説明

過給機システム、内燃機関及び過給機システムの制御方法

【課題】排気エネルギーをより効率的に回収することが可能な過給機システム、内燃機関及び過給機システムの制御方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る過給機システムは、エンジン本体3からの排気ガスによって駆動されるタービン部6aと、タービン部6aによって駆動されてエンジン本体3に外気を圧送するコンプレッサ部6bとを有する第1過給機6と、タービン部7a及びコンプレッサ部7bの回転軸と連結された回転軸7cを有する発電機7dとを有する第2過給機7と、エンジン本体3から第1過給機6のタービン部6aへ排気ガスを供給する第1の排気管12と、第1の排気管12に設けられ、排気ガスの流れを遮断することが可能なカット弁9と、第1過給機6又は第2過給機7の回転数を取得し、回転数に基づいてカット弁9の開閉を制御する制御部30とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービン部及びコンプレッサ部を有する一の過給機と、更に発電機を有する別の過給機を備える過給機システム、内燃機関及び過給機システムの制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディーゼル機関、例えば舶用2サイクルディーゼル機関に過給機が設けられることによって、エンジン本体から排出された排気ガスの排気エネルギーが動力として回収される。また、過給機には、発電機が連結されて、動力を受けて発電を行うものがある。
【0003】
特許文献1には、エンジン本体から排気ガスが供給される複数の過給機を備え、かつ発電機を備えたパワータービンを備える場合、又は複数の過給機のうち少なくとも1台に発電機を備える場合に、エンジン負荷が低負荷領域でも排気エネルギーを動力として回収する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−257097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
船舶の航行では、近年の燃料高騰の影響を受けて、長時間の減速航行が一般的になっている。このような条件下では、エンジン負荷が低負荷であるため、排気ガス量が減少し、発電機付過給機(ハイブリッド過給機)の発電出力は限定的である。その結果、発電機付過給機は、十分な性能を発揮できない。
【0006】
そこで、複数の過給機を備える場合、一部の過給機の排気ガス入口を塞ぐことで、残る過給機に流入する排気ガス量を増加させて、その過給機回転数を上げてエンジンの掃気圧力を上げることができる。その結果、シリンダに流入する空気量が増大し、燃焼状況が改善して、燃料消費率が向上する。また、複数の過給機のうち発電機付過給機以外の排気ガス入口を塞ぐことで、発電機付過給機に流入する排気ガス量を増加させることで、エンジンの掃気圧力を上げつつ、発電出力を得ることができる。
【0007】
一方、特許文献1などの従来技術では、過給機へ排気ガスを供給する排気ガス入口の開閉制御は、エンジン負荷に応じて行われるのみであった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、排気エネルギーをより効率的に回収することが可能な過給機システム、内燃機関及び過給機システムの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の過給機システム、内燃機関及び過給機システムの制御方法は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明に係る過給機システムは、エンジン本体から導かれた排気ガスによって駆動されるタービン部と、タービン部によって駆動されてエンジン本体に外気を圧送するコンプレッサ部とを有する第1過給機と、エンジン本体から導かれた排気ガスによって駆動されるタービン部と、タービン部によって駆動されてエンジン本体に外気を圧送するコンプレッサ部と、タービン部及びコンプレッサ部の回転軸と連結された回転軸を有する発電機とを有する第2過給機と、エンジン本体から第1過給機のタービン部へ排気ガスを供給する排気管と、排気管に設けられ、排気ガスの流れを遮断することが可能な遮断弁と、第1過給機又は第2過給機の回転数を取得し、回転数に基づいて遮断弁の開閉を制御する制御部とを備える。
【0010】
この発明によれば、第1過給機又は第2過給機の回転数が取得され、取得された回転数に基づいて、排気管に設けられた遮断弁が開閉される。したがって、遮断弁が開状態であるときは、排気管を通じて排気ガスが第1過給機のタービン部へ排気ガスが供給される。このとき、第2過給機のタービン部にも排気ガスが供給されており、発電機によって発電が行われる。
【0011】
一方、遮断弁が閉状態であるときは、第1過給機への排気ガスの供給は遮断され、第2過給機のタービン部のみへ排気ガスが供給される。その結果、第1過給機へ供給されていた分の排気ガスが、第2過給機へ供給されることになる。そのため、例えば、エンジン本体からの排気ガス量が減少して、第1過給機又は第2過給機の回転数が減少した場合に、第2過給機の発電機による発電量が低下するところ、遮断弁を閉にすることによって、第2過給機の回転数が増加し、発電量の低下を抑制できる。
【0012】
例えば、取得される回転数と所定の閾値を比較して、回転数が閾値以下になったときに、制御部が遮断弁を閉状態に制御するようにする。この閾値は、例えば、第2過給機の発電機が有効に発電するときの回転数に基づいて決定される。第1過給機又は第2過給機の回転数は、直接測定することによって取得されてよいし、空気流量、コンプレッサ部入口温度、コンプレッサ部入口圧力、コンプレッサ部出口圧力、コンプレッサ諸元から算出されてもよい。
【0013】
また、本発明に係る過給機システムは、エンジン本体から導かれた排気ガスによって駆動されるタービン部と、タービン部によって駆動されてエンジン本体に外気を圧送するコンプレッサ部とを有する第1過給機と、エンジン本体から導かれた排気ガスによって駆動されるタービン部と、タービン部によって駆動されてエンジン本体に外気を圧送するコンプレッサ部と、タービン部及びコンプレッサ部の回転軸と連結された回転軸を有する発電機とを有する第2過給機と、エンジン本体から第1過給機のタービン部へ排気ガスを供給する排気管と、排気管に設けられ、排気ガスの流れを遮断することが可能な遮断弁と、第1過給機又は第2過給機へ供給される排気ガスによる排気タービン仕事と、エンジン本体の出力に要求される空気量を第1過給機又は第2過給機がエンジン本体へ圧送するときのコンプレッサ仕事を取得し、排気タービン仕事とコンプレッサ仕事に基づいて遮断弁の開閉を制御する制御部とを備える。
【0014】
この発明によれば、第1過給機又は第2過給機へ供給される排気ガスによる排気タービン仕事と、エンジン本体の出力に要求される空気量を第1過給機又は第2過給機がエンジン本体へ圧送するときのコンプレッサ仕事が取得され、取得された排気タービン仕事とコンプレッサ仕事に基づいて、排気管に設けられた遮断弁が開閉される。したがって、遮断弁が開状態であるときは、排気管を通じて排気ガスが第1過給機のタービン部へ排気ガスが供給される。このとき、第2過給機のタービン部にも排気ガスが供給されており、発電機によって発電が行われる。
【0015】
一方、遮断弁が閉状態であるときは、第1過給機への排気ガスの供給は遮断され、第2過給機のタービン部のみへ排気ガスが供給される。その結果、第1過給機へ供給されていた分の排気ガスが、第2過給機へ供給されることになる。そのため、例えば、エンジン本体からの排気ガス量が減少して、第1過給機又は第2過給機の排気タービン仕事が減少しつつ、エンジン本体の出力に要求される空気量が減少して、コンプレッサ仕事が減少した場合に、第2過給機の発電機による発電量が低下するところ、遮断弁を閉にすることによって、第2過給機の排気タービン仕事が増加し、発電量の低下を抑制できる。
【0016】
コンプレッサ仕事は、エンジン本体の出力が減少すると、排気タービン仕事に比べて相対的に減少量が大きい。そのため、余剰のエネルギーを第2過給機の発電機による発電に使用できる。例えば、取得される排気タービン仕事とコンプレッサ仕事の差分と所定の閾値を比較して、差分が閾値以上になったときに、制御部が遮断弁を閉状態に制御するようにする。この閾値は、例えば、排気タービン仕事とコンプレッサ仕事の差分が、発電機で回収されて、発電機が有効な発電をするときの差分に基づいて決定される。排気タービン仕事は、例えば、空気流量、燃料流量、タービン部入口温度、タービン部入口圧力から算出される。
【0017】
また、本発明に係る内燃機関は、エンジン本体を備え、上記の過給機システムが設けられる。
【0018】
この発明によれば、エンジン本体において出力が低下した場合、第1過給機への排気ガスの供給が遮断され、その分の排気ガスが第2過給機に供給されるようになるため、発電量の低下を抑制できる。
【0019】
また、本発明に係る過給機システムの制御方法は、エンジン本体から導かれた排気ガスによって駆動されるタービン部と、タービン部によって駆動されてエンジン本体に外気を圧送するコンプレッサ部とを有する第1過給機と、エンジン本体から導かれた排気ガスによって駆動されるタービン部と、タービン部によって駆動されてエンジン本体に外気を圧送するコンプレッサ部と、タービン部及びコンプレッサ部の回転軸と連結された回転軸を有する発電機とを有する第2過給機と、エンジン本体から第1過給機のタービン部へ排気ガスを供給する排気管と、排気管に設けられ、排気ガスの流れを遮断することが可能な遮断弁と、を備える過給機システムの制御方法であって、第1過給機又は第2過給機の回転数を取得するステップと、回転数に基づいて遮断弁を開閉するステップとを備える。
【0020】
この発明によれば、第1過給機又は第2過給機の回転数が取得され、取得された回転数に基づいて、排気管に設けられた遮断弁が開閉される。したがって、遮断弁が開状態であるときは、排気管を通じて排気ガスが第1過給機のタービン部へ排気ガスが供給される。このとき、第2過給機のタービン部にも排気ガスが供給されており、発電機によって発電が行われる。
【0021】
一方、遮断弁が閉状態であるときは、第1過給機への排気ガスの供給は遮断され、第2過給機のタービン部のみへ排気ガスが供給される。その結果、第1過給機へ供給されていた分の排気ガスが、第2過給機へ供給されることになる。そのため、例えば、エンジン本体からの排気ガス量が減少して、第1過給機又は第2過給機の回転数が減少した場合に、第2過給機の発電機による発電量が低下するところ、遮断弁を閉にすることによって、第2過給機の回転数が増加し、発電量の低下を抑制できる。
【0022】
また、本発明に係る過給機システムの制御方法は、エンジン本体から導かれた排気ガスによって駆動されるタービン部と、タービン部によって駆動されてエンジン本体に外気を圧送するコンプレッサ部とを有する第1過給機と、エンジン本体から導かれた排気ガスによって駆動されるタービン部と、タービン部によって駆動されてエンジン本体に外気を圧送するコンプレッサ部と、タービン部及びコンプレッサ部の回転軸と連結された回転軸を有する発電機とを有する第2過給機と、エンジン本体から第1過給機のタービン部へ排気ガスを供給する排気管と、排気管に設けられ、排気ガスの流れを遮断することが可能な遮断弁とを備える過給機システムの制御方法であって、第1過給機又は第2過給機へ供給される排気ガスによる排気タービン仕事と、エンジン本体の出力に要求される空気量を第1過給機又は第2過給機がエンジン本体へ圧送するときのコンプレッサ仕事を取得するステップと、排気タービン仕事とコンプレッサ仕事に基づいて遮断弁を開閉するステップとを備える。
【0023】
この発明によれば、第1過給機又は第2過給機へ供給される排気ガスによる排気タービン仕事と、エンジン本体の出力に要求される空気量を第1過給機又は第2過給機がエンジン本体へ圧送するときのコンプレッサ仕事が取得され、取得された排気タービン仕事とコンプレッサ仕事に基づいて、排気管に設けられた遮断弁が開閉される。したがって、遮断弁が開状態であるときは、排気管を通じて排気ガスが第1過給機のタービン部へ排気ガスが供給される。このとき、第2過給機のタービン部にも排気ガスが供給されており、発電機によって発電が行われる。
【0024】
一方、遮断弁が閉状態であるときは、第1過給機への排気ガスの供給は遮断され、第2過給機のタービン部のみへ排気ガスが供給される。その結果、第1過給機へ供給されていた分の排気ガスが、第2過給機へ供給されることになる。そのため、例えば、エンジン本体からの排気ガス量が減少して、第1過給機又は第2過給機の排気タービン仕事が減少しつつ、エンジン本体の出力に要求される空気量が減少して、コンプレッサ仕事が減少した場合に、第2過給機の発電機による発電量が低下するところ、遮断弁を閉にすることによって、第2過給機の排気タービン仕事が増加し、発電量の低下を抑制できる。
【0025】
コンプレッサ仕事は、エンジン本体の出力が減少すると、排気タービン仕事に比べて相対的に減少量が大きい。そのため、余剰のエネルギーを第2過給機の発電機による発電に使用できる。例えば、取得される排気タービン仕事とコンプレッサ仕事の差分と所定の閾値を比較して、差分が閾値以上になったときに、制御部が遮断弁を閉状態に制御するようにする。この閾値は、例えば、排気タービン仕事とコンプレッサ仕事の差分が、発電機で回収されて、発電機が有効な発電をするときの差分に基づいて決定される。排気タービン仕事は、例えば、空気流量、燃料流量、タービン部入口温度、タービン部入口圧力から算出される。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、排気エネルギーをより効率的に回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態に係る舶用ディーゼル機関を示す構成図である。
【図2】過給機回転数とエンジン出力との関係を示すグラフである。
【図3】本発明の第1実施形態に係る過給機システムの動作を示すフローチャートである。
【図4】排気タービン仕事又はコンプレッサ仕事とエネルギーとの関係を示すグラフである。
【図5】本発明の第2実施形態に係る過給機システムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明に係る実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図1を用いて説明する。
本実施形態に係る過給機システムは、図1に示すように、第1過給機6と、第2過給機7と、第1の排気管12と、カット弁(遮断弁)9と、制御部30等を備えている。本実施形態の過給機システムは、例えば、舶用ディーゼル機関1に適用される。舶用ディーゼル機関1は、燃料ポンプ2と、ディーゼルエンジン本体(例えば、2サイクルディーゼル機関)3等を有する。
【0029】
ディーゼルエンジン本体(以下「エンジン本体」という。)3を構成するクランク軸(図示せず。)には、プロペラ軸(図示せず。)を介してスクリュープロペラ(図示せず。)が直接的または間接的に取り付けられている。また、エンジン本体3には、シリンダライナ(図示せず。)、シリンダカバー(図示せず。)等からなるシリンダ部4が設けられており、各シリンダ部4内には、クランク軸と連結されたピストン(図示せず。)が配置されている。
【0030】
エンジン本体3には、燃料ポンプ2及び供給管10を介して、燃料が供給され、各シリンダ部4で燃料が燃焼される。
【0031】
さらに、各シリンダ部4の排気ポート(図示せず。)は、排気集合管5と接続されている。排気集合管5は、第1の排気管12を介して第1過給機6のタービン部6aの入口側と接続され、第2の排気管19を介して第2過給機7のタービン部7aの入口側と接続されている。一方、各シリンダ部4の給気ポート(図示せず。)は、掃気室8と接続されており、掃気室8は、給気管17を介して第1過給機6のコンプレッサ部6bと接続され、給気管24を介して第2過給機7のコンプレッサ部7bと接続されている。
【0032】
第1過給機6は、排気集合管5及び第1の排気管12を介してエンジン本体3から導かれた排気ガス(燃焼ガス)によって駆動されるタービン部6aと、このタービン部6aによって駆動されてエンジン本体3に外気を圧送するコンプレッサ部6bと、これらタービン部6aとコンプレッサ部6bとの間に設けられてこれらを支持するケーシング(図示せず。)とを主たる要素として構成されたものである。
【0033】
ケーシングには、一端部をタービン部6a側に突出させ、他端部をコンプレッサ部6bに突出させた回転軸6cが挿通されている。回転軸6cの一端部は、タービン部6aを構成するタービン・ロータ(図示せず。)のタービン・ディスク(図示せず。)に取り付けられており、回転軸6cの他端部は、コンプレッサ部6bを構成するコンプレッサ羽根車(図示せず。)のハブ(図示せず。)に取り付けられている。
【0034】
また、第1の排気管12の途中には、制御部30によって開閉されるカット弁9が接続されている。カット弁9は、開状態で、排気ガスをエンジン本体3から第1過給機に供給し、閉状態で排気ガスの供給を遮断する。
【0035】
第2過給機7は、排気集合管5及び第2の排気管19を介してエンジン本体3から導かれた排気ガスによって駆動されるタービン部7aと、このタービン部7aによって駆動されてエンジン本体3に外気を圧送するコンプレッサ部7bと、これらタービン部7aとコンプレッサ部7bとの間に設けられてこれらを支持するケーシング(図示せず。)と、タービン部7aにより駆動されて発電する発電機7dを主たる要素として構成されたものである。
【0036】
ケーシングには、一端部をタービン部7a側に突出させ、他端部をコンプレッサ部7bに突出させた回転軸7cが挿通されている。回転軸7cの一端部は、タービン部7aを構成するタービン・ロータ(図示せず。)のタービン・ディスク(図示せず。)に取り付けられており、回転軸7cの他端部は、コンプレッサ部7bを構成するコンプレッサ羽根車(図示せず。)のハブ(図示せず。)に取り付けられている。
【0037】
タービン部7aの回転軸と、発電機7bの回転軸とは、カップリングを介して連結されている。すなわち、発電機7dの回転軸は、タービン部7aの回転軸とともに回転する。
【0038】
また、発電機7dは、船内(例えば機関室内)に別途設置された配電盤等と電気的に接続されており、発電機7dが発電機として発生した電力を船内電源として使用(利用)することができる。
【0039】
タービン部6a,7aを通過した排気ガスは、それぞれタービン部6a,7aの出口側に接続された排気管14,21を介してファンネル(図示せず。)に導かれた後、船外に排出される。
【0040】
コンプレッサ部6b,7bのそれぞれの入口側に接続された給気管15,22には、消音器(図示せず。)が配置されており、この消音器を通過した外気が、コンプレッサ部6b,7bにそれぞれ導かれる。また、コンプレッサ部6b,7bの出口側に接続された給気管17,24の途中には、空気冷却器(図示せず。)及びサージタンク(図示せず。)が接続されており、コンプレッサ部6b,7bを通過した外気は、空気冷却器及びサージタンクを通過した後、エンジン本体3に接続された掃気室8に供給される。
【0041】
供給管10、第1の排気管12、第2の排気管19、給気管15,17,22,24には、それぞれ検出部11,13,20,16,18,23,25が設けられる。検出部11は、例えば流量センサーを有し、エンジン本体3に供給される燃料の流量を検出する。検出部16,23は、流量センサー、温度センサーや圧力センサーを有し、コンプレッサ部6b,7bに供給される空気の流量、コンプレッサ部6b,7bの入力温度や入口圧力を測定する。検出部18,25は、例えば圧力センサーを有し、コンプレッサ部6b,7bの出口圧力を測定する。検出部13,20は、流量センサー、温度センサーや圧力センサーを有し、タービン部6a,7aに供給される排気ガスの流量、タービン部6a,7aの入力温度や入口圧力を測定する。
【0042】
また、第1過給機6、第2過給機7には、回転数測定センサー(図示せず。)が設けられ、回転数測定センサーが回転軸の回転数を測定してもよい。
【0043】
制御部30は、第1過給機6又は第2過給機7の回転数を取得し、取得した回転数に基づいて、第1の排気管12に設けられたカット弁9を開閉する。例えば、取得される回転数と所定の閾値を比較して、回転数が閾値以下になったときに、制御部30がカット弁9を閉状態に制御するようにする。この閾値は、例えば、第2過給機7の発電機7dが有効に発電するときの回転数に基づいて決定される。第1過給機6又は第2過給機7の回転数は、直接測定することによって取得されてよいし、空気流量、コンプレッサ部6b,7bの入口温度、コンプレッサ部6b,7bの入口圧力、コンプレッサ部6b,7bの出口圧力、コンプレッサ部6b,7bの諸元などから算出されてもよい。
【0044】
次に、図3を参照して、本実施形態に係る過給機システムの動作について説明する。
【0045】
まず、空気流量、燃料流量、コンプレッサ部6b,7bの入口温度、コンプレッサ部6b,7bの入口圧力、コンプレッサ部6b,7bの出口圧力を取得する(ステップS1)。そして、空気流量、燃料流量、コンプレッサ部6b,7bの入口温度、コンプレッサ部6b,7bの入口圧力、及びコンプレッサ部6b,7bの出口圧力と、コンプレッサ部6b,7bの諸元などに基づいて、第1過給機6又は第2過給機7の回転数を算出する(ステップS2)。なお、ここでは、ステップS1及びステップS2を実施して、第1過給機6又は第2過給機7の回転数が取得されるとしたが、第1過給機6又は第2過給機7の回転数は、回転数測定センサーによって、直接測定された値でもよい。
【0046】
次に、算出された回転数と、所定の閾値を比較する(ステップS3)。図2に示すように、エンジン出力が高く、エンジン本体3から第1過給機6又は第2過給機7に排気ガスが十分供給されるときは、第1過給機6又は第2過給機7の回転数は多い。一方、エンジン出力が低下し、排気ガス量が減少するにつれて、第1過給機6又は第2過給機7の回転数も少なくなる。
【0047】
第1過給機6又は第2過給機7の回転数が、所定の閾値以上であれば、カット弁9を開状態にしたまま、第1過給機6及び第2過給機7のいずれにも排気ガスが供給される。一方、第1過給機6又は第2過給機7の回転数が、所定の閾値よりも小さくなった場合、カット弁9を閉状態にする(ステップS4)。このとき、第1過給機6への排気ガスの供給は遮断され、第2過給機7のタービン部7aのみへ排気ガスが供給される。その結果、第1過給機6へ供給されていた分の排気ガスが、第2過給機7へ供給されることになる。そのため、エンジン本体3からの排気ガス量が減少して、第1過給機6又は第2過給機7の回転数が減少した場合に、第2過給機7の発電機7cによる発電量が低下するところ、カット弁9を閉にすることによって、図2に示すように、第2過給機7の回転数が増加し、発電量の低下を抑制できる。
【0048】
したがって、エンジン出力が低負荷であっても、第2過給機7にて、所定の閾値以上の回転数を得ることができ、第2過給機7によって電力を得ることができるエンジン出力範囲を広げることができる。また、エンジン負荷が低負荷であるときは、排気エネルギーによってタービン部7aで発生する排気タービン仕事のほうが、エンジン本体3において要求される空気圧縮に必要なコンプレッサ仕事を上回る。そのため、余剰のエネルギーを発電機7dで回収することができ、舶用ディーゼル機関1における燃料消費率を改善できる。
【0049】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る過給機システムについて、図4及び図5を用いて説明する。
【0050】
上述の第1実施形態では、第1過給機6又は第2過給機7の回転数に応じて、カット弁9の開閉を制御する場合について説明したが、第2実施形態では、排気タービン仕事に基づいて、カット弁9の開閉を制御する。以下では、第1実施形態と重複する構成要素については、説明を省略する。
【0051】
図1に示す制御部30は、エンジン本体3から第1過給機6又は第2過給機7へ供給される排気ガスによる排気タービン仕事と、エンジン本体3の出力に要求される空気量を第1過給機6又は第2過給機7がエンジン本体3へ圧送するときのコンプレッサ仕事を取得する。そして、制御部30は、取得した排気タービン仕事とコンプレッサ仕事に基づいて、第1の排気管12に設けられたカット弁9を開閉する。例えば、取得される排気タービン仕事とコンプレッサ仕事の差分と所定の閾値を比較して、差分が閾値以上になったときに、制御部30がカット弁9を閉状態に制御するようにする。この閾値は、例えば、排気タービン仕事とコンプレッサ仕事の差分が、発電機7dで回収されて、発電機7dが有効な発電をするときの排気タービン仕事とコンプレッサ仕事の差分に基づいて決定される。排気タービン仕事は、例えば、空気流量、燃料流量、タービン部入口温度、タービン部入口圧力から算出される。
【0052】
排気タービン仕事及びコンプレッサ仕事と、エンジン出力との関係は、図4に示すような関係がある。図4中の実線は、排気タービン仕事とエンジン出力の関係を示し、図4中の破線は、コンプレッサ仕事とエンジン出力の関係を示す。エンジン出力の大小にかかわらず、排気タービン仕事のほうが、コンプレッサ仕事よりも大きい。
【0053】
そして、エンジン負荷が低負荷であるほど、エンジン本体3からの排気ガスによってタービン部7aで発生する排気タービン仕事のほうが、エンジン本体3において要求される空気圧縮に必要なコンプレッサ仕事よりも相対的に大きい。そのため、余剰のエネルギーを発電機7dで回収することができ、舶用ディーゼル機関1における燃料消費率を改善できる。
【0054】
次に、図5を参照して、本実施形態に係る過給機システムの動作について説明する。
【0055】
まず、空気流量、燃料流量、タービン部6a,7aの入口温度、タービン部6a,7aの入口圧力を取得する(ステップS11)。そして、空気流量、燃料流量、タービン部6a,7aの入口温度、タービン部6a,7aの入口圧力に基づいて、排気タービン仕事を算出する。また、第1過給機6の効率、第2過給機7の効率を考慮して、あるエンジン出力に対して要求される空気量を第1過給機6、第2過給機7がエンジン本体3へ圧送するときのコンプレッサ仕事を算出する(ステップS12)。
【0056】
次に、算出された排気タービン仕事とコンプレッサ仕事の差分と、所定の閾値を比較する(ステップS13)。第1過給機6又は第2過給機7の排気タービン仕事とコンプレッサ仕事の差分が、所定の閾値以上であれば、カット弁9を開状態にしたまま、第1過給機6及び第2過給機7のいずれにも排気ガスが供給される。一方、第1過給機6又は第2過給機7の排気タービン仕事とコンプレッサ仕事の差分が、所定の閾値よりも小さくなった場合、カット弁9を閉状態にする(ステップS14)。このとき、第1過給機6への排気ガスの供給は遮断され、第2過給機7のタービン部7aのみへ排気ガスが供給される。その結果、第1過給機6へ供給されていた分の排気ガスが、第2過給機7へ供給されることになる。そのため、エンジン本体3からの排気ガス量が減少して、第1過給機6又は第2過給機7の回転数が減少した場合に、第2過給機7の発電機7cによる発電量が低下するところ、カット弁9を閉にすることによって、第2過給機7の回転数が増加し、発電量の低下を抑制できる。
【0057】
したがって、エンジン負荷が低負荷であるときは、排気エネルギーによってタービン部7aで発生する排気タービン仕事のほうが、エンジン本体3において要求される空気圧縮に必要なコンプレッサ仕事よりも相対的に高い。そのため、エンジン負荷が低負荷であるとき、余剰のエネルギーを発電機7dで回収することができ、舶用ディーゼル機関1における燃料消費率を改善できる。
【符号の説明】
【0058】
1 舶用ディーゼル機関
2 燃料ポンプ
3 エンジン本体
4 シリンダ部
5 排気集合管
6 第1過給機
6a,7a タービン部
6b,7b コンプレッサ部
6c,7c 回転軸
7 第2過給機
7d 発電機
8 掃気室
9 カット弁(遮断弁)
11,13,16,18,20,23,25 検出部
12 第1の排気管(排気管)
15,17,22,24 給気管
19 第2の排気管
30 制御部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン本体から導かれた排気ガスによって駆動されるタービン部と、該タービン部によって駆動されて前記エンジン本体に外気を圧送するコンプレッサ部とを有する第1過給機と、
前記エンジン本体から導かれた排気ガスによって駆動されるタービン部と、該タービン部によって駆動されて前記エンジン本体に外気を圧送するコンプレッサ部と、前記タービン部及び前記コンプレッサ部の回転軸と連結された回転軸を有する発電機とを有する第2過給機と、
前記エンジン本体から前記第1過給機の前記タービン部へ前記排気ガスを供給する排気管と、
該排気管に設けられ、前記排気ガスの流れを遮断することが可能な遮断弁と、
前記第1過給機又は前記第2過給機の回転数を取得し、該回転数に基づいて前記遮断弁の開閉を制御する制御部と、
を備える過給機システム。
【請求項2】
エンジン本体から導かれた排気ガスによって駆動されるタービン部と、該タービン部によって駆動されて前記エンジン本体に外気を圧送するコンプレッサ部とを有する第1過給機と、
前記エンジン本体から導かれた排気ガスによって駆動されるタービン部と、該タービン部によって駆動されて前記エンジン本体に外気を圧送するコンプレッサ部と、前記タービン部及び前記コンプレッサ部の回転軸と連結された回転軸を有する発電機とを有する第2過給機と、
前記エンジン本体から前記第1過給機の前記タービン部へ前記排気ガスを供給する排気管と、
該排気管に設けられ、前記排気ガスの流れを遮断することが可能な遮断弁と、
前記第1過給機又は前記第2過給機へ供給される前記排気ガスによる排気タービン仕事と、前記エンジン本体の出力に要求される空気量を前記第1過給機又は前記第2過給機が前記エンジン本体へ圧送するときのコンプレッサ仕事を取得し、前記排気タービン仕事と前記コンプレッサ仕事に基づいて前記遮断弁の開閉を制御する制御部と、
を備える過給機システム。
【請求項3】
エンジン本体を備え、
請求項1又は2に記載の過給機システムが設けられた内燃機関。
【請求項4】
エンジン本体から導かれた排気ガスによって駆動されるタービン部と、該タービン部によって駆動されて前記エンジン本体に外気を圧送するコンプレッサ部とを有する第1過給機と、
前記エンジン本体から導かれた排気ガスによって駆動されるタービン部と、該タービン部によって駆動されて前記エンジン本体に外気を圧送するコンプレッサ部と、前記タービン部及び前記コンプレッサ部の回転軸と連結された回転軸を有する発電機とを有する第2過給機と、
前記エンジン本体から前記第1過給機の前記タービン部へ前記排気ガスを供給する排気管と、
該排気管に設けられ、前記排気ガスの流れを遮断することが可能な遮断弁と、
を備える過給機システムの制御方法であって、
前記第1過給機又は前記第2過給機の回転数を取得するステップと、
該回転数に基づいて前記遮断弁を開閉するステップと、
を備える過給機システムの制御方法。
【請求項5】
エンジン本体から導かれた排気ガスによって駆動されるタービン部と、該タービン部によって駆動されて前記エンジン本体に外気を圧送するコンプレッサ部とを有する第1過給機と、
前記エンジン本体から導かれた排気ガスによって駆動されるタービン部と、該タービン部によって駆動されて前記エンジン本体に外気を圧送するコンプレッサ部と、前記タービン部及び前記コンプレッサ部の回転軸と連結された回転軸を有する発電機とを有する第2過給機と、
前記エンジン本体から前記第1過給機の前記タービン部へ前記排気ガスを供給する排気管と、
該排気管に設けられ、前記排気ガスの流れを遮断することが可能な遮断弁と、
を備える過給機システムの制御方法であって、
前記第1過給機又は前記第2過給機へ供給される前記排気ガスによる排気タービン仕事と、前記エンジン本体の出力に要求される空気量を前記第1過給機又は前記第2過給機が前記エンジン本体へ圧送するときのコンプレッサ仕事を取得するステップと、
前記排気タービン仕事と前記コンプレッサ仕事に基づいて前記遮断弁を開閉するステップと、
を備える過給機システムの制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−225179(P2012−225179A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90954(P2011−90954)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】