。また、そのスギ辺材試験体を用いて行った室内腐朽試験の結果、腐朽に伴う重量減少率はオオウズラタケでは1.2〜39.6%(平均14.3%)、カワラタケでは0〜8.2%(同3.3%)であり、腐朽が見られない試験体もあれば、顕著に腐朽した試験体もあり、処理の不均一さが際だった。
【0100】
本発明の連続式の熱処理木質材料製造装置100と比較すると、バッチ式の装置では、処理時間が非常に長くかかること、および、木質材料に対する均一な加熱ができず、安定した性能が付与されていないことが明確であり、本発明の連続式の熱処理木質材料製造装置100における優位性は自明であった。
【符号の説明】
【0101】
1 熱処理木質材料製造装置
11 定量供給装置
21 制御装置
31 第一処理室
31a 第一収容口
31b 第一排出口
32 第一スクリュー
41 蒸気発生装置
42 蒸気加熱装置
44 第一補助加熱装置
100 熱処理木質材料製造装置
121 制御装置
131 第二処理室
131a 第二収容口
131b 第二排出口
132 第二スクリュー
142 蒸気加熱装置
144 第二補助加熱装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質材料に対して熱処理を行う熱処理木質材料製造装置であって、
所定量の木質材料を供給する定量供給装置と、
第一収容口と第一排出口とを有し、前記定量供給装置から供給される前記木質材料を前記第一収容口より収容し、第一スクリューによって攪拌しながら前記第一排出口へと搬送する第一処理室と、
蒸気を作る蒸気発生装置と、
該蒸気発生装置から供給される蒸気を加熱して、前記第一処理室内に供給する過熱蒸気とする蒸気加熱装置と、
前記第一処理室を加熱する第一補助加熱装置と、
前記蒸気加熱装置を制御して前記過熱蒸気を所定温度に設定するとともに、前記補助加熱装置を制御して前記第一処理室を所定温度に設定する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記第一処理室内に前記過熱蒸気を供給することによって前記第一処理室内を低酸素雰囲気とし、
前記第一スクリューを所定の回転速度で回転させることで、前記第一処理室内の前記木質材料を攪拌しながら前記第一収容口から前記第一排出口へと搬送するとともに、前記補助加熱装置により前記第一処理室を所定温度に加熱しながら前記所定温度の過熱蒸気にて前記木質材料に熱処理を行う、ことを特徴とする熱処理木質材料製造装置。
【請求項2】
第二収容口と第二排出口を有し、前記第一処理室の前記第一排出口から排出される前記木質材料を前記第二収容口より収容し、第二スクリューによって攪拌しながら前記第二排出口へと搬送する第二処理室と、
前記第二処理室を加熱する第二補助加熱装置と、をさらに備え、
前記制御装置は、
前記第一処理室内と前記第二処理室内とに前記過熱蒸気を供給することによって前記第一処理室内と前記第二処理室内とを低酸素雰囲気とし、
前記第二スクリューを所定の回転速度で回転させることで、前記第一排出口から前記第二処理室内に供給された前記木質材料を攪拌しながら第二収容口から前記第二排出口へと搬送するとともに、前記第二補助加熱装置により前記第二処理室を所定温度に加熱しながら前記所定温度の過熱蒸気にて前記木質材料に熱処理を行う、ことを特徴とする請求項1に記載の熱処理木質材料製造装置。
【請求項3】
前記木質材料は、予め繊維飽和点以下に乾燥した木質材料であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱処理木質材料製造装置。
【請求項4】
前記木質材料は、乾燥処理が成されていない木質材料であることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の熱処理木質材料製造装置。
【請求項5】
前記熱処理は、低温炭化処理であることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載の熱処理木質材料製造装置。
【請求項6】
前記請求項1に記載の熱処理木質材料製造装置を用いて、木質材料に対して熱処理を行う熱処理木質材料製造方法であって、
前記定量供給装置により前記第一処理室に所定量の木質材料を供給する工程と、
前記第一処理室内に前記過熱蒸気を供給することによって前記第一処理室内を低酸素雰囲気とする過熱蒸気供給工程と、
前記第一処理室内において、前記第一スクリューを所定の回転速度で回転させることで、前記第一処理室内の前記木質材料を攪拌しながら前記第一収容口から前記第一排出口へと搬送するとともに、前記第一補助加熱装置により前記第一処理室を前記所定温度に加熱しながら前記所定温度の過熱蒸気にて前記木質材料に熱処理を行う第一熱処理工程と、を有する熱処理木質材料製造方法。
【請求項7】
前記請求項2に記載の熱処理木質材料製造装置を用いて、木質材料に対して熱処理を行う連続式の熱処理木質材料製造方法であって、
前記定量供給装置により前記第一処理室に所定量の木質材料を供給する工程と、
前記第一処理室内と前記第二処理室内とに前記過熱蒸気を供給することによって前記第一処理室内と前記第二処理室内とを低酸素雰囲気とする過熱蒸気供給工程と、
前記第一処理室内において、前記第一スクリューを所定の回転速度で回転させることで、前記第一処理室内の前記木質材料を攪拌しながら前記第一収容口から前記第一排出口へと搬送するとともに、前記第一補助加熱装置により前記第一処理室を前記所定温度に加熱しながら前記所定温度の過熱蒸気にて前記木質材料に熱処理を行う第一熱処理工程と、
該第一熱処理工程により熱処理された前記木質材料を前記第二処理室に供給し、当該第二処理室内において、前記第二スクリューを所定の回転速度で回転させることで、前記第二処理室内の前記木質材料を攪拌しながら前記第二収容口から前記第二排出口へと搬送するとともに、前記第二補助加熱装置により前記第二処理室を前記所定温度に加熱しながら前記所定温度の過熱蒸気にて前記木質材料に熱処理を行う第二熱処理工程と、を有する熱処理木質材料製造方法。
【請求項8】
前記木質材料は、予め繊維飽和点以下に乾燥した木質材料であることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の熱処理木質材料製造方法。
【請求項9】
前記木質材料は、乾燥処理が成されていない木質材料であることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の熱処理木質材料製造方法。
【請求項10】
前記第一熱処理工程は、低温炭化処理を行う工程であることを特徴とする請求項6から請求項9の何れか一項に記載の熱処理木質材料製造方法。
【請求項11】
前記第一熱処理工程は、前記木質材料を繊維飽和点以下にする乾燥処理を有する工程であることを特徴とする請求項6から請求項9の何れか一項に記載の熱処理木質材料製造方法。
【請求項12】
前記第二熱処理工程は、低温炭化処理を行う工程であることを特徴とする請求項7から請求項11の何れか一項に記載の熱処理木質材料製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−202673(P2012−202673A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70709(P2011−70709)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(391057395)株式会社ヤスジマ (8)
【出願人】(000225142)奈良県 (42)
【Fターム(参考)】