説明

過熱蒸気放出装置および滅菌装置

【課題】塩素系や臭素含有の廃プラスチックが混入しても破損することなく過熱蒸気を放出できるセラミック過熱蒸気発生装置12を提供する。また、セラミック過熱蒸気発生装置12を用いた移動式の移動式処理装置1を提供する。
【解決手段】中空部Eと、該中空部Eに連通する飽和蒸気入口14aと、前記中空部Eに連通する過熱蒸気出口14bとを有するセラミックケース14と、電力供給を受けると発熱する発熱体13とを備え、前記発熱体13は、前記セラミックケース14の中空部E内に少なくとも一部分を配置して、セラミック過熱蒸気発生装置12を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば高温の蒸気を放出できるような過熱蒸気放出装置、および該過熱蒸気放出装置を用いて滅菌するような滅菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱源は、灯油やガスを利用するのが一般的である。この灯油やガスを利用した熱源は、バーナー炎や排気ガスが発生するため、環境に良くないという問題がある。また、1サイクルの処理時間に通常10時間程度を要し、時間がかかるという問題点もある。また、燃焼過程で有害物質が発生するという不都合もある。
【0003】
他にも、電気を利用し、過熱蒸気を熱源として利用する装置が提案されている。この装置は、高周波誘導過熱装置で電圧を印加することにより、過熱蒸気を発生する。しかし、このような装置は、大型であり、設備として高価である。従って、このような装置は、小型で簡便な装置が要求される医療系現場に不向きである。また、高周波誘導過熱装置を利用した過熱蒸気発生装置は、効率が悪い、および冷却水が必要等の問題があり、実用化が進展していない。
【0004】
このような事情から、医療施設で生じる殆どの感染性特別管理廃棄物は、専門的な業者に委託して外部の処分場で焼却処分されている。病院内で処分できるように大型の処理施設も存在するが、運用業務等が複雑で大変なために積極的に採用する状況にはない。
【0005】
一方、インコネルをパイプにして内部に飽和蒸気を通して、過熱蒸気を発生して廃食品を炭化する装置も提案されている(特許文献1参照)。
しかし、この装置は、塩素系や臭素含有の廃プラスチックが混入すると、塩素ガスによる高温酸化が激しく、発熱体の損傷が危惧されるという問題がある。
【0006】
また、感染性特別管理廃棄物の排出現場における多くの専門医師は、小型で移動でき、簡易的で確実に処分が出来る装置を望んでいる。このような医師は、専門的な研究課題があることから、自ら手術を行い排出した臓器等について、詳細なデータを自らの目で確認することを望む。また、院内感染源の完全撲滅も望まれている。感染源の拡大を防止するためには、手近で簡便に処理できる技術及び装置が役立つ。このようなことから、廃棄物の発生源に近い場所で、短時間で処分する方法が求められている。
【0007】
【特許文献1】特開2005−325156号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、上述した問題に鑑み、塩素系や臭素含有の廃プラスチックが混入しても破損することなく過熱蒸気を放出できる過熱蒸気放出装置、およびこの過熱蒸気放出装置を用いた滅菌装置を提供し、利用者の利便性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、中空部と、該中空部に連通する蒸気受入口と、前記中空部に連通する蒸気放出口とを有する被覆体と、電力供給を受けると発熱する発熱体とを備え、前記発熱体は、前記被覆体の中空部内に少なくとも一部分が配置され、前記被覆体は、セラミック(セラミックス)で構成された過熱蒸気放出装置であることを特徴とする。
【0010】
またこの発明は、固定式の固定ユニットと、該固定ユニットに接続および分離可能な移動式の移動ユニットとを備え、前記移動ユニットに、開閉可能な蓋部を有して密閉可能な熱分解室と、該熱分解室内に過熱蒸気を放出する前記過熱蒸気放出装置と、前記熱分解室で熱分解して発生した気体を前記固定ユニットへ送り出す気体送出部とを備え、前記固定ユニットに、前記気体送出部から気体を受け入れる気体受入部と、該気体受入部から受け入れた気体を処理する気体処理部とを備えた滅菌装置とすることができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明により、塩素系や臭素含有の廃プラスチックが混入しても破損することなく過熱蒸気を放出できる過熱蒸気放出装置、およびこの過熱蒸気放出装置を用いた滅菌装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
図1は、医療系の移動式処理装置1の側面縦断面図を示し、図2は、セラミック過熱蒸気発生装置12の縦断正面図を示し、図3は、固定式処理装置2の系統のブロック図を示し、図4は、移動式処理装置1と固定式処理装置2が接続された滅菌装置Aの処理系のブロック図を示す。
【0013】
滅菌装置Aは、適宜の場所に設置固定された固定式処理装置2と、移動可能な移動式処理装置1とで構成されている。
移動式処理装置1は、底部の架台にキャスタ44が設けられて移動可能に構成されている。この移動式処理装置1は、主にセラミック過熱蒸気発生装置12、熱分解室21、残渣物受槽27、触媒槽31、攪拌機枢動モータ41、および電源トランス43が備えられている。
【0014】
熱分解室21は、略円筒形に形成され、断面円形の空間を持っている。熱分解室21の周囲は、断熱材25が設けられている。この熱分解室21には、移動式処理装置1の上部前方から外部へ連通する投入口22が設けられている。この投入口22は、移動式処理装置1の上部前方の外部化粧板23に開口部が形成され、この開口部にワンタッチで開閉可能な回転ハッチ式の開閉蓋22aが設けられている。この開閉蓋22aが閉じられると熱分解室21内が密閉される。
【0015】
また、熱分解室21の中央には、攪拌機24が備えられている。この攪拌機24は、熱分解室21内に投入された処理対象物を、熱分解室21内で攪拌する。
【0016】
熱分解室21の下部前方には、排出口26が設けられている。この排出口26は、開閉式であり、熱分解室21内で熱分解が実行されている間は閉状態に閉じられている。熱分解が完了すると制御盤56(図3参照)の駆動制御によって開状態に開く。これにより、熱分解室21内で発生した残渣物を、排出口26下方の残渣物受槽27に放出できる。
【0017】
熱分解室21の上部後方には、熱分解室21の外側へ突出する形状にヒーターケース11が形成されている。そして、このヒーターケース11内に、ヒーター支持部10によってセラミック過熱蒸気発生装置12が固定されている。このセラミック過熱蒸気発生装置12は、上部後方から熱分解室21の中心へ向けて約45°の角度で過熱蒸気噴霧ノズル37から過熱蒸気を噴射するものである。
【0018】
セラミック過熱蒸気発生装置12は、図2に示すように、発熱体13と、該発熱体13の中央部分13bを被覆するセラミックケース14とで主に構成されている。
発熱体13は、インコネル、ハステロイ、炭素繊維、炭化珪素、または黒鉛ヒーター等の一種類かもしくは複数を使用したもので構成されている。これらの発熱体13は、熱分解処理物の種類に応じて変更することが可能である。
【0019】
セラミックケース14は、セラミックで構成されており、内部の中空部E内に発熱体13が配置されている。セラミックケース14の内側と外側を繋ぐのは、長手方向両端近傍に設けられた飽和蒸気入口14aおよび過熱蒸気出口14bだけになっている。したがって、飽和蒸気入口14aから投入された蒸気は、セラミックケース14内を通過する間に発熱体13で過熱され、過熱蒸気出口14bから放出される。
【0020】
なお、このセラミック過熱蒸気発生装置12は、高温過熱セラミックヒーターとして、前記発熱体13の周囲が耐熱性・耐食性のセラミック製パイプ材で蔽われて構成されている。ここで、発熱体13は、複雑な形状にすることもできる。この場合、セラミック過熱蒸気発生装置12は、2枚のセラミックの材料を組み合わせて、内部に発熱体13が組み込まれるように機械加工して、セラミック製ボルト等で締め付けるか又は焼付けて成型化し、機密性を持たせて構成すればよい。また、セラミックケース14の各部に過熱蒸気が噴射する吐出口を設けて、過熱蒸気を処理装置内部に噴射する構成にしてもよい。
【0021】
また、発熱体13の端部である突出部分13aは、セラミックケース14の長手方向両端部から外側へ突出するように配置され、耐熱性の電源ケーブル42(図1参照)によって電源トランス43に接続されている。そして、この発熱体13の突出部分13aには、放熱板16が設けられている。
【0022】
図1に示す残渣物受槽27は、熱分解室21での熱分解処理が完了した後に、排出口26から排出される残渣物を貯留する。この残渣物受槽27は、引き出しのように移動式処理装置1の正面から取り出し可能に構成しておくと良い。
【0023】
熱分解室21の上部には、熱分解出口19が設けられている。この熱分解出口19の後段には、吐出ガス圧力調整弁18、触媒槽31、および熱分解ガス管接続部34がこの順で設けられている。
【0024】
吐出ガス圧力調整弁18は、吐出するガスの圧力を調整する弁である。
触媒槽31は、熱分解によってガス化した有機物を、触媒による接触分解で調整するものである。
【0025】
また、熱分解室21の上部には、液状処理物供給口17および冷却用蒸気供給口20も設けられている。液状処理物供給口17は、液状処理物接続部33に接続されている。また、冷却用蒸気供給口20は、冷却用蒸気接続部32に接続されている。この冷却用蒸気供給口20には、冷却用噴霧ノズルが装備されており、一定時間噴霧されて温度が下がると停止してブザー等で完了を知らせる機能が装備されている。処理後の残渣物は別途処理物選別装置を設け、金属類、炭素類、その他の無機物等に分類する。
【0026】
攪拌機枢動モータ41は、図示省略するチェーン等によって攪拌機24に接続されており、攪拌機24を回転駆動する。
【0027】
電源トランス43は、電源供給接続部35から電力供給を受け、主にセラミック過熱蒸気発生装置12に電力供給を行う。このセラミック過熱蒸気発生装置12への電力供給は、他の電気接続ラインよりも太い耐熱性の電源ケーブル42を用いて行う。この電源トランス43を、移動式処理装置1内に設けてセラミック過熱蒸気発生装置12からの距離(つまり電源ケーブル42の長さ)をなるべく短くすることで、セラミック過熱蒸気発生装置12へ大電力を供給することを容易にしている。
【0028】
固定式処理装置2は、図3に示すように、脱臭処理装置51、超音波発生装置52、オゾン発生装置53、電気式ボイラー54、軟水器55、制御盤56、熱交換器57、受液槽58、および水封槽59が設けられている。また、移動式処理装置1の冷却用蒸気接続部32、液状処理物接続部33、熱分解ガス管接続部34、および電源供給接続部35とそれぞれ接続する接続部72〜75が設けられている。なお、この接続部72〜75は、ワンタッチで接続できる構成にすることが好ましい。
【0029】
脱臭処理装置51は、オゾン発生装置53から供給されるオゾンを用いて、悪臭を伴うガスを無煙、無臭にする装置である。
超音波発生装置52は、水封槽59内の液体(排水)に振動を与える装置である。
【0030】
オゾン発生装置53は、脱臭処理装置51および水封槽59にオゾンを供給する装置である。
電気式ボイラー54は、軟水器55から供給される軟水から飽和蒸気を生成し、この飽和蒸気を後段のセラミック過熱蒸気発生装置12に提供する装置である。
【0031】
軟水器55は、水道から供給される水道水から硬度成分を除去し、水道水を軟水に変質させる装置である。
制御盤56は、各種制御動作を実行する装置である。
【0032】
熱交換器57は、熱分解室21から触媒槽31を通過して供給される気化物を冷却して液化するコンデンサーである。
受液槽58は、熱交換器57で液化された液体を受液する。
【0033】
水封槽59は、受液槽58から供給される水銀や鉛等の有害重金属類のガスを、キレート剤と反応させる装置である。この反応により、キレート剤で重金属類を挟み込み固定し、大気中に排出できないようにする。
【0034】
排水処理装置60は、オゾン発生装置53より供給されるオゾンと、超音波発生装置52より供給される振動を排水に与え酸化処理することで、排水処理を行う装置である。
【0035】
図4は、移動式処理装置1と固定式処理装置2が接続された滅菌装置Aの処理系のブロック図である。このブロック図と共に、投入された滅菌対象物を滅菌および油化する工程について説明する。
【0036】
移動式処理装置1は、移動可能であるため、病院などの施設内で適宜移動され、手術室等で生じた滅菌対象物(例えば医療系廃棄物の摘出臓器や薬品に使用した廃容器、廃プラスチック製注射器、手袋等の高分子系廃棄物等)が使用現場で投入口22から熱分解室21内に投入される。そして、投入口22の開閉蓋22aが閉じられ、熱分解室21内が密閉された状態で固定式処理装置2の設置場所まで移動式処理装置1が移動される。移動式処理装置1に設けられた冷却用蒸気接続部32、液状処理物接続部33、熱分解ガス管接続部34、および電源供給接続部35が、固定式処理装置2の各接続部に接続された後、次に説明する各工程が実行される。
【0037】
まず、過熱蒸気の供給工程について説明する。
水道Wから供給される水道水は、軟水器55で軟水に変質され、電気式ボイラー54で蒸発させられる。そして、電気式ボイラー54からセラミック過熱蒸気発生装置12に飽和蒸気が供給される。
【0038】
商用電源Vの電力は、電源トランス43に供給される。電源トランス43は、この電力を変圧してセラミック過熱蒸気発生装置12に供給する。このとき、セラミック過熱蒸気発生装置12の発熱体13は、一方の電源端子にプラスの電圧が印加され、他方の電源端子よりマイナスの電圧が印加される。また、電源トランス43は、制御盤56によって制御される。
【0039】
セラミック過熱蒸気発生装置12は、電源トランス43からの電力供給を受けて発熱体13が例えば900〜950℃程度にまで過熱される。そして、電気式ボイラー54からセラミック過熱蒸気発生装置12の飽和蒸気入口14a内へ供給された飽和蒸気は、発熱体13で過熱され、800〜850℃程度(発熱体13の温度が950℃の場合最大850℃程度)まで過熱される。この過熱蒸気は、過熱蒸気出口14bから取り出され、過熱蒸気噴霧ノズル37を経由して熱分解室21の内部に噴出する。
【0040】
固定式処理装置2に設けられた液入部61は、排液の投入を許容する。この液入部61に投入された排液は、ポンプ62によって液状処理物供給口17から熱分解室21内に定量供給される。
【0041】
次に、熱分解工程について説明する。
熱分解室21内は、上述したセラミック過熱蒸気発生装置12から噴射される過熱蒸気により、例えば850℃程度の雰囲気温度に過熱される。このとき、熱分解室21内は、過熱蒸気により直接過熱されるだけでなく、セラミック過熱蒸気発生装置12自身の予熱によっても過熱される。この熱分解室21内は、投入口22と排出口26が完全に閉鎖されていることで密閉状態になっている。また、セラミック過熱蒸気発生装置12の発熱により、熱分解室21内の滅菌対象物に遠赤外線が照射される。
【0042】
熱分解室21内に投入された滅菌対象物は、過熱蒸気と遠赤外線により、急激に過熱されて1.5時間〜2時間という短時間で有機物が熱分解ガス化される。この過熱により、滅菌対象物に付着している菌が死滅し、滅菌することができる。また、密閉されて過熱蒸気が飽和した状態の熱分解室21内で過熱を行うため、投入された滅菌対象物に金属が混入していても爆発することなく安全に処理され、滅菌対象物が焦げることなく炭化等する。
【0043】
次に、油分抽出工程について説明する。
熱分解工程で発生したガスは、吐出ガス圧力調整弁18の調整によって一定圧力以上(例えば0.05MPa前後)で余剰蒸気とともに気化物として熱分解出口19より吐出される。これらの気化物は、触媒槽31内で触媒による接触分解で調整され、熱分解ガス管接続部34から固定式処理装置2へ送り出される。この固定式処理装置2内で、上記調整後の気化物は、熱交換器57によって冷却され、受液槽58内に液化して受液される。この工程で滅菌対象物のうちプラスチック廃棄物は、A重油などの油分として燃料化され、廃棄物の資源再利用として有用化される。
【0044】
次に、非凝縮ガス処理工程について説明する。
熱分解工程での熱分解ガス化、および油分抽出工程での冷却および液化を経ても液化しない非凝縮ガスは、水封槽59内に導入される。水封槽59は、内部にキレート剤が添加されており、有害な鉛や水銀等の重金属類が混入しても封入して外部に排出しない特徴を有している。この水封槽59で生じる排水は、オゾン発生装置53よりオゾンが供給され、超音波発生装置52より振動が与えられることで、酸化処理されて排水処理される。
【0045】
次に、脱臭工程について説明する。
水封槽59内に、悪臭を伴うガスが混入していても、脱臭処理装置51は、オゾン発生装置53から供給されるオゾンにより無煙、無臭に処理する。
【0046】
次に、残渣物回収工程について説明する。
熱分解室21に残った残渣物は、排出口26から残渣物受槽27に回収される。この残渣物受槽27は、移動式処理装置1から引き出しの如く取り出される等により、回収される。残渣物には、炭化物と共に金属物質が残っているため、レアメタルを回収して再資源化することができる。
【0047】
以上の構成および動作により、過熱蒸気という燃焼によらないクリーンな熱エネルギーを熱源とすることで、環境に悪影響を与えることなく短時間で処理できる。特に、院内感染源等を手早く処分できるため、外部処分を行う場合に比較して、時間的にも手早く処分することで感染源の広がりをなくすことができる。
【0048】
また、移動式処理装置1を用いることで、医療機関などの施設では、階ごと及び専門部門ごとに分けて処理物を回収することができる。また、各医療現場近くで医療系廃棄物を投入し易くできる。このため、院内感染や廃棄物による汚染等の防止を容易化することができる。すなわち、滅菌対象物の取り扱いは各医療現場だけとし、その後は密閉された熱分解室21内に存在する状態で移動され、そのまま固定式処理装置2に接続されて滅菌されるから、菌が現場以外に漏出することを防止できる。
【0049】
このように、滅菌装置Aにより、手術業務を含む医療現場において、排出される感染性特別管理廃棄物を手近で確実に短時間で簡便に処分できる。そして、感染性特別管理廃棄物を滅菌・殺菌することができ、院内感染源を素早く撲滅することができる。
【0050】
また、廃棄物の減容・油化及び完全熱分解後の残渣物の炭化処理を簡便に行うことができる。また、衛生的かつ無臭・無煙で処理できるため、利用者の満足度を向上させることができる。
【0051】
また、プラスチック製の各種医療関係製品といった高分子製の有機物は、熱分解によるリサイクルとして油化できる。したがって、油化された油化物(たとえばA重油やC重油や軽油など)を有用な燃料油とし、資源回収できる。
【0052】
また、装置の構成要素の大部分を固定式処理装置2に設け、移動式処理装置1に設ける装置を最小限にしたことで、移動式処理装置1を小型にして簡単に移動させることができる。
【0053】
また、セラミック過熱蒸気発生装置12を移動式処理装置1の熱分解室21内に設けたため、過熱蒸気を直接噴射できると共に、予熱を利用することができ、熱分解室21内を効率よく温度上昇させることができる。
【0054】
また、発熱体13の周囲が耐熱、耐食性のセラミックケース14により覆されているため、強酸性や強アルカリ性のガス発生物を処理することが可能になる。すなわち、従来のパイプヒータであれば、酸性のガスに触れると亀裂が入る等によりすぐ破損するという問題点があったが、この問題点を克服して酸性のガスが発生してもセラミックケース14が破損することなく、安定して処理することができる。
【0055】
また、電源トランス43を移動式処理装置1内に設けたため、太くして耐熱性が必要になる電源ケーブル42を短くすることができ、電源トランス43から発熱体13に強い電圧を印加することが容易になる。
【0056】
また、滅菌装置Aを移動式処理装置1と固定式処理装置2に分離しているため、例えば複数の移動式処理装置1を各医療現場(外科、内科、循環器科、産婦人科、小児科の病棟等)に設置し、これら複数の移動式処理装置1が共通して接続される固定式処理装置2を移動式処理装置1よりも少数設置して運用することができる。これにより、移動式処理装置1を設置する医療現場を増加させて利便性を向上させると共に、全体としてのコストダウンを図るという相反する課題を両立させることができる。
【0057】
また、発熱体13は、電源トランス43からの電力供給を受け、セラミックケース14の内側空間を例えば900℃から1050℃といった高温に十分過熱することができる。
【0058】
また、セラミックケース14の外側に設けた放熱板16により、発熱体13から生じる熱が、電源ケーブル42を通じて電源トランス43へ伝達することを防止できる。
【0059】
また、熱分解室21内に配置されるセラミック過熱蒸気発生装置12の外周をセラミックケース14で被覆しているため、熱分解室21内で酸などの有機ガスが発生しても、従来のパイプヒータのように亀裂等が生じて破損することを防止できる。
【0060】
なお、発熱体13による過熱温度を、900℃、1200℃、1,600℃といったように段階的に上昇させる構成にしてもよい。この場合、短時間で多くの処理が可能となり、耐高温感染性細菌を確実に撲滅することができる。
【0061】
また、移動式処理装置1には、手押用の取っ手を設けても良い。これにより、移動時の操作性を向上させることができる。
【0062】
また、移動式処理装置1内には、バッチ式で滅菌対象物を投入する構成としたが、これに限らず、例えば投入口22の上部に、滅菌対象物を連続供給する導入用の配管を設けてもよい。この場合、液体処理物を大量に処分するときは、別途タンクに貯蔵した処理物をタンク内より別に設けたポンプにて連続供給するとよい。これにより、血液が混合された汚水や、有害な薬品の混合物、又は油性の廃棄物等を連続的に処理することができる。
【0063】
なお、発熱体13の突出部分13aをセラミックケース14から突出させたが、これに限らず、発熱体13の両端に別部材の電気接続部を接続し、この電気接続部をセラミックケース14から突出させて放熱板16を備える構成にしてもよい。この場合でも、発熱体13から電源ケーブル42を通じて電源トランス43に熱が伝達することを防止できる。
【0064】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の移動ユニットは、実施形態の移動式処理装置1に対応し、
以下同様に、
固定ユニットは、固定式処理装置2に対応し、
過熱蒸気放出装置は、セラミック過熱蒸気発生装置12に対応し、
発熱体の一部は、突出部分13aに対応し、
発熱体の一部分は、発熱体13の中央部分13bに対応し、
被覆体は、セラミックケース14に対応し、
蒸気受入口は、飽和蒸気入口14aに対応し、
蒸気放出口は、過熱蒸気出口14bに対応し、
放熱手段は、放熱板16に対応し、
蓋部は、開閉蓋22aに対応し、
攪拌手段は、攪拌機24に対応し、
気体送出部は、熱分解ガス管接続部34に対応し、
耐熱ケーブルは、電源ケーブル42に対応し、
車輪は、キャスタ44に対応し、
気体処理部は、熱交換器57に対応し、
気体受入部は、接続部74に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】医療系の移動式処理装置の側面縦断面図。
【図2】セラミック過熱蒸気発生装置の縦断正面図。
【図3】固定式処理装の系統のブロック図。
【図4】滅菌装置の処理系のブロック図。
【符号の説明】
【0066】
1…移動式処理装置、2…固定式処理装置、12…セラミック過熱蒸気発生装置、13…発熱体、13a…突出部分、14…セラミックケース、14a…飽和蒸気入口、14b…過熱蒸気出口、16…放熱板、21…熱分解室、22a…開閉蓋、24…攪拌機、34…熱分解ガス管接続部、42…電源ケーブル、43…電源トランス、44…キャスタ、57…熱交換器、74…接続部、A…滅菌装置、E…中空部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空部と、該中空部に連通する蒸気受入口と、前記中空部に連通する蒸気放出口とを有する被覆体と、
電力供給を受けると発熱する発熱体とを備え、
前記発熱体は、前記被覆体の中空部内に少なくとも一部分が配置され、
前記被覆体は、セラミックで構成された
過熱蒸気放出装置。
【請求項2】
前記発熱体の一部または該発熱体に電気的に接続する電気接続部を前記被覆体の中空部の外に配置し、該中空部の外に配置された部分に放熱手段を備えた
請求項1記載の過熱蒸気放出装置。
【請求項3】
固定式の固定ユニットと、該固定ユニットに接続および分離可能な移動式の移動ユニットとを備え、
前記移動ユニットに、
開閉可能な蓋部を有して密閉可能な熱分解室と、
該熱分解室内に過熱蒸気を放出する請求項1または2記載の過熱蒸気放出装置と、
前記熱分解室で熱分解して発生した気体を前記固定ユニットへ送り出す気体送出部とを備え、
前記固定ユニットに、
前記気体送出部から気体を受け入れる気体受入部と、
該気体受入部から受け入れた気体を処理する気体処理部とを備えた
滅菌装置。
【請求項4】
前記移動ユニットは、
前記発熱体に電力供給する電源トランスと、
該電源トランスと前記発熱体とを接続する熱に強い耐熱ケーブルとを備えた
請求項3記載の滅菌装置。
【請求項5】
前記分解室内に攪拌手段を備えた
請求項3または4記載の滅菌装置。
【請求項6】
前記移動ユニットの底部に車輪を備えた
請求項3、4または5記載の滅菌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−121724(P2009−121724A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−294092(P2007−294092)
【出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【出願人】(507351403)株式会社オリエント (1)
【Fターム(参考)】